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特開2024-39705ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039705
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240315BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 611
B41J2/16 303
B41J2/16 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144270
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】三根 亨
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF36
2C057AF93
2C057AG12
2C057AG45
2C057AN01
2C057AP51
2C057BA05
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】チャネルの狭ピッチ化を図った上で、各チャネルの電極間距離を確保できるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係るヘッドチップは、アクチュエータプレートの下面上のうち、吐出チャネルの下端開口部と非吐出チャネルの下端開口部との間に位置する部分には、吐出チャネルの下端開口部と非吐出チャネルの下端開口部との間に位置する部分のX方向の全域に亘ってレーザ照射痕が形成された導電材料除去領域が設けられている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填される噴射チャネル及び前記液体が充填されない非噴射チャネルがそれぞれ第1方向に延びるとともに、駆動壁を挟んで前記第1方向に交差する第2方向で交互に形成されたアクチュエータプレートと、
前記噴射チャネルの内面に形成された第1電極と、
前記非噴射チャネルの内面に形成された第2電極と、を備え、
前記アクチュエータプレートのうち、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向の一方側を向く第1主面上において、前記噴射チャネルのうち前記第1主面上で開口する第1開口部と前記非噴射チャネルのうち前記第1主面上で開口する第2開口部との間に位置する部分には、前記第1開口部及び前記第2開口部間における前記第2方向の全域に亘ってレーザ照射痕が形成された導電材料除去領域が設けられているヘッドチップ。
【請求項2】
前記導電材料除去領域は、前記第1主面上において、少なくとも前記噴射チャネルの前記第1方向の中央部及び前記非噴射チャネルの前記第1方向の中央部間に位置する部分に形成され、
前記第1主面上のうち、前記第1開口部における前記第1方向の第1側端部に位置する周縁部には、前記第1開口部を通じて前記第1電極に接続される第1配線部が形成され、
前記第1配線部は、
前記第1開口部に対して前記第2方向の両側に配置された一対の第1側方接続部と、
一対の前記第1側方接続部同士を接続するとともに外部配線に接続される端子部と、を備えている請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記第1電極は、前記噴射チャネルのうち前記第2方向で向かい合う内側面に形成された側面部を備え、
前記噴射チャネルは、前記第2方向から見て前記第3方向の一方側に向かうに従い前記第1方向の寸法が漸次縮小する切り上がり部を備え、
前記第1配線部は、前記第1側方接続部を介して前記側面部に接続されている請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記噴射チャネルは、
前記第1方向から見て前記第1開口部に向かうに従い前記第2方向で向かい合う内側面同士の距離が狭くなる漸小部と、
前記漸小部に対して前記第1方向の第1側と反対側である第2側に連なり、前記第2方向で向かい合う内側面同士の距離が一様な一様部と、を備え、
前記第1側方接続部は、前記一様部に前記第1方向で重なる位置まで延びるとともに、前記第1電極のうち前記一様部に形成されている部分に接続されている請求項2又は請求項3に記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記第1主面上のうち、前記第1開口部における前記第1方向の第2側端部に位置する周縁部には、前記第1開口部を通じて前記第1電極に接続される第2配線部が形成され、
前記第2配線部は、
前記第1開口部に対して前記第2方向の両側に配置された一対の第2側方接続部と、
一対の前記第2側方接続部同士を接続する中央接続部と、を備えている請求項2又は請求項3に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
前記第1主面には、接着剤を介して接合部材が接合され、
前記第1主面と前記接着剤との間には、前記第1主面及び前記接着剤間での結合力に比べて前記第1主面との結合力が高い第1結合膜が介在している請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項7】
絶縁性を有し、前記第1主面を覆うように設けられた保護膜を備え、
前記第1主面と前記保護膜との間には、前記第1主面及び前記保護膜間での結合力に比べて前記第1主面との結合力が高い第2結合膜が介在している請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項8】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヘッドチップを備えている液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載の液体噴射ヘッドを備えている液体噴射記録装置。
【請求項10】
液体が充填される噴射チャネル及び前記液体が充填されない非噴射チャネルがそれぞれ第1方向に延びるとともに、駆動壁を挟んで前記第1方向に交差する第2方向で交互に形成されたアクチュエータプレートと、
前記噴射チャネルの内面に形成された第1電極と、
前記非噴射チャネルの内面に形成された第2電極と、を備えたヘッドチップの製造方法であって、
前記アクチュエータプレートに対して、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向の一方側から、前記アクチュエータプレートのうち前記第3方向の一方側を向く第1主面、前記噴射チャネルの内面及び前記非噴射チャネルの内面に対して導電材料を成膜する成膜工程と、
前記第1主面のうち、前記噴射チャネルのうち前記第1主面上で開口する第1開口部と前記非噴射チャネルのうち前記第1主面上で開口する第2開口部との間に位置する部分に対して、前記第1開口部及び前記第2開口部間における前記第2方向の全域に亘ってレーザ照射を行うことで、前記第1主面に形成された導電材料を除去する導電材料除去工程と、を備えているヘッドチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに搭載されるインクジェットヘッドは、インクジェットヘッドに搭載されるヘッドチップを通じて被記録媒体にインクを吐出する。ヘッドチップは、吐出チャネル及び非吐出チャネルが形成されたアクチュエータプレートと、吐出チャネルに連通するノズル孔を有するノズルプレートと、を備えている。吐出チャネル及び非吐出チャネルは、駆動壁を隔てて交互に配列されている。
ヘッドチップにおいて、インクを吐出させるには、駆動壁に形成された電極間に電圧を印加して、駆動壁を厚み滑り変形させる。これにより、吐出チャネル内の容積が変化することで、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて吐出される。
【0003】
上述した電極は、各チャネルのうちアクチュエータプレートの主面上での開口部を通じて、各チャネル内に導電材料を導入することで形成される。例えば下記特許文献1には、導電材料の成膜後、アクチュエータプレートの主面上に付着した導電材料をレーザ照射によって除去することで、各チャネルの電極同士を分断する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-98333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近時では、高解像度化等の要請に対応するために、チャネルの狭ピッチ化を行う必要がある。
しかしながら、チャネルの狭ピッチ化に伴い、駆動壁の寸法が縮小する。この際、従来技術にあっては、チャネルの狭ピッチ化を図った上で、各チャネルの電極間距離を確保する点で未だ改善の余地があった。
