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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039727
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/56 20060101AFI20240315BHJP
   G11C 16/04 20060101ALI20240315BHJP
   G11C 16/34 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G11C11/56 210
G11C16/04 170
G11C16/34 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144308
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176599
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100205095
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 啓一
(74)【代理人】
【識別番号】100208775
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 雅章
(72)【発明者】
【氏名】平井 竜太
(72)【発明者】
【氏名】椎野 泰洋
【テーマコード(参考)】
5B225
【Fターム(参考)】
5B225BA01
5B225BA19
5B225CA01
5B225DB02
5B225DB08
5B225EA05
5B225FA01
5B225FA02
(57)【要約】
【課題】本発明の一実施形態では、信頼性を向上できる半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置は、複数のメモリセルトランジスタの集合であるセルユニットを含むブロックが設けられた不揮発性メモリと、前記ブロックに対する消去動作及び前記セルユニットに対する予備書き込み動作の少なくとも一方を行った後の前記セルユニットの特性をモニタし、前記セルユニットの特性に応じて前記セルユニットを分類するコントローラと、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリセルトランジスタの集合であるセルユニットを含むブロックが設けられた不揮発性メモリと、
前記ブロックに対する消去動作及び前記セルユニットに対する予備書き込み動作の少なくとも一方を行った後の前記セルユニットの特性をモニタし、前記セルユニットの特性に応じて前記セルユニットを分類するコントローラと、
を備える半導体記憶装置。
【請求項2】
前記セルユニットの特性は、前記複数のメモリセルトランジスタの閾値電圧分布幅、又は前記複数のメモリセルトランジスタの閾値電圧分布幅の中央値である請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記セルユニットの特性は、前記複数のメモリセルトランジスタの劣化具合と関連する請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記分類に応じて前記セルユニットに対する書き込み動作を制御する請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記書き込み動作は、プログラム動作と前記プログラム動作の後に行われるベリファイ動作の組み合わせを繰り返して行うループの動作であり、
前記ループの動作において前記ベリファイ動作を行う回数は、前記コントローラにより、前記分類に応じて制御される請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記コントローラが、前記分類から前記メモリセルトランジスタの劣化具合が低いと判断した場合、前記ループの動作において前記ベリファイ動作を行う回数はゼロである請求項5に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記ループの動作において前記ベリファイ動作を行う回数は、前記メモリセルトランジスタの劣化具合が高いほど多い請求項5に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記コントローラが、前記分類から、前記ブロックがバッドブロックであると判断した場合、前記ブロックに対する前記書き込み動作は行われない請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記書き込み動作はプログラム動作と前記プログラム動作の後に行われるベリファイ動作の組み合わせを繰り返して行うループの動作を含み、
前記コントローラは、前記プログラム動作において、前記セルユニットに共通して接続されるワード線に印加するプログラム電圧を変更する請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記予備書き込み動作は、前記書き込み動作が行われる前に行われる請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記消去動作後の前記メモリセルトランジスタの閾値電圧分布幅は、前記劣化具合が高いほど広い、
請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記ループの動作の回数は、前記劣化具合が高いほど少ない、
請求項5に記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記セルユニットの特徴量が入力され、前記セルユニットの分類を出力する人工知能を備える請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項14】
前記セルユニットの特性は、不規則で複雑な形状のメモリセルトランジスタの閾値電圧分布幅である請求項13に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体記憶装置としての不揮発性メモリが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5364750号公報
