(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039737
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】光送受信機
(51)【国際特許分類】
H01P 1/162 20060101AFI20240315BHJP
H01P 3/12 20060101ALI20240315BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H01P1/162
H01P3/12
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144326
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】519283819
【氏名又は名称】CIG Photonics Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 修
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏佳
【テーマコード(参考)】
2H137
5J014
【Fターム(参考)】
2H137AA01
2H137AB05
2H137AB06
2H137BB12
2H137CC00
2H137DA13
2H137GA07
2H137HA00
5J014DA01
(57)【要約】
【課題】不要電磁波の漏洩抑制を目的とする。
【解決手段】光送受信機は、光ファイバ20が通る中間空間38に、電磁波を減衰させるように設けられた減衰構造42を有する。内部空間32は、光電素子16および光コネクタ10の間の第1方向D1に連続し、第1方向D1に直交するいずれの方向でも導電面に囲まれており、減衰構造42は、導電面に導通する複数の導電柱44からなる柱構造であり、柱構造において、複数の導電柱44は、第1方向D1に直交する第2方向D2に延び、複数の導電柱44は、第2方向D2に沿った平面視において、複数の点Pに配列され、複数の点Pは、隣同士の四角形Qの一辺を共有する複数の四角形Qの頂点にあり、複数の四角形Qは、少なくとも第1方向D1に並び、複数の四角形Qの、第1方向D1に隣接する少なくとも一対を光ファイバ20が通る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コネクタと、
光電素子と、
前記光コネクタと前記光電素子を接続する光ファイバと、
前記光コネクタ、前記光電素子および前記光ファイバが収容される内部空間を有し、前記内部空間で電磁波が伝搬するようになっている金属筐体と、
前記内部空間の、前記光ファイバが通る中間空間に、前記電磁波を減衰させるように設けられた減衰構造と、
を有し、
前記内部空間は、前記光電素子および前記光コネクタの間の第1方向に連続し、前記第1方向に直交するいずれの方向でも導電面に囲まれており、
前記減衰構造は、前記導電面に導通する複数の導電柱からなる柱構造および前記導電面に導通する複数の導電板からなる板構造のいずれかであり、
前記柱構造において、
前記複数の導電柱は、前記第1方向に直交する第2方向に延び、
前記複数の導電柱は、前記第2方向に沿った平面視において、複数の点に配列され、
前記複数の点は、隣同士の四角形の一辺を共有する複数の四角形の頂点にあり、
前記複数の四角形は、少なくとも前記第1方向に並び、
前記複数の四角形の、前記第1方向に隣接する少なくとも一対を前記光ファイバが通り、
前記板構造において、
前記複数の導電板は、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に、表裏面を向けて配列され、
前記複数の導電板は、前記第3方向に相互に間隔をあけて対向し、前記中間空間を、前記第3方向に並ぶ複数の空間に区画し、
前記複数の空間の少なくとも1つは、前記第3方向の幅において、前記電磁波の伝搬を妨げる程度に小さく、
前記複数の空間の前記少なくとも1つを前記光ファイバが通る光送受信機。
【請求項2】
請求項1に記載された光送受信機であって、
前記光電素子は、前記電磁波が発生するようになっている送受信回路の一部であり、
前記電磁波の周波数は、前記送受信回路が伝送するデジタル変調信号の変調レートに対応する周波数である光送受信機。
【請求項3】
請求項1に記載された光送受信機であって、
前記内部空間は、前記光コネクタが収容される第1空間と、前記光電素子が収容される第2空間と、を含み、