【0006】
本開示は、チャネルの狭ピッチ化を図った上で、各チャネルの電極間距離を確保できるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係るヘッドチップは、液体が充填される噴射チャネル及び前記液体が充填されない非噴射チャネルがそれぞれ第1方向に延びるとともに、駆動壁を挟んで前記第1方向に交差する第2方向で交互に形成されたアクチュエータプレートと、前記噴射チャネルの内面に形成された第1電極と、前記非噴射チャネルの内面に形成された第2電極と、を備え、前記アクチュエータプレートのうち、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向の一方側を向く第1主面上において、前記噴射チャネルのうち前記第1主面上で開口する第1開口部と前記非噴射チャネルのうち前記第1主面上で開口する第2開口部との間に位置する部分には、前記第1開口部及び前記第2開口部間における前記第2方向の全域に亘ってレーザ照射痕が形成された導電材料除去領域が設けられている。
本態様によれば、各チャネル内に電極を形成するにあたって、アクチュエータプレートの第1主面側から導電材料を成膜した場合に、第1主面上に付着した導電材料をレーザ照射によって除去することで、第1主面上において隣り合う第1電極及び第2電極間を分断できる。この場合、第1開口部及び第2開口部間における第2方向の全域に亘って導電材料除去領域を設けることで、隣り合う第1電極及び第2電極間の電極間距離を確保し易い。そのため、隣り合うチャネル間の距離(ピッチ)を狭くした上で、第1電極及び第2電極間が液体で架け渡されることによる短絡等の発生を抑制し、信頼性や耐久性に優れたヘッドチップを提供できる。
【0008】
(2)上記(1)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記導電材料除去領域は、前記第1主面上において、少なくとも前記噴射チャネルの前記第1方向の中央部及び前記非噴射チャネルの前記第1方向の中央部間に位置する部分に形成され、前記第1主面上のうち、前記第1開口部における前記第1方向の第1側端部に位置する周縁部には、前記第1開口部を通じて前記第1電極に接続される第1配線部が形成され、前記第1配線部は、前記第1開口部に対して前記第2方向の両側に配置された一対の第1側方接続部と、一対の前記第1側方接続部同士を接続するとともに外部配線に接続される端子部と、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、第1側方接続部によって第1電極及び第1配線部間の導通を確保できるので、第1電極及び第1配線部間での電気的信頼性を確保した上で、少なくとも噴射チャネルの第1方向の中央部及び非噴射チャネルの第1方向の中央部間での電極間距離を確保できる。
【0009】
(3)上記(2)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1電極は、前記噴射チャネルのうち前記第2方向で向かい合う内側面に形成された側面部を備え、前記噴射チャネルは、前記第2方向から見て前記第3方向の一方側に向かうに従い前記第1方向の寸法が漸次縮小する切り上がり部を備え、前記第1配線部は、前記第1側方接続部を介して前記側面部に接続されていることが好ましい。
噴射チャネルの開口縁のうち、切り上がり部に連なる部分には、切り上がり部と第1主面とで鋭角をなし易い。この状態で、第1主面側から導電材料を成膜すると、切り上がり部上に第1電極を所望の条件で成膜することが難しい。
そこで、本態様によれば、第1側方接続部と側面部との間で第1電極と第1配線部との導通を確保することで、第1電極及び第1配線部間での電気的信頼性を確保できる。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記噴射チャネルの前記第1側端部は、前記第1方向から見て前記第1開口部に向かうに従い前記第2方向で向かい合う内側面同士の距離が狭くなる漸小部と、前記漸小部に対して前記第1方向の第1側と反対側である第2側に連なり、前記第2方向で向かい合う内側面同士の距離が一様な一様部と、を備え、前記第1側方接続部は、前記一様部に前記第1方向で重なる位置まで延びるとともに、前記第1電極のうち前記一様部に形成されている部分に接続されていることが好ましい。
噴射チャネルの開口縁のうち、漸小部に連なる部分には、漸小部と第1主面とで鋭角をなし易い。この状態で、第1主面側から導電材料を成膜すると、漸小部上に第1電極を所望の条件で成膜することが難しい。
そこで、本態様では、第1側方接続部を一様部と第1方向で重なる位置まで延ばすことで、一様部に形成された第1電極に対して第1側方接続部を接続することができる。その結果、第1電極及び第1配線部間での電気的信頼性を確保できる。
【0011】
(5)上記(2)から(4)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1主面上のうち、前記第1開口部における前記第1方向の第2側端部に位置する周縁部には、前記第1開口部を通じて前記第1電極に接続される第2配線部が形成され、前記第2配線部は、前記第1開口部に対して前記第2方向の両側に配置された一対の第2側方接続部と、一対の前記第2側方接続部同士を接続する中央接続部と、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、仮に片側の第1電極と、片側の第1電極に対応する第1側方接続部と、の間で断線が生じた場合であっても、第2配線部と両側の第1電極とが接続されていることで、第2配線部を介して両側の第1電極と第1配線部との導通を確保できる。これにより、ヘッドチップの動作信頼性や耐久性を向上させることができる。
【0012】
(6)上記(1)から(5)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1主面には、接着剤を介して接合部材が接合され、前記第1主面と前記接着剤との間には、前記第1主面及び前記接着剤間での結合力に比べて前記第1主面との結合力が高い第1結合膜が介在していることが好ましい。
本態様によれば、導電材料除去領域によって第1主面上のうちアクチュエータプレートが露出している領域を確保できる。しかも、本態様では、第1主面との結合力が高い第1結合膜を介して第1主面に接着剤が形成されているので、第1主面と接着剤との接合強度を確保できる。特に、導電材料除去領域は、レーザ照射痕によって微細な凹凸が形成されている。そのため、いわゆるアンカー効果によって、第1結合膜とアクチュエータプレートの第1主面との物理的結合力を確保することができ、第1結合膜を第1主面上に安定して形成することができる。
【0013】
(7)上記(1)から(5)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、絶縁性を有し、前記第1主面を覆うように設けられた保護膜を備え、前記第1主面と前記保護膜との間には、前記第1主面及び前記保護膜間での結合力に比べて前記第1主面との結合力が高い第2結合膜が介在していることが好ましい。
本態様によれば、第1主面上に第2結合膜を介して保護膜を形成することで、第1主面上に保護膜を安定して設けることができる。これにより、保護膜の浮きや剥離等を抑制し、電極を保護することができる。特に、導電材料除去領域は、レーザ照射痕によって微細な凹凸が形成されている。そのため、いわゆるアンカー効果によって、第2結合膜とアクチュエータプレートの第1主面との物理的結合力を確保することができ、第2結合膜を第1主面上に安定して形成することができる。
【0014】
(8)本開示に係る液体噴射ヘッドは、上記(1)から(7)の何れかの態様に係るヘッドチップを備えている。
本態様によれば、信頼性や耐久性に優れた液体噴射ヘッドを提供できる。
【0015】
(9)本開示に係る液体噴射記録装置は、上記(8)の態様に係る液体噴射ヘッドを備えている。
本態様によれば、信頼性や耐久性に優れた液体噴射記録装置を提供できる。
【0016】
(10)本開示の一態様に係るヘッドチップの製造方法は、液体が充填される噴射チャネル及び前記液体が充填されない非噴射チャネルがそれぞれ第1方向に延びるとともに、駆動壁を挟んで前記第1方向に交差する第2方向で交互に形成されたアクチュエータプレートと、前記噴射チャネルの内面に形成された第1電極と、前記非噴射チャネルの内面に形成された第2電極と、を備えたヘッドチップの製造方法であって、前記アクチュエータプレートに対して、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向の一方側から、前記アクチュエータプレートのうち前記第3方向の一方側を向く第1主面、前記噴射チャネルの内面及び前記非噴射チャネルの内面に対して導電材料を成膜する成膜工程と、前記第1主面のうち、前記噴射チャネルのうち前記第1主面上で開口する第1開口部と前記非噴射チャネルのうち前記第1主面上で開口する第2開口部との間に位置する部分に対して、前記第1開口部及び前記第2開口部間における前記第2方向の全域に亘ってレーザ照射を行うことで、前記第1主面に形成された導電材料を除去する導電材料除去工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一態様によれば、チャネルの狭ピッチ化を図った上で、各チャネルの電極間距離を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】第1実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環機構の概略構成図である。