【特許文献2】特開2013-122793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態では、信頼性を向上できる半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る半導体記憶装置は、複数のメモリセルトランジスタの集合であるセルユニットを含むブロックが設けられた不揮発性メモリと、前記ブロックに対する消去動作及び前記セルユニットに対する予備書き込み動作の少なくとも一方を行った後の前記セルユニットの特性をモニタし、前記セルユニットの特性に応じて前記セルユニットを分類するコントローラと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係るメモリシステムの構成を表すブロック図。
図2】第1実施形態に係る不揮発性メモリの構成を表すブロック図。
図3】第1実施形態に係るブロックの構成を表す回路図。
図4】第1実施形態に係る不揮発性メモリの閾値電圧分布と読み出し電圧との関係を示すダイアグラム。
図5】標準書き込み動作における、ループ回数とプログラム動作およびベリファイ動作との関係を示すダイアグラム。
図6】標準書き込み動作におけるプログラム動作とベリファイ動作のタイミングを示す図。
図7】第1実施形態に係る消去動作及び書き込み動作のフローチャート。
図8】第1実施形態に係る不揮発性メモリの閾値電圧分布の模式図。
図9】第1実施形態に係る劣化具合管理テーブルを表す図。
図10】第1実施形態に係る各分類とパラメータの対応関係を表すテーブル。
図11】第1状態に基づく書き込み動作におけるプログラム動作のタイミングを示す図。
図12】第2状態に基づく書き込み動作時におけるプログラム動作及びベリファイ動作との関係を示すダイアグラム。
図13】第2状態に基づく書き込み動作時におけるプログラム動作及びベリファイ動作のタイミングを示す図。
図14】第3状態に基づく書き込み動作におけるプログラム動作及びベリファイ動作との関係を示すダイアグラム。
図15】第3状態に基づく書き込み動作におけるプログラム動作及びベリファイ動作のタイミングを示す図。
図16】第1実施形態の変形例に係る書き込み動作のフローチャート。
図17】第1実施形態の変形例に係る不揮発性メモリの閾値電圧分布の模式図。
図18】第2実施形態に係るメモリシステムの構成を表すブロック図。
図19】第2実施形態に係る書き込み動作のフローチャート。
図20】第2実施形態に係る不揮発性メモリの閾値電圧分布の模式図。
図21】第2実施形態に係る不揮発性メモリの閾値電圧分布の異なる模式図。
図22】第2実施形態に係る不揮発性メモリの閾値電圧分布のさらに異なる模式図。
図23】変形例に係る各分類とパラメータの対応関係を表すテーブル。
図24】変形例に係る書き込み動作におけるプログラム動作とベリファイ動作とのタイミングを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1に示すように、メモリシステム1は、不揮発性メモリ100及びコントローラ200を含む。メモリシステム1は、ホスト2により制御される。なお、メモリシステム1は半導体記憶装置の一例である。また、不揮発性メモリ100は半導体記憶装置の一例である。
【0009】
コントローラ200は、ホスト2から命令を受け取り、受け取った命令に基づいて不揮発性メモリ100の動作を制御する。コントローラ200は、例えば、制御回路の一部であっても良い。コントローラ200は、例えば、ホストインターフェース回路(ホストI/F)210、CPU(Central Processing Unit)220、RAM(Random Access Memory)230、ROM(Read Only Memory)240、及びメモリインターフェース回路(メモリI/F)250を含む。コントローラ200は、例えば、SoC(System on a Chip)として構成されても良い。
【0010】
ホストI/F210は、ホストバスを介してホスト2に接続される。ホストI/F210は、コントローラ200とホスト2との間の通信を司る。メモリI/F250は、コントローラ200と不揮発性メモリ100との間で制御信号を送受信する。メモリI/F260は、メモリバスを介して不揮発性メモリ100に接続される。メモリバスは、例えばNANDインターフェースに準拠した信号の送受信を行うバスである。
【0011】
ROM240は、例えば、ファームウェアを記憶する。RAM230は、例えば、ROM240から読み出されたファームウェアを保持可能である。RAM230は、CPU220の作業領域として使用される。RAM230は、ホスト2から受信したデータや、不揮発性メモリ100から読み出されたデータを一時的に保持し、バッファ及びキャッシュとして機能する。
【0012】
CPU220は、メモリシステム1全体の動作を制御する。CPU220は、例えば、ROM240からRAM230に読み出したファームウェアを実行する。
【0013】
不揮発性メモリ100は、例えばNAND型フラッシュメモリである。なお、不揮発性メモリ100は、NAND型フラッシュメモリに限らず、NOR型フラッシュメモリ、MRAM(Magneto-resistive Random Access Memory)、PRAM(Phase change Random Access Memory)、ReRAM(Resistive Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)であっても良い。
【0014】
また、不揮発性メモリ100は、例えば、劣化具合管理テーブルを記憶する。なお、劣化具合管理テーブルは、コントローラ200又はホスト2に記憶されていても良い。
【0015】
図2に示すように、不揮発性メモリ100は、入出力回路110、ロジックコントローラ120、レジスタセット130、シーケンサ140、電圧生成回路150、ロウデコーダ160、センスアンプモジュール170、及びメモリセルアレイ180を含む。なお、入出力回路110、ロジックコントローラ120、レジスタセット130、シーケンサ140、電圧生成回路150、ロウデコーダ160、及びセンスアンプモジュール170は、例えば、制御回路の一部であっても良い。
