(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039708
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】交流電動機制御装置、交流電動機駆動装置並びにこれを用いた電動機器
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20240315BHJP
H02P 21/22 20160101ALI20240315BHJP
H02P 21/05 20060101ALI20240315BHJP
H02P 21/18 20160101ALI20240315BHJP
【FI】
H02P27/08
H02P21/22
H02P21/05
H02P21/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144276
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハディナタ アグネス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚礼
(72)【発明者】
【氏名】李 東昇
(72)【発明者】
【氏名】吉野 知也
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB04
5H505CC01
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE50
5H505GG04
5H505HA01
5H505HA10
5H505HB02
5H505JJ03
5H505JJ25
5H505KK05
5H505LL05
5H505LL07
5H505LL14
5H505LL22
(57)【要約】
【課題】
電動機電流基本波成分を高精度に再現できる交流電動機制御装置、交流電動機駆動装置並びにこれを用いた電動機器を提供する。
【解決手段】
この交流電動機制御装置(3)は、交流電動機(1)に交流電力を出力する電力変換装置(2)を制御するものであって、ベクトル制御により生成される交流電圧指令に応じて、PWMパルス信号からなる、電力変換装置を制御するための制御信号を生成するPWM信号生成部(8)と、電力変換装置の直流側に流れる直流母線電流に基づいて再現された電動機電流の電流値に補正係数を乗じて、電動機電流の基本波に近付けるように電流値を補正する電流補正部(17)と、を備え、ベクトル制御は、電流補正部によって補正された電流値に基づいて実行される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電動機に交流電力を出力する電力変換装置を制御する交流電動機制御装置において、
ベクトル制御により生成される交流電圧指令に応じて、PWMパルス信号からなる、前記電力変換装置を制御するための制御信号を生成するPWM信号生成部と、
前記電力変換装置の直流側に流れる直流母線電流に基づいて再現された電動機電流の電流値に補正係数を乗じて、前記電動機電流の基本波に近付けるように前記電流値を補正する電流補正部と、
を備え、
前記ベクトル制御は、前記電流補正部によって補正された前記電流値に基づいて実行されることを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の交流電動機制御装置において、
前記電流補正部は、前記補正係数を、前記電流値と、前記電流値の平均値とに基づいて、設定することを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の交流電動機制御装置において、
前記電流補正部は、前記電流値を前記平均値によって除算することにより、前記補正係数を算出することを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の交流電動機制御装置において、
前記ベクトル制御における座標変換に用いられる回転位置がセンサレス制御によって推定されることを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の交流電動機制御装置において、
前記PWM信号生成部は、同期式PWM制御により前記制御信号を生成することを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の交流電動機制御装置において、
前記電流補正部は、所定時間の間、前記補正係数を設定し、
前記電流補正部は、前記所定時間が経過後、設定した前記補正係数を前記電流値に乗じて、前記電流値を補正することを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の交流電動機制御装置において、
前記所定時間は、少なくとも前記電動機電流の一周期分であることを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の交流電動機制御装置において、
前記電流補正部は、前記補正係数を、テーブルデータに基づいて設定することを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の交流電動機制御装置において、
