(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039666
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
B60H1/00 102H
B60H1/00 102A
B60H1/00 102K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111529
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】小畑 育文
(72)【発明者】
【氏名】光本 高野
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA06
3L211BA42
3L211DA07
3L211DA11
(57)【要約】
【課題】スライド式ミックスドアを備えた車両用空調装置において、フロントガラスに発生する曇り現象を解消すること。
【解決手段】車両用空調装置(10)は、温風流路(45)と冷風流路(46)とに仕切る仕切壁(47)と、前記仕切壁(47)の下流側先端(47a)に配置されたスライド式ミックスドア(60)と、前記冷風流路(46)の冷風出口(46a)から前記温風流路(45)の温風出口(45a)へ冷風を導入する冷風導入路(80)と、前記温風出口(45a)からデフロスタ吐出部(51)へ温風を案内する温風ガイド通路(110)とを備えている。前記冷風導入路(80)は、前記ミックスドア(60)のドア板(61)から、前記下流側先端(47a)とは反対側へ窪んでいる。前記温風ガイド通路(110)のガイド導入口(111)は、前記冷風導入路(80)の流出口(81)から離れている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気流路(41)が設けられているハウジング(42)と、
前記空気流路(41)に設けられたエバポレータ(43)と、
前記エバポレータ(43)の下流に設けられたヒータユニット(44)と、
前記空気流路(41)を、前記ヒータユニット(44)を備えた温風流路(45)と、前記ヒータユニット(44)を迂回した冷風流路(46)とに、仕切る仕切壁(47)と、
前記仕切壁(47)の下流側先端(47a)に配置されたスライド式のドアであって、前記温風流路(45)へ向かう空気と前記冷風流路(46)へ向かう空気との比率を調整するミックスドア(60)と、
前記ミックスドア(60)のドア板(61)から、前記下流側先端(47a)とは反対側へ膨出した少なくとも1つの区画部(70)によって、前記ドア板(61)から、前記下流側先端(47a)とは反対側へ窪んだ凹状に構成されており、前記ミックスドア(60)が前記温風流路(45)へと向かう空気の比率を最大とせず、かつ前記温風流路(45)へと向かう空気の比率を前記冷風流路(46)へと向かう空気の比率よりも大きく調整したときに、前記冷風流路(46)の冷風出口(46a)から前記温風流路(45)の温風出口(45a)へ冷風を導入することが可能な、少なくとも1つの冷風導入路(80)と、
少なくとも1つの中空状のガイド部材(100)の内部空間(101)によって構成されており、前記冷風導入路(80)の流出口(81)から離れて位置したガイド導入口(111)を有し、前記温風流路(45)の前記温風出口(45a)からデフロスタ吐出部(51)へ温風を案内する、少なくとも1つの温風ガイド通路(110)と、
を備えている車両用空調装置(10,200~600)。
【請求項2】
前記区画部(70)及び前記冷風導入路(80)の各数量は、複数であり、
前記複数の区画部(70)及び前記複数の冷風導入路(80)は、前記冷風流路(46)から前記温風流路(45)へ延び、かつ、前記ドア板(61)に沿いつつ互いに間隔を有して並列に配列されており、
前記ガイド部材(100)は、前記冷風流路(46)及び前記温風流路(45)から流れてきた空気が混合する混合流路(48)側から見て、複数の前記区画部(70)同士の間の空間部(91)に対応する位置に設けられている、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空間部(91)は、前記冷風流路(46)から前記温風流路(45)への冷風の流れを規制する通風規制部(292,392)によって閉鎖されている、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記通風規制部(292)は、前記空間部(91)の範囲で、前記ドア板(61)から前記混合流路(48)側へ突出するとともに、前記混合流路(48)側から見てメッシュ状に構成されている、請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記通風規制部(392)は、前記ミックスドア(60)とは別部材によって構成されている、請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記温風ガイド通路(110)は、前記空間部(91)の中を通っている、請求項2に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置のなかには、スライド式ミックスドアによって、温風流路へ向かう空気と冷風流路へ向かう空気との比率を調整する形式のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で知られている車両用空調装置は、ケース内の空気流路に設けられて空気を冷却する冷却器と、冷却器の下流側に設けられて空気を加熱する加熱器とを備えている。加熱器を備えた温風流路と、加熱器を迂回した空気が流れる冷風流路と、を仕切る仕切壁の下流側先端には、ミックスドアが配置されている。このミックスドアは、スライド式のドアであって、温風流路へ向かう空気と冷風流路へ向かう空気との、比率を調整する。冷風流路を流れた冷風は冷風出口を通って混合流路(混合空間)に至る。温風流路を流れた温風は温風出口を通って混合流路に至る。
【0004】