前記中間空間は、前記第1空間および前記第2空間の間にあり、前記第2方向の高さにおいて、前記第1空間および前記第2空間よりも小さい光送受信機。
【請求項4】
請求項3に記載された光送受信機であって、
前記第1空間および前記第2空間は、前記第2方向の高さにおいて、前記電磁波の波長の1/2より大きい光送受信機。
【請求項5】
請求項1に記載された光送受信機であって、
前記中間空間は、前記第2方向の高さにおいて、前記電磁波の波長の1/2より小さい光送受信機。
【請求項6】
請求項1に記載された光送受信機であって、
前記減衰構造は、前記柱構造であり、
前記複数の四角形は、前記第1方向および前記第3方向に並んでいる光送受信機。
【請求項7】
請求項6に記載された光送受信機であって、
前記複数の点は、正方格子状に配列され、
前記複数の四角形のそれぞれは、矩形である光送受信機。
【請求項8】
請求項6に記載された光送受信機であって、
前記複数の点は、正三角格子状に配列され、
前記複数の四角形のそれぞれは、矩形を除く平行四辺形であり、
前記平行四辺形の対向する一対の辺が、前記第1方向に平行である光送受信機。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された光送受信機であって、
前記減衰構造と前記導電面の前記第3方向の間隙は、前記複数の四角形のそれぞれの一辺の長さよりも小さく、前記複数の導電板の間の間隔よりも小さい光送受信機。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載された光送受信機であって、
前記導電面は、前記第2方向に前記中間空間に突出する凸部を含む光送受信機。
【請求項11】
請求項10に記載された光送受信機であって、
前記凸部は、前記導電面に貼り付けられた導電体から構成される光送受信機。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項に記載された光送受信機であって、
前記第2空間に配置されて端部が前記金属筐体から露出するプリント回路基板をさらに有し、
前記プリント回路基板は、前記端部に電気コネクタを備える光送受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ伝送には、光送受信機(光トランシーバモジュール)が広く用いられている(特許文献1~4)。光送受信機は、光コネクタで光信号を入出力し、電気コネクタで電気信号を入出力し、光信号および電気信号を光電素子で変換するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-3797号公報
【特許文献2】特開2019-125662号公報
【特許文献3】特開2019-66675号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0015456号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光送受信機の内部では、不要電磁波が発生しており、その漏洩抑制が必要になる。特に、光コネクタは樹脂から構成されることが多く、不要電磁波の漏洩が生じやすいので、光コネクタへ伝搬する電磁波を減衰させることが要求される。しかしながら、光電素子と光コネクタの間には、両者を接続する光ファイバのスペースが必要になるため、金属や電波吸収材料などの電磁波遮蔽物の配置が難しい。
【0005】
本発明は、不要電磁波の漏洩抑制を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光送受信機は、光コネクタと、光電素子と、前記光コネクタと前記光電素子を接続する光ファイバと、前記光コネクタ、前記光電素子および前記光ファイバが収容される内部空間を有し、前記内部空間で電磁波が伝搬するようになっている金属筐体と、前記内部空間の、前記光ファイバが通る中間空間に、前記電磁波を減衰させるように設けられた減衰構造と、を有し、前記内部空間は、前記光電素子および前記光コネクタの間の第1方向に連続し、前記第1方向に直交するいずれの方向でも導電面に囲まれており、前記減衰構造は、前記導電面に導通する複数の導電柱からなる柱構造および前記導電面に導通する複数の導電板からなる板構造のいずれかであり、前記柱構造において、前記複数の導電柱は、前記第1方向に直交する第2方向に延び、前記複数の導電柱は、前記第2方向に沿った平面視において、複数の点に配列され、前記複数の点は、隣同士の四角形の一辺を共有する複数の四角形の頂点にあり、前記複数の四角形は、少なくとも前記第1方向に並び、前記複数の四角形の、前記第1方向に隣接する少なくとも一対を前記光ファイバが通り、前記板構造において、前記複数の導電板は、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に、表裏面を向けて配列され、前記複数の導電板は、前記第3方向に相互に間隔をあけて対向し、前記中間空間を、前記第3方向に並ぶ複数の空間に区画し、前記複数の空間の少なくとも1つは、前記第3方向の幅において、前記電磁波の伝搬を妨げる程度に小さく、前記複数の空間の前記少なくとも1つを前記光ファイバが通る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る光送受信機の分解斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る光送受信機の一部断面図である。
【
図3】金属筐体を模擬した導波管の導電面の斜視図である。
【
図7】金属筐体を模擬する導波管の周波数依存性を示す図である。
【
図8】第1の実施形態の変形例の凸部および減衰構造の斜視図である。
【
図9】第2の実施形態に係る光送受信機の複数の導電柱および光ファイバの斜視図である。
【
図10】複数の導電柱および光ファイバの平面図である。
【
図11】金属筐体を模擬する導波管の周波数依存性を示す図である。
【
図12】第3の実施形態に係る光送受信機の減衰構造の斜視図である。
【
図15】金属筐体を模擬する導波管の周波数依存性を示す図である。
【
図16】第3の実施形態の変形例の凸部および減衰構造の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る光送受信機の分解斜視図である。光ファイバ伝送用の光送受信機(光トランシーバモジュール)は、近年のブロードバンドネットワークの普及と共に高速化、小型化および低コスト化されてきている。ビットレートは100Gbit/sから400Gbit/sにも高くなり、400Gbit/sの光送受信機は、MSA(Multi Source Agreement)規格であるQSFP-DDまたはOSFPのように、ケース体積の縮小および部品数の削減が進んでいる。
【0010】
光送受信機が搭載されるネットワーク装置には、その装置が発生する不要電磁波の強度を、法規に定められた限度値以下に抑えることが求められている。米国ではFCC Part 15 Subpart B規格に定められた限度値53.9dB(μV/m)(Class B規格、距離3m、周波数範囲1GHz~40GHzの場合)以下を満足する必要がある。
【0011】
[光コネクタ]
図2は、第1の実施形態に係る光送受信機の一部断面図である。光送受信機は、光コネクタ10を有する。光コネクタ10は、MPO(Multi-Fiber Push On)コネクタである。光コネクタ10およびその内部のMT(Mechanically Transferable)フェルール12の主要な材質は、樹脂であるため、外部への電磁波の放射が生じやすい。光コネクタ10は、ガイドピン14を有する。
【0012】
[光電素子]
光送受信機は、1つまたはそれ以上の光電素子16を有する。光電素子16は、光送信サブアセンブリ(TOSA)16Aおよび光受信サブアセンブリ(ROSA)16Bである。光電素子16は、電磁波が発生するようになっている送受信回路の一部である。電磁波の周波数は、送受信回路が伝送するデジタル変調信号の変調レートに対応する周波数である。400Gbit/sの光送受信機においては、変調レートが26.56Gbaud(正確には26.5625Gbaud)の電気的なシリアルデータ信号を用いるため、その変調レートに対応する周波数26.56GHz(正確には26.5625GHz)の不要電磁波が発生する。光電素子16の位置は、回路設計に応じて異なる。光電素子16は固定金具18で固定されている。
【0013】
[光ファイバ]
光送受信機は、1つまたはそれ以上の光ファイバ20を有する。光ファイバ20は、光コネクタ10と光電素子16を接続する。光ファイバ20の配置は、光電素子16の位置に応じて自在に変えられることが好ましい。
【0014】
[プリント回路基板]
光送受信機は、プリント回路基板22を有する。プリント回路基板22は、端部に電気コネクタ24(例えばカードエッジコネクタ)を備える。プリント回路基板22は、図示しない配線パターンを有しており、光電素子16が電気的に接続される。電気的接続にはフレキシブル基板(FPC基板)26が使用される。プリント回路基板22には、IC28(例えばデジタル・シグナル・プロセッサ)が搭載されている。IC28のノイズ(例えばスイッチングノイズ)に起因して、GHz以上の高い周波数において不要電磁波が発生する。そのため、不要電磁波の装置外部への放射を低減する設計技術がネットワーク装置および光送受信機の双方において重要である。