【0016】
入出力回路110は、コントローラ200との間で信号を送受信する。信号は、例えば、データ、ステータス、アドレス、またはコマンドを含む。また、入出力回路110は、センスアンプモジュール170との間でデータを送受信する。
【0017】
ロジックコントローラ120は、コントローラ200から受信した制御信号に基づいて、入出力回路110及びシーケンサ140を制御する。
【0018】
レジスタセット130は、例えば、ステータスレジスタ、アドレスレジスタ、及びコマンドレジスタを含む。ステータスレジスタは、ステータスを記憶する。アドレスレジスタは、アドレスを記憶する。コマンドレジスタは、コマンドを記憶する。
【0019】
シーケンサ140は、コマンドレジスタに保持されるコマンドに基づいて、不揮発性メモリ100全体の動作を制御する。シーケンサ140は、ロウデコーダモジュール160、センスアンプモジュール170、及び電圧生成回路150を制御して、例えば、書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作を実行する。
【0020】
電圧生成回路150は、シーケンサ140による制御に基づいて電圧を生成する。生成された電圧は、ロウデコーダ160、センスアンプモジュール170、及びメモリセルアレイ180に供給される。図3に示すように、電圧生成回路150は、例えば、書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作でワード線WL0~WL7の中の動作対象、ビット線BL0~BLkの中の動作対象、及びソース線SLに印加する電圧を生成する。電圧生成回路150は、生成したワード線WLに印加する電圧をロウデコーダ160に供給する。電圧生成回路150は、生成したビット線に印加する電圧をセンスアンプモジュール170に供給する。電圧生成回路150は、生成したソース線SLに印加する電圧をソース線SLに供給する。
【0021】
ロウデコーダ160は、アドレスレジスタからロウアドレスを受け取り、受け取ったロウアドレスをデコードする。ロウデコーダモジュール160は、デコードの結果に基づいて、動作を実行する対象のブロックBLKを選択する。ロウデコーダモジュール160は、選択したブロックBLKに、電圧生成回路150から供給される電圧を転送可能である。
【0022】
センスアンプモジュール170は、アドレスレジスタからカラムアドレスを受け取り、受け取ったカラムアドレスをデコードする。センスアンプモジュール170は、デコードの結果に基づいて、入出力回路110とメモリセルアレイ180との間でのデータの転送動作を実行する。
【0023】
メモリセルアレイ180は、複数のブロックBLKを有する。ブロックBLKは、例えばデータの消去単位となる。図3に示すように、ブロックBLKは、ビット線BL0~BLk及びワード線WL0~WL7に関連付けられた複数の記憶素子を含む。本実施形態において記憶素子は、メモリセルトランジスタMT00~MT70である。
【0024】
ブロックBLKは、複数のNANDストリングNSを含む。NANDストリングNSは、ビット線BL0~BLk(kは自然数)のうち対応するビット線に対応付けられる。NANDストリングNSは、例えばメモリセルトランジスタMT00~MT70ならびに選択トランジスタST1及びST2を含む。メモリセルトランジスタMT00~MT70、MT0k~MT7kは、制御ゲート及び電荷蓄積層を含んでおり、データを不揮発に記憶する。選択トランジスタST1及びST2の各々は、動作時における、選択トランジスタST1及びST2を含むNANDストリングNSの選択に使用される。
【0025】
また、ブロックBLKは、複数のセルユニットCUを含む。セルユニットCUは、例えば、同一のワード線WLに共通して接続される複数のメモリセルトランジスタMTの集合体である。本実施形態では、図3に示すようにセルユニットCU0~CU7が含まれる。図4に示すように、本実施形態では、1つのメモリセルトランジスタMTは3ビットデータを保持可能である。この3ビットデータを、下位ビットからそれぞれ下位ビット、中位ビット、及び上位ビットとする。また、例えば、セルユニットCUの複数のメモリセルトランジスタMTに記憶された同位ビットの集合が、「1ページ」として定義される。すなわち、セルユニットCUに記憶された下位ビットの集合を下位ページ、中位ビットの集合を中位ページ、および上位ビットの集合を上位ページとする。なお、本実施形態において、セルユニットCUは、3ページの記憶容量を有する。データの書き込み動作及び読み出し動作は、ページ単位で行っても良いし、セルユニットCU単位で行っても良い。本実施形態では、セルユニットCU単位で読み出しを行う場合を説明する。
【0026】
図4に示すように、メモリセルトランジスタMTは、3ビットデータを保持可能であるため、閾値電圧に応じて8個の状態をとることが可能である。メモリセルトランジスタMTが閾値電圧に応じて取ることが可能な8個の状態を、閾値電圧の低い状態から順に、‘‘Er’’状態、‘‘A’’状態、‘‘B’’状態、‘‘C’’状態、‘‘D’’状態、‘‘E’’状態、‘‘F’’状態、‘‘G’’状態とする。
【0027】
“Er”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、読み出し電圧VrA未満であり、データの消去状態に相当する。“A”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、読み出し電圧VrA以上であり且つ読み出し電圧VrB(>VrA)未満である。“B”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、読み出し電圧VrB以上であり且つ読み出し電圧VrC(>VrB)未満である。“C”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、読み出し電圧VrC以上であり且つ電圧VrD(>VrC)未満である。“D”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、読み出し電圧VrD以上であり且つ読み出し電圧VrE(>VrD)未満である。