前記テーブルデータは、相電流センサを用いて検出された前記電動機電流と前記補正係数の基準値との対応を示すことを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項10】
請求項8に記載の交流電動機制御装置において、
前記テーブルデータは、前記交流電圧指令と、前記基本波と、前記補正係数との関係を示すことを特徴とする交流電動機制御装置。
【請求項11】
交流電動機に交流電力を出力する電力変換装置と、
前記電力変換装置を制御する制御装置と、
を備える交流電動機駆動装置において、
前記制御装置は、請求項1に記載の交流電動機制御装置であることを特徴とする交流電動機駆動装置。
【請求項12】
交流電動機と、
前記交流電動機によって駆動される機械的負荷と、
交流電動機に交流電力を出力する電力変換装置と、
前記電力変換装置を制御する制御装置と、
を備える電動機器において、
前記制御装置は、請求項1に記載の交流電動機制御装置であることを特徴とする電動機器。
【請求項13】
請求項12に記載の電動機器において、
前記機械的負荷は、電気掃除機における送風機であることを特徴とする電動機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電動機を制御する交流電動機制御装置、この交流電動機制御装置を備えて交流電動機を駆動する交流電動機駆動装置、並びにこの交流電動機駆動装置を用いた電動機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般産業、家電、自動車、鉄道などの様々な分野において、小型高出力化を目的に交流電動機の高速回転化が進んでいる。
【0003】
交流電動機の高速回転制御のために、キャリア波と電圧指令の位相関係を同期させ、PWMキャリア周波数とパルス数を電気角周波数毎に変更する同期式PWM制御(例えば、特許文献1参照)が用いられる。同期式PWM制御によれば、高調波の発生が抑制される。
【0004】
交流電動機の小型化に伴い、交流電動機を適用する装置のさらなる小型化のために、センサを用いずに交流電動機の磁極位置を推定する位置センサレス技術が適用されている。位置センサレス技術としては、交流電動機の実軸(d-q軸)と制御軸(dc-qc軸)との軸誤差(Δθc)の演算値に基づいて磁極位置を推定する従来技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、電動機電流の検出には、相電流センサを用いずに、インバータの直流母線に流れるシャント電流に基づいて三相電動機電流を再現する技術(例えば、特許文献3(
図3および
図4)参照)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-237194号公報
【特許文献2】特開2015-33310号公報
【特許文献3】国際公開第2015/025622号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
同期式PWM制御においては、交流電動機の高速域では、電動機電流の電流リプルが増大する。特に、交流電動機の小型化に伴い、交流電動機のインダクタンスが低減すると、電流リプルが顕著になる。このため、シャント電流に基づいて再現される電動機電流と、基本波成分との誤差が大きくなる。
【0008】
このような電流検出誤差により、交流電動機の電流制御の精度が低下する。また、上述の軸誤差に基づく位置センサレス制御では、dq軸電流値を用いて軸誤差を演算するため(特許文献2における「(3)式」を参照)、磁極位置の推定精度が低下する。
【0009】
そこで、本発明は、電動機電流基本波成分を高精度に再現できる交流電動機制御装置、交流電動機駆動装置並びにこれを用いた電動機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による交流電動機制御装置は、交流電動機に交流電力を出力する電力変換装置を制御するものであって、ベクトル制御により生成される交流電圧指令に応じて、PWMパルス信号からなる、電力変換装置を制御するための制御信号を生成するPWM信号生成部と、電力変換装置の直流側に流れる直流母線電流に基づいて再現された電動機電流の電流値に補正係数を乗じて、電動機電流の基本波に近付けるように電流値を補正する電流補正部と、を備え、ベクトル制御は、電流補正部によって補正された電流値に基づいて実行される。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明による交流電動機駆動装置は、交流電動機に交流電力を出力する電力変換装置と、電力変換装置を制御する制御装置と、を備えるものであって、制御装置は、上記本発明による交流電動機制御装置である。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明による電動機器は、交流電動機によって駆動される機械的負荷と、交流電動機に交流電力を出力する電力変換装置と、電力変換装置を制御する制御装置と、を備えるものであって、制御装置は、上記本発明による交流電動機制御装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電動機電流基本波成分を高精度に再現できる。
