(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039696
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】毛の色処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20240315BHJP
A61Q 5/08 20060101ALI20240315BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K8/46
A61Q5/08
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144255
(22)【出願日】2022-09-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 実施日 令和3年11月14日 実施場所 大阪府寝屋川市池田本町19-9 barbar shop KANSAI店内 実施内容 上記出願番号にかかる発明の発明者である広瀬喜浩及び広瀬真理子が上記実施日に上記実施場所にて、発明「毛の色処理方法」を第三者に対して実施した。
(71)【出願人】
【識別番号】522361548
【氏名又は名称】広瀬 喜浩
(71)【出願人】
【識別番号】522362039
【氏名又は名称】広瀬 真理子
(74)【代理人】
【識別番号】100206184
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 敦司
(74)【代理人】
【識別番号】100114834
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 慶司
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 喜浩
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 真理子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB082
4C083AB282
4C083AB312
4C083AC102
4C083AC182
4C083AC582
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC771
4C083AC772
4C083AC892
4C083BB41
4C083CC35
4C083CC36
4C083EE26
4C083EE27
(57)【要約】
【課題】脱色後の状態を長持ちさせることが可能な毛の色処理方法を提供する。
【解決手段】毛の色処理方法が、ブリーチ剤を用いて毛を脱色する脱色処理(ステップS1)と、脱色処理された毛を水洗する第1水洗処理(ステップS2)と、第1水洗処理の後、脱色処理によって脱色された毛に、当該毛をさらに脱色するとともにこのさらなる脱色後の状態が維持される期間をブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くするブースト剤を塗布するブースト処理(ステップS3)と、ブースト処理された毛を水洗する第2水洗処理(ステップS4)と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリーチ剤を用いて毛を脱色する脱色処理と、
前記脱色処理された毛を水洗する第1水洗処理と、
前記第1水洗処理の後、前記脱色処理によって脱色された毛に、当該毛をさらに脱色するとともにこのさらなる脱色後の状態が維持される期間を前記ブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くするブースト剤を塗布するブースト処理と、
前記ブースト処理された毛を水洗する第2水洗処理と、を含む、毛の色処理方法。
【請求項2】
前記ブースト剤が、生産者及び又は販売者が株式会社資生堂であって商品名がクリエイター(登録商標)T72第1剤を含む組成物である、請求項1に記載の毛の色処理方法。
【請求項3】
前記第2水洗処理によって水洗された毛を紫シャンプーによって白色にする白色化処理をさらに含む、請求項1に記載の毛の色処理方法。
【請求項4】
前記第2水洗処理によって水洗された毛を白以外の色にするカラー化処理をさらに含む、請求項1に記載の毛の色処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛の色処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪をカラーリングする処理の一つ又は前処理として、毛髪を、ブリーチ剤を用いて脱色処理することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、毛髪を白色にしたい場合、例えば、毛髪を、ブリーチ剤を用いて脱色した後、紫シャンプーで洗浄することによって、毛髪を白くする。ここで、紫シャンプーの作用効果は、以下の通りである。
【0005】
毛髪をブリーチ剤により脱色すると、毛髪は、「薄黄色」になる。この毛髪を紫シャンプー処理すると、毛髪に紫色の染料が付着する。すると、紫色は黄色のほぼ補色であるので、毛髪が白色になる。
【0006】
