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特開2024-3964圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003964
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
F02M25/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103346
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北永 裕章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144AA10
3G144BA28
3G144EA49
3G144GA13
(57)【要約】
【課題】複数個の吸着塔を備えた蒸発燃料処理装置における圧力スイング吸着装置において、吸着作用と脱離作用が交互に行われる一方の吸着塔と他方の吸着塔とを熱交換可能に隣接させた状態として配置し、一方の吸着塔と他方の吸着塔における吸着作用と脱離作用のガス流体の流体方向を同一方向とすることにより、熱交換を効果的に行わせて、蒸発燃料の回収効率を高める。
【解決手段】一方の吸着塔44と他方の吸着塔46とを隣接面接触させた構成として、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46における吸着、脱離作用時のガス流体の流動方向が同一方向となるような構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の吸着塔を備えて、ガス流体を前記吸着塔において吸着、脱離を交互に行うようにされた圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置であって、
前記複数個の吸着塔は、隣接する吸着塔が熱交換可能なようにガス流体の流動方向に面接触形態の配設構成とされており、
前記隣接配設される一方の吸着塔と他方の吸着塔は、一方の吸着塔において吸着、脱離作用の一方の作用が行われ、他方の吸着塔において吸着、脱離作用の他方の作用が交互に行われる処理構成とされており、
前記一方の吸着塔と他方の吸着塔における吸着、脱離作用のガス流体の流動方向が同一方向となるように構成されている、圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置であって、
前記吸着塔は前記ガス流体の流動方向と直交する方向の断面が多角形であり、
前記一方の吸着塔の断面の少なくとも2面が前記他方の吸着塔の断面の多角形の面と接触して配設されている、圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置であって、
前記一方の吸着塔と前記他方の吸着塔は、全体の配置構成が環状となるように複数個配設されている圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置に関する。詳細には、自動車等車両において、燃料タンクからの蒸発燃料等のガス流体をキャニスタにより吸着し、このキャニスタ内から脱離したガス流体を、別に設置した吸着塔において吸着、脱離作用を行い、燃料タンクに戻すようにした圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンを燃料とする自動車等車両には、環境問題等の観点から燃料タンク内で発生した蒸発燃料(ガス流体)を大気へ放出させることなく処理する蒸発燃料処理装置が備えられる。この蒸発燃料処理装置は、キャニスタを備え、燃料タンク内から発生した蒸発燃料をキャニスタ内に充填させた吸着材に吸着させることで一時的に捕集するようにしている。
【0003】
そして、従来の一般的な蒸発燃料処理装置では、キャニスタとエンジンの吸気管とをパージ通路を介して連通させて、エンジン運転時に吸気管で発生する吸気管負圧を利用してキャニスタに捕集した蒸発燃料を脱離させる構成をとっている。そして、脱離された蒸発燃料は、そのままパージ通路を通して吸気管へパージし、エンジンの燃焼に供する処理としている。
【0004】
しかし、近年では、燃料消費量や排気ガス排出量を低減させる等の観点から、「アイドリング停止システム」や「ハイブリッドシステム」を搭載した車両が増加している。このようなシステムを搭載した車両では、必然的に吸気管負圧を得る機会が減少する。したがって、このようなシステムを搭載した車両では、蒸発燃料の処理が十分に行われなく、困難となる。この問題は、過給機により過給を行う車両でも、キャニスタに捕集されたベーパを吸気通路へパージさせることが難しく、同様の問題がある。
【0005】
このため、近年では、蒸発燃料を吸気管へパージさせることなく処理する「パージレスエバポシステム」を採用した蒸発燃料処理装置が提案されている。その一つに、キャニスタの後に圧力スイング吸着装置を設けた蒸発燃料処理装置がある(下記特許文献1参照)
【0006】