【0014】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1である交流電動機駆動装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】回転座標系における座標軸と軸誤差との関係を示す座標平面図である。
【
図3】同期式PWM制御における、回転周波数指令値fr*と、キャリア周波数fsとの関係の一例を示すグラフである。
【
図4】シャント電流Isと電動機電流Iu,Iv,Iwの一例を示す波形図である。
【
図5】シャント電流Isの通流状態の一例を示す、電力変換装置の主回路の回路図である。
【
図6】電流処理部9(
図1)によって再現された電動機電流の一例を示す波形図である。
【
図8】実施例1における電流平均値演算部16の構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】電流平均値演算部16が出力する平均再現電流Iu’(n)を示す波形図である。
【
図10】実施例1における電流補正部17の構成を示す機能ブロック図である。
【
図11】第1の変形例による電流補正部17の構成を示す機能ブロック図である。
【
図12】第2の変形例による電流補正部17の構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】実施例2である交流電動機駆動装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、下記の実施例1~2により、図面を用いながら説明する。
【0017】
各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【実施例0018】
図1は、本発明の実施例1である交流電動機駆動装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0019】
本実施例による交流電動機駆動装置は、三相インバータ回路を備え交流電動機1に三相交流電圧を印加する電力変換装置2と、電力変換装置2に直流電力を与える直流電源18と、電力変換装置2の直流側において、直流電源18と電力変換装置2の間に流れる直流母線電流を検出するシャント抵抗19と、直流母線電流の検出値に基づいて電力変換装置2のスイッチングを制御することにより交流電動機1の速度を制御する制御装置3とから構成される。
【0020】
本実施例においては、交流電動機1として、永久磁石同期電動機が適用される。交流電動機1は、送風機や圧縮機などの機械的な負荷21を駆動する。
【0021】
制御装置3は、シャント抵抗19によって検出される直流母線電流の検出値に基づいて、ベクトル制御により、電力変換装置2のスイッチングを制御するための制御信号Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを生成する。制御信号Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnは、それぞれ、三相インバータ回路(
図5参照)における、U相上アーム、U相下アーム、V相上アーム、V相上アーム、W相上アーム、W相下アームにおける半導体スイッチング素子(
図5では、IGBT)のオン・オフスイッチングを制御する。これにより、電力変換装置2は、直流電源18から入力する直流電力を三相交流電力に変換して、交流電動機1へ三相交流電圧を出力する。
【0022】
ベクトル制御においては、回転座標系と固定座標系との間で、交流電動機1の回転位置に応じて座標変換が実行される。本実施例において、交流電動機1の回転位置は、回転位置センサ(例えば、エンコーダ)や磁極位置センサ(例えば、ホール素子)を用いることなく、後述するような位置センサレス制御によって推定される。
【0023】
また、本実施例において、ベクトル制御および位置センサレス制御において用いられる電動機電流は、相電流センサ(例えば、CT)を用いることなく、いわゆる1シャント抵抗方式によって、直流母線電流に基づいて検出される。なお、後述するように、本実施例においては、直流母線電流から再現された三相の電動機電流を補正して、各相の電動機電流の基本波成分が抽出される。この基本波成分がベクトル制御および位置センサレス制御において用いられる。これにより、交流電動機1の制御の精度や安定性が向上する。
【0024】
なお、本実施例において、制御装置3は、マイクロコンピュータなどのコンピュータシステムを備え、コンピュータシステムが所定のプログラムを実行することにより、ベクトル制御、位置センサレス制御、直流母線電流に基づく電動機電流検出を実行する。
【0025】
以下、制御装置3におけるベクトル制御に関わる動作について、
図1を用いて説明する。
【0026】