しかし、2~5日経過すると、白色化した毛髪が黄ばんでしまい、再度、脱色及び紫シャンプー処理する必要があった。このような問題は、人の毛髪に限らず、人の毛髪以外の毛及び人以外の動物の毛を脱色する場合にも共通する。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、脱色後の状態を長持ちさせることが可能な毛の色処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示のある形態(aspect)に係る毛の色処理方法は、ブリーチ剤を用いて毛を脱色する脱色処理と、前記脱色処理された毛を水洗する第1水洗処理と、前記第1水洗処理の後、前記脱色処理によって脱色された毛に、当該毛をさらに脱色するとともにこのさらなる脱色後の状態が維持される期間を前記ブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くするブースト剤を塗布するブースト処理と、前記ブースト処理された毛を水洗する第2水洗処理と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、脱色後の状態を長持ちさせることが可能な毛の色処理方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る毛の色処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、被施術者の頭部にメッシュキャップが装着された状態を示す写真である。
【
図3】
図3は、毛髪にブリーチ剤が塗布された状態を示す写真である。
【
図4】
図4は、毛髪にブースト剤が塗布された直後の状態を示す写真である。
【
図5】
図5は、毛髪にブースト剤が塗布されて所定時間放置後の状態を示す写真である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態2に係る毛の色処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、紫シャンプー及び水洗処理後メッシュキャップが取り外された毛髪の状態を示す写真である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態3に係る毛の色処理方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の契機となった発見)
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した。そして、その過程で、ブリーチ剤を用いて毛髪を脱色し、当該毛髪を水洗した後、特定の組成物を塗布すると、毛髪が、「ほぼ白色」に、若干であるが、さらに脱色され、且つ、このさらなる脱色後の状態が維持される期間が、ブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くなることを発見した。
【0012】
ここで、この特定の組成物を「ブースト剤」と呼ぶ。また、このさらなる脱色を「追加脱色」と呼び、追加脱色が生じるという効果を「追加脱色効果」と呼ぶ。また、このさらなる脱色後の状態が維持される期間がブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くなるという効果を、「脱色後状態維持期間の長期化効果」と呼ぶ。また、「脱色後状態」は、毛髪に追加脱色のみを施した後の状態と、毛髪を追加脱色し且つ白色化した後の状態との双方を含む。なお、上記特定の組成物を「ブースト剤」と呼ぶ理由は、この特定の組成物が、「追加脱色効果」及び「脱色後状態維持期間の長期化効果」という、ブリーチ剤による脱色の効果をさらにブーストする(押し上げる若しくは増強する)効果を奏するからである。
【0013】
換言すると、本発明者等は、ブースト剤という新規な組成物と、この新規な組成物が奏する、「追加脱色効果」及び「脱色後状態維持期間の長期化効果」という新規な効果を発見した。
【0014】
具体的には、以下のことが発見された。
【0015】
ブリーチ剤を用いて毛髪を脱色し、当該毛髪を水洗した後、資生堂製のクリエイター(登録商標)T72パーマ液の第1剤(特定の組成物)を塗布し、その後水洗すると、毛髪が、ブリーチ剤による脱色直後の色である「薄黄色」から「ほぼ白色」に追加脱色された。そして、この追加脱色された毛髪の「ほぼ白色」の状態が10日~14日程度維持され、この維持期間が過ぎると、毛髪が「黄ばんだ色」に変色した。
【0016】
また、この追加脱色された毛髪を紫シャンプーし、その後水洗して、当該毛髪を「白色」にした。この白色になった毛髪の「白色」の状態が1ヶ月~2ヶ月程度維持され、この維持期間が過ぎると、毛髪が「黄ばんだ色」に変色した。
【0017】
そして、これらの「黄ばんだ色」に変色した毛髪に、再度、資生堂製のクリエイター(登録商標)T72パーマ液の第1剤(特定の組成物)を塗布して水洗すると、毛髪が、再度、「ほぼ白色」に脱色されるとともにこの「ほぼ白色」の状態が1ヶ月~2ヶ月程度維持された。その後、この毛髪が「黄ばんだ色」へ変色するが、ブースト剤によって「ほぼ白色」に脱色した状態に戻すことが可能であった。このブースト剤による、「黄ばんだ色」に変色した毛髪を「ほぼ白色」に脱色する効果及びその「ほぼ白色」の状態を1ヶ月~2ヶ月程度維持する効果は、それぞれ、ブースト剤の「追加脱色効果」及び「脱色後状態維持期間の長期化効果」の形を変えた効果であると考えられる。
【0018】
本発明者等は、多数のパーマ液について、ブースト剤として機能しないか試した。しかし、ブースト剤として機能するものは、資生堂製のクリエイター(登録商標)T72パーマ液の第1剤のみであった。また、本発明者等は、どの成分が、資生堂製のクリエイター(登録商標)T72パーマ液の第1剤をブースト剤として機能させるのかを分析し、現在もその分析を継続しているが、現時点で、それを特定できていない。また、資生堂製のクリエイター(登録商標)T72パーマ液の第1剤がブースト剤として機能するメカニズムも不明である。
【0019】
