(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039645
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】移送システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20240314BHJP
H05K 13/00 20060101ALI20240314BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H05K13/02 Z
H05K13/00 Z
B65G1/00 501C
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023146189
(22)【出願日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】10 2022 122 895.9
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】514076766
【氏名又は名称】エーエスエムピーティー・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ユスティンガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンツェント・プファイファー
【テーマコード(参考)】
3F022
5E353
【Fターム(参考)】
3F022AA08
3F022EE01
3F022KK01
3F022LL07
3F022NN12
5E353HH11
5E353HH51
5E353HH71
5E353NN18
(57)【要約】
【課題】フィーダ/カートリッジの自動供給を可能にするのに適した、セットアップ入替えおよび/または補充入替えを行う移送システムを提供する。
【解決手段】搬送車と機械の受け座との間で物品を移送するための移送システムは、搬送車に取り付けられた搬送車側位置決めドックと、係合アクチュエータと、少なくとも1つの物品を保管するための保管ユニットと、を備え、保管ユニットは搬送車に可動に取り付けられて、受け座に隣接するように適合された前面、搬送車側位置決め部材および機械側位置決め部材を備え、係合アクチュエータは、搬送車側位置決め部材が搬送車側位置決めドックと係合して保管ユニットを搬送車に対して位置決めする引込み位置と、機械側位置決め部材が受け座に近接した場所にある機械側位置決めドックと係合して保管ユニットを機械に対して位置決めすることができる移送位置と、の間で保管ユニットを移動させるように動作する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車と機械の受け座との間で物品を移送するための移送システムであって、
係合アクチュエータと、
使用する少なくとも1つの物品を保管する保管ユニットであって、使用する前記搬送車に移動可能に取り付けられ、使用する前記受け座に隣接するように適合された前面と機械側位置決め部材とを含む保管ユニットと、
を備え、
前記保管ユニットが前記搬送車に対して比較的近接した第1の場所にある引込み位置と、前記保管ユニットが前記搬送車に対して比較的離隔した第2の場所にあり、前記機械側位置決め部材が前記受け座に近接した場所にある機械側位置決めドックと係合して前記保管ユニットを前記機械に対して位置決めすることができる移送位置と、の間で前記係合アクチュエータが前記保管ユニットを移動させるように動作する、移送システム。
【請求項2】
前記機械側位置決め部材が、垂直方向に対して角度がつけられて傾斜面を形成する少なくとも1つの面をもつ凸所と、垂直方向に対して角度がつけられて傾斜面を形成する少なくとも1つの面をもつ凹所と、からなる組の1つを備える、請求項1に記載の移送システム。
【請求項3】
使用する前記搬送車に取り付けられた搬送車側位置決めドックを備える、請求項1に記載の移送システムにおいて、
前記保管ユニットが搬送車側位置決め部材を備え、
前記搬送車側位置決め部材が、前記引込み位置で前記搬送車側位置決めドックと係合して前記保管ユニットを前記搬送車に対して位置決めする、移送システム。
【請求項4】
前記搬送車側位置決め部材および搬送車側位置決めドックの一方が垂直方向に対して角度をつけられて傾斜面を形成するようにされた少なくとも1つの面を有する凸所を備え、前記搬送車側位置決め部材および搬送車側位置決めドックの他方が前記凸所をちょうど受け止めるように設計された凹所を備え、任意選択で、前記搬送車側位置決め部材および搬送車側位置決めドックの一方は円錐を備え、前記搬送車側位置決め部材および搬送車側位置決めドックの他方は円錐形の凹所を備え、任意選択で、前記搬送車側位置決め部材および搬送車側位置決めドックの一方は直線的な稜部を備え、前記搬送車側位置決め部材および搬送車側位置決めドックの他方は直線的な凹部を備える、請求項3に記載の移送システム。
【請求項5】
前記係合アクチュエータが、前記前面と直交する方向、したがって、使用する機械に向かう方向またはそこから遠ざかる方向への移動の水平成分を伴う前記保管ユニットの移動をもたらすように動作することができる、請求項1に記載の移送システム。
【請求項6】
前記係合アクチュエータが移動の垂直成分を伴う前記保管ユニットの移動をもたらすように動作することができる、請求項5に記載の移送システム。
【請求項7】
前記係合アクチュエータが、前記保管ユニットを前記搬送車と連結する枢動脚を備え、その構成が、枢動脚の枢動によって、垂直、水平それぞれの移動成分を含む移動経路で前記保管ユニットを前記引込み位置と前記移送位置との間で移動させる形のものである、請求項6に記載の移送システム。
【請求項8】
前記係合アクチュエータが前記移送システムから前記保管ユニットを吊り下げて前記保管ユニットを垂直に移動させるリフト機構を含み、任意選択で、前記リフト機構が前記保管ユニットの吊下げのためのケーブルを含み、さらに任意選択で、前記吊下げ保管ユニットを垂直に移動させるためにケーブルが巻取り式である、請求項6に記載の移送システム。
【請求項9】
前記リフト機構が、使用する搬送車に対して水平に移動可能である、請求項8に記載の移送システム。
【請求項10】
