(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039689
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
F24F6/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144242
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】太田 智
(72)【発明者】
【氏名】小川 洸太
(72)【発明者】
【氏名】桂 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】竹田 審
【テーマコード(参考)】
3L055
【Fターム(参考)】
3L055BA02
3L055DA05
(57)【要約】
【課題】室内湿度を湿度センサで正確に検出することができる加湿器を提供する。
【解決手段】送風ファン6で送風した乾燥空気の一部が、第1の壁面16に設けた開口17を通過して空間Aに流入し、湿度センサ14を流通するように配置したので、送風ファン6直近の下流である湿度センサ14付近が、気化フィルタ9の下流よりも正圧となるため、加湿空気が湿度センサ14へ流入することを防止し、外気湿度の検出精度を向上することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体と、
当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、
前記器具本体外の空気を取り入れる吸込口と、
当該吸込口を通過した空気が流通する送風経路と、
当該送風経路外に設けられ、前記吸込口から取り入れた空気の湿度を検知する湿度センサと、
当該送風経路中かつ前記送風ファンの下流に設けられ空気を加湿する気化フィルタと、
当該気化フィルタで発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する吹出口と、
前記送風ファンの外周を囲うファンケーシングと、
当該ファンケーシング、又は前記湿度センサが設置されている空間と前記気化フィルタより上流の前記送風経路を隔てる第1の壁面、に設けた開口と、を備え、
前記送風ファンで送風した空気の一部が、前記開口を通過して前記湿度センサを流通することを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記湿度センサが設置されている空間と前記気化フィルタより下流の前記送風経路を隔てる第2の壁面に、前記湿度センサを流通した空気が通過する通風孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記吸込口に装着可能であり、空気中の塵埃を捕集するエアフィルタを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気化式の加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、湿度センサを収容したセンサケースの開口部が、本体ケースとシール部材を介して取り付けられ、開口部と対向する内壁に室内の空気を導入する通気口を設けたことで、加湿器内部の加湿空気の影響を受けずに室内湿度を正確に検出できる加湿器があった。(例えば、特許文献1)
【0003】
また、通常の吸込口とは別に、湿度センサに流通させるための空気をバイパス吸込口から取り込み、バイパス通風経路を介して、吸込口から流入した空気が流通する通風経路と合流したのち、気化フィルタを通過させて加湿空気を発生させる加湿装置があった。(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-057171号公報
【特許文献2】特開2008-267759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の加湿器では、加湿空気の通風経路はセンサケース内に比べて正圧となっているため、シール部材の経年劣化に伴い僅かな隙間が発生した場合、加湿空気がセンサケース内に侵入し、湿度の検知精度が低下する虞がある。
【0006】
また、特許文献2の加湿装置では、湿度センサを流通した空気がバイパス通風経路を介して、吸込口から流入した通風経路と合流したのち、気化フィルタを通過させる構成ため、気化フィルタの上流に合流する空間が必要となり、加湿器本体のサイズが大きくなってしまう虞がある
