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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039740
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】電動車両用充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240315BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240315BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240315BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20240315BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/02 V
B60L53/14
B60L53/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144329
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】江藤 悟
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA01
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD04
5H125AA01
5H125AC11
5H125AC24
5H125BC22
5H125BE02
5H125CC06
5H125CD02
5H125DD03
5H125DD04
5H125EE41
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】ユーザが追い充電を行うような場合でも、ユーザが充電スタンドコネクタの挿抜動作を行うことなく電動車両の蓄電池の充電を再開させることが可能な電動車両用充電システムを提供する。
【解決手段】電動車両5と充電スタンド2との間でCP信号を含むPLC信号を送受信して蓄電池51の充電を行う電動車両用充電システム1であって、電動車両5の充電制御部57は、指示装置6から充電再開の指示を受信すると、スイッチSW3を制御して通信線8を切断させることでCP信号のピーク電圧を充電スタンドコネクタ3の接続状態に対応する第2電圧から充電スタンドコネクタ3の非接続状態に対応する第1電圧に遷移させた後、スイッチSW3を制御して通信線8を接続させることでCP信号のピーク電圧を第1電圧から第2電圧に遷移させてCPリセット処理を行って、充電スタンド2から電動車両5の蓄電池51への充電を再開させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池が設けられた電動車両と、前記蓄電池に充電スタンドコネクタを介して充電を行う充電スタンドとの間で、充電制御信号であるCP信号を含むPLC信号を送受信して充電を行う電動車両用充電システムであって、
ユーザが前記電動車両に対して充電再開を指示するための指示装置を備え、
前記充電スタンドは、通信線を介して前記PLC信号を送受信する電子制御部を備え、
前記電動車両は、前記通信線を介して前記PLC信号を送受信して前記蓄電池の充電を行う充電器と、前記通信線上に設けられたスイッチと、前記スイッチを制御する充電制御部と、を備え、
前記充電制御部は、ユーザの操作により前記指示装置から送信された充電再開の指示を受信すると、前記スイッチを制御して前記通信線を切断させることで前記CP信号のピーク電圧を前記充電スタンドコネクタの接続状態に対応する第2電圧から前記充電スタンドコネクタの非接続状態に対応する第1電圧に遷移させ、その後、前記スイッチを制御して前記通信線を接続させることで前記CP信号のピーク電圧を前記第1電圧から前記第2電圧に遷移させてCPリセット処理を行って、前記充電スタンドから前記電動車両の前記蓄電池への充電を再開させることを特徴とする電動車両用充電システム。
【請求項2】
前記充電制御部は、充電エラーが発生した場合には、前記指示装置に充電エラーが発生した旨の通知を送信し、
前記指示装置は、前記充電制御部から前記通知を受信すると、ユーザに充電エラーが発生した旨を報知することを特徴とする請求項1に記載の電動車両用充電システム。