【0015】
光送受信機において、不要電磁波の主要な励振源は、電気的なシリアルデータ信号(変調信号)を増幅し出力するIC28である。クロック信号とは異なり、理想的にランダムなシリアルデータ信号は繰り返しの信号パターンを含まないため、周波数スペクトル上では大きなピーク強度を持たない(スペクトル拡散)。しかしながら、IC28内部の増幅回路においては、トランジスタの非線形性に起因してスイッチングノイズが発生し、出力信号の周波数スペクトルを観測した場合に変調レート(あるいは変調速度、シンボルレート)に対応する周波数に大きなピークが生じる。このノイズは、プリント回路基板22上から空間へ放射され、不要電磁波として装置外部へと放射される。
【0016】
[金属筐体]
光送受信機は、金属筐体30を有する。金属筐体30は、はめ合わせられた上ケース30Aおよび下ケース30Bを含む。金属筐体30の前方には、光コネクタ10を配置するための開口部があり、光コネクタ10はその中に固定される。金属筐体30(例えば下ケース30B)の後方にある開口部から、プリント回路基板22の端部(電気コネクタ24)が突出する。金属筐体30は、導波管(例えば矩形導波管)を構成する。金属筐体30(導波管)の内面は、導電面である。
【0017】
図3は、金属筐体30を模擬した導波管の導電面の斜視図である。金属筐体30は、光コネクタ10、光電素子16および光ファイバ20が収容される内部空間32を有する。内部空間32は、光電素子16および光コネクタ10の間の第1方向D1に連続する。内部空間32は、第1方向D1に直交するいずれの方向でも導電面に囲まれている。内部空間32で電磁波が伝搬するようになっている。導電面は、QSFP-DDに対応して、幅aを15.3mm、高さbを7.0mmとする。導波管の長さは充分に長いものとする。
【0018】
内部空間32は、光コネクタ10が収容される第1空間34を含む。内部空間32は、光電素子16が収容される第2空間36を含む。プリント回路基板22は、第2空間36に配置される。プリント回路基板22の端部(電気コネクタ24)は、金属筐体30から露出する。
【0019】
内部空間32は、光ファイバ20が通る中間空間38を含む。中間空間38は、第1空間34および第2空間36の間にある。
図2に示すように、導電面は、第1方向D1に直交する第2方向D2(高さ方向)に、中間空間38に突出する凸部40を含む。これにより、
図3に示すように、中間空間38の高さH(5mm以下、より好ましくは3.745mm以下)は、第2方向D2において、第1空間34および第2空間36の高さbよりも小さくなっている。中間空間38の高さHは、第2方向D2において、内部空間32を伝搬する電磁波の波長の1/2より小さい。これに対して、第1空間34および第2空間36の高さb(例えば7mm)は、第2方向D2において、電磁波の波長の1/2(5.65mm)より大きい。中間空間38の長さLは例えば10mmとする。
【0020】
不要電磁波の周波数を26.56GHzとすると、導波管の内部を伝搬するモードは、TE10(mode 1)、TE20(mode 2)、TE01(mode 3)、TE11(mode 4)、TM11(mode 5)の5つのモードである。TE01モードを遮断するには、中間空間38の高さHを、少なくとも周波数26.56GHzにおける波長の1/2以下にする必要がある。
【0021】
理論式より、中間空間38の高さHを5mmとした場合、TE01モード(mode 3)の遮断周波数は30GHzとなり、阻害する効果が得られる。ただし、高さHを5mmとした場合には、中間空間38の長さLを1mm長くするごとに得られる減衰量は2.53dBと算出され、比較的長さの長い中間空間38を必要とする。中間空間38の高さHを3.745mmとした場合、TE01モードの遮断周波数は40GHzに上昇する。高さHを3.745mmとした場合には、中間空間38の長さLを1mm長くするごとに得られる減衰量は5.44dBと増加し、比較的長さの短い中間空間38での阻害が可能となる。
【0022】
