(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039703
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】電子回路装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
H02J1/00 309C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144268
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】高木 良太
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165BB02
5G165BB07
5G165CA01
5G165DA07
5G165EA02
5G165LA01
5G165NA01
5G165NA05
(57)【要約】
【課題】コンデンサの実装面積を低減可能な電子回路装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子回路装置EC1では、瞬断対策用コンデンサCとして単一のコンデンサを用いつつ、バッテリBTと瞬断対策用コンデンサCの間に電流制限抵抗Rxが設けられていて、電流制限抵抗RxによってバッテリBTから瞬断対策用コンデンサCに流れる充電電流Icが抑制されている。これにより、瞬断対策用コンデンサCの数量及び実装面積を低減しつつ、瞬断対策用コンデンサCにショート故障が発生した場合には、電流制限抵抗Rxによって短絡電流の発生が抑制され、直ちに電源が短絡してしまう不具合を抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の瞬断が発生した際の電流供給に供する瞬断対策用コンデンサと、
前記電源と前記瞬断対策用コンデンサの間に設けられ、前記瞬断対策用コンデンサに流れる充電電流を制限する電流制限抵抗と、
前記電流制限抵抗と前記瞬断対策用コンデンサとの間から分岐して前記瞬断対策用コンデンサから前記電流制限抵抗を迂回するかたちで電子デバイスに接続され、前記電子デバイス側から前記瞬断対策用コンデンサ側に流れる電流を規制する逆流規制手段が設けられた放電回路と、
を備えたことを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路装置であって、
前記電源から前記電流制限抵抗を迂回するように前記電源から分岐して前記電流制限抵抗と前記瞬断対策用コンデンサとの間に接続され、前記電源から前記瞬断対策用コンデンサに直接電流を供給可能なバイパス回路と、
前記瞬断対策用コンデンサの充電の途中で前記バイパス回路を駆動する駆動回路と、
をさらに備えた、
ことを特徴とする電子回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子回路装置であって、
前記バイパス回路及び前記駆動回路は、それぞれバイポーラトランジスタを備えてなる、
ことを特徴とする電子回路装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電子回路装置であって、
前記バイパス回路及び前記駆動回路は、それぞれMOSFETを備えてなる、
ことを特徴とする電子回路装置。
【請求項5】
請求項2に記載の電子回路装置であって、
前記バイパス回路は、MOSFETを備えてなり、
前記駆動回路は、バイポーラトランジスタを備えてなる、
ことを特徴とする電子回路装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電子回路装置であって、
前記電源から前記電流制限抵抗を迂回するように前記電源から分岐して前記電流制限抵抗と前記瞬断対策用コンデンサとの間に接続され、前記電源から前記瞬断対策用コンデンサに直接電流を供給可能なバイパス回路と、
前記瞬断対策用コンデンサの充電の途中で前記バイパス回路を駆動する駆動回路と、
をさらに備え、
前記放電回路は、前記バイパス回路によって構成され、
前記逆流規制手段は、前記MOSFETに付随するボディダイオードによって構成される、
ことを特徴とする電子回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子回路装置としては、例えば、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
車載用ECUのような、振動発生下において使用する電子回路装置は、電源回路のコネクタやリレー等が振動によって瞬間的に断線する、いわゆる電源瞬断(以下、「電源瞬断」と略称する。)の発生を想定して、ECUの消費電流に応じた静電容量のコンデンサを設けることが一般的である。