直流母線電流から再現されるとともに補正された三相(U,VおよびW相)の電動機電流Iu’’,Iv’’,Iw’’(電流補正部17の出力)が、座標変換部10によって、制御装置3内において設定されるdc-qc軸を座標軸とする回転座標系におけるd軸電流Idcおよびq軸電流Iqcに変換される。
【0027】
電流指令生成部5は、速度制御器(ASR)やPI制御器を用いることなく、q軸電流Iqcから、q軸電流指令Iq*およびd軸電流指令Id*を生成する。本実施例においては、電流指令生成部5は、Iqcから一次遅れ要素を介してIq*を生成し、Iqcの大きさに応じてId*を所定値に変化させる。
【0028】
回転速度指令生成部4は、交流電動機1の回転速度指令ωr*を生成する。例えば、回転速度指令生成部4は、予め設定されている回転速度値をωr*として出力したり、予め設定されている複数の回転速度値から選択した回転速度値をωr*として出力したりする。回転速度指令生成部4は、予め設定されている回転速度パターンに基づいて、ωr*を生成してもよい。
【0029】
ベクトル制御部6は、回転速度指令ωr*、q軸電流指令Iq*およびd軸電流指令Id*に基づいて、所定の電圧方程式を用いて、d軸電圧指令Vdc*およびq軸電圧指令Vqc*を生成する。なお、電圧方程式は、交流電動機1の電動機定数(d軸インダクタンス、q軸インダクタンス、巻線抵抗、誘起電圧定数)を用いて表されるが、公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0030】
座標変換部7は、dc-qc軸を座標軸とする回転座標系におけるd軸電圧指令Vdc*およびq軸電圧指令Vqc*を、固定軸における三相(U,VおよびW相)電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に変換する。
【0031】
ここで、本実施例における位置センサレス制御について説明する。
【0032】
本実施例において、制御装置3は、
図1に示す軸誤差推定部11およびPLL制御部12によって位置センサレス制御を実行する。
【0033】
図2は、回転座標系における座標軸と軸誤差(Δθ)との関係を示す座標平面図である。
【0034】
図2に示すように、軸誤差Δθは、制御上の座標軸であるdc―qc軸と、交流電動機1の回転子に設定される実際の座標軸であるd-q軸との位相のずれとして定義される。
【0035】
本実施例では、交流電動機1の回転子が備える永久磁石の主磁束の方向が、d軸に設定されている。
【0036】
なお、
図2中の「ω1」は、交流電動機1の回転子の回転速度(本実施例では推定値)を表している。
【0037】
軸誤差推定部11(
図1)は、回転速度ω1(推定値)、d軸電圧指令Vdc*およびq軸電圧指令Vqc*、d軸電流Idcおよびq軸電流Iqcに基づいて、式(1)の右辺を計算することにより、軸誤差Δθを推定する。
【0038】
Δθ=tan-1{(Vdc*-R・Idc+ω1・Lq・Iqc)/(Vqc*-R・Iqc-ω1・Lq・Idc)}…(1)
式(1)において、RおよびLqは、それぞれ、交流電動機1における巻線抵抗およびq軸インダクタンスである。
【0039】
なお、交流電動機1のような永久磁石電動機において、軸誤差Δθが式(1)で表されることは公知である。したがって、式(1)について、さらに詳細な説明は省略する。
【0040】
PLL制御部12(
図1)は、PLL(Phase Locked Loop)制御を用いて、軸誤差推定部11が推定した軸誤差Δθに基づいて、Δθを零にするような回転速度ω1を推定する。
【0041】
積分部13(
図1)は、PLL制御部12が算出した回転速度ω1を積分することにより、交流電動機1の回転子の回転位置θdcを算出する。この回転位置θdcが、座標変換部7,10における座標変換に用いられる。
【0042】
上述のように、制御装置3は、ベクトル制御により生成したd軸電圧指令Vdc*およびq軸電圧指令Vqc*を、座標変換部7により三相交流電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に変換する。さらに、次に述べるように、制御装置3は、Vu*,Vv*,Vw*に応じて、制御信号Sup,Sun,Svp,Svn.Swp,Swnを生成する。
【0043】
PWM信号生成部8(
図1)は、三相(U,VおよびW相)電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に基づいて、PWMパルス信号からなる制御信号Sup,Sun,Svp,Svn.Swp,Swnを生成する。本実施例においては、PWM信号生成部8は、キャリア生成部15が生成するキャリア波Sc(例えば、三角波)とVu*,Vv*,Vw*とを比較することにより、PWMパルス信号からなるSup,Sun,Svp,Svn.Swp,Swnを生成する。
【0044】
本実施例では、交流電動機1の高速域において、PWM信号生成部8は、同期式PWM制御によって、制御信号Sup,Sun,Svp,Svn.Swp,Swnを生成する。
【0045】