前記保管ユニットが、前記前面と平行に水平方向に前記係合アクチュエータに対して移動可能なフィーダ容器を備え、使用する少なくとも1つの物品を保管するようにトレイが適合された、請求項1に記載の移送システム。
【請求項11】
前記保管ユニットがトレイを保持するように適合され、前記トレイが前記少なくとも1つの物品を保管するように適合され、前記トレイが前記前面と直交する水平方向に前記保管ユニットに対して移動可能であり、それによって、前記保管ユニットが移送位置にあるときに前記トレイが前記受け座に移送され得る、請求項1に記載の移送システム。
【請求項12】
個々の物品に当接するように適合された可動パドルを備える物品移動ユニットと、前記可動パドルを前記前面と直交する方向に移動させるように動作して物品を使用する機械の方へ送り込むパドルアクチュエータと、を備える、請求項1に記載の移送システム。
【請求項13】
前記可動パドルが前記保管ユニットに対して前記前面と平行な水平方向に移動可能で、それによって使用時には前記保管ユニット内に並んだ物品の中から選ばれた物品に当接することができる、請求項12に記載の移送システム。
【請求項14】
前記物品がフィーダまたはカセットを含み、前記機械が配置機械を含む、請求項1に記載の移送システム。
【請求項15】
前記物品が印刷スクリーンまたはステンシルを含み、機械が印刷機械を含む、請求項1に記載の移送システム。
【請求項16】
前記保管ユニットが前記引込み位置から前記移送位置に移動するときに前記搬送車が支える重量をモニタリングするための手段および前記搬送車が支える重量を制御するための手段を備える、請求項1に記載の移送システム。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の移送システムを備える、無人搬送車。
【請求項18】
搬送車から機械の受け座に物品を移送する方法であって、
i) 前記受け座に近接した場所に機械側位置決めドックを用意するステップと、
ii) 前記保管ユニット内に少なくとも1つの物品がある状態で搬送車に請求項1から16のいずれか一項に記載の移送システムを用意するステップと、
iii) 前記保管ユニットがその引込み位置にある状態で前記機械の近くへ前記搬送車を移動させるステップと、
iv) 前記機械側位置決め部材が前記機械側位置決めドックと係合するように前記保管ユニットをその移送位置に移動させるステップと、
v) 前記保管ユニットから前記受け座に物品を移送するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車と機械の受け座との間で物品を移送するための移送システム、無人搬送車、および搬送車から機械の受け座に物品を移送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に、プリント回路板(PCB)、基板またはワークピースなどの部品キャリアにいわゆる表面実装技術(SMT)の工程で電子部品を実装する技術分野に関する。
【0003】
通常、そうした電子サブアセンブリの製造にはいわゆる配置機械が使用され、それによって電子部品が部品供給装置から自動的に取り出されて、プリント回路板などの部品キャリア上に配置される。部品供給装置から部品をそれぞれの配置位置に移送する際には、いわゆる配置ヘッドのような部品ハンドリング装置が使用される。
【0004】
小さな電子部品のための最も一般的なパッケージング法として、時に「ベルト」とも呼ばれるキャリアテープであって、幾つかの小さなポケットが形成されたキャリアテープが使用される。それぞれのポケットに1つずつの部品が用意される。個々のキャリアテープに収められる部品は1種類だけである。省スペース化および搬送の簡易化のため、キャリアテープは従来、スプールに巻かれたリールとして形成されてきた。テープリールは通常、キャリアテープの長さに沿って設けられた穴と係合するモータ駆動式のピン歯車など、テープを前進させるための駆動手段と、部品へのアクセスを提供するピックアップ部または開口と、を備えるフィーダモジュール内に収められる。フィーダモジュールは配置機械内に取外し可能に挿入することができる。
【0005】
比較的最近、受動的なカートリッジモジュールまたはカセットの中にリールが収められたカートリッジシステムが提案されており、カートリッジモジュールまたはカセットは、好都合には、ロボットが容易に保持することができる既定の形状の比較的安価なプラスチック製コンテナまたは容器であり得、中央充填ステーションで装荷した後にフィーダに挿入することができる。別法として、配置機械自体にテープ駆動機構が備えられる場合には、カートリッジモジュールを配置機械内に直接挿入することもできる。カートリッジおよびフィーダの構成例は特許文献1に説明がある。そのようなシステムでは、フィーダユニットをカートリッジユニット内にあるキャリアテープの駆動のために使用することができ、それによってキャリアテープのポケット内の部品はピックアップ領域に移動し、そこで配置機械の配置ヘッドが部品にアクセスすることができる。それぞれの設計によって、ピックアップ領域はカートリッジ内またはフィーダ内に配置され得る。
【0006】
配置機械の動作のためには、フィーダ(セットアップによっては、さらに/またはカートリッジ)を、それぞれのキャリアテープを含め、配置機械に供給できる必要がある。スマートホン製造などがそうであるように、高スループットの作業では部品の供給は概ね連続的であるが、それとは別に、フィーダおよび/またはカートリッジの頻繁なセットアップ入替えを特徴とし、フィーダおよび/またはカートリッジの一括取替えまたは交換を必要とするエレクトロニクス製造工程もある。本明細書において「セットアップ入替え」とは、配置機械と係わり合うフィーダまたはカートリッジの一括変更をいうものとする。それに対して、「補充入替え」は、部品が品切れとなって、または品切れが近づいたとき、部品供給が極力中断されないように、フィーダおよび/またはカートリッジの交換が配置機械で行われることをいう。
【0007】
ライン上での材料(すなわちキャリアテープ)の再充填やツール交換(すなわち、異なるフィーダ/カートリッジの取付け)は、現在は多くの工数を必要とする手作業によるプロセスである。材料の補充および入替えの自動化のために幾多の努力が払われるようになってからすでに何年かが経つ。
【0008】