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の加湿器では、器具本体と、当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、前記器具本体外の空気を取り入れる吸込口と、当該吸込口を通過した空気が流通する送風経路と、当該送風経路外に設けられ、前記吸込口から取り入れた空気の湿度を検知する湿度センサと、当該送風経路中かつ前記送風ファンの下流に設けられ空気を加湿する気化フィルタと、当該気化フィルタで発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する吹出口と、前記送風ファンの外周を囲うファンケーシングと、当該ファンケーシング、又は前記湿度センサが設置されている空間と前記気化フィルタより上流の前記送風経路を隔てる第1の壁面、に設けた開口と、を備え、前記送風ファンで送風した空気の一部が、前記開口を通過して前記湿度センサを流通することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2の加湿器では、前記湿度センサが設置されている空間と前記気化フィルタより下流の前記送風経路を隔てる第2の壁面に、前記湿度センサを流通した空気が通過する通風孔を設けたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3の加湿器では、前記吸込口に装着可能であり、空気中の塵埃を捕集するエアフィルタを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、送風ファンで送風した乾燥空気の一部が、開口を通過して湿度センサを流通するようにしたので、送風ファン直近の下流である湿度センサ付近が、気化フィルタの下流よりも正圧となるため、加湿空気が湿度センサへ流入することを防止し、外気湿度の検出精度を向上することができる。
【0011】
また、湿度センサ部を送風ファンの下流かつ加湿フィルタを通過する風路とは別の風路に設置するので、吸込口と送風ファンの間に合流空間を設ける必要が無く、吸込口と送風ファンを近接させることができるため、加湿器全体のサイズを小型化することができる。
【0012】
また、湿度センサが設置されている空間と気化フィルタより下流の送風経路を隔てる第2の壁面に、湿度センサを流通した空気が通過する通風孔を設けたので、湿度センサを通過した空気が、気化フィルタより下流の送風経路に合流し、吹出口より外部へ送出することで、加湿器本体の筐体の隙間等から空気が流出せず、ヒューヒューという風切り音が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の一実施形態における加湿器を図に基づいて説明する。
【0015】
1は加湿器の器具本体、2は器具本体1内の下部に設けられた水槽で、カートリッジ式の給水用タンク3によって給水される。前記給水用タンク3は、器具本体1の上面から器具本体1内に挿入され、水槽2上に載置されて当該水槽2内に一定量の水を供給する。4は室内の乾燥した空気(乾燥空気)を器具本体1内に取り入れる吸込口で、器具本体1の側面部に開口している。5は室内に湿った空気(加湿空気)を送る吹出口で、器具本体1の上面に開口している。6は吸込口4から吹出口5に至る送風経路12中に設置されたシロッコファン等からなる送風ファン、7は送風ファン6を駆動するモータである。送風ファン6の下流側には、空気を加熱するヒータ8と、吸水性の良いシート状の素材をプリーツ折りした横長方形の気化フィルタ9が設置される。当該気化フィルタ9の下端部は水槽2内の水に浸漬されており、毛細管現象にて水を全面に行き渡るように吸い上げる。
【0016】
水槽2は、給水用タンク3によって給水される給水部10と、気化フィルタ9が設置される気化フィルタ設置部11が並べて配置され、両者は樹脂により一体に成形されており、共に底部で連なって同一レベルの水を貯水する。そして、この水槽2は器具本体1の背面から取り出し可能となっている。
【0017】
送風ファン6によって吸込口4から取り入れた室内の乾燥空気は、ヒータ8を通過後、水槽2の水により湿潤した気化フィルタ9を通過することで加湿空気となって、吹出口5から室内へ送出する。
【0018】
13は送風ファン6の外周を囲うように設置されるファンケーシングである。吸込口4から送風ファン6の中央部に吸い込まれた空気は、送風ファン6の外周より遠心状に送風し、ファンケーシング13内の渦巻き状の風路(図示せず)を送風ファン6の回転方向に沿って流通し、送風経路12の下流側へ送出される。
【0019】
14は送風経路12の外側に設けられ、空気中の湿度を検知する湿度センサである。湿度センサ14は基板15に実装され、基板15を器具本体1内上部に固定することで湿度センサ14の位置を固定している。ここで、
図2において、湿度センサ14及び基板15が設置されている空間をAで示す。
【0020】
気化フィルタ9より上流の送風経路12と、空間Aを隔てる構造物を第1の壁面16とする。第1の壁面16は、送風経路12において吸込口4から取り入れた乾燥空気が通過する部分であり、ファンケーシング13も含まれる。
【0021】
ここで、第1の壁面16に開口17を設けることで、送風ファン6により送出した乾燥空気の一部が、開口17を通過し空間A内に流入する。なお、開口17の詳細については後述する。
【0022】
気化フィルタ9より下流の送風経路12と、空間Aを隔てる構造物を第2の壁面18とする。当該第2の壁面18は、送風経路12において気化フィルタ9を通過した加湿空気が通過する部分である。
【0023】
ここで、第2の壁面18に通風孔19を設けることで、開口17を通過し空間A内を流通した乾燥空気が、通風孔19を通過し加湿空気と合流する。なお、通風孔19の詳細については後述する。
【0024】
20は不織布等のシート状の濾材で構成されたHEPAフィルタ等からなるエアフィルタであり、空気中の微細な塵埃やPM2.5等の微小粒子を捕集して空気清浄を行い、吸込口4に形成された取り付け部(図示せず)に対して自在に装着、及び脱着が可能である。