【請求項3】
前記充電制御部は、充電が終了した場合には前記指示装置に充電が終了した旨の通知を送信し、
前記指示装置は、前記充電制御部から前記通知を受信すると、ユーザに充電が終了した旨を報知することを特徴とする請求項1に記載の電動車両用充電システム。
【請求項4】
前記充電制御部は、ユーザの操作により前記指示装置から送信された充電再開の指示を受信すると、直前の前記蓄電池の充電の際に前記充電スタンドと前記電動車両との間の通信プロトコルのハンドシェイクエラーにより終了した場合には、通信プロトコルを変更した後、前記CPリセット処理を行って、前記充電スタンドから前記電動車両の前記蓄電池への充電を再開させることを特徴とする請求項1に記載の電動車両用充電システム。
【請求項5】
前記充電制御部は、ユーザの操作により前記指示装置から送信された充電再開の指示を受信すると、直前の前記蓄電池の充電の際に前記充電スタンドと前記電動車両との間で通信プロトコルのハンドシェイクエラーが生じなかった場合には、通信プロトコルを変更せずに、前記CPリセット処理を行って、前記充電スタンドから前記電動車両の前記蓄電池への充電を再開させることを特徴とする請求項1に記載の電動車両用充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラグインハイブリッド車や電気自動車等の電動車両に搭載された蓄電池に対する充電の規格の1つとして、CCS(Combined Charging System)規格がある。
CCS規格での充電では、ユーザにより充電スタンドコネクタが電動車両に接続されて、充電制御信号であるCP(Control Pilot)信号のピーク電圧が12Vから9Vに変化したことを充電スタンドが検知することで充電が開始される。
【0003】
そのため、充電エラーが生じた後で充電を再開する場合や、充電が正常に終了した後でユーザが追い充電を行うような場合には、ユーザが充電スタンドコネクタを電動車両から一旦抜いた後、再び充電スタンドコネクタを電動車両に挿し込む動作が必要になる。
すなわち、充電スタンドコネクタを抜いてCP信号のピーク電圧を9Vから一旦12Vに遷移させてCPリセット処理を行った後、再び充電スタンドコネクタを電動車両に挿し込んでCP信号のピーク電圧を12Vから9Vに変化させる動作が必要になる。
【0004】
しかし、充電を再開させるために、ユーザがいちいち手動で充電スタンドコネクタの挿抜動作を行うのは面倒である。そのため、特許文献1では、充電中に充電スタンドと電動車両とが通信途絶状態に陥った際にCPリセット処理を自動的に行う技術が開示されている。
この場合、電動車両内でスイッチ操作を行ってCP信号の12Vと9Vとの間の遷移を実行することで、擬似的に充電スタンドコネクタが一時的に抜かれて再び挿されたようにCP信号を操作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-171613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようにCPリセット処理を自動的に行うように構成すると、充電が正常に終了した場合には、CPリセット処理は行われない。
そのため、上記のように充電が正常に終了した後でユーザが追い充電を行うような場合には、ユーザが手動で充電スタンドコネクタを電動車両から一旦抜いた後、再び充電スタンドコネクタを電動車両に挿し込むことが必要になってしまう。
【0007】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、通信途絶等で充電エラーが生じた場合は勿論、ユーザが追い充電を行うような場合でも、ユーザが充電スタンドコネクタの挿抜動作を行うことなく電動車両の蓄電池の充電を再開させることが可能な電動車両用充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の問題を解決するために、本発明の一実施の形態は、電動車両用充電システムにおいて、
蓄電池が設けられた電動車両と、前記蓄電池に充電スタンドコネクタを介して充電を行う充電スタンドとの間で、充電制御信号であるCP信号を含むPLC(Power Line Communication)信号を送受信して充電を行う電動車両用充電システムであって、
ユーザが前記電動車両に対して充電再開を指示するための指示装置を備え、