具体的な背景技術として特許文献2に言及することができる。この文献で説明されているように、フィード能力と材料保管部とを備えるフィーダを保管場所と作業場所との間で移送するための外部交換装置が提供され得、交換装置は、1つまたは複数の配置機械を備える生産ラインに沿ってワークピースのスループットの方向と平行に移動するように動作することができる。交換装置は生産ラインに沿って取り付けられたレールに沿って平行移動するように動作し、レールによって支えられる(そのため、この装置は「レール案内式搬送車」と呼ぶことができる)。こうしたアプローチには様々な利点がある。交換装置は、配置機械に関して固定された垂直位置で保持されているため、たとえば、機械取付けレールの使用は床面の不整によって生じかねない問題を回避することができ、さらに、生産ラインに沿った高レベルの位置決めの正確度が可能となる。しかし、このようなシステムには、それに付随した様々な欠点もある。たとえば、生産ラインの各々の側で専用の交換装置を使用する必要があり、そのため、どこまで近接してラインを設けることができるかという点で制約が生じる可能性がある。説明されているシステムは柔軟性も欠いており、たとえば、カートリッジ式の供給システムに対応することができない。システムは比較的動きが遅く、また、各々の生産ラインのための専用設備で要求されることが多いために高価でもある。
【0009】
フィーダ/カートリッジ取替え機構を備えた無人搬送車(AGV)に装備するものとして、より柔軟性をもち、潜在的に安価でもあるソリューションがあり得ることがわかった。当業者にはよく知られているように、AGVは小型可動ロボット装置であり、通常、少なくともある程度の自律性をもって、車輪付きシャーシによって床上をあちこち移動することができる。AGVは、数多くの製造者から入手することが可能であり(したがって比較的安価であり、生産ラインの作業者はすでに適当なAGVを有している可能性もある)、ジョブに固有の設備を搭載することができる上部プラットフォームを備えているのが普通である。
図1に従来型のAGV 1を概略図で示す。シャーシ2、車輪3、プラットフォーム4がハイライトされている。残念ながら、AGVをフィーダ/カートリッジの切換えに使うことには問題がある。これは、AGVの位置決めの正確度が、配置機械でのフィーダ/カートリッジの切換えに求められるものには一般に及ばないためである。仮に正確度改善のための追加的な手段が用意されても、一般的には、正しい位置決めに余計に時間がかかるようになり、そのために許容されない遅れを生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102019127299号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3419402号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、市場で入手可能なAGV(ただし、特注のAGV、さらには軌道案内式搬送車も使用可能と考えられる)を使用するなどして実装することができるフィーダ/カートリッジの自動供給を可能にするのに適した、費用対効果の高い、堅牢かつ高速の移送システムであって、セットアップ入替えおよび補充入替えのいずれか、またはその両方をこなすことができる移送システムを提供することを目的とする。本発明によれば、この目的は、AGVプラットフォームに取り付けることができるフィーダ/カートリッジ保管部のような保管部と連係させた機械的位置決めシステムを用いることによって行われる。
【0012】
本明細書では、それぞれ以下の意味をもつ次のような用語を便宜的に用いる。
【0013】
「フィーダ」は、テープリール保管部とキャリアテープを前進させる駆動手段とを含むフィーダと、テープリール保管部と駆動手段とが別々の係合式カートリッジおよびフィーダ部品内に配置されたモジュール型カートリッジ=フィーダシステムと、を包含するものと理解される。
【0014】
X、YおよびZは当業界の慣例に従って使用されるものであり、
X軸は、生産ラインに沿ったワークピースの輸送方向と平行で、ほぼ水平をなして下流に向かって増大し、
Y軸は、X軸と直交し、ほぼ水平をなして配置機械の方向に増大し、
Z軸は、X軸およびY軸と直交して全体に垂直をなし、上に向かう方向に増大する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、搬送車と機械の受け座との間で物品を移送するための移送システムであって、
係合アクチュエータと、
使用する少なくとも1つの物品を保管する保管ユニットであって、使用する搬送車に移動可能に取り付けられ、使用する受け座に隣接するように適合された前面と機械側位置決め部材とを含む保管ユニットと、
を備え、
保管ユニットが搬送車に対して比較的近接した第1の場所にある引込み位置と、保管ユニットが搬送車に対して比較的離隔した第2の場所にあり、機械側位置決め部材が受け座に近接した場所にある機械側位置決めドックと係合して前記保管ユニットを前記機械に対して位置決めすることができる移送位置と、の間で係合アクチュエータが保管ユニットを移動させるように動作する移送システムが提供される。
【0016】
本発明の第2の実施形態によれば、第1の態様の移送システムを含む無人搬送車が提供される。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、搬送車から機械の受け座に物品を移送する方法であって、
i) 受け座に近接した場所に機械側位置決めドックを用意するステップと、
ii) 保管ユニット内に少なくとも1つの物品がある状態で搬送車に第1の態様の移送システムを用意するステップと、
iii) 保管ユニットがその引込み位置にある状態で機械の近くへ搬送車を移動させるステップと、
iv) 機械側位置決め部材が機械側位置決めドックと係合するように保管ユニットをその移送位置に移動させるステップと、
v) 保管ユニットから受け座に物品を移送するステップと、
を含む方法が提供される。
【0018】
本発明のその他の具体的な態様および特長は、添付の請求項に定める。
【0019】
これ以降では添付の図面(縮尺なし)を参照しながら本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】明確化のために様々な部品が省略された、本発明による移送システムが取り付けられたAGVの概略的な斜視図である。
【
図4】
図2のAGVおよび移送システムを使用したフィーダ補充の移送シーケンスの概略斜視図である。