不要電磁波の、光コネクタ10からの漏洩をさらに抑圧するには、中間空間38に、金属や電波吸収材料などの遮蔽物を配置して、上下左右方向の間隙を極力小さくして、その間に光ファイバ20を通す、あるいは光ファイバ20を挟み込むことが望まれる。しかし、光ファイバ20の配置の自由度が少なくなり、光電素子16への接続が困難となり、組立作業が困難になる。そこで、本実施形態では、光送受信機は減衰構造42を有する。これにより、他の4つのモードを阻害する効果を得ることができる。
【0023】
[減衰構造]
図4は、減衰構造42および光ファイバ20の斜視図である。
図5は、減衰構造42の側面図である。減衰構造42は、内部空間32の中間空間38にある。減衰構造42は、電磁波を減衰させるようになっている。減衰構造42は、導電面に導通する複数の導電柱44(例えば金属柱)からなる柱構造である。複数の導電柱44は、第2方向D2に延びる。
【0024】
図6は、減衰構造42の平面図である。複数の導電柱44は、第2方向D2に沿った平面視において、複数の点Pに配列される。複数の点Pは、正方格子状に配列されている。複数の点Pは、隣同士の四角形Qの一辺を共有する複数の四角形Qの頂点にある。複数の四角形Qのそれぞれは、矩形(例えば正方形)である。複数の四角形Qは、少なくとも第1方向D1に並び、第1方向D1および第2方向D2に直交する第3方向D3(幅方向)にも並ぶ。複数(少なくとも3つ)の導電柱44が、第1方向D1に配列されている。複数(例えば4つ)の導電柱44が、第3方向D3に配列されている。減衰構造42と導電面の第3方向D3の間隙は、複数の四角形Qのそれぞれの一辺の長さよりも小さい。
【0025】
減衰構造42を光ファイバ20が通る。複数の四角形Qの、第1方向D1に隣接する少なくとも一対を光ファイバ20が通る。なお、誘電体からなる光ファイバ20に代えて、銅線などの導電線を配置した場合には、上記の5つのモードとは異なる伝搬モード(TEMモード)が生じるため、上記のような不要電磁波に対する充分に大きな阻害効果は得ることができなくなる。
【0026】
[周波数依存性]
図7は、金属筐体30を模擬する導波管の周波数依存性を示す図である。周波数依存性は三次元電磁界解析ツールにより算出した。中間空間38の高さHは3.745mmとし、中間空間38の長さLは10mmとした。導電柱44を外径0.75mmの円柱形状とし、導電柱44の中心間距離を3.36mmとした。導電柱44の間隔は2.61mm(3.0mm以下)である。導電柱44と導電面との間隙Gは2.235mm(3.0mm以下)である。周波数26.56GHzにおける小信号通過特性(S21)は-40dB以下を示し、不要電磁波に対し充分に大きな阻害効果が得られることを示している。
【0027】
また、電磁残響室(RVC; Electromagnetic reverberation chamber)を模擬した三次元電磁界解析ツールによる解析を実施したところ、本実施形態に係る光送受信機において、周波数26.56GHzの不要電磁波を約40dB低減することができ、充分に大きな阻害効果が得られるという結果を得た。この結果は、
図7の小信号通過特性(S21)の結果と矛盾しない。
【0028】
本実施形態によれば、不要電磁波が発生する光送受信機において、中間空間38が、光ファイバ20を配置する大きさを確保しながら、不要電磁波を阻害することができ、不要電磁波の低減と光ファイバ20の配置の自由度確保を両立した光送受信機を提供することができる。
【0029】
[第1の実施形態の変形例]
図8は、第1の実施形態の変形例の凸部および減衰構造の斜視図である。本変形例では、凸部の無い金属筐体の内面に、導電体146が貼り付けられて、凸部140が構成される。導電体146は、全体的に金属から構成されてもよいし、樹脂板を覆うメッキ皮膜であってもよいし、導電性ゴムや導電性不織布でもよい。導電体146の貼り付けには、導電性接着剤を使用することができる。一対の導電体146の間に複数の導電柱144が介在する。一方の導電体146および複数の導電柱144を一体的に金属で形成し、他方の導電体146を導電性ゴムまたは導電性不織布で形成してもよい。
【0030】
導電体146は、金属筐体とは別部品であるため、金属筐体の材料や製造プロセスに制限されることなく、材料および製造プロセスを選択することができ、安価で高品質な不要電磁波の阻害構造を持つ光送受信機を提供することができる。
【0031】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態に係る光送受信機の複数の導電柱および光ファイバの斜視図である。金属筐体を模擬する導波管の導電面が二点鎖線で示されている。本実施形態は、複数の導電柱244の配列において、第1の実施形態と異なる。