図3】第1実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
図4図3のIV-IV線に対応する断面図である。
図5図3のV-V線に対応する断面図である。
図6図4のVI-VI線に対応する断面図である。
図7図3のVII-VII線に対応する断面図である。
図8図3のVIII矢視図である。
図9図5の拡大断面図である。
図10】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を示すフローチャートである。
図11】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図12】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図13】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図14】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図15】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図16】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図17】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図18】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図19】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図20】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図21】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図22】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図23】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図24】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図25】第1実施形態の変形例に係るヘッドチップの断面図である。
図26】第2実施形態に係るアクチュエータプレートの平面図である。
図27】第3実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
図28図26のXXVIII-XXVIII線に対応する断面図である。
図29図26のXXIX-XXIX線に対応する断面図である。
図30】第3実施形態に係るアクチュエータプレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
(第1実施形態)
[プリンタ1]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態のプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、インク循環機構6と、走査機構7と、を備えている。
【0021】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向は走査機構7の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。第1実施形態において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0022】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。
インクタンク4は、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク4に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。なお、インクタンク4に収容されるインクは、溶剤に水を使用した水性インク(導電性インク)を用いることが可能である。
【0023】
図2は、インクジェットヘッド5及びインク循環機構6の概略構成図である。
図1図2に示すように、インク循環機構6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環機構6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。
【0024】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧になる。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧になる。インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環可能となっている。
【0025】
走査機構7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構7は、Y方向に延びるガイドレール28と、ガイドレール28に移動可能に支持されたキャリッジ29と、を備えている。
【0026】
<インクジェットヘッド5>
図1に示すように、インクジェットヘッド5は、キャリッジ29に搭載されている。図示の例では、複数のインクジェットヘッド5が、一つのキャリッジ29にY方向に並んで搭載されている。インクジェットヘッド5は、ヘッドチップ50(図3参照)と、インク循環機構6及びヘッドチップ50間を接続するインク供給部(不図示)と、ヘッドチップ50に駆動電圧を印加する制御部(不図示)と、を備えている。
【0027】
<ヘッドチップ50>
図3は、ヘッドチップ50の分解斜視図である。
図3に示すヘッドチップ50は、後述する吐出チャネル61における延在方向(Y方向)の中央部からインクを吐出する、いわゆる循環式サイドシュートタイプのヘッドチップ50である。ヘッドチップ50は、ノズルプレート51と、中間プレート(接合部材)52と、アクチュエータプレート53と、カバープレート54と、を備えている。ヘッドチップ50は、ノズルプレート51、中間プレート52、アクチュエータプレート53及びカバープレート54が、この順番にZ方向(第3方向)に積層された構成である。
【0028】
アクチュエータプレート53は、酸化物を含む圧電材料として、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等により形成されている。アクチュエータプレート53は、例えば分極方向がZ方向で一方向に設定された、いわゆるモノポール基板である。但し、アクチュエータプレート53は、分極方向がZ方向の+側と-側とで異なる、いわゆるシェブロン基板であってもよい。
【0029】
アクチュエータプレート53には、チャネル列60が形成されている。チャネル列60は、インクが充填される吐出チャネル61、及びインクが充填されない非吐出チャネル62を有している。各チャネル61,62は、アクチュエータプレート53において、X方向(第2方向)に間隔をあけた状態で交互に配列されている。第1実施形態では、チャネル延在方向(第1方向)がY方向に一致する構成について説明するが、チャネル延在方向がY方向に交差していてもよい。
【0030】
図4は、図3のIV-IV線に対応する断面図である。
図4に示すように、吐出チャネル61は、X方向から見て下方(第3方向の一方側)に向けて凸の円弧状に形成されている。すなわち、吐出チャネル61におけるY方向の寸法は、上方から下方に向かうに従い徐々に小さくなっている。具体的に、吐出チャネル61は、Y方向の中央部に位置する貫通部61aと、貫通部61aに対してY方向の両側に連なる切り上がり部61bと、を備えている。
【0031】
図5は、図4のV-V線に対応する断面図である。
図4図5に示すように、貫通部61aは、アクチュエータプレート53をZ方向に貫通している。図5に示すように、貫通部61aにおけるY方向の中間領域は、X方向の寸法がZ方向の全体に亘って一様な一様部63を構成している。
