(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039720
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】電動キャスタ
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
B60B33/00 F
B60B33/00 503C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144301
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 龍之
(72)【発明者】
【氏名】石原 健一
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で小型化できるとともに、取付体上の部品配置の自由度を高めることができる電動キャスタを提供する。
【解決手段】電動キャスタ1は、ベース部2に固定されるメインケース3と、メインケース3に固定されるブラシレスモータ31と、メインケース3に回転自在に支持される中空軸12と、メインケース3に固定されるブレーキ機構21と、中空軸12に挿通され、ブラシレスモータ31の駆動力を受けて回転される駆動軸13と、中空軸12に固定されるギアケース36と、ギアケース36に回転自在に支持される車軸45と、ギアケース36内に収納され、駆動軸13の回転を車軸45に伝達するベベルギア37,38と、車軸45の第1端部45aに固定される駆動輪46と、車軸45の第2端部45bに相対回転自在に支持される従動輪47と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付体に固定されるメインケースと、
前記メインケースに固定される駆動部と、
前記メインケースに回転自在に支持される中空軸と、
前記メインケースに固定され、前記メインケースに対する前記中空軸の回転を許容及び規制するブレーキ機構と、
前記中空軸に挿通され、前記中空軸に相対回転自在に支持されるとともに前記駆動部の駆動力を受けて回転される駆動軸と、
前記中空軸に固定されるギアケースと、
前記ギアケースに回転自在に支持される車軸と、
前記ギアケース内に収納され、前記駆動軸の回転を前記車軸に伝達するギアと、
前記車軸の軸方向の第1端部に固定され、前記車軸と一体となって回転する駆動輪と、
前記車軸の軸方向で前記第1端部とは反対側の第2端部に固定され、前記車軸に相対回転自在に支持される従動輪と、
を備える、
ことを特徴とする
電動キャスタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電動キャスタにおいて、
前記車軸の上方に前記中空軸及び前記駆動軸が配置されているとともに、前記車軸の軸方向に対して前記中空軸及び前記駆動軸の軸方向が交差するように配置されており、
前記中空軸の回転位置を検出するための回転位置検出センサと、
前記駆動部に取り付けられるとともに前記駆動軸が取り付けられ、前記駆動部の駆動を減速して前記駆動軸に伝達する減速部と、
をさらに備え、
前記取付体上には、前記駆動部のみが突出している、
ことを特徴とする電動キャスタ。
【請求項3】
前記回転位置検出センサは、
前記中空軸に取り付けられるセンサマグネットと、
前記メインケース内に収納され、前記センサマグネットが回転することによる磁気の変化を検出するセンサ基板と、
を備え、
前記ブレーキ機構は、前記中空軸の周囲に配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電動キャスタ。
【請求項4】
前記メインケースに、下から上に向かって順に前記ブレーキ機構、前記回転位置検出センサ、前記減速部が順に配置されているとともに、前記回転位置検出センサと前記減速部との間に、センサホルダが設けられており、
前記センサホルダに、前記センサ基板が取り付けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電動キャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動キャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車椅子や倉庫等に保管された部品を搬送する搬送台車等に電動キャスタを用い、車椅子や搬送台車等を自走式とした技術が知られている。電動キャスタは、取付体(車体)に回転自在に設けられた支柱と、支柱の下方に設けられ、水平方向に延びる車軸と、車軸の両端に設けられた一対の車輪と、を備える。電動キャスタは、取付体に設けられたバッテリ等の電源から電力が供給されて駆動する。