このように一部に解明されていない点が残る発明であるが、本発明者等が、「追加脱色効果」及び「脱色後状態維持期間の長期化効果」という、ブリーチ剤による脱色の効果をさらにブーストする新規な効果を奏するブースト剤という新規な組成物を発見したことは、紛れもない事実である。現時点では、ブースト剤が1種類しか見出されていないに過ぎない。
【0020】
ここで、人の毛髪以外の毛、及び人以外の動物の毛は、人の毛髪と主要な化学組成は同じである。従って、本発明は、本発明を人の毛髪に適用する場合と同様に、人の毛髪以外の毛、及び人以外の動物の毛に適用することができる。
【0021】
本発明は、このような発見に基づいてなされたものである。
【0022】
(本開示の概要)
そこで、本開示のある形態(aspect)に係る毛の色処理方法は、ブリーチ剤を用いて毛を脱色する脱色処理と、前記脱色処理された毛を水洗する第1水洗処理と、前記第1水洗処理の後、前記脱色処理によって脱色された毛に、当該毛をさらに脱色するとともにこのさらなる脱色後の状態が維持される期間を前記ブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くするブースト剤を塗布するブースト処理と、前記ブースト処理された毛を水洗する第2水洗処理と、を含む。ここで、「毛」は、人の毛及び人以外の動物の毛を意味する。
【0023】
この構成によれば、ブースト処理によって、ブリーチ剤による脱色後の毛がさらに脱色され、且つ、このさらなる脱色後の状態が維持される期間が、ブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くなる。その結果、脱色後の状態を長持ちさせることが可能な毛の色処理方法を提供できる。さらに、ブースト処理によって、毛髪の色が、ブリーチ剤による脱色後の毛髪の色である「薄黄色」から「ほぼ白色」に脱色されるので、毛髪を紫シャンプーによって白色化しなくても、毛髪を脱色処理のみでほぼ白色化することができる。
【0024】
前記ブースト剤が、生産者及び又は販売者が株式会社資生堂であって商品名がクリエイター(登録商標)T72第1剤を含む組成物であってもよい。
【0025】
この構成によれば、上述のブースト処理による効果を好適に得ることができる。
【0026】
前記第2水洗処理によって水洗された毛を、紫シャンプーによって白色にする白色化処理をさらに含んでもよい。
【0027】
この構成によれば、白色化された状態が維持される期間が、毛をブリーチ剤による脱色後白色化した状態が維持される期間に比べて長くなる。その結果、白色化した状態を長持ちさせることができる。
【0028】
前記第2水洗処理によって水洗された毛を白以外の色にするカラー化処理をさらに含んでもよい。ここで、「カラー化」とは、毛を「白色」以外の色にすることを意味する。
【0029】
この構成によれば、カラー化された状態が維持される期間が、毛をブリーチ剤による脱色後カラー化した状態が維持される期間に比べて長くなる。その結果、カラー化した状態を長持ちさせることができる。
【0030】
以下、本開示の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の図は、本開示を説明するための図であるので、本開示に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、簡略化される場合、複数の図において互いに対応する要素の形態が一致しない場合等がある。また、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0031】
<色処理方法の適用対象>
本開示の実施形態の色処理方法は、動物の毛の色処理に適用される。以下では、本開示の実施形態の色処理方法を人の毛髪の色処理に適用する場合を例示する。人の毛髪以外の毛及び人以外の動物の毛に対しても、以下に例示される内容と同様にして、本開示の実施形態の色処理方法を適用することができる。
【0032】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態1に係る毛の色処理方法の一例を示すフローチャートである。
【0033】
図1を参照すると、実施形態1の毛の色処理方法は、ブリーチ剤を用いて毛を脱色する脱色処理(ステップS1)と、脱色処理した毛を水洗する第1水洗処理(ステップS2)と、第1水洗処理の後、脱色処理によって脱色された毛に、当該毛をさらに脱色するとともにこのさらなる脱色後の状態が維持される期間をブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くするブースト剤を塗布するブースト処理(ステップS3)と、ブースト処理された毛を水洗する第2水洗処理(ステップS4)と、を含む。以下、各処理を詳しく説明する。
【0034】
<脱色処理>
実施形態1の脱色処理には、周知の脱色処理を適用することができる。従って、詳しい説明を省略し、簡単に説明する。
【0035】
まず、ブリーチ剤を用意する。ブリーチ剤として、市販のブリーチ剤を用いることができる。市販のブリーチ剤を、適宜、濃度調整し又は組み合わせてもよい。また、市販のブリーチ剤に、適宜、必要な成分を追加してもよい。
【0036】
例えば、ブリーチ剤として、下記第1剤及び第2剤で構成される2剤式のブリーチ剤を用いることができる。
【0037】
{第1剤}
粉Aと液Bとの混合物。
【0038】
粉A:「H&O パウダーブリーチ」(商品名)
液B:「POWDER BLEACH 資生堂」(商品名)
混合比率A:B=1:0.2
この混合比率は、容量比率である。
【0039】
「H&O パウダーブリーチ」は、有効成分として、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムを含み、その他の成分として、無水メタケイ酸Na、ステリアン酸Al、デキストリン、炭酸Mg、カルボキシメチルセルロースNa、ラリウル硫酸Na、エデト酸二Na、ソルビット、グリチルリチン酸ジカリウム、グンジョウ、流動パラフィン、香料を含む。