【0032】
図6は、図4のVI-VI線に対応する断面図である。
図6に示すように、貫通部61aのうち一様部63に対してY方向の両側に位置する部分は、変化部64を構成している。変化部64は、下端部を構成する漸小部64aと、漸小部64aの上方に連なるストレート部64bと、を備えている。
漸小部64aは、上方から下方に向かうに従いX方向の寸法(吐出チャネル61の内側面間の距離)が漸次小さくなっている。漸小部64aの下端は、アクチュエータプレート53の下面(第1主面)上で開口している。
ストレート部64bは、漸小部64aの上端から上方に延びている。ストレート部64bは、X方向の寸法がZ方向の全体に亘って一様に形成されている。なお、貫通部61a全体に対する変化部64のY方向の寸法は、適宜変更が可能である。また、貫通部61aは、変化部64(漸小部64a)を備えない構成であってもよい。
【0033】
図4に示すように、切り上がり部61bは、アクチュエータプレート53の上面で開口するとともに、貫通部61aからY方向に離れるに従いZ方向の寸法が漸次小さくなっている。すなわち、吐出チャネル61の上端開口部は、貫通部61a及び切り上がり部61bによって形成されている。一方、吐出チャネル61の下端開口部は貫通部61aによって形成されている。なお、切り上がり部61bの底面は、曲率半径が一様な円弧状に形成されている。
【0034】
図7は、図3のVII-VII線に対応する断面図である。
図7に示すように、非吐出チャネル62は、アクチュエータプレート53をZ方向に貫通した状態で、Y方向に直線状に延びている。図3に示すように、アクチュエータプレート53のうち、隣り合う吐出チャネル61及び非吐出チャネル62間に位置する部分は、それぞれ駆動壁65を構成している。したがって、チャネル61,62は、一対の駆動壁65によってX方向の両側が囲まれている。第1実施形態では、チャネル列60が一列のヘッドチップ50を例にして説明しているが、チャネル列60は、Y方向に複数列設けられていてもよい。この場合、隣り合うチャネル列60を構成する吐出チャネル61同士は、チャネル列60の個数をnとすると、一のチャネル列60における吐出チャネル61の配列ピッチに対して1/nピッチ毎にずれて配列されていることが好ましい。
【0035】
図3図5に示すように、カバープレート54は、各チャネル61,62の上端開口部を覆うように、アクチュエータプレート53の上面に、接着剤70を介して接合されている。接着剤70には、例えばエポキシ系接着剤が用いられている。
【0036】
図4に示すように、カバープレート54において、チャネル列60の-Y側端部と平面視で重なり合う位置には、入口共通インク室71が形成されている。入口共通インク室71は、例えばチャネル列60を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート54の上面で開口している。
入口共通インク室71において、吐出チャネル61と平面視で重なり合う位置には、入口スリット72が形成されている。入口スリット72は、各吐出チャネル61の-Y側端部と、入口共通インク室71内と、の間を各別に連通している。
【0037】
カバープレート54において、チャネル列60の+Y側端部と平面視で重なり合う位置には、出口共通インク室75が形成されている。出口共通インク室75は、例えばチャネル列60を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート54の上面で開口している。
出口共通インク室75において、非吐出チャネル62と平面視で重なり合う位置には、出口スリット76が形成されている。出口スリット76は、各吐出チャネル61の+Y側端部と、出口共通インク室75内と、の間を各別に連通している。したがって、入口スリット72及び出口スリット76は、それぞれ各吐出チャネル61に連通する一方、非吐出チャネル62には連通していない。
【0038】
図5に示すように、中間プレート52は、アクチュエータプレート53の下面に接着剤77を介して接合されている。中間プレート52は、アクチュエータプレート53と同様にPZT等の圧電材料により形成されている。なお、中間プレート52は、圧電材料以外の材料(例えば、ポリイミドやアルミナ等の非導電材)で形成されていてもよい。
【0039】
中間プレート52のうち、平面視で吐出チャネル61(貫通部61a)と重なり合う位置には、連通孔52aが形成されている。連通孔52aは、中間プレート52をZ方向に貫通している。連通孔52aは、吐出チャネル61の下側開口部を通じて吐出チャネル61内に連通している。連通孔52aにおけるX方向の寸法は、吐出チャネル61におけるX方向の寸法よりも大きい。なお、中間プレート52は、必須の構成ではない。
【0040】
ノズルプレート51は、中間プレート52の下面に接着剤78を介して接合されている。ノズルプレート51は、金属材料(SUSやNi-Pd等)により厚さが50μm程度に形成されている。但し、ノズルプレート51は、金属材料の他、樹脂材料(ポリイミド等)、ガラス、シリコン等による単層構造、又は積層構造であってもよい。
【0041】
ノズルプレート51には、ノズルプレート51をZ方向に貫通する複数のノズル孔51aが形成されている。ノズル孔51aは、例えば上方から下方に向かうに従い内径が漸次縮小するテーパ状に形成されている。ノズル孔51aは、それぞれX方向に間隔をあけて配置されている。各ノズル孔51aは、連通孔52aを通じて対応する吐出チャネル61に各別に連通している。したがって、各非吐出チャネル62は、ノズル孔51aには連通しておらず、ノズルプレート51により下方から覆われている。なお、連通孔52aにおけるX方向の寸法は、ノズル孔51aの最大内径部(上側開口部)より大きいことが好ましい。
【0042】
次に、アクチュエータプレート53に形成された駆動配線について説明する。図8は、図3のVIII矢視図である。
図8に示すように、アクチュエータプレート53には、共通配線81及び個別配線82が形成されている。
【0043】
図4図8に示すように、共通配線81は、共通電極(第1電極、側面部)85と、第1接続配線部(第1配線部)86と、を備えている。
共通電極85は、吐出チャネル61の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に一対で形成されている。各共通電極85は、吐出チャネル61(貫通部61a)の内側面において、下半分程度の領域に形成されている。
【0044】
第1接続配線部86は、アクチュエータプレート53の下面のうち吐出チャネル61の下端開口縁における-Y側端部(第1側端部)を取り囲み、一対の共通電極85の-Y側端部同士を接続している。第1接続配線部86は、取出部(第1側方接続部)86aと、共通端子(端子部)86bと、を備えている。
【0045】
取出部86aは、吐出チャネル61の下端開口縁における-Y側端部であって、X方向の両側にそれぞれ形成されている。各取出部86aは、Y方向における変化部64から一様部63の-Y側端部に至る部分を、吐出チャネル61の下端開口縁に沿って延びている。具体的に、取出部86aにおける-Y側端部は、吐出チャネル61の下端開口縁における-Y側端縁とY方向で同等の位置に配置されている。取出部86aにおける+Y側端部は、一様部63における-Y側端部とY方向で同等の位置まで達している。取出部86aは、対応する共通電極85のうち一様部63に形成された部分に、吐出チャネル61の下端開口部を通じて接続されている。但し、取出部86aは、共通電極85のうち変化部64(漸小部64a)に形成された部分に接続されていてもよい。また、取出部86aは、一様部63に対して-Y側で終端していてもよい。
【0046】
共通端子86bは、アクチュエータプレート53の下面のうち、吐出チャネル61に対して-Y側に位置する部分(以下、尾部90という。)に形成されている。共通端子86bは、尾部90の下面において、各吐出チャネル61に対応して設けられている。各共通端子86bは、対応する吐出チャネル61に対してY方向に直線状に延びている。共通端子86bにおける+Y側端部は、一対の取出部86aそれぞれに接続されている。図示の例において、共通端子86bの+Y側端部は、吐出チャネル61の下端開口縁における-Y側端縁に達している。但し、共通端子86bは、取出部86aに接続されていれば、吐出チャネル61の下端開口縁(-Y側端縁)に達していなくてもよい。
【0047】
図7図8に示すように、個別配線82は、個別電極(第2電極)88と、個別端子89、を備えている。
個別電極88は、各非吐出チャネル62の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、個別電極88は、非吐出チャネル62の内側面において、下半分程度の領域に形成されている。なお、個別電極88は、個別端子89との導通が確保されていれば、X方向から見て、少なくとも共通電極85と重なり合う領域に形成されていればよい。
