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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039633
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】水中マスク用の鼻部圧平衡装置
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/12 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B63C11/12
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023143547
(22)【出願日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】63/405,067
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508126022
【氏名又は名称】誠加興業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】薛 志誠
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水中マスク用の鼻部圧平衡装置を提供する。
【解決手段】水中マスク用の鼻部圧平衡装置は2つのポケットを含む。各ポケットは、開口と、開口に対応する底部領域を有する。各底部領域は、複数の連続する屈曲部を有する第1形状をなすように予め成形されるとともに、使用者の鼻翼から離れた第1位置に存在する。使用者の2本の指が、それぞれ、2つのポケットの開口から内側に向かって底部領域に力を加えたとき、各底部領域は、伸ばされて第2形状に変形し、且つ、使用者の対向する鼻翼に近接する第2位置に存在可能となる。加えられた力が解除されると、各底部領域は自動的に復元するか、外側への押力を受けて第1位置まで復帰し、第1形状に戻り得る。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口と当該開口に対応する底部領域とをそれぞれ有する2つのポケットを含む水中マスク用の鼻部圧平衡装置であって、
各前記底部領域は、複数の連続する屈曲部を有する第1形状をなすように予め成形されるとともに、使用者の鼻翼から離れた第1位置に存在し、
前記使用者の2本の指が、それぞれ、前記2つのポケットの前記開口から内側に向かって前記底部領域に力を加えたとき、各当該底部領域は、伸ばされて第2形状に変形し、且つ、当該使用者の対向する前記鼻翼に近接する第2位置に存在可能となり、
上記の加えられた力が解除されると、各前記底部領域は自動的に復元するか、外側への押力を受けて前記第1位置まで復帰し、前記第1形状に戻り得ることを特徴とする装置。
【請求項2】
更に、フレーム及び中隔部を含み、当該中隔部は、前記フレームの上部と下部の間に跨ることで、互いに独立した左右の前記2つのポケットを形成する請求項1に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項3】
前記フレーム及び前記中隔部は、前記水中マスクのフレーム部又はレンズ部と一体的に成形される請求項2に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項4】
前記2つのポケットは、前記水中マスクの防水密封スカートと一体的に成形される請求項2に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項5】
前記フレーム、前記中隔部及び前記2つのポケットは、前記水中マスクの防水密封スカートと一体的に成形される請求項2に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項6】
前記2つのポケットは軟質材料で作製され、当該軟質材料は、ショアA硬度10~90を有し、且つ、シリコーンゴム、熱可塑性ゴム、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、或いはそれらの組み合わせから選択される請求項1に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項7】