【0040】
「POWDER BLEACH 資生堂」は、脱色剤であり、過硫酸塩が配合されている。
【0041】
{第2剤}
「H&O OXI6%」(商品名)
「H&O OXI6%」は、有効成分として、過酸化水素水を含み、その他の成分として、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、イソプロパノール、セトステアリルアルコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸、フェノキシエタノール、ヒドロキシエタンジホスホン酸液、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、PG、pH調整剤、粘度調整剤、精製水を含む。
【0042】
{ブリーチ剤}
第1剤と第2剤とを、例えば、1:2~2.5の比率で混合して、塗布するブリーチ剤を作成する。もちろん、毛髪の状態(例えば、毛髪の痛み具合等)に応じて、混合比率を変えてもよい。
【0043】
なお、1剤式又は3剤式のブリーチ剤を用いてもよい。
【0044】
次いで、ブリーチ剤を被施術者の頭部の毛髪に塗布する。脱色は頭部全体の毛髪に施してもよく、メッシュキャップを用いて、頭部の一部の毛髪に施してもよい。脱色を頭部全体の毛髪に施す場合は、頭部全体の毛髪にブリーチ剤を塗布する。脱色を頭部の一部の毛髪に施す場合は、メッシュキャップから露出している毛髪にブリーチ剤を塗布する。以下では、メッシュキャップを用いる場合を例示するが、メッシュキャップを用いない場合も、各処理の内容は、以下に述べる内容と同様である。また、このことは、実施形態2及び実施形態3においても、同様である。
図2に、被施術者の頭部にメッシュキャップが装着された状態を示す。
【0045】
そして、適宜な時間放置した後、例えば、塗布したブリーチ剤を、くしでこそぎ取る(
図3参照)。
【0046】
<第1水洗処理>
次いで、毛髪に塗布されたブリーチ剤を、適宜、水洗する。
【0047】
水洗した毛髪は、乾燥させてもよく、乾燥させなくてもよい。ここでは、水洗した毛髪を乾燥させない。
【0048】
この水洗後の毛髪の色は、目視で「薄黄色」である。この水洗後の毛髪の色を
図4に示す。
図4は、ブースト剤を塗布した直後の毛髪の色を示しているが、当該毛髪の色は、ブリーチ剤を塗布して水洗した直後の毛髪の色と実質的に同じである。
図4は白黒写真であるので、
図4では、目視で「薄黄色」である毛髪の色が白色に見える。この目視による「薄黄色」は、国際照明委員会(CIE)のL*a*b*表色系(以下、単に、L*a*b*表色系という)の色で表すと、例えば、「L*=74.87、a*=-1.11、b*=17.92」(「黄緑寄りの薄黄色」)に対応している(表2の比較例3を参照)。
【0049】
<ブースト処理>
まず、ブースト剤を用意する。ブースト剤は、ブリーチ剤による脱色処理によって脱色した毛をさらに脱色するとともにこのさらなる脱色後の状態が維持される期間をブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くすることができるものであればよい。このようなブースト剤として、例えば、資生堂製のクリエイター(登録商標)T72パーマ液の第1剤を用いることができる。以下、「資生堂製のクリエイター(登録商標)T72パーマ液」を、「T72液」と呼び、「資生堂製のクリエイター(登録商標)T72パーマ液の第1剤」を、「T72液第1剤」と呼ぶ。なお、ブースト剤は、前提として、「毛」(ここでは毛髪)及び動物の体(ここでは頭部)に、許容限度を超えるダメージを与えないことが必要とされる。
【0050】
T72液第1剤は、有効成分としてチオグリコール酸アンモニウム液を含み、その他の成分として、精製水、強アンモニア水、エタノール、炭酸水素アンモニウム、ラウリン酸アミドプロピルベタイン液、リン酸水素二アンモニウム、ポリメタクリロイルエチルジメチルベタイン液、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸液、L-アルギニン、L-グルタミン酸、香料を含む。
【0051】
T72液第1剤は、原液のまま又は原液を、原液の溶剤である水によって薄めて用いることができる。原液を薄めて用いる場合、薄めた原液の濃度を50%以上とすることが好ましい。薄めた原液の濃度が50%以上であれば、ブリーチ剤による脱色処理によって脱色した毛髪をさらに脱色することができる。
【0052】
ブースト剤は、T72液第1剤の他に、様々な追加成分(溶剤である水以外の成分)を含んでいてもよい。この追加成分が、例えば、健康毛に適した補助アルカリであってもよい。また、この追加成分が、例えば、ダメージ毛に適した補助アルカリであってもよい。これらにより、ブースト処理が毛髪に与えるダメージを軽減することができる。
【0053】
次いで、用意したブースト剤を、水洗した毛髪に塗布する(
図4参照)。そして、ブースト剤が塗布された毛髪を放置する(
図5参照)。放置時間は、0~2分である。放置時間が2分以内であれば、毛髪に深刻なダメージを与えないで済む。この放置時間の間に毛髪の色が「薄黄色」から「ほぼ白色」に脱色されているのであるが、白黒写真である
図4及び
図5では、この色の変化が判らない。この目視による「ほぼ白色」は、L*a*b*表色系の色で表すと、例えば、「L*=73.97、a*=-1.87、b*=11.53」(「ほぼ白色」)に対応している(表2の実施例3を参照)。
【0054】
<第2水洗処理及び仕上げ>
次いで、毛髪に塗布されたブースト剤を、適宜、水洗する。そして、頭部からメッシュキャップを外し、水洗した毛髪を乾燥させる。
【0055】
