(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039742
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】通過人数計測装置
(51)【国際特許分類】
G01V 8/10 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
G01V8/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144331
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000210403
【氏名又は名称】竹中エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 航佑
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105CC04
2G105EE06
2G105FF11
2G105HH01
(57)【要約】
【課題】外的要因の影響を受けにくい通過人数計測装置を提供する。
【解決手段】検知エリアAを通過した人の数を計測する通過人数計測装置10Aは、時間Δtが経過する毎に検知エリアAに関する熱画像を生成する熱画像生成部11と、時刻tに生成された熱画像および時刻t+Δtに生成された熱画像の差画像である第1差画像を生成する差画像生成部21と、第1差画像に第1ノイズ除去処理を施す第1ノイズ除去処理部22と、第1ノイズ除去処理後の差画像である第2差画像に基づいて通過した人の数を計測する計測部23とを備えている。第1ノイズ除去処理は、第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たすセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置であって、
時間Δtが経過する毎に前記検知エリアに関する熱画像を生成する熱画像生成部と、
時刻tに生成された熱画像および時刻t+Δtに生成された熱画像の差画像である第1差画像を生成する差画像生成部と、
前記第1差画像に対して第1ノイズ除去処理を施す第1ノイズ除去処理部と、
前記第1ノイズ除去処理後の差画像である第2差画像に基づいて前記検知エリアを通過した人の数を計測する計測部と、
を備え、
前記第1ノイズ除去処理は、前記第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たすセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理である
ことを特徴とする通過人数計測装置。
【請求項2】
所定の検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置であって、
予め定めた時間の間に生じた前記検知エリアの熱変化に関する第1差画像を生成する熱画像生成部と、
前記第1差画像に対して第1ノイズ除去処理を施す第1ノイズ除去処理部と、
前記第1ノイズ除去処理後の差画像である第2差画像に基づいて前記検知エリアを通過した人の数を計測する計測部と、
を備え、
前記第1ノイズ除去処理は、前記第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たすセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理である
ことを特徴とする通過人数計測装置。
【請求項3】
所定の検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置であって、
時間Δtが経過する毎に前記検知エリアに関する熱画像を生成する熱画像生成部と、
時刻tに生成された熱画像および時刻t+Δtに生成された熱画像の差画像である第1差画像を生成する差画像生成部と、
前記第1差画像に基づいて第1ノイズ除去処理が必要か否かを判定する判定処理を行う判定処理部と、
前記第1ノイズ除去処理が必要と判定された場合に、前記第1差画像に対して第1ノイズ除去処理を施す第1ノイズ除去処理部と、
前記第1ノイズ除去処理が不要と判定された場合に、前記第1差画像に対して第2ノイズ除去処理を施す第2ノイズ除去処理部と、
前記第1ノイズ除去処理後の差画像である第2差画像、または前記第2ノイズ除去処理後の差画像である第3差画像に基づいて前記検知エリアを通過した人の数を計測する計測部と、
を備え、
前記判定処理は、前記第1差画像全体において昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たした場合は前記第1ノイズ除去処理が必要との判定をし、そうでない場合は前記第1ノイズ除去処理が不要との判定をする処理であり、
前記第1ノイズ除去処理は、前記第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たすセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理であり、
前記第2ノイズ除去処理は、前記第1差画像を構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理である
ことを特徴とする通過人数計測装置。
【請求項4】
所定の検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置であって、
予め定めた時間の間に生じた前記検知エリアの熱変化に関する第1差画像を生成する熱画像生成部と、
前記第1差画像に基づいて第1ノイズ除去処理が必要か否かを判定する判定処理を行う判定処理部と、
前記第1ノイズ除去処理が必要と判定された場合に、前記第1差画像に対して第1ノイズ除去処理を施す第1ノイズ除去処理部と、
前記第1ノイズ除去処理が不要と判定された場合に、前記第1差画像に対して第2ノイズ除去処理を施す第2ノイズ除去処理部と、
前記第1ノイズ除去処理後の差画像である第2差画像、または前記第2ノイズ除去処理後の差画像である第3差画像に基づいて前記検知エリアを通過した人の数を計測する計測部と、
を備え、
前記判定処理は、前記第1差画像全体において昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たした場合は前記第1ノイズ除去処理が必要との判定をし、そうでない場合は前記第1ノイズ除去処理が不要との判定をする処理であり、
前記第1ノイズ除去処理は、前記第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たすセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理であり、
