(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039710
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A47J37/06 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144279
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福岡 万由子
(72)【発明者】
【氏名】和田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】関 真人
(72)【発明者】
【氏名】露久保 尚史
(72)【発明者】
【氏名】黄 遠明
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA03
4B040AA08
4B040AD04
4B040CA05
4B040CB06
4B040CB30
(57)【要約】
【課題】 マイカヒータを使用する加熱調理器において、加熱室壁面と密着したマイカヒータを、過度な外力を与えることなく発熱させる。
【解決手段】 グリル庫を備えた加熱調理器であって、前記グリル庫の加熱室の上面に配置される上ヒータユニットと、前記グリル庫の加熱室の下面に配置される下ヒータユニットと、を具備しており、該上ヒータユニットは、前記加熱室に面する、凸曲面形状の上ヒータプレートと、該上ヒータプレートの上方に配置され、該上ヒータプレートを密着させたときに平坦から凸曲面形状に変形する上マイカヒータと、を有しており、該上マイカヒータは、電熱線を巻き回した芯マイカを上下2枚の保護マイカで挟んだ後、複数の上ハトメで固定したシート状ヒータであり、前記上ハトメは、前記上マイカヒータの幅をLとしたとき、前記上マイカヒータの長辺からL/10~3L/10の範囲内に配置したものである加熱調理器。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫を備えた加熱調理器であって、
前記グリル庫の加熱室の上面に配置される上ヒータユニットと、
前記グリル庫の加熱室の下面に配置される下ヒータユニットと、を具備しており、
該上ヒータユニットは、
前記加熱室に面する、凸曲面形状の上ヒータプレートと、
該上ヒータプレートの上方に配置され、該上ヒータプレートを密着させたときに平坦から凸曲面形状に変形する上マイカヒータと、を有しており、
該上マイカヒータは、電熱線を巻き回した芯マイカを上下2枚の保護マイカで挟んだ後、複数の上ハトメで固定したシート状ヒータであり、
前記上ハトメは、前記上マイカヒータの幅をLとしたとき、前記上マイカヒータの長辺からL/10~3L/10の範囲内に配置したものであることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記上ハトメは、前記上マイカヒータの長辺から略L/5の位置に配置したものであることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の加熱調理器において、
前記下ヒータユニットは、
前記加熱室に面する、凹曲面形状の下ヒータプレートと、
該下ヒータプレートの下方に配置され、該下ヒータプレートを密着させたときに平坦から凹曲面形状に変形する下マイカヒータと、を有しており、
該下マイカヒータは、電熱線を巻き回した芯マイカを上下2枚の保護マイカで挟んだ後、複数の下ハトメで固定したシート状ヒータであり、
前記下ハトメは、相対する上ハトメよりも端寄りに配置したものであることを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項3に記載の加熱調理器において、
前記上ヒータユニットは相対的に強火力のヒータであり、
前記下ヒータユニットは相対的に弱火力のヒータであることを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の加熱調理器において、
前記上マイカヒータの長辺にはスリットが設けられていることを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器で用いられるヒータの一種として、厚さ数ミリ程度の絶縁ヒータであるマイカヒータが知られている。例えば、特許文献1の従来技術に係るマイカヒータに関して、同文献の段落0005には「
図7は熱源としてマイカヒータを用いた従来例のヒータ付き電子レンジの側面断面図で、25は加熱室22上部の外側に密着固着されているマイカヒータである。」との記載、段落0007には「
図8はマイカヒータ25の構成図で、この図に示すように巻枠25aに発熱体25bを巻いたものである。」との記載、段落0008には「この発熱体25bの上側は上絶縁板25cで、下側は下絶縁板25dとで挟み込み、
図9で示すように加熱室21上部の外側にカバー26で押さえ込みネジ27で固定する。」との記載がある。
【0003】
また、特許文献1の発明に係るマイカヒータに関して、同文献の段落0020には「
