(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039721
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】給紙装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/24 20060101AFI20240315BHJP
B65H 1/12 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B65H1/24 B
B65H1/12 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144302
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】青野 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大地
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343FC03
3F343GA03
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HD18
3F343KB03
3F343LA04
3F343LA15
3F343LC04
3F343LC07
3F343LC20
3F343LD04
3F343LD12
3F343LD26
3F343MA26
3F343MB12
3F343MC12
(57)【要約】
【課題】従来、画像形成装置の給紙装置では、収容する記録用紙のサイズやセット枚数によって、ピックアップローラへの用紙付勢力が大きくばらつき、付勢力過多による重送や、付勢力不足による不送りが生じやすくなる場合があった。
【解決手段】記録用紙40の一部領域又は全領域を載置するシートレシーブ51と、シートレシーブ51に載置される記録用紙40の位置を規制する用紙ガイド(61,62,70)と、シートレシーブ51に載置された記録用紙40をピックアップローラ15に付勢する付勢手段(54,53,52)とを備え、付勢手段(54,53,52)は、用紙ガイド(61,62,70)の位置に応じて付勢力を変える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の一部領域又は全領域を載置する用紙載置部と、
前記用紙載置部に載置される前記記録媒体の位置を規制する用紙ガイドと、
前記用紙載置部に載置された前記記録媒体を繰り出し部材に付勢する付勢手段と
を備え、
前記付勢手段は、前記用紙ガイドの位置に応じて付勢力を変えることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記用紙ガイドは、前記繰り出し部材による前記記録媒体の繰り出し方向に対して、直交する前記記録媒体の幅方向をガイドする用紙幅ガイドを有し、
前記付勢手段は、前記用紙幅ガイドのガイド位置に応じて前記付勢力を変えることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記用紙ガイドは、前記繰り出し部材による前記記録媒体の繰り出し方向における、前記記録媒体の後端部をガイドする用紙後端ガイドを有し、
前記付勢手段は、前記用紙後端ガイドのガイド位置に応じて付勢力を変えることを特徴とする請求項1又は2記載の給紙装置。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記用紙載置部の、前記繰り出し方向の先端部に作用する第1の付勢部と、該先端部以外の領域に作用する第2の付勢部とを有し、
前記付勢手段は、前記用紙幅ガイドのガイド位置に応じて前記第2の付勢部による付勢力を変えることを特徴とする請求項2記載の給紙装置。
【請求項5】
前記第2の付勢部は、
給紙装置本体によって前記繰り出し方向でスライド可能に保持され、前記用紙幅ガイドのガイド幅が広がるのに応じて前記繰り出し方向に移動するレバーと、
前記レバーと給紙装置本体間に架けられたバネ部材と
を有し、
前記用紙幅ガイドのガイド幅が広がるのに応じて前記第2の付勢部による付勢力が強くなると共に、前記レバーに対する付勢位置が前記繰り出し方向に移動することを特徴とする請求項4記載の給紙装置。
【請求項6】
前記用紙ガイドは、前記繰り出し方向における、前記記録媒体の後端部をガイドする用紙後端ガイドを有し、
前記第2の付勢部は、