同期式PWM制御において、キャリア波の周期が、正弦波の電圧指令の周期の整数倍になっており、キャリア波と電圧指令の位相が同期している。同期式PWM制御では、電力変換装置2の出力周波数を変化させる場合、キャリア周波数も出力周波数に応じて変化させる。このとき、電圧指令の半周期あたりのPWMパルス信号のパルス数は一定となる。さらに、同期式PWM制御では、出力周波数の範囲に応じて、パルス数を切り替える場合もある。
【0046】
図3は、パルス数を切り替える同期式PWM制御における、回転周波数指令値fr*(=ωr*/2π)と、キャリア周波数fsとの関係の一例を示すグラフである。
【0047】
本例においては、低速領域では非同期式PWM制御によりPWMパルス信号が生成される。中高速領域になると、同期式PWM制御に移行し、周波数領域が高速側になるにしたがって、パルス数が低減される。fsは、fr*の3n倍(n:自然数)に設定される。これにより、高調波の発生が抑制される。
【0048】
図1に示すように、本実施例においては、同期式PWM制御部14が、d軸電圧指令Vdc*およびq軸電圧指令Vqc*、回転速度指令ωr*、回転位置θdcに基づいて、同期式PWM制御におけるキャリア周期Tsを算出するとともに、キャリア周期がTsであり、キャリア波と電圧指令の位相が同期するように、キャリア波Scを生成するように、キャリア生成部15に指令する。
【0049】
なお、キャリア生成部15は、キャリア波Scが最大値および最小値となるタイミングで、割込信号Trgを生成する。制御装置3は、Trgに応じて、ベクトル制御、位置センサレス制御、同期式PWM制御および電動機電流の検出に関わる制御処理を実行する。
【0050】
次に、本実施例における、1シャント抵抗方式による電動機電流の検出について、
図1,4-10を用いて説明する。
【0051】
図1に示すように、制御装置3は、交流電動機1の電動機電流を検出するために、電流検出部20、電流処理部9、電流平均値演算部16、電流補正部17を備えている。
【0052】
電流検出部20は、シャント抵抗19による電圧降下に基づいて、電力変換装置2における直流母線電流を算出して、算出値をシャント電流Isとして出力する。
【0053】
電流処理部9は、三相交流電圧指令Vu*,Vv*,Vw*と制御信号Sup,Sun,Svp,Svn.Swp,Swnとを用いて、電流検出部20が出力したシャント電流Isから三相電動機電流Iu,Iv,Iwを再現する。
【0054】
電流平均値演算部16は、ある時点で再現された三相電動機電流と、一時点前に再現された三相電動機電流の平均値Iu’,Iv’,Iw’を演算する。すなわち、電流平均値演算部16は、連続する2時点における三相電動機電流の移動平均値を演算する。
【0055】
電流補正部17は、三相電動機電流の移動平均値Iu’,Iv’,Iw’と、三相電動機電流Iu,Iv,Iwとを比較して、Iu,Iv,Iwを補正するための補正係数を演算する。さらに、電流補正部17は、演算した補正係数を用いてIu,Iv,Iwを補正して、補正された三相電動機電流Iu’’,Iv’’,Iw’’として出力する。
【0056】
上述の手段により、三相電動機電流Iu,Iv,Iw(再現値)から電流リプルが除去され、基本波成分に近い三相電動機電流Iu’’,Iv’’,Iw’’が得られる。本実施例では、このような三相電動機電流Iu’’,Iv’’,Iw’’が、座標変換部10(
図1)によってd軸電流Idcおよびq軸電流Iqcに変換され、これらIdcおよびIqcがベクトル制御および位置センサレス制御に用いられる。これにより、ベクトル制御および位置センサレス制御の精度や安定性が向上する。
【0057】
図4は、シャント電流Isと電動機電流Iu,Iv,Iwの一例を示す波形図である。なお、
図4においては、三相交流電圧指令Vu*,Vv*,Vw*およびキャリア波Sc、並びに制御信号Sup,Svp,Swpの各波形が併記される。
【0058】
図4中に示す検出タイミングにおいて、電流検出部20(
図1)が、シャント抵抗19に流れるシャント電流Isを検出するタイミングを示す。この検出タイミングは、例えば、制御装置3を構成するマイクロコンピュータが備えているA/D変換機能を起動するタイミングに相当する。また、この検出タイミングは、三相交流電圧指令Vu*、Vv*、Vw*の内の中間相となる相の制御信号が変化するタイミングの前後のタイミングである。
【0059】
中間相となる相の制御信号が変化するタイミングの前後のタイミングにおいて、シャント抵抗19に流れるシャント電流Isについて、
図5を用いて説明する。
【0060】
図5は、シャント電流Isの通流状態の一例を示す、電力変換装置2(
図1)の主回路の回路図である。
【0061】
なお、中間相はV相である。すなわち、
図4において「Vu*>Vv*>Vw*」である場合である。
【0062】
主回路である三相インバータ回路を構成する半導体スイッチング素子(本実施例ではIGBT)は、制御信号Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,SwnによってON・OFFされる。なお、各相において、上アームの半導体スイッチング素子および下アームの半導体スイッチング素子は、互いに相補的にON・OFFされる。
【0063】
モード1では、U相上アーム、V相上アームおよびW相上アームにおける各半導体スイッチング素子がON状態であり、他の半導体スイッチング素子はOFF状態である。