圧力スイング吸着装置は、複数の吸着塔を備え、キャニスタ内から脱離させた蒸発燃料のガス流体を、各吸着塔において交互に吸着・脱離する作用を行い、ガス流体を燃料タンクに戻すようにする装置である。
【0007】
そして、例えば、下記特許文献1の図10及び図11に示される二塔式圧力スイング吸着装置によれば、蒸発燃料のガス流体の処理効率を向上させることができる。すなわち、二塔式圧力スイング吸着装置の吸着塔にも蒸発燃料を吸着させることができるので、蒸発燃料の回収効率を高めながら蒸発燃料の大気放出を確実に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-21505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の圧力スイング吸着装置に備えられる吸着塔は、内部に吸着材が充填されており、吸着作用と脱離作用が交互に行われるようになっている。吸着材は、温度が低いほど吸着容量が多く、温度が高いほど吸着容量が低くなる特性を有する。したがって、蒸発燃料を脱離させる脱離作用の場合には、吸着材の温度は高い方が好ましい。また、吸着材に蒸発燃料を吸着させる吸着作用の場合は、吸着材の温度は低い方が好ましい。
【0010】
しかし、吸着材に蒸発燃料が吸着される場合は、その吸着熱(凝縮熱)によって吸着材は加熱される。逆に、吸着材から蒸発燃料が脱離される場合は、その脱離熱(気化熱)によって吸着材は冷却される。そのため、通常の状態のままでは、吸着、脱離作用が効果的に行われにくい状態にある。
【0011】
このため、上述した二塔式圧力スイング吸着装置では、2個の吸着塔を熱交換可能なように隣接して配設させて、吸着作用と脱離作用により生じる熱を交換する方策が提案されている。図12はその配設構成を示す(上記特許文献1の図14参照)。
【0012】
図12に示される二塔式圧力スイング吸着装置112は、図示状態では、左側の一方の吸着塔144が吸着作用状態となっており、右側の他方の吸着塔146が脱離作用状態となっている。一方の吸着塔144は、下端に流体ガスの入口154が設定されており、上端に流体ガスの出口156が設定されている。他方の吸着塔146は、逆に、上端に流体ガスの入口155が設定されており、下端に流体ガスの出口157が設定されている。このため、吸着作用と脱離作用における流体ガスの流れ方向は、逆方向となっている。図12の図示状態では、左側の一方の吸着塔144における吸着作用のガス流体の流れ方向はXで示す上方向の流れとなっている。右側の他方の吸着塔146における脱離作用のガス流体の流れ方向はYで示す下方向の流れとなっており、逆方向となっている。
【0013】
ところで、上記における一方の吸着塔144における吸着作用と、他方の吸着塔146における脱離作用で生じる加熱、冷却等の熱作用は、各吸着塔144、146における入口154、155の近傍において顕著に行われる。その状態が図12に「暖まった領域W」と、「冷えている領域C」として示されている。すなわち、吸着作用が行われる一方の吸着塔144では、入口154が設定される下端側の位置に吸着作用により生じる「暖まった領域W」が生じる。また、脱離作用が行われる他方の吸着塔146では、入口155が設定される上端側の位置に脱離作用により生じる「冷えている領域C」が生じる。
【0014】
しかし、一方の吸着塔144の吸着作用により生じる「暖まった領域W」の範囲と、他方の吸着塔146の脱離作用により生じる「冷えている領域C」の範囲は、それぞれのガス流体の流れ方向において、異なった範囲の位置となっている。このため、2個の吸着塔144,146を熱交換可能なように隣接して配設させたにもかかわらず、熱交換を確実に行うことができない状態となっている。したがって、図12に示される二塔式圧力スイング吸着装置112では、蒸発燃料の回収効率を高めながら蒸発燃料の大気放出を確実に抑制することが十分にできないという不具合がある。
【0015】
而して、本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、上述した点に鑑みて創案されたものであって、複数個の吸着塔を備えた蒸発燃料処理装置における圧力スイング吸着装置において、吸着作用と脱離作用が交互に行われる一方の吸着塔と他方の吸着塔とを熱交換可能に隣接させた状態として配置し、一方の吸着塔と他方の吸着塔における吸着作用と脱離作用のガス流体の流体方向を同一方向とすることにより、熱交換を効果的に行わせて、蒸発燃料の回収効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本明細書に開示の圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置は、次の手段をとる。
【0017】