【
図5】
図2のAGVおよび移送システムを使用したフィーダ補充の移送シーケンスの概略斜視図である。
【
図6】
図2のAGVおよび移送システムを使用したフィーダ補充の移送シーケンスの概略斜視図である。
【
図7】
図2のAGVおよび移送システムを使用したフィーダ補充の移送シーケンスの概略斜視図である。
【
図8】
図2のAGVおよび移送システムを使用したフィーダ補充の移送シーケンスの概略斜視図である。
【
図9】
図2のAGVおよび移送システムを使用したフィーダ補充の移送シーケンスの概略斜視図である。
【
図10】セットアップ入替えのための移送シーケンスの概略斜視図である。
【
図11】セットアップ入替えのための移送シーケンスの概略斜視図である。
【
図12】セットアップ入替えのための移送シーケンスの概略斜視図である。
【
図13】本発明の別の実施形態による移送システムの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態について、明確化のために様々な部品が省略された、本発明による移送システム11が取り付けられたAGV 10の概略的な斜視図である
図2を参照しながら説明する。より具体的には、図示した移送システム11は、物品の、すなわちこの実施形態ではフィーダの、臨機応変な物品の交換を伴う補充入替えを行うように適合されている。
図2では、移送システム11は、その保管ユニット(以下に記すように、補充用フィーダ保管ユニット18)が引込み位置にあって、AGV 10が施設内を安全に移動できるようになっている様子が示されている。AGV 10および移送システム11は、配置プロセスを制御する包括的な制御システム(図示せず)によって制御することができる。適切にプログラミングされた演算手段または処理手段からなる制御システムは、配置機械が含まれる生産ラインに、またはそれとは別の場所に置くことができ、任意選択として、制御システムは様々な現場および遠隔の地点の間に配分することができる。いずれの場合も、AGV 10および移送システム11は、当業者にはおのずとよく知られるとおり、無線で制御システムと通信することができる。
【0022】
AGV 10は、一般に、平らなプラットフォーム13を載せて支えるシャーシ12を有する標準的な形態のものである。車輪14はAGV 10が地盤面に沿って移動できるようにするもので、好ましくは、それぞれの垂直軸の周りを360°回転できるキャスタ型の車輪であり、それによってAGV 10は地盤面に沿って任意の水平方向に移動することが可能で、そのため、機械(図示せず)に直接アプローチすることができる。機械およびAGV 10の近くに居合わせる作業員(図示せず)の安全のため、AGV 10の一方の端部に印(図示せず)を付けることによってAGV 10の名目的な「前端」を示すことができる。本明細書を通して一貫した定義として、移送準備中または移送中の機械に隣接した位置にあるときのAGV 10の前後方向がX方向とされ、Z軸は垂直であり、AGV 10の両側面間の方向と平行なY軸は機械に向かって増大する。これらの軸は
図2に示すとおりである。
【0023】
使用時、移送システム11はプラットフォーム13に取り付けられてAGV 10と共に移動する。より具体的には、複数の(ここでは4つの)枢動脚16を備える係合アクチュエータがプラットフォーム13に固定して取り付けられ、それにより、各々の枢動脚16がその一端でプラットフォーム13に固定される一方で、X軸と平行なそれぞれの水平軸の周りに枢動することができる。
図2では、3つの枢動脚16だけが見えている。係合アクチュエータは、枢動脚16をそれぞれの枢動軸の周りに枢動させるように動作するモータ(図示せず)も備える。
【0024】
各々の枢動脚16の遠位端は、補充用フィーダ保管ユニット18を支える平坦面を提供するテーブル17に枢動可能に連結される。補充用フィーダ保管ユニット18は、少なくとも2つのフィーダ15(わかりやすいように1つのフィーダ15だけを示す)を保持するように適合されたトレイの形をとり、フィーダ15は、補充用フィーダ保管ユニット18の基部にフィーダ係合トラック19を設けることによって直立姿勢で横並びの位置に置かれる。フィーダ係合トラック19は、明確化のためにその幾つかだけが示されていることに留意する必要がある。フィーダ係合トラック19は、それぞれのフィーダ15と係合可能であるとともに、それぞれのフィーダ15がそれに対して、図示されたY軸と平行な方向に移動することを可能にする。部品で満杯の交換用フィーダと、それによって置き換えられる空のフィーダと、の両方をそこに保管できるようにするためには、少なくとも2つのフィーダのためのスペースが必要となる。補充用フィーダ保管ユニット18はその前後幅、すなわちX軸沿いの両側壁20によって画定される。補充用フィーダ保管ユニット18は、移送システムの前面と平行な方向に、すなわちX軸と平行をなす直線的なアクチュエータシステムによって駆動できるテーブル17に移動可能に取り付けられる。図示された直線アクチュエータシステムは、X方向に延びるテーブル17に取り付けられ、補充用フィーダ保管ユニット18に取り付けられた歯車22と係合するウォームねじ21を備える。アクチュエータ(図示せず)はウォームねじ21を回転させるように作用し、それによって補充用フィーダ保管ユニット18をX軸と平行に移動させることができる。
【0025】
移送システムは、物品、すなわちフィーダを補充用フィーダ保管ユニット18から配置機械(
図2には図示せず)の受け座まで移動するように動作する物品移動ユニット(ここではフィーダ移動ユニット)も備える。図示したフィーダ移動ユニットは、当業者には自明の2段階アームであり、ここで詳しく説明するまでもないが、簡単に触れておくと、フィーダ移動ユニットは、個々のフィーダ15に当接するように適合されたパドル25を備え、パドル25は、前面と直交する方向、すなわちY軸と平行をなす方向に移動するように駆動されて、それによってフィーダ15が使用状態の機械に向かうようにフィーダ15に付勢し、任意選択で、機械がフィーダ取出し機構をもたない場合に機械から遠ざかるようにも駆動することができる。パドル25は、ここでは、フィーダ移動ユニットのベルト駆動装置か、または、
図2に示すようにラックアンドピニオン駆動装置のような駆動装置に取り付けられている。より具体的には、パドル25は二重ラックの下段ラック26に取り付けられており、同様に二重ラック26に備わる上段ラック27とあわせ、両ラック26、27は、ピニオン(