“E”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、読み出し電圧VrE以上であり且つ読み出し電圧VrF(>VrE)未満である。“F”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、読み出し電圧VrF以上であり且つ読み出し電圧VrG(>VrF)未満である。“F”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、読み出し電圧VrG以上であり且つ電圧Vread(>VrG)未満である。このように分布する8個の状態のうち、“G”状態が、閾値電圧の最も高い状態である。読み出し電圧VrA?VrGは、読み出し電圧Vrとも呼ばれ、読み出し動作において、読み出し対象である選択ワード線WL_selに印加される。電圧Vreadは、例えば、読み出し動作の際に、読み出し対象でない非選択ワード線WL_uselに印加される電圧であり、保持データにかかわらずメモリセルトランジスタMTをオンにする電圧である。
【0028】
閾値電圧分布は、下位ビット、中位ビット、及び上位ビットの3ビットデータを書き込むことで実現される。すなわち、“Er”状態から“G”状態と、3ビットデータとの関係は次のように表すことができる。なお、上位ビット、中位ビット、及び下位ビットの順に示す。
“Er”状態:“111”
“A”状態:“101”
“B”状態:“001”
“C”状態:“011”
“D”状態:“010”
“E”状態:“110”
“F”状態:“100”
“G”状態:“000”
このように、閾値電圧分布において隣り合う2つの状態に対応するデータ間では、3ビットのうちの1ビットのみが変化する。したがって、下位ビットを読み出す際には下位ビットの値が変化する境界に相当する電圧である、読み出し電圧VrDを用いればよい。なお、中位ビット及び上位ビットにおいても同様である。なお、本実施形態ではメモリセルトランジスタMTは、3ビットデータを保持可能であるとして説明したがこれに限定されない。メモリセルトランジスタMTは、1ビットデータ又は2ビットデータを保持可能であっても良いし、4ビット以上のデータを保持可能であっても良い。
【0029】
本実施形態の書き込み動作の説明にあたり、まず、標準書き込み動作について、図5及び図6を用いて説明する。書き込み動作は、プログラム動作とベリファイ動作の組み合わせを繰り返して行うループの動作である。図5及び図6では、ループの動作が19回繰り返されることによって、データが書き込まれる場合を例に示している。本実施形態では、このループの動作が、図5及び図6に示すように行われる書き込み動作を標準書き込み動作とする。なお、ループの動作が繰り返される回数をループ回数とする。プログラム電圧VPGMは、ループ回数が増えるごとに増加していく。すなわち、2回目のループのプログラム電圧VPGM2は1回目のループのプログラム電圧VPGM1より大きい。また、ベリファイ電圧Vfyは、メモリセルトランジスタMTの“A”状態~“G”状態のそれぞれに応じたベリファイ電圧VfyA~VfyGを有する。
【0030】
図5に示すように、1回目及び2回目のループでは、ベリファイ動作は“A”状態のみを対象にして行われる。つまり、ベリファイ動作時に選択ワード線WL_selにはベリファイ電圧VfyAが印加され、ベリファイ電圧VfyB~VfyGは印加されない。3回目及び4回目のループでは、ベリファイ動作は“A”状態と“B”状態とを対象にして行われる。つまり、ベリファイ動作時に選択ワード線WL_selにはベリファイ電圧VfyA及びVfyBが順次印加され、ベリファイ電圧VfyC~VfyGは印加されない。
【0031】
5回目及び6回目のループでは、ベリファイ動作は“A”状態、“B”状態、及び“C”状態を対象にして行われる。つまり、ベリファイ動作時に選択ワード線WL_selにはベリファイ電圧VfyA、VfyB、及びVfyCが順次印加され、ベリファイ電圧VfyD~VfyGは印加されない。そして、“A”状態を対象としたベリファイ動作は、6回目のループで完了する。これは、例えば6回のループ回数で“A”状態へのプログラムはほぼ完了するということが経験的に求められるからである。
【0032】
また、7回目及び8回目のループでは、ベリファイ動作は“B”状態、“C”状態、及び“D”状態を対象にして行われる。つまり、ベリファイ動作時に選択ワード線WL_selにはベリファイ電圧VfyB、VfyC、及びVfyDが順次印加される。そして、“B”状態を対象としたベリファイ動作は、8回目の書き込み動作で完了する。更に、9回目及び10回目のループでは、ベリファイ動作は“C”状態、“D”状態、及び“E”状態を対象にして行われる。つまり、ベリファイ動作時に選択ワード線WL_selにはベリファイ電圧VfyC、VfyD、及びVfyEが順次印加される。そして、“C”状態を対象としたベリファイ動作は、10回目のループで完了する。以降、同様にして“G”状態の書き込みまで行われ、ループは最大で19回繰り返される。
【0033】
図6に示すように、1回目及び2回目のループでは、ベリファイ動作は“A”状態のみを対象にして行われる。つまり、1回のプログラム動作に対してベリファイ動作は1回行われる。3回目及び4回目のループでは、ベリファイ動作は“A”状態と“B”状態とを対象にして行われる。つまり、1回のプログラム動作に対してベリファイ動作は2回行われる。5回目から12回目までのループでは、1回のプログラム動作に対してベリファイ動作は3回行われる。以降も、1回のプログラム動作に対して、設定された所定のレベルのベリファイ動作が行われる。最終的には、19回のループで、プログラム動作が19回、ベリファイ動作が42回行われる。
【0034】
なお、ベリファイ動作が上限回数まで実施されることを想定している。図5に示したように、“A”状態を対象とするベリファイ動作は、1回目のループから6回目のループにかけて最大で6回実行され得る。また、“B”状態を対象とするベリファイ動作は、3回目のループから8回目のループにかけて最大で6回実行され得る。他の状態についても同様である。ここで、例えば、“A”状態に書き込まれるメモリセルトランジスタMTは複数存在する。したがって、厳密には、例えば、“A”状態に書き込まれるメモリセルトランジスタMTの全てが5回目のループにおいて“A”状態を対象とするベリファイ動作にパスした場合は、6回目のループにおいてベリファイ動作が実行されないということも有りえる。これは、以下の説明についても同様である。