【0003】
ここで、車椅子や搬送車等の走行性能を向上させるために、電動キャスタのさまざまな技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、一対の車輪のうちの一方の車輪にモータ等の駆動部を設け、一方の車輪を駆動輪としている。また、一対の車輪のうちの他方の車輪を従動輪としている。さらに支柱と従動輪とにそれぞれ電磁ブレーキを設けている。支柱に設けられた電磁ブレーキ等は、取付体上に設けられている。
【0004】
このような構成のもと、対応する電磁ブレーキによって従動輪の回転を規制するとともに支柱の回転を許容する。すると、駆動輪と従動輪との回転差によって支柱が回転される。このため、車椅子や搬送台車等が旋回される。この際、従動輪に設けられた電磁ブレーキや駆動輪に設けられた駆動部も支柱の中心軸回りに回転移動する。
一方、対応する電磁ブレーキによって支柱の回転を規制するとともに従動輪の回転を許容する。すると、車椅子や搬送台車等が直進される。
【0005】
また、特許文献2では、車椅子や搬送台車等の走行用のアクチュエータと、車椅子や搬送台車等の旋回用のアクチュエータと、の2つのアクチュエータを設けている。各アクチュエータは、取付体上に設けられている。
この構成では、支柱を駆動軸とし、支柱と車軸とをギアを介して連結している。そして、支柱の上端に走行用のアクチュエータの駆動力を伝達する。これにより、車軸が回転して車椅子や搬送台車等が走行される。
【0006】
また、支柱が挿通される中空状の旋回軸を設ける。この旋回軸に、ハウジングを介して車軸を回転自在に支持する。そして、旋回軸の上端に、旋回用のアクチュエータの駆動力を伝達する。すると、支柱に対して旋回軸が回転する。また、旋回軸と一体となって、この旋回軸の中心軸回りにハウジング及び車軸の向きが変化する。これにより、車椅子や搬送台車等が旋回される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2020/059189号
【特許文献2】国際公開第2020/110334号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1にあっては、直進と旋回との両方の動作を満足するために2つの電磁ブレーキが必要となる。この分、電動キャスタが大型化してしまうという課題があった。
また、従動輪に設けられた電磁ブレーキや駆動輪に設けられた駆動部が支柱の中心軸回りに回転移動する。このため、取付体に設けられた電源から各電磁ブレーキや駆動部に給電を行うために、スリップリングを用いた方式やワイヤレス給電(無線給電)方式を採用する必要がある。よって、電動キャスタの構成が複雑になり、これに伴って大型化してしまうという課題があった。
さらに、特許文献1にあっては、取付体上に電磁ブレーキ等の部品が多く突出されるので、取付体上に配置される電源等の配置スペースが制約されてしまうという課題があった。
【0009】
上述の特許文献2にあっては、直進と旋回との両方の動作を満足するために2つのアクチュエータが必要となる。このため、電動キャスタが大型化してしまうという課題があった。
また、取付体上に各アクチュエータが設けられる。この結果、各アクチュエータからの動力が伝達される支柱(駆動軸)や旋回軸も取付体上に突出させる必要がある。このため、取付体上に配置される部品が多くなり、取付体上に配置される電源等の配置スペースが制約されてしまうという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、簡素な構造で小型化できるとともに、取付体上の部品配置の自由度を高めることができる電動キャスタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様では、取付体に固定されるメインケースと、前記メインケースに固定される駆動部と、前記メインケースに回転自在に支持される中空軸と、前記メインケースに固定され、前記メインケースに対する前記中空軸の回転を許容及び規制するブレーキ機構と、前記中空軸に挿通され、前記中空軸に相対回転自在に支持されるとともに前記駆動部の駆動力を受けて回転される駆動軸と、前記中空軸に固定されるギアケースと、前記ギアケースに回転自在に支持される車軸と、前記ギアケース内に収納され、前記駆動軸の回転を前記車軸に伝達するギアと、前記車軸の軸方向の第1端部に固定され、前記車軸と一体となって回転する駆動輪と、前記車軸の軸方向で前記第1端部とは反対側の第2端部に固定され、前記車軸に相対回転自在に支持される従動輪と、を備える。