図2には図示せず)を介してアーム28に取り付けられる。アーム28は、ここでは駆動ベルト30の形をとるパドルアクチュエータに駆動可能に連結される。少なくともパドル25、ここではフィーダ移動ユニット全体は、前面と平行をなす水平方向に、すなわちX軸と平行に、補充用フィーダ保管ユニット18に対しても可動であり、それによって、使用時には補充用フィーダ保管ユニット18内に並んだフィーダの中から選ばれたフィーダ15に当接することができる。フィーダ移動ユニットについてのさらなる詳細は、以下で
図4を参照しながら説明する。
【0026】
テーブル17は、AGV 10の幅とほぼ同じ(Y軸沿いの)奥行を有する保管フレーム内に取り付けられる。機械側領域(Y値の大きい側)では、保管フレーム23は少なくとも1つの機械側位置決め部材24を有しており、図示されるように、保管フレーム23の前端に位置する機械側位置決め部材24Aと、保管ユニットの後端に位置する機械側位置決め部材24Bと、の2つの機械側位置決め部材を有している。機械側位置決め部材24A、24Bは保管フレーム23から下方に突き出ている。搬送車側領域では、保管フレーム23は少なくとも1つの搬送車側位置決めドックを有するが、ここでは、保管フレーム23の前端に位置する前部搬送車側位置決めドック31Aと、保管フレーム23の後端に位置する後部搬送車側位置決めドック31Bと、を備える。前部および後部の搬送車側位置決めドック31A、31Bは、それぞれ上向きの開口部と共に保管フレーム23から上方に突き出ている。これら位置決め用の部材およびドックの形状および機能については、以下でさらに詳しく説明する。
【0027】
前部直立フレーム部材32と後部直立フレーム部材33とはシャーシ12に固定して取り付けられる。これら直立フレーム部材32、33の各々は下方に突き出た位置決め部材を有しており、そのうち、前部直立フレーム部材32は前部搬送車側位置決め部材34A(
図2では見えず)を有し、後部直立フレーム部材33は後部搬送車側位置決め部材34Bを有する。前部搬送車側位置決めドック31Aは前部搬送車側位置決め部材34Aをちょうど受け止めるように設計され、後部搬送車側位置決めドック31Bは後部搬送車側位置決め部材34Bをちょうど受け止めるように設計される。移送システム11が
図2に示す引込み構成にあって、補充用フィーダ保管ユニット18がAGV 10に対して(Y方向に)比較的接近した第1の場所にあるとき、前部搬送車側位置決め部材34Aは前部搬送車側位置決めドック31Aの中に係合し、後部搬送車側位置決め部材34Bは後部搬送車側位置決めドック31Bの中に係合する。
【0028】
係合アクチュエータは、補充用フィーダ保管ユニット18が、
図2に示すような引込み位置と、補充用フィーダ保管ユニット18がAGV 10に対して(Y方向に)比較的離隔した第2の場所にある(たとえば
図5に示すような)移送位置と、の間で移動するように動作する。引込み位置では、移送システム11はAGV 10の水平方向の空間投影面積の中にほぼ収まり、AGV 10は安全に移動することができる。しかし、移送位置では、移送システムの補充用フィーダ保管ユニット18の前面はAGV 10の水平方向の空間投影面積を越えて広がるため、AGV 10は機械の受け座に隣接した位置に置くことができ、受け座と補充用フィーダ保管ユニット18との間のフィーダの移送が容易となる。引込み位置と移送位置との間の移動では、係合アクチュエータは、前面と直交する方向、すなわちY軸と平行な方向に移動の水平成分を伴って、すなわち使用する機械に向かう方向またはそこから遠ざかる方向に、テーブル17が補充用フィーダ保管ユニット18をその上に載せた状態で移動する動作をもたらす。これは、枢動脚16を枢動させて、垂直、水平それぞれの移動成分を含む移動経路で保管ユニット18を引込み位置と移送位置との間で移動させることによって行われる。図示されているように、この移動経路は、枢動脚16の枢動運動によってアーチ状となる。
【0029】
図3は、配置機械に装着される機械側受け座35の概略的な斜視図である。受け座35はほぼ平坦な水平台36を備える。使用時、台36は、複数のフィーダ15を受けるように適合されたセットアップフィーダ保管ユニット40(
図4など参照)を支持する。台36の両端(すなわち、互いがX方向に隔てられたそれぞれの端部)には前部機械位置決めフレーム37と後部機械位置決めフレーム38とが設けられている。前部機械位置決めフレーム37が前部機械位置決めドック39Aを備える一方、後部機械位置決めフレーム38は後部機械位置決めドック39Bを備えており、各々の機械位置決めドック39A、39Bは、それぞれが前部機械側位置決め部材24Aおよび後部機械側位置決め部材24Bをちょうど受け止めるように設計された上向きの開口部を備える。
【0030】
図4から
図9までは、
図2のAGV 10および移送システム11を使用したフィーダ補充のための移送シーケンスの概略斜視図である。明確化のため、移送システム11の一部の部品は図から省略されている。
【0031】
図4は、保管フレーム23が受け座35とほぼ位置合せされるように(ただし、AGV固有の位置精度に依存)配置機械の隣に置かれたAGV 10の概略を示している。移送システム11は、配置機械に対するAGV 10の位置決めの間、補充用フィーダ保管ユニット18を図示されるような引込み位置に保持する。フィーダ15Aは、補充用フィーダ保管ユニット18のトレイ内にあって、フィーダ係合トラック19と係合することによって直立姿勢で保持されているところが示されている。
図4で見ることができるように(
図2では省略されている)、補充用フィーダ保管ユニット18に取り付けられて補充用フィーダ保管ユニット18と一緒に移動することができる位置決めフレーム44があり、その位置決めフレーム44はフィーダ移動ユニットを支える。より詳細には、位置決めフレーム44は機械側門形構造45および搬送車側門形構造46を備えており、その2つの間に支えられた可動レール47を有する。可動レール47は駆動手段(図示せず)によってX軸と平行な水平方向に駆動することができる。たとえば、機械側門形構造45および搬送車側門形構造46は、駆動手段によって回転可能なウォームねじを備えることで可動レール47を駆動することができるが、当業者にはそれ以外の可能性も自明であろう。可動レール47は、可動レール47から吊り下げられたフィーダ移動ユニットを有する。