スライドドア式ミックスドアによって、温風流路の温風出口をほぼ全開した状態(冷風流路の冷風出口が僅かに開いている状態)、つまり暖房気味の状態にすることにより、温風流路から各吐出部へ多くの温風を流すことは、可能である。しかし、フロントガラスへ向かって送風可能なデフロスタ吐出部の位置は、温風出口よりも、冷風出口に近い。冷風流路を流れる冷風は、僅かに開いている冷風出口を通って、デフロスタ吐出部へ流れ、フロントガラス付近の室内空気を冷やしてしまう。温風出口をほぼ全開状態にすることによって、室内を暖房気味に温度調和しているにもかかわらず、フロントガラスの結露を解消する能力が低下し得る。
【0005】
これに対し、冷風流路の冷風出口が僅かに開いている状態のときに、冷風出口からデフロスタ吐出部へ流れる冷風量を、抑制することが考えられる。
【0006】
一般に、冷風出口が僅かに開いている状態や一部が開いている状態では、冷風出口が全開とされているときに比べて、冷風流路の風圧が大きい。このため、冷風流路を流れる冷風が、僅かに開いている冷風出口と混合流路を通ってデフロスタ吐出部へ流れやすい。これを変えるには、冷風流路を流れる冷風の一部を温風流路へ導入することによって、冷風流路の風圧を下げればよい。この結果、冷風出口からデフロスタ吐出部へ流れる冷風量を、ある程度抑制することが可能である。デフロスタ吐出部に到達する冷風量を減少する技術である。
【0007】
これとは別に、温風流路と冷風流路との合流部位である混合流路(混合空間)にトンネル状の温風ガイド部材を配置した車両用空調装置が、特許文献2によって知られている。温風ガイド部材は、混合流路における冷風の流れを横切るように合流部位に配置されており、温風流路からの温風の一部をデフロスタ吐出部の近傍に向けて案内する。温風流路から温風ガイド部材へ流入した温風を、デフロスタ吐出部の近傍へ流出させることが可能である。デフロスタ吐出部に到達する温風量を増加する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-062725号公報
【特許文献2】特開2009-227026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、冷風流路を流れる冷風の一部を温風流路へ導入する技術と、特許文献2の温風ガイド部材とを、単に組み合わせるだけでは(デフロスタ吐出部に到達する冷風量を減少する技術と、デフロスタ吐出部に到達する温風量を増加する技術とを、単に組み合わせるだけでは)、フロントガラスに発生する曇り現象(結露現象)を効果的に解消できないおそれがある。
【0010】
冷風の一部は冷風流路から温風流路に導入され、温風出口を流れる温風によって混合流路に向けて流れる。このとき、温風流路に導入された冷風が温風ガイド部材に流入してしまい、デフロスタ吐出部の近傍に流出することがある。この結果、デフロスタ吐出部の空気の温度が低下して、結露現象を効果的に解消できないおそれにつながる。
【0011】
そこで、スライド式ミックスドアを備えた車両用空調装置において、フロントガラスに発生する曇り現象を、効果的に解消することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明によれば、第1に、
内部に空気流路(41)が設けられているハウジング(42)と、
前記空気流路(41)に設けられたエバポレータ(43)と、
前記エバポレータ(43)の下流に設けられたヒータユニット(44)と、
前記空気流路(41)を、前記ヒータユニット(44)を備えた温風流路(45)と、前記ヒータユニット(44)を迂回した冷風流路(46)とに、仕切る仕切壁(47)と、
前記仕切壁(47)の下流側先端(47a)に配置されたスライド式のドアであって、前記温風流路(45)へ向かう空気と前記冷風流路(46)へ向かう空気との比率を調整するミックスドア(60)と、
前記ミックスドア(60)のドア板(61)から、前記下流側先端(47a)とは反対側へ膨出した少なくとも1つの区画部(70)によって、前記ドア板(61)から、前記下流側先端(47a)とは反対側へ窪んだ凹状に構成されており、前記ミックスドア(60)が前記温風流路(45)へと向かう空気の比率を最大とせず、かつ前記温風流路(45)へと向かう空気の比率を前記冷風流路(46)へと向かう空気の比率よりも大きく調整したときに、前記冷風流路(46)の冷風出口(46a)から前記温風流路(45)の温風出口(45a)へ冷風を導入することが可能な、少なくとも1つの冷風導入路(80)と、
少なくとも1つの中空状のガイド部材(100)の内部空間(101)によって構成されており、前記冷風導入路(80)の流出口(81)から離れて位置したガイド導入口(111)を有し、前記温風流路(45)の前記温風出口(45a)からデフロスタ吐出部(51)へ温風を案内する、少なくとも1つの温風ガイド通路(110)と、を備えている車両用空調装置(10,200~600)が提供される。
【0014】
第2に、好ましくは、第1に記載の車両用空調装置であって、
前記区画部(70)及び前記冷風導入路(80)の各数量は、複数であり、
前記複数の区画部(70)及び前記複数の冷風導入路(80)は、前記冷風流路(46)から前記温風流路(45)へ延び、かつ、前記ドア板(61)に沿いつつ互いに間隔を有して並列に配列されており、
前記ガイド部材(100)は、前記冷風流路(46)及び前記温風流路(45)から流れてきた空気が混合する混合流路(48)側から見て、複数の前記区画部(70)同士の間の空間部(91)に対応する位置に設けられている。
【0015】
第3に、好ましくは、第2に記載の車両用空調装置であって、前記空間部(91)は、前記冷風流路(46)から前記温風流路(45)への冷風の流れを規制する通風規制部(292,392)によって閉鎖されている。
【0016】
第4に、好ましくは、第3に記載の車両用空調装置であって、前記通風規制部(292)は、前記空間部(91)の範囲で、前記ドア板(61)から前記混合流路(48)側へ突出するとともに、前記混合流路(48)側から見てメッシュ状に構成されている。