第1の手段は、複数個の吸着塔を備えて、ガス流体を前記吸着塔において吸着、脱離を交互に行うようにされた圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置であって、前記複数個の吸着塔は、隣接する吸着塔が熱交換可能なようにガス流体の流動方向に面接触形態の配設構成とされており、前記隣接配設される一方の吸着塔と他方の吸着塔は、一方の吸着塔において吸着、脱離作用の一方の作用が行われ、他方の吸着塔において吸着、脱離作用の他方の作用が交互に行われる処理構成とされており、前記一方の吸着塔と他方の吸着塔における吸着、脱離作用のガス流体の流動方向が同一方向となるように構成されている、圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置である。
【0018】
上記第1の手段によれば、熱交換可能に隣接して配設され、吸着作用と脱離作用が交互に行われる複数の吸着塔におけるガス流体の流動方向が同一方向とされる。これにより、吸着作用が行われる吸着塔により生じる「暖まった領域」の主たる範囲と、脱離作用が行われる吸着塔により生じる「冷えている領域」の主たる範囲は、共に各吸着塔における入口の近傍位置であり、ガス流体の流動方向で見て同じ位置となる。したがって、「暖まった領域」と「冷えている領域」の熱交換作用が良好に行われる。その結果、吸着作用が行われる吸着塔の吸着作用が良好に行われ、脱離作用が行われる吸着塔における脱離作用も良好に行われる。そのため、圧力スイング吸着装置による蒸発燃料の回収効率を高めることができる。
【0019】
第2の手段は、前述した第1の手段における圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置であって、前記吸着塔は前記ガス流体の流動方向と直交する方向の断面が多角形であり、前記一方の吸着塔の断面の少なくとも2面が前記他方の吸着塔の断面の多角形の面と接触して配設されている、圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置である。
【0020】
上記の第2の手段によれば、隣接し配設される一方の吸着塔と他方の吸着塔における熱交換する接触面積が多くなり、上述した第1の手段による作用効果がより顕著に行われる。
【0021】
第3の手段は、前述した第2の手段の圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置であって、前記一方の吸着塔と前記他方の吸着塔は、全体の配置構成が環状となるように複数個配設されている圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置である。
【0022】
上記の第3の手段によれば、多数の吸着塔をコンパクトに配置できる。
【発明の効果】
【0023】
本明細書に開示の圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置によれば、複数個の吸着塔を備えて、吸着作用と脱離作用が交互に行われる一方の吸着塔と他方の吸着塔とを熱交換可能に隣接させた状態として配置し、一方の吸着塔と他方の吸着塔における吸着作用と脱離作用のガス流体の流体方向を同一方向とすることにより、熱交換を効果的に行わせて、蒸発燃料の回収効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置の全体構成を示す構成図である。
図2図1に備えられる圧力スイング吸着装置の詳細構成を示し、吸着塔が二塔式の場合の吸着、脱離作用の一例状態を示す構成図である。
図3図2に示す二塔式の圧力スイング吸着装置における吸着、脱離作用の他例状態を示す構成図である。
図4】二塔式圧力スイング吸着装置における吸着塔の吸着、脱離作用状態を示す説明図である。
図5図2における隣接して配設される吸着塔のV-V線断面の断面形状図である。
図6図5に示す吸着塔の断面形状の一つの変形例を示す断面形状図である。
図7図5に示す吸着塔の断面形状の他の変形例を示す断面形状図である。
図8】圧力スイング吸着装置の吸着塔を四塔構成とした場合の斜視図である。
図9図8に示される四塔構成の吸着塔において、吸着塔の上方位置に配設される三方弁の配設状態の一例を示す構成図である。
図10図8に示される四塔構成の吸着塔において、吸着塔の下方位置に配設される三方弁の配設状態の一例を示す構成図である。
図11】圧力スイング吸着装置における複数個の吸着塔を円弧形状に配設して構成する場合の一例を示す斜視図である。
図12】上掲の特許文献1の図14に示される二塔式圧力スイング吸着装置における吸着塔の構成と作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本明細書に開示の技術である圧力スイング吸着装置を備えた蒸発燃料処理装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の蒸発燃料処理装置は、自動車等車両等の燃料供給装置に備えられる蒸発燃料処理装置である。なお、図の説明における左右、上下、前後等の方向表示は、当該図における方向を示すものであり、特に指定しない限り、自動車等車両に搭載した状態の方向を示すものではない。
【0026】
〔蒸発燃料処理装置10の全体構成〕