給紙装置本体によって前記繰り出し方向にスライド可能に保持され、前記用紙幅ガイドのガイド幅が広がるのに応じて前記繰り出し方向に移動するレバーと、
前記レバーと前記用紙後端ガイドに架けられたバネ部材と
を有し、
前記用紙後端ガイドが前記繰り出し方向と反対方向に移動するのに応じて前記第2の付勢部による付勢力が強くなることを特徴とする請求項4記載の給紙装置。
【請求項7】
前記用紙ガイドは、前記繰り出し方向における、前記記録媒体の後端部をガイドする用紙後端ガイドを有し、
前記第2の付勢部は、
前記用紙載置部に作用するレバーと、
前記レバーと用紙後端ガイド間に架けられたバネ部材とを有し、
前記用紙後端ガイドが前記繰り出し方向と反対方向に移動するのに応じて前記第2の付勢部による付勢力が強くなることを特徴とする請求項4記載の給紙装置。
【請求項8】
請求項1又は2記載の給紙装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特にその給紙装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給紙装置として、載置した記録媒体をピックアップローラに付勢する手段として、積載板の反対面をピックアップローラに押圧する第1のコイルバネと、後端規制板の位置に応じて、大サイズの記録媒体に対応する位置にあるときのみ追加的に積載板の反対面を押圧する第2のコイルバネとを有すものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-116073号公報(第3頁、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置では、給紙カセットの大容量化に伴い、ピックアップローラへの用紙付勢力が、用紙サイズやセット枚数によって大きくバラツキ、付勢力過多による重送や、付勢力不足による不送りが生じやすくなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による給紙装置は、
記録媒体の一部領域又は全領域を載置する用紙載置部と、前記用紙載置部に載置される前記記録媒体の位置を規制する用紙ガイドと、前記用紙載置部に載置された前記記録媒体を繰り出し部材に付勢する付勢手段とを備え、
前記付勢手段は、前記用紙ガイドの位置に応じて付勢力を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の給紙装置によれば、載置する記録媒体の、サイズ種類及びセット枚数に拘わらず、記録媒体を繰り出し部材に付勢する力を所望の範囲内に収めることができるため、付勢力過多による重送や、付勢力不足による不送りの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に基づく給紙装置を採用する実施の形態1の画像形成装置の要部構成を示す要部構成図である。
【
図2】給紙トレイの内部構造の要部構成を概略的に示す動作原理図であり、+Y方向側からみた側面図である。
【
図3】給紙トレイの内部構造の要部構成を概略的に示す動作原理図であり、+Z方向側からみた平面図である。
【
図4】給紙トレイにおいて、左側サイドガイドを
図3に示す中心位置から-Y方向に所定距離移動した際の状態を示す動作説明図で、(a)はその平面図であり、(b)はその側面図である。
【
図5】給紙トレイにおいて、左側サイドガイドを
図3に示す中心位置から+Y方向に所定距離移動した際の状態を示す動作説明図で、(a)はその平面図であり、(b)はその側面図である。
【
図6】モーメントNw、Nm、NsとNの関係を図示化したものであり、(a)は、
図4に示すように、両サイドガイドが第1のサイドガイド位置にあるときの状態を示し、(b)は、
図3に示すように、両サイドガイドが中心位置にあるときの状態を示し、(c)は、
図5に示すように、両サイドガイドが第2のサイドガイド位置にあるときの状態を示す。
【
図7】本発明に基づく実施の形態2の給紙トレイの内部構造の要部構成を概略的に示す動作原理図である。
【
図8】載置する記録用紙の用紙長が短く且つセット枚数が少ない時の状態を示す動作説明図である。
【
図9】載置する記録用紙の用紙長が長く且つセット枚数が少ない時の状態を示す動作説明図である。
【
図10】載置する記録用紙の用紙長が短く且つセット枚数が多い時の状態を示す動作説明図である。
【
図11】載置する記録用紙の用紙長が長く且つセット枚数が多い時の状態を示す動作説明図である。
【