【0004】
その際、特許文献1に記載された電子回路装置は、2つのコンデンサを直列に配置することにより、一方のコンデンサにショート故障が発生しても直ちに電源が短絡しない構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の電子回路装置では、前記2つのコンデンサが直列に配置されているため、コンデンサの合成容量は半分(1/2)となってしまう。一方で、1つのコンデンサを配置する場合と同じ容量を維持するには、前記直列に配置された2つのコンデンサをさらに並列に配置する必要がある。この場合、コンデンサが4つ必要となるため、コンデンサの実装面積の大型化、ひいては電子回路装置の製造コストの増大を招来してしまう点で、改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来の電子回路装置の技術的課題に鑑みて案出されたものであり、コンデンサの実装面積を低減可能な電子回路装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一態様として、電源と瞬断対策用コンデンサとの間に設けられ、前記瞬断対策用コンデンサに流れる充電電流を制限する電流制限抵抗と、前記電流制限抵抗と前記瞬断対策用コンデンサとの間から分岐して前記瞬断対策用コンデンサから前記電流制限抵抗を迂回するかたちで電子デバイスに接続され、前記電子デバイス側から前記瞬断対策用コンデンサ側に流れる電流を規制する逆流規制手段が設けられた放電回路と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンデンサの実装面積を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電子回路装置の要部を示す回路図である。
【
図2】(a)は
図1に示す電子回路装置の瞬断対策用コンデンサに作用する電圧の変化量を示すグラフであり、(b)は
図1に示す電子回路装置の瞬断対策用コンデンサに作用する電流の変化量を示すグラフである。
【
図3】本発明の第1実施形態の変形例に係る電子回路装置の要部を示す回路図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る電子回路装置の要部を示す回路図である。
【
図5】(a)は
図4に示す電子回路装置の瞬断対策用コンデンサに作用する電圧の変化量を示すグラフ、(b)は
図4に示す電子回路装置の瞬断対策用コンデンサに作用する電流の変化量を示すグラフである。
【
図6】本発明の第2実施形態の第1変形例に係る電子回路装置の要部を示す回路図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の第2変形例に係る電子回路装置の要部を示す回路図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る電子回路装置の要部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電子回路装置の実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、下記の実施形態では、本発明に係る電子回路装置を車載用ECUに適用した例について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子回路装置EC1の要部を抜粋して表示した要部回路図を示している。
図2(a)は
図1に示す電子回路装置EC1の瞬断対策用コンデンサCに作用する電圧Vcの変化量を示すグラフを示し、
図2(b)は
図1に示す電子回路装置EC1の瞬断対策用コンデンサCに流れる電流Icの変化量を示すグラフを示している。
【0013】
(電子回路装置の構成)
電子回路装置EC1は、
図1に示すように、車載のバッテリBTに接続され、当該バッテリBTから電源供給される。この電子回路装置EC1は、バッテリBTへの逆流を規制するダイオードD1と、ダイオードD1の下流側に設けられたマイコンMCと、マイコンMCとダイオードD1の間に設けられ、マイコンMCに対する給電のためにバッテリ電圧Vbを調節(降圧)するレギュレータRGと、を備えている。
【0014】
