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特開2024-39722弁遠隔操作装置、および原子力プラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039722
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】弁遠隔操作装置、および原子力プラント
(51)【国際特許分類】
   F15B 20/00 20060101AFI20240315BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20240315BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20240315BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F15B20/00 G
F15B11/02 F
G21C13/00 200
G21D1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144303
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種村 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 賢司
(72)【発明者】
【氏名】石田 和也
【テーマコード(参考)】
3H082
3H089
【Fターム(参考)】
3H082AA30
3H082BB22
3H082CC01
3H082DA06
3H082DA13
3H082DA22
3H082DA34
3H082DA35
3H082DA46
3H082EE20
3H089AA72
3H089BB28
3H089CC01
3H089DA16
3H089DB03
3H089DB44
3H089DB45
3H089DB86
3H089GG01
3H089JJ20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】1つの予備操作部の操作によって複数の操作対象弁を遠隔操作することが可能な弁遠隔操作装置を提供する。
【解決手段】主要操作部によって操作される複数の操作対象弁10を、予備操作部によって遠隔操作するための弁遠隔操作装置100であって、前記予備操作部として用いられ作動流体を循環させるための加圧ポンプと、前記各操作対象弁に対応して設けられたもので、前記作動流体の循環方向に対応する方向に回転して前記操作対象弁を開閉する複数のロッド回転シリンダ105と、前記加圧ポンプ101と前記複数のロッド回転シリンダとの間で、前記作動流体を循環させるための配管102s,102rとを備えた弁遠隔操作装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要操作部によって操作される複数の操作対象弁を、予備操作部によって遠隔操作するための弁遠隔操作装置であって、
前記予備操作部として用いられ作動流体を循環させるための加圧ポンプと、
前記各操作対象弁に対応して設けられたもので、前記作動流体の循環方向に対応する方向に回転して前記操作対象弁を開閉する複数のロッド回転シリンダと、
前記加圧ポンプと前記複数のロッド回転シリンダとの間で、前記作動流体を循環させるための配管とを備えた
弁遠隔操作装置。
【請求項2】
前記配管は、前記加圧ポンプから前記複数のロッド回転シリンダに掛けて複数に分岐して設けられ、前記複数のロッド回転シリンダに対して前記作動流体を分配して循環させる
請求項1に記載の弁遠隔操作装置。
【請求項3】
前記配管は、前記加圧ポンプから前記作動流体を送り出す供給ラインと、前記加圧ポンプに前記作動流体を送り返す戻りラインと、前記供給ラインと前記戻りラインとに接続され前記各ロッド回転シリンダに対して前記作動流体を循環させるための循環ラインと備え、
前記循環ラインに対する前記供給ラインおよび前記戻りラインの接続を切り替えることで、前記各ロッド回転シリンダに対する前記作動流体の循環方向を逆転させるための三方弁を有する
請求項1に記載の弁遠隔操作装置。
【請求項4】
前記三方弁は、手動によって駆動されるボール弁である
請求項3に記載の弁遠隔操作装置。
【請求項5】
前記作動流体は非圧縮性流体である
請求項1に記載の弁遠隔操作装置。
【請求項6】
前記配管は、前記加圧ポンプから前記作動流体を送り出す供給ラインと、前記加圧ポンプに前記作動流体を送り返す戻りラインと、前記供給ラインと前記戻りラインとに接続され前記各ロッド回転シリンダに対して前記作動流体を循環させるための循環ラインと備え、
前記供給ラインおよび前記戻りラインと、前記循環ラインとの各接続部に開閉弁を有する
請求項1に記載の弁遠隔操作装置。
【請求項7】
前記配管には、一定圧力で開く逃がし弁が設けられた
請求項1に記載の弁遠隔操作装置。
【請求項8】