図12】モーメントNw、Nm、NsとNnの関係を図示化したものであり、(a)は、載置する記録用紙の用紙長が短く且つセット枚数が少ない時の状態を示し、(b)は、載置する記録用紙の用紙長が長く且つセット枚数が少ない時の状態を示し、(c)は、載置する記録用紙の用紙長が短く且つセット枚数が多い時の状態を示し、(d)は、載置する記録用紙の用紙長が長く且つセット枚数が多い時の状態を示す。
【
図13】各スプリングのパラメータを好ましい状態に調整した給紙装置において、A3とA6SEFの各用紙サイズの記録用紙を、それぞれセット枚数を変えて載置した場合のレシーブ荷重Fnの測定結果をプロットしたグラフである。
【
図14】比較例としてレバーを外した押圧力Fsを除いた状態で、A3、A4SEFとA6SEFの各用紙サイズの記録用紙を、それぞれセット枚数を変えて載置した場合のレシーブ荷重Fnの測定結果をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、本発明に基づく給紙装置を採用する実施の形態1の画像形成装置1の要部構成を示す要部構成図である。
【0009】
同図に示すように、画像形成装置1は、電子写真式プリンタとしの構成を備え、給紙トレイ12は、内部に記録媒体としての記録用紙40が積層され、画像形成装置1本体の下部に着脱自在に装着される。繰り出し部材としてのピックアップローラ15は、接触した状態で対に配置された給紙ローラ16及び分離ローラ17と共に給紙部35を構成している。ピックアップローラ15及び給紙ローラ16は、図示せぬ駆動モータによって回転駆動され、分離ローラ17は、図示しないトルク発生手段によって、反回転方向にトルクを発生している。
【0010】
従って、ピックアップローラ15は、給紙トレイ12内から、当接した最上部の記録用紙40を繰り出し、給紙ローラ16及び分離ローラ17は、例えば、記録用紙40が複数同時に引き出されたような場合にも、一枚ずつに捌いて順次搬送経路に繰り出す。
【0011】
記録用紙40の搬送方向における、給紙部35の下流側の搬送路には、順に搬送ローラ対18、レジストローラ対19が配置されている。搬送ローラ対18はレジストローラ対19に記録用紙40を搬送し、レジストローラ対19は、記録用紙40の通過を検出する用紙センサ36の用紙検出タイミングに基づいて、記録用紙40が当接した後に用紙搬送を開始することにより記録用紙40の斜行を矯正して画像形成部11に送り込む。
【0012】
画像形成部11は、矢印方向に回転して、その周面にトナー現像が形成されるイメージドラム30、イメージドラム30に対向して圧接するように配置され、トナー現像を記録用紙40に転写する転写ローラ31、記録用紙40に転写されトナー現像を記録用紙40に定着する定着器32を備える。
【0013】
画像形成部11に送り込まれた記録用紙40は、イメージドラム30と転写ローラ31との圧接部を通過する間に、所定の転写電圧が印加された転写ローラ31によって、イメージドラム30の周面に形成されたトナー現像がその紙面上に転写される。画像形成部11は、レジストローラ対19通過後の記録用紙40を検出する用紙センサ37の用紙検出タイミングに基づいて、イメージドラム30の周面にトナー現像を形成するプロセスを開始する。
【0014】
定着器32は、加熱ローラ33とこれに圧接して配置された加圧ローラ34とを有し、この圧接部をトナー現像が転写された記録用紙40が通過する間に加熱及び加圧し、記録用紙40にトナー現像を定着する。定着器32から搬送路に沿って送り出された印刷済みの記録用紙40は、搬送ローラ対20を経由して排出ローラ21に送られ、排出ローラ21によってスタッカ部22に排出される。
【0015】
尚、
図1中のX、Y、Zの各方向は、記録用紙40がイメージドラム30と転写ローラとの圧接部を通過する際の搬送方向(矢印A方向)をX方向とし、イメージドラム30の回転軸方向をY方向とし、これら両軸と直交する方向をZ方向としている。また、後述する他の図においてX、Y、Zの各方向が示される場合、これらの方向は、共通する方向を示すものとする。即ち、各図のXYZ方向は、各図の描写部分が、
図1に示す画像形成装置1を構成する際の配置方向を示している。またここでは、Z方向が略鉛直方向となるように配置されるものとする。
【0016】
図2、
図3は、給紙トレイ12の内部構造の要部構成を概略的に示す動作原理図であり、
図2は、+Y方向側からみた側面図であり、
図3は+Z方向側からみた平面図である。尚、
図2において、矢印A方向(+X方向)からみて、給紙トレイ12の前後、左右、上下の方向を特定する場合がある。
【0017】
これらの図において、用紙載置部としてのシートレシーブ51(
