(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039733
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】カバー部材、およびモータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20240315BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K3/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144318
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】野際 翔太
(72)【発明者】
【氏名】江口 明彦
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑基
(72)【発明者】
【氏名】田中 全
【テーマコード(参考)】
5H604
5H605
【Fターム(参考)】
5H604QB01
5H604QB16
5H605AA03
5H605CC01
5H605CC06
(57)【要約】
【課題】バスバー端子と接触端子との嵌合箇所への汚れや異物の侵入を簡易な構成で防止する。
【解決手段】カバー部材30は、モータ12と、モータ12の作動を制御する制御基板40との間に介在する。モータ12は、ステータのコイルと電気的に接続されているバスバー端子54aを有する。制御基板40は、バスバー端子54aと嵌合して制御基板40をステータに電気的に接続させる接続端子44を有する。カバー部材30は、貫通孔30eおよび取り囲み部30dを有する。貫通孔30eには、バスバー端子54aが貫通する。取り囲み部30dは、バスバー端子54aと接続端子44との嵌合箇所44aをバスバー端子54aの貫通方向で見て取り囲む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータを有するモータと、前記モータの作動を制御する制御基板との間に介在する、モータユニット用のカバー部材であって、
前記モータは、前記ステータのコイルと電気的に接続されているバスバー端子を有し、
前記制御基板は、前記バスバー端子と嵌合して前記制御基板を前記ステータに電気的に接続させる接続端子を有し、
前記カバー部材は、
前記バスバー端子が貫通する貫通孔と、
前記バスバー端子と前記接続端子との嵌合箇所を前記バスバー端子の貫通方向で見て取り囲む取り囲み部と、
を有することを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記貫通孔の内面は、前記バスバー端子が挿入される方向に進むほど幅が小さくなるように傾斜する傾斜面を有することを特徴とする、請求項1記載のカバー部材。
【請求項3】
前記カバー部材は樹脂から成る、請求項1または2記載のカバー部材。
【請求項4】
請求項1または2記載の、前記制御基板と、前記モータと、前記カバー部材と、を備えることを特徴とするモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニット用のカバー部材およびモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータへの電力供給のために、バスバーが広く用いられている。このバスバーは、モータ側から制御基板に向けて延在し、制御基板に配置された接触端子と嵌合する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、バスバーと接触端子との嵌合箇所がむき出しとなっている。しかしながら、バスバーと接触端子との嵌合箇所へ汚れや異物が侵入すると、隣接する導電体と短絡する可能性がある。このため、バスバーと接触端子との嵌合箇所へ汚れや異物が侵入することを簡易且つ低コストで防止することが課題となっていた。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、バスバーと接触端子との嵌合箇所への汚れや異物の侵入を簡易な構成で防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータユニット用のカバー部材は、ロータおよびステータを有するモータと、前記モータの作動を制御する制御基板との間に介在する。前記モータは、前記ステータのコイルと電気的に接続されているバスバー端子を有する。前記制御基板は、前記バスバー端子と嵌合して前記制御基板を前記ステータに電気的に接続させる接続端子を有する。前記カバー部材は、前記バスバー端子が貫通する貫通孔と、前記バスバー端子と前記接続端子との嵌合箇所を前記バスバー端子の貫通方向で見て取り囲む取り囲み部と、を有する。この態様によれば、嵌合箇所への汚れや異物の侵入を抑制することができる。このため、隣接する導電体との短絡を回避することができる。