【0048】
個別端子89は、尾部90の下面において、共通端子86bよりも-Y側に位置する部分に形成されている。個別端子89は、X方向に延びる帯状とされている。個別端子89は、吐出チャネル61を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル62の下端開口縁において、吐出チャネル61を間に挟んでX方向で向かい合う個別電極88同士を接続している。尾部90において、共通端子86bと個別端子89との間に位置する部分には、区画溝91が形成されている。区画溝91は、尾部90において、X方向に延びている。区画溝91は、共通端子86bと個別端子89とを分断している。
【0049】
尾部90の下面には、フレキシブルプリント基板92が圧着されている。フレキシブルプリント基板92は、尾部90の下面において、共通端子86bと個別端子89に接続されている。フレキシブルプリント基板92は、アクチュエータプレート53の外側を通って上方に引き出されている。
【0050】
図9は、図5の拡大断面図である。
ここで、図8図9に示すように、アクチュエータプレート53の下面には、導電材料が形成されていないブランク領域100が設けられている。ブランク領域100は、後述する導電材料除去工程S5において、アクチュエータプレート53の下面に付着した導電材料(下面成膜部102)を、レーザ照射により除去した領域である。そのため、ブランク領域100において、アクチュエータプレート53の下面には、複数のレーザ照射痕Lが形成されている。本実施形態において、レーザ照射痕Lは、X方向及びY方向のうち一方向に沿って延びるとともに、X方向及びY方向のうち他方向に複数列並んで形成されている。また、各レーザ照射痕Lの内面は、他方向に沿う断面視において、下方に窪む円弧状に形成されている。
【0051】
ブランク領域100は、第1除去領域100a、第2除去領域(導電材料除去領域)100b、第3除去領域100c及び第4除去領域100dを備えている。
第1除去領域100aは、アクチュエータプレート53の下面において、吐出チャネル61の下端開口部よりも+Y側に位置する領域である。第1除去領域100aは、アクチュエータプレート53の下面において、隣り合う非吐出チャネル62間に位置する部分にX方向の全域に亘って形成されている。第1除去領域100aにおける+Y側端部は、アクチュエータプレート53の+Y側端縁に達している。一方、第1除去領域100aにおける-Y側端部は、吐出チャネル61の下端開口縁のうち+Y側端縁に達している。
【0052】
第2除去領域100bは、第1除去領域100aに対して-Y側に連なっている。第2除去領域100bは、取出部86aよりも+Y側の領域において、吐出チャネル61の下端開口部(第1開口部)と非吐出チャネル62の下端開口部(第2開口部)との間に位置する部分をX方向の全域に亘って形成されている。すなわち、取出部86aよりも+Y側の領域(吐出チャネル61の下端開口部におけるY方向の中央部から+Y側端部に至る領域)において、吐出チャネル61の下端開口部と非吐出チャネル62の下端開口部との間に位置する部分には、X方向の全域に亘ってアクチュエータプレート53が露出している。なお、吐出チャネル61の下端開口部におけるY方向の中央部とは、Y方向の両端部を除く領域であり、本実施形態では、取出部86aよりも+Y側の領域であって、平面視でノズル孔51aと重なり合う部分を含むY方向の所定領域である。
【0053】
第3除去領域100cは、吐出チャネル61の下端開口部と非吐出チャネル62の下端開口部との間に位置する領域のうち、取出部86aに対してX方向の両側に位置する部分である。第3除去領域100cでは、取出部86aと非吐出チャネル62の下端開口部との間に位置する部分のX方向の全域に亘って導電材料が除去されている。
【0054】
第4除去領域100dは、アクチュエータプレート53の下面において、尾部90に位置する領域である。第4除去領域100dは、第3除去領域100cに対して-Y側に連なっている。第4除去領域100dは、共通端子86bと非吐出チャネル62の下端開口部との間に位置する部分について、X方向の全域に亘って形成されている。なお、ブランク領域100のX方向における寸法は、共通配線81と個別配線82とが電気的に分断され、かつ共通配線81と個別配線82との間の電極間距離に最小寸法以上が確保されていれば、適宜変更が可能である。第1実施形態において、電極間距離の最小寸法は、取出部86aと個別電極88との間の寸法以上に設定されている。
【0055】
図5図6に示すように、ヘッドチップ50は、処理膜(第1結合膜)110と、保護膜120と、を備えている。
処理膜110は、アクチュエータプレート53の下面と接着剤77との結合力を確保するためのものであって、シランカップリング処理等の表面処理が施されている。図示の例において、処理膜110は、アクチュエータプレート53の下面、各チャネル61,62の内面及びカバープレート54の下面のうち各チャネル61,62内に露出している部分に亘って形成されている。なお、処理膜110は、アクチュエータプレート53の下面と接着剤77との間での結合力に比べてアクチュエータプレート53の下面との結合力が高い材料であれば、シランカップリング処理に限られない。
【0056】
処理膜110のうち、アクチュエータプレート53の下面上に位置する部分は、アクチュエータプレート53の下面と接着剤77との間に介在している。処理膜110のうち、チャネル61,62内に位置する部分は、共通電極85及び個別電極88をそれぞれ覆っている。なお、処理膜110は、少なくともアクチュエータプレート53の下面において、接着剤77との間に介在していればよい。
【0057】
保護膜120は、インクと電極(主に共通電極85)との間に介在して、電極を保護する。本実施形態において、保護膜120は、各チャネル61,62の内面、中間プレート52の下面、連通孔52aの内面及びカバープレート54の下面のうち各チャネル61,62内に露出している部分を覆うように形成されている。したがって、ノズルプレート51と中間プレート52とを接合する接着剤78は、保護膜120を介して中間プレート52に接合されている。
【0058】
なお、保護膜120は、例えばパラキシリレン系樹脂材料(例えば、パリレン(登録商標))等の有機絶縁材料により形成されている。但し、保護膜120は、酸化タンタル(Ta2O5)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、酸化シリコン(SiO2)又はダイヤモンドライクカーボン(Diamond-like carbon)等により構成されていてもよく、これらの少なくともいずれか一つを含んでいてもよい。
【0059】
[プリンタ1の動作方法]
次に、プリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
プリンタ1は、初期状態として、各インクタンク4にそれぞれ異なる色のインクが十分に充填されているものとする。インクジェットヘッド5には、インクタンク4内のインクがインク循環機構6を介して充填された状態となっている。
【0060】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、被記録媒体Pが搬送機構2,3のローラ11,12に挟み込まれながら+X側に搬送される。被記録媒体Pの搬送と同時にキャリッジ29がY方向に移動することで、キャリッジ29に搭載されたインクジェットヘッド5がY方向に往復移動する。
インクジェットヘッド5が往復移動する間に、各インクジェットヘッド5よりインクを被記録媒体Pに適宜吐出させる。これにより、被記録媒体Pに対して文字や画像等の記録を行うことができる。
【0061】
ここで、各インクジェットヘッド5の動きについて、以下に詳細に説明する。
第1実施形態のような循環式サイドシュートタイプのインクジェットヘッド5では、まず図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、図4に示すように、入口共通インク室71及び入口スリット72を通して各吐出チャネル61内に供給される。各吐出チャネル61内に供給されたインクは、各吐出チャネル61をY方向に流通する。その後、インクは、出口スリット76を通じて出口共通インク室75に排出された後、インク排出管22を通してインクタンク4に戻される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させることができる。
【0062】
キャリッジ29(図1参照)の移動によってインクジェットヘッド5の往復移動が開始されると、フレキシブルプリント基板92を介して共通電極85及び個別電極88間に駆動電圧が印加される。この際、個別電極88を駆動電位Vddとし、共通電極85を基準電位GNDとして各電極85,88間に駆動電圧を印加する。すると、各駆動壁65のうち、各対向領域で挟まれた部分に電界が生じることで、各駆動壁65がZ方向の中間部分を中心にしてV字状に屈曲変形する。すなわち、駆動壁65は吐出チャネル61の容積が拡大するように変形する。