前記配管は、前記加圧ポンプから前記作動流体を送り出す供給ラインと、前記加圧ポンプに前記作動流体を送り返す戻りラインと、前記供給ラインと前記戻りラインとに接続され前記各ロッド回転シリンダに対して前記作動流体を循環させるための循環ラインと備え、
前記逃がし弁は、前記循環ラインにおける前記ロッド回転シリンダの前後に設けられている
請求項7に記載の弁遠隔操作装置。
【請求項9】
前記加圧ポンプは、手動ポンプである
請求項1に記載の弁遠隔操作装置。
【請求項10】
請求項1~9のうちの何れか1項に記載の弁遠隔操作装置と、
原子炉格納容器と、
フィルタベント装置と、
原子炉格納容器とフィルタベント装置とを連通する接続配管と、
前記接続配管を開閉するための隔離弁とを備え、
前記隔離弁を、前記弁遠隔操作装置によって遠隔操作される前記操作対象弁とした
原子力プラント。
【請求項11】
前記弁遠隔操作装置の一部は、前記原子炉格納容器に対して隔離壁によって隔離されている
請求項10に記載の原子力プラント。
【請求項12】
前記加圧ポンプは、前記原子炉格納容器に対して隔離壁によって隔離されている
請求項10に記載の原子力プラント。
【請求項13】
前記操作対象弁である前記隔離弁は、前記ロッド回転シリンダの回転運動を予備トルク源とした電動弁である
請求項10に記載の原子力プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁遠隔操作装置、および原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
管材の開閉弁を遠隔で開閉操作する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、「弁を開閉するアクチュエータと、主要操作源により駆動されアクチュエータにトルクを入力する主要トルク入力手段と、主要操作源が失われた際に利用可能な予備操作源により駆動されフレキシブルシャフトを介してアクチュエータにトルクを入力する予備トルク入力手段とを備え、アクチュエータは、主要トルク入力手段と予備トルク入力手段との間で自動的に入力を切り替えるオートデクラッチ機構を備える」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-118995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、操作対象弁に対して1対1で予備トルク入力手段を設ける必要がある。したがって、操作対象弁が複数の場合、操作対象弁の数に対応する複数の予備備トルク入力手段を操作しなければならず、緊急時の迅速な対応が困難であった。
【0005】
そこで本発明は、1つの予備操作部の操作によって複数の操作対象弁を遠隔操作することが可能な弁遠隔操作装置、およびこの弁遠隔操作装置を備えた原子力プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、主要操作部によって操作される複数の操作対象弁を、予備操作部によって遠隔操作するための弁遠隔操作装置であって、前記予備操作部として用いられ作動流体を循環させるための加圧ポンプと、前記各操作対象弁に対応して設けられたもので、前記作動流体の循環方向に対応する方向に回転して前記操作対象弁を開閉する複数のロッド回転シリンダと、前記加圧ポンプと前記複数のロッド回転シリンダとの間で、前記作動流体を循環させるための配管とを備えた弁遠隔操作装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1つの予備操作部の操作によって複数の操作対象弁を遠隔操作することが可能な弁遠隔操作装置、およびこの弁遠隔操作装置を備えた原子力プラントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る弁遠隔操作装置の構成図である。
図2】実施形態に係る弁遠隔操作装置の動作を説明する図である。
図3】実施形態に係る原子力プラントの構成図である。
図4】実施形態に係る弁遠隔操作装置による隔離弁の遠隔操作(その1)を説明するための図である。
図5】実施形態に係る弁遠隔操作装置による隔離弁の遠隔操作(その2)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、弁遠隔操作装置、弁遠隔操作方法、および原子力プラントの順に、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態で用いる各図においては、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明の一部は省略する場合もある。
【0010】
≪弁遠隔操作装置100≫
図1は、実施形態に係る弁遠隔操作装置100の構成図である。図1に示す弁遠隔操作装置100は、操作対象となる複数の操作対象弁10を遠隔で操作するためのものであり、流体圧を用いた手動による弁遠隔操作装置100である。
【0011】