また、電子回路装置EC1は、電源瞬断の発生を想定し、ダイオードD1とレギュレータRGとの間に、当該電子回路装置EC1の消費電流に応じた静電容量の瞬断対策用コンデンサCを備えている。瞬断対策用コンデンサCは、一端がダイオードD1とレギュレータRGの間に接続されると共に、他端が接地(アース)されていて、レギュレータRGに対する放電回路を構成する。そして、この瞬断対策用コンデンサCは、バッテリBTから供給される電流Icにより充電され、電源瞬断が発生した場合には、当該瞬断対策用コンデンサCに蓄えられた電荷(電圧Vc)が放電され、レギュレータRGへと供給されることで、電源瞬断時の電気回路に実装される図示外の各種電子デバイスに対する電源供給が担保されている。
【0015】
また、瞬断対策用コンデンサCとダイオードD1との間に、瞬断対策用コンデンサCに対する充電電流Icを制限(抑制)する電流制限抵抗Rxが設けられている。換言すれば、瞬断対策用コンデンサCと電源であるバッテリBTとの間に電流制限抵抗Rxが設けられていることで、瞬断対策用コンデンサCがショート故障した際にバッテリBTが接地(アース)と直結することによる短絡電流の発生が抑制されている。
【0016】
さらに、瞬断対策用コンデンサCと電流制限抵抗Rxとの間に、電流制限抵抗Rxを迂回して瞬断対策用コンデンサCとレギュレータRGとを直結する放電回路DCが設けられている。これにより、電源が瞬断した際、瞬断対策用コンデンサCに充電された電荷を、電流制限抵抗Rxを通さずに、放電回路DCを介してレギュレータRGに供給することが可能となっている。
【0017】
また、放電回路DCには、逆流規制手段であるダイオードDxが設けられている。このダイオードDxは、放電回路DCにおいて、瞬断対策用コンデンサC側からレギュレータRG側へ流れる放電電流を許容し、レギュレータRG側から瞬断対策用コンデンサC側へ流れる逆流電流を規制する。すなわち、ダイオードDxが設けられていることにより、瞬断対策用コンデンサCがショート故障した際、放電回路DCを介してバッテリBTが接地(アース)と直結することによる短絡電流の発生が抑制されている。
【0018】
(電子回路装置の作動説明)
次に、
図1に基づき、本実施形態に係る電子回路装置EC1の動作について説明する。
【0019】
(正常時)
電子回路装置EC1が正常な状態にある場合、電子回路装置EC1は、バッテリBTの電圧に基づき、バッテリBTからレギュレータRGに電流が供給される。また、電子回路装置EC1では、電流制限抵抗Rxを介してバッテリBTから瞬断対策用コンデンサCに充電電流Icが供給される。
【0020】
このように、本実施形態では、充電電流IcはバッテリBTから電流制限抵抗Rxを通って瞬断対策用コンデンサCへと供給されることになる。このため、
図2(b)に示すように、電流制限抵抗Rxが配置されない前記従来と比べて小さい充電電流Icが長く供給されることで、
図2(a)に示すように、前記従来と比べて長い時間をかけて満充電、すなわち瞬断対策用コンデンサCの電圧VcがバッテリBTの電圧Vbtと概ね等しくなる。しかしながら、電源瞬断の頻度は比較的少ないことから、本実施形態のように瞬断対策用コンデンサCの満充電までの時間が長くなったとしても、実質的な不具合を招来するおそれはない。
【0021】
(電源瞬断時)
電子回路装置EC1において電源が瞬断した場合、電子回路装置EC1は、瞬断対策用コンデンサCに蓄えられた電荷が、電流制限抵抗Rxによりも電流が流れやすい放電回路DCを介してレギュレータRGに供給される。これにより、電源瞬断時に、瞬断対策用コンデンサCに蓄えられた電荷が電流制限抵抗Rxを通過することによる、レギュレータRGへの電流供給遅延(放電遅延)が抑制されている。
【0022】
(コンデンサ故障時)
電子回路装置EC1において瞬断対策用コンデンサCがショート故障した場合には、瞬断対策用コンデンサCの電位Vcはゼロとなるが、バッテリBTから瞬断対策用コンデンサCに供給される充電電流Icは電流制限抵抗Rxを通ることにより、直ちに電源が短絡する短絡電流の発生が抑制されている。
【0023】
一方、放電回路DCには、逆流防止手段であるダイオードDxが配置されているため、電流制限抵抗Rxを迂回して放電回路DCを逆流するかたちでバッテリBTから瞬断対策用コンデンサCへと充電電流Icが供給されることはない。これにより、電子回路装置EC1では、瞬断対策用コンデンサCがショート故障した場合における放電回路DCを介した短絡電流の発生が抑制されている。
【0024】
(本実施形態の作用効果)
前記従来の電子回路装置では、前記2つのコンデンサが直列に配置されているため、コンデンサの合成容量は半分(1/2)となってしまう。一方で、1つのコンデンサを配置する場合と同じ容量を維持するには、前記直列に配置された2つのコンデンサをさらに並列に配置する必要がある。この場合、コンデンサが合計4つ必要となるため、コンデンサの実装面積の大型化、ひいては電子回路装置の製造コストの増大を招来してしまう点で、改善の余地があった。
【0025】