図4においては、Sup,SvpおよびSwpが全て「1」すなわちON制御信号である場合に相当する。このようなモード1では、シャント抵抗19にシャント電流Isは流れない(Is=0)。
【0064】
モード2では、U相上アーム、V相上アームおよびW相下アームにおける各半導体スイッチング素子がON状態であり、他の半導体スイッチング素子はOFF状態である。
図4においては、SupおよびSvpが「1」すなわちON制御信号であり、かつSwpが「0」すなわちOFF制御信号である場合に相当する。このようなモード2では、シャント抵抗19に、W相電動機電流に等しいシャント電流Isが流れる(Is=-Iw:交流電動機1に向かう方向を正方向としている)。
【0065】
モード3では、U相上アーム、V相下アームおよびW相下アームにおける各半導体スイッチング素子がON状態であり、他の半導体スイッチング素子はOFF状態である。
図4においては、Supが「1」すなわちON制御信号であり、SvpおよびSwpが「0」すなわちOFF制御信号である場合に相当する。このようなモード3では、シャント抵抗19に、U相電動機電流に等しいシャント電流Isが流れる(Is=Iu)。
【0066】
モード4では、U相下アーム、V相下アームおよびW相下アームにおける各半導体スイッチング素子がON状態であり、他の半導体スイッチング素子はOFF状態である。
図4においては、Sup,SvpおよびSwpが全て「0」すなわちOFF制御信号である場合に相当する。このようなモード1では、シャント抵抗19にシャント電流Isは流れない(Is=0)。
【0067】
上述したモード2およびモード3におけるIsは、
図4において、V相が中間相となる期間において、制御信号Svpが1(ON)から0(OFF)に変化するタイミングの前後のタイミングにおけるIsに相当する。したがって、このようなタイミングでIsを検出すれば、-Iw,Iuを検出することができる。このとき、Ivは、三相電流の関係式「Iu+Iv+Iw=0」より算出できる。すなわち、IsからIu,Iv,Iwを再現できる。
【0068】
電流検出部20(
図1)は、上述のように、三相交流電圧指令Vu*、Vv*、Vw*の内の中間相となる相の制御信号が変化するタイミングの前後のタイミングでシャント電流Isを検出する。このとき、Isに基づいて検出される二相の電動機電流の検出の同時性を確保するために、シャント電流Isの検出タイミングは、
図4に示すように、Isのピーク付近もしくはボトム付近に設定される。このため、
図4に示すように、検出される電動機電流(Iu,Iv,Iw)の値は、電動機電流における電流リプルのピーク付近もしくはボトム付近の値である。
【0069】
したがって、電流処理部9(
図1)によってシャント電流Isから再現される電動機電流Iu,Iv,Iwは、電動機電流の基本波成分に対して、検出誤差を含んでいる。特に、高速化に有利な低インダクタンス電動機では電流リプルが大きく、検出誤差が大きくなる。
【0070】
図6は、電流処理部9(
図1)によってシャント電流Isから再現された電動機電流の一例を示す波形図である。
【0071】
図6において、Iu(n)が、シャント電流Isから再現されたU相電動機電流(以下、「再現電流」と称す)である。なお、
図4においては、実際のU相電動機電流(以下、「実電流」と称す)Iu、およびIuの基本波成分(以下、「基本波成分」と称す)Iuoを併記する。なお、
図6では、Iu(n),IuおよびIuoに各々ついて、一周期分の波形を示す。
【0072】
図6において、再現電流Iu(n)は、階段状の波形を有している。これは、制御装置3が、マイクロコンピュータにより、離散時間で制御処理を実行しているためである。なお、Iu(n)の波形中に記すプロット点が、電流処理部9が、電流検出部20が検出したシャント電流Isから電動機電流を再現した時点を示す。
【0073】
各プロット点が示すように、再現電流Iu(n)は、電流リプルを含む実電流Iuを表しているが、基本波成分Iuoに対して検出誤差を有している。このため、再現電流Iu(n)から変換されるd軸電流Idcおよびq軸電流Iqcを用いると、ベクトル制御やセンサレス制御の精度や安定性が低下する恐れがある。
【0074】
そこで、本実施例における制御装置3(
図1)は、基本波成分に近い電流値を得るために、電流平均値演算部16および電流補正部17を用いて再現電流In(n)を補正する。
【0075】
以下、本実施例における再現電流Iu(n)の補正について説明する。なお、制御装置3は、U,VおよびW相の各相について再現電流(Iu(n),Iv(n),Iw(n))を同様な手段で補正するが、以下では、Iu(n)の補正について説明する。
【0076】
前述の
図6に示すように、基本波成分Iuoの波形は、電流リプルの中心付近を通っている。そこで、本実施例では、次に説明するように、補正手段として、まず、電流平均値演算部16(
図1)によって、再現電流Iu(n)の平均値が演算される。
【0077】
図7は、再現電流Iu(n)を示す波形図である。なお、
図7に示すIu(n)]は、
図6に示したIu(n)と同じである。
【0078】