【0012】
このように構成することで、1つの駆動部で電動キャスタを直進、旋回させることができる。このため、電動キャスタの構成を簡素化できるとともに小型化できる。
また、取付体の上部に部品を配置するような構成を採用する必要も無くなる。このため、電動キャスタを構成する部品の取付体上での占有面積を省スペース化できる。よって、取付体上の部品配置の自由度を高めることができる。
【0013】
本発明の第2態様では、第1態様の電動キャスタにおいて、前記車軸の上方に前記中空軸及び前記駆動軸が配置されているとともに、前記車軸の軸方向に対して前記中空軸及び前記駆動軸の軸方向が交差するように配置されており、前記中空軸の回転位置を検出するための回転位置検出センサと、前記駆動部に取り付けられるとともに前記駆動軸が取り付けられ、前記駆動部の駆動を減速して前記駆動軸に伝達する減速部と、をさらに備え、前記取付体上には、前記駆動部のみが突出している。
【0014】
このように、取付体上に駆動部のみを突出させ、他の部品については全て取付体の下部に配置した。このため、取付体上の部品配置の自由度を確実に高めることができる。
【0015】
本発明の第3態様では、第2態様の電動キャスタにおいて、前記回転位置検出センサは、前記中空軸に取り付けられるセンサマグネットと、前記メインケース内に収納され、前記センサマグネットが回転することによる磁気の変化を検出するセンサ基板と、を備え、前記ブレーキ機構は、前記中空軸の周囲に配置されている。
【0016】
このように構成することで、回転位置検出センサやブレーキ機構を省スペースに効率よく配置することができる。このため、電動キャスタをさらに確実に小型化できる。
【0017】
本発明の第4態様では、第3態様の電動キャスタにおいて、前記メインケースに、下から上に向かって順に前記ブレーキ機構、前記回転位置検出センサ、前記減速部が順に配置されているとともに、前記回転位置検出センサと前記減速部との間に、センサホルダが設けられており、前記センサホルダに、前記センサ基板が取り付けられている。
【0018】
ここで、メインケースの下部では、メインケースと中空軸との隙間等からメインケース内に塵埃や水が侵入しやすい。回転位置検出センサは、塵埃や水の影響により損傷しやすい。そこで、上記第4態様によれば、回転位置検出センサよりも下部にブレーキ機構を設けることにより、このブレーキ機構が防止壁となって回転位置検出センサへの塵埃や水の影響を抑制できる。このため、電動キャスタの動作を安定させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電動キャスタを簡素な構造で小型化できるとともに、取付体上の部品配置の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態における電動キャスタの軸方向の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態における電動キャスタを下方からみた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
<電動キャスタ>
図1は、電動キャスタ1の軸方向の断面図である。
図1に示すように、電動キャスタ1は、車椅子や倉庫等に保管された部品を搬送する搬送台車等に用いられる。電動キャスタ1は、車椅子や搬送台車のベース部(請求項における取付体の一例)2に取り付けられたメインケース3と、メインケース3内に収納されたメイン機構部4と、メインケース3に回転自在に支持されている軸ユニット5と、軸ユニット5に連結されているギア部6と、ギア部6に回転自在に支持されている車輪ユニット7と、を備える。
【0023】
以下の説明において上下方向とは、電動キャスタ1の使用状態における上下方向をいうものとする。
電動キャスタ1は、ベース部2の下面2aにメインケース3が固定されるように取り付けられる。このとき、軸ユニット5の第1回転軸線C1は、上下方向と平行である。
以下の説明では、第1回転軸線C1方向を上下方向に代えて軸方向という場合がある。また、第1回転軸線C1回り方向を周方向、軸方向及び周方向に直交する軸ユニット5の径方向を単に径方向という場合がある。さらに、周方向、径方向に代わって上下方向に直交する方向を水平方向という場合がある。
【0024】