【0035】
なお、1回目のプログラム動作で選択ワード線WL_selに印加される電圧VPGM1や、2回目以降のプログラム動作における電圧VPGMの増加量、そして、各レベルにおけるベリファイ動作が開始するループは、書き込みが速いワーストケースを想定して設定されており、ターゲットレベルを超えた書き込みが行われないよう十分にマージンが確保されている。
【0036】
続いて、図7乃至図15を用いて本実施形態に係る消去動作及び書き込み動作を説明する。
図7に示すように、コントローラ200は、例えばホスト2からの消去動作の命令を受けてブロックBLKの消去動作を行う(S110)。消去動作が行われると、消去動作対象のブロックBLKのメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布は“Er”状態となる。
【0037】
コントローラ200は、消去動作対象のブロックBLKに含まれるセルユニットCU毎の特徴量を測定する(S130)。特徴量を測定することによって、例えばセルユニットCUの特性をモニタする。特徴量は、メモリセルトランジスタMTの劣化具合と関連する。本実施形態では、特徴量はメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅である。例えば、消去動作後の“Er”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅が広いほど、メモリセルトランジスタMTの劣化具合が高いと考えられる。
【0038】
本実施形態において、特徴量の測定にあたり、消去動作対象のブロックBLKに含まれるセルユニットCUを対象に読み出し動作を行う。例えば、図8に示すように、読み出し電圧Vrを読み出し電圧VrAから読み出し電圧VrA1、VrA2、VrA3、・・・、VrAn-1、VrAnへと変化させて“Er”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅を測定する。なお、読み出し電圧VrA1は読み出し電圧Vr-ΔVrAである。読み出し電圧VrA2は読み出し電圧Vr-2ΔVrAである。以下同様に、読み出し電圧VrAnは読み出し電圧Vr-nΔVrAである。読み出し電圧Vrを変化させることにより、消去動作対象のブロックBLKに含まれるセルユニットCUのメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の広さを測定する。
【0039】
なお、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の測定において、読み出し電圧Vrの印加方法は上記に限定されない。メモリセルトランジスタMTは、劣化具合が高い場合、1回の消去動作において消去電圧を印加する回数が増えることがある。したがって、S110の消去動作において、消去電圧を印加した回数に基いて最初に印加する読み出し電圧Vrを選択しても良い。印加する読み出し電圧Vrは、読み出し電圧VrA、VrA2、VrA4、・・・のように一定間隔を空けても良い。
【0040】
コントローラ200は、S130において測定した特徴量に基づいてセルユニットCUの分類を行う(S150)。図9に示す劣化具合管理テーブルは、複数のブロックBLKの各々に含まれるセルユニットCUの劣化具合が管理されている。そのため、分類が行われると、劣化具合管理テーブルに分類が記録される。
【0041】
例えば、本実施形態では、コントローラ200により、セルユニットCUは第1状態~第5状態の何れかに分類される。セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTのうち一番広い閾値電圧分布幅が第1の幅W1より小さい場合、セルユニットCUは第1状態に分類される。セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTのうち一番広い閾値電圧分布幅が第2の幅W2(>W1)より小さい場合、セルユニットCUは第2状態に分類される。セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTのうち一番広い閾値電圧分布幅が第3の幅W3(>W2)より小さい場合、セルユニットCUは第3状態に分類される。セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTのうち一番広い閾値電圧分布幅が第4の幅W4(>W3)より小さい場合、セルユニットCUは第4状態に分類される。セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTのうち一番広い閾値電圧分布幅が第4の幅W4以上の場合、セルユニットCUは第5状態に分類される。
【0042】
コントローラ200は、劣化具合管理テーブルに基づいて書き込み動作におけるパラメータを設定する(S170)。
【0043】
コントローラ200は、設定されたパラメータに基づいて書き込み動作を行う(S190)。図10に示すように、設定されたパラメータによって、書き込み動作におけるベリファイ動作が異なる。
【0044】
例えば、第1状態に分類されたセルユニットCUを対象とした書き込み動作では、図11に示すようにベリファイ動作は全て省略される。すなわち書き込み動作において、19回のループで、プログラム動作が19回、ベリファイ動作が0回行われる。
【0045】
第2状態に分類されたセルユニットCUを対象とした書き込み動作では、図12に示すようにベリファイ動作は“A”状態及び“B”状態のみを対象にして行われる。1回目から4回目のループは図5の標準書き込み動作と同じため省略する。5回目及び6回目のループでは、ベリファイ動作は“A”状態と“B”状態とを対象にして行われる。つまり、ベリファイ動作時に選択ワード線WL_selにはベリファイ電圧VfyA及びVfyBが順次印加され、ベリファイ電圧VfyC~VfyGは印加されない。7回目及び8回目のループでは、ベリファイ動作は“B”状態のみを対象にして行われる。つまり、選択ワード線WL_selにはベリファイ電圧VfyBが印加される。したがって、図13に示すように、9回目のループ以降はプログラム動作のみが行われる。すなわち、19回のループで、プログラム動作が19回、ベリファイ動作が12回行われる。