【0063】
各吐出チャネル61の容積を増大させた後、共通電極85及び個別電極88間に印加した電圧をゼロにする。すると、駆動壁65が復元し、一旦増大した吐出チャネル61の容積が元の容積に戻る。これにより、吐出チャネル61の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、インクがノズル孔51aを通じて液滴状に吐出される。ノズル孔51aから吐出されたインクが被記録媒体P上に着弾することで、被記録媒体Pに文字や画像等を記録することができる。
【0064】
[ヘッドチップ50の製造方法]
次に、ヘッドチップ50の製造方法について説明する。図10は、ヘッドチップ50の製造方法を示すフローチャートである。図11図24は、ヘッドチップ50の製造方法を説明するための工程図である。図11図24のうち、図11図13図4に対応する断面図であり、図14図20図5に対応する断面図であり、図21図23図6に対応する断面図であり、図24図8に対応する平面図である。以下の説明では、便宜上、ヘッドチップ50をチップレベルで製造する場合を例にして説明する。
図10に示すように、ヘッドチップ50の製造方法は、アクチュエータプレート加工工程S1と、カバープレート接合工程S2と、グラインド工程S3と、配線形成工程S4と、導電材料除去工程S5と、処理膜形成工程S6と、中間プレート接合工程S7と、保護膜形成工程S8と、ノズルプレート接合工程S9と、を備えている。
【0065】
図11図14図21に示すように、に示すように、アクチュエータプレート加工工程S1では、アクチュエータプレート53のうち、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62の形成領域に対してアクチュエータプレート53の上方からダイサーDを進入させる。ダイサーDは、X方向から見て円板状に形成されている。アクチュエータプレート加工工程S1において、非吐出チャネル62の形成領域は、吐出チャネル61の形成領域に対してダイサーDのY方向への走行量を多くする。これにより、X方向から見て、吐出チャネル61の底面は下方に向けて凸の円弧状に形成され、非吐出チャネル62の底面は直線状に形成される。また、ダイサーDの刃先は、先端に向かうに従い厚みが漸次縮小している。したがって、Y方向から見て、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62それぞれの下端部は、下方に向かうに従い漸次先細っている。なお、ダイサーDの進入量は、後のグラインド工程S3でのアクチュエータプレート53の仕上がり厚さよりも大きく設定する。
【0066】
図12図15に示すように、カバープレート接合工程S2では、アクチュエータプレート53の上面に対し、接着剤70を介してカバープレート54を貼り付ける。これにより、アクチュエータプレート53及びカバープレート54が積層された積層体101が形成される。
【0067】
図13図16図22に示すように、グラインド工程S3では、アクチュエータプレート53の下面に対してグラインド加工を施す。具体的に、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62がアクチュエータプレート53の下面で開口するまでアクチュエータプレート53をグラインドする。ここで、上述したアクチュエータプレート加工工程S1において、吐出チャネル61の底面は下方に向けて凸の円弧状に形成されるとともに、ダイサーDの刃先は先端に向かうに従い厚みが漸次縮小するように加工されている。その上で、吐出チャネル61のうち一様部63に対応する部分では、ダイサーDの刃先痕が消滅するまでグラインド加工が施される。一方、吐出チャネル61のうち変化部64に対応する部分では、刃先痕が残存している。すなわち、吐出チャネル61の変化部64において、ダイサーDの刃先痕として残存した部分が漸小部64aを構成することになる。
【0068】
図17図23図24に示すように、配線形成工程S4では、アクチュエータプレート53の下方から電極材料を成膜することで、駆動配線を形成する。配線形成工程S4では、アクチュエータプレート53の下面に対して+X側及び-X側から斜め蒸着を行う。すると、アクチュエータプレート53の下面に、取出部86a、共通端子86b及び個別端子89を含む下面成膜部102が成膜される。また、吐出チャネル61の下端開口部を通じて共通電極85が形成される一方、非吐出チャネル62の下端開口部を通じて個別電極88が形成される。
【0069】
図18に示すように、導電材料除去工程S5では、配線形成工程S4で成膜された下面成膜部102のうち、不要な下面成膜部102を除去する。具体的には、アクチュエータプレート53の下面に対してX方向及びY方向にレーザを走査する。第1実施形態では、アクチュエータプレート53のうち、取出部86a、共通端子86b及び個別端子89の形成領域以外の部分に付着した導電材料を除去する。これにより、アクチュエータプレート53の下面にレーザ照射痕Lが残存するブランク領域100が形成される。なお、導電材料除去工程S5の後、アクチュエータプレート53の下面に対して区画溝91を形成する。
【0070】
図19に示すように、処理膜形成工程S6では、アクチュエータプレート53及びカバープレート54が積層されてなる積層体を処理剤(シランカップリング剤)に浸ける。これにより、アクチュエータプレート53の下面、各チャネル61,62の内面及びカバープレート54の下面のうち各チャネル61,62内に露出している部分に亘って処理膜110が形成される。
【0071】
図20に示すように、中間プレート接合工程S7は、アクチュエータプレート53の下面に対して中間プレート52を接合する。具体的には、アクチュエータプレート53の下面に、処理膜110を介して接着剤77を塗布した後、接着剤77を介して中間プレート52を接合する。
【0072】
保護膜形成工程S8では、各チャネル61,62の内面、中間プレート52の下面、連通孔52aの内面及びカバープレート54の下面のうち各チャネル61,62内に露出している部分に対して保護膜120を形成する。なお、保護膜120としてパラキシリレン系樹脂材料を採用する場合には、例えば化学蒸着法(CVD)等を用いて保護膜120を形成することができる。
【0073】
ノズルプレート接合工程S9では、ノズル孔79と吐出チャネル61とを位置合わせした状態で、中間プレート52の下面に接着剤78を介してノズルプレート51を貼り付ける。
以上により、ヘッドチップ50が製造される。
【0074】
このように、本実施形態では、アクチュエータプレート53の下面(第1主面)上において、吐出チャネル61の下端開口部(第1開口部)と非吐出チャネル62の下端開口部(第2開口部)との間に位置する部分には、吐出チャネル61の下端開口部と非吐出チャネル62の下端開口部間におけるX方向の全域に亘ってレーザ照射痕Lが形成された第2除去領域(導電材料除去領域)100bが設けられている構成とした。
この構成によれば、各チャネル61,62内に電極(共通電極85)を形成するにあたって、アクチュエータプレート53の下方から導電材料を成膜した場合に、アクチュエータプレート53の下面上に付着した導電材料(下面成膜部102)をレーザ照射によって除去することで、隣り合う共通電極85及び個別電極88間を分断できる。この場合、吐出チャネル61の下端開口部及び非吐出チャネル62の下端開口部間におけるX方向の全域に亘って第2除去領域100bを設けることで、隣り合う共通電極85及び個別電極88間の電極間距離を確保し易い。そのため、隣り合うチャネル61,62間の距離(ピッチ)を狭くした上で、隣り合う共通電極85及び個別電極88間がインクで架け渡されることによる短絡等の発生を抑制し、信頼性や耐久性に優れたヘッドチップ50を提供できる。
【0075】
本実施形態のヘッドチップ50において、第1接続配線部(第1配線部)86は、吐出チャネル61の下端開口部に対してX方向の両側に配置されるとともに、共通電極(側面部)85に接続される一対の取出部(第1側方接続部)86aと、一対の取出部86a同士を接続するとともにフレキシブルプリント基板(外部配線)92に接続される共通端子(端子部)86bと、を備えている構成とした。
この構成によれば、取出部86aによって共通電極85と第1接続配線部86間の導通を確保できるので、少なくとも吐出チャネル61のY方向の中央部及び非吐出チャネル62のY方向の中央部間での電極間距離を確保した上で、共通電極85と第1接続配線部86との電気的信頼性を確保できる。
【0076】
本実施形態のヘッドチップ50において、吐出チャネル61は、X方向から見て下方に向かうに従いY方向の寸法が漸次縮小する切り上がり部61bを備えている構成とした。