前記第2ノイズ除去処理は、前記第1差画像を構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理である
ことを特徴とする通過人数計測装置。
【請求項5】
前記第1ノイズ除去処理は、前記第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちのいずれかが予め定めた下限値よりも小さいセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の通過人数計測装置。
【請求項6】
前記第1ノイズ除去処理は、前記第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちの小さい方に対する大きい方の比率が予め定めた最大比率よりも大きいセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の通過人数計測装置。
【請求項7】
前記判定処理は、前記第1差画像全体において昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちのいずれかが予め定めた下限値よりも小さければ、前記第1ノイズ除去処理は不要との判定をする処理である
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の通過人数計測装置。
【請求項8】
前記判定処理は、前記第1差画像全体において昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちの小さい方に対する大きい方の比率が予め定めた最大比率よりも大きければ、前記第1ノイズ除去処理は不要との判定をする処理である
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の通過人数計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種施設や各種乗物の出入口付近等に設けられた検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の入退室監視装置が知られている。この装置は、出入口の上方に設けられた一対の熱感知センサ(室外側サーモパイルセンサおよび室内側サーモパイルセンサ)と、各センサの出力信号の差分を増幅する増幅器と、増幅器の出力信号に基づいて人の動きを判別するCPU処理部とを備えている。
【0003】
この装置によれば、人の入室および退室だけでなく、入室しようとした人が入室することなくUターンしたことや、退室しようとした人が退室することなくUターンしたことも判別することができる。しかしながら、この装置は、複数の人が同時に入室または退室をした場合に、その人数を正確に特定することはできない。入室と退室とが同時に起こった場合についても同様である。
【0004】
この問題を解決するために、出入口付近に設けられた検知エリアに関する熱画像を一定時間毎に生成する熱画像センサと、生成された熱画像に基づいて人の動きを判別する判別部とを備えたタイプの装置も提案されている。
【0005】
この装置によれば、検知エリアを通過した人の通過方向と通過人数を判別することができる。例えば、この装置によれば、出入口から2人が入って来るとともに、出入口から3人が出て行ったことを判別することができる。しかしながら、この装置は、自然風、エアコン等の人口風、日差し等の外的要因によって検知エリアの温度が変化した場合に、人の動きを正確に判別することできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外的要因の影響を受けにくい通過人数計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の通過人数計測装置は、所定の検知エリアを通過した人の数を計測する装置であって、時間Δtが経過する毎に検知エリアに関する熱画像を生成する熱画像生成部と、時刻tに生成された熱画像および時刻t+Δtに生成された熱画像の差画像である第1差画像を生成する差画像生成部と、第1差画像に対して第1ノイズ除去処理を施す第1ノイズ除去処理部と、第1ノイズ除去処理後の差画像である第2差画像に基づいて検知エリアを通過した人の数を計測する計測部と、を備え、上記第1ノイズ除去処理は、第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たすセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理である、との構成を有している。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る第2の通過人数計測装置は、所定の検知エリアを通過した人の数を計測する装置であって、時間Δtが経過する毎に検知エリアに関する熱画像を生成する熱画像生成部と、時刻tに生成された熱画像および時刻t+Δtに生成された熱画像の差画像である第1差画像を生成する差画像生成部と、第1差画像に基づいて第1ノイズ除去処理が必要か否かを判定する判定処理を行う判定処理部と、第1ノイズ除去処理が必要と判定された場合に、第1差画像に対して第1ノイズ除去処理を施す第1ノイズ除去処理部と、第1ノイズ除去処理が不要と判定された場合に、第1差画像に対して第2ノイズ除去処理を施す第2ノイズ除去処理部と、第1ノイズ除去処理後の差画像である第2差画像、または第2ノイズ除去処理後の差画像である第3差画像に基づいて検知エリアを通過した人の数を計測する計測部と、を備え、上記判定処理は、第1差画像全体において昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たした場合は第1ノイズ除去処理が必要との判定をし、そうでない場合は第1ノイズ除去処理が不要との判定をする処理であり、上記第1ノイズ除去処理は、第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たすセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理であり、第2ノイズ除去処理は、第1差画像を構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理である、との構成を有している。
【0010】
上記第1ノイズ除去処理は、例えば、第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちのいずれかが予め定めた下限値よりも小さいセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理であってもよい。