【0032】
図4では、受け座35の台36がセットアップ用フィーダ保管ユニット40を支えている様子を見ることができる。使用時、セットアップ用フィーダ保管ユニット40は、配置作業中には配置機械内にとどまる。セットアップ用フィーダ保管ユニット40は、側壁41をもつトレイ、底部の複数のフィーダ係合トラック42、それにセットアップ用フィーダ保管ユニット40の構造的な剛性に資するバックバー43の形をとるという点では、補充用フィーダ保管ユニット18と基本的に似通っている。フィーダ15Bは、フィーダ係合トラック42の1つと係合した形で示されている。
図4に示す引込み位置では、補充用フィーダ保管ユニット18はセットアップ用フィーダ保管ユニット40と比べてやや高い(すなわちZ値が大きい)ことに留意する必要がある。
【0033】
図4に示すようにAGV 10が配置機械の近位に位置決めされると、係合アクチュエータが作動して、補充用フィーダ保管ユニット18がその引込み位置を離れ、移送位置の方に移動するように機能する(
図5参照)。これは、枢動脚16を配置機械の方に回すことによって行われる。回すことで、テーブル17が、したがって補充用フィーダ保管ユニット18がアーチ形の経路を移動し、それによって前部搬送車側位置決めドック31Aおよび後部搬送車側位置決めドック31Bが下がって前部搬送車側位置決め部材34Aおよび後部搬送車側位置決め部材34Bとの係合がそれぞれ外れ、補充用フィーダ保管ユニット18が水平方向(すなわち正のY方向)および垂直方向(すなわち負のZ方向)に受け座35に向かって移動する。この水平方向の移動は、前部搬送車側位置決め部材34Aおよび後部搬送車側位置決め部材34Bとそれぞれの前部搬送車側位置決めドック31Aおよび後部搬送車側位置決めドック31Bとの係合によって妨げられることはないことに留意する必要がある。これは、それぞれの位置決め部材および位置決めドックの表面が傾斜しているためである。
【0034】
図5は、補充用フィーダ保管ユニット18をもつ移送システムの概略図で、補充用フィーダ保管ユニット18は移送位置にあり、枢動脚16は最大限まで回された状態にある。前部機械側位置決め部材24A(
図5では見えない)および後部機械側位置決め部材24Bは完全に下がりきって、それぞれ前部機械位置決めドック39A(
図6では見えない)および後部機械位置決めドック39Bと係合している。補充用フィーダ保管ユニット18はAGV 10と剛性結合されておらず、したがって、その位置決めにはある程度の「遊び」、すなわち余裕があり、そのため、機械側位置決め部材と機械位置決めドックの間の係合によって補充用フィーダ保管ユニット18を所望の位置合せにもっていくことにより、補充用フィーダ保管ユニット18とセットアップ用フィーダ保管ユニット40との間に水平面内でも垂直面内でも正しい相対的位置決めが得られるようにして、2つのフィーダ保管ユニット間でのフィーダの移送が可能となるようにする。
【0035】
補充用フィーダ保管ユニット18が移送位置にあるとき、その高さはセットアップ用フィーダ保管ユニット40と同じであり、すなわちフィーダ係合トラック19および42は同じ高さにある。補充用フィーダ保管ユニット18とセットアップ用フィーダ保管ユニット40とは、その一方から他方へのフィーダの移送が可能となるのに十分なY方向の近さにもある。さらに、テーブル17は受け座35とX方向に位置合せされている。
【0036】
そこから、
図6に概略的に示すように、補充用フィーダ保管ユニット18は直線的なアクチュエータ機構によってテーブル17に対してX軸沿いに移動し、配置機械の動作のために要求されるところに従って、満杯のフィーダ15Bをもつ特定のフィーダ係合トラック19が特定の空のフィーダ係合トラック42と位置合せされる。
【0037】
次いで、
図7に概略的に示すように、パドル25がフィーダ15Bの係合面48の直接背後(X軸沿いの同じ位置、ただしY値の小さい位置)に来るところまで、フィーダ移動ユニットがX軸沿いに駆動される。図示されているように、係合面48はフィーダ15Bの上縁から突き出た小突起上にある。
【0038】
続いて、
図8に概略的に示すように、パドル25は機械の方へ、すなわち正のY方向に移動する。パドル25は係合面48に当接し、それによってフィーダ15Bをそのフィーダ係合トラック19沿いに押して別の空のフィーダ係合トラック42へと運ぶ。
【0039】
図9は、セットアップ用フィーダ保管ユニット40に完全に挿入されたフィーダ15Bを概略的に示している。バックバー43は、フィーダ15Bのエンドストッパとして機能して、フィーダ15Bがさらに配置機械の奥の方まで押し込まれるのを防ぐ。
図9の概略斜視図としての性格から、フィーダ15Bが補充用フィーダ保管ユニット18に対してオーバーハングしているという誤った印象を与えるかもしれないが、実際にはそのようなことはなく、フィーダ15Bと補充用フィーダ保管ユニット18とが衝突するリスクはないことに留意する必要がある。
【0040】
上に説明したシーケンスでは、満杯のフィーダ15Aがセットアップ用フィーダ保管ユニット40に移送されるところが示されている。それに続いて、任意選択で、空または空に近いフィーダ15Bを補充用フィーダ保管ユニット18に移送することができる。これは、補充用フィーダ保管ユニット18をセットアップ用フィーダ保管ユニット40に対して位置合せして、空のフィーダ係合トラック19が空のフィーダ15Bと位置合せされるようにした上で、フィーダ駆動ユニットがパドル25でフィーダ15Bをそのフィーダ係合トラック19の中に引き込むようにすることによって行われる。
【0041】
代替の実施形態では、また特定のフィーダセットアップに応じて、空またはほぼ空のフィーダ15Bをまず空のフィーダ係合トラック19に移送し、その後に補充用フィーダ保管ユニット18を、満杯のフィーダ15Aがその時点では空のフィーダ係合トラック42と位置合せされるまで、直線的なアクチュエータ機構を用いて続いて移動させ、満杯のフィーダ15Aをそこに移送することができる。
【0042】
図10から
図12までは、AGV 10および
図2の移送システム11と共通の部品を多く有する移送システム11’とを使用したセットアップ入替えの移送シーケンスの概略斜視図である。明確化のため、移送システム11の一部の部品は図から省略されている。