【0017】
第5に、好ましくは、第3に記載の車両用空調装置であって、前記通風規制部(392)は、前記ミックスドア(60)とは別部材によって構成されている。
【0018】
第6に、好ましくは、第2に記載の車両用空調装置であって、前記温風ガイド通路(110)は、前記空間部(91)の中を通っている。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、スライド式ミックスドアを備えた車両用空調装置において、フロントガラスに発生する曇り現象を、効果的に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1による車両用空調装置を説明する模式的な断面図である。
【
図2】
図1に示されるミックスドア、区画部及びガイド部材周りの断面図である。
【
図4】
図2に示される一部を断面したミックスドア、区画部及びガイド部材の斜視図である。
【
図5】実施例2による車両用空調装置のミックスドア、区画部及びガイド部材周りの断面図である。
【
図7】
図5に示されるミックスドア、区画部及び通風規制部の斜視図である。
【
図8】実施例3による車両用空調装置のミックスドア、区画部及び通風規制部の斜視図である。
【
図9】実施例4による車両用空調装置のミックスドア、区画部及びガイド部材周りの側面図である。
【
図10】
図9の10-10線に沿った断面図である。
【
図11】実施例5による車両用空調装置のミックスドア、区画部及びガイド部材をミックスドアのスライド方向から見た断面図である。
【
図12】実施例6による車両用空調装置のミックスドア、区画部及びガイド部材をミックスドアのスライド方向から見た断面図である。
【
図14】
図12に示される一部を断面状に示したミックスドア、区画部及び通風規制部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。
【0022】
<実施例1>
図1~
図4を参照しつつ、実施例1の車両用空調装置10を説明する。
【0023】
図1に示されるように、車両用空調装置10は、図示せぬ乗用自動車等の車両に搭載することが可能であって、車室内の空気の温度を調節(調和)する。この車両用空調装置10は、導入する外気と内気とを切り替えるインテークユニット20(内外気切替ユニット20)と、このインテークユニット20から導入した空気を送風する送風ユニット30と、この送風ユニット30から送風された空気を調和して車室へ供給する室内空調ユニット40とを備えている。
【0024】
インテークユニット20は、インテークボックス21とインテークドア22とフィルタ23とを備えている。インテークボックス21は、車室の外側から空気(外気)を導入可能な外気導入口21aと、車室の内側から空気(内気)を導入可能な内気導入口21bとを備えている。インテークドア22は、外気導入口21aと内気導入口21bとの開閉を切り替える。フィルタ23は、外気導入口21aと内気導入口21bとから導入された空気を清浄化する。
【0025】
室内空調ユニット40は、内部に空気流路41が設けられたハウジング42と、空気流路41に設けられたエバポレータ43と、このエバポレータ43の下流に設けられたヒータユニット44と、空気流路41を温風流路45と冷風流路46とに仕切る仕切壁47と、この仕切壁47の下流側先端47a(縁47a)に配置されたミックスドア60とを備えている。このミックスドア60は、例えば樹脂成型品であって、少なくとも1つのスライド式のドアである。実施例1では、ミックスドア60が1つである構成を例示している。
【0026】
ハウジング42の空気流路41は、エバポレータ43の下流に有している温風流路45及び冷風流路46と、これらの冷風流路46及び温風流路45から流れてきた空気が混合して調和空気となる混合流路48とを含む。温風流路45は、ヒータユニット44を備えている。冷風流路46は、ヒータユニット44を迂回したバイパス通路である。
【0027】
エバポレータ43は、送風ユニット30から送風された空気と、図示せぬ冷凍サイクル(ヒートポンプシステムを含む)の冷媒との熱交換により、空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0028】
ヒータユニット44は、温風流路45に備えた熱源であって、例えば電気ヒータ44aを備えている。この電気ヒータ44aは、特に安定した温度特性を有しているPTCヒータを採用することが、より好ましい。PTCヒータは、PTC素子(正特性サーミスタ素子)を有しており、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、空気を加熱する電気発熱式の空気加熱器である。
【0029】
ヒータユニット44は、電気ヒータ44aの他に、温水ヒータ44bを備えてもよい。この温水ヒータ44bは、電気ヒータ44aよりも、ヒータユニット44を通過する空気の流れ方向Rhの上流側に位置しており、エバポレータ43を通過した後の空気を温水によって加熱する。この温水ヒータ44bには、例えば、車両走行用駆動力を出力するエンジンを冷却した後の温かい冷却水(温水)が供給される。
【0030】
ヒータユニット44は、電気ヒータ44aのみ、または温水ヒータ44bのみを備えた熱源であってもよい。あるいは図示しないが、高温高圧の冷媒を放熱する放熱器であってもよい。
【0031】
上述のように、仕切壁47は、エバポレータ43の下流に設けられており、このエバポレータ43からの冷風が加熱されつつ流れる温風流路45と、エバポレータ43からの冷風がそのまま流れる冷風流路46(バイパス通路46)とに、仕切っている。
【0032】
エバポレータ43に対する、ヒータユニット44、温風流路45の温風出口45a、冷風流路46の冷風出口46a、仕切壁47の配置関係は、次のように設定されることが好ましい。
【0033】