操作対象弁10は、例えば原子力プラントの電源喪失時において、原子力プラントに設けられた隔離弁である。なお、図1においては、2つの操作対象弁10を図示したが、操作対象弁10は3つ以上の複数であってもよい。また、この弁遠隔操作装置100によって遠隔操作される操作対象弁10は、2つのトルク入力端の何れか一方から入力されるトルクによって開閉する。このうち一方のトルク入力端に対しては、主要操作部である交流電源によって駆動されるモーターからトルク入力される。また、他方のトルク入力端に対しては、次に説明する弁遠隔操作装置100からトルク入力される。各操作対象弁10において、弁遠隔操作装置100からトルク入力される入力端は、例えば弁ハンドルであるかまたは駆動部内部の動力伝達用ギアである。
【0012】
このような弁遠隔操作装置100は、加圧ポンプ101、作動流体供給ライン102s、作動流体戻りライン102r、作動流体分岐機構103、第1循環ライン104a、第2循環ライン104b、およびロッド回転シリンダ105を備える。この弁遠隔操作装置100は、手動によって駆動されるものである。以下、弁遠隔操作装置100を構成する各部を説明する。
【0013】
<加圧ポンプ101>
加圧ポンプ101は、作動流体[F]を循環させるためのポンプであり、複数の操作対象弁10を一度に操作するための予備操作部である。この加圧ポンプ101は、持ち運びが可能なポータブル加圧ポンプであってもよく、手動ポンプであるか、または手動と電動との切り替えが可能なものであってもよい。電動の場合には、携帯型の予備電源を用いての駆動が可能なものであることとする。また加圧ポンプ101で循環させる作動流体[F]は、例えば油、水などの非圧縮性流体であり、リン酸エステル系材料を用いることが好ましい。リン酸エステル系材料は、引火点が230℃以上であるため、これを作動流体[F]に用いることにより、作動流体[F]が漏えいした場合の発火を抑えることができる。作動流体[F]として作動油を用いる場合であれば、加圧ポンプ101は油圧ポンプが用いられる。
【0014】
<作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102r>
作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rは、加圧ポンプ101と各ロッド回転シリンダ105との間で、作動流体[F]を循環させるための配管の一部である。これらの作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rは、加圧ポンプ101に接続された高耐圧ホースである。このうち作動流体供給ライン102sは、加圧ポンプ101から作動流体分岐機構103に作動流体[F]を送り出す。また作動流体戻りライン102rは、作動流体分岐機構103から加圧ポンプ101に作動流体[F]を送り返す。この作動流体戻りライン102rには、逆止弁102rvが設けている。以上のような作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rは、次に説明する作動流体分岐機構103内において、複数に分岐した構成となっている。
【0015】
このような作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rは、シリコーンゴムによって構成された高耐圧ホースを用いることが好ましい。シリコーンゴムは、200℃の耐熱性と100kGyの耐放射性を有するため、例えば原子力プラントの事故発生時の過酷条件下においての機能維持が期待される。
【0016】
<作動流体分岐機構103>
作動流体分岐機構103は、加圧ポンプ101によって循環する作動流体[F]を、複数の操作対象弁10のそれぞれに分配して循環させるための機構である。この作動流体分岐機構103は、作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rと、第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bとの間に配置され、各操作対象弁10に対応して設けられた複数の弁ユニット103uを有する。各弁ユニット103uは、作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rに対して並列に接続されており、作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rから分岐した各分岐ラインが、各弁ユニット103uに接続された状態となっている。
【0017】
各弁ユニット103uは、第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31b、第1分岐管32aおよび第2分岐管32b、第1三方弁33aおよび第2三方弁33bを備えている。以下、これらを順に説明する。
【0018】
[第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31b]