前記軟質材料は、ショアA硬度70~90を有する請求項6に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項8】
前記連続する屈曲部には少なくとも2つの隣り合う側壁が形成されており、これらは、互いに平行であるか、90度未満の夾角を有している請求項1に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項9】
各前記連続する屈曲部の厚さは、0.3ミリ(mm)から4ミリ(mm)の間である請求項1に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項10】
各前記連続する屈曲部の高さは、2ミリ(mm)から18ミリ(mm)の間である請求項1に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項11】
前記水中マスクはシュノーケルマスクであり、当該シュノーケルマスクは、本体と、当該本体とは分離されるマウスピース式のシュノーケルを有し、且つ、前記鼻部圧平衡装置は、前記本体のフレーム部、レンズ部及び防水密封スカートのうちの少なくとも1つにより規定される鼻室に設けられる請求項1に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項12】
前記水中マスクは呼吸を可能とするマスクであり、当該呼吸を可能とするマスクは、シュノーケル、本体及び三方コネクタを有し、前記本体は前記使用者の目及び鼻を覆い、前記シュノーケル及び前記三方コネクタは、前記本体の上部及び下部にそれぞれ設けられて、前記本体の内部との間で流体を通過可能とする請求項1に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項13】
前記三方コネクタは、互いに連通する鼻連通部、排水弁部及びマウスピース部を有し、前記鼻部圧平衡装置は前記本体に規定される鼻室に設けられ、且つ、前記三方コネクタは、前記鼻連通部及び前記鼻室を通じて前記本体との間で流体を通過させる請求項12に記載の鼻部圧平衡装置。
【請求項14】
前記水中マスクはフルフェイス式の呼吸を可能とするマスクであり、当該フルフェイス式の呼吸を可能とするマスクは、本体及び当該本体と連通するシュノーケルを有し、前記本体は前記使用者の目、鼻及び口を覆い、且つ、前記鼻部圧平衡装置は前記本体に規定される口鼻室に設けられる請求項1に記載の鼻部圧平衡装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻部圧平衡装置に関し、特に、水中マスク用の鼻部圧平衡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中アクティビティ(例えば、シュノーケリング)は、人気の現代的なレジャー活動の一つである。水中アクティビティを行う際に、通常、使用者は、水中での移動を容易とし、且つ水中の景観を楽しめるよう、マスクを装着する。
【0003】
使用者の耳内外の圧力を均衡にしつつ、合わせてマスク内外の圧力も均衡にするためには、通常、フレンツェル法(Frensel Equalization)或いはバルサルバ法により操作して完了させる必要がある。しかし、水中で圧平衡操作を行おうとするならば、マスクに軟質の鼻部圧平衡機構を設計し、且つ装着時に使用者の鼻に十分近接させてから、鼻部圧平衡機構越しに使用者の指(通常は、親指及び人差し指/中指)で鼻をつまみ、鼻孔を確実に閉じなければ実施できない。この場合、最適には、指で鼻をつまむ位置を鼻翼の付け根部に近付けられれば近付けられるほどよい。こうすることで、ようやく手軽且つ確実に鼻をつまんで鼻孔を閉じることが可能となる。
【0004】
残念なことに、現在市場で主流となっているフルフェイスシュノーケルマスク(full-face snorkel mask,FFSM)は、基本構造において、有用な鼻部圧平衡機構を提供することが明らかに困難である。更に、FFSMは、基本構造として、主に大型の硬質レンズモジュールを用いて使用者の目、鼻及び口を覆う。FFSMに特有の設計では、レンズモジュールが使用者の顔部よりも前方へ一定の距離だけ突出している。よって、鼻部圧平衡機構を追加すると、鼻部圧平衡機構の位置が更に前方へ一定の距離だけ突出することになる。想像し得るように、FFSMを装着する際には、使用者の顔部がフレーム部後方の防水密封スカートに押し当てられる。従って、仮に鼻部圧平衡機構を追加したとしても、鼻と圧平衡機構との距離は必然的に非常に離れることになる。結果として、鼻孔全体を閉じる圧平衡動作を行うことはおろか、圧平衡機構越しに使用者の指で鼻に確実に触れることすら難しくなる(せいぜい鼻先の位置にしか到達しない)。これが、現在のところ、FFSMにほぼ圧平衡機能が備わっていないことの原因である。試みようとした業界関係者もいたが、鼻部圧平衡装置の強度不足に起因して、水中での圧力に耐えられず陥没してしまい、顔部を摩擦するとの不快感が生じたり、予期せず鼻が挟まれたりとの結果が生じ、いずれも失敗に終わっている。