先ず、本実施形態の蒸発燃料処理装置10の全体構成を説明する。図1は圧力スイング吸着装置12を備えた蒸発燃料処理装置10の全体構成を示す構成図である。蒸発燃料処理装置10は燃料タンク14内で発生した蒸発燃料(HC)を吸着するキャニスタ16と、キャニスタ16内に吸着された蒸発燃料を脱離させる真空ポンプ18とを備える。キャニスタ16の内部には、蒸発燃料を選択的に吸着し空気は透過させる活性炭等の吸着材24が充填されている。なお、本明細書の開示技術においてはガス流体と称するのは、本実施形態における蒸発燃料である。
【0027】
燃料タンク14内にはガソリン燃料Fが貯留されており、当該ガソリン燃料Fは、燃料タンク14に配設された燃料ポンプ26によって燃料供給通路28を通して図外のエンジンに供給される。そして、このガソリン燃料Fによって燃料タンク14内には蒸発燃料のガス流体が発生する。
【0028】
燃料タンク14とキャニスタ16とはベーパ通路20によって連通されており、当該ベーパ通路20を通じて燃料タンク14内で発生した蒸発燃料がキャニスタ16内に導かれる。ベーパ通路20上には、ベーパ通路弁22が設けられており、ベーパ通路20を連通、非連通状態に切り替える。そして、連通状態において燃料タンク14の蒸発燃料がキャニスタに導かれる。
【0029】
ベーパ通路弁22は電磁弁であり、電子制御装置(ECU)30によって開閉タイミングが制御される。ECU30は、中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、バックアップRAM、外部入力回路及び外部出力回路などを備える。ROMは、ベーパ回収制御等に関する所定の制御プログラムを予め記憶する。RAMは、CPUの演算結果を一時記憶する。CPUが、入力回路を介して入力される信号に基づき、ベーパ通路弁22等の各制御機器を制御する。
【0030】
キャニスタ16に吸着された蒸発燃料は、キャニスタ16に接続されたガス回路32に設けられた真空ポンプ18により吸引されて、後で詳細構成を説明する圧力スイング吸着装置12に供給される。真空ポンプ18は電動ポンプであり、その駆動、停止タイミングはECU30によって制御される。
【0031】
また、キャニスタ16には大気通路34が設定されており、この大気通路34上には、当該大気通路34の連通、非連通状態を切り替えるように開閉される大気通路弁38が設けられている。大気通路弁38は電磁弁であり、ECU30によって開閉タイミングが制御される。なお、この大気通路34には、この大気通路34から分岐した分岐通路40にキャニスタ16内の圧力を一定の圧力に維持する第1の圧力調整弁36が設けられている。この第1の圧力調整弁36はチェック弁であり、キャニスタ16内が所定圧力以下(例えば、-70kPa以下)となった場合に大気側からキャニスタ16側への気体流入のみを許す作用をなす。この第1の圧力調整弁36もECU30によって制御される。第1の圧力調整弁36の設定圧力を適宜調整することにより、キャニスタ16内において蒸発燃料が脱離する時の負圧の程度が調整される。
【0032】
〔キャニスタ16の作用〕
次に、キャニスタ16の作用を説明する。先ず、車両停止時(イグニッションスイッチやスタータのOFF時)は、ベーパ通路弁22及び大気通路弁38はECU30により制御されて、開弁状態とされる。これにより、車両停止時に燃料タンク1内で発生した蒸発燃料は、ベーパ通路20を通してキャニスタ16内へ導入され、吸着材24に吸着捕集される。空気はそのままキャニスタ16を透過し、大気通路弁38を介して大気中に放出される。これにより、燃料タンク14の内圧が大きく上昇することが避けられる。
【0033】
次に、車両運転時(イグニッションスイッチやスタータのON状態)では、ECU30によってベーパ通路弁22及び大気通路弁38は閉弁状態にされると共に、真空ポンプ18が駆動される。すると、キャニスタ16内のガス流体が真空ポンプ18によって吸引される。これにより、キャニスタ16内に吸着されていた蒸発燃料が脱離されて、ガス回路32を通して後述の圧力スイング吸着装置12に供給される。このとき、ベーパ通路弁22及び大気通路弁38はECU30により制御されて開弁されており、キャニスタ16内の圧力は徐々に低下(減圧)していく。そして、キャニスタ16内がある程度負圧になると、第1の圧力調整弁36を介して新気(大気)が導入される。このように、真空ポンプ18によってキャニスタ16内から蒸発燃料を脱離させる際には、キャニスタ16内が負圧状態に維持されながら、第1の圧力調整弁36を介して新気が導入されて、蒸発燃料の脱離効率を向上させるようにしている。
【0034】
本実施形態では、真空ポンプ18は、ECU30により制御されて、所定時間経過後に停止される。これと同時にベーパ通路弁22及び大気通路弁38も開弁される。車両運転中は、真空ポンプ18の駆動・停止、及びこれに伴うベーパ通路弁22及び大気通路弁38の開閉が繰り返されるように制御することもできる。エンジンが停止されると、真空ポンプ18が停止されると共にベーパ通路弁22及び大気通路弁38が開弁される。
【0035】
なお、図1に示す蒸発燃料処理装置には、燃料タンク14内の圧力を検知ずる圧力センサ80が設けられており、圧力センサ80からの検知信号は、ECU30に入力されて、各種機器の制御に用いられる。