ベース部2には、電動キャスタ1が取り付けられる箇所に、開口部2bが形成されている。この開口部2bに電動キャスタ1の一部が挿入されるように、ベース部2の下面2aにメインケース3が固定される。ベース部2における開口部2bの周囲には、ボルト10が挿通される複数のボルト挿通孔2cが周方向に等間隔で形成されている。
【0025】
<メインケース>
メインケース3は、上部に開口部3aを有する有底円筒状に形成されている。メインケース3の開口部3aには、径方向外側に張り出す外フランジ部8が形成されている。外フランジ部8は、ベース部2にメインケース3を固定するために用いられる。外フランジ部8には、ベース部2のボルト挿通孔2cと同軸上に複数の雌ネジ部8aが形成されている。ベース部2の上からボルト挿通孔2cに挿通されたボルト10を雌ネジ部8aに螺合することにより、ベース部2にメインケース3が締結固定される。
【0026】
メインケース3の底壁3bには、径方向中央の大部分に円筒状の軸受ボス9が下方に向かって突出形成されている。軸受ボス9の内周面には、軸方向中央に2つの軸受11が軸方向に並んで設けられている。これら軸受11に、軸ユニット5が回転自在に支持されている。また、軸受ボス9の内周面には、軸受11よも下部に、メインケース3と軸ユニット5との間をシールするシール部18が設けられている。
【0027】
<軸ユニット>
軸ユニット5は、軸受11に回転自在に支持された中空軸12と、中空軸12に挿入され、中空軸12に相対回転自在に支持された駆動軸13と、を備える。
中空軸12は、軸受ボス9の下端9aから軸受ボス9を介してメインケース3内に突出する長さに形成されている。中空軸12のうち、軸受11に対応する位置から中空軸12の下端に至る間には、段差を介して縮径された下縮径部12aが形成されている。下縮径部12aの外周面には、円筒状のギアホルダ14が嵌合固定されている。
【0028】
ギアホルダ14の上端は、下縮径部12aの段差に当接されている。これにより、中空軸12に対するギアホルダ14の軸方向の位置決めが行われる。ギアホルダ14の下端には、径方向に張り出し外フランジ部15が一体成形されている。外フランジ部15の上端が軸受11の内輪に当接されることにより、メインケース3に対する中空軸12の軸方向の位置決めが行われる。
【0029】
外フランジ部15に、図示しないボルトによってギア部6が締結固定される。外フランジ部15の下端面には、図示しないボルトが螺合される複数の雌ネジ部15aが周方向に等間隔で形成されている。
中空軸12の上部には、段差を介して縮径された上縮径部12bが形成されている。上縮径部12bは、メイン機構部4の一部を取りつけるために用いられる。
【0030】
中空軸12に挿入された駆動軸13は、軸方向両端がそれぞれ中空軸12の軸方向両端から突出されている。駆動軸13の下端は、ギア部6に連結されている。駆動軸13の上端には、径方向外側に張り出す外フランジ部16が一体成形されている。外フランジ部16には、軸方向に貫通する複数のボルト挿通孔16aが周方向に等間隔で形成されている。ボルト挿通孔16aには、ボルト17が挿通される。ボルト17は、メイン機構部4の後述するアクチュエータ23に駆動軸13を締結固定するために用いられる。
【0031】
<メイン機構>
メイン機構部4は、メインケース3の底壁3bに配置されたブレーキ機構21と、ブレーキ機構21の上方に配置された回転位置検出センサ22と、回転位置検出センサ22の上方に配置されたアクチュエータ23と、を主構成としている。
【0032】
<ブレーキ機構>
ブレーキ機構21は、メインケース3に対する中空軸12の回転を規制する。ブレーキ機構21は、例えば電磁ブレーキである。ブレーキ機構21は、中空軸12の周囲を取り囲むように設けられている。中空軸12の上縮径部12bに、ブレーキ機構21のアーマチュアハブ21aが嵌合固定されている。アーマチュアハブ21aは、上縮径部12bの段差に当接されて中空軸12に対する軸方向の位置決めが行われる。この位置決めが行われた状態で、メインケース3の底壁3b上にブレーキ機構21が配置される。
【0033】
このような構成のもと、ブレーキ機構21に対して通電、遮断を行うことにより、アーマチュアハブ21aにブレーキアーマチュア21bが押し付けられたり、アーマチュアハブ21aからブレーキアーマチュア21bが離間されたりする。アーマチュアハブ21aにブレーキアーマチュア21bが押し付けられると、これらの間に作用する摺動抵抗によってメインケース3に対して中空軸12の回転が規制される(ブレーキオン)。
【0034】