仕切壁47の壁面47bは、エバポレータ43の流出面43aを向いている。例えば、仕切壁47の壁面47bは、エバポレータ43の流出面43aに対して平行(略平行を含む)である。冷風流路46は、エバポレータ43の流出面43aと仕切壁47の壁面47bとの間の空間である。温風流路45は、仕切壁47に対して、冷風流路46とは反対側の空間である。
【0034】
図2に示されるように、温風流路45の温風出口45a及び冷風流路46の冷風出口46aは、仕切壁47の下流側先端47a(下流側先端47aの近傍を含む)に位置している。しかも、温風出口45aと冷風出口46aは、下流側先端47aを介して、ミックスドア60のスライド方向Sdに連続している。ミックスドア60が、下流側先端47aに沿ってスライド運動をすることにより、温風出口45aと冷風出口46aの、それぞれの開度が変化する。
【0035】
より詳しく説明すると、温風出口45aと冷風出口46aとは、各流路45,46側へ凸となる円弧状(逆アーチ状)に形成されている。
【0036】
ミックスドア60は、各出口45a,46aの形状に合わせて、スライド方向Sdに円弧状に湾曲した板状のドア板61によって構成されている。このミックスドア60は、温風流路45へ向かう空気と冷風流路46へ向かう空気との比率を調整することが可能である。
【0037】
図1に示されるように、ハウジング42は、混合流路48の調和空気を吹き出すための、少なくとも3つの吐出部(吐出口)、つまりデフロスタ吐出部51とベント吐出部52とフット吐出部53とを有している。デフロスタ吐出部51は、調和空気をフロントガラス(図示せず)へ向かって吹き出し可能である。ベント吐出部52は、調和空気を前席の乗員の上半身へ向かって吹き出し可能である。フット吐出部53は、調和空気を前席の乗員の脚部へ向かって吹き出し可能である。デフロスタ吐出部51は、第1ドア54によって開閉可能である。ベント吐出部52は、第2ドア55によって開閉可能である。フット吐出部53は、第3ドア56によって開閉可能である。各ドア54~56は、例えばスイング式ドア(バタフライ式ドアまたは片持ち式ドア)によって構成される。
【0038】
次に、ミックスドア60について詳しく説明する。
図2~
図4に示されるように、ミックスドア60は、樹脂成型品であって、混合流路48側へ膨出している少なくとも1つの区画部70と、この区画部70の内側に凹状に構成されている(区画部70に囲まれている)少なくとも1つの冷風導入路80とを、備えている。区画部70及び冷風導入路80は、冷風出口46aから温風出口45aへ向かって延びている。
【0039】
詳しく述べると、区画部70は、内側に冷風導入路80を有するように、ドア板61から、下流側先端47aとは反対側(混合流路48側)へ膨出しており、混合流路48側に開放している。なお、この区画部70は、ドア板61に一体的に設けられていればよく、ドア板61に対して一体成形の構成や、別部材を接合する構成であってもよい。
【0040】
ミックスドア60のスライド方向Sdから見た、区画部70の断面形状は、
図3に示されるように逆U字状である。例えば、区画部70は、ドア板61から起立した一対の縦板71,71と、これらの縦板71,71の上端間を塞いだ天板72とによって、逆U字状断面に構成される。なお、区画部70は逆U字状であればよく、例えば台形状、テーパー状、円弧状であってもよい。天板72は、ドア板61に沿った円弧状の構成である。
【0041】
冷風導入路80は、区画部70によって、ドア板61から、下流側先端47aとは反対側(混合流路48側)へ窪んだ凹状(ミックスドア60のスライド方向Sdに沿った溝状)の空気通路であって、下流側先端47a側に開放している。ミックスドア60のスライド方向Sdから見た冷風導入路80の断面形状は、
図3に示される矩形状であることが好ましいものの、これに限定されず、例えば台形状、テーパー状、円弧状であってもよい。
【0042】
ここで、
図2に示されるように、ミックスドア60が温風流路45へと向かう空気の比率を最大とせず、かつ温風流路45へと向かう空気の比率を冷風流路46へと向かう空気の比率よりも大きく調整した状態のことを、「冷風流路46の開度が小状態」という。少なくとも冷風流路46の開度が小状態のとき、つまりミックスドア60によって冷風流路46の冷風出口46aを僅かに開けた状態のときには、冷風導入路80は、冷風流路46の冷風出口46aから温風流路45の温風出口45aへ、冷風を導入することが可能である。
【0043】
上述のように、冷風導入路80は、区画部70によって、ミックスドア60のスライド方向Sdに沿った溝状の構成である。この溝状の冷風導入路80の、温風流路45側の端81を「第1端81(流出口81)」といい、冷風流路46側の端82を「第2端82(流入口82)」という。第1端81は、ミックスドア60によって温風流路45を閉じる方の端であって、区画部70の第1端板73により区画されている。第2端82は、ミックスドア60によって冷風流路46を閉じる方の端であって、区画部70の第2端板74により区画されている。第1端板73と第2端板74とは、ドア板61から起立しつつ互いに接近する方へ傾いている。このため、冷風出口46aから温風出口45aへの、冷風の導入がスムースである。
【0044】
ミックスドア60が温風流路45を全閉状態とした場合には、第2端82は仕切壁47の下流側先端47aよりも温風流路45側に位置する。ミックスドア60が冷風流路46を全閉状態とした場合には、第1端81は仕切壁47の下流側先端47aよりも冷風流路46側に位置する。どちらの場合にも、温風流路45と冷風流路46の間を、空気が冷風導入路80を通って流れないように、規制される。
【0045】
図2に示されるように、冷風出口46aが、ミックスドア60によって僅かに開けられた状態で、冷風導入路80は、冷風出口46aから導入した冷風を、第1端81から温風出口45aへ導入可能である。これが、第1端81のことを「冷風導入路80の流出口81」と称する理由である。
【0046】
冷風出口46aが、ミックスドア60によって僅かに開けられた状態で、冷風導入路80が、冷風出口46aから導入した冷風を、第1端81から温風出口45aへ導入可能である理由を説明する。
【0047】