【0025】
次に、本発明の一実施形態における開口17及び通風孔19の詳細な構造と、これにより生じる作用効果について、
図2及び
図3に基づいて説明する。
【0026】
図2を参照する。送風ファン6により送出した乾燥空気の一部が、第1の壁面16に設けた開口17を通過して空間Aに流入し、湿度センサ14を流通する。このとき、湿度センサ14付近は送風ファン6の送風直後で正圧となっており、仮に気化フィルタ9の下流の送風経路12と湿度センサ14付近とが連通する経路があったとしても、湿度センサ14付近は気化フィルタ9の下流よりも正圧となるため、加湿空気が湿度センサ14へ流入することを防止して、室内の乾燥空気の湿度を湿度センサ14で正確に検出することができる。
【0027】
ここで、開口17を通過する風量は、送風経路12を通過する風量に比べて十分小さい風量となるように、開口17の開口面積を設定する。なぜならば、加湿空気として吹出口5から送風する送風経路12の風量を、極力低下させないためである。そして、開口17の設置位置は、
図3に示すように、ファンケーシング13の送風ファン6に対向する側面に設けることが望ましい。つまり、送風ファン6の送風直後となるファンケーシング13は、より大きな正圧になるため、開口17の開口面積を極力小さくしつつ、湿度センサ14で湿度を検出するために必要な風量を確保することができる。
【0028】
また、湿度センサ14は空間A内において、開口17に近い方が望ましい。つまり、開口17を通過した乾燥空気の風量が低下することなく湿度センサ14を通過することで、開口17の開口面積を必要最小限とすることができる。
【0029】
また、器具本体1の運転を停止した際は送風ファン6が停止するが、このとき気化フィルタ9付近の湿気が送風ファン6付近まで上昇することとなる。ここで、前述した通り開口17の開口面積を極力小さくし、かつ開口17の近くに湿度センサ14を配置することで、空間Aに流入する湿気量を極力小さくすることができ、また送風ファン6の運転を開始して乾燥空気を空間Aに流入させた際は、速やかに湿気を除去することができる。
【0030】
一方で、開口17を通過し空間Aに流入して、湿度センサ14を流通した乾燥空気は、第2の壁面18に設けた通風孔19を通過して送風経路12に流入し、加湿空気と合流する。
【0031】
ここで、通風孔19が無い場合、開口17より空間Aに流入した乾燥空気は、器具本体1の隙間等から外部へ流出し、その際に漏れ出るヒューヒューという風切り音が意図しない騒音となり発生する虞がある。
【0032】
しかし、通風孔19で確実に通風できる孔を設けることにより、前記隙間から空気が漏れ出ることを極力防ぎ、正圧である空間Aから負圧である気化フィルタ9より下流の送風経路12へ流出することができる。このとき、通風孔19の開口面積は、前記隙間から漏れ出る空気の流量より通風孔19を通過する流量が十分大きくなるような面積であり、かつ開口17より流入した空気が流出し得る必要最小限の面積となるように設定する。
【0033】
次に、湿度センサ14を送風ファン6の下流に設けることによる作用効果について、
図4に基づいて説明する。
【0034】
図4は、湿度センサ14を送風ファン6の上流となるよう設置した、従来の加湿器の構成である。吸込口4とは別の吸込口である湿度センサ吸込口4aから取り入れた乾燥空気が、湿度センサ14を流通し、開口17を通過して空間Bにて吸込口4から流入した乾燥空気と合流する。合流した乾燥空気は送風ファン6により送風経路12へ送出される。
【0035】
ここで、
図4のように湿度センサ14を送風ファン6の上流となるよう設置した場合、
図2のように湿度センサ14を送風ファン6の下流となるよう設置した場合に比べて、合流するための空間Bが必要となることから、加湿器本体のサイズが大型化してしまう。
【0036】
一方で、
図2に示した本実施形態の構成では、吸込口4と送風ファン6を近づけて配置することが可能となるため、加湿器本体のサイズをコンパクトにし、小型化することができる。
【0037】
また、エアフィルタ20は室内空気中の塵埃等を捕集することで、清浄な乾燥空気を吸込口4から加湿器本体に取り入れることができるが、従来の加湿器の構成である
図4では、湿度センサ吸込口4aにエアフィルタ20は設置されていないため、湿度センサ14に塵埃を含んだ空気が流通し、塵埃等が付着することで湿度の検出精度が低下する虞がある。また、湿度センサ吸込口4aにもエアフィルタ20を設置する場合、エアフィルタ20が大型化、又は別部品が必要となり、コストが増大してしまう。
【0038】
一方で、
図2に示した本実施形態の構成では、エアフィルタ20を介して吸込んだ室内の乾燥空気を湿度センサ14に流通させることができるため、塵埃等のない清浄な乾燥空気が湿度センサ14に流通し、湿度の検出精度の低下を防ぐことができる。
【0039】
また、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 器具本体
4 吸込口
5 吹出口
6 送風ファン
9 気化フィルタ
12 送風経路
13 ファンケーシング
14 湿度センサ
16 第1の壁面
17 開口