【0007】
前記貫通孔の内面は、前記バスバー端子が挿入される方向に進むほど幅が小さくなるように傾斜する傾斜面を有していてもよい。この態様によれば、バスバー端子を正確に案内することができ、バスバー端子と接続端子との嵌合箇所におけるこじれを抑制することができる。このため、こじれにより生じ得る電気的抵抗や熱的抵抗の増大を回避することができ、信頼性を高めることができる。
【0008】
前記カバー部材は樹脂から成っていてもよい。この態様によれば、カバー部材が金属から成っている場合に比べ、モータと制御基板との間の熱的な影響を低減することができる。このため、例えば耐熱性の高い高価な素子を制御基板に実装する必要がなくなるため、コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るモータユニットの斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るモータユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係るモータユニット10の斜視図である。
図2は、本実施形態に係るモータユニット10の正面図である。モータユニット10は、モータ12および電子制御ユニット14を有する。モータ12は、モータハウジング20およびモータ軸22を有する。モータハウジング20は、筒状部20aを有する。筒状部20aには、筒状に巻回されたコイルから成るステータ(図示せず)が収容されている。そのステータの中央にロータ(図示せず)がさらに収容されている。ロータはモータ軸22に固定されており、モータ軸22はモータハウジング20に回転可能に支持されている。モータ軸22は、モータハウジング20の一端側から先端が突出している。モータハウジング20の他端には、フランジ20bが形成されている。このフランジ20bにねじなどの締結具を用いて電子制御ユニット14が取り付けられている。
【0011】
電子制御ユニット14は、カバー部材30およびヒートシンク32を有する。カバー部材30の内部には後述する制御基板が収容される。制御基板の収容後、カバー部材30にヒートシンク32が取り付けられる。ヒートシンク32は、放熱用の多数のフィン32aを有している。ヒートシンク32は、カバー部材30に収容された制御基板が発生する熱を外部に放熱することで、制御基板を冷却する。
【0012】
図3は、カバー部材30の斜視図である。理解を容易にするため、ヒートシンク32および制御基板が取り外された状態のカバー部材30が示されている。カバー部材30は、ボトムプレート30a、側壁30b、フランジ30c、および取り囲み部30dを有する。ボトムプレート30aは、矩形に形成されている。側壁30bは、ボトムプレート30aの4つの辺からボトムプレート30aの面と垂直に延在している。したがって、カバー部材30は、ボトムプレート30aの向かい側が開口した矩形の容器状に形成されている。側壁30bの端部にはフランジ30cが形成されている。このフランジ30cにヒートシンク32が取り付けられる。
【0013】
ボトムプレート30aは、複数(本実施形態では3つ)の取り囲み部30dを有する。取り囲み部30dは、ボトムプレート30aから側壁30bと同じ側に垂直に延びる筒状に形成されている。取り囲み部30dについては後述する。
【0014】
図4は、
図2のP-P断面図である。
図5は、
図4の領域Qの拡大図である。
図6は、
図5のR-R断面図である。モータ12は、さらにバスバーユニット50を有する。バスバーユニット50は、樹脂プレート52およびバスバー54を有する。樹脂プレート52は、モータ軸22と垂直な平面上に延在する。樹脂プレート52は、ステータおよびロータが収容されたモータハウジング20の筒状部20aの一方を塞ぐように配置される。本実施形態では、バスバー54は樹脂プレート52にインサート成形されている。なお、バスバー54が樹脂プレート52に圧入など他の固定方法で固定されていてもよい。バスバー54は、細長い矩形の板金をL字状に折り曲げた形状に形成されている。バスバー54は、長い部分がモータ軸22と平行に向くように樹脂プレート52に固定されている。このバスバー54の長い部分がバスバー端子54aである。バスバー54は、ステータのコイルと電気的に接続されている。本実施形態に係るモータ12は3相モータであるため、3つのバスバー54が設けられている。ただし、バスバー54の数が3つに限られないことはもちろんである。
【0015】