前記充電スタンドは、通信線を介して前記PLC信号を送受信する電子制御部を備え、
前記電動車両は、前記通信線を介して前記PLC信号を送受信して前記蓄電池の充電を行う充電器と、前記通信線上に設けられたスイッチと、前記スイッチを制御する充電制御部と、を備え、
前記充電制御部は、ユーザの操作により前記指示装置から送信された充電再開の指示を受信すると、前記スイッチを制御して前記通信線を切断させることで前記CP信号のピーク電圧を前記充電スタンドコネクタの接続状態に対応する第2電圧から前記充電スタンドコネクタの非接続状態に対応する第1電圧に遷移させ、その後、前記スイッチを制御して前記通信線を接続させることで前記CP信号のピーク電圧を前記第1電圧から前記第2電圧に遷移させてCPリセット処理を行って、前記充電スタンドから前記電動車両の前記蓄電池への充電を再開させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信途絶等で充電エラーが生じた場合は勿論、ユーザが追い充電を行うような場合でも、ユーザが充電スタンドコネクタの挿抜動作を行うことなく電動車両の蓄電池の充電を再開させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る電動車両用充電システムの構成を表す図である。
図2】CCS規格での充電における充電スタンドと電動車両と指示装置における各処理の流れを表すシーケンス図である。
図3】通信プロトコルのリストを例示する図である。
図4】通信プロトコルの優先度が変更された通信プロトコルのリストを例示する図である。
図5】修正された充電スタンドと電動車両と指示装置における各処理の流れを表すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動車両用充電システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電動車両用充電システムの構成を表す図である。電動車両用充電システム1は、充電スタンド2と、充電スタンドコネクタ3と、車両インレット4と、電動車両5と、指示装置6と、を備えている。なお、図1では、充電スタンドコネクタ3が車両インレット4に挿し込まれている状態が示されている。
【0012】
充電スタンド2は、電力線7を通じて電動車両5の蓄電池51に充電スタンドコネクタ3を介して充電を行うための電力源21を備えている。
また、充電スタンド2は、電動車両5との間で通信線8を介してPLC信号を送受信する電子制御部22を備えている。
【0013】
PLC信号は、PWM(Pulse Width Modulation)方式でデューティ比を変化させて変調したパルス波を、オシレータ23から出力される矩形波のCP信号に重畳させて構成される。
CP信号はピーク電圧を第1電圧(本実施形態では12V)と第2電圧(9V)と第3電圧(6V)との間で変化させることによって情報を伝達する。
【0014】
また、充電スタンド2の通信線8には、第1スイッチSW1と抵抗24が設けられている。本実施形態では、抵抗24の抵抗値は1kΩである。
そして、電子制御部22は、第1スイッチSW1の切り替えを制御することができる。第1スイッチSW1を切り替えることで抵抗24に+12V、-12Vを印加可能であり、また、第1スイッチSW1をオシレータ23の接続に切り替えることで通信線8を介してCP信号及びPLC信号を出力できるようになっている。
【0015】
これにより、充電スタンドコネクタ3が車両インレット4に挿し込まれていない状態や挿し込まれた直後の初期状態(非接続状態)では、CP信号のピーク電圧が前述した第1電圧(12V)になる。
また、通信線8の抵抗24の下流側(すなわち電動車両5側)にはディテクタ25が接続されており、電子制御部22は、このディテクタ25によりPLC信号の電圧値を含む通信線8の電圧値を検知するようになっている。
【0016】
車両インレット4は電動車両5に設けられており、充電スタンドコネクタ3を挿し込んだり抜き出したりすることができるようになっている。
なお、図1では、電力線7や通信線8が1本ずつ記載されているが、複数本であってもよく、また、他の配線が設けられていてもよい。また、図1では、充電スタンドコネクタ3や車両インレット4内の構成については記載されていないが、スイッチや抵抗など必要な要素を有している。
【0017】
電動車両5は、図示しない電動機を動力源として備えており、例えばプラグインハイブリッド車や電気自動車等として構成される。