【0032】
図10は、複数の導電柱244および光ファイバ220の平面図である。複数の導電柱244が並ぶ複数の点Pは、隣同士の四角形Qの一辺を共有する複数の四角形Qの頂点にある。複数の四角形Qのそれぞれは、矩形を除く平行四辺形であり、対向する一対の辺が第1方向D1に平行である。言い換えると、複数の点Pは、正三角格子状に配列されている。複数の四角形Qの、第1方向D1に隣接する少なくとも一対(例えば二対)を、複数の光ファイバ220が通る。
【0033】
第1方向D1に少なくとも3つの導電柱244が配列されている。第3方向D3に例えば4つの導電柱244がジグザグに配列されている。導電柱244は、中心間距離を3.73mmとし、間隔を2.98mm(3.0mm以下)とし、導電柱244と導電面との間隙Gを約2.43mm(3.0mm以下)とした。導電柱244の外径ならびに中間空間238の高さおよび長さは、第1の実施形態と同じである。
【0034】
図11は、金属筐体を模擬する導波管の周波数依存性を示す図である。周波数依存性は三次元電磁界解析ツールにより算出した。周波数26.56GHzにおける小信号通過特性(S21)は-37dB以下を示しており、不要電磁波に対し充分に大きな阻害効果が得られている。
【0035】
[第3の実施形態]
図12は、第3の実施形態に係る光送受信機の減衰構造の斜視図である。金属筐体を模擬する導波管の導電面が二点鎖線で示されている。
図13は、減衰構造の側面図である。
図14は、減衰構造の平面図である。
【0036】
減衰構造342は、導電面に導通する複数の導電板348からなる板構造である。複数の導電板348は、第1方向D1および第2方向D2に直交する第3方向D3に、表裏面を向けて配列される。複数の導電板348は、第3方向D3に相互に間隔をあけて対向している。複数の導電板348は、中間空間338を、第3方向D3に並ぶ複数の空間Sに区画する。複数の空間Sの少なくとも1つは、第3方向D3の幅において、電磁波の伝搬を妨げる程度に小さい。複数の空間Sの少なくとも1つを光ファイバが通る。減衰構造342と導電面の第3方向D3の間隙Gは、複数の導電板348の間の間隔よりも小さい。
【0037】
導電板348を厚さ0.75mm、長さ7.22mmの形状とした。導電板348の中心間距離を3.73mmとし、間隔を2.98mm(3.0mm以下)とした。導電板348と導電面との間隙Gは約2.43mm(3.0mm以下)とした。中間空間338の高さおよび長さは、第1の実施形態と同じである。
【0038】
図15は、金属筐体を模擬する導波管の周波数依存性を示す図である。周波数依存性は三次元電磁界解析ツールにより算出した。周波数26.56GHzにおける小信号通過特性(S21)は-58dB以下を示しており、不要電磁波に対し充分に大きな阻害効果が得られている。
【0039】
また、電磁残響室(RVC; Electromagnetic reverberation chamber)を模擬した三次元電磁界解析ツールによる解析を実施したところ、本実施形態に係る光送受信機において、周波数26.56GHzの不要電磁波を約60dB低減することができ、充分に大きな阻害効果が得られるという結果を得た。この結果は、
図15の小信号通過特性(S21)の結果と矛盾しない。
【0040】
[第3の実施形態の変形例]
図16は、第3の実施形態の変形例の凸部および減衰構造の分解斜視図である。本変形例では、凸部の無い金属筐体の内面に、導電体446が貼り付けられて、凸部440が構成される。導電体446は、全体的に金属から構成されてもよいし、樹脂板を覆うメッキ皮膜であってもよいし、導電性ゴムや導電性不織布でもよい。導電体446の貼り付けには、導電性接着剤を使用することができる。あるいは、導電体446および複数の導電板448を、導電性不織布を折り曲げて形成してもよい。
【0041】
[実施形態の概要]
(1)光送受信機は、光コネクタ10と、光電素子16と、前記光コネクタ10と前記光電素子16を接続する光ファイバ20と、前記光コネクタ10、前記光電素子16および前記光ファイバ20が収容される内部空間32を有し、前記内部空間32で電磁波が伝搬するようになっている金属筐体30と、前記内部空間32の、前記光ファイバ20が通る中間空間38に、前記電磁波を減衰させるように設けられた減衰構造42と、を有し、前記内部空間32は、前記光電素子16および前記光コネクタ10の間の第1方向D1に連続し、前記第1方向D1に直交するいずれの方向でも導電面に囲まれており、前記減衰構造42は、前記導電面に導通する複数の導電柱44