【0046】
第3状態に分類されたセルユニットCUを対象とした書き込み動作では、図14に示すようにベリファイ動作は“A”状態、“B”状態、“C”状態、及び“D”状態のみを対象にして行われる。1回目から8回目のループは図5の標準書き込み動作と同じため省略する。9回目及び10回目のループでは、ベリファイ動作は“C”状態と“D”状態とを対象にして行われる。つまり、ベリファイ動作時に選択ワード線WL_selにはベリファイ電圧VfyC及びVfyDが順次印加される。11回目及び12回目のループでは、ベリファイ動作は"D"状態のみを対象にして行われる。つまり、選択ワード線WL_selにはベリファイ電圧VfyDが印加される。したがって、図15に示すように、13回目のループ以降はプログラム動作のみが行われる。すなわち、19回のループで、プログラム動作が19回、ベリファイ動作が24回行われる。
【0047】
第4状態に分類されたセルユニットCUを対象とした書き込み動作では、図5に示すような標準書き込み動作が行われる。すなわち、ベリファイ動作は省略されない。
【0048】
第5状態に分類されたセルユニットCUを対象とした書き込み動作では、例えば、第4状態と同様に標準書き込み動作が行われる。また、例えば、ブロックBLK内のセルユニットCUの半数が第5状態に分類された場合、当該ブロックBLKをバッドブロックとみなす。その場合、セルユニットCUの半数が第5状態に分類されたブロックBLKは書き込み動作の対象外となる。したがって、セルユニットCUの半数が第5状態に分類されたブロックBLKに対する書き込み動作は行われない。尚、前述した第1状態乃至第5状態に分類されたセルユニットCUを対象とした書き込み動作では、当該ブロックBLKはバッドブロックでないとみなしている。また、ブロックBLK内のセルユニットCUの半数が第5状態に分類された場合、当該ブロックBLKをバッドブロックとみなすとしたが、当該ブロックBLKをバッドブロックとみなすブロックBLK内のセルユニットCUの数はこれに限定されない。
【0049】
以上より、本実施形態における消去動作及び書き込み動作が完了する。
【0050】
なお、本実施形態では分類を5個としたが、4個以下であっても良いし、6個以上であっても良い。また、各分類によっていずれのベリファイ動作を省略するかは任意である。例えば、第2状態に分類されたセルユニットCUに対する書き込み動作において、6回目、12回目、及び18回目のループのみベリファイ動作を行っても良い。第3状態に分類されたセルユニットCUに対する書き込み動作において、4回目、8回目、12回目、及び16回目のループのみベリファイ動作を行っても良い。第4状態及び第5状態に分類されたセルユニットCUに対する書き込み動作において、偶数回目のループのみベリファイ動作を行っても良い。
【0051】
また、本実施形態では、消去動作が行われる度に特徴量を測定するがこれに限定されない。例えば、1回の消去動作において、印加した消去電圧の回数が変更された場合に特徴量を測定しても良い。一定回数消去動作が行われた場合に特徴量を測定しても良い。
【0052】
本実施形態によれば、書き込み単位であるセルユニットCU毎にメモリセルトランジスタMTの特徴量を測定し、特徴量に基づいてメモリセルトランジスタMTの劣化具合をモニタし、セルユニットCUを分類することができる。そのため、書き込み単位のセルユニットの劣化具合に応じて書き込み動作を変更することが可能であり、メモリシステム1の信頼性を向上させることができる。また、劣化具合の低いメモリセルトランジスタMTを対象とする書き込み動作において、ベリファイ動作の回数を省略することによって、書き込み動作に係る時間を短縮することが可能である。
【0053】
(第1実施形態の変形例1)
変形例1において、特徴量はメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値である。図7のS110は第1実施形態と同様である。S130において、本実施形態では、コントローラ200は、まず第1実施形態と同様にメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅を求める。そして、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の測定に基づいて、閾値電圧分布幅の中央値を求める。以上より、本実施形態における特徴量であるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値を測定する。
【0054】
コントローラ200は、S130において測定した特徴量に基づいてセルユニットCUの分類を行う(S150)。例えば、セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布の幅の中央値が、第1基準値からどれだけずれているかで分類を行う。具体的には、セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅が第1基準値から第1の値M1ずれている場合、セルユニットCUは第1状態と判断される。なお、本実施形態において第1基準値は、例えば図4に示すような正規分布の場合の閾値電圧分布幅である。セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅が第1基準値から第2の値M2(>M1)ずれている場合、セルユニットCUは第2状態と判断される。セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅が第1基準値から第3の値M3(>M2)ずれている場合、セルユニットCUは第3状態と判断される。セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅が第1基準値から第4の値M4(>M3)ずれている場合、セルユニットCUは第4状態と判断される。セルユニットCUに含まれるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅が第1基準値から第5の値M5(>M4)ずれている場合、セルユニットCUは第5状態と判断される。