【0005】
以上に鑑みて、上記の課題を如何にして解決するかが、業界における一致した目標となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水中マスク用の鼻部圧平衡装置を提供することである。本発明の鼻部圧平衡装置は2つのポケットを有する。型開時に、各ポケットの底部領域に連続する屈曲部(即ち、逆向きに折れ曲がるか屈曲した形状)を予め成形しておくことで、ポケットの底部領域に内側に向かう力を加えて伸ばし、変形させられるようにする。これにより、ポケットの深さを使用者の顔部に向かって一定の距離だけ延ばし、鼻翼にいっそう近付けることが可能となる。従って、鼻部の圧平衡操作を行う必要がある場合、使用者は、2本の指を当該2つのポケット内に伸入させ、当該2つのポケットの底部領域を内側に向かって押し動かすことでポケットの深さを深くし、使用者の鼻翼の付け根部に向かって延伸させる。これにより、使用者の指で鼻孔の外側全体を容易に覆うことができ、鼻をつまむ動作が確実となる。鼻部の圧平衡操作が完了した場合には、使用者が指を緩めて引き戻すだけで、当該2つのポケットは、軟質且つ弾性という材料の性質と、連続する屈曲部の構造特性を利用して、自動的に外側に向かって元の延伸していない(即ち、予め成形された)ときの形状及び離れた位置に戻る。これにより、使用者に不適切に接触するとの不快感をもたらすことがなくなる。上記より、本発明は、水中マスクへの鼻部圧平衡機構の追加を実現可能である。且つ、本発明の鼻部圧平衡装置の設計は、いずれの形式の水中マスクにも適用され、鼻をつまんで鼻孔を閉じるという圧平衡準備動作を確実に達成可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、水中マスク用の鼻部圧平衡装置を開示する。当該鼻部圧平衡装置は、開口と当該開口に対応する底部領域とをそれぞれ有する2つのポケットを含む。各前記底部領域は、複数の連続する屈曲部を有する第1形状をなすように予め成形されるとともに、使用者の鼻翼から離れた第1位置に存在する。前記使用者の2本の指が、それぞれ、前記2つのポケットの前記開口から内側に向かって前記底部領域に力を加えたとき、各当該底部領域は、伸ばされて第2形状に変形し、且つ、当該使用者の対向する前記鼻翼に近接する第2位置に存在可能となる。また、上記の加えられた力が解除されると、各前記底部領域は自動的に復元するか、外側への押力を受けて前記第1位置まで復帰し、前記第1形状に戻り得る。
【0008】
一例において、前記鼻部圧平衡装置は、更に、フレーム及び中隔部を含む。当該中隔部は、前記フレームの上部と下部の間に跨ることで、互いに独立した左右の前記2つのポケットを形成する。
【0009】
一例において、前記フレーム及び前記中隔部は、前記水中マスクのフレーム部又はレンズ部と一体的に成形される。
【0010】
一例において、前記2つのポケットは、前記水中マスクの防水密封スカートと一体的に成形される。
【0011】
一例において、前記フレーム、前記中隔部及び前記2つのポケットは、前記水中マスクの防水密封スカートと一体的に成形される。
【0012】
一例において、前記2つのポケットは軟質材料で作製される。当該軟質材料は、ショアA硬度10~90を有し、且つ、シリコーンゴム、熱可塑性ゴム、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、或いはそれらの組み合わせから選択される。
【0013】
一例において、前記軟質材料はショアA硬度70~90を有する。
【0014】
一例において、前記連続する屈曲部には少なくとも2つの隣り合う側壁が形成されており、これらは、互いに平行であるか、90度未満の夾角を有している。
【0015】
一例において、各前記連続する屈曲部の厚さは、0.3ミリ(mm)から4ミリ(mm)の間である。
【0016】