アーマチュアハブ21aに対してブレーキアーマチュア21bが離間されると、これらの間に何ら抵抗が発生されない。このため、メインケース3に対して中空軸12の回転を許容できる(ブレーキオフ)。すなわち、メインケース3に対して中空軸12をスムーズに回転させることができる。
【0035】
<回転位置検出センサ>
回転位置検出センサ22は、中空軸12の回転位置を検出するいわゆる磁気式のエンコーダである。回転位置検出センサ22は、中空軸12に設けられたマグネットユニット24と、マグネットユニット24を検出するセンサ基板25と、メインケース3内でセンサ基板25を支持するセンサホルダ26と、を備える。
マグネットユニット24は、中空軸12の上縮径部12bに、アーマチュアハブ21aの上から嵌合固定されているマグネットホルダ27と、マグネットホルダ27に保持されているセンサマグネット28と、を備える。センサマグネット28の上端面と中空軸12の上端面とが同一平面上に位置している。
【0036】
センサホルダ26は、上部に開口部26aを有する有底円筒状に形成されている。センサホルダ26における周壁26bの外径は、メインケース3における周壁3cの内径よりも若干小さい。これにより、メインケース3内にセンサホルダ26の周壁26bが収まっている。
センサホルダ26の開口部26aには、径方向外側に張り出す外フランジ部29が形成されている。外フランジ部29の外径はメインケース3の外フランジ部8の外径と同一である。メインケース3に収納されたセンサホルダ26は、各々外フランジ部8,29が重なり合うことにより、メインケース3に対するセンサホルダ26の軸方向の位置決めが行われる。
【0037】
センサホルダ26の外フランジ部29には、メインケース3の外フランジ部8に形成された雌ネジ部8aと同軸上に、ボルト挿通孔29aが形成されている。ベース部2の上からボルト挿通孔2cに挿通されたボルト10は、センサホルダ26のボルト挿通孔29aを介してメインケース3の雌ネジ部8aに螺合される。これにより、ベース部2にセンサホルダ26とメインケース3とが共締めされる。
【0038】
センサホルダ26の底壁26cには、径方向中央の大部分に底開口部26dが形成されている。底開口部26dに、駆動軸13の外フランジ部16が配置されている。センサホルダ26の底壁26cに、センサ基板25が取り付けられている。センサ基板25は、底開口部26dを避けた位置に設けられたスタッドボルト30を介してセンサホルダ26の底壁26cよりも下方に配置されている。センサ基板25には、センサマグネット28の磁気の変化を検出する図示しない素子が実装されている。素子は、センサマグネット28と軸方向で対向している。素子としては、例えばホールICが用いられる。
【0039】
<アクチュエータ>
アクチュエータ23は、扁平型のブラシレスモータ(請求項における駆動部の一例)31と、ブラシレスモータ31の下部にブラシレスモータ31と同軸上に配置された減速部32と、を備える。ブラシレスモータ31は、ベース部2上に設けられた図示しないバッテリ等の電源から電力が供給されて駆動する。
【0040】
減速部32は、ブラシレスモータ31の回転を減速して出力する。減速部32としては、例えばいわゆるハイポサイクロイド減速機構が用いられる。減速部32は、下方に向かうに従って段付き状に縮径するハウジング33と、ハウジング33内に収納される歯車群34と、歯車群34の下端に固定された出力プレート35と、を備える。ブラシレスモータ31の回転は、歯車群34によって減速されて出力プレート35から出力される。
【0041】
ハウジング33の最上段部33aは、センサホルダ26の周壁26bの内周面に嵌合されつつセンサホルダ26の開口部26aの周縁上(センサホルダ26の外フランジ部29上)に配置される。これにより、センサホルダ26に対するアクチュエータ23の径方向及び軸方向の位置決めが行われる。センサホルダ26の外フランジ部29上にはベース部2も配置されているので、ハウジング33の最上段部33aは、ベース部2における開口部2bの径方向内側に配置された状態になる。このため、電動キャスタ1は、ベース部2上にブラシレスモータ31のみが突出する。
【0042】
出力プレート35には、駆動軸13の外フランジ部16に形成されたボルト挿通孔16aと同軸上に、雌ネジ部35aが形成されている。雌ネジ部35aに、外フランジ部16のボルト挿通孔16aに下方から挿通されたボルト17が螺合される。これにより、出力プレート35に駆動軸13が締結固定され、出力プレート35と駆動軸13とが一体となって回転される。
【0043】