これに対し、本実施形態に係る電子回路装置EC1は、電源の瞬断が発生した際の電流供給に供する瞬断対策用コンデンサCと、電源(バッテリBT)と瞬断対策用コンデンサCの間に設けられ、瞬断対策用コンデンサCに流れる充電電流Icを制限する電流制限抵抗Rxと、電流制限抵抗Rxと瞬断対策用コンデンサCとの間から分岐して瞬断対策用コンデンサCから電流制限抵抗Rxを迂回するかたちで電子デバイス(レギュレータRG)に接続され、電子デバイス(レギュレータRG)側から瞬断対策用コンデンサC側に流れる電流(充電電流Ic)を規制する逆流規制手段(ダイオードDx)が設けられた放電回路と、を備えている。
【0026】
このように、本実施形態に係る電子回路装置EC1では、瞬断対策用コンデンサCとして単一のコンデンサを用いつつ、バッテリBTと瞬断対策用コンデンサCの間に電流制限抵抗Rxが設けられていて、電流制限抵抗Rxにより、バッテリBTから瞬断対策用コンデンサCに流れる充電電流Icが抑制されている。これにより、瞬断対策用コンデンサCの数量及び実装面積を低減しつつ、瞬断対策用コンデンサCにショート故障が生じた場合には、電流制限抵抗Rxによって短絡電流の発生が抑制され、直ちに電源が短絡してしまう不具合を抑制することができる。
【0027】
また、電流制限抵抗Rxと瞬断対策用コンデンサCとの間から分岐して瞬断対策用コンデンサCから電流制限抵抗Rxを迂回するかたちでレギュレータRGに放電電流を供給可能な放電回路DCが設けられている。これにより、電源の瞬断時には、放電回路DCによって瞬断対策用コンデンサCからレギュレータRGへの円滑な放電電流の供給を確保しつつ、瞬断対策用コンデンサCのショート故障が発生した際には、逆流規制手段であるダイオードDxによって、放電回路DCを逆流することによる短絡電流の発生を抑制することができる。
【0028】
(変形例)
図3は、本発明に係る電子回路装置の第1実施形態の変形例を示している。
【0029】
図3に示すように、本変形例に係る電子回路装置EC11では、放電回路DCにおける逆流防止手段として、前記第1実施形態にて例示したダイオードDxの代わりに、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)Mfが設けられている。
【0030】
このように、逆流防止手段としてMOSFETを用いることによっても、瞬断対策用コンデンサCのショート故障が発生した際の、放電回路DCを逆流することによる短絡電流の発生を抑制することができる。
【0031】
[第2実施形態]
図4~
図5は、本発明に係る電子回路装置の第2実施形態を示している。なお、本実施形態は、前記第1実施形態に対して後述するバイパス回路及び駆動回路を追加したものであって、他の構成については、前記第1実施形態と同様である。したがって、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0032】
(電子回路装置の構成)
図4は、本発明の第2実施形態に係る電子回路装置EC2の要部を抜粋して表示した要部回路図を示している。
図5(a)は
図4に示す電子回路装置EC2の瞬断対策用コンデンサCに作用する電圧Vcの変化量を示すグラフを示し、
図5(b)は
図4に示す電子回路装置EC2の瞬断対策用コンデンサCに流れる電流Icの変化量を示すグラフを示している。
【0033】
図4に示すように、本実施形態に係る電子回路装置EC2では、前記第1実施形態の構成に加えて、ダイオードD1と瞬断対策用コンデンサCを直接接続してバッテリBTから瞬断対策用コンデンサCに流れる充電電流Icをバイパスするバイパス回路BPと、バイパス回路BCに付設され、当該バイパス回路BCを駆動する駆動回路DRと、を備えている。
【0034】
バイパス回路BPは、周知のバイポーラトランジスタからなるトランジスタT1を有していて、駆動回路DR(後述のトランジスタT2)がONされることで、バッテリBTからの充電電流Icをバイパス(電流制限抵抗Rxを迂回)して瞬断対策用コンデンサCに直接供給するものである。トランジスタT1は、NPN型のトランジスタであって、コレクタT1CがダイオードD1に接続され、エミッタT1Eが瞬断対策用コンデンサCに接続されている。
【0035】
駆動回路DRは、並列に配置される2つの抵抗R1,R2と、周知のバイポーラトランジスタからなるトランジスタT2と、を有する。トランジスタT2は、コレクタT2Cが抵抗R1を介してトランジスタT1のベースT1Bに接続されると共に、ベースT2Bが抵抗R2を介してトランジスタT1のエミッタT1Eに接続されていて、エミッタT2Eが接地(アース)されている。
【0036】
(電子回路装置の作動説明)
次に、
図4に基づき、本実施形態に係る電子回路装置EC2の動作について説明する。
