(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039649
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】低音ブースト性能を備えた吊り下げ型オーディオデバイス
(51)【国際特許分類】
H04R 3/04 20060101AFI20240314BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H04R3/04
H04R1/00 318Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023147124
(22)【出願日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】202211102602.9
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】522361364
【氏名又は名称】深▲せん▼市大十未来科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】李新宇
【テーマコード(参考)】
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
5D017AC20
5D220AB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低音ブースト性能を備えた吊り下げ型オーディオデバイスを提供する。
【解決手段】吊り下げ型オーディオデバイスにおいて、ローパスフィルタLPFは、元の入力信号から低周波信号を抽出し、その低周波信号を高調波生成モジュールの基本波入力として用いる。ハイパスフィルタHPFは、元の入力信号から中高周波信号を抽出する。高調波生成モジュールは、ローパスフィルタLPFによって抽出された低周波信号をNLDアルゴリズムを通じて処理し、低周波信号内にブーストされた高調波信号を生成する。エネルギー制御モジュールは、高調波生成モジュールによって生成される高調波信号の全体のゲインを制御する。オーディオシステムが提示できない低周波部分をオーディオシステムが提示できる周波数帯域に移動することにより、システムにおける全体の音質を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低音ブースト性能を備えた吊り下げ型オーディオデバイスであって、
ローパスフィルタLPF、ハイパスフィルタHPF、エネルギー制御モジュール、および高調波生成モジュールを含み、
前記ローパスフィルタLPFは、元の入力信号から低周波信号を抽出するために用いられ、その低周波信号を高調波生成モジュールの基本波入力として用いられ、
前記ハイパスフィルタHPFは、元の入力信号から中高周波信号を抽出するために用いられ、
前記高調波生成モジュールは、前記ローパスフィルタLPFによって抽出された低周波信号をNLDアルゴリズムを通じて処理し、低周波信号内にブーストされた高調波信号を生成するために用いられ、
前記エネルギー制御モジュールは、前記高調波生成モジュールによって生成される高調波信号の全体のゲインを制御するために用いられる、
ことを特徴とする吊り下げ型オーディオデバイス。
【請求項2】
前記高調波生成モジュールは、2つの高調波信号を生成するために使用されることを特徴とする請求項1に記載の吊り下げ型オーディオデバイス。
【請求項3】
遅延モジュールが含まれ、前記遅延モジュールは、2つの高調波信号が加算される前にそれらの信号が一致していることを保証するために、加算前に2つの高調波信号を遅延させるために用いられることを特徴とする請求項2に記載の吊り下げ型オーディオデバイス。
【請求項4】
前記エネルギー制御モジュールは、ゲイン制御部G1およびゲイン制御部G2を含み、前記ゲイン制御部G1および前記ゲイン制御部G2はそれぞれ、2つの高調波信号のゲインを制御するために使用されることを特徴とする請求項2に記載の吊り下げ型オーディオデバイス。
【請求項5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ型オーディオデバイスに関し、特に、低音ブースト性能を備えた吊り下げ型オーディオデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の耳に聞こえる音の範囲は20Hz~20kHzである。吊り下げ型オーディオデバイスは製品の形状を限り、あまり大きな口径のスピーカーを使用することができないで、低周波音声をうまく表現できず、約140Hz~20kHz程度の音声しか復元できない。70Hz~140Hzの音声範囲が音楽感に大きく影響したので、これがないと、音楽は薄く乾いた音になり、ユーザーのリスニング体験に影響を与える。従来のEQ調整が140Hz~20kHzの音声範囲のみに対して調整でき、低周波音は再現できない。
【0003】