図7に示す再現電流Iu(n)が得られる場合において、制御装置3は、
図3に示した3パルスによる同期式PWM制御を実行する。このため、Iu(n)は、図示するように、1周期分において、階段状に変化しながら、順次、6個の電流値Iu(1),Iu(2),Iu(3),Iu(4),Iu(5),Iu(6)を示す。
【0079】
図8は、本実施例1における電流平均値演算部16の構成を示す機能ブロック図である。
【0080】
電流平均値演算部16は、入力した再現電流Iu(n)と、遅延器162の出力、すなわちIu(n)を入力した時点の一時点前に入力したIu(n-1)とを、加算器161によって加算する。さらに、電流平均値演算部16は、加算器161による加算値を2で除算して、除算値を、平均化された再現電流Iu’(n)(以下、「平均再現電流」と称す)として出力する。すなわち、電流平均値演算部16は、入力した再現電流Iu(n)と、Iu(n)を入力した時点の一時点前に入力したIu(n-1)との平均値(=(Iu(n)+Iu(n-1))/2(算術平均))を演算して、演算した平均値を平均再現電流Iu’(n)として出力する。
【0081】
なお、本実施例では、一周期分の再現電流の電流値、すなわち、順次、
図7に示した電流値Iu(1)~Iu(6)が電流平均値演算部16に入力され、一周期分の平均再現電流Iu’(n)が演算される。
【0082】
図9は、電流平均値演算部16が出力する平均再現電流Iu’(n)を示す波形図である。
【0083】
図9においては、
図6と同様に、実電流Iuおよび基本波成分Iuoに各々ついても、一周期分の波形を示す。
【0084】
図9に示すように、平均再現電流Iu’(n)は、再現電流Iu(n)(
図6)よりも、基本波成分Iuoとの誤差が小さい。
【0085】
前述の
図6が示すように、基本波成分Iuoの波形は電流リプルの中心付近を通っているので、電流リプルを含む再現電流Iu(n)の連続する2時点での電流値(Iu(n)およびIu(n-1))の平均値すなわち中央値を算出することにより、Iu(n)よりも基本波成分に近い平均再現電流Iu’(n)が得られる。
【0086】
本実施例では、さらに、平均再現電流Iu’(n)が、電流補正部17(
図1)によって補正される。
【0087】
図10は、本実施例1における電流補正部17の構成を示す機能ブロック図である。
【0088】
電流補正部17は、再現電流Iu(n)および平均再現電流Iu’(n)を入力し、除算器171により、補正係数K(n)(=Iu’(n)/Iu(n))を演算する。
【0089】
なお、除算器171は、時間設定器173に予め設定されている一定時間Tkの間、補正係数K(n)を演算し、演算したK(n)を保持する。本実施例では、Tkは、再現電流Iu(n)の1周期に相当する時間に設定される。
【0090】
なお、Tkは、複数周期に相当する時間でもよく、少なくとも1周期に相当する時間であればよい。これは、同期式PWM制御に伴う電流リプルが、周期的に同様の波形を繰り返すためである。
【0091】
電流補正部17は、再現電流Iu(n)に乗ずる係数として、演算された補正係数K(n)と、定数設定器174によって設定される「1」との内のいずれか一方を、切替器172によって選択する。
【0092】
切替器172は、K(n)が入力されるノードTと定数「1」が入力されるノードFを有する。
【0093】
切替器172は、電流補正部17が補正処理の実行を開始する時点では、自出力をノードFに接続する。このとき、切替器172は、定数「1」を選択して出力する。
【0094】
切替器172は、電流補正部17が補正処理の実行を開始してから、時間設定器173によって設定される一定時間Tkが経過すると、自出力を接続するノードをFからTに切り替える。このとき、切替器172は、除算器171が保持する、再現電流Iu(n)一周期分の補正係数K(n)を順次選択して出力する。
【0095】
電流補正部17は、切替器172によって選択された係数、すなわち補正係数K(n)および「1」のいずれかと再現電流Iu(n)とを乗算し、乗算値を補正再現電流Iu’’として出力する。すなわち、電流補正部17は、補正処理を開始してから補正係数K(n)の演算が完了するまでは、Iu’’としてIu(n)を出力し、K(n)の演算が完了したら、Iu’’(n)として、Iu(n)よりも基本波成分Iuoに近いK(n)・Iu(n)を出力する。
【0096】
なお、V相およびW相についても、同様の手段により、補正再現電流Iv’’(n),Iw’’(n)が演算される。
【0097】
基本波成分との誤差が低減された補正再現電流(Iu’’,Iv’’(n),Iw’’(n))を、ベクトル制御およびセンサレス制御に用いることにより、これらの制御の精度や安定性が向上する。
【0098】
ここで、比較例として、制御装置3が、平均再現電流を、演算した瞬時に、直接、ベクトル制御やセンサレス制御に用いる場合について説明する。
【0099】
上述したように、平均再現電流は、ある時点における再現電流の電流値と、一時点前における再現電流の電流値を用いて演算される。したがって、位相が遅れた電流から変換されたd軸電流およびq軸電流が制御に用いられることになる。このため、制御の精度や安定性を確保することが難しい。