電動車両5は、充電スタンド2の電力源21により電力線7を通じて充電が行われる蓄電池51を備えている。
【0018】
また、電動車両5の通信線8には、ダイオード52を介して抵抗53の一端側が接続されている。抵抗53の他端側は接地される。本実施形態では、抵抗53の抵抗値は2.74kΩである。
また、通信線8には、抵抗53に並列に抵抗54が接続されており、抵抗53と抵抗54の間に第2スイッチSW2が設けられている。本実施形態では、抵抗54の抵抗値は1.3kΩである。また、第2スイッチSW2は常開型である。
【0019】
充電制御部57は、通信線8を介して充電スタンド2の電子制御部22から送信されてきたPLC信号を受信するようになっている。
【0020】
また、充電制御部57は、第2スイッチSW2のオン、オフを制御することができるようになっており、第2スイッチSW2のオン、オフを制御して通信線8を介して充電スタンド2の電子制御部22にCP電圧(CP信号の電圧)の遷移を送信することができるようになっている。
充電制御部57は、このようにして通信線8を介して充電スタンド2の電子制御部22との間でCP電圧の遷移を送信できることに加え、PLC信号を送受信して蓄電池51の充電を行うようになっている。
【0021】
また、電動車両5の通信線8上には、ダイオード52の下流側に第3スイッチSW3が設けられており、第3スイッチSW3のオン、オフが充電制御部57により制御されるようになっている。第3スイッチSW3は常閉型である。
また、充電制御部57は、ダイオード52の上流側の通信線8直接及びディテクタ58を介してそれぞれ接続されている。そして、充電制御部57は、ディテクタ58によりPLC信号の電圧値を含む通信線8の電圧値を検知するとともに、通信線8を通じて充電スタンド2の電子制御部22と通信を行うことができるようになっている。
【0022】
なお、充電制御部57から充電スタンド2の電子制御部22への通信は、PLC信号によって行うように構成してもよく、他の方式で通信するように構成することも可能である。
電動車両5は充電器を備え、充電スタンド2から充電器を介して充電電力が蓄電池51へ送られてもよいし、充電器を介さずに充電スタンド2から直接に充電電力が蓄電池51へ送られても良い。充電器を有する場合には、充電器に充電制御部57が含まれていてもよい。
【0023】
一方、指示装置6は、ユーザが携帯するスマートフォンやタブレット等の携帯機器で構成され、電動車両5の充電制御部57との間で通信を行うことができるようになっている。
そのため、ユーザは、指示装置6を操作することで、遠隔で、電動車両5の充電制御部57に対して充電再開を指示することができるようになっている。
【0024】
次に、充電スタンド2による電動車両5の蓄電池51の充電のしかたについて、主にPLC信号の送受信の観点から説明する。
初期状態において第1スイッチSW1は、+12Vに接続されている。よって、充電スタンド2内の通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)が12V(第1電圧)になる。
【0025】
そして、充電スタンドコネクタ3が電動車両5の車両インレット4に挿し込まれると、充電スタンド2内の通信線8と電動車両5内の通信線8同士が接続されて、通信線8に電流が流れる。
そのため、抵抗24及び抵抗53で電圧降下が生じるため、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)が9V(第2電圧)に低下する。
【0026】
充電スタンド2の電子制御部22は、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)が9V(第2電圧)に低下したことを検知したことで、充電スタンドコネクタ3が電動車両5の車両インレット4に挿し込まれたことを認識し、その後、第1スイッチSW1をオシレータ23の接続へ切り替える。
そして、電子制御部22は、電動車両5の充電制御部57との間で信号を送受信して初期設定を行う。なお、この初期設定には、後述する通信プロトコルの選択等が含まれる。
【0027】
そして、初期設定が正常に行われると、電動車両5の充電制御部57は、第2スイッチSW2をオンにさせる(閉じさせる)。これにより、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)が6V(第3電圧)に低下する。