【0036】
〔圧力スイング吸着装置12〕
次に、本実施形態が特徴とする圧力スイング吸着装置12について説明する。圧力スイング吸着装置12はキャニスタ16から脱離された蒸発燃料のガス流体を効率よく燃料タンク14に戻す作用をなす装置である。本実施形態の圧力スイング吸着装置12は、図2及び図3に示される。図2及び図3に示される圧力スイング吸着装置12は吸着・脱離作用を行う吸着塔42が二塔式の形態の場合である。すなわち、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46を備える形態である。図2図3の違いは、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46における吸着・脱離作用が異なる場合を示している。なお、図2及び図3では、二塔の吸着塔42はガス流体の流れが横方向となる配置として図示されているが、縦方向となる配置でもよい。
【0037】
先ず、図2に基づいて、本実施形態の圧力スイング吸着装置12を説明する。吸着塔42は一方の吸着塔44と他方の吸着塔46の2塔から構成される。一方の吸着塔44と他方の吸着塔46内には、ガス流体を吸着・脱離作用をなす吸着材24が充填されている。この吸着材24は、キャニスタ16内に充填される吸着材24と同様の活性炭等である。
【0038】
〔吸着塔42の断面形状〕
一方の吸着塔44と他方の吸着塔46の蒸発燃料のガス流体の流れ方向に直交する断面形状は多角形形状とされる。図2の実施形態における一方の吸着塔44と他方の吸着塔46の多角形形状は図5に示される4角形とされている。そして、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46はガス流体の流れ方向に隣接して配設されており、4角形の一面48は面接触形態として配置されている。これにより、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46は熱交換が良好に行われる構成とされている。なお、面接触形態として配設される面の材質は、熱伝導の良い材質であるのが好ましい。
【0039】
〔吸着塔42の他の断面形状〕
図6及び図7は吸着塔42の他の断面形状例を示す。図6は一方の吸着塔44と他方の吸着塔46ともに三角形状であり、その一面50が面接触して配置された形態例である。図7は一方の吸着塔44と他方の吸着塔46ともに半円形状とされた形状であり、半円形状の直線状面52が面接触して配置された形態例である。なお、図5から図7に示す断面形状を組み合わせて構成することもできる。すなわち、一方の吸着塔44の断面形状を図5から図7に示すいずれかの断面形状とし、他方の吸着塔46の断面形状を図5から図7に示すいずれかの他の断面形状として組合せ構成とすることもできる。
【0040】
〔吸着塔42へのガス流体の流入・流出〕
吸着塔42を構成する一方の吸着塔44と他方の吸着塔46へのガス流体の流入・流出構成を次に説明する。本実施形態では、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46とも、図2で見て、左側の一端側面に入口孔54、55が設定されており、右側の他端側面に出口孔56、57が設定されている。これにより、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46とも、入口孔54、55から出口孔56、57に向けてガス流体は流動する流れ方向となる。
【0041】
一方の吸着塔44と他方の吸着塔46へのガス流体の流入・流出は、入口孔54、55側に設定される2個の三方弁58、60と、出口孔56、57側に設定される2個の三方弁62、64により制御される。入口孔54、55側には第1の三方弁58と第2の三方弁60が設定され、出口孔56、57側には第3の三方弁62と第4の三方弁64が設定される。
【0042】
一方の吸着塔44の入口孔54には第1の流入通路66が設定されており、他方の吸着塔46の入口孔55には第2の流入通路68が設定されている。また、一方の吸着塔44の出口孔56には第1の流出通路70が設定されており、他方の吸着塔46の出口孔57には第2の流出通路72が設定されている。
【0043】
〔第1の三方弁58〕
第1の三方弁58は、3個の弁58a、58b、58cを備える。弁58aは図1に示すガス回路32と連通されており、キャニスタ16から脱離した蒸発燃料のガス流体が供給されてくる。弁58bは第1の流入通路66と連通結合されており、一方の吸着塔44の入口孔54とも連通状態にある。弁58cは第2の流入通路68と連通結合されており、他方の吸着塔46の入口孔55とも連通状態にある。第1の三方弁58の弁58b、58cは、ECU30により一方が開弁で他方が閉弁状態に制御される。これにより、弁58aは弁58b、58cの一方のみと連通状態とされる。図2の図示状態では弁58aと弁58bが連通状態とされており、図3の図示状態では弁58aと弁58cが連通状態とされている。
【0044】
〔第2の三方弁60〕