図1を参照する。冷風流路46には、エバポレータ43の流出面43aから流出した冷風が供給される。温風流路45には、エバポレータ43の流出面43aから流出した冷風がヒータユニット44を通過した後、供給される。ここで、温風流路45における空気の圧力(静圧)は、ヒータユニット44によって減じられる。すなわち、温風流路45の空気の圧力(静圧)と冷風流路46の空気の圧力(静圧)には圧力差があり、温風流路45の空気の圧力(静圧)は冷風流路46の空気の圧力(静圧)よりも低い。そして、
図2に示されるように、冷風流路46と温風流路45とを冷風導入路80にて連通すると、冷風導入路80には、圧力の高い冷風流路46の冷風出口46aから冷風が導入(流入)され、圧力の低い温風流路45の温風出口45aへ導出(流出)する。また、この温風流路45の空気の圧力(静圧)と冷風流路46の空気の圧力(静圧)との圧力差は、ミックスドア60が、温風流路45へと向かう空気の比率を冷風流路46へと向かう空気の比率よりも大きく調整したときに、大きくなる。
【0048】
区画部70及び冷風導入路80の各数量は、複数であることが好ましい。実施例1では、
図3及び
図4に示されるように、区画部70及び冷風導入路80の各数量が2つである構成を、例示している。
【0049】
各区画部70及び各冷風導入路80は、冷風流路46から温風流路45へ延び、かつ、ドア板61に沿いつつ互いに一定の間隔を有して並列に配列されている。このため、各区画部70同士の間には、空間部91を有する。この空間部91は、ドア板61と、各区画部70の相対する縦板71,71とによって、画成されている。
【0050】
図1に示されるように、車両用空調装置10は、少なくとも1つの中空状のガイド部材100と、このガイド部材100の内部空間101によって構成されている少なくとも1つの温風ガイド通路110とを、備えている。ガイド部材100は、例えば樹脂成型品である。
【0051】
温風ガイド通路110は、温風流路45の温風出口45aからデフロスタ吐出部51へ温風を案内する空気通路であって、混合流路48に位置している。この温風ガイド通路110は、温風出口45aに向かって開口したガイド導入口111と、デフロスタ吐出部51に向かって開口したガイド導出口112とを、有している。
【0052】
図2に示されるように、ガイド導入口111は、ガイド部材100の第1の開口端102に開口している。ガイド導出口112は、ガイド部材100の第2の開口端103に開口している。
【0053】
このガイド導入口111は、温風出口45aの近傍に、かつ、ミックスドア60のスライド運動に影響を与えない高さに位置している。例えば、ガイド部材100の全体が、ミックスドア60及び区画部70の天板72と干渉しない高さに位置している。さらに、このガイド導入口111は、温風出口45aに対し、ミックスドア60のスライド方向Sdの全体(ほぼ全体を含む)にわたって開口していることが、好ましい。ミックスドア60は、温風出口45aの開度を調整するのに応じて、温風出口45aに対するガイド導入口111の開度も調整する。
【0054】
ここで、
図4に示されるように、ミックスドア60及びガイド部材100(温風ガイド通路110)を、混合流路48側から仕切壁47の下流側先端47aへ向かって(矢印R1方向に)見たときに、ミックスドア60のスライド方向Sdに対して交差する方向R2のことを、「スライド交差方向R2」という。
【0055】
ガイド部材100及び温風ガイド通路110は、全体的に、各区画部70同士の間の空間部91の上に沿って延びている。このため、少なくともガイド導入口111は、冷風導入路80の流出口81(第1端81)からスライド交差方向R2へ離れて位置している。このように、ガイド導入口111は、冷風導入路80の流出口81(第1端81)から離れて位置していることになる。
【0056】
このように、ガイド部材100は、冷風流路46及び温風流路45から流れてきた空気が混合する混合流路48側(矢印R1方向)から見て、複数の区画部70同士の間の複数の空間部91に対応する位置に設けられている。
【0057】
図4に示されるように、ミックスドア60は、ラックアンドピニオン機構120によってスライド方向Sdに駆動される。このラックアンドピニオン機構120は、図示せぬモータ(駆動源)によって駆動されるピニオン121と、このピニオン121に噛み合うようにミックスドア60のドア板61の板面に形成されたラック122と、によって構成されている。このラックアンドピニオン機構120は、混合流路48側に位置していることが好ましい。
【0058】
上記実施例1の車両用空調装置10の説明をまとめると、次の通りである。
【0059】
図2及び
図4に示されるように、車両用空調装置10は、
ミックスドア60のドア板61から、下流側先端47aとは反対側へ膨出した少なくとも1つの区画部70によって、ドア板61から、下流側先端47aとは反対側へ窪んだ凹状に構成されており、ミックスドア60が温風流路45へと向かう空気の比率を最大とせず、かつ温風流路45へと向かう空気の比率を冷風流路46へと向かう空気の比率よりも大きく調整したときに、冷風流路46の冷風出口46aから温風流路45の温風出口45aへ冷風を導入することが可能な、少なくとも1つの冷風導入路80と、少なくとも1つの中空状のガイド部材100の内部空間101によって構成されており、冷風導入路80の流出口81から離れて位置した(冷風導入路80の流出口81から、スライド交差方向R2方向において重複しないよう位置した)ガイド導入口111を有し、温風流路45の温風出口45aからデフロスタ吐出部51へ温風を案内する、少なくとも1つの温風ガイド通路110と、を備えている。
【0060】
スライドドア式ミックスドア60を有している車両用空調装置10が、更に冷風導入路80と温風ガイド通路110とを備えている。冷風導入路80は、冷風流路46の冷風出口46aから温風流路45の温風出口45aへ、冷風を導入可能である。ミックスドア60によって温風流路45へと向かう空気の比率を冷風流路46へと向かう空気の比率よりも大きく調整したとき、つまり、冷風出口46aの一部が開いている状態のときに、冷風流路46を流れる冷風の一部を温風流路45へ導入することによって、冷風流路46の風圧を下げることができる。この結果、冷風出口46aからデフロスタ吐出部51へ流れる冷風量を抑制することができる。