図2)は、給紙トレイ12本体に配設されたY方向に延在する回動軸51aによって回動自在に保持され、その先端部51bが、給紙トレイ12本体との間に架けられた第1の付勢部としてのメイン引張スプリング54によって引張力Fmで上方(+Z方向)に引き上げられている。このシートレシーブ51には、給紙トレイ12に積層された記録用紙40の搬送方向の先端側が位置し、その最上部の記録用紙40がこの引張力Fmが一因となるレシーブ荷重Fによりピックアップローラ15に圧接する。
【0018】
Y方向からみて略L字状に形成されたレバー52は、屈曲部においてY方向に延在して配設された回動軸52aが図示しない保持部材によって回動自在に保持され、更にこの保持部材は、給紙トレイ12本体によって、X方向にスライド可能に保持されている。
【0019】
レバー52の、回動軸52aから一方に伸びる短腕部52bの先端部は、給紙トレイ12本体との間に架けられたバネ部材としての補助引張スプリング53によって付勢され、回動軸52aから他方に伸びる長腕部52cの先端部はシートレシーブ51の下部面に当接している。従って、シートレシーブ51は、補助引張スプリング53による押圧力Fsで押し上げられている。従って、押圧力Fsもレシーブ荷重Fの一因となっている。尚、レバー52と補助引張スプリング53とが第2の付勢部に相当する。
【0020】
シートレシーブ51の左右両側には、
図3に示すように、載置される記録用紙40の左右の位置を規制する、左側サイドガイド61と右側サイドガイド62が対向するように配置されている。但し、
図3ではシートレシーブ51自体は省かれているが、その所定部に形成された第1のガイド長孔51cのみが点線で描かれている。この第1のガイド長孔51cは、
図3に示すように、シートレシーブ51のY方向の中心部でX方向に延在している。尚、左側サイドガイド61と右側サイドガイド62とが用紙幅ガイドに相当する。
【0021】
左側サイドガイド61は、シートレシーブ51に載置される記録用紙40の左側を規制するガイド部61aとシートレシーブ51の下部で-Y方向に延在する基底部61bとからなり、シートレシーブ51によってY方向にスライド可能に保持されている。一方、右側サイドガイド62は、シートレシーブ51に載置される記録用紙40の右側を規制し、シートレシーブ51によってY方向にスライド可能に保持されている。
【0022】
左側サイドガイド61と右側サイドガイド62とは、図示しない連結部材で連動し、例えば左側サイドガイド61が+Y方向に移動する場合、右側サイドガイド62が-Y方向に同距離だけ移動し、左側サイドガイド61が-Y方向に移動する場合、右側サイドガイド62が+Y方向に同距離だけ移動する。即ち、左側サイドガイド61と右側サイドガイド62とは、シートレシーブ51のY方向中心に対して、左右対称にスライド移動するように構成され、更に所望する位置を維持できるように構成されている。
【0023】
更に左側サイドガイド61の基底部61bには、
図3に示すように、左側サイドガイド61が移動範囲の中心位置にあるときに、その中心部がシートレシーブ51の第1のガイド長孔51cの中心部と斜めに交差する第2のガイド長孔61cが形成されている。そしてこの交差部に生ずる貫通部にレバー52の所定部から上方に植立するポスト52dが嵌入するように構成されている。尚、シートレシーブ51、左側サイドガイド61、右側サイドガイド62、レバー52、補助引張スプリング53、及びメイン引張スプリング54が給紙装置に相当する。
【0024】
図4は、以上のように構成された給紙トレイ12において、左側サイドガイド61を
図3に示す中心位置から-Y方向に所定距離移動した際の状態を示す動作説明図で、同図(a)はその平面図であり、同図(b)はその側面図である。但し、
図4は動作原理図であり、個々の構成要素の正確な位置関係を示すものではない。
【0025】
同図(a)に示すように、例えば給紙トレイ12に載置される幅狭の記録用紙40の側面をガイドすべく、左側サイドガイド61を
図3に示す中心位置から-Y方向に所定距離移動すると、これに伴って右側サイドガイド62が
図3に示す中心位置から+Y方向に所定距離移動し、両サイドガイド間は、中央位置が変わることなく狭くなる。
【0026】
この時、レバー52に配設されたポスト52dは、左側サイドガイド61の基底部61bに形成された第2のガイド長孔61cによって+X方向(後側)に押圧され、シートレシーブ51に形成された第1のガイド長孔51cに沿って、同図(a)に示すように+X方向(後側)に移動し、左側サイドガイド61の移動距離に対応した移動位置で停止する。