図4は、マイカヒータ6の平面図で、6aは材質がマイカからなる絶縁板である。6bは鉄クロム電熱線からなる発熱線で、前記絶縁板6aにらせん状に巻かれている。」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイカヒータの熱で加熱室内の被加熱物を効率的に加熱するには、マイカヒータを加熱室の壁面に密着させ、加熱室壁面の輻射効率を高めることが望ましい。また、脆性のマイカ(雲母)を多用するマイカヒータには、外力に起因する脆性破壊が生じると適切な絶縁状態を維持できないという難点があるため、過度な外力を与えないようにマイカヒータを設置、制御する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1の段落0024に「加熱室2の上部の外側に固着するマイカヒータ6の固定方法については本発明と直接関係が無いため詳細説明は省略する。」とあるように、過度な外力をマイカに与えることなく、加熱室壁面に密着させたマイカヒータを発熱させるための具体的な方法について、特許文献1は何も開示しない。
【0007】
そこで、本発明では、芯マイカに電熱線を巻き付けた形態のマイカヒータをグリル庫に使用する加熱調理器において、加熱室壁面と密着したマイカヒータを、過度な外力を与えることなく発熱させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の加熱調理器は、グリル庫を備えた加熱調理器であって、前記グリル庫の加熱室の上面に配置される上ヒータユニットと、前記グリル庫の加熱室の下面に配置される下ヒータユニットと、を具備しており、該上ヒータユニットは、前記加熱室に面する、凸曲面形状の上ヒータプレートと、該上ヒータプレートの上方に配置され、該上ヒータプレートを密着させたときに平坦から凸曲面形状に変形する上マイカヒータと、を有しており、該上マイカヒータは、電熱線を巻き回した芯マイカを上下2枚の保護マイカで挟んだ後、複数の上ハトメで固定したシート状ヒータであり、前記上ハトメは、前記上マイカヒータの幅をLとしたとき、前記上マイカヒータの長辺からL/10~3L/10の範囲内に配置したものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯マイカに電熱線を巻き付けた形態のマイカヒータをグリル庫に使用する加熱調理器において、加熱室壁面と密着したマイカヒータを、過度な外力を与えることなく発熱させることができる
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5B】実施例1の上マイカヒータの芯マイカの平面図。
【
図5C】
図5Bの芯マイカを省略して電熱線の配線を示した平面図。
【
図7B】実施例1の下マイカヒータの芯マイカの平面図。
【
図7C】
図7Bの芯マイカを省略して電熱線の配線を示した平面図。
【
図8】上マイカヒータと下マイカヒータの相対位置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の加熱調理器の実施例について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下では、グリル庫を備えた加熱調理器の一例として、ビルトインタイプのIH(Induction Heating)クッキングヒータを例示するが、据置タイプのIHクッキングヒータのグリル庫や、グリル機能を備えた電子レンジの加熱室に本発明を適用しても良い。
【実施例0012】
以下、
図1から
図8を用いて、本発明の実施例1に係る加熱調理器100を説明する。なお、以下では、加熱調理器100に相対したユーザの視線を基準として、前後・上下・左右の各方向を定義する。
【0013】
まず、
図1を用いて、本実施例の加熱調理器100の全体構成を概説する。ここに示すように、加熱調理器100は、金属製の筐体である本体1と、本体1の上面を覆うガラス製のトッププレート2と、本体1の前面左側に設けたグリル庫3と、本体1の前面右側に設けた操作パネル4などを有している。なお、本体1の内部には、誘導加熱コイル、インバータ、制御基板なども備えるが、このような周知構造については詳細説明を省略することとする。
【0014】
トッププレート2の表面には、鍋載置部21と操作部22が設けられる。鍋載置部21の下方には誘導加熱コイルが配置されているため、ユーザが操作部22に入力した指令(火力、加熱時間)に応じて、鍋載置部21に載置した金属鍋を誘導加熱することができる。
【0015】
グリル庫3は、加熱室の上下に配置した上下ヒータからの輻射熱で食材を加熱する調理器であり、ドアを引き出すことで加熱室の前面開口が開放され、調理前後の食材を出し入れすることができる。
【0016】
操作パネル4は、グリル庫3で食材を調理する際にユーザが操作する操作部であり、ここに入力した指令(火力、加熱時間)に応じて上下ヒータが制御される。
【0017】
<グリルユニット30>
図2は、グリル庫3からドア等を取り外したグリルユニット30の外観斜視図である。ここに示すように、グリルユニット30は、前面が開放されており、上下左右後の各面で加熱室を囲んだ箱体である。このグリルユニット30の上面と下面は、加熱室に向けて熱を輻射する上ヒータユニット31と下ヒータユニット32で構成される。なお、グリル庫3内の食材は、通常、下面寄りに配置されるため、本実施例では、上ヒータユニット31を相対的に強火力のヒータとし、下ヒータユニット32を相対的に弱火力のヒータとすることで、食材の上下を均等に加熱できるようにしている。
【0018】
図3は、グリルユニット30の断面図である。この図ではやや分かりづらいが、上ヒータユニット31の下面は、外周より中央が3~5mm程度高くなるような凸曲面形状をしており、下ヒータユニット32の上面は、外周より中央が3~5mm程度低くなるような凹曲面形状をしている。この曲面形状の意義は後述する。
【0019】
<<上ヒータユニット31>>