【0061】
温風ガイド通路110は、温風流路45の温風出口45aからデフロスタ吐出部51へ、温風を案内可能である。このため、温風流路45から温風ガイド通路110へ流入した温風を、デフロスタ吐出部51の近傍へ流出させることができる。
【0062】
冷風出口46aからフロントガラス(図示せず)付近へ流れる冷風量を抑制するとともに、温風流路45からフロントガラス付近へ温風を強制的に流すことによって、フロントガラス付近の室内空気の冷え過ぎを、防止することができる。この結果、フロントガラスに発生する曇り現象を、効果的に解消することができる。
【0063】
しかも、温風ガイド通路110のガイド導入口111は、冷風導入路80の流出口81(第1端81)から離れて位置している(例えば、
図4に示されるように、スライド交差方向R2へ位置がずれている)。このため、冷風導入路80の流出口81(第1端81)から温風流路45の温風出口45aへ流れた冷風が、温風ガイド通路110のガイド導入口111へ流入しないように、車両用空調装置10を構成することができる。温風ガイド通路110に取り込んだ温風の温度が、冷風導入路80から温風出口45aへ導入した冷風によって低下しないように、抑制することができる。この結果、フロントガラス付近の室内空気の冷え過ぎを、より一層防止することができる。フロントガラスに発生する曇り現象を、より効果的に解消することができる。
【0064】
さらには、区画部70及び冷風導入路80の各数量は、複数である。複数の区画部70及び複数の冷風導入路80は、冷風流路46から温風流路45へ延び、かつ、ドア板61に沿いつつ互いに間隔を有して並列に配列されている(スライド交差方向R2へ並列に配置されている)。ガイド部材100は、冷風流路46及び温風流路45から流れてきた空気が混合する混合流路48側(矢印R1方向)から見て、複数の区画部70同士の間の空間部91に対応する位置に設けられている。
【0065】
このように、ガイド部材100は、混合流路48側から見て、各区画部70同士の間の空間部91に対応する位置に設けられている。つまり、ガイド部材100は、混合流路48側から見て区画部70に重なっていない。このようにして、複数の冷風導入路80の流出口81(第1端81)から温風流路45の温風出口45aへ流れた冷風が、温風ガイド通路110へ流入しないよう、車両用空調装置10を構成することができる。
【0066】
【0067】
実施例2の車両用空調装置200は、上記
図1~4に示される実施例1のミックスドア60を、
図5~
図7に示されるミックスドア260に変更したことを特徴とする。車両用空調装置200の、その他の構成については、上記実施例1による車両用空調装置10と共通する。実施例1による車両用空調装置10と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0068】
実施例2のミックスドア260は、樹脂成型品であって、空間部91を通風規制部292によって閉鎖している。この通風規制部292は、冷風流路46から温風流路45への冷風の流れを規制するものであって、空間部91の全体にわたって設けられることが好ましい。例えば、この通風規制部292の輪郭は、
図7に示されるように区画部70の輪郭に合致している。通風規制部292の上面293は、区画部70の天板72の上面に対して同一面である。通風規制部292の第1傾斜面294は、区画部70の傾斜した第1端板73の外面に対して同一面である。通風規制部292の第2傾斜面295は、区画部70の傾斜した第2端板74の外面に対して同一面である。
【0069】
この通風規制部292は、空間部91の範囲で、ドア板61から混合流路48側へ突出するとともに、混合流路48側(矢印R1方向)から見てメッシュ状に構成されている。ここで、メッシュ状には、グリッド状やハニカム状を含む。
【0070】
詳しく述べると、この通風規制部292は、ドア板61からから混合流路48側へ起立した縦板状の複数の板材296の組合せによって、メッシュ状に構成されている。複数の板材296は、ミックスドア260を樹脂成型する場合に、混合流路48側への型抜きが可能に、全て互いに平行に整列している。例えば、
図5に示されるように、円弧状のドア板61の接線L1に対して直交する基準線L2を基準とし、この基準線L2に対して全ての板材296が平行に整列している。このため、この基準線L2に沿う方向へ、成型用の型を容易に型抜きすることができる。
【0071】
上記実施例2の車両用空調装置200の説明をまとめると、次の通りである。
【0072】
空間部91は、冷風流路46から温風流路45への冷風の流れを規制する通風規制部292によって閉鎖されている。通風規制部292によって空間部91を閉鎖することで、冷風流路46を流れる冷風の一部が、空間部91を経由して温風ガイド通路110へ流入することを、より確実に防止できる。
【0073】
さらには、通風規制部292は、空間部91の範囲で、ドア板61から混合流路48側へ突出するとともに、混合流路48側(矢印R1方向)から見てメッシュ状に構成されている。
【0074】
空間部91に設けられた通風規制部292は、ドア板61から混合流路48側へ突出することによって、冷風が冷風流路46から温風流路45へ向かって流れにくいように、バッフルの役割(空気の流れを阻害する役割)を果たすことができる。
【0075】
しかも、ドア板61から混合流路48側へ突出した通風規制部292は、混合流路48側から見てメッシュ状に構成されている。ミックスドア260を樹脂部材の射出成形工程を利用して製作する場合、メッシュ状であれば空間部91の通風を確実に規制できるうえに、射出成型による製作が可能であり、さらに軽量化にも寄与し、好ましい。
【0076】
空間部91をメッシュ状の樹脂材で埋めることで、ミックスドア260の強度を向上できる。