第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bは、作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rと、第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bとの間の接続を制御するためのものである。これらの第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bは手動止め弁で構成する。このうち第1開閉弁31aは、作動流体供給ライン102sに設けられており、作動流体供給ライン102sを開閉する。また第2開閉弁31bは、作動流体戻りライン102rに設けられ、作動流体戻りライン102rを開閉する。
【0019】
これらの第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bは、各操作対象弁10を開閉させるロッド回転シリンダ105への作動流体[F]の循環供給を制御することを可能としている。
【0020】
[第1分岐管32aおよび第2分岐管32b]
第1分岐管32aおよび第2分岐管32bは、加圧ポンプ101と各ロッド回転シリンダ105との間で、作動流体[F]を循環させるための配管の一部である。これらの第1分岐管32aおよび第2分岐管32bは、第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bを介して作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rに接続された高耐圧ホースである。
【0021】
このうち第1分岐管32aは、第1開閉弁31a側の基端部から先端部に向かって2またに分岐し、分岐した先端側が第1三方弁33aと第2三方弁33bとに接続された状態となっている。また、第2分岐管32bは、第2開閉弁31b側の基端部から先端部に向かって2又に分岐し、分岐した各先端側が第1三方弁33aと第2三方弁33bとに接続された状態となっている。これらの第1分岐管32aおよび第2分岐管32bは、シリコーンゴムによって構成された高耐圧ホースによって構成されていることが好ましい。
【0022】
[第1三方弁33aおよび第2三方弁33b]
第1三方弁33aおよび第2三方弁33bは、第1分岐管32aおよび第2分岐管32bと、第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bに接続されている。これらの第1三方弁33aおよび第2三方弁33bは、手動によって駆動されるボール弁で構成する。このうち第1三方弁33aは、第1分岐管32aの分岐した先端側の一方と、第2分岐管32bの分岐した先端側の一方と、第1循環ライン104aとに接続され、これらのうちの2つを接続状態とする。また第2三方弁33bは、第1分岐管32aの分岐した先端側の他方と、第2分岐管32bの分岐した先端側の他方と、第2循環ライン104bとに接続され、これらのうちの2つを接続状態とする。
【0023】
これらの第1三方弁33aおよび第2三方弁33bは、以降に説明するロッド回転シリンダ105への作動流体[F]の循環方向を逆転させ、ロッド回転シリンダ105の回転運動の正転、逆転の切り替えを可能としている。
【0024】
<第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104b>
第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bは、加圧ポンプ101と各ロッド回転シリンダ105との間で、作動流体[F]を循環させるための配管の一部である。これらの第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bは、各弁ユニット103uに対して設けられ、次に説明するロッド回転シリンダ105に対して作動流体[F]を循環供給するための高耐圧ホースである。
【0025】
このうち第1循環ライン104aは、基端側が第1三方弁33aに接続され、第2循環ライン104bは、基端側が第2三方弁33bに接続された状態で設けられている。これらの第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bは、先端側において相互に接続され、一連の管体として構成されている。これにより、第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bを循環する作動流体[F]は、第1三方弁33aおよび第2三方弁33bの制御により循環方向が逆転する構成となっている。このような第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bは、シリコーンゴムによって構成された高耐圧ホースによって構成されていることが好ましい。
【0026】