一例において、各前記連続する屈曲部の高さは、2ミリ(mm)から18ミリ(mm)の間である。
【0017】
一例において、前記水中マスクはシュノーケルマスクである。当該シュノーケルマスクは、本体と、当該本体とは分離されるマウスピース式のシュノーケルを有する。且つ、前記鼻部圧平衡装置は、前記本体のフレーム部、レンズ部及び防水密封スカートのうちの少なくとも1つにより規定される鼻室に設けられる。
【0018】
一例において、前記水中マスクは呼吸を可能とするマスクである。当該呼吸を可能とするマスクは、シュノーケル、本体及び三方コネクタを有する。前記本体は前記使用者の目及び鼻を覆う。前記シュノーケル及び前記三方コネクタは、前記本体の上部及び下部にそれぞれ設けられて、前記本体の内部との間で流体を通過可能とする。
【0019】
一例において、前記三方コネクタは、互いに連通する鼻連通部、排水弁部及びマウスピース部を有する。前記鼻部圧平衡装置は前記本体に規定される鼻室に設けられる。且つ、前記三方コネクタは、前記鼻連通部及び前記鼻室を通じて前記本体との間で流体を通過させる。
【0020】
一例において、前記水中マスクはフルフェイス式の呼吸を可能とするマスクである。当該フルフェイス式の呼吸を可能とするマスクは、本体及び当該本体と連通するシュノーケルを有する。前記本体は前記使用者の目、鼻及び口を覆う。且つ、前記鼻部圧平衡装置は前記本体に規定される口鼻室に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、本発明の一実施例における水中マスク用の鼻部圧平衡装置の正面図である。
図1B図1Bは、図1Aの背面図である。
図1C図1Cは、図1Aの横断面図であり、鼻部圧平衡装置に予め成形された2つのポケットの底部領域における複数の連続する屈曲部を示している。
図2A図2Aは、本発明の鼻部圧平衡装置がマスクに取り付けられた場合の概略斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aの断面図であり、図2Aのマスクと使用者の顔部との関係を示している。
図2C図2Cは、図2Aの別の断面図であり、使用者の指が鼻部圧平衡装置に対し内側に向かって力を加えたときの状態を示している。
図2D図2Dは、図2Aの別の断面図であり、使用者が指の力を緩めたときに、鼻部圧平衡装置が元の位置に戻った状態を示している。
図3A図3Aは、本発明の鼻部圧平衡装置における連続する屈曲部の態様の概略断面図である。
図3B図3Bは、本発明の鼻部圧平衡装置における連続する屈曲部の異なる態様の概略断面図である。
図3C図3Cは、本発明の鼻部圧平衡装置における連続する屈曲部の異なる態様の概略断面図である。
図3D図3Dは、本発明の鼻部圧平衡装置における連続する屈曲部の異なる態様の概略断面図である。
図3E図3Eは、本発明の鼻部圧平衡装置における連続する屈曲部の異なる態様の概略断面図である。
図4A図4Aは、本発明の一実施例における前方の概略斜視図であり、鼻部圧平衡装置がシュノーケルマスクに取り付けられた場合を示している。
図4B図4Bは、本発明の一実施例における後方の概略斜視図であり、鼻部圧平衡装置がシュノーケルマスクに取り付けられた場合を示している。
図5A図5Aは、本発明の別の実施例における前方の概略斜視図であり、三方コネクタを有する呼吸を可能とするマスクに鼻部圧平衡装置が取り付けられた場合を示している。
図5B図5Bは、本発明の別の実施例における後方の概略斜視図であり、三方コネクタを有する呼吸を可能とするマスクに鼻部圧平衡装置が取り付けられた場合を示している。
図6A図6Aは、本発明の更なる実施例における前方の概略斜視図であり、鼻部圧平衡装置がフルフェイス式の呼吸を可能とするマスクに取り付けられた場合を示している。
図6B図6Bは、本発明の更なる実施例における後方の概略斜視図であり、鼻部圧平衡装置がフルフェイス式の呼吸を可能とするマスクに取り付けられた場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、実施例を通じて本発明の内容について説明するが、本発明の実施例は、実施例に記載するいずれかの特定の環境、応用又は特殊な形態でのみ本発明を実施可能である旨を制限するものではない。従って、実施例の説明は、本発明について詳述することを目的としているにすぎず、本発明を制限するものではない。説明すべき点として、以下の実施例及び図面では、本発明に直接関係しない部材を省略しており、図示していない。且つ、図中の各部材間のサイズの関係は理解を容易とするためのものにすぎず、実際の比率を制限するためのものではない。