【0077】
実施例2による車両用空調装置200は、実施例2の効果の他に、上記実施例1の車両用空調装置10と同様の効果を発揮することができる。
【0078】
<実施例3>
図8を参照しつつ、実施例3の車両用空調装置300を説明する。
図8は上記
図7に相当する。
【0079】
実施例3の車両用空調装置300は、上記
図5~
図7に示される実施例2のミックスドア260を、
図8に示されるミックスドア360に変更したことを特徴とする。車両用空調装置300の、その他の構成については、上記実施例2による車両用空調装置200と共通する。実施例2による車両用空調装置200と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0080】
実施例3のミックスドア360は、樹脂成型品であって、空間部91を通風規制部392によって閉鎖している。この通風規制部392は、上記実施例2の通風規制部292(
図7参照)と同様に、冷風流路46から温風流路45への冷風の流れを規制するものであって、空間部91の全体にわたって設けられることが好ましい。例えば、この通風規制部392の輪郭は、区画部70の輪郭、及び、実施例2の通風規制部292の全体の輪郭に合致していることが、好ましい。
【0081】
さらに、この通風規制部392は、ミックスドア360とは別部材(例えばスポンジやゴム材)によって構成されており、ミックスドア360に対して接着等の固着により、一体化を図ることができる。
【0082】
このように、ミックスドア360とは別部材によって、通風規制部392を構成するので、ミックスドア360の材料や形状に限定されることなく、通風規制部392の設計の自由度を増すことができる。
【0083】
実施例3による車両用空調装置300は、実施例3の効果の他に、上記実施例1の車両用空調装置10や実施例2による車両用空調装置200と、同様の効果を発揮することができる。
【0084】
【0085】
実施例4の車両用空調装置400は、上記
図1~4に示される実施例1の、ミックスドア60に対するガイド部材100及び温風ガイド通路110の配置関係を変更したことを特徴とする。車両用空調装置400の、その他の構成については、上記実施例1による車両用空調装置10と共通する。実施例1による車両用空調装置10と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0086】
ミックスドア60、区画部70、冷風導入路80、空間部91、ガイド部材100及び温風ガイド通路110の各構成は、実施例1と同じである。
【0087】
実施例4の車両用空調装置400の特徴は、温風ガイド通路110が空間部91の中を通っていることである。このため、温風ガイド通路110によって、空間部91を容易に閉鎖することができるとともに、冷風流路46を流れる冷風の一部が空間部91を経由して温風流路45に流入することを確実に防止できる。しかも、空間部91の中に温風ガイド通路110を通すことによって、その分、混合流路48の大きさを、小さく設定することができる。これにより、車両用空調装置400を小型化できる。
【0088】
実施例4の車両用空調装置400は、実施例4の効果の他に、上記実施例1の車両用空調装置10と同様の効果を発揮することができる。
【0089】
<実施例5>
図11を参照しつつ、実施例5の車両用空調装置500を説明する。
図11は上記
図3に相当する。
【0090】
実施例5の車両用空調装置500は、上記
図1~4に示される実施例1のミックスドア60を、
図11に示されるミックスドア560に変更するとともに、ガイド部材100の数量を変更したことを特徴とする。車両用空調装置500の、その他の構成については、上記実施例1による車両用空調装置10と共通する。実施例1による車両用空調装置10と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0091】
ミックスドア560は、区画部70及び冷風導入路80の数量を、3つ以上に増やしたことを特徴とする。ガイド部材100及び温風ガイド通路110の各数量も、増やして複数(2つ以上)にしている。つまり、区画部70及び冷風導入路80の各数量に対して、空間部91、ガイド部材100及び温風ガイド通路110の各数量は、1つずつ少ない。実施例5では、区画部70及び冷風導入路80の数量が3つであり、空間部91、ガイド部材100及び温風ガイド通路110の数量が2つである構成を、例示している。各ガイド部材100は、各空間部91に対応する位置に設けられている。
【0092】
以上の説明から明らかなように、区画部70、冷風導入路80、ガイド部材100及び温風ガイド通路110の各数量は、複数である。複数の区画部70及び複数の冷風導入路80は、冷風流路46から温風流路45へ延び、かつ、ドア板61に沿いつつ互いに間隔を有して並列に配列されている。複数のガイド部材100は、冷風流路46及び温風流路45から流れてきた空気が混合する混合流路48側(矢印R1方向)から見て、複数の区画部70同士の間の複数の空間部91に対応する位置に設けられている。
【0093】
このように、複数のガイド部材100及び温風ガイド通路110は、混合流路48側から見て、各区画部70同士の間の各空間部91に対応する位置に設けられている。つまり、ガイド部材100は、混合流路48側から見て区画部70に重なっていない。このようにして、複数の冷風導入路80の流出口81(
図4参照)から温風流路45の温風出口45a(
図4参照)へ流れた冷風が、複数の温風ガイド通路110へ流入しないよう、車両用空調装置500を構成することができる。
【0094】
実施例5による車両用空調装置500は、実施例5の効果の他に、上記実施例1の車両用空調装置10と同様の効果を発揮することができる。
【0095】
なお、実施例5による車両用空調装置500では、空間部91は、上記実施例2の通風規制部292(
図5~
図7参照)、または、上記実施例3の通風規制部392(
図8参照)によって、閉鎖される構成にすることができる。また、温風ガイド通路110は、