第2の三方弁60も、3個の弁60a、60b、60cを備える。弁60aには、圧力スイング吸着装置12に新気を導入する吸気通路74が連結される。吸気通路74にECU30(図1参照)によって開閉制御される電磁弁の吸気通路弁75が設定されており、弁60aには新気が導入される。弁60bは、第1の流入通路66と連通結合されており、一方の吸着塔44の入口孔54とも連通状態にある。弁60cは第2の流入通路68と連通結合されており、他方の吸着塔46の入口孔55とも連通状態にある。弁60b、60cは、ECU30の制御により一方が開弁で他方が閉弁状態とされる。すなわち、弁58aは弁58b、58cの一方のみと連通状態とされる。図2の図示状態では弁60aと弁60cが連通状態とされており、図3の図示状態では弁60aと弁60bが連通状態とされている。
【0045】
なお、第1の流入通路66と第2の流入通路68に対する第1の三方弁58及び第2の三方弁60との連通状態は、いずれか一方のみと連通状態となるようにECU30(図1参照)により制御される。図2の図示状態では、第1の流入通路66には第1の三方弁58のみが連通状態とされ、第2の流入通路68には第2の三方弁60のみが連通状態とされている。
【0046】
〔第3の三方弁62〕
次に、吸着塔42の流出側に配設される第3の三方弁62及び第4の三方弁64について説明する。第3の三方弁62も、3個の弁62a、62b、62cを備える。弁62aは排気通路76に連通されており、排気通路76には第2の圧力調整弁77が設定されている。この第2の圧力調整弁77が設定された排気通路76により、所定圧力(例えば150kPa)以上の圧力が作用した時に、圧力スイング吸着装置12から大気側へのガス流出のみを許すようになっている。
【0047】
第3の三方弁62の弁62bは、第1の流出通路70と連通結合されており、一方の吸着塔44の出口孔56とも連通状態にある。弁62cは第2の流出通路72と連通結合されており、他方の吸着塔46の出口孔57とも連通状態にある。第3の三方弁62の弁62b、62cは、ECU30により一方が開弁で他方が閉弁状態に制御される。これにより、弁62aは弁58b、58cの一方のみと連通状態とされる。図2の図示状態では弁62aと弁62bが連通状態とされており、図3の図示状態では弁62aと弁62cが連通状態とされている。
【0048】
〔第4の三方弁64〕
第4の三方弁64も、3個の弁64a、64b、64cを備える。弁64aには、圧力スイング吸着装置12から燃料タンク14に蒸発燃料のガス流体を回収するガス回収通路78が連通されている。ガス回収通路78には減圧ポンプ79が設定されており、圧力スイング吸着装置12から燃料タンク14へのガス流体の戻しを確実に行うようにしている。
【0049】
第4の三方弁64の弁64bは、第1の流出通路70と連通結合されており、一方の吸着塔44の出口孔56とも連通状態にある。弁64cは第2の流出通路72と連通結合されており、他方の吸着塔46の出口孔57とも連通状態にある。弁64b、64cは、ECU30の制御により一方が開弁で他方が閉弁状態とされる。すなわち、弁64aは弁64b、64cの一方のみと連通状態とされる。図2の図示状態では弁64aと弁64cが連通状態とされており、図3の図示状態では弁64aと弁64bが連通状態とされている。
【0050】
〔圧力スイング吸着装置12の吸着・脱離作用〕
次に、上記構成からなる圧力スイング吸着装置12の作用を説明する。図2及び図3に示される圧力スイング吸着装置12の第1から第4の各三方弁58、60、62、64の各弁の連通状態はECU30(図1参照)により制御される。そして、ECU30(図1参照)により、吸着塔42の入口側に設定される第1の三方弁58と第2の三方弁60の各弁の連通状態を図2に示す連通状態とすると共に、出口側に設定される第3の三方弁62と第4の三方弁64の各弁の連通状態を図2の状態とすると、一方の吸着塔44において吸着作用がなされ、他方の吸着塔46において脱離作用がなされる。
【0051】
図2に示す状態の吸着・脱離作用〕
図2に示される各弁の連通制御状態においては、入口側の第1の三方弁58は、弁58aと弁58bが連通状態とされて、ガス回路32のガス流体が、第1の流入通路66を通じて、一方の吸着塔44に入口孔54から流入する。一方、出口側の第3の三方弁62は、弁62aと弁62bが連通状態とされて、排気通路76に、一方の吸着塔44内のガス流体が、出口孔56から第1の流出通路70を通じて排出可能とされる。これにより、一方の吸着塔44は、当該吸着塔44内の吸着材24により吸着作用がなされる。この一方の吸着塔44における吸着作用のガス流体の流れは図2にX方向の流れとして示される。そして、この際における吸着作用は高濃度状態に行われる。
【0052】
すなわち、排気通路76には第2の圧力調整弁77が設定されている。これにより、一方の吸着塔44における吸着作用は、一方の吸着塔44内の圧力が所定圧力(例えば150kPa)以上となったときに、大気側へガス流出を許容するようになっているので、吸着作用は所定の圧力状態で良好に行われる。すなわち、第2の圧力調整弁77により一方の吸着塔44内が一定の加圧状態に維持されることにより、蒸発燃料の吸着作用が高められ、吸着材24には高濃度で吸着される。