この水洗後の毛髪の色は、目視で「ほぼ白色」である。なお、
図7は、第2水洗処理後さらに紫シャンプー及びトリートメント仕上げされた毛髪の状態を示すが、ここでの水洗後の毛髪の状態は、毛髪の色以外は、
図7の毛髪の状態と同様である。
【0056】
水洗後乾燥させた毛髪の仕上げは、そのままでもよく、適宜、トリートメント処理してもよい。トリートメント剤として、市販のものを用いることができる。従って、その詳しい説明を省略する。ここでは、トリートメント剤として、例えば、「シュワルツコフ アフターブリーチトリートメント」(商品名)を用いることができる。
【0057】
<黄ばんだ毛髪の処理>
仕上げ後の毛髪は、「ほぼ白色」の状態が10日~14日程度維持される。そして、この維持期間が過ぎると、毛髪が、目視で「黄ばんだ色」に変色する。この「黄ばんだ色」も白黒写真では白色に見えるため、この毛髪の状態を写真で示すことは割愛する。
【0058】
この黄ばんだ毛髪に、上記「ブースト処理」及び「第2水洗処理及び仕上げ」を施すと、毛髪の色は、元の「ほぼ白色」に戻る。
【0059】
<実施形態1の効果>
上述のように、実施形態1によれば、ブースト処理によって、毛髪の色が、ブリーチ剤による脱色後の毛髪の色である「薄黄色」から「ほぼ白色」に脱色される。従って、従来のように、毛髪を紫シャンプーによって白色化しなくても、毛髪を脱色処理のみでほぼ白色化することができる。
【0060】
さらに、後述する(実施例)に示すように、ブリーチ剤による脱色後の状態は5日しか維持されないが、実施形態1によれば、上述のように、ブースト処理による追加脱色後の状態は10日~14日程度維持される。従って、実施形態1によれば、追加脱色後の状態が維持される期間をブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くすることができる。その結果、脱色後の状態を長持ちさせることが可能である。
【0061】
(実施形態2)
図6は、本開示の実施形態2に係る毛の色処理方法の一例を示すフローチャートである。
【0062】
図6を参照すると、実施形態2の毛の色処理方法は、ブリーチ剤を用いて毛を脱色する脱色処理(ステップS1)と、脱色処理された毛を水洗する第1水洗処理(ステップS2)と、第1水洗処理の後、脱色処理によって脱色された毛に、当該毛をさらに脱色するとともにこのさらなる脱色後の状態が維持される期間をブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くするブースト剤を塗布するブースト処理(ステップS3)と、ブースト処理された毛を水洗する第2水洗処理(ステップS4)と、第2水洗処理によって水洗された毛を紫シャンプーによって白色にする白色化処理(ステップS5)と、白色化処理された毛を水洗する第3水洗処理(ステップS6)と、を含む。
【0063】
ここで、脱色処理(ステップS1)からブースト処理(ステップS3)までは、実施形態1と同じであるので、それらの説明を省略し、第2水洗処理(ステップS4)、白色化処理(ステップS5)及び第3水洗処理(ステップS6)を詳しく説明する。
【0064】
<第2水洗処理>
実施形態2では、第2水洗処理(ステップS4)の後、紫シャンプーによる白色化処理(ステップS5)が行われる。従って、第2水洗処理では、毛髪に塗布されたブースト剤を水洗した後、基本的に毛髪を乾燥させないで、白色化処理が行われる。もちろん、毛髪に塗布されたブースト剤を水洗した後、毛髪を乾燥させて、白色化処理を行っても構わない。
【0065】
<白色化処理>
実施形態2の紫シャンプーによる白色化処理には、周知の白色化処理を適用することができる。従って、ブースト処理により追加脱色された毛髪の紫シャンプーによる白色化処理の詳しい説明を省略し、簡単に説明する。
【0066】
まず、紫シャンプーを用意する。紫シャンプーとして、市販のものを用いることができる。
【0067】
ここでは、紫シャンプーとして、例えば、「シュワルツコフ GOOBY YELLOW」(商品名)を用いることができる。
【0068】
次いで、水洗後の毛髪に、紫シャンプーを用いて、シャンプー処理を施す。
【0069】
<第3水洗処理及び仕上げ>
次いで、シャンプー処理された毛髪を、適宜、水洗する。
【0070】
そして、頭部からメッシュキャップを外し、水洗した毛髪を乾燥させる。
【0071】
この水洗後の毛髪の色は、目視で「白色」である。この目視による「白色」は、L*a*b*表色系の色で表すと、例えば、「L*=64.00、a*=-1.63、b*=0.03」(「実質的に白色」)に対応している(表2の実施例4を参照)。
【0072】
水洗後乾燥させた毛髪の仕上げは、そのままでもよく、適宜、トリートメント処理してもよい。トリートメント処理は、実施形態1と同様である。このトリートメント処理後の毛髪の状態を
図7に示す。
【0073】
<黄ばんだ毛髪の処理>
仕上げ後の毛髪は、この白色になった毛髪の「白色」の状態が1ヶ月~2ヶ月程度維持され、この維持期間が過ぎると、毛髪が「黄ばんだ色」に変色する。
【0074】
この黄ばんだ毛髪に、上記「ブースト処理」、「第2水洗処理」、「白色化処理」、及び「第3水洗処理及び仕上げ」を施すと、毛髪の色は、元の「白色」に戻る。
【0075】
<実施形態2の効果>
上述のように、実施形態2によれば、後述する(実施例)に示すように、ブリーチ剤による脱色及び紫シャンプーによる白色化後の状態は5日しか維持されないが、実施形態2によれば、上述のように、ブースト処理による追加脱色及び紫シャンプーによる白色化後の状態は1ヶ月~2ヶ月程度維持される。従って、実施形態2によれば、追加脱色後の状態が維持される期間をブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くすることができる。その結果、脱色後の状態を長持ちさせることが可能である。