<ギア部>
駆動軸13の下部に設けられたギア部6は、中空軸12のギアホルダ14に図示しないボルトによって締結固定されたギアケース36と、ギアケース36内に収納された2つのベベルギア37,38(第1ベベルギア37、第2ベベルギア38)と、を備える。
ギアケース36は、上部に開口部41aを有する箱状のケース本体41と、ケース本体41の開口部41aを閉塞する蓋体42と、を備える。
【0044】
蓋体42には、ギアホルダ14の雌ネジ部15aと同軸上に、軸方向に貫通するボルト挿通孔42aが形成されている。ボルト挿通孔42aに、下方から図示しないボルトを挿通し、ギアホルダ14の雌ネジ部15aに螺合する。これにより、ギアホルダ14に蓋体42が締結固定される。蓋体42には、雌ネジ部15aよりも径方向内側にギア挿通孔42bが形成されている。ギア挿通孔42bに、2つのベベルギア37,38のうちの第1ベベルギア37が挿通されている。第1ベベルギア37が、駆動軸13の下端に嵌合固定されている。第1ベベルギア37は、駆動軸13と一体となって回転する。
【0045】
ケース本体41には、水平方向の両側壁41bに、それぞれ厚さ方向に貫通する貫通孔41cが形成されている。2つの貫通孔41cは、水平方向で同軸上に配置されている。ケース本体41の両側壁41bには、それぞれ貫通孔41cに嵌る円板状の軸受ホルダ43が設けられている。各軸受ホルダ43には、それぞれ軸受44が設けられている。これら軸受44(軸受ホルダ43)を介し、ケース本体41に車輪ユニット7を構成する車軸45が回転自在に支持されている。
【0046】
換言すれば、車軸45は、駆動軸13の下方で駆動軸13に対して直交する方向に延びている。車軸45は、軸受44(軸受ホルダ43)を介してケース本体41の両側壁41bから外方に突出されている。
このような車軸45に、2つのベベルギア37,38のうちの第2ベベルギア38が嵌合固定されている。
【0047】
第2ベベルギア38は、車軸45と一体となって回転する。第2ベベルギア38は、第1ベベルギア37に噛み合わされている。これにより、駆動軸13の回転が2つのベベルギア37,38を介して車軸45に伝達され、車軸45が回転される。すなわち、ギア部6は、回転軸線C回りに回転する駆動軸13の回転を水平方向に沿う車軸45の第2回転軸線C2回りの回転に変換する役割を有する。
【0048】
<車輪ユニット>
車輪ユニット7は、車軸45の他に車軸45の両端にそれぞれ取り付けられた駆動輪46及び従動輪47を備える。
駆動輪46は、車軸45の第1端部45a(
図1における左端部)に嵌合固定された円板状のホイール51と、ホイール51の外周に取り付けられたタイヤ52と、を備える。ホイール51の径方向中央に、車軸45が挿通される車軸挿通孔51aが形成されている。
【0049】
車軸45の第1端部45aに、カラー53、ホイール51の順に挿通し、第1端部45aに固定ナット54を締結する。カラー53の端部は、軸受44の内輪に当接される。これにより、カラー53と固定ナット54とによりホイール51が挟持されて車軸45に固定される。このため、駆動輪46は、車軸45と一体となって回転される。
【0050】
従動輪47は、車軸45の第2端部45b(
図1における右端部)に挿通される円板状のホイール55と、ホイール55の外周に取り付けられたタイヤ56と、を備える。ホイール55の径方向中央には、車軸45の軸径よりも若干大きい孔径の車軸挿通孔55aが形成されている。車軸挿通孔55aには、軸受57が設けられている。この軸受57を介し、車軸45に対してホイール55が回転自在に支持されている。車軸45に対するホイール55の第2回転軸線C2方向の位置決めは、軸受57の第2回転軸線C2方向両側に設けられたカラー58によって行われている。
【0051】
このように車輪ユニット7では、駆動輪46は車軸45の回転が伝達されて車軸45と一体となって回転する。一方、従動輪47には車軸45の回転が伝達されない。従動輪47は、車軸45に対して相対回転する。
【0052】
<電動キャスタの動作>
次に、
図1、
図2に基づいて、電動キャスタ1の動作について説明する。
図2は、電動キャスタ1を下方からみた平面図である。
まず、電動キャスタ1を旋回させる場合について説明する。
図1、
図2に示すように、この場合、ブレーキ機構21によってブレーキオフし、メインケース3に対して中空軸12の回転を許容する。この状態でアクチュエータ23を駆動させると、駆動軸13、2つのベベルギア37,38を介し、車軸45と一体となって駆動輪46が回転される(例えば、