図4は、上ヒータユニット31の分解斜視図である。ここに示すように、上ヒータユニット31は、上ヒータユニット31の下面をなす金属製の上ヒータプレート31aと、シート状の発熱体である上マイカヒータ5と、上方に伝わる熱を断熱するグラスウール製の断熱マット31bと、グリルユニット30の上面をなす金属製の上ヒータオサエ31cの四者からなる積層体を、ビス31dで締結したものである。
【0020】
次に、
図5Aから
図5Cを用いて、本実施例の上マイカヒータ5の詳細を説明する。本実施例の上マイカヒータ5は、鉄クロム線などの電熱線51を巻き回した芯マイカ52(
図5B参照)を上下2枚の保護マイカ53で挟んだ後、4箇所の上ハトメ54で固定したシート状の絶縁ヒータである(
図5A参照)。なお、
図5Cは、芯マイカ52を省略して電熱線51の配線形状を表示した図である。
【0021】
図3で説明したように、本実施例では、上ヒータユニット31の下面(上ヒータプレート31a)を、外周より中央が3~5mm程度高くなるような凸曲面形状としている。これは、上ヒータプレート31aを平坦な上マイカヒータ5に密着させることで、上ヒータプレート31aの輻射効率を高めるためである。
【0022】
この場合、上ヒータプレート31aの凸曲面形状に倣って本来平坦な上マイカヒータ5も凸曲面形状に変形するが、上マイカヒータ5は三枚のマイカ板を上ハトメ54で固定した積層体であり、上ハトメ54によって各マイカ板の変形態様が制限されているため、マイカ板毎に曲率が相違することになる。
【0023】
そのため、本実施例では、マイカ板毎に曲率が相違する上マイカヒータ5の発熱時であっても、熱歪によってマイカ板が脆性破壊して電熱線51の絶縁状態が損なわれることがない位置に上ハトメ54を配置することとした。
【0024】
図5Aは、本実施例の上ハトメ54の位置を具体的に示す平面図である。ここに示すように、保護マイカ53の幅をLとしたとき、左辺からL/5程度離れた位置に上ハトメ54を配置すると、保護マイカ53の左辺で発生した熱歪を上下方向に逃がすことができ、保護マイカ53の左辺でのクラック(脆性破壊)の発生を抑制することができる。なお、
図5Aでは、略四角形状の上マイカヒータ5の長辺からL/5程度離れた位置に上ハトメ54を配置しているが、上ハトメ54が長辺からL/10~3L/10の範囲内にあれば、上記と略同等の効果を得ることができる。
【0025】
保護マイカ53の右辺で発生した熱歪や、保護マイカ53と同幅の芯マイカ52の左右辺で発生した熱歪に関しても、同様の作用によりクラックの発生を抑制することができる。
【0026】
<<下ヒータユニット32>>
図6は、下ヒータユニット32の分解斜視図である。ここに示すように、下ヒータユニット32は、下ヒータユニット32の上面をなす金属製の下ヒータプレート32aと、シート状の発熱体である下マイカヒータ6と、下方に伝わる熱を断熱するグラスウール製の断熱マット32bと、グリルユニット30の下面をなす金属製の下ヒータオサエ32cの四者からなる積層体を、ビス32dで締結したものである。
【0027】
次に、
図7Aから
図7Cを用いて、本実施例の下マイカヒータ6の詳細を説明する。本実施例の下マイカヒータ6は、鉄クロム線などの電熱線61を巻き回した芯マイカ62(
図7B参照)を上下2枚の保護マイカ63で挟んだ後、4箇所の下ハトメ64で固定したシート状の絶縁ヒータである(
図7A参照)。なお、
図7Cは、芯マイカ62を省略して電熱線61の配線形状を表示した図である。
【0028】
図5Cと
図7Cの比較から分かるように、上マイカヒータ5の電熱線51の配線密度は、下ヒータ6の電熱線61の配線密度よりも高くなっている。これにより、上マイカヒータ5が相対的に強火力のヒータとなり、下マイカヒー6が相対的に弱火力のヒータとなる。
【0029】
図3で説明したように、本実施例では、下ヒータユニット32の上面(下ヒータプレート32a)を、外周より中央が3~5mm程度低くなるような凹曲面形状としている。これは、下ヒータプレート32aを平坦な下マイカヒータ6に密着させることで、下ヒータプレート32aの輻射効率を高めるためである。
【0030】
この場合、下ヒータプレート32aの凹曲面形状に倣って本来平坦な下マイカヒータ6も凹曲面形状に変形するが、下マイカヒータ6は三枚のマイカ板を下ハトメ64で固定した積層体であり、下ハトメ64によって各マイカ板の変形態様が制限されているため、マイカ板毎に曲率が相違することになる。
【0031】
従って、下マイカヒータ6に関しても上マイカヒータ5と同様にハトメ位置の最適化が必要とも考えられるが、下マイカヒータ6は上マイカヒータ5よりも相対的に火力の弱いヒータであり発生する熱歪も相対的に小さいため、熱歪に起因して下マイカヒータ6が脆性破壊される可能性も小さい。そのため、本実施例の下マイカヒータ6では、上マイカヒータ5のようなハトメ位置の配置を採用しておらず、下ハトメ64を下マイカヒータ6の左右辺の間際に配置することとした。
【0032】
図8は、グリル庫3に組み込まれた状態の上マイカヒータ5と下マイカヒータ6を重ねて表示した平面図である。ここに示すように、相対的に強火力の上マイカヒータ5については上ハトメ54をより中心寄りに配置する一方、相対的に弱火力の下マイカヒータ6については下ハトメ64をより端寄りに配置した。
【0033】
以上で説明したように、本実施例の加熱調理器によれば、芯マイカに電熱線を巻き付けた形態のマイカヒータをグリル庫に使用する加熱調理器において、加熱室壁面と密着したマイカヒータを、過度な外力を与えることなく発熱させることで、グリル庫のヒータ輻射効率を高めつつ、熱歪に起因するマイカヒータの脆性破壊を防止することができる。