充電スタンド2の電子制御部22は、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)が6V(第3電圧)に低下したことを検知すると、電力源21から電力線7を通じて電動車両5の蓄電池51に電力を供給して蓄電池51の充電を開始する。
【0028】
そして、充電制御部57は、蓄電池51の充電が完了すると、第2スイッチSW2をオフにする(開く)。そのため、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)が9V(第2電圧)に上昇する。
充電スタンド2の電子制御部22は、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)が9V(第2電圧)に上昇したことを検知すると、電力源21からの電力の供給を停止して電動車両5の蓄電池51の充電を終了する。
【0029】
充電スタンドコネクタ3が電動車両5の車両インレット4から抜かれると、通信線8の電流がストップし、充電スタンド2内の通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)が12V(第1電圧)に上昇する。
これにより、充電スタンド2の電子制御部22は、充電スタンドコネクタ3が電動車両5の車両インレット4から抜かれたことを認識して、第1スイッチSW1をオシレータ23の接続から+12Vへの接続に切り替える。このようにして、電動車両5の蓄電池51の充電が行われる。
【0030】
次に、充電エラーが生じたりユーザが追い充電を行うなどして電動車両5の蓄電池51の充電を再開させる場合の充電制御部57における処理等について説明する。また、本実施形態に係る電動車両用充電システム1の作用についてもあわせて説明する。
本発明では、このような場合に、ユーザが充電スタンドコネクタ3の挿抜動作を行うことなく電動車両5の蓄電池51の充電を再開させることができるようになっている。
【0031】
上記のように、充電スタンド2の電子制御部22による電動車両5の蓄電池51の充電の開始(再開)は、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)が12V(第1電圧)から9V(第2電圧)に低下することがトリガになる。
しかし、上記のように、電動車両5の蓄電池51の充電が終了した状態では、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)は9V(第2電圧)である。
【0032】
また、充電エラーが生じた場合も、電動車両5の充電制御部57は第2スイッチSW2をオフにさせる(開かせる)ようになっているため、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)は9V(第2電圧)になる。
そのため、充電エラーの場合も充電終了の場合も、充電スタンドコネクタ3が車両インレット4に挿し込まれた状態では、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)は12V(第1電圧)にはならない。
【0033】
そのため、このままの状態では、充電スタンドコネクタ3を車両インレット4に挿し込んだ状態のままで充電を再開させることができない。
そこで、電動車両5の充電制御部57は、以下のように処理することで、充電スタンドコネクタ3を車両インレット4に挿し込んだ状態のまま、通信線8の電圧値(CP信号のピーク電圧)を12V(第1電圧)に上昇させて充電を再開させるようになっている。
【0034】
以下、具体的に説明する。なお、充電スタンドコネクタ3は車両インレット4に挿し込まれた状態である。
電動車両5の充電制御部57は、蓄電池51の充電中に充電エラーが発生した場合、上記のように充電制御部57は第2スイッチSW2をオフにさせるとともに、指示装置6に対して充電エラーが発生した旨の通知を送信する。
指示装置6は、充電制御部57から通知を受信すると、画面に表示するなどしてユーザに通知、すなわちこの場合は充電エラーが発生した旨の通知を報知する。
【0035】
また、充電制御部57は、蓄電池51の充電が終了した場合も、第2スイッチSW2をオフにさせるとともに、指示装置6に対して充電が終了した旨の通知を送信する。
指示装置6は、充電制御部57から通知を受信すると、画面に表示するなどしてユーザに通知、すなわちこの場合は充電が終了した旨の通知を報知する。