図9及び
図10に示される上記実施例3のように、空間部91の中を通る構成にすることができる。
【0096】
【0097】
実施例6の車両用空調装置600は、上記
図5~7に示される実施例2の、1つのミックスドア260を、
図12~
図14に示される、複数のミックスドア660に変更するとともに、ガイド部材100の数量を変更したことを特徴とする。車両用空調装置600の、その他の構成については、上記実施例2による車両用空調装置200と共通する。実施例2による車両用空調装置200と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0098】
実施例6では、
図12に示されるように、ミックスドア660の数量を複数(例えば2つ)にしたことを例示している。複数のミックスドア660は、スライド交差方向R2に並列に配置されている。この場合に、各ミックスドア660は、スライド交差方向R2の中心線CLに対して、互いに線対称または非線対称な構成とすることができる。全てのミックスドア660は、スライド方向Sd(
図12の表裏方向)へ同期して、スライド可能である。例えば、図示せぬ1つのモータ(駆動源)によって、ラックアンドピニオン機構120により駆動される。
【0099】
温風流路45の温風出口45aの大きさや、冷風流路46の冷風出口46aの大きさがスライド交差方向R2方向において大きい場合であっても、ミックスドア660の数量を複数にすることによって、十分に対応することができる。
【0100】
さらに、実施例6では、
図12~
図14に示されるように、1つのミックスドア660に対して、区画部70及び冷風導入路80の数量が、複数(例えば2つ)であることを例示している。この実施例6では、ガイド部材100及び温風ガイド通路110の各数量を、区画部70及び冷風導入路80の数量と同数(例えば2つ)にしている。つまり、区画部70及び冷風導入路80の数量に対して、空間部91の数量は、1つ少ない。
【0101】
そこで、各ミックスドア660には、空間部91に相当する1つの補助空間部670が追加されている。詳しく述べると、各ミックスドア660には、ドア板61から起立した補助の縦板680が設けられている。この補助の縦板680は、ミックスドア660に対し並列に配置されている複数の区画部70の、スライド交差方向R2の外側に位置しており、区画部70の縦板71に対して平行である。ミックスドア660は、ドア板61と区画部70の縦板71と補助の縦板680とによって、補助空間部670を構成している。この補助空間部670は、ミックスドア660に対し、複数の区画部70よりもスライド交差方向R2外側に位置している。この補助空間部670は、空間部91と同じ大きさに区画することが可能である。あるいは補助空間部670はスライド交差方向R2方向において、空間部91と異なる大きさに区画することが可能である。複数のガイド部材100の1つは、補助空間部670に対応する位置に設けられる。
【0102】
このように、区画部70及びガイド部材100の数量に対して、空間部91の数量が少ない場合であっても、補助空間部670を追加することによって対応することができる。
【0103】
空間部91及び補助空間部670は、通風規制部292によって閉鎖される構成にすることができる。通風規制部292は、上記実施例2の通風規制部292(
図5~
図7参照)と同じ構成である。また、空間部91及び補助空間部670は、上記実施例3の通風規制部392(
図8参照)によって閉鎖される構成にすることができる。これらの場合には、温風ガイド通路110は、空間部91及び補助空間部670の上を通る。
【0104】
一方、空間部91及び補助空間部670が、通風規制部292や通風規制部392(
図8参照)によって閉鎖されない場合には、温風ガイド通路110は、空間部91の中や補助空間部670の中を通る構成にすることができる。
【0105】
実施例6の車両用空調装置600は、実施例6の効果の他に、上記実施例2の車両用空調装置10と同様の効果を発揮することができる。
【0106】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、各実施例に限定されるものではない。
例えば、各実施例の車両用空調装置10,200~600は、任意の2つ以上の実施例同士を組み合わせることができる。
また、スライド式ミックスドア60,260,360,560.660は、湾曲した構成に限定されず、温風出口45a及び冷風出口46aの配置や形状に合わせた構成であればよく、例えば平板状の構成であってもよい。
また、冷風導入路80を構成する区画部70や、温風ガイド通路110を構成するガイド部材100の、形状や大きさ、数量、配列ピッチについては、風量を勘案して適宜設定すればよい。
また、ガイド部材100は、混合流路48側(矢印R1方向)から見て、空間部91や補助空間部670に対応する位置に設けられていればよい。
また、温風ガイド通路110のガイド導入口111は、冷風導入路80の流出口81(第1端81)からスライド交差方向R2の方向において重複しないように離れて位置していればよく、形状や大きさ、温風流路45の温風出口45aに対する位置については、適宜設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の車両用空調装置10,200~600は、乗用自動車等の車両に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0108】
10,200~600 車両用空調装置
41 空気流路
42 ハウジング
43 エバポレータ
44 ヒータユニット
45 温風流路
45a 温風出口
46 冷風流路
46a 冷風出口
47 仕切壁
47a 下流側先端
51 デフロスタ吐出部
60,260,360,560.660 ミックスドア
61 ドア板
70 区画部
80 冷風導入路
81 冷風導入路の流出口(第1端)
91 空間部
100 ガイド部材
101 内部空間
110 温風ガイド通路
111 ガイド導入口