また第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bは、それぞれに逃がし弁104sが設けられている。逃がし弁104sは、所定圧力を超えた場合に開状態となる弁であり、ロッド回転シリンダ105の前後でロッド回転シリンダを挟んだ位置に設けられている。このような各逃がし弁104sは、排出ライン104eに接続されている。これにより、第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bの何れかが過圧状態となって内部が所定圧力を超えた場合に、逃がし弁104sを介して第1循環ライン104aまたは第2循環ライン104b内の作動流体[F]が、排出ライン104eから排出される構成となっている。
【0027】
<ロッド回転シリンダ105>
ロッド回転シリンダ105は、循環する作動流体[F]の流体圧を回転運動に変換するものであり、作動流体[F]の循環方向によって回転方向が制御される。このようなロッド回転シリンダ105は、各操作対象弁10におけるトルクの入力端10hである、弁ハンドルまたは操作対象弁10の駆動部内部の動力伝達用ギアに結合させるように設けられる。これにより、ロッド回転シリンダ105で発生させた回転運動を操作対象弁10に伝達し、操作対象弁10の開閉操作を可能とする。
【0028】
またロッド回転シリンダ105は、操作対象弁10と弁ユニット103uとに対して1:1で設けられており、弁ユニット103uから引き出された第1循環ライン104aと第2循環ライン104bとが、ロッド回転シリンダ105内において連通された状態となっている。このように設置されたロッド回転シリンダ105は、作動流体[F]の循環方向が、第1循環ライン104aから第2循環ライン104bに向かっている場合に操作対象弁10を開き、逆方向の場合に操作対象弁10を閉じるように、操作対象弁10に対して連結されていることとする。
【0029】
≪弁遠隔操作方法-1≫
次に、上述した弁遠隔操作装置100による操作対象弁10の遠隔操作の手順として、操作対象弁10の開閉のための操作を説明する。なお、この遠隔操作方法は、弁遠隔操作装置100を構成する各弁の操作を手動によって実施するものとする。
【0030】
<操作対象弁10の開閉状態の指定>
先ず、作業者は、複数の操作対象弁10のそれぞれを、開状態とするか閉状態とするかの指示を、第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31b、第1分岐管32aおよび第2分岐管32b、第1三方弁33aおよび第2三方弁33bの開閉切り替えにより行う。ここで、作業者は、第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31b、第1分岐管32aおよび第2分岐管32b、第1三方弁33aおよび第2三方弁33bの開閉切替を手動操作により、複数の操作対象弁10のうちの幾つかの操作対象弁10’を開状態とし、他の操作対象弁10”を閉状態に指定したと仮定する。
【0031】
<操作対象弁10’を開状態とする制御>
以上のような第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31b、第1分岐管32aおよび第2分岐管32b、第1三方弁33aおよび第2三方弁33bの開閉切替を手動操作により、開状態に指定された操作対象弁10’に対応する弁ユニット103u’を以下のように制御する。
【0032】
弁ユニット103u’の第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bの両方ともを手動操作により開状態とする。なお、第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bがもともと開状態であれば、この操作は省略される。
【0033】
また、弁ユニット103u’の第1三方弁33aによって第1分岐管32aと第1循環ライン104aとを接続状態とし、第2三方弁33bによって第2分岐管32bと第2循環ライン104bとを接続状態とする。なお、第1三方弁33aおよび第2三方弁33bの操作は、手動にて実施してもよく、この場合において第1三方弁33aおよび第2三方弁33bが、もともとこのような状態であれば、この操作は省略される。
【0034】
<操作対象弁10”を閉状態とする制御>
一方、以上のような第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31b、第1分岐管32aおよび第2分岐管32b、第1三方弁33aおよび第2三方弁33bの開閉切替を手動操作により、閉状態に指定された操作対象弁10”に対応する弁ユニット103u”を以下のように制御する。
【0035】
弁ユニット103u”の第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bの両方ともを開状態とする。なお、第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bの操作は手動にて実施してもよく、この場合において第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bがもともと開状態であれば、この操作は省略される。