電子制御ユニット14は、制御基板40をさらに有する。制御基板40は、モータ12の作動を制御する。カバー部材30は、この制御基板40とモータ12との間に介在する。制御基板40は、ベース基板42および接続端子44を有する。ベース基板42には、モータ12の制御に使用する様々な電気素子(図示せず)が実装されている。接続端子44は、バスバー端子54aと嵌合して制御基板40をステータに電気的に接続させる。このため接続端子44は、ベース基板42のバスバーユニット50に対向する側に取り付けられている。接続端子44は一端が開口するC字状に形成されている。接続端子44は、開口がバスバーユニット50側に向けられるようにベース基板42に取り付けられる。
【0016】
モータユニット10の組み立て方法について説明する。まず、バスバーユニット50をステータに固定し、バスバー54をステータのコイルと接続する。バスバーユニット50が固定されたステータを、モータハウジング20に挿入する。そして、モータ軸22に固定されたロータをそのステータ中央に収容する。こうしてモータ12が組み立てられる。このとき、バスバー端子54aは、モータ軸22と平行に樹脂プレート52から突出している。
【0017】
一方、カバー部材30に制御基板40が固定される。カバー部材30のフランジ30cにヒートシンク32が取り付けられる。こうして電子制御ユニット14が組み立てられる。
【0018】
次に電子制御ユニット14をモータ12に組み付ける。具体的には、カバー部材30のボトムプレート30aが樹脂プレート52に向かい合うように、電子制御ユニット14がモータ12に載置され、モータハウジング20のフランジ20bにカバー部材30が固定される。
【0019】
カバー部材30は、貫通孔30eを有する。電子制御ユニット14がモータ12に載置されるとき、この貫通孔30eにバスバー端子54aが貫通する。そして、接続端子44の開口にバスバー端子54aが挿入される。こうして、接続端子44は、バスバー端子54aと嵌合して制御基板40をステータに電気的に接続させる。バスバー端子54aと接続端子44との嵌合箇所44aへ汚れや異物が侵入すると、隣接する導電体と短絡する可能性がある。
【0020】
このため、本実施形態に係るカバー部材30は、取り囲み部30dを有する。取り囲み部30dは、バスバー端子54aが接続端子44に挿入された状態で、バスバー端子54aと接続端子44との嵌合箇所44aをバスバー端子54aの貫通方向で見て取り囲む。取り囲み部30dは、軸方向において嵌合箇所44aを包含する。これにより、嵌合箇所44aへの汚れや異物の侵入を抑制することができる。このため、隣接する導電体との短絡を回避することができる。上述のように、本実施形態に係るモータ12は3相モータであるため、3つのバスバー54が設けられている。このため、本実施形態に係るカバー部材30には同様に3つの取り囲み部30dが設けられている。
【0021】
また、上述のようにバスバー端子54aの長さは比較的長い。このため、バスバー端子54aの傾きや変形によりバスバー端子54aの先端部の位置精度が悪くなる場合がある。したがって、そのままバスバー端子54aの先端部が接続端子44に挿入されると、バスバー端子54aと接続端子44との間にこじれが生じる可能性がある。
【0022】
このため、貫通孔30eの内面は、一対の傾斜面30fを有している。傾斜面30fは、バスバー端子54aの挿入方向Sに進むほど幅が小さくなるように傾斜する。これにより、バスバー端子54aを正確に案内することができ、バスバー端子54aと接続端子44との嵌合箇所に44aおけるこじれを抑制することができる。このため、こじれにより生じ得る電気的抵抗や熱的抵抗の増大を回避することができ、信頼性を高めることができる。
【0023】
カバー部材30は樹脂から成っている。これにより、カバー部材30が金属から成っている場合に比べ、モータ12と制御基板40との間の熱的な影響を低減することができる。このため、例えば耐熱性の高い高価な電気素子を制御基板40に実装する必要がなくなるため、コストを抑制することができる。なお、カバー部材30がアルミニウムなどの金属から成っていてもよい。
【0024】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0025】
10 モータユニット,12 モータ,14 電子制御ユニット,20 モータハウジング,20a 筒状部,20b フランジ,22 モータ軸,30 カバー部材,30a ボトムプレート,30b 側壁,30c フランジ,30d 取り囲み部,30e 貫通孔,30f 傾斜面,32 ヒートシンク,32a フィン,40 制御基板,42 ベース基板,44 接続端子,44a 嵌合箇所,50 バスバーユニット,52 樹脂プレート,54 バスバー,54a バスバー端子