既存の吊り下げ型オーディオデバイスは低音性能が弱く、スピーカーのサイズによって制限されるため、低音のパフォーマンスが不十分になることがわかる。既存の吊り下げ型オーディオデバイスの低音パフォーマンス能力をいかに向上させるかは、従来技術において早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によって解決される課題は、既存の技術の欠点に対し、周波数シフトを通じて低周波信号成分を提示し、システムの音質を向上させることができる低音ブースト性能を備えた吊り下げ型オーディオデバイスを提供することである。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
【0006】
ローパスフィルタLPF、ハイパスフィルタHPF、エネルギー制御モジュール、および高調波生成モジュールを含む、低音ブースト性能を備えた吊り下げ型オーディオデバイスであって、ここで、前記ローパスフィルタLPFは、元の入力信号から低周波信号を抽出するために用いられ、その低周波信号を高調波生成モジュールの基本波入力として用いられ、前記ハイパスフィルタHPFは、元の入力信号から中高周波信号を抽出するために用いられ、前記高調波生成モジュールは、ローパスフィルタLPFによって抽出された低周波信号をNLDアルゴリズムを通じて処理し、低周波信号内にブーストされた高調波信号を生成するために用いられ、前記エネルギー制御モジュールは、前記高調波生成モジュールによって生成される高調波信号の全体のゲインを制御するために用いられる。
【0007】
好ましくは、前記高調波生成モジュールは、2つの高調波信号を生成するために用いられる。
【0008】
好ましくは、遅延モジュールが含まれ、前記遅延モジュールは、2つの高調波信号が加算される前にそれらの信号が一致していることを保証するために、加算前に2つの高調波信号を遅延させるために用いられる。
【0009】
好ましくは、前記エネルギー制御モジュールは、ゲイン制御部G1およびゲイン制御部G2を含み、前記ゲイン制御部G1および前記ゲイン制御部G2はそれぞれ、2つの高調波信号のゲインを制御するために用いられる。
【0010】
本発明が開示する低音ブースト性能を有する吊り下げ型オーディオデバイスは、まず、ローパスフィルタLPFを用いて元の入力信号における低周波信号を抽出し、ハイパスフィルタHPFを用いて元の入力信号から中高周波信号を抽出する。具体のブースト処理プロセスにおいて、高調波生成モジュールは、ローパスフィルタLPFによって抽出された低周波信号を、あらかじめ設定されたNLDアルゴリズムを通して処理し、低周波信号内にブーストされた高調波信号を生成し、最後に、エネルギー制御モジュールは、高調波生成モジュールによって生成される高調波信号の全体のゲインを制御する。既存の技術と比較して、本発明はオーディオシステムが提示できない低周波部分をオーディオシステムが提示できる周波数帯域に移動することにより、システムにおける全体の音質を向上させる。これにより、吊り下げ型オーディオデバイスに低音ブースト性能を提供し、アプリケーション要求により良く応える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の低音ブースト性能を備えた吊り下げ型オーディオデバイスの原理ブロック図である。
【
図2】高調波生成プロセスのフローチャートである。
【
図3】100Hz純音入力信号の周波数領域グラフである。
【
図4】NLDアルゴリズムによる処理後の出力周波数領域グラフである。
【
図5】音楽入力信号とバーチャル低音アルゴリズムによる出力スペクトル曲線の対比図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1と
図2を参照し、本発明は、ローパスフィルタLPF、ハイパスフィルタHPF、エネルギー制御モジュール、および高調波生成モジュールを含む、低音ブースト性能を備えた吊り下げ型オーディオデバイスを開示し、ここで、
前記ローパスフィルタLPFは、元の入力信号から低周波信号を抽出するために用いられ、その低周波信号を高調波生成モジュールの基本波入力として用いられ、
前記ハイパスフィルタHPFは、元の入力信号から中高周波信号を抽出するために用いられ、
前記高調波生成モジュールは、ローパスフィルタLPFによって抽出された低周波信号をNLDアルゴリズムを通じて処理し、低周波信号内にブーストされた高調波信号を生成するために用いられ、
前記エネルギー制御モジュールは、前記高調波生成モジュールによって生成される高調波信号の全体のゲインを制御するために用いられる。
【0014】