【0023】
本発明の一実施例を図1A図1C及び図2A図2Dに示す。図1A及び図1Bは、それぞれ、本発明の鼻部圧平衡装置1の正面図及び背面図を示している。図1C図1Aの横断面図である。また、図2A図2Dは、本発明の鼻部圧平衡装置1の使用過程における異なる段階の概略図である。
【0024】
水中マスクM0を装着した使用者が鼻をつまんで鼻孔を閉じるという圧平衡準備動作を実施できるよう、鼻部圧平衡装置1は、いかなる形式の水中マスクM0にも適用可能である(例えば、シュノーケルマスク、三方コネクタを有する呼吸を可能とするマスク、或いはフルフェイス式の呼吸を可能とするマスク。これらについては後に更に説明する)。
【0025】
鼻部圧平衡装置1は、2つのポケットP1、P2を含む。各ポケットP1、P2は、開口11と、開口11に対応する底部領域12を有する。ポケットP1、P2は軟質材料で作製してもよい。例えば、軟質材料は、ショアA硬度10~90を有してもよく、且つ、シリコーンゴム(silicone rubber)、熱可塑性ゴム(thermoplastic rubber,TPR)(例えば、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer,TPE))、熱可塑性ポリウレタン(polyurethane,TPU)、ポリ塩化ビニル(polyvinylchloride,PVC)、或いはそれらの組み合わせから選択してもよい。
【0026】
各底部領域12は、複数の連続する屈曲部121を有する第1形状S1をなすように予め成形される(例えば、射出成形によって、逆向きに折れ曲がるか屈曲した形状をなすように予め作製される)。図2A及び図2Bに示すように、底部領域12は、力を受けていないときには使用者URの鼻翼NWから離れた第1位置FPに存在する。底部領域12は、第1位置FPに存在するときには、実質的に使用者URの顔部には接触し得ないため、顔部を摩擦するとの不快感をもたらすことはない。
【0027】
圧平衡操作を行いたい場合には、図2Cに示すように、使用者URは、2本の指をそれぞれ2つのポケットP1、P2の開口11から深く挿し込んで、内側に向かって底部領域12に力を加えればよい。指で内側に向かって力を加えることで、底部領域12は伸ばされて変形し、第2形状S2をなし得る(つまり、上記の連続する屈曲部121が広がる)。このとき、底部領域12は、使用者URの対向する鼻翼NWに近接する第2位置SPに存在する。底部領域12が第2位置SPに存在するときには、使用者URの指によって、底部領域12が鼻孔の外側全体を覆うことが可能となる。これにより、鼻をつまむ動作が確実となって、圧平衡操作が行われる。
【0028】
使用者URが力を解除すると、図2Dに示すように、各底部領域12は自動的に復元するか、外側への押力を受けて第1位置FPまで復帰し、第1形状S1に戻り得る。理想的には、底部領域12は、自動的に第1形状S1に戻って第1位置FPまで復帰可能となる。ただし、実際に使用する際に、環境的な変数(大きすぎる水圧や、長期使用によるポケットP1、P2の弾性疲労)に起因して、底部領域12が自動復帰機能を達成し得ない場合には、使用者が水中マスクM0を顔部に向かって押圧してもよい。このとき、伸びた状態のポケットP1、P2が、使用者の顔部の鼻脇や頬骨の存在する近傍領域に衝突又は当接することで外側に向かう反作用力が発生し、第1位置FPへの底部領域12の復帰を補助する。
【0029】
鼻部圧平衡装置1は、フレーム1R及び中隔部1Pを含み得る。中隔部1Pは、フレーム1Rの上部1RUと下部1RLの間に跨ることで、互いに独立した左右の2つのポケットP1、P2を形成する。フレーム1R及び中隔部1Pは、支持部材として補佐するよう、硬質材料を用いて作製してもよい。また、鼻部圧平衡装置1全体(フレーム1R、中隔部1P及び2つのポケットP1、P2)は、ショアA硬度70~90を有する軟質材料を選択的に用いて作製してもよい。これにより、相当強度の支持力を付与することで、水中での圧力を受けて陥没するとの事態を回避する。
【0030】