からなる柱構造および前記導電面に導通する複数の導電板348からなる板構造のいずれかであり、前記柱構造において、前記複数の導電柱44は、前記第1方向D1に直交する第2方向D2に延び、前記複数の導電柱44は、前記第2方向D2に沿った平面視において、複数の点Pに配列され、前記複数の点Pは、隣同士の四角形Qの一辺を共有する複数の四角形Qの頂点にあり、前記複数の四角形Qは、少なくとも前記第1方向D1に並び、前記複数の四角形Qの、前記第1方向D1に隣接する少なくとも一対を前記光ファイバ20が通り、前記板構造において、前記複数の導電板348は、前記第1方向D1および前記第2方向D2に直交する第3方向D3に、表裏面を向けて配列され、前記複数の導電板348は、前記第3方向D3に相互に間隔をあけて対向し、前記中間空間38を、前記第3方向D3に並ぶ複数の空間Sに区画し、前記複数の空間Sの少なくとも1つは、前記第3方向D3の幅において、前記電磁波の伝搬を妨げる程度に小さく、前記複数の空間Sの前記少なくとも1つを前記光ファイバ20が通る。減衰構造42によって、電磁波を減衰させることができ、不要電磁波の漏洩抑制が可能になる。
(2)(1)に記載された光送受信機であって、前記光電素子16は、前記電磁波が発生するようになっている送受信回路の一部であり、前記電磁波の周波数は、前記送受信回路が伝送するデジタル変調信号の変調レートに対応する周波数である光送受信機。
(3)(1)又は(2)に記載された光送受信機であって、前記内部空間32は、前記光コネクタ10が収容される第1空間34と、前記光電素子16が収容される第2空間36と、を含み、前記中間空間38は、前記第1空間34および前記第2空間36の間にあり、前記第2方向D2の高さにおいて、前記第1空間34および前記第2空間36よりも小さい光送受信機。
(4)(3)に記載された光送受信機であって、前記第1空間34および前記第2空間36は、前記第2方向D2の高さにおいて、前記電磁波の波長の1/2より大きい光送受信機。
(5)(1)から(4)のいずれか1つに記載された光送受信機であって、前記中間空間38は、前記第2方向D2の高さにおいて、前記電磁波の波長の1/2より小さい光送受信機。
(6)(1)から(5)のいずれか1つに記載された光送受信機であって、前記減衰構造42は、前記柱構造であり、前記複数の四角形Qは、前記第1方向D1および前記第3方向D3に並んでいる光送受信機。
(7)(6)に記載された光送受信機であって、前記複数の点Pは、正方格子状に配列され、前記複数の四角形Qのそれぞれは、矩形である光送受信機。
(8)(6)に記載された光送受信機であって、前記複数の点Pは、正三角格子状に配列され、前記複数の四角形Qのそれぞれは、矩形を除く平行四辺形であり、前記平行四辺形の対向する一対の辺が、前記第1方向D1に平行である光送受信機。
(9)(1)から(8)のいずれか1つに記載された光送受信機であって、前記減衰構造42と前記導電面の前記第3方向D3の間隙Gは、前記複数の四角形Qのそれぞれの一辺の長さよりも小さく、前記複数の導電板348の間の間隔よりも小さい光送受信機。
(10)(1)から(9)のいずれか1つに記載された光送受信機であって、前記導電面は、前記第2方向D2に前記中間空間38に突出する凸部40を含む光送受信機。
(11)(10)に記載された光送受信機であって、前記凸部140は、前記導電面に貼り付けられた導電体146から構成される光送受信機。
(12)(1)から(12)のいずれか1つに記載された光送受信機であって、前記第2空間36に配置されて端部が前記金属筐体30から露出するプリント回路基板22をさらに有し、前記プリント回路基板22は、前記端部に電気コネクタ24を備える光送受信機。
【符号の説明】
【0042】
10 光コネクタ、12 MTフェルール、14 ガイドピン、16 光電素子、16A 光送信サブアセンブリ、16B 光受信サブアセンブリ、18 固定金具、20 光ファイバ、22 プリント回路基板、24 電気コネクタ、26 フレキシブル基板、28 IC、30 金属筐体、30A 上ケース、30B 下ケース、32 内部空間、34 第1空間、36 第2空間、38 中間空間、40 凸部、42 減衰構造、44 導電柱、140 凸部、144 導電柱、146 導電体、220 光ファイバ、238 中間空間、244 導電柱、338 中間空間、342 減衰構造、348 導電板、440 凸部、446 導電体、448 導電板、a 幅、b 高さ、D1 第1方向、D2 第2方向、D3 第3方向、G 間隙、H 高さ、L 長さ、P 点、Q 四角形、S 空間。