吐出チャネル61の下端開口縁のうち、切り上がり部61bに連なる部分には、切り上がり部61bとアクチュエータプレート53の下面とで鋭角をなし易い。この状態で、下方から導電材料を成膜すると、切り上がり部61bの底面に共通電極85を所望の条件で成膜することが難しい。
そこで、本実施形態では、取出部86aを介して共通電極85と第1接続配線部86との導通を確保することで、共通電極85及び第1接続配線部86間での電気的信頼性を確保できる。
【0077】
本実施形態のヘッドチップ50において、取出部86aは、吐出チャネル61の一様部63にY方向で重なる位置まで延びるとともに、共通電極85のうち一様部63に形成されている部分に接続されている構成とした。
吐出チャネル61の下端開口縁のうち、漸小部64aに連なる部分には、漸小部64aと下面とで鋭角をなし易い。この状態で、下方から導電材料を成膜すると、漸小部64aに共通電極85を所望の条件で成膜することが難しい。
そこで、本実施形態では、取出部86aを一様部63とY方向で重なる位置まで延ばすことで、一様部63に形成された共通電極85に対して取出部86aを接続することができる。その結果、共通電極85及び第1接続配線部86間での電気的信頼性を確保できる。
【0078】
本実施形態のヘッドチップ50において、アクチュエータプレート53の下面と接着剤77との間には、アクチュエータプレート53の下面と接着剤77間での結合力に比べてアクチュエータプレート53の下面との結合力が高い処理膜(第1結合膜)110が介在している構成とした。
この構成によれば、第2除去領域100bによってアクチュエータプレート53の下面のうちアクチュエータプレート53が露出している領域を確保できる。しかも、本実施形態では、アクチュエータプレート53の下面との結合力が高い処理膜110を介して接着剤77が形成されているので、アクチュエータプレート53の下面と接着剤77との接合強度を確保できる。特に、第2除去領域100bには、レーザ照射痕Lによって微細な凹凸が形成されている。そのため、いわゆるアンカー効果によって、処理膜110とアクチュエータプレート53の下面との物理的結合力を確保することができ、処理膜110をアクチュエータプレート53の下面上に安定して形成することができる。
【0079】
本実施形態のインクジェットヘッド5及びプリンタ1では、上述したヘッドチップ50を備えているので、耐久性及び信頼性に優れたインクジェットヘッド5及びプリンタ1を提供できる。
【0080】
上述した実施形態では、吐出チャネル61の下端開口部と非吐出チャネル62の下端開口部との間に位置する部分のうち、Y方向における中央部及び+Y側端部に位置する部分に第2除去領域100bが形成された構成について説明したが、この構成に限られない。第2除去領域100bは、吐出チャネル61の下端開口部と非吐出チャネル62の下端開口部との間に位置する部分におけるY方向の全域に亘って形成されていてもよい。つまり、第1接続配線部86は、取出部86a(第3除去領域100c)を有さない構成であってもよい。この場合、共通電極85と共通端子86bとが直接接続される構成等が採用可能である。
上述した実施形態では、吐出チャネル61が切り上がり部61bや漸小部64aを備える構成について説明したが、この構成に限られない。吐出チャネル61は、Z方向の全体に亘ってX方向又はY方向の寸法が一様であってもよい。
【0081】
上述した実施形態では、第1接続配線部86がアクチュエータプレート53の下面に設けられた構成について説明したが、この構成に限られない。第1接続配線部86は、アクチュエータプレート53の上面(第1主面)に設けられていてもよい。
上述した実施形態では、アクチュエータプレート53の下面のうち第1接続配線部86及び個別端子89が形成されていない領域の全域がレーザ照射により除去される構成について説明したが、この構成に限られない。アクチュエータプレート53の下面のうち少なくとも各チャネル61,62の下端開口部間に位置する部分が、レーザ照射により除去されていればよい。
【0082】
上述した第1実施形態では、アクチュエータプレート53とノズルプレート51との間に中間プレート52が配置された構成について説明したが、この構成に限られない。アクチュエータプレート53の下面に直接ノズルプレート51が積層されていてもよい。この場合、図25に示すように、保護膜120は、処理膜(第2結合膜)130を介してアクチュエータプレート53の下面を覆うように設けられる。処理膜130には、アクチュエータプレート53の下面と保護膜120間での結合力に比べてアクチュエータプレート53の下面との結合力が高い材料を選択することができる。
この構成によれば、アクチュエータプレート53の下面上に処理膜130を介して保護膜120を形成することで、アクチュエータプレート53の下面上に保護膜120を安定して設けることができる。これにより、保護膜120の浮きや剥離等を抑制し、駆動配線を保護することができる。特に、ブランク領域100は、レーザ照射痕Lによって微細な凹凸が形成されている。そのため、いわゆるアンカー効果によって、処理膜130とアクチュエータプレート53の下面との物理的結合力を確保することができ、処理膜130をアクチュエータプレート53の下面上に安定して形成することができる。
【0083】
(第2実施形態)
図26は、第2実施形態に係るアクチュエータプレート53の平面図である。
図26に示すヘッドチップ50において、アクチュエータプレート53の下面には、第2接続配線部200が形成されている。第2接続配線部200は、アクチュエータプレート53の下面のうち吐出チャネル61の下端開口部における+Y側端部(第2側端部)に位置する周縁部を取り囲み、一対の共通電極85の+Y側端部同士を接続している。具体的に、第2接続配線部200は、一対の側方接続部200aと、中央接続部200bと、を備えている。
【0084】
側方接続部200aは、アクチュエータプレート53の下面のうち吐出チャネル61の下端開口縁における+Y側端部であって、X方向の両側に位置する部分にそれぞれ形成されている。各側方接続部200aは、Y方向において、変化部64から一様部63の-Y側端部に至る部分に、吐出チャネル61の下端開口縁に沿って延びている。具体的に、側方接続部200aにおける+Y側端部は、吐出チャネル61の下端開口縁における+Y側端縁とY方向で同等の位置に配置されている。側方接続部200aにおける-Y側端部は、一様部63における+Y側端部とY方向で同等の位置まで達している。側方接続部200aは、吐出チャネル61の下端開口部を通じて、対応する共通電極85のうち一様部63に形成された部分に接続されている。但し、側方接続部200aは、共通電極85のうち変化部64(漸小部64a)に形成された部分に接続されていてもよい。また、取出部86aは、一様部63に対して+Y側で終端していてもよい。
【0085】
中央接続部200bは、アクチュエータプレート53の下面のうち吐出チャネル61の下端開口部に対して+Y側に位置する部分に形成されている。中央接続部200bは、一対の側方接続部200a同士を接続している。図示の例において、中央接続部200bの-Y側端部は、吐出チャネル61の下端開口部における+Y側端縁に達している。但し、中央接続部200bは、共通電極85と直接接続されていなくてもよい。
【0086】
第2実施形態では、共通電極85に対して-Y側に第1接続配線部86が設けられ、+Y側に第2接続配線部200が設けられる構成とした。
この構成によれば、仮に片側の共通電極85と、片側の共通電極85に対応する取出部86aと、の間に断線が生じた場合であっても、第2接続配線部200と両側の共通電極85とが接続されていることで、第2接続配線部200を介して両側の共通電極85と第1接続配線部86との導通を確保できる。これにより、ヘッドチップ50の動作信頼性や耐久性を向上させることができる。
【0087】
(第3実施形態)
図27は、第3実施形態に係るヘッドチップ300の分解斜視図である。第3実施形態では、吐出チャネル310における延在方向の端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのヘッドチップ300を採用する点で上述した各実施形態と相違している。
図27に示すヘッドチップ300は、アクチュエータプレート301と、カバープレート302と、ノズルプレート303と、を備えている。
アクチュエータプレート301は、Y方向を厚さ方向として配置されている。以下の説明において、+Y側を表面側とし、-Y側を裏面側という場合がある。
【0088】
アクチュエータプレート301には、吐出チャネル310及び非吐出チャネル311が形成されている。吐出チャネル310及び非吐出チャネル311は、駆動壁312を隔ててX方向に交互に並んで形成されている。
【0089】
図28は、図27のXXVIII-XXVIII線に対応する断面図である。