【0053】
次に、図2に示される各弁の連通制御状態においては、入口側の第2の三方弁60は、弁60aと弁60cが連通状態とされて、吸気通路74の新気が第2の流入通路68を通じて、他方の吸着塔46に入口孔55から流入する。一方、出口側の第4の三方弁64は、弁64aと弁64cが連通状態とされて、ガス回収通路78に他方の吸着塔46内のガス流体は、出口孔57から第2の流出通路72を通じて排出可能とされる。これにより、他方の吸着塔46は、吸着材24により吸着されていた蒸発燃料のガス流体の脱離作用がなされる。この他方の吸着塔46における脱離作用のガス流体の流れは図2にX方向の流れとして示される。
【0054】
上記の他方の吸着塔46における脱離作用において、吸気通路74には吸気通路弁75が設定されている。この吸気通路弁75はECU30(図1参照)により制御されて開閉制御され、吸着塔42において脱離作用がなされる状態において開弁状態とされる。そして、ガス回収通路78には減圧ポンプ79が設定されており、吸気通路72の新気の他方の吸着塔46への導入を促進し、脱離作用を積極的に行わせる。そして、他方の吸着塔46の脱離した蒸発燃料のガス流体がガス回収通路78を通じて燃料タンク14(図1参照)に戻される。この燃料タンク14(図1参照)へのガス流体の回収は、圧力スイング吸着装置12によって一旦蒸発燃料のガス流体を高濃度で吸着してから回収するので、蒸発燃料の液化が促進され、回収効率を向上して行われる。
【0055】
図3に示す状態の吸着・脱離作用〕
次に、ECU30(図1参照)により、第1から第4の各三方弁58、60、62、64の各弁の連通状態を切り替えて、図3に示す連通状態とすることにより、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46における吸着・脱離作用が切り替えられる。すなわち、図3の状態では、一方の吸着塔44において脱離作用がなされ、他方の吸着塔46において吸着作用がなされる。
【0056】
図3に示される各弁の連通制御状態においては、入口側の第1の三方弁58は、弁58aと弁58cが連通状態とされて、ガス回路32のガス流体が第2の流入通路68を通じて、他方の吸着塔46に入口孔55から流入する。他方、出口側の第3の三方弁62は、弁62aと弁62cが連通状態とされて、排気通路76に他方の吸着塔46内のガス流体は、出口孔57から第2の流出通路72を通じて排出可能とされる。これにより、他方の吸着塔46は内部に充填された吸着材24により吸着作用がなされる。この他方の吸着塔46における吸着作用のガス流体の流れは図3にX方向の流れとして示される。
【0057】
そして、図3に示される各弁の連通制御状態においては、入口側の第2の三方弁60は、弁60aと弁60bが連通状態とされて、吸気通路74の新気が第1の流入通路66を通じて、一方の吸着塔44に入口孔54から流入する。他方、出口側の第4の三方弁64は、弁64aと弁64bが連通状態とされて、ガス回収通路78に、一方の吸着塔44内のガス流体は、出口孔56から第1の流出通路70を通じて排出可能とされる。これにより、一方の吸着塔44は、内部に充填された吸着材24に吸着されていたガス流体の脱離作用がなされる。この一方の吸着塔44における脱離作用のガス流体の流れは図3にY方向の流れとして示される。
【0058】
なお、図3に示す吸着塔42における吸着・脱離作用においても、図2において説明した吸気通路弁75、第2の圧力調整弁77、減圧ポンプ79は同様の作用をなす。
【0059】
上記した実施形態における吸着作用と脱離作用は、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46において交互に行われる。すなわち、ECU30(図1参照)により第1から第4の各三方弁58、60、62、64を図2の状態と図3の状態に切り返し制御することにより、それぞれの吸着塔42において吸着作用と脱離作用が交互に行われる。
【0060】
上記により図2及び図3で説明した本実施形態の圧力スイング吸着装置12の吸着塔42において行われる吸着・脱離作用のガス流体の流れ方向は、同じ方向とされている。すなわち、図2及び図3においても、吸着作用時におけるガス流体の流れはX方向の流れであり、脱離作用時におけるガス流体の流れはY方向の流れである。図2及び図3で見て、X方向、Y方向の流れとも同じ右方向への流れである。
【0061】
〔本実施形態の作用効果〕
次に、本実施形態における作用効果を図4により説明する。なお、図2及び図3においては吸着塔42は縦方向配置として図示されているが、図4図12に示した従来の吸着塔との比較を容易とするために縦方向配置に置き換えて示した。そして、図2に示される吸着・脱離状態を示した。すなわち、図示左側の一方の吸着塔44において吸着作用がなされ、図示右側の他方の吸着塔46において脱離作用がなされる状態を示した。
【0062】