【0027】
この時レバー52は、
図4(b)に示すように、点線で示す移動範囲の中心位置から+X方向に移動するため、補助引張スプリング53が縮み、補助引張スプリング53による押圧力Fsは、中心位置の時より弱くなる。
【0028】
図5は、以上のように構成された給紙トレイ12において、左側サイドガイド61を
図3に示す中心位置から+Y方向に所定距離移動した際の状態を示す動作説明図で、同図(a)はその平面図であり、同図(b)はその側面図である。但し、
図5は動作原理図であり、個々の構成要素の正確な位置関係を示すものではない。
【0029】
同図(a)に示すように、例えば給紙トレイ12に載置される幅広の記録用紙40の側面をガイドすべく、左側サイドガイド61を
図3に示す中心位置から+Y方向に所定距離移動すると、これに伴って右側サイドガイド62が
図3に示す中心位置から-Y方向に所定距離移動し、両サイドガイド間は、中央位置が変わることなく広くなる。
【0030】
この時、レバー52に配設されたポスト52dは、左側サイドガイド61の基底部61bに形成された第2のガイド長孔61cによって-X方向(前側)に押圧され、シートレシーブ51に形成された第1のガイド長孔51cに沿って、同図(a)に示すように-X方向(前側)に移動し、左側サイドガイド61の移動距離に対応した停止位置で停止する。
【0031】
この時レバー52は、
図5(b)に示すように、点線で示す移動範囲の中心位置から-X方向に移動するため、補助引張スプリング53が伸び、補助引張スプリング53による押圧力Fsは、中心位置の時より強くなる。
【0032】
ここで、
・シートレシーブ51が受ける記録用紙40の重量により生じるモーメントをNwとし、
・引張力Fmの付加によって生ずるモーメントをNmとし、
・押圧力Fsの付加によって生じるモーメントをNsとし、
・モーメントの総和をNとすると、
N=Nm+Ns-Nw (1)
(回動軸51aの矢印C方向を+とする)
となる。
【0033】
従がって、回動軸51aから記録用紙40がピックアップローラ15に当接する位置までの距離をRとすると、ここで生じるシートレシーブ51によるピックアップローラ15へのレシーブ荷重Fは、
F=N/R
となる。
【0034】
前記したように、
図4に示す、左側サイドガイド61と右側サイドガイド62間が最も狭くなる第1のサイドガイド位置から、
図5に示す、両サイドガイド61,62間が最も広くなる第2のサイドガイド位置まで移動すると、レバー52が前方向(-X方向)に移動するため、補助引張スプリング53による押圧力Fsは強くなり、更にその作用位置が回動軸51aから遠くなるのでモーメントNsは相乗的に増加する。
【0035】
図6は、上記したモーメントNw、Nm、NsとNの関係を図示化したものであり、同図(a)は、
図4に示すように、左側サイドガイド61と右側サイドガイド62間が最も狭くなる第1のサイドガイド位置にあるときの状態を示し、同図(b)は、
図3に示すように、両サイドガイド61,62が中心位置にあるときの状態を示し、同図(c)は、
図5に示すように、両サイドガイド61,62間が最も広くなる第2のサイドガイド位置にあるときの状態を示す。
【0036】
両サイドガイド61,62が、
図4に示す第1のサイドガイド位置から、
図3に示す中心位置を経て、
図5に示す第2のサイドガイド位置まで、用紙サイズに応じて順に広げられると、各位置で載置される用紙サイズも大きくなるめ、これに伴ってモーメントNwも増加し、モーメントNsは、前記した相乗的効果により、モーメントNwの変化率以上で増加する。一方、ここではメイン引張スプリング54による引張力Fmが変わらないためモーメントNfは変化しない。
【0037】
従って、上式(1)によるモーメントNが増加するため、シートレシーブ51によるピックアップローラ15へのレシーブ荷重Fもこれに比例して増加する。一方、仮にレバー52がなくて押圧力Fsが発生しない場合、
図6に示すようにモーメントNは減少し、レシーブ荷重Fが弱くなる。
【0038】
以上のように、本実施の形態の給紙装置によれば、左側サイドガイド61と右側サイドガイド62との間隔が広がるにつれてレシーブ荷重Fを強くすることが可能となるため、大サイズの記録用紙40を載置したときのレシーブ荷重Fの低下による用紙不送りの発生を防止できる。一方、補助引張スプリング53のパラメータ(自由長、巻き数、線径等)により押圧力Fsを調整できるため、レシーブ荷重Fの過多による用紙の重送も防止することが可能となる。
【0039】
実施の形態2.