【0076】
(実施形態3)
図8は、本開示の実施形態3に係る毛の色処理方法の一例を示すフローチャートである。
【0077】
図8を参照すると、実施形態3の毛の色処理方法は、ブリーチ剤を用いて毛を脱色する脱色処理(ステップS1)と、脱色処理された毛を水洗する第1水洗処理(ステップS2)と、第1水洗処理の後、脱色処理によって脱色された毛に、当該毛をさらに脱色するとともにこのさらなる脱色後の状態が維持される期間をブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くするブースト剤を塗布するブースト処理(ステップS3)と、ブースト処理された毛を水洗する第2水洗処理(ステップS4)と、第2水洗処理によって水洗された毛を白以外の色にするカラー化処理(ステップS7)と、カラー化処理された毛を水洗する第4水洗処理(ステップS8)と、を含む。
【0078】
ここで、脱色処理(ステップS1)からブースト処理(ステップS3までは、実施形態1と同じであるので、その説明を省略し、第2水洗処理(ステップS4)、カラー化処理(ステップS7)及び第4水洗処理(ステップS8)を詳しく説明する。
【0079】
<第2水洗処理>
実施形態3では、第2水洗処理(ステップS4)の後、カラー化処理(ステップS7)が行われる。毛髪を白以外の色にするカラー化処理には、様々な種類の処理がある。従って、第2水洗処理では、毛髪に塗布されたブースト剤を水洗した後、カラー化処理の種類に合わせて、毛髪を乾燥させないで、又は毛髪を乾燥させてカラー化処理が行われる。
【0080】
<カラー化処理>
実施形態3の毛髪を白以外の色にするカラー化処理には、周知のものを適用することができる。従って、ブースト処理により追加脱色された毛髪を白以外の色にするカラー化処理の詳しい説明を省略し、簡単に説明する。
【0081】
毛髪を白以外の色にするカラー化処理には、i)永久染毛剤を用いる、ヘアカラー、ヘアダイ、白髪染め、おしゃれ染め、ii)半永久染毛料を用いる、ヘアマニキュア、酸性カラー、カラーリンス、カラートリートメント、iii)一時染毛料又は毛髪着色料を用いる、ヘアカラースプレー、ヘアマスカラ、カラースティックがある。
【0082】
ここでは、例えば、ヘアカラーによって毛髪のカラー化処理が行われる。
【0083】
<第4水洗処理及び仕上げ>
次いで、カラー化処理が施された毛髪を、適宜、水洗する。
【0084】
そして、頭部からメッシュキャップを外し、水洗した毛髪を乾燥させ、その後、適宜、毛髪を仕上げる。
【0085】
<実施形態3の効果>
実施形態3によれば、ブースト処理によって、追加脱色後の状態が維持される期間をブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くすることができる。そのため、カラー化処理後の状態を長持ちさせることが可能である。
【0086】
(実施例)
<サンプルの内容>
本実施例では、本開示の毛の色処理方法を、メッシュキャップを用いて、被施術者(人)の頭部の一部の毛髪に適用した。従って、本実施例におけるサンプルは、被施術者の頭部の一部の毛髪(以下、単に「毛髪」と呼ぶ)である。
【0087】
{比較例1}
毛髪を、ブリーチ剤を用いて脱色処理した後、水洗し、仕上げ処理した。
【0088】
ブリーチ剤は、第1剤と第2剤とを、1:2の比率で混合して作成した。第1剤は、粉A:「H&O パウダーブリーチ」(商品名)と、液B:「POWDER BLEACH 資生堂」(商品名)と、を、混合比率A:B=1:0.2で混合して作成した。第2剤は、「H&O OXI6%」(商品名)である。
【0089】
施術方法は、以下の通りである。
【0090】
まず、被施術者の頭部のメッシュキャップから露出する毛髪全体にブリーチ剤を塗布し、i)30~35分放置し、ii)その後、頭部をラップ材で覆い、iii)その後、頭部をタオルで覆い、iv)その後、ラップ材及びタオルを毛髪から取り外して、ブリーチ剤をくしでこそぎ取った。このi)~iv)の処理を3回繰り返した。
【0091】
次いで、頭部を、メッシュキャップを被せた状態のままで、ぬるま湯で洗って、ブリーチ剤を洗い流した。
【0092】
次いで、頭部からメッシュキャップを外し、トリートメント剤で仕上げ処理した。トリートメント剤は、「シュワルツコフ アフターブリーチトリートメント」(商品名)である。
【0093】
{比較例2}
まず、比較例1と同様に、ブリーチ剤を用いて脱色処理を行った。
【0094】
次いで、ぬるま湯でブリーチ剤を洗い流した状態の毛髪に、紫シャンプーによる白色化処理を施した。紫シャンプーは「シュワルツコフ GOOBY YELLOW」(商品名)である。
【0095】
次いで、頭部からメッシュキャップを外し、トリートメント剤で仕上げ処理した。トリートメント剤は、「シュワルツコフ アフターブリーチトリートメント」(商品名)である。
【0096】
{実施例1}
まず、比較例1と同様に、ブリーチ剤を用いて脱色処理を行った。
【0097】
次いで、ぬるま湯でブリーチ剤を洗い流した状態の毛髪にブースト剤を塗布してもみ込んで、2分間放置した。ブースト剤は、T72第1剤の原液に健康毛に適した補助アルカリ及びダメージ毛に適した補助アルカリを添加して作成した。
【0098】
次いで、頭部を、メッシュキャップを被せた状態のままで、ぬるま湯で洗って、ブースト剤を洗い流した。
【0099】
次いで、頭部からメッシュキャップを外し、トリートメント剤で仕上げ処理した。トリートメント剤は、「シュワルツコフ アフターブリーチトリートメント」(商品名)である。
【0100】
{実施例2}
まず、実施例1と同様に、ブリーチ剤による脱色処理及びブースト剤によるブースト処理を行った。
【0101】