【0036】
また、弁ユニット103u”の第1三方弁33aによって第2分岐管32bと第1循環ライン104aとを接続状態とし、第2三方弁33bによって第1分岐管32aと第2循環ライン104bとを接続状態とする。なお、第1三方弁33aおよび第2三方弁33bが、もともとこのような状態であれば、この操作は省略される。
【0037】
<加圧ポンプ101の操作>
以上のような制御の後、作業員は、予備操作部である加圧ポンプ101を操作する。加圧ポンプ101がポータブル加圧ポンプの場合、加圧ポンプ101を作動流体供給ライン102sおよび作動流体戻りライン102rに接続して加圧ポンプ101を動作させる。加圧ポンプ101の操作は、手動にて実施するか、または予備電源を用いて電動にて実施する。
【0038】
<弁遠隔操作装置100の動作>
以上により、作動流体[F]は、図中の矢印に示すように、作動流体供給ライン102sから作動流体分岐機構103に供給される。そして、開状態に指定された操作対象弁10’に連結されたロッド回転シリンダ105’と、閉状態に指定された操作対象弁10”に連結されたロッド回転シリンダ105”とが、以下のように動作する。
【0039】
[操作対象弁10’の開動作]
すなわち、開状態に指定された操作対象弁10’に対応する弁ユニット103u’において、作動流体[F]は、図中の矢印に示すように、第1開閉弁31aおよび第1三方弁33aを介して第1循環ライン104aに供給され、第1循環ライン104aから第2循環ライン104bに向かって流れる。さらに、作動流体[F]は、第2循環ライン104bから、第2三方弁33bおよび第2開閉弁31bを介して作動流体戻りライン102rに向かって流れ、作動流体戻りライン102rから加圧ポンプ101に戻される。
【0040】
そして、以上のような第1循環ライン104aから第2循環ライン104bへの作動流体[F]の流れにより、ロッド回転シリンダ105’が操作対象弁10’を開く方向に回転(正転)し、操作対象弁10’が開かれる。
【0041】
[操作対象弁10”の閉動作]
一方、閉状態に指定された操作対象弁10”に対応する弁ユニット103u”において、作動流体[F]は、図中の矢印に示すように、第1開閉弁31aおよび第2三方弁33bを介して第2循環ライン104bに供給され、第2循環ライン104bから第1循環ライン104aに向かって流れる。さらに、作動流体[F]は、第1循環ライン104aから、第1三方弁33aおよび第2開閉弁31bを介して作動流体戻りライン102rに向かって流れ、作動流体戻りライン102rから加圧ポンプ101に戻される。
【0042】
そして、以上のような第2循環ライン104bから第1循環ライン104aへの作動流体[F]の流れにより、ロッド回転シリンダ105”が操作対象弁10”を閉じる方向に回転(逆転)し、操作対象弁10”が閉じられる。
【0043】
[過圧状態による排油動作]
図2は、実施形態に係る弁遠隔操作装置100の動作を説明する図であり、第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bに設けた逃がし弁104sの動作を説明する図である。次に、図2に基づいて、弁遠隔操作装置100のライン内が過圧状態となった場合の排油動作を説明する。
【0044】
上述した遠隔操作により、操作対象弁10は、それぞれのタイミングで全開状態または全閉状態となる。この場合、前回状態または全閉状態となった操作対象弁10の入力端10hはロックされる。これにより、ロック状態となった入力端10hに連結されたロッド回転シリンダ105の駆動によって入力端10hに過トルクが生じる。そして、入力端10hの抵抗によりロッド回転シリンダ105の回転運動が止まることで、ロッド回転シリンダ105に供給される作動流体[F]は逃げ場を失う。これにより、第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bのうちの作動流体[F]の供給側(図示した例では第1循環ライン104a)のライン内が昇圧する。
【0045】
そして、第1循環ライン104a内の圧力が所定圧力を超えた場合に、第1循環ライン104aに設けられた逃がし弁104sが開状態となり、第1循環ライン104a内の作動流体[F]が排出ライン104eから排出される。これにより、第1循環ライン104a内の過圧状態が解消され、ロッド回転シリンダ105に供給される作動流体[F]の昇圧、操作対象弁10の入力端10hへの過トルクが防止される。
【0046】
≪弁遠隔操作方法-2≫
次に、上述した弁遠隔操作装置100による操作対象弁10の遠隔操作の手順として、操作対象弁10の全開および全閉の確認の手順を、図1および図2に基づいて説明する。この手順は、上述のように操作対象弁10の開閉のための操作を実施してから所定の時間が経過した後に実施される。ここで所定の時間とは、例えば弁ユニット103uを制御した状態で加圧ポンプ101を操作してから操作対象弁10が全開状態となるか、または全閉状態となるのに十分な時間であることとする。