図28に示すように、吐出チャネル310は、アクチュエータプレート301の下端面上で開口するとともに、Z方向に延びている。吐出チャネル310の上端部は、上方に向かうに従い吐出チャネル310の深さが漸次浅くなる円弧状に形成されている。
【0090】
図29は、図26のXXIX-XXIX線に対応する断面図である。
図29に示すように、非吐出チャネル311は、アクチュエータプレート301をZ方向に貫通している。非吐出チャネル311の深さは、Z方向の全域で一様になっている。
【0091】
図27に示すように、カバープレート302は、アクチュエータプレート301の表面に接合されている。カバープレート302は、アクチュエータプレート301の上端部(以下、尾部301aという。)を突出させた状態で、各チャネル310,311の表面側開口部を閉塞している。
【0092】
カバープレート302において、吐出チャネル310の上端部とY方向から見て重なり合う位置には、共通インク室302aが形成されている。共通インク室302aは、例えば各チャネル310,311を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート302の表面上で開口している。
共通インク室302aにおいて、吐出チャネル310とY方向から見て重なり合う位置には、スリット302bが形成されている。スリット302bは、各吐出チャネル310の上端部と、共通インク室302a内と、の間を各別に連通している。スリット302bは、それぞれ各吐出チャネル310に連通する一方、各非吐出チャネル311には連通していない。
【0093】
ノズルプレート303は、アクチュエータプレート301の下端面に接合されている。ノズルプレート303には、ノズル孔303aが形成されている。ノズル孔303aは、ノズルプレート303のうち、吐出チャネル310にZ方向で向かい合う位置に各別に形成されている。
【0094】
図30は、アクチュエータプレート301の平面図である。
図30に示すように、アクチュエータプレート301には、共通配線320及び個別配線321が形成されている。図27図29に示すように、共通配線320は、共通電極325と、接続配線部326と、を備えている。
共通電極325は、各吐出チャネル310の内側面にそれぞれ形成されている。
【0095】
接続配線部326は、取出部326aと、共通端子326bと、を備えている。
取出部326aは、アクチュエータプレート301の表面に形成されている。具体的に、取出部326aは、アクチュエータプレート301の表面のうち、吐出チャネル310の表面側開口部の上端部に対してX方向の両側にそれぞれ形成されている。取出部326aの下端部は、吐出チャネル310の表面側開口部における上端縁とZ方向で同等の位置に配置されている。取出部326aにおける下端部は、共通電極85の上端部とZ方向に重なる位置に形成されている。取出部326aは、吐出チャネル310の表面側開口部を通じて対応する共通電極85に接続されている。
【0096】
共通端子326bは、アクチュエータプレート301の表面上において、吐出チャネル310の上方に位置する部分(尾部301a)に形成されている。共通端子326bの下端部は、吐出チャネル310における表面側開口縁において、各取出部326aの上端部に接続されている。なお、接続配線部326は、取出部326aを有さず、共通端子326bのみが共通電極325に接続される構成でもよい。
【0097】
図29図30に示すように、個別配線321は、個別電極327と、個別端子328と、を備えている。
個別電極327は、各非吐出チャネル311の内側面にそれぞれ形成されている。
個別端子328は、アクチュエータプレート301の表面上において、共通端子326bよりも上方に位置する部分に形成されている。個別端子328は、吐出チャネル310を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル311の個別電極327同士を接続している。
【0098】
尾部301aの表面には、フレキシブルプリント基板340が圧着されている。フレキシブルプリント基板340は、尾部301aの表面において、共通端子326bと個別端子328に接続されている。
【0099】
ここで、アクチュエータプレート301の表面には、ブランク領域330が設けられている。ブランク領域330は、複数のレーザ照射痕(例えば図9参照)により形成されている。本実施形態において、ブランク領域330は、第1除去領域(導電材料除去領域)330a、第2除去領域330b及び第3除去領域330cを備えている。
【0100】
第1除去領域330aは、アクチュエータプレート301の表面において、吐出チャネル310の表面側開口部に対してX方向の両側に位置する領域である。具体的に、第1除去領域330aは、取出部326aよりも下方の領域(チャネル310,311の中央部から下端部に至る領域)において、吐出チャネル310の表面側開口部(第1開口部)と非吐出チャネル311の表面側開口部(第2開口部)との間に位置する部分をX方向の全域に亘って形成されている。すなわち、取出部326aよりも下方の領域において、吐出チャネル310の表面側開口部と非吐出チャネル311の表面側開口部との間に位置する部分には、全域に亘ってアクチュエータプレート301の表面が露出している。
【0101】
第2除去領域330bは、吐出チャネル310の表面側開口部と非吐出チャネル311の表面側開口部との間に位置する領域のうち、取出部326aに対してX方向の両側に位置する部分である。第2除去領域330bは、第1除去領域330aに対して上方に連なっている。第2除去領域330bでは、取出部326aと非吐出チャネル311の下端開口部との間に位置する部分においてアクチュエータプレート301の表面が露出している。
【0102】
第3除去領域330cは、アクチュエータプレート301の表面において、尾部301aに位置する領域である。第3除去領域330cは、第2除去領域330bに対して上方に連なっている。第2除去領域330bは、共通端子326bと非吐出チャネル311の表面側開口部との間に位置する部分について、X方向の全域に亘って形成されている。
【0103】
(その他の変形例)
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
【0104】
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が拡大する方向にアクチュエータプレートを変形させた後、アクチュエータプレートを復元させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、引き打ち)について説明したが、この構成に限られない。本開示に係るヘッドチップは、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が縮小する方向にアクチュエータプレートを変形させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、押し打ち)であってもよい。押し打ちを行う場合、駆動電圧の印加により、アクチュエータプレートは、吐出チャネル内に向けて膨出するように変形する。これにより、吐出チャネル内の容積が減少することで、吐出チャネル内の圧力が増加し、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて外部に吐出される。駆動電圧をゼロにすると、アクチュエータプレートが復元する。その結果、吐出チャネル内の容積が元に戻る。
【0105】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1:プリンタ(液体噴射記録装置)
5:インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
50:ヘッドチップ
53:アクチュエータプレート
61:吐出チャネル(噴射チャネル)
61b:切り上がり部
62:非吐出チャネル(非噴射チャネル)
63:一様部
64a:漸小部
65:駆動壁
77:接着剤
85:共通電極(第1電極、側面部)
86:第1接続配線部(第1配線部)
86a:取出部(第1側方接続部)
86b:共通端子(端子部)
88:個別電極(第2電極)
92:フレキシブルプリント基板(外部配線)
100b:第2除去領域(導電材料除去領域)
120:保護膜
200:第2接続配線部(第2配線部)
200a:側方接続部
200b:中央接続部
300:ヘッドチップ
301:アクチュエータプレート
310:吐出チャネル(噴射チャネル)
311:非吐出チャネル(非噴射チャネル)
312:駆動壁
325:共通電極(第1電極)
326:接続配線部(第1配線部)
326a:取出部(第1側方接続部)
326b:共通端子(端子部)
327:個別電極(第2電極)
330a:第1除去領域(導電材料除去領域)
L:レーザ照射痕
図1
図2
図3
図4
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