理解し得るように、フレーム1R及び中隔部1Pは硬質材料を用いて作製可能なため、実際には、フレーム1R及び中隔部1Pを水中マスクM0のフレーム部又はレンズ部と一体的に成形してもよい。加えて、ポケットP1、P2は軟質材料で作製可能なため、実際には、ポケットP1、P2を水中マスクM0の防水密封スカートと一体的に成形してもよい(例えば、シリコーンゴム材料で一体的に成形する)。また、当然ながら、軟質材料の厚さ及びショアA硬度の設計により、実際には、フレーム1R、中隔部1P及びポケットP1、P2を水中マスクM0の防水密封スカートと一体的に成形してもよい。
【0031】
また、一実施例において、各連続する屈曲部121の厚さT1は、軽く力を加えることで伸びて第2形状S2に変形するとともに、力を解除したあとは第1形状S1に戻るとの目的が達成されるよう、0.3ミリ(mm)から4ミリ(mm)の間としてもよい。また、一実施例において、各連続する屈曲部121の高さH1は、2ミリ(mm)から18ミリ(mm)の間としてもよい。当該高さH1は、底部領域12が第2位置SPに存在する際に鼻孔の外側全体を覆えるようにするとの目的が達成されるよう、使用者の顔型の違いに基づき相応に設計可能である。
【0032】
本発明の鼻部圧平衡装置1における上記の連続する屈曲部121には複数の態様が存在し得る。これらの連続する屈曲部121には、少なくとも2つの隣り合う側壁SWが形成されていてもよい。図3Aにおいて、これらの連続する屈曲部121aの隣り合う2つの側壁SWは互いに平行となっている。また、図3Bにおいて、これらの連続する屈曲部121bの隣り合う2つの側壁SWは90度未満の夾角A1を有している。
【0033】
また、上記の連続する屈曲部121の数は設計パラメータに属し、本発明を制限するものではない。例えば、図3Cは、連続する屈曲部121cを多数有する場合の態様を図示している。一方、図3Dは、連続する屈曲部121dを少数有する場合の態様を図示している。そのほか、一実施例において、図3Eに示すように、これらの連続する屈曲部121eは、底部領域12に形成されて、中隔部1Pに近接する位置まで連なっている。換言すれば、上記の連続する屈曲部121の数及び位置は、実際の応用に基づき(例えば、各種の年齢、性別及び顔型の使用者を対象として)調整可能であり、これらの変更はいずれも本発明の保護の範囲に属する。
【0034】
本実施例において、鼻部圧平衡装置1は、フレーム1R、中隔部1P及びポケットP1、P2が一体的に成形されたモジュールである。しかし、その他の実施例において、フレーム1R、中隔部1P及びポケットP1、P2は互いに分離可能であり、組み立てることで成形される。この場合、ポケットP1、P2は交換可能式となるため、図3A図3Eに示す異なる態様のポケットP1、P2を提供可能となる。こうして、交換により異なる顔型の使用者に適合させることで、使用時の快適性が増す。
【0035】
また、鼻部圧平衡装置1の外形全体(特に、フレーム1R及び中隔部1P)は、水中マスクのタイプの違いに応じて変更してもよい。換言すれば、本発明の概念に基づき変更されるいずれの形状(例えば、水中マスクの防水密封スカートで規定される鼻バッグを鼻部圧平衡装置1の中隔部1Pとする)も制限されず、鼻部圧平衡装置1に2つのポケットP1、P2を規定可能であり、且つ各ポケットP1、P2の底部領域12が複数の連続する屈曲部121を有するように予め成形されていればよい。よって、鼻部圧平衡装置1の外形全体がどのように変更されようと、いずれも本発明の範囲に属する。また、上記2つのポケットは、使用者の2本の指がそれぞれ挿入される数を説明するためのものにすぎない。ただし、この数は制限されるべきではなく、例えば、互いに連通する2つのポケットを1つのポケット空間とみなす等のいずれの等価の方案も実施可能な方案に属する。
【0036】
図4A及び図4Bは、本発明の別の実施例を示しており、本発明の鼻部圧平衡装置1がシュノーケルマスクM1に適用される場合の概略図を図示している。シュノーケルマスクM1は、本体M11と、本体M11とは分離されるマウスピース式のシュノーケル(図示しない)を有する。本体M11は、フレーム部F1、レンズ部L1(1つのレンズ又は2つの分離型レンズを含み得る)及び防水密封スカートW1を含む。図4A及び図4Bにおいて、鼻部圧平衡装置1は、全体が防水密封スカートW1と一体的に成形されており、且つ、防水密封スカートW1により規定される鼻室N1に設けられている。加えて、本実施例において、防水密封スカートW1により規定される鼻バッグは、鼻部圧平衡装置1の中隔部1Pにもなる。しかし、その他の実施例において、鼻部圧平衡装置1は、シュノーケルマスクの本体のフレーム部又はレンズ部で規定される鼻室に設けられてもよい。