図7は、本発明に基づく実施の形態2の給紙トレイ112の内部構造の要部構成を概略的に示す動作原理図である。
【0040】
この給紙トレイ112が、前記した
図2に示す実施の形態1の給紙トレイ12と主に異なる点は、補助引張スプリング53が、レバー52の短腕部52bの先端部とテールガイド70の基台部70a間に架けられている点である。従って、この給紙トレイ112を採用する画像形成装置が、前記した実施の形態1の画像形成装置1と共通する分部には同符号を付して、或は図面を省いて説明を省略し、異なる点を重点的に説明する。尚、本実施の形態の画像形成装置の要部構成は、給紙トレイ112以外において
図1に示す実施の形態1の画像形成装置1の要部構成と共通するため、必要に応じて
図1を参照する。
【0041】
用紙後端ガイドとしてのテールガイド70は、給紙トレイ112に載置される記録用紙40の搬出方向の後端部(+X方向の端部)の位置を規制する。このため給紙トレイ112本体によってX方向にスライド可能に保持され、更に所望する位置を維持できるように構成されている。
図7は、このテールガイド70が所定の基準位置にあるときの状態を示している。
【0042】
給紙トレイ112のレバー52は、実施の形態1の構成を有する。即ち、設定される左右の両サイドガイド61,62間の間隔に応じてX方向での位置が移動する構成を有するが、ここでは説明の都合上、例えば
図3に示す中間位置に止まっているものとする。
【0043】
図8は、以上のように構成された給紙トレイ112において、載置する記録用紙40の用紙長が短く且つセット枚数が少ない時の状態を示す動作説明図である。この時、同図に示すように、載置する記録用紙40の用紙長が短く且つ載置枚数が少ないと、テールガイド70は、
図7に示す基準位置より給紙トレイ112の前方(-X方向)に配置されて補助引張スプリング53の伸びが小さくなるため、補助引張スプリング53による押圧力Fsは弱くなる。また、記録用紙40のセット枚数が少なくてピックアップローラ15とシートレシーブ51間が狭いためにメイン引張スプリング54の伸びが小さく、その引張力Fmも小さい。
【0044】
図9は、同じく同様に構成された給紙トレイ112において、載置する記録用紙40の用紙長が長く且つセット枚数が少ない時の状態を示す動作説明図である。この時、同図に示すように、載置する記録用紙40の用紙長が長く且つ載置枚数が少ないと、テールガイド70は、
図7に示す基準位置より給紙トレイ112の後方(+X方向)に配置されて補助引張スプリング53の伸が大きくなるため、補助引張スプリング53による押圧力Fsは強くなる。また、記録用紙40のセット枚数が少なくてピックアップローラ15とシートレシーブ51間が狭いためにメイン引張スプリング54の伸びが小さく、その引張力Fmも小さい。
【0045】
図10は、同じく同様に構成された給紙トレイ112において、載置する記録用紙40の用紙長が短く且つセット枚数が多い時の状態を示す動作説明図である。この時、同図に示すように、載置する記録用紙40の用紙長が短く且つ載置枚数が多いと、テールガイド70は、
図7に示す基準位置より給紙トレイ112の前方に配置されて補助引張スプリング53の伸び量が少なくなるため、補助引張スプリング53による押圧力Fsは弱くなる。また、記録用紙40のセット枚数が多くてピックアップローラ15とシートレシーブ51間が広がるとメイン引張スプリング54も引き伸ばされ、その引張力Fmも大きくなる。
【0046】
図11は、同じく同様に構成された給紙トレイ112において、載置する記録用紙40の用紙長が長く且つセット枚数が多い時の状態を示す動作説明図である。この時、同図に示すように、載置する記録用紙40の用紙長が長く且つ載置枚数が多いと、テールガイド70は、
図7に示す基準位置より給紙トレイ112の後方に配置されて補助引張スプリング53の伸び量が多くなるため、補助引張スプリング53による押圧力Fsは強くなる。また、記録用紙40のセット枚数が多くてピックアップローラ15とシートレシーブ51間が広がるとメイン引張スプリング54も引き伸ばされ、その引張力Fmも大きくなる。
【0047】