【0043】
図10に示すとおり、移送システム11’が備える部品は移送システム11とほぼ同じであるが、補充用フィーダ保管ユニット18は、セットアップ用フィーダ保管ユニット側壁41(
図10では1つだけが見える)と、テーブル17上のフィーダ係合トラック42と、を有する、
図4に示すものと類似のセットアップ用フィーダ保管ユニット40に置き換えられている。説明のため、単一のフィーダ15が対応するフィーダ係合トラック42に直立姿勢で置かれているところが示されているが、通常の使用では、複数のフィーダ係合トラック42に、場合によってはそのすべてにそれぞれフィーダが与えられる。
【0044】
図10では、AGV 10はそれ自体が配置機械の隣に置かれ、それによって保管フレーム23が空の受け座35と概ね位置合せ(AGVの位置精度次第であるが)されている。移送システム11’は、配置機械に対するAGV 10の位置決めの間、セットアップ用フィーダ保管ユニット40を図示されるような引込み位置に保持する。この引込み位置では、後部搬送車側位置決め部材34Bは後部搬送車側位置決めドック31Bと係合し、前部搬送車側位置決め部材34A(
図10では見えず)は前部搬送車側位置決めドック31Aと係合する。
【0045】
図11では、枢動脚16を配置機械の方に回転させることによってセットアップ用フィーダ保管ユニット40がその移送位置に移動したところが示されており、それによってテーブル17が、したがってセットアップ用フィーダ保管ユニット40がアーチ形経路を移動して、前部搬送車側位置決めドック31Aおよび後部搬送車側位置決めドック31Bが下がり、それによってそれぞれ前部搬送車側位置決め部材34Aおよび後部搬送車側位置決め部材34Bとの係合が外れる一方、前部機械側位置決め部材24Aおよび後部機械側位置決め部材24Bが下がって、それぞれ前部機械位置決めドック39A(
図11では見えず)および後部機械位置決めドック39B(
図11では見えず)と係合している。これにより、セットアップ用フィーダ保管ユニット40は、水平方向(すなわち正のY方向)にも、垂直方向(すなわち負のZ方向)にも受け座35に向けて移動する。
【0046】
続いて、
図12に示すように、セットアップ用フィーダ保管ユニット40は受け座35へと移送することができる。好都合には、移送は、セットアップ用フィーダ保管ユニット40を受け座35に引き寄せるように動作する、配置機械に設けられた移送装置(図示せず)によって行うことができる。そのような移送装置はセットアップ入替えを支援するものとして当業者には自明のものであり、ここではこれ以上詳しく説明しない。別法では、移送装置は移送システム11’内に設けて、セットアップ用フィーダ保管ユニット40を受け座35に押し込むようにすることができる。この場合、そうした移送装置はすでに説明したフィーダ移動ユニットと似通ったものであることができる。実際、一部の実施形態では、フィーダ移動ユニットそのものを、そうした追加的機能を提供できるように構成することができる。
【0047】
上に説明した実施形態はあくまでも例であり、当業者には本発明の範囲内でそれ以外の可能性や別法も明らかとなろう。たとえば、上に説明した実施形態で配置機械に一体型のドッキングポートを用意することができる。しかし、本発明の利点の1つは、別法でドッキングポートを配置機械に後付けできるところにある。そのようなシナリオでは、ドッキングポートを備えるフレームを配置機械の側方に隣接して配設することができる。フレームは、たとえば配置機械に対して装着することも、取り付けることもできる。あるいは、フレームは、配置機械とは別に隣接する床面に取り付けてもよく、その上で隣接する配置機械に対する正しい作業高さに調整することもできる。
【0048】
移送システム11’は、セットアップ用フィーダ保管ユニット全体ではなく、1つ1つのフィーダの移送のために使用することもできる。その場合には、フィーダ移動ユニットは移送システム11’に装着した形、たとえば前部および後部の直立フレーム部材32、33の間に連結する形で用意することができ、受け座35内に配置されたセットアップ用フィーダ保管ユニットにフィーダを選択的に押し込むようにする。さらにもう1つの別法として、移送システム11’内にある複数のフィーダ、任意選択ですべてのフィーダを受け座35内にあるセットアップ用フィーダ保管ユニットに同時に押し込むように動作するフィーダ移動ユニットを提供することもできる。そうすることで、セットアップ用フィーダ保管ユニットを移送することなしに迅速なセットアップ入替えを行うことができる。これは、すべてのフィーダと同時に係合できる比較的幅の広いパドルを用意することによって容易に実現することができる。
【0049】
最初に説明した実施形態では、保管フレームの移動を行うために枢動可能アームを使用するが、別々の動作軸が用意されてY方向およびZ方向の運動が作り出されるものであれば、アーム以外のエフェクタを使用することもできる。
【0050】
代替的な形態の係合アクチュエータを使用する別の実施形態を
図13に上から見た概略斜視図で示す。この実施形態では、係合アクチュエータは、枢動脚を使う代わりに、保管ユニット52(たとえば、すでに説明した補充用フィーダ保管ユニットまたはセットアップ用フィーダ保管ユニット)を移送システム51から吊り下げ、保管ユニット52を垂直に移動させるためのリフト機構を備える。さらに、そのリフト機構は使用する搬送車に対して水平に移動することができる。このタイプの係合アクチュエータにおいて可能な垂直移動と水平移動との組合せはまた、保管ユニット52が搬送車に対して比較的近接した第1の場所にある引込み位置と、保管ユニット52が搬送車に対して比較的離隔した第2の場所にあり、機械側位置決め部材54A、54Bが受け座(図示せず)に近接した場所にある機械側位置決めドック(図示せず)と係合して保管ユニットを機械(図示せず)に対して位置決めすることを可能にする移送位置と、の間で、保管ユニットが移動することを可能にする。
【0051】