図2における矢印Y1参照)。
【0053】
このとき、従動輪47には車軸45の回転が伝達されないので、従動輪47と駆動輪46との間に回転差が生じる。車軸45は、ギアケース36に回転自在に支持されている。このため、従動輪47と駆動輪46との回転差によって、ギアケース36及びギアケース36が固定されている中空軸12が第1回転軸線C1回りに回転される(例えば、
図2における矢印Y2参照)。これにより、電動キャスタ1が旋回される。
電動キャスタ1を上記とは逆方向に旋回させたい場合(例えば、
図2における矢印Y3参照)、駆動輪46を逆方向に回転させればよい(例えば、
図2における矢印Y4参照)。
【0054】
次に、電動キャスタ1を直進させる場合について説明する。
この場合、ブレーキ機構21によってブレーキオンし、メインケース3に対して中空軸12の回転を規制する。この状態でアクチュエータ23を駆動させると、駆動軸13、2つのベベルギア37,38を介し、車軸45と一体となって駆動輪46が回転される(例えば、
図2における矢印Y1,Y4参照)。
【0055】
このとき、駆動輪46のみに駆動力が伝達されているので、中空軸12に第1回転軸線回りの回転力が作用される。しかしながら、メインケース3に対する中空軸12の回転が規制されているので、電動キャスタ1が旋回されることなく直進される。この際、従動輪47は電動キャスタ1の直進によって引き摺られるように回転する。
中空軸12の回転位置は、回転位置検出センサ22によって検出される。この検出結果は、信号として図示しない制御部に出力される。制御部は、回転位置検出センサ22の検出結果に基づいて、アクチュエータ23の駆動制御を行う。これにより、車椅子や搬送台車等を所望の方向に走行させることができる。
【0056】
ところで、電動キャスタ1の走行時には、例えば路面の塵埃が舞い上がったり、路面に溜まった水が跳ねたりして、メインケース3内に塵埃や水が侵入してしまう場合が考えられる。しかしながら、メインケース3における軸受ボス9の内周面には、メインケース3と中空軸12との間をシールするシール部18が設けられているので、メインケース3内に塵埃や水が侵入してしまうことを防止できる。
【0057】
仮にメインケース3と中空軸12との間からメインケース3内に塵埃や水が侵入したとする。この場合であっても塵埃や水の影響を受けやすい回転位置検出センサ22よりも下方に、ブレーキ機構21が配置されている。このブレーキ機構21がメインケース3内への塵埃や水の侵入を防止する防止壁となって、回転位置検出センサ22に塵埃や水がかかってしまうことを防止できる。よって、回転位置検出センサ22が塵埃や水の影響を受けてしまうことを防止できる。
【0058】
このように、上述の実施形態では、電動キャスタ1は、ベース部2に固定されるメインケース3と、メインケース3に固定されるブラシレスモータ31と、メインケース3に回転自在に支持される中空軸12と、メインケース3に固定されるブレーキ機構21と、中空軸12に挿通される駆動軸13と、中空軸12に固定されるギアケース36と、ギアケース36に回転自在に支持される車軸45と、ギアケース36内に収納されるベベルギア37,38と、車軸45の第1端部45aに固定される駆動輪46と、車軸45の第2端部45bに相対回転自在に支持される従動輪47と、を備える。
【0059】
このように構成することで、1つのブラシレスモータ31で電動キャスタ1を直進、旋回させることができる。このため、電動キャスタ1の構成を簡素化できるとともに小型化できる。
また、ベース部2の上部に部品を配置するような構成を採用する必要も無くなる。このため、電動キャスタ1を構成する部品のベース部2上での占有面積を省スペース化できる。よって、ベース部2上の部品配置の自由度を高めることができる。
【0060】
しかも、車軸45の上方に中空軸12及び駆動軸13が配置されている。これに加え、中空軸12や駆動軸13の第1回転軸線C1と車軸45の第2回転軸線C2とを直交させている。そして、ベース部2上にブラシレスモータ31のみを突出させ、ブラシレスモータ31に取り付けられる減速部32や他の部品の全てをベース部2の下方に配置している。このため、ベース部2上の部品配置の自由度を高めることができる。
回転位置検出センサ22をセンサ基板25とセンサマグネット28とで構成し、中空軸12の周囲にブレーキ機構21やセンサマグネットを配置している。この分、電動キャスタ1の軸長も短くできる。
【0061】