ここで、
・シートレシーブ51が受ける記録用紙40の重量により生じるモーメントをNwとし、
・引張力Fmの付加によって生ずるモーメントをNmとし、
・押圧力Fsの付加によって生じるモーメントをNsとし、
・モーメントの総和をNnとすると、
Nn=Nm+Ns-Nw (2)
(回動軸51aの矢印C方向を+とする)
となる。
【0048】
従がって、回動軸51aから記録用紙40がピックアップローラ15に当接する位置までの距離をRとすると、ここで生じるシートレシーブ51によるピックアップローラ15へのレシーブ荷重Fnは、
Fn=Nn/R
となる。
【0049】
前記したように、
図8に示す、載置する記録用紙40の用紙長が短く且つセット枚数が少ない時のテールガイド70の位置から、
図9に示す、載置する記録用紙40の用紙長が長く且つセット枚数が少ない時のテールガイド70の位置までテールガイド70を移動すると、補助引張スプリング53による押圧力Fsは強くなる。更にこれら各テールガイド70の位置おいて、
図10、
図11に示すように給紙トレイ112に載置する記録用紙40のセット枚数が多い場合には、前記したようにメイン引張スプリング54が引き伸ばされ、その引張力Fmが大きくなる。
【0050】
図12は、上記したモーメントNw、Nm、NsとNnの関係を図示化したものであり、同図(a)は、
図8に示すように、載置する記録用紙40の用紙長が短く且つセット枚数が少ない時の状態を示し、同図(b)は、
図9に示すように、載置する記録用紙40の用紙長が長く且つセット枚数が少ない時の状態を示し、同図(c)は、
図10に示すように、載置する記録用紙40の用紙長が短く且つセット枚数が多い時の状態を示し、同図(d)は、
図11に示すように、載置する記録用紙40の用紙長が長く且つセット枚数が多い時の状態を示す。
【0051】
図8及び
図10に示すように、補助引張スプリング53の伸び量が少ない状態から、
図9及び
図11に示すように、補助引張スプリング53の伸び量が多い状態までテールガイド70が移動すると、モーメントNsは、
図12(a)、(c)に示すより小さい状態から
図12(b)、(d)に示すより大きい状態に増加する。
【0052】
また
図8及び
図9に示すように、記録用紙40のセット枚数が少ない状態に対して
図10及び
図11に示すようにセット枚数がより多い状態では、載置される記録用紙40の重量が増えるためにモーメントNwは、
図12(a)、(b)に示すより小さい状態から同図(c)、(d)示すより大きい状態に増加し、更にピックアップローラ15とシートレシーブ51間が広がるため、メイン引張スプリング54の引張力Fmが増加してモーメントNmも増加する。
【0053】
従って、上式(2)によるモーメントNnは、用紙枚数の増加に伴って増加するモーメントNm、Nwと用紙長の増加に伴って増加するモーメントNsの総和となるため、給紙トレイ112に載置される記録用紙40のセット枚数、用紙長に応じて
図12に示すようにN1~N4と所定の範囲内で推移する。従って、シートレシーブ51によるピックアップローラ15へのレシーブ荷重Fnも後述するように所望の範囲内で過不足なく変化させることが可能となる。
【0054】
記録用紙40の用紙長が長くなると、定形紙の場合の重量の増加も想定されるが、この場合、両サイドガイド間の間隔が広がることによるモーメントNsの増加によって対応できる。一方、仮にレバー52がなくて押圧力Fsが発生しない場合、
図12に示すようにモーメントNnは減少し、レシーブ荷重Fnが弱くなる。
【0055】
本実施の形態の給紙装置によれば、メイン引張スプリング54のパラメータ(自由長、巻き数、線径等)を調整することで、記録用紙40のセット枚数に応じて変わる引張力Fmによるシートレシーブ51への影響を制御し、補助引張スプリング53のパラメータを調整することで、用紙長及び用紙幅に応じて変化する押圧力Fsやその作用位置によるシートレシーブ51への影響を制御することが可能となる。例えば、
図12に示すモーメントN1~N4は、メイン引張スプリング54及び補助引張スプリング53のパラメータを調整することで、所望の大きさに変更することができる。