【0055】
S170以降は第1実施形態と同様であるため省略する。以上より、本実施形態における消去動作及び書き込み動作が完了する。
【0056】
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態と異なる点は、特徴量を測定するタイミングが異なる点である。以下、第1実施形態と異なる点のみ記載する。
【0057】
変形例2において、特徴量を測定するタイミングは、書き込み動作を行う前である。予備書き込み動作は、書き込み動作を行う前に行われる。予備書き込み動作は、データリテンションの影響を抑制するために行われる標準書き込み動作よりも弱い書き込み動作である。データリテンションとは、時間が経過したり温度などの環境が変化したりすると、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布が低下することである。
【0058】
図16及び図17を用いて本実施形態に係る書き込み動作を説明する。
図16に示すように、コントローラ200は、例えばホスト2からの書き込み動作の命令を受けてブロックBLKの予備書き込み動作を行う(S210)。予備書き込み動作を行うことにより、図17に示すように、点線で示す“Er”状態の閾値電圧分布が実線の閾値電圧分布に変化する。なお、予備書き込み動作は、データリテンションの影響を抑制するために行われるため、“Er”状態から“A”状態等に状態が変化するわけではない。
【0059】
コントローラ200は、消去動作対象のブロックBLKに含まれるセルユニットCU毎の特徴量を測定する(S130)。本実施形態では、第1実施形態と同様に、特徴量はメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅である。例えば、予備書き込み動作後の“Er”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅が広いほど、メモリセルトランジスタMTの劣化具合が高いと考えられる。なお、S130~S190の説明は第1実施形態と同様のため省略する。
【0060】
以上より、本実施形態における消去動作及び書き込み動作が完了する。
【0061】
(第1実施形態の変形例3)
変形例3において、変形例2と同様に書き込み動作を行う前に予備書き込み動作が行われる。また、特徴量は変形例1と同様にメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値である。図16のS210は変形例2と同様である。S130において、本実施形態では、コントローラ200は、まず第1実施形態と同様にメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅を求める。そして、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の測定に基づいて、閾値電圧分布幅の中央値を求める。以上より、本実施形態における特徴量であるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値を測定する。
【0062】
S150以降は第1実施形態と同様であるため省略する。以上より、本実施形態における書き込み動作が完了する。
【0063】
(第2実施形態)
第1実施形態とは、人工知能(以下、AI(Artificial Inteligence)と称する)を用いて分類する点が異なる。
【0064】
図18に示すように、メモリシステム1は、不揮発性メモリ100及びコントローラ200を含む。コントローラ200は、例えば、ホストI/F210、CPU220、RAM230、ROM240、メモリI/F250、及びAIチップ260を含む。
【0065】
AIチップ260は、AIの演算処理を高速化するための半導体チップである。AIの演算処理には、例えば、膨大なデータの統計から特徴の組み合わせパターンを作り出す学習プロセスと、学習プロセスで生成したパターンに基づいて入力データを識別する識別プロセスとがある。本実施形態において、例えば、AIチップ260は、あらかじめメモリセルトランジスタMTの様々な閾値電圧分布と当該メモリセルトランジスタMTの劣化具合との組み合わせパターンを作り出す学習プロセスが行われている。そのため、本実施形態では、AIチップ260は識別プロセスを行う。なお、AIチップ260はソフトウェアであっても良い。AIチップは、コントローラ200に含まれているとしたが、コントローラ200の外部に設けられていても良い。
【0066】
続いて、図19を用いて本実施形態に係る消去動作及び書き込み動作について説明する。
コントローラ200は、例えばホスト2からの消去動作の命令を受けてブロックBLKの消去動作を行う(S310)。消去動作が行われると、消去動作対象のブロックBLKのメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布は“Er”状態となる。
【0067】
コントローラ200は、消去動作対象のブロックBLKに含まれるセルユニットCU毎の特徴量を測定する(S320)。本実施形態では、特徴量はメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅及びメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値である。
【0068】
コントローラ200は、例えばホスト2からの書き込み動作の命令を受けてブロックBLKの予備書き込み動作を行う(S330)。予備書き込み動作によってデータリテンションの影響を抑制することが可能である。
【0069】
コントローラ200は、予備書き込み動作対象のセルユニットCU毎の特徴量を測定する(S340)。本実施形態では、特徴量はメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅及びメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値である。
【0070】
コントローラ200は、AIチップ260を用いて、S320及びS340において測定した特徴量を入力データとしてセルユニットCUの分類を出力する(S350)。