メインケース3に、下から上に向かって順にブレーキ機構21、回転位置検出センサ22、減速部32が順に配置されている。また、回転位置検出センサ22と減速部32との間に、センサホルダ26が設けられている。センサホルダ26に、センサ基板25が取り付けられている。このため、ブレーキ機構21がメインケース3内への塵埃や水の侵入を防止する防止壁となって、回転位置検出センサ22に塵埃や水がかかってしまうことを防止できる。よって、回転位置検出センサ22が塵埃や水の影響を受けてしまうことを防止でき、電動キャスタ1の動作を安定させることができる。
【0062】
電動キャスタ1の構成を簡素化できるとともに小型化できるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」、及び目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」に貢献することが可能となる。
【0063】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、電動キャスタ1は、車椅子や倉庫等に保管された部品を搬送する搬送台車等に用いられる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな装置に電動キャスタ1適用することができる。
【0064】
上述の実施形態では、電動キャスタ1の駆動部として、ブラシレスモータ31を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ブラシレスモータ31に代わってブラシ付きモータを使用することもできる。また、減速部32を用いずにブラシレスモータ31と駆動軸13とを直接連結してもよい。
上述の実施形態では、回転位置検出センサ22は、センサマグネット28を備えたいわゆる磁気式のエンコーダである場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、中空軸12の回転位置を検出できればよい。例えば磁気式のエンコーダに代わって光学式のエンコーダを用いてもよい。
【0065】
上述の実施形態では、駆動軸13の回転を車軸45に伝達するために2つのベベルギア37,38を設けた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、駆動軸13の回転を車軸45に伝達できるギアであればよい。例えばウォームギアでもよい。
上述の実施形態では、車軸45は、中空軸12や駆動軸13の下方でこれら中空軸12や駆動軸13に対して直交する方向に延びている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、中空軸12や駆動軸13に対して車軸45が完全に直交していなくてもよい。中空軸12や駆動軸13に対して車軸45が交差していればよい。
【符号の説明】
【0066】
1…電動キャスタ、2…ベース部(取付体)、2a…下面、2b…開口部、2c…ボルト挿通孔、3…メインケース、3a…開口部、3b…底壁、3c…周壁、4…メイン機構部、5…軸ユニット、6…ギア部、7…車輪ユニット、8…外フランジ部、8a…雌ネジ部、9…軸受ボス、9a…下端、10…ボルト、11…軸受、12…中空軸、12a…下縮径部、12b…上縮径部、13…駆動軸、14…ギアホルダ、15…外フランジ部、15a…雌ネジ部、16…外フランジ部、16a…ボルト挿通孔、17…ボルト、18…シール部、21…ブレーキ機構、21a…アーマチュアハブ、21b…ブレーキアーマチュア、22…回転位置検出センサ、23…アクチュエータ、24…マグネットユニット、25…センサ基板、26…センサホルダ、26a…開口部、26b…周壁、26c…底壁、26d…底開口部、27…マグネットホルダ、28…センサマグネット、29…外フランジ部、29a…ボルト挿通孔、30…スタッドボルト、31…ブラシレスモータ(駆動部)、32…減速部、33…ハウジング、33a…最上段部、34…歯車群、35…出力プレート、35a…雌ネジ部、36…ギアケース、37…第1ベベルギア、37…ベベルギア、38…第2ベベルギア、38…ベベルギア、41…ケース本体、41a…開口部、41b…両側壁、41c…貫通孔、42…蓋体、42a…ボルト挿通孔、42b…ギア挿通孔、43…軸受ホルダ、43…各軸受ホルダ、44…軸受、45…車軸、45a…第1端部、45b…第2端部、46…駆動輪、47…従動輪、51…ホイール、51a…車軸挿通孔、52…タイヤ、53…カラー、54…固定ナット、55…ホイール、55a…車軸挿通孔、56…タイヤ、57…軸受、58…カラー、C1…第1回転軸線、C2…第2回転軸線