次いで、ぬるま湯でブースト剤を洗い流した状態の毛髪に、紫シャンプーによる白色化処理を施した。紫シャンプーは「シュワルツコフ GOOBY YELLOW」(商品名)である。
【0102】
次いで、頭部からメッシュキャップを外し、トリートメント剤で仕上げ処理した。トリートメント剤は、「シュワルツコフ アフターブリーチトリートメント」(商品名)である。
【0103】
<サンプルの評価>
比較例1、比較例2、実施例1、及び実施例2について、最終処理後の毛髪の色を目視によって評価した。
【0104】
この評価結果を表1に示す。
【表1】
この評価結果によれば、比較例1は、最終処理後の毛髪の色が「薄黄色」であり、毛髪を白色化することができなかった。また、その色が維持される期間が5日であり、脱色後の状態を長持ちさせることができなかった。
【0105】
比較例2は、最終処理後の毛髪の色が「白色」であり、毛髪を白色化することができた。しかし、その色が維持される期間が5日であり、白色化後(脱色後)の状態を長持ちさせることができなかった。
【0106】
実施例1は、最終処理後の毛髪の色が「ほぼ白色」であり、紫シャンプーを用いなくても、毛髪を実質的に白色化することができた。また、その色が維持される期間が14日であり、脱色後の状態を長持ちさせることができた。
【0107】
実施例2は、最終処理後の毛髪の色が「白色」であり、毛髪を白色化することができた。また、その色が維持される期間が2か月であり、白色化後(脱色後)の状態を大幅に長持ちさせることができた。
【0108】
以上の説明から明らかなように、本実施例によれば、本開示の色処理方法によってブリーチ剤による脱色後の毛がさらに脱色され、且つ、このさらなる脱色後の状態が維持される期間が、ブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くなることが立証された。
【0109】
<L*a*b*表色系による色測定>
上記実施例の各サンプルの色の変化は、目視で明瞭に識別することができる。しかし、それらの色は、言葉で表すと客観的に特定できないので、それらの色をL*a*b*表色系の色と対応させるためにL*a*b*表色系による色測定を行った。これを表2に示す。
【0110】
{サンプルの作成}
この表2の色測定は、色測定専用の比較例3-4及び実施例3-6のサンプルを作成して行った。これらのサンプルは、施術者の毛髪を切り取り、この切り取った毛髪を、必要数、それぞれ、束状に結束して作成した。そして、これらのサンプルに対して、上述の(実施例)と同様の毛の色処理を施した。
【0111】
比較例3は、比較例1と同様の毛の色処理を施した。
【0112】
比較例4は、比較例2と同様の毛の色処理を施した。
【0113】
実施例3は、実施例1と同様の毛の色処理を施した。
【0114】
実施例4は、実施例2と同様の毛の色処理を施した。
【0115】
実施例5は、基本的に実施例1と同様の毛の色処理を施した。但し、ブリーチ剤による脱色処理を3回行った。また、ブースト処理は、T72第1剤の濃度を50%とし、それに健康毛に適した補助アルカリ及びダメージ毛に適した補助アルカリを添加して作成したブースト剤を用いて行った。そして、サンプルを2ヶ月放置した。
【0116】
実施例6は、実施例2と同様の毛の色処理を施した。そして、サンプルを2ヶ月放置した。
【0117】
{測定方法}
各サンプルについて、束状の毛髪を測定試料とした。測定試料は、各サンプルについて、4つ用意した。L*a*b*表色系の色の値は、日本電色工業株式会社製のSPECTROPHOTOMETER SE6000分光色差計で測定した。測定条件として、測定試料からの反射光を測定した。各サンプルについて、4つの測定試料の測定値をそれぞれ取得し、それらの平均値を求めて当該平均値を各サンプルのL*a*b*表色系の色の値とした。
【0118】
{測定結果}
測定結果を表2に示す。
【表2】
このL*a*b*表色系による色測定では、同一サンプルについて、最終処理直後の色と2ヶ月経過時の色とを測定しておらず、同様の脱色処理又は脱色処理及び白書化処理を行った別々のサンプルについて、最終処理直後の色と2ヶ月経過時の色とを測定した。従って、同様の脱色処理又は脱色処理及び白書化処理を行ったサンプルについて、最終処理直後の色から2ヶ月経過時の色への正確な変化を知ることはできないが、最終処理直後の色から2ヶ月経過時の色へのおよその変化を知ることはできる。
【0119】
ここで、L*a*b*表色系では、L*は明度を表し、a*及びb*は色相及び彩度から成る色度を表す。そして、+a*は赤方向の彩度を表し、+b*は黄方向の彩度を表し、-a*は緑方向の彩度を表し、-b*は青方向の彩度を表す。従って、白色は、a*=0で且つb*=0である。
【0120】
具体的には、ブリーチ剤による脱色処理を行った場合における最終処理直後の毛髪の色(比較例3)は、目視によれば「薄黄色」である。一方、L*a*b*表色系によれば、「L*=74.87、a*=-1.11、b*=17.92」である。すなわち、明度が高く、明るい色である。色相は、「黄緑寄りのほぼ黄色」であり、その彩度は低く、「くすんだ色」である。従って、このL*a*b*表色系による色を、言葉で表すと、「黄緑寄りの薄黄色」と言える。よって、毛髪の色は、目視による色とL*a*b*表色系による色とがほぼ一致している。
【0121】
ブリーチ剤による脱色処理の後、紫シャンプー処理を行った場合における最終処理直後の毛髪の色(比較例4)は、目視によれば「白色」である。一方、L*a*b*表色系によれば、「L*=70.96、a*=-0.73、b*=17.702」である。すなわち、明度が高く明るい色である。色相は、「黄緑寄りのほぼ黄色」であり、その彩度は低く、「くすんだ色」である。従って、このL*a*b*表色系による色を、言葉で表すと、「黄緑寄りの薄黄色」と言える。従って、毛髪の色は、目視による色とL*a*b*表色系による色とが若干異なっている。但し、ブリーチ剤による脱色処理行っただけの場合と比べると、明度が若干低くなり、且つ、黄方向の彩度が若干低くなっている。そのため、L*a*b*表色系による色も、こちらの方が、ブリーチ剤による脱色処理を行った場合と比べて「白い」のは間違いない。