【0071】
コントローラ200は、劣化具合管理テーブルに基づいて、AIチップ260から出力された分類から書き込み動作におけるパラメータを設定する(S360)。
【0072】
コントローラ200は、設定されたパラメータに基づいて書き込み動作を行う(S370)。以上より、本実施形態における消去動作及び書き込み動作が完了する。
【0073】
なお、本実施形態において特徴量はメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅及びメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値としたが、S320及びS340において読み出し電圧VrA、VrA1、VrA2、・・・、VrAnを用いて読み出した結果そのものを特徴量としても良い。上記、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅及びメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値、読み出し電圧VrA、VrA1、VrA2、・・・、VrAnを用いて読み出した結果のうちいずれか一つであっても良い。また、消去動作後の特徴量測定(S320)及び予備書き込み動作後の特徴量測定(S340)は、いずれか一つであっても良い。
【0074】
したがって、AIチップ260に入力する特徴量は、消去動作対象のブロックBLKに含まれるセルユニットCUのメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅、消去動作対象のブロックBLKに含まれるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値、消去動作対象のブロックBLKに含まれるメモリセルユニットCUを読み出し電圧VrA、VrA1、VrA2、・・・、VrAnを用いて読み出した結果、予備書き込み動作対象のセルユニットCUのメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅、予備書き込み動作対象のセルユニットCUのメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値、及び予備書き込み動作対象のセルユニットCUを読み出し電圧VrA、VrA1、VrA2、・・・、VrAnを用いて読み出した結果のうち少なくとも一つが入力されればよい。
【0075】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、AIチップ260を用いて分類することにより、正規分布には近くない不規則で複雑な形状の閾値電圧分布に対応することが可能となる。
【0076】
例えば、図20の実線に示すように閾値電圧分布の下裾が拡がっている場合は、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の測定ではメモリセルトランジスタMTの実際の閾値電圧分布を取得し難い。また、図21の実線に示すように閾値電圧分布の頂点が複数存在する場合、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅又はメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値の測定では、実際のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布を取得し難い。図22の実線に示すように閾値電圧分布が複数に分かれて存在する場合、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅又はメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅の中央値では、実際のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布を取得し難い。
【0077】
以上のような取得し難い閾値電圧分布の形状であっても、あらかじめAIチップ260においてメモリセルトランジスタMTの様々な閾値電圧分布と当該メモリセルトランジスタMTの劣化具合との組み合わせパターンを作り出す学習プロセスが行われているため、実際のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布を取得しやすくなる。したがって、第1実施形態と比較して、様々な形状の閾値電圧分布に対してより正確な分類を行うことができる。
【0078】
(変形例)
第1及び第2実施形態において、分類によって書き込み動作におけるベリファイ動作を変更したがこれに限定されない。図23及び図24に示すように、プログラム電圧VPGMを変更しても良い。消去動作後又は予備書き込み動作後の“Er”状態のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布幅が広いほど、メモリセルトランジスタMTの劣化具合が高いと考えられる。そのためメモリセルトランジスタMTの劣化具合が高い場合、例えばループ回数が減少する。目的のデータを正確に書き込むために、メモリセルトランジスタMTの劣化具合が高い場合には、1回のループのプログラム電圧VPGMを低くすることが可能である。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1・・・メモリシステム、2・・・ホスト、100・・・不揮発性メモリ、110・・・入出力回路、120・・・ロジックコントローラ、130・・・レジスタセット、140・・・シーケンサ、150・・・で夏生成回路、160・・・ロウデコーダ、170・・・センスアンプモジュール、180・・・メモリセルアレイ、200・・・コントローラ、210・・・ホストI/F、220・・・CPU、230・・・RAM、240・・・ROM、250・・・メモリI/F、260・・・AIチップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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