【0037】
(正常時)
電子回路装置EC2が正常な状態のときは、前記第1実施形態と同様に、電子回路装置EC2は、バッテリBTの電圧Vbtに基づき、バッテリBTからレギュレータRGに電流が供給される。一方で、電子回路装置EC2では、駆動回路DRのトランジスタT2がOFFのときは、電流制限抵抗Rxを介してバッテリBTから瞬断対策用コンデンサCに充電電流Icが供給される。他方、瞬断対策用コンデンサCの電圧Vcが所定の電圧Vxに到達すると、駆動回路DRのトランジスタT2がONになり、続いてバイパス回路BPのトランジスタT1がONになることで、充電電流Icはバイパス回路BPのトランジスタT1を介して瞬断対策用コンデンサCに供給される。
【0038】
このように、本実施形態では、瞬断対策用コンデンサCの電圧Vcが所定の電圧Vx未満のときは、バイパス回路BPがOFFとなるため、充電電流Icは電流制限抵抗Rxを介して瞬断対策用コンデンサCに供給されることとなる。その結果、
図2(b)に示すように、前記第1実施形態と同様、瞬断対策用コンデンサCには比較的小さい充電電流Icが流れる。やがて、瞬断対策用コンデンサCの電圧Vcが所定の電圧Vxに到達(
図5中のTxに相当)することで、駆動回路DRのトランジスタT2がONになり、充電電流Icは電流制限抵抗Rxを迂回するようにバイパス回路BP(トランジスタT1)を介して瞬断対策用コンデンサCに供給される。その結果、
図2(b)に示すように、充電電流Icが増大し、
図2(a)に示すように、前記第1実施形態よりも十分に速い、前記従来と同様の充電速度でもって瞬断対策用コンデンサCの電圧Vcがバッテリ電圧Vbtに到達し、満充電となる。
【0039】
(電源瞬断時)
電子回路装置EC2において電源が瞬断した場合、電子回路装置EC2は、前記第1実施形態と同様、瞬断対策用コンデンサCに蓄えられた電荷が、電流制限抵抗Rxを迂回するかたちで、放電回路DCを介してレギュレータRGに供給されることとなり、電流制限抵抗Rxを設けたことによる、レギュレータRGに対する電流供給遅延(放電遅延)が抑制されている。
【0040】
(コンデンサ故障時)
電子回路装置EC2において瞬断対策用コンデンサCがショート故障した場合、瞬断対策用コンデンサCの電位Vcはゼロとなる。すると、駆動回路DRのトランジスタT2はOFFとなり、バイパス回路BPのトランジスタT1もOFFとなる。これにより、バッテリBTから瞬断対策用コンデンサCに供給される充電電流Icは、前記第1実施形態と同様、電流制限抵抗Rxを通って瞬断対策用コンデンサCに流れることとなり、直ちに電源が短絡する短絡電流の発生が抑制されている。
【0041】
また、電子回路装置EC2の放電回路DCには、前記第1実施形態と同様、逆流防止手段であるダイオードDxが配置されていることから、電流制限抵抗Rxを迂回して放電回路DCを逆流するようにバッテリBTから瞬断対策用コンデンサCへと充電電流Icが供給されることはない。これにより、電子回路装置EC2でも、瞬断対策用コンデンサCがショート故障した場合の、放電回路DCを介した短絡電流の発生が抑制されている。
【0042】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態に係る電子回路装置EC2は、電源(バッテリBT)から電流制限抵抗Rxを迂回するように電源(バッテリBT)から分岐して電流制限抵抗Rxと瞬断対策用コンデンサCとの間に接続され、電源(バッテリBT)から瞬断対策用コンデンサCに直接電流を供給可能なバイパス回路BPと、瞬断対策用コンデンサCの充電の途中でバイパス回路BPを駆動する駆動回路DRと、をさらに備えている。
【0043】
このように、本実施形態に係る電子回路装置EC2では、バッテリBTから電流制限抵抗Bxを迂回して瞬断対策用コンデンサCへと直接電流を供給可能なバイパス回路BPが設けられている。このため、電流制限抵抗Rxによって瞬断対策用コンデンサCがショート故障した際の電源の短絡を規制しつつ、バッテリBTから瞬断対策用コンデンサCへの直接の電流供給を可能とすることで、電流制限抵抗Rxを設けたことによる瞬断対策用コンデンサCの充電速度の低下を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る電子回路装置EC2では、バイパス回路BP及び駆動回路DRは、それぞれバイポーラトランジスタ(トランジスタT1,T2)を備えている。これにより、電子回路装置EC2において、比較的安価にバイパス回路BP及び駆動回路DRを構成することが可能となるため、電子回路装置EC2の製造コストの低減化を図ることができる。
【0045】
(第1変形例)
図6は、本発明に係る電子回路装置の第2実施形態の第1変形例を示している。