図4において、一方の吸着塔44における吸着作用時のガス流体の流れはX方向として示され、他方の吸着塔46における脱離作用時のガス流体の流れはY方向の流れとして示される。すなわち、図4の図示状態では、X方向及びY方向の流れとも、上向き方向の流れとして示されており、同じ方向の流れとなっている。したがって、図4の図示状態では、吸着塔42の下端の一端側がガス流体の流入側となっており、上端の他端側がガス流体の流出側となっている
【0063】
ところで、前述もしたように、吸着作用と脱離作用で生じる吸着材24における加熱、冷却等の熱作用は、吸着塔42内に充填された吸着材24に対するガス流体の流れ方向X、Yの初期段階で顕著に生じる。すなわち、一方の吸着塔44の入口孔54近傍の流れ状態、及び他方の吸着塔46の入口孔55近傍の流れ状態において熱作用が顕著に生じる。
【0064】
したがって、図4に示す一方の吸着塔44においては、吸着作用時に図4で見て下方範囲の吸着材24が、吸着作用における吸着熱(凝縮熱)によって加熱される。その範囲が図4に「暖まった領域W」として示される。また、他方の吸着塔46においては、脱離作用時に図4で見て下方範囲の吸着材が、脱離作用における脱離熱(気化熱)によって冷却される。その範囲が図4に「冷えている領域C」として示される。なお、図4におけるその他の範囲は「常温領域T」として示される。
【0065】
上記における一方の吸着塔44における「暖まった領域W」と他方の吸着塔46における「冷えている領域C」は、図4の上下方向の位置状態で見て同じ位置状態の範囲となっている。すなわち、同じ位置関係の範囲となっている。
【0066】
そして、本実施形態においては、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46は隣接して配置され、かつ、図5に示すように熱交換可能なようにガス流体の流動方向に面接状態で配置されている。これにより、図4に示す一方の吸着塔44における「暖まった領域W」と他方の吸着塔46における「冷えている領域C」の熱交換が効率的に行われる。この熱交換が効率的に行われる領域を、図4において、「冷暖による熱の授受領域K」として破線枠で示した。その結果、一方の吸着塔44における吸着材24は冷やされて、一方の吸着塔44の吸着材24による吸着作用は効率よく行われる。逆に、他方の吸着塔46における吸着材24は温められて、他方の吸着塔46における吸着材24からの蒸発燃料のガス流体の脱離作用も効率よく行われる。
【0067】
本実施形態によれば、上記のように、吸着作用と脱離作用を行う複数個の吸着塔42を熱交換可能に面接触形態として配置して、吸着作用時と脱離作用時のガス流体の流れを同一方向とすることにより、吸着作用と脱離作用の効率の向上を図ることができる。
【0068】
<他の実施形態>
本明細書に開示の技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0069】
先ず、上述した実施形態の圧力スイング吸着装置12は二塔式の吸着塔42であったが、それ以上の複数個の吸着塔42を設置した構成とすることも可能である。図8はその一例を示し、吸着塔42が四塔構成の場合である。図8の実施形態には図2及び図3に示した実施形態と対応する構成には同一の符号を付して示し、詳細説明を省略した。なお、図9図8に示される四塔構成の吸着塔42において、吸着塔42の上方位置の入口側に配設される三方弁の配設状態の一例を示し、図10は同様に四塔構成の吸着塔42において、吸着塔42の下方位置の出口側に配設される三方弁の配設状態の一例を示した。図9及び図10に示される三方弁についても、図2及び図3に示した実施形態と対応する構成には同一の符号を付して示し、詳細説明を省略した。
【0070】
次に、図11の実施形態は、複数個の吸着塔42を円弧形状に配した構成例の一例である。図11の例は、8個の吸着塔42を、一方の吸着塔44と他方の吸着塔46として交互に配置した構成例である。この構成例によればコンパクトに配置することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 蒸発燃料処理装置
12 圧力スイング吸着装置
14 燃料タンク
16 キャニスタ
18 真空ポンプ
20 ベーパ通路
22 ベーパ通路弁
24 吸着材
26 燃料ポンプ
28 燃料供給通路
30 ECU(電子制御装置)
32 ガス回路
34 大気通路
36 第1の圧力調整弁
38 大気通路弁
40 分岐通路
42 吸着塔
44 一方の吸着塔
46 他方の吸着塔
48 4角形の一面
50 三角形状の一面
52 半円形状の直線状面
54 入口孔(一方の吸着塔用の)
55 入口孔(他方の吸着塔用の)
56 出口孔(一方の吸着塔用の)
57 出口孔(他方の吸着塔用の)
58 第1の三方弁
60 第2の三方弁
62 第3の三方弁
64 第4の三方弁
66 第1の流入通路
68 第2の流入通路
70 第1の流出通路
72 第2の流出通路
74 吸気通路
75 吸気通路弁
76 排気通路
77 第2の圧力調整弁
78 ガス回収通路
79 減圧ポンプ
80 圧力センサ
F ガソリン燃料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12