【0037】
図5A及び図5Bは、本発明の別の実施例を示しており、本発明の鼻部圧平衡装置1が呼吸を可能とするマスクM2に適用される場合を図示している。呼吸を可能とするマスクM2は、本体M21、シュノーケルM23及び三方コネクタM25を有する。本体M21は使用者の目及び鼻を覆う。本体M21は、フレーム部F2、レンズ部L2及び防水密封スカートW2を含み得る。シュノーケルM23及び三方コネクタM25は、本体M21の上部UP及び下部LPにそれぞれ設けられて、本体M21の内部との間で流体を通過可能とする。
【0038】
三方コネクタM25は、例えば、互いに連通する鼻連通部NP、排水弁部DP及びマウスピース部MPを有し得る。本実施例において、鼻部圧平衡装置1は、本体M21(例えば、防水密封スカートW2)に規定される鼻室N2に設けられる。且つ、三方コネクタM25は、鼻連通部NP及び鼻室N2を通じて本体M21との間で流体を通過させる。
【0039】
図6A及び図6Bは、本発明の別の実施例を示しており、本発明の鼻部圧平衡装置1がフルフェイス式の呼吸を可能とするマスクM3に適用される場合を図示している。フルフェイス式の呼吸を可能とするマスクM3は、本体M31及び本体M31と連通するシュノーケルM33を有する。本体M31は使用者の目、鼻及び口を覆う。本体M31は、フレーム部F3、レンズ部L3及び防水密封スカートW3を含み得る。鼻部圧平衡装置1は、全体が防水密封スカートW3と一体的に成形されており、且つ、本体M31(例えば、防水密封スカートW3)に規定される口鼻室N3に設けられている。
【0040】
以上で述べたように、本発明の鼻部圧平衡装置は、いかなる形式の水中マスクにも適用可能である。鼻部の圧平衡操作を行う必要がある場合、使用者は、2本の指を鼻部圧平衡装置の2つのポケットに伸入させて操作を行い、力を加えて連続する屈曲部を広げるだけで、鼻をつまむ動作を行うことができる。そして、使用者が指を緩めて引き戻すだけで、これらのポケットは、自動的又は手動で外側に向かって元の形状及び位置に戻る。よって、本発明の鼻部圧平衡装置によれば、水中での圧平衡操作が容易且つ実行可能となる。従って、各ポケットP1、P2により規定される開口11は、使用者の指を通過させて底部領域12に対する接触及び押圧を可能とし、変形させるために供される。なお、操作中に、指が底部領域12に触れてから開口11を通過するのか、開口11を通過してから底部領域12に触れるのかは問わない。換言すれば、力を受けて変形する以前に、ポケットP1、P2の底部領域12が開口11の外に突出しており、開口11と整列しているのか、開口11内に深く入り込んでいるのかは、いずれも可能な設計に属する。
【0041】
上記の実施例は、本発明の実施形態を例示し、且つ本発明の技術的特徴につき詳述するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を制限するものではない。本技術を熟知する者が容易に完成させ得る変更又は均等な調整は、いずれも本発明が主張する範囲に属する。よって、本発明の権利の保護範囲は特許請求の範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0042】
1 鼻部圧平衡装置
11 開口
12 底部領域
121 連続する屈曲部
121a 連続する屈曲部
121b 連続する屈曲部
121c 連続する屈曲部
121d 連続する屈曲部
121e 連続する屈曲部
P1 ポケット
P2 ポケット
1R フレーム
1RL 下部
1RU 上部
1P 中隔部
S1 第1形状
S2 第2形状
T1 厚さ
H1 高さ
A1 夾角
SW 側壁
M0 水中マスク
UR 使用者
NW 鼻翼
FP 第1位置
SP 第2位置
M1 シュノーケルマスク
M11 本体
F1 フレーム部
L1 レンズ部
W1 防水密封スカート
N1 鼻室
M2 呼吸を可能とするマスク
M21 本体
M23 シュノーケル
M25 三方コネクタ
F2 フレーム部
L2 レンズ部
W2 防水密封スカート
N2 鼻室
NP 鼻連通部
DP 排水弁部
MP マウスピース部
M3 フルフェイス式の呼吸を可能とするマスク
M31 本体
M33 シュノーケル
F3 フレーム部
L3 レンズ部
W3 防水密封スカート
N3 口鼻室
UP 上部
LP 下部

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
【外国語明細書】