【0122】
ブリーチ剤による脱色処理の後、ブースト処理を行った場合における最終処理直後の毛髪の色(実施例3)は、目視によれば「ほぼ白色」である。一方、L*a*b*表色系によれば、「L*=73.97、a*=-1.87、b*=11.53」である。すなわち、明度が高く明るい色である。色相は、「黄緑寄りのほぼ黄色」であるが、その彩度が相当低く、「色相が判り辛い程くすんだ色」である。従って、このL*a*b*表色系による色を、言葉で表すと、「ほぼ白色」と言える。従って、毛髪の色は、目視による色とL*a*b*表色系による色とが一致している。ブリーチ剤による脱色処理を行っただけの場合と比べると、明度が、数値で「0.90」低くなり、且つ、黄方向の彩度が、数値で「6.39」低くなっている。明度の低下は、毛髪がより透明になった(透過率が増大した)ことに起因すると推察される。黄方向の彩度の「6.39」の低下は、毛髪が「ほぼ白色」になったことを意味する。これにより、ブリーチ剤によって脱色された毛髪が、ブースト処理によって、さらに脱色されたことが、数値データにより裏付けられた。
【0123】
ブリーチ剤による脱色処理及びブースト処理の後、紫シャンプー処理を行った場合における最終処理直後の毛髪の色(実施例4)は、目視によれば「白色」である。一方、L*a*b*表色系によれば、「L*=64.00、a*=-1.63、b*=0.03」である。すなわち、明度が高く明るい色である。色相は、「黄緑寄りのほぼ黄色」であるが、その彩度がゼロに近く、「実質的に白色」である。従って、毛髪の色は、目視による色とL*a*b*表色系による色とが一致している。ブリーチ剤による脱色処理及びブースト処理を行っただけの場合と比べると、明度が、数値で「9.97」低くなり、且つ、黄方向の彩度が、数値で「11.50」低くなっている。明度の低下は、毛髪に染料が付着して反射率が大幅に低下したことに起因すると推察される。黄方向の彩度の「11.50」の低下は、毛髪が実質的に「白色」になったことを意味する。これにより、ブリーチ剤及びブースト処理によって脱色された毛髪が、紫シャンプー処理によって白色化されることが、数値データにより裏付けられた。
【0124】
ブリーチ剤による脱色処理の後、ブースト処理を行った場合における最終処理から2ヶ月経過時の毛髪の色(実施例5)は、目視によれば「ほぼ白色」である。一方、L*a*b*表色系によれば、「L*=59.44、a*=-0.86、b*=5.44」である。すなわち、明度が高く明るい色である。色相は、「黄緑寄りのほぼ黄色」であるが、その彩度が相当低く、「色相が判り辛い程くすんだ色」である。従って、このL*a*b*表色系による色を、言葉で表すと、「ほぼ白色」と言える。従って、毛髪の色は、目視による色とL*a*b*表色系による色とが一致している。最終処理直後の場合と比べると、明度が、数値で「14.53」低くなり、且つ、黄方向の彩度が、数値で「6.09」低くなっている(白くなっている)。明度の低下は、毛髪が時間経過によって変質したことに起因すると推察される。一方、毛髪は、通常、最終処理した後、時間が経過するに連れて黄ばむのに対し、ここでは逆に白くなっていて、そのようになることは考えられないので、黄方向の彩度の「6.09」の低下は、サンプルが異なることによる誤差であると推察される。しかしながら、これにより、ブリーチ剤による脱色処理の後、ブースト処理を行った場合、脱色状態が2ヶ月経過後も維持されることが、数値データにより裏付けられた。
【0125】
ブリーチ剤による脱色処理及びブースト処理の後、紫シャンプー処理を行った場合における最終処理から2ヶ月経過時の毛髪の色(実施例6)は、目視によれば「白色」である。一方、L*a*b*表色系によれば、「L*=59.23、a*=-1.63、b*=0.43」である。すなわち、明度が高く明るい色である。色相は、「黄緑寄りのほぼ黄色」であるが、その彩度がゼロに近く、「実質的に白色」である。最終処理直後の場合と比べると、明度が、数値で「4.77」低くなり、且つ、黄方向の彩度が、数値で「0.40」高くなっている。明度の若干の低下は、毛髪が時間経過によって黄ばんだことに起因すると推察される。事実、黄方向の彩度が若干増大して、毛髪が若干黄ばんだことを示している。しかしながら、これにより、ブリーチ剤による脱色処理及びブースト処理の後、紫シャンプー処理を行った場合、脱色状態が2ヶ月経過後も維持されることが、数値データにより裏付けられた。
【0126】
以上に説明したように、L*a*b*表色系による色測定を行った結果、毛の色処理における毛髪の色は、目視による色とL*a*b*表色系による色とがほぼ一致することが明らかになった。換言すると、毛の色処理における毛髪の色の変化を、客観的な数値データによって特定することができた。その結果、「本開示の色処理方法によってブリーチ剤による脱色後の毛がさらに脱色され、且つ、このさらなる脱色後の状態が維持される期間が、ブリーチ剤による脱色後の状態が維持される期間に比べて長くなる」ことの上記実施例による立証が、数値データによって裏付けされた。
【0127】
(その他の実施形態)
実施形態1乃至3のいずれかの実施形態において、人の毛髪以外の毛及び人以外の動物の毛に対して、当該実施形態の色処理方法を適用してもよい。
【0128】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本開示の毛の色処理方法は、脱色後の状態を長持ちさせることが可能な毛の色処理方法として有用である。