【0036】
そして、ユーザは、充電エラーにより中断した蓄電池51の充電を再開させる場合や、蓄電池51の充電が正常に終了した後で追い充電を行う場合には、指示装置6を操作して指示装置6から電動車両5の充電制御部57に充電再開の指示を送信させる。
そして、充電制御部57は、指示装置6から送信された充電再開の指示を受信すると、第3スイッチSW3を制御してオフにして(開いて)、通信線8を切断させる。
【0037】
通信線8を切断すると、通信線8に電流が流れなくなるため、通信線8の電圧値すなわちCP信号のピーク電圧が9Vから12Vに遷移する。すなわち、第3スイッチSW3をオフにすることで、CP信号のピーク電圧を、充電スタンドコネクタ3の接続状態に対応する9V(第2電圧)から充電スタンドコネクタ3の非接続状態に対応する12V(第1電圧)に遷移させることができる。
本発明では、このようにして、第3スイッチSW3をオフにすることで、擬似的に充電スタンドコネクタ3が車両インレット4から抜かれた状態を作り出すようになっている。
【0038】
続いて、電動車両5の充電制御部57は、第3スイッチSW3を制御してオンにして(閉じて)、通信線8を接続させる。
通信線8を接続すると、通信線8に電流が流れるため、通信線8の電圧値すなわちCP信号のピーク電圧が12Vから9Vに遷移する。すなわち、第3スイッチSW3をオンにすることで、CP信号のピーク電圧を12V(第1電圧)から9V(第2電圧)に遷移させることができる。
【0039】
このようにして、第3スイッチSW3をオフにした後、オンにすることで、充電スタンドコネクタ3が車両インレット4から抜かれた後、車両インレット4に差し込む状態を擬似的に作り出すようになっている。
本発明では、このようにして、充電スタンドコネクタ3を電動車両5の車両インレット4に差し込んだ状態のままCPリセット処理を行うことが可能となる。そして、CPリセット処理を行って充電スタンド2から電動車両5の蓄電池51への充電を再開させることができるようになっている。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る電動車両用充電システムによれば、ユーザは、追い充電を行う場合、指示装置6を操作して充電再開を指示するだけで、充電スタンドコネクタ3の挿抜動作を行うことなく電動車両5の蓄電池51の充電を再開させることができる。
また、通信途絶等で充電エラーが生じた場合も、ユーザは、指示装置6を操作して充電再開を指示すれば、ユーザが充電スタンドコネクタ3の挿抜動作を行うことなく電動車両5の蓄電池51の充電を再開させることが可能となる。
【0041】
ところで、上記のように、電動車両5の充電制御部57は、充電エラーにより中断した蓄電池51の充電を再開させる場合も、蓄電池51の充電が正常に終了した後で追い充電を行う場合も、同様にCPリセット処理を行って蓄電池51の充電を再開させる。
しかし、再開直前の蓄電池51の充電が充電スタンド2と電動車両5との間の通信プロトコルのハンドシェイクエラーにより終了した場合には、蓄電池51の充電が再開されない可能性がある。以下、この点について説明する。
【0042】
まず、CCS規格で充電を行う際に充電スタンド2と電動車両5と指示装置6における各処理について説明する。
図2は、CCS規格での充電における充電スタンドと電動車両と指示装置における各処理の流れを表すシーケンス図である。なお、図2では、主にPLC信号の流れが記載されている。
【0043】
まず、ユーザにより充電スタンドコネクタ3が電動車両5の車両インレット4に挿し込まれると、充電スタンド2と電動車両5の通信線8同士が接続される。
そのため、通信線8の電圧値すなわちCP信号のピーク電圧が12V(第1電圧)から9V(第2電圧)に低下する。
【0044】
充電スタンド2の電子制御部22は、CP信号のピーク値が9Vに低下したことをトリガとして、初期設定のために必要な情報をPLC信号により電動車両5に送る。PLC信号はCP信号へ重畳して送られる。
そして、電動車両5の充電制御部57は、使用可能な通信プロトコルのリストを充電スタンド2に送信する。
【0045】
この場合、通信プロトコルのリストLには、例えば図3に示すように、電動車両5で使用可能な全ての通信プロトコルA~Cが含まれている。
また、リストLでは、使用可能な各通信プロトコルA~Cに対してそれぞれ優先度が対応付けられている。
【0046】