【0046】
図6に示すように、本変形例に係る電子回路装置EC21では、バイパス回路BP及び駆動回路DRに、前記第2実施形態で例示したトランジスタT1,T2の代わりに、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであるMOSFETm1,m2が設けられている。
【0047】
バイパス回路BPは、周知のMOSFETからなるMOSFETm1を有していて、駆動回路DR(後述のMOSFETm2)がONされることで、バッテリBTからの充電電流Icを、バイパス(電流制限抵抗Rxを迂回)して、瞬断対策用コンデンサCへと直接供給する。MOSFETm1は、NチャネルのMOSFETであって、ドレインm1DがダイオードD1に接続され、ソースm1Sが瞬断対策用コンデンサCに接続されている。
【0048】
駆動回路DRは、バイパス回路BP(MOSFETm1)との間に配置される3つの抵抗R1,R2,R3と、周知のMOSFETからなるMOSFETm2と、を有する。抵抗1と抵抗R2,R3は並列に接続され、抵抗R2と抵抗R3は直列に配置されている。MOSFETm2は、ドレインm2Dが抵抗1を介してMOSFETm1のゲートm1Gに接続されると共に、ゲートm2Gが抵抗R2と抵抗R3との間に接続されることによって抵抗R2を介してMOSFETm1のソースm1Sに接続されていて、ソースm2Sが接地(アース)されている。
【0049】
このように、本変形例に係る電子回路装置EC21では、バイパス回路BP及び駆動回路DRは、それぞれMOSFETm1,m2を備えている。これにより、MOSFETm1,m2は、性質上、トランジスタT1,T2と比べてONとOFFの切り替えを安定的に行うことが可能となるため、瞬断対策用コンデンサCの電圧Vcが前記所定の電圧Vxに到達したことによる、駆動回路DR(MOSFETm2)によるバイパス回路BP(MOSFETm1)への切り替えを安定して行うことができる。
【0050】
(第2変形例)
図7は、本発明に係る電子回路装置の第2実施形態の第2変形例を示している。
【0051】
図7に示すように、本変形例に係る電子回路装置EC22は、前記第2実施形態と、前記第2実施形態の第1変形例とを組み合わせたものであって、バイパス回路BPはMOSFETm1を備えてなり、駆動回路DRはトランジスタT2を備えている。
【0052】
すなわち、バイパス回路BPは、周知のMOSFETからなるMOSFETm1を有していて、駆動回路DR(後述のトランジスタT2)がONされることで、バッテリBTからの充電電流Icをバイパス(電流制限抵抗Rxを迂回)して瞬断対策用コンデンサCへと直接供給する。MOSFETm1は、NチャネルのMOSFETであって、ドレインm1DがダイオードD1に接続されると共に、ソースm1Sが瞬断対策用コンデンサCに接続されている。
【0053】
他方、駆動回路DRは、並列に配置される2つの抵抗R1,R2と、周知のバイポーラトランジスタからなるトランジスタT2と、を有する。トランジスタT2は、コレクタT2Cが抵抗R1を介してMOSFETm1のゲートm1Gに接続されると共に、ベースT2Bが抵抗R2を介してMOSFETm1のソースm1Sに接続されていて、エミッタT2Eが接地(アース)されている。
【0054】
このように、本変形例に係る電子回路装置EC22では、バイパス回路BPは、MOSFETm1を備えてなり、駆動回路DRは、バイポーラトランジスタ(トランジスタT2)を備えている。
【0055】
これにより、比較的電力の大きい電子部品が搭載されるバイパス回路BPについて、MOSFETは、性質上、バイポーラトランジスタよりも電力損失が比較的少ないことから、電子部品を比較的小さく設定することができ、電子回路装置EC22の製造コストの低減化を図ることができる。
【0056】
一方、比較的電力の小さい電子部品が搭載される駆動回路DRには、比較的安価なバイポーラトランジスタ(トランジスタT2)を用いることで、電子回路装置EC22の製造コストのさらなる低減化に寄与することができる。
【0057】
なお、本変形例では、バイパス回路BPにMOSFETを配置して、駆動回路DRにバイポーラトランジスタを配置した態様を例示したが、バイパス回路BPにバイポーラトランジスタを配置して、駆動回路DRにMOSFETを配置することも可能である。
【0058】
[第3実施形態]
図8は、本発明に係る電子回路装置の第3実施形態を示している。なお、本実施形態は、前記第2実施形態の第2変形例における放電回路DCを廃止したものであって、他の構成については、前記第2実施形態の第2変形例と同様である。したがって、前記第2実施形態の第2変形例と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0059】