【0056】
図13は、各スプリング53,54のパラメータを好ましい状態に調整した給紙装置において、A3とA6SEFの各用紙サイズの記録用紙40を、それぞれセット枚数(ここでは総厚みに換算して表している)を変えて載置した場合のレシーブ荷重Fnの測定結果をプロットしたグラフである。
【0057】
各スプリング53,54のパラメータを適性に調整することにより、同グラフに示すように、セット枚数を変えたA3とA6SEFの両記録用紙40を載置した場合においてそれぞれ発生するレシーブ荷重Fnを、重送が発生しないための上限である重送適正荷重リミットと、用紙不送りが発生しないための下限である不送り適正荷重リミットとの荷重範囲内で、それぞれ略一定に推移させることが可能となる。
【0058】
図14は、比較例としてレバー52を外した押圧力Fsを除いた状態で、A3、A4SEFとA6SEFの各用紙サイズの記録用紙40を、それぞれセット枚数(ここでは総厚みに換算して表している)を変えて載置した場合のレシーブ荷重Fnの測定結果をプロットしたグラフである。この場合、セット枚数の増加と共に、各用紙サイズでのレシーブ荷重Fnの差が大きくなる。
【0059】
このため、メイン引張スプリング54のパラメータを調整して、例えば、中間サイズのA4SEFの記録用紙40のレシーブ荷重Fnが適正荷重範囲内に収まる様にしても、A3の記録用紙40では、セット枚数の増加で不送り適正荷重リミット以下となり、A6SEFの記録用紙40では、セット枚数の増加で重送適正荷重リミットを超えてしまう。
【0060】
尚、ここでは、左側サイドガイド61及び右側サイドガイド62の両ガイド間の間隔、及びテールガイド70のガイド位置に応じてレシーブ荷重Fnを変える例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、テールガイド70のガイド位置のみに応じてレシーブ荷重Fnを変えてもよいなど、種々の態様を取り得るものである。
【0061】
以上のように、本実施の形態の給紙装置によれば、補助引張スプリング53とメイン引張スプリング54の各パラメータを適当に設定することにより、載置する記録用紙40のサイズ及びセット枚数に拘わらず、レシーブ荷重Fnを常に適正荷重範囲内に収めることが可能となる。
【0062】
また実施の形態の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」といった言葉を使用したが、これらは便宜上であって、給紙装置を配置する状態における絶対的な位置関係を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
上記した実施の形態では、本発明を、モノクロプリンタとしての画像形成装置に採用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、給紙装置を備える、複写機、ファクシミリ、MFP等の画像処理装置にも利用可能である。またモノクロプリンタについて説明したが、カラープリンタであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 画像形成装置、 11 画像形成部、 12 給紙トレイ、 15 ピックアップローラ、 16 給紙ローラ、 17 分離ローラ、 18 搬送ローラ対、 19 レジストローラ対、 20 搬送ローラ対、 21 排出ローラ、 22 スタッカ部、 30 イメージドラム、 31 転写ローラ、 32 定着器、 33 加熱ローラ、 34 加圧ローラ、 35 給紙部、 36 用紙センサ、 37 用紙センサ、 40 記録用紙、 51 シートレシーブ、 51a 回動軸、 51b 先端部、 51c 第1のガイド長孔、 52 レバー、 52a 回動軸、 52b 短腕部、 52c 長腕部、 52d ポスト、53 補助引張スプリング、 54 メイン引張スプリング、 61 左側サイドガイド、 61a ガイド部、 61b 基底部、 61c 第2のガイド長孔、 62 右側サイドガイド、 70 テールガイド、 112 給紙トレイ。