図13に示すように、移送システム51は、すでに説明した実施形態と同様、AGV(図示せず)上に取り付けるのに適している。移送システム51は、門形構造55、ケーブル57によってそこから吊り下げられたテーブル56、そしてそれに付帯するプーリ58からなるリフト機構を支える剛性フレーム53を備える。門形構造55は、たとえばラックアンドピニオン機構や直線駆動装置などの係合アクチュエータの適当な水平アクチュエータ(図示せず)によって水平に(すなわち、図示されているようにY軸と平行に)移動可能であり、テーブル56は門形構造55と共に水平に移動する。たとえば回転式アクチュエータを使った巻取りなどによるケーブル57の動作は、吊りテーブル56およびその上に載せて支持される保管ユニット52の垂直方向、すなわち図のZ軸と平行な移動をもたらす。テーブル56の裏側からは1対の脚59が出ており、保管ユニット52が引込み位置にあるときには、それらがAGVのプラットフォーム(図示せず)上に載ることでテーブル56を安定させる役割を果たす。テーブル56は、いずれもテーブル56の裏側から下方に突き出た前部機械側位置決め部材54Aおよび後部機械側位置決め部材54Bをさらに有する。これらは、その各々が、受け座に近接して置かれたそれぞれの機械側位置決めドック(図示せず)と係合して、保管ユニット52を移送位置にある機械に対して位置決めすることができるという点で、既述の実施形態について説明したものと同様の使われ方をする。機械側位置決め部材54A、54Bは、既述の実施形態と同様、垂直方向に対して角度がつけられて傾斜面を形成する少なくとも1つの面をもつ凸所と、垂直方向に対して角度がつけられて傾斜面を形成する少なくとも1つの面をもつ凹所と、からなる組の1つを備えることができ、それによって、移送位置でそれぞれの機械側位置決めドックと係合するとき、テーブル56が、したがって保管ユニット52が機械に対して正しい位置に導かれて、補充またはセットアップの入替え動作が行われるようにすることができる。
図13には示されていないが、既述の実施形態について説明したものと同様のフィーダ移動ユニットをリフト機構に装備する形で提供することによって補充またはセットアップ入替えの作業を行うこともできる。
【0052】
有利には、ひずみ計やトルクセンサのような(図示せず)1つまたは複数のセンサを1つまたは複数のケーブル57とあわせて提供することなどによって、テーブル56を機械とドッキングする際にAGVが支える重量をモニタリングすることが可能であり、そのセンサは、それぞれのケーブル57におけるひずみを、したがってケーブルが支える重量を表すデータを制御システムに供給することができる。あるいは、重量は、ケーブル57を駆動する当の、または個々の回転式アクチュエータに流れる電流のモニタリングを通して計測することも可能である。当の、または個々の回転式アクチュエータは、モニタリングされた信号に応じて制御することができる。そうすることで、AGVが支える重量を、したがってAGVから機械への(大きなものともなり得る)重量移転を制御し、被害につながりかねない移送重量の「急増加」を最小化することができる。こうした移送重量の平滑化は、AGVプラットフォームと移送システム51との間および/またはケーブル57沿いにばねのような弾性部材(図示せず)を設けることによってさらに改善することが可能であり、あるいはまた、移送重量を制御するために、AGVプラットフォームと移送システム51との間に付加的な能動制御システムを設けることもできる。
【0053】
さらに拡張として、利用できるAGVが十分な数だけある場合には、AGVは機械に隣接してテーブル56の下に常時配置されてもよく、それによって、使用中(すなわち配置作業中)はテーブル56の重量の少なくとも幾分かを支えるようにする。そうして支える重量は上に概要を記したセンサシステムを通して制御する。
【0054】
上に説明した重量移転の制御システムおよびその方法論は、第1の実施形態の移送システムで同じように用いることも、実際に本発明の範囲内の他のタイプの移送システムで使用することもできる。
【0055】
本発明について、フィーダおよび/またはカートリッジの配置機械への移送および配置機械からの移送に関する具体例によって説明してきたが、本発明はSMT生産ラインに関連した他の物品の移送にも同じように適用可能である。たとえば、この移送システムは、印刷スクリーンまたはステンシルを印刷機に移送する場合や印刷機から移送する場合にも、印刷スクリーンまたはステンシルをそのためのテンションフレームに取り付けた形のものなど(それだけに限らない)で利用することができる。
【0056】
本発明はAGVと共に使用するものとして説明してきたが、移送システムは、手押し台車を含め、他のタイプの搬送車に対して提供することもできる。
【0057】
以上に説明した実施形態は、保管ユニットを引込み位置と移送位置の間で移動させるに当たって水平、垂直両方の成分を提供するものであるが、状況によっては、垂直移動は必要とされない。たとえば、搬送車が、したがってそれによって運ばれる保管ユニットが、適当な高さにあることが保証される場合は、保管ユニットを移送位置に移動させるために用いる必要があるのは水平移動だけである。その場合、機械側および搬送車側に用意する必要があるのは純粋に水平方向の係合部材だけである。
【符号の説明】
【0058】
1 AGV
2 シャーシ
3 車輪
4 プラットフォーム
10 AGV
11、11’ 移送システム
12 シャーシ
13 プラットフォーム
14 車輪
15、15A、15B フィーダ
16 枢動脚
17 テーブル
18 補充用フィーダ保管ユニット
19 フィーダ係合トラック
20 側壁
21 ウォームねじ
22 歯車
23 保管フレーム
24A 前部機械側位置決め部材
24B 後部機械側位置決め部材
25 パドル
26 下段ラック
27 上段ラック
28 アーム
30 駆動ベルト
31A 前部搬送車側位置決めドック
31B 後部搬送車側位置決めドック
32 前部直立フレーム部材
33 後部直立フレーム部材
34A 前部搬送車側位置決め部材
34B 後部搬送車側位置決め部材
35 受け座
36 台
37 前部機械位置決めフレーム
38 後部機械位置決めフレーム
39A 前部機械位置決めドック
39B 後部機械位置決めドック
40 セットアップ用フィーダ保管ユニット
41 セットアップ用フィーダ保管ユニット側壁
42 フィーダ係合トラック
43 バックバー
44 位置決めフレーム
45 機械側門形構造
46 搬送車側門形構造
47 可動レール
48 係合面
49 ブラケット
51 移送システム
52 保管ユニット
53 フレーム
54A 前部機械側位置決め部材
54B 後部機械側位置決め部材
55 門形構造
56 テーブル
57 ケーブル
58 プーリ
59 脚
【外国語明細書】