(電子回路装置の構成)
図8は、本発明の第3実施形態に係る電子回路装置EC3の要部を抜粋して表示した要部回路図を示している
本実施形態に係る電子回路装置EC3は、
図8に示すように、前記第2実施形態で例示したような独立した放電回路DCが廃止されていて、代わりに、バイパス回路BPに設けられたMOSFETm1に付随するボディダイオードm1Dxが逆流規制手段として機能し、バイパス回路BPが放電回路として機能する。
【0060】
(電子回路装置の作動説明)
次に、
図8に基づき、本実施形態に係る電子回路装置EC3の動作について説明する。
【0061】
(正常時)
電子回路装置EC3が正常な状態のときは、電子回路装置EC3は、バッテリBTの電圧Vbtに基づいて、バッテリBTからレギュレータRGに電流が供給される。一方で、電子回路装置EC3は、瞬断対策用コンデンサCの電圧Vcが所定の電圧Vx未満のときは、バイパス回路BPがOFFとなり、電流制限抵抗Rxを介してバッテリBTから瞬断対策用コンデンサCに充電電流Icが供給される。やがて、瞬断対策用コンデンサCの電圧Vcが所定の電圧Vx以上になると、駆動回路DRのMOSFETm2がONになり、続いてバイパス回路BPのMOSFETm1がONになることにより、バッテリBTからの充電電流Icはバイパス回路BP(MOSFETm1)を介して瞬断対策用コンデンサCに供給されることとなる。
【0062】
(電源瞬断時)
電子回路装置EC3において電源が瞬断した場合には、電子回路装置EC3は、瞬断対策用コンデンサCに蓄えられた電荷が、電流制限抵抗Rxを迂回するように、バイパス回路BP(MOSFETm1のボディダイオードm1Dx)を介してレギュレータRGに供給され、電流制限抵抗Rxを設けたことによる、レギュレータRGに対する電流供給遅延(放電遅延)が抑制されている。
【0063】
(コンデンサ故障時)
電子回路装置EC3において瞬断対策用コンデンサCがショート故障した場合には、瞬断対策用コンデンサCの電位Vcはゼロとなる結果、駆動回路DRのMOSFETm2はOFFとなり、バイパス回路BPのMOSFETm1もOFFとなる。これにより、バッテリBTから瞬断対策用コンデンサCに供給される充電電流Icは、電流制限抵抗Rxを通って瞬断対策用コンデンサCに流れることとなり、直ちに電源が短絡する短絡電流の発生が抑制される。
【0064】
また、電子回路装置EC3のバイパス回路BPには、逆流防止手段であるボディダイオードm1Dxが配置されていることにより、バイパス回路BPのMOSFETm1がOFFの状態では、電流制限抵抗Rxを迂回してバイパス回路BPを介してバッテリBTから瞬断対策用コンデンサCへと充電電流Icが供給されることはない。これにより、電子回路装置EC3でも、瞬断対策用コンデンサCがショート故障した場合の、バイパス回路BPを介した短絡電流の発生が抑制されている。
【0065】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態に係る電子回路装置EC3は、電源(バッテリBT)から電流制限抵抗Rxを迂回するように電源(バッテリBT)から分岐して電流制限抵抗Rxと瞬断対策用コンデンサCとの間に接続され、電源(バッテリBT)から瞬断対策用コンデンサCに直接電流を供給可能なバイパス回路BPと、瞬断対策用コンデンサCの充電の途中でバイパス回路BPを駆動する駆動回路DRと、をさらに備え、前記放電回路は、バイパス回路BPによって構成され、前記逆流規制手段は、MOSFETm1に付随するボディダイオードm1Dxによって構成されている。
【0066】
このように、本実施形態に係る電子回路装置EC3では、放電回路が、バイパス回路BPにより構成されると共に、逆流規制手段が、バイパス回路BPに設けられたMOSFETm1に付随するボディダイオードm1Dxにより構成されている。このように、バイパス回路BPが放電回路を兼ねることによって、前記第2実施形態の前記第2変形例で例示したような独立した放電回路DCを省略することが可能となる。これにより、電子回路装置EC3の構成が簡素化され、電子回路装置EC3の製造コストの低廉化に寄与することができる。
【0067】
本発明は、前記各実施形態及び前記各変形例の構成に限定されるものではなく、例えば本発明を適用する電子回路装置の仕様等に応じて自由に変更可能である。
【0068】
特に、本発明は、電子回路装置の電源系に適用されるものであるから、電子回路装置に搭載される各種電子デバイスについては、何ら限定されない。
【符号の説明】
【0069】
BT…バッテリ、C…瞬断対策用コンデンサ、Rx…電流制限抵抗、DC…放電回路、Dx…ダイオード(逆流規制手段)、