【0047】
この場合、作業者は、上記時間が経過した後、1つの操作対象弁10を残して、その他の操作対象弁10に対応する弁ユニット103uの第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bを閉じる。
【0048】
これにより、対応する弁ユニット103uの第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bを閉じ、1つの弁ユニット103uから延設された第1循環ライン104aおよび第2循環ライン104bのみに、作動流体[F]を循環させる。
【0049】
この操作により、上記の1つの弁ユニット103uに対応する操作対象弁10が、全開状態または全閉状態となっている場合には、操作対象弁10の入力端10hがロックされて過トルクが生じる。そして、上記の1つの操作対象弁10に対応するロッド回転シリンダ105に供給される作動流体[F]が、上述した過圧状態による排油動作で説明したように排出ライン104eから排出される。このため、作業員は、排出ライン104eからの作動流体[F]の排出により、上記の1つの操作対象弁10が全開態または全閉状態となっていることを確認することができる。
【0050】
≪原子力プラント≫
図3は、実施形態に係る原子力プラント1の構成図であって、先に説明した弁遠隔操作装置100を備えたものである。この図に示す原子力プラント1は、原子炉圧力容器11、原子炉圧力容器11を収容する原子炉格納容器12、さらに原子炉格納容器12を収容する原子炉建屋13を有するものである。また、原子力プラント1は、フィルタベント装置14、フィルタベント装置14に接続された接続配管15、接続配管15に設けられた隔離弁10a、および弁遠隔操作装置100を備える。
【0051】
<フィルタベント装置14>
フィルタベント装置14は、原子炉圧力容器11の炉心損傷の発生が避けられない事故において、原子炉格納容器12の過圧破損防止対策として設置される。このフィルタベント装置14は、原子炉建屋13の外に配置され、接続配管15を介して原子炉格納容器12から流入した気体を、フィルタを通じて大気放出することにより、大気中への放射性物質の放出を防止する。原子炉格納容器12からフィルタベント装置14への気体の導入は、以降に説明する接続配管15に設けた隔離弁10aの操作によって実施される。
【0052】
<接続配管15>
接続配管15は、原子炉建屋13内の原子炉格納容器12と原子炉建屋13外のフィルタベント装置14とを接続するものである。接続配管15は、例えば原子炉格納容器12の複数個所に接続され、原子炉建屋13内において統合され、原子炉建屋13外に引き出されてフィルタベント装置14に接続されている。
【0053】
<隔離弁10a>
隔離弁10aは、先に説明した弁遠隔操作装置100によって遠隔操作される操作対象弁である。このため、隔離弁10aのここでの詳細な説明は省略する。この隔離弁10aは、接続配管15に対して設けられ、原子炉格納容器12とフィルタベント装置14との間において、接続配管15を開閉自在としている。図示した構成において、隔離弁10aは、接続配管15が複数に分岐した各分岐部分において、原子炉格納容器12側の一次隔離弁10a-1と、フィルタベント装置14側の二次隔離弁10a-2との2段階に配置される。なお、接続配管15の分岐部分は、一次隔離弁10a-1と二次隔離弁10a-2との間で接続された構成となっている。
【0054】
これにより、全ての隔離弁10aが開かなくても、2つの一次隔離弁10a-1のうちの一方のみが開状態となり、2つの二次隔離弁10a-2のうちの一方のみが開状態となることで、原子炉圧力容器11とフィルタベント装置14との間を連通させることが可能な構成となっている。
【0055】
このような隔離弁10aは、通常運転時において、原子炉格納容器12とフィルタベント装置14との間の接続を遮断するように設定され、例えば全てが閉状態として用いられ、フィルタベント装置14からの気体放出はない。
【0056】
<弁遠隔操作装置100>
弁遠隔操作装置100は、原子力プラント1の電源喪失時において隔離弁10aを遠隔で操作するためのものであり、先に説明した構成のものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。原子力プラント1において、この弁遠隔操作装置100の一部は、原子炉建屋13内において遮蔽壁で仕切られた遮蔽エリア13a内に配置され、手動操作における作業員の安全性が確保される構成となっている。
【0057】
したがって、弁遠隔操作装置100のうちの、加圧ポンプ101、および作動流体分岐機構103は、遮蔽エリア13a内に配置されていることとする。なお、ここでの図示は省略したが、逃がし弁104s(図1および図2参照)は、遮蔽エリア13a内および遮蔽エリア13a外の何れに設けられてもよい。