【0100】
これに対し、上記の実施例では、一定時間の間、補正係数K(n)を演算し、一定時間が経過したら、演算した補正係数K(n)を用いて、再現電流が補正される。このため、制御の精度や安定性が向上する。
【0101】
なお、補正再現電流を用いる際に、座標変換部7,10(
図1)で用いられる回転位置θdc(回転位相)を、電流リプルの中心付近における位相に設定してもよい。これにより、ベクトル制御やセンサレス制御の精度や安定性が向上する。例えば、制御装置3は、三相交流電圧指令と位相の関係を示すテーブルデータに基づいて、そのような位相を選択する。
【0102】
上述のように、本実施例1によれば、再現電流におけるある時点における電流値とある時点の一時点前の時点の電流値との平均値である平均再現電流と、再現電流とに基づいて補正係数を算出し、算出された補正係数を再現電流に乗じて補正再現電流が算出される。この補正再現電流においては、基本波成分との誤差が、再現電流よりも低減される。これにより、補正再現電流に基づいて、交流電動機を制御することにより、制御の精度や安定性が向上する。
【0103】
したがって、電流リプルの大きい低インダクタンス電動機でも安定した高速駆動が可能になる。
【0104】
なお、本実施例1は、同期式PWM制御におけるパルス数が3の場合に限らず、他のパルス数の場合にも適用できる。
【0105】
次に、実施例1の第1および第2の変形例について、
図11および
図12を用いて説明する。
【0106】
実施例1では、交流電動機1の運転時に、所定時間(少なくとも再現電流の1周期分)において補正係数を演算し、所定時間が経過したら演算した補正係数を用いて再現電流を補正する。これに対し、第1および第2の変形例では、予め補正係数のテーブルデータを備え、このテーブルデータに基づいて再現電流を補正する。
【0107】
図11は、第1の変形例による電流補正部17の構成を示す機能ブロック図である。
【0108】
第1の変形例による電流補正部17は、補正係数の基準値を示すテーブルデータ176を有する。本変形例では、テーブルデータ176は、相電流センサ、例えば、CT(Current Transformer)を用いて同時に検出された三相電動機電流の電流値と、この電流値に基づいて実施例1と同様に算出される補正係数の基準値との対応を示す。
【0109】
電流補正部17は、テーブルデータ176を参照して、実施例1と同様に演算された補正係数K(n)と、再現電流(
図11ではIu(n))の電流値に応じた補正係数の基準値とを比較することにより、K(n)を調整する。電流補正部17は、調整された補正係数K’(n)を再現電流に乗じて、乗算値を補正再現電流(
図11ではIu’’(n))として出力する。
【0110】
実施例1と同様に、電流補正部17は、補正処理の実行を開始してから、一定時間Tkの間(例えば、少なくとも、再現電流一周期分)、K’(n)を設定し、設定したK’(n)を、例えば、テーブルデータ176内に、保持する。一定時間Tkが経過すると、電流補正部17は、再現電流に乗ずる係数を1からK’(n)に切り替え、保持するK’(n)を順次用いて、再現電流を補正する。
【0111】
図12は、第2の変形例による電流補正部17の構成を示す機能ブロック図である。
【0112】
第2の変形例による電流補正部17は、三相交流電圧指令の電圧値と、基本波成分の電流値と、実施例1と同様に算出される補正係数との関係を示すテーブルデータ177を有する。
【0113】
電流補正部17は、三相交流電圧指令(
図12ではVu*)と、平均再現電流(
図12ではIu’(n))を入力し、テーブルデータ177を参照して、入力した三相交流電圧指令の電圧値と入力した平均再現電流の電流値に応じた補正係数K(n)を選択する。電流補正部17は、K(n)を再現電流(
図12ではIu(n))に乗じて、乗算値を補正再現電流(
図12ではIu’’(n))として出力する。
【0114】
実施例1と同様に、電流補正部17は、補正処理の実行を開始してから、一定時間Tkの間(例えば、少なくとも、再現電流一周期分)、K(n)を設定し、設定したK(n)を、例えば、テーブルデータ177内に、保持する。一定時間Tkが経過すると、電流補正部17は、再現電流に乗ずる係数を1からK(n)に切り替え、保持するK(n)を順次用いて、再現電流を補正する。
回転速度指令生成部4は、操作スイッチ23によって選択される運転モードに応じて、回転速度指令ωr*を生成する。たとえば、運転モード「強」、「弱」および「切」に対して、それぞれ、回転速度指令ωr1*,ωr2*(<ωr*1)および零を生成する。
本実施例2によれば、小型の交流電動機を、安定かつ高精度に制御して、高速運転させることができる。これにより、小型の交流電動機を電気掃除機に適用して、電気掃除機を小型化することができる。
なお、実施例1および実施例2による交流電動機駆動装置は、電気掃除機に限らず、電動圧縮機、電気自動車、電気鉄道車両など、交流電動機によって機械的負荷が駆動される電動機器に適用することができる。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。