充電スタンド2は、送信されてきたリストLの中から充電スタンド2が対応している通信プロトコルのうち優先度が最も高い通信プロトコルを選択する。以下、通信プロトコルAが選択されたものとする。
そして、充電スタンド2は、選択した通信プロトコルAとハンドシェイクできた場合(判定処理でNO判定した場合)は、通信プロトコルを通信プロトコルAに決定した旨を電動車両5に通知する。
【0047】
そして、前述したように通常の充電処理を行う。
すなわち、電動車両5の充電制御部57は、第2スイッチSW2をオンにさせて、通信線8の電圧値すなわちCP信号のピーク電圧を6V(第3電圧)に低下させる。
そして、充電スタンド2の電子制御部22は、これをトリガとして、電力源21から電力線7を通じて電動車両5の蓄電池51に電力を供給するなどして蓄電池51の充電を行う。
【0048】
充電制御部57は、第2スイッチSW2をオフにして(開いて)、通信線8の電圧値すなわちCP信号のピーク電圧を9V(第2電圧)に上昇させることで、充電スタンド2に対して充電停止要求を行う。
充電スタンド2の電子制御部22は、電動車両5に対して充電を停止する旨を応答した後、電力源21から電動車両5の蓄電池51への電力の供給を停止するなどして蓄電池51の充電を終了する。
【0049】
充電が終了すると、電動車両5の充電制御部57は、指示装置6に対して充電が終了した旨の通知を送信する。
そして、指示装置6は、充電制御部57から通知を受信すると、画面に表示するなどしてユーザに充電が終了した旨の通知を報知する。
【0050】
ここでユーザが充電スタンドコネクタ3を電動車両5の車両インレット4から抜いた場合には、一連の電動車両5の蓄電池51の充電処理が終了する。
一方、ここで、ユーザが追い充電を行うために指示装置6を操作して電動車両5の蓄電池51の充電を再開させる旨の指示を行うと、前述したように、電動車両5の充電制御部57は第3スイッチSW3を制御してオフにする(開く)。
【0051】
すると、通信線8が切断され、通信線8の電圧値すなわちCP信号のピーク電圧が12V(第1電圧)に遷移する。
続いて、電動車両5の充電制御部57は、第3スイッチSW3を制御してオンにする(閉じる)ことでCP信号のピーク電圧が9V(第2電圧)に遷移させる。
【0052】
このようにして、初期設定(PLC信号をCP信号に重畳して送信)の処理から各処理が再開されて追い充電が行われる。
そして、再開された処理においても、充電スタンド2は通信プロトコルAを選択する。そして、充電スタンド2は通信プロトコルAとハンドシェイクできる(判定処理でNO判定)ため、通信プロトコルAを使って充電スタンド2-電動車両5間の通信を行うことが可能となる。そのため、蓄電池51の追い充電が正常に行われる。
【0053】
一方、ユーザにより充電スタンドコネクタ3が電動車両5の車両インレット4に挿し込まれて最初に充電スタンド2が通信プロトコルAを選択した際に、通信プロトコルAとハンドシェイクできなかった場合(判定処理でYES判定した場合)は問題が生じ得る。
この場合、図2に示すように、充電スタンド2は、通信プロトコルエラー(通信プロトコルのハンドシェイクエラー)が発生した旨を電動車両5に通知する。
【0054】
そのため、電動車両5の充電制御部57は、通信プロトコルエラーが発生したことを検知して、蓄電池51の充電処理を行わずに、CP信号のピーク電圧を9V(第2電圧)に上昇させて充電スタンド2に対して充電停止要求を行う。
そして、充電スタンド2の電子制御部22は、電動車両5に対して充電を停止する旨を応答した後、電力源21から電動車両5の蓄電池51への電力の供給を停止するなどして蓄電池51の充電を終了する。
【0055】
電動車両5の充電制御部57は、このようにして充電を中断すると、指示装置6に対して充電エラーにより蓄電池51の充電を中断した旨の通知を送信する。
そして、指示装置6は、充電制御部57から通知を受信すると、画面に表示するなどしてユーザに充電エラーにより蓄電池51の充電が中断された旨の通知を報知する。
【0056】
ここでユーザが充電スタンドコネクタ3を電動車両5の車両インレット4から抜いた場合は、電動車両5の蓄電池51の充電が行われないまま充電処理が終了する。
一方、ここで、ユーザが電動車両5の蓄電池51の充電を再度行うために指示装置6を操作して電動車両5の蓄電池51の充電を再開させる旨の指示を行った場合は、以下のように問題が生じ得る。
【0057】