【0058】
また、原子力プラント1に設けられた弁遠隔操作装置100において、第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31b(図1参照)は、通常運転時においては、閉状態としておくことが好ましい。これにより、隔離弁10aを開閉するためのロッド回転シリンダ105への作動流体[F]の循環供給が停止され、通常運転時における加圧ポンプ101の誤作動が隔離弁10aに対して影響を及ぼすこと防止できる。
【0059】
また、原子力プラント1に設けられた弁遠隔操作装置100において、第1三方弁33aおよび第2三方弁33b(図1参照)は、通常運転時においてはいずれの接続状態であってもよい。ただし、通常運転時の状態から、フィルタベント装置14からの気体放出時の状態に素早く切り替えるためには、第1三方弁33aは、第1分岐管32aと第1循環ライン104aとを接続状態とし、第2三方弁33bは、第2分岐管32bと第2循環ライン104bとを接続状態としておくことが好ましい。
【0060】
<隔離弁10aを開とする遠隔操作(フィルタベント装置14からの気体放出時)>
図4は、実施形態に係る弁遠隔操作装置100による隔離弁10aの遠隔操作(その1)を説明するための図であり、通常運転時の状態から隔離弁10aを開くための遠隔操作を説明するための図である。この遠隔操作は、原子炉格納容器12の過圧破損が予測される場合に、隔離弁10aを開くことにより原子炉格納容器12とフィルタベント装置14とを連通させる場合に実施する。
【0061】
この場合、全ての隔離弁10aのうち、例えば少なくとも各1つの一次隔離弁10a-1と二次隔離弁10a-2(図3参照)とを開状態とする。また、全ての隔離弁10aを開状態とするように指定してもよい。これにより、先の弁遠隔操作方法で説明したように、操作対象弁である隔離弁10aのうち、開状態に指定された隔離弁10aが開状態となり、原子炉格納容器12とフィルタベント装置14とが、接続配管15によって連通する。そして、原子炉格納容器12から接続配管15に流入した気体[G]を、図中の白抜きの矢印で示したように、フィルタベント装置14から放出することが可能となる。
【0062】
なお、以上の遠隔操作において、開状態に指定されない隔離弁10aが有る場合、これらの隔離弁10aに対応する弁ユニット103uの第1開閉弁31aおよび第2開閉弁31bは、閉状態であることとする。
【0063】
<隔離弁10aを閉とする遠隔操作>
図5は、実施形態に係る弁遠隔操作装置100による隔離弁の遠隔操作(その2)を説明するための図であり、開いた状態にある隔離弁10aを閉じるための遠隔操作を説明するための図である。
【0064】
この場合、作業員は、例えば全ての隔離弁10aを閉状態とする。これにより、先の弁遠隔操作方法で説明したように、操作対象弁である隔離弁10aのうち、閉状態となるように指定された隔離弁10aが開状態となり、原子炉格納容器12とフィルタベント装置14との間の接続配管15を遮断することができる。
【0065】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、予備操作部である1つの加圧ポンプ101の操作によって、複数の操作対象弁10を操作することが可能である。作動流体[F]の配管の各分岐部分に第1三方弁33aおよび第2三方弁33bを設けてロッド回転シリンダ105に対する作動流体[F]の循環方向を切り替え可能としたことにより、1つの予備操作部である加圧ポンプ101の操作のみで、複数の操作対象弁を同時または個別に遠隔で開閉操作することが可能である。この結果、弁遠隔操作装置100の導入コストの削減、および操作に必要な人数の削減を図ることが可能である。
【0066】
しかも、非圧縮性流体である作動流体[F]の流体圧による操作であるため駆動力損失が小さいため、遠隔操作可能な距離の制約が小さく、また応答速度の高い操作が可能である。
【0067】
なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…原子力プラント
10,10’,10”…操作対象弁
10a…隔離弁(操作対象弁)
10a-1…一次隔離弁(操作対象弁)
10a-2…二次隔離弁(操作対象弁)
12…原子炉格納容器
13a…遮蔽エリア
14…フィルタベント装置
15…接続配管
31a…第1開閉弁
31b…第2開閉弁
32a…第1分岐管
32b…第2分岐管
33a…第1三方弁
33b…第2三方弁
100…弁遠隔操作装置
101…加圧ポンプ
102r…作動流体戻りライン
102s…作動流体供給ライン
103u,103u’,103u”…弁ユニット
104a…第1循環ライン
104b…第2循環ライン
104s…逃がし弁
105,105’,105”…ロッド回転シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5