該当デバイスでは、まず、ローパスフィルタLPFを使用して元の入力信号における低周波信号を抽出し、中高周波信号については、ハイパスフィルタHPFを使用し元の入力信号から抽出する。具体のブースト処理プロセスにおいて、高調波生成モジュールは、ローパスフィルタLPFによって抽出された低周波信号を、あらかじめ設定されたNLDアルゴリズムを通して処理し、低周波信号内にブーストされた高調波信号を生成し、最後に、エネルギー制御モジュールは、高調波生成モジュールによって生成される高調波信号の全体のゲインを制御する。既存の技術と比較して、本発明はオーディオシステムが提示できない低周波部分をオーディオシステムが提示できる周波数帯域に移動することにより、システムにおける全体の音質を向上させる。これにより、吊り下げ型オーディオデバイスに低音ブースト性能を提供し、アプリケーション要求により良く応える。
【0015】
本実施例では、高調波生成モジュールは、2つの高調波信号を生成するために用いられる。エネルギー制御モジュールは、ゲイン制御部G1およびゲイン制御部G2を含み、ゲイン制御部G1およびゲイン制御部G2はそれぞれ、2つの高調波信号のゲインを制御するために用いられる。
【0016】
具体的に、高調波生成モジュールは、目的の高調波信号を生成するために用いられる非線形コンポーネントである。実験では2段階の高調波生成効果が優れているため、実際に2段階の高調波生成が用いられ、それぞれのゲインはG1とG2を通じてそれぞれ制御され、最後にGは全体の高調波ゲイン制御に用いられる。アップサンプリングモジュールとダウンサンプリングモジュールは、主にシステムの計算量を削減し、システムの消費電力を削減することを目的としている。最後のハイパスフィルタについては、NLDモジュールがより冗長な低周波信号を生成するため、これらの低周波信号は小型スピーカーでは復元できず且つ音割れの原因となり、だからフィルタで除去する必要がある。
【0017】
さらに、本実施例が遅延モジュールを含む。遅延モジュールは、2つの高調波信号が加算される前にそれらの信号が一致していることを保証するために、加算前に2つの高調波信号を遅延させるために用いられる。ここで、線形FIRフィルターの遅延特性により、2つの信号を加算する前に信号を適切に遅延させて揃え、加算する必要がある。
【0018】
【0019】
本発明の技術的手段の実験結果に関しては、次の2つの実験がある。
【0020】
実験1:100Hzの純音信号を入力としてMatlabでシミュレーションに使用する。入力した100Hz純音信号については
図3を、NLDアルゴリズムによって生成された高調波信号については
図4を参照する。
図4から、周波数100Hzを基本波として期待される第2高調波と第3高調波がそれぞれ200Hzと300Hzで発生していることがわかる。発生する第2高調波と第3高調波は基本波を聴感でブーストする効果がある。
【0021】
実験2:音楽信号を入力としてMatlabでシミュレーションに使用する。音楽信号を入力し、出力音楽信号と入力音楽信号の間のスペクトルの変化を観察する。
図5を参照すると、バーチャル低音アルゴリズムでブーストした前後の比較から、アルゴリズムによってブーストした後に生成された高調波信号が明らかであることがわかる。実際の聴感によって、このアルゴリズムによって処理されたオーディオ信号の低音効果は大幅にブーストされており、これは本発明のバーチャル低音アルゴリズムが効果的であることを示す。
【0022】
本発明は低音ブースト性能を備えた吊り下げ型オーディオデバイスデバイスを開示する。開放型ヘッドフォンの中で、低音再生能力が限られているか不足している小型スピーカーを使用することは避けられない。さらに、ヘッドフォンのオープン形状のせいで、低音漏れはインイヤー型ヘッドフォンやセミインイヤー型ヘッドフォンよりも深刻である。開放型ヘッドフォンにおいて低音ブーストを実現し、音楽の聴感を向上させることが非常に重要である。本発明の適用シーンでは、従来のEQ調整方法による低音ブーストする効果は比較的弱く、スピーカーの過負荷や損傷につながる可能性さえある。これに関して、本発明は、NLDに基づくバーチャル低音アルゴリズムを提案し、コンピューティングリソースが限られているヘッドフォンシステムにおいてより優れたバーチャル低音ブーストを達成し、音楽の聴感を改善し、より良い音楽の楽しみをユーザーもたらすことができる。
【0023】
以上は本願の好ましい実施例に過ぎず、それによって本願の特許範囲を制限するわけではない。本発明の技術範囲内で行われるすべての変更、同等の置換または改良は、本願の保護範囲に含まれる。
【誤訳訂正書】
【提出日】2023-11-15
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0018
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0018】
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】請求項5
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【請求項5】
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【外国語明細書】