すなわち、この場合、前述したように、電動車両5の充電制御部57は第3スイッチSW3を制御してオフ、オフにすると、上記のように初期設定から各処理が再開される。
しかし、再開された処理において、充電スタンド2は再び通信プロトコルAを選択してしまうため、選択した通信プロトコルAとハンドシェイクできない(判定処理でYES判定)。
【0058】
そして、上記の実施形態では、ユーザが充電スタンドコネクタ3を電動車両5の車両インレット4から抜かずに指示装置6で充電再開の指示を行う限り、充電スタンド2が通信プロトコルAとハンドシェイクできない状態が続く。
そのため、充電スタンド2と電動車両5とがいつまでたっても通信できず、蓄電池51の充電も行えない状態に陥ってしまう。
【0059】
そこで、上記のように、電動車両5の蓄電池51の充電の際に、充電スタンド2と電動車両5との間の通信プロトコルのハンドシェイクエラーにより充電が終了(中断)した場合は、通信プロトコルが変更されるように構成することが可能である。
すなわち、通信プロトコルエラーにより充電が終了した際に、ユーザから充電再開の指示があった場合に、電動車両5の充電制御部57は、図4に示すように通信プロトコルのリストLにおける各通信プロトコルの優先度を変更するように構成することができる。
【0060】
このように構成すれば、通信プロトコルエラーにより蓄電池51の充電を再開する際に充電スタンド2が選択する通信プロトコルが前回の通信プロトコルAから通信プロトコルBに替わる。
そのため、充電スタンド2は通信プロトコルAとはハンドシェイクできなかったが通信プロトコルBとハンドシェイクできる可能性があるため、通信プロトコルエラーに基づく上記の問題が生じることを回避できる可能性が生じる。
【0061】
なお、蓄電池51の充電が正常に終了し、ユーザが追い充電を行うために充電再開を指示した場合は、通信プロトコルエラーは生じていないため、通信プロトコルを変更する必要はない。
そのため、通信プロトコルエラーが生じた場合にだけ通信プロトコルの優先度を変更するように構成することが望ましい。
【0062】
そこで、図2に示した処理シーケンスを、例えば図5に示すように修正することが可能である。
なお、図5のシーケンス図において、図2のシーケンス図と同一の処理については説明を省略する。
【0063】
指示装置6から電動車両5の蓄電池51の充電を再開させる旨の指示を受信すると、電動車両5の充電制御部57は、直前のシーケンスで、充電スタンド2から通信プロトコルエラーの通知があったか否かを判断するように構成する。
すなわち、充電制御部57は、ユーザの操作により指示装置6から送信された充電再開の指示を受信すると、直前の蓄電池51の充電の際に充電スタンド2と電動車両5との間の通信プロトコルのハンドシェイクエラーにより終了したか否かを判断する。
【0064】
そして、充電制御部57は、判断処理でYES判定の場合には、通信プロトコルの優先度を例えば図3に示した優先度から図4に示した優先度に変更する。
また、充電制御部57は、判断処理でNO判定の場合は、通信プロトコルの優先度は変更しないように構成することが可能である。
【0065】
このように構成すれば、充電制御部57は、通信プロトコルのハンドシェイクエラーにより終了した場合には、通信プロトコルを変更することができる。
そのため、充電スタンド2が変更後の通信プロトコルとハンドシェイクできれば、CPリセット処理を行って、充電スタンド2から電動車両5の蓄電池51への充電を再開させることが可能となる。
【0066】
また、充電制御部57は、直前の蓄電池51の充電の際に充電スタンド2と電動車両5との間で通信プロトコルのハンドシェイクエラーが生じなかった場合には、通信プロトコルを変更しない。
そのため、充電制御部57は、充電スタンド2とハンドシェイクできている通信プロトコル(上記の例では通信プロトコルA)を引き続き使用することが可能となる。そして、充電スタンド2との間で通信を行いながら、CPリセット処理を行って、充電スタンド2から電動車両5の蓄電池51への充電を再開(この場合は追い充電)させることが可能となる。
【0067】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1 電動車両用充電システム
2 充電スタンド
3 充電スタンドコネクタ
5 電動車両
6 指示装置
8 通信線
22 電子制御部
51 蓄電池
57 充電制御部
A~C 通信プロトコル
SW3 第3スイッチ(スイッチ)
図1
図2
図3
図4
図5