【0011】
あるいは、上記第1ノイズ除去処理は、例えば、第1差画像を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちの小さい方に対する大きい方の比率が予め定めた最大比率よりも大きいセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理であってもよい。
【0012】
また、上記判定処理は、例えば、第1差画像全体において昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちのいずれかが予め定めた下限値よりも小さければ、第1ノイズ除去処理は不要との判定をする処理であってもよい。
【0013】
あるいは、上記判定処理は、例えば、第1差画像全体において昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちの小さい方に対する大きい方の比率が予め定めた最大比率よりも大きければ、第1ノイズ除去処理は不要との判定をする処理であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外的要因の影響を受けにくい通過人数計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施例に係る通過人数計測装置のブロック図である。
【
図2】第1実施例に係る通過人数計測装置において生成される第1差画像を示す図である。
【
図3】第1実施例に係る通過人数計測装置における第1ノイズ除去処理を示す図である。
【
図4】第1実施例に係る通過人数計測装置の動作フロー図である。
【
図5】本発明の第2実施例に係る通過人数計測装置のブロック図である。
【
図6】第2実施例に係る通過人数計測装置における第1ノイズ除去処理および第2ノイズ除去処理を示す図である。
【
図7】第2実施例に係る通過人数計測装置の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る通過人数計測装置の実施例について説明する。
【0017】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る通過人数計測装置10Aを示す。通過人数計測装置10Aは、商業施設の出入口付近の床200に設けられた検知エリアAをM1方向に通過する歩行者W1の数とM2方向に通過する歩行者W2の数とを計測するためのもので、同図に示すように、熱画像生成部11と、記憶部12と、制御部20Aと、設定部13と、外部インタフェース部14と、音声出力部15と、発光部16と、これらを収容する筐体とを備えている。通過人数計測装置10Aは、熱画像生成部11が検知エリアAを向くように、天井100に取り付けられている。
【0018】
本実施例では、取り付け高さHが4mである。また、本実施例の検知エリアAは、想定される通過方向M1,M2に直交する辺の長さが4m、通過方向M1,M2に平行な辺の長さが3mの長方形である。取り付け高さHが変化すると、これに応じて検知エリアAの大きさも変化する。
【0019】
熱画像生成部11は、二次元の熱画像センサで構成されている。熱画像生成部11は、検知エリアA(床200)または当該エリアA内にいる歩行者W1,W2から放射される遠赤外線を検出し、検出結果に対応した60画素×45画素の熱画像(より正確には、熱画像に関するデータ)を生成する。熱画像の生成は、1/10s毎に行われる。生成された熱画像は、順次記憶部12に送られる。
【0020】
記憶部12は、揮発性または不揮発性のメモリで構成されている。記憶部12は、熱画像生成部11から1/10s毎に送られてきた熱画像のうち、少なくとも最新のものとその1つ前のものとを格納している。言い換えると、記憶部12には、最後に生成された熱画像(以下、「第2熱画像」という)と、その1/10s前に生成された熱画像(以下、「第1熱画像」という)とが格納されている。
【0021】
制御部20Aは、マイクロプロセッサ(MPU)と当該プロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムとで構成されている。本実施例では、コンピュータプログラムの実行により、差画像生成部21、第1ノイズ除去処理部22、および計測部23が制御部20A内に形成されている。
【0022】
差画像生成部21は、記憶部12に格納された第1熱画像および第2熱画像に基づいて、
図2に示すような60画素×45画素の第1差画像P1(より正確には、第1差画像P1に関するデータ)を生成する。例えば、差画像生成部21は、第2熱画像を構成する座標(0,0)の画素が示す温度から第1熱画像を構成する座標(0,0)の画素が示す温度を引くことにより、第1差画像P1を構成する座標(0,0)の画素が示すべき温度変化を求める。第1差画像P1は、1/10sの間にどのような温度変化があったのかを示しているといえる。
【0023】
第1ノイズ除去処理部22は、差画像生成部21が生成した第1差画像P1に対して第1ノイズ除去処理を施すことにより、第2差画像P2(より正確には、第2差画像P2に関するデータ)を生成する。ここで、第1ノイズ除去処理とは、第1差画像P1を構成する25個のセルC00,C10,C20,・・・,C24,C34,C44(
図2参照)のそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちのいずれかが予め定めた下限値よりも小さいセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理をいう。なお、セルC00,C10,C20,・・・,C24,C34,C44はいずれも、108(=12×9)個の画素で構成されている。
【0024】
図3を参照しながら、第1ノイズ除去処理の具体例について説明する。なお、この例では、下限値を3とした。
【0025】
第1差画像P1を構成するセルC00は、昇温を示す画素(灰色に塗り潰された画素)の数が15個、降温を示す画素(ハッチングが付された画素)の数が12個であった。15および12は、下限値である3よりも大きい。このため、第1ノイズ除去処理部22は、セルC00については“全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する”処理を行わない。言い換えると、第1差画像P1を構成するセルC00の各画素が示す温度変化は、第2差画像P2を構成するセルC00にそのまま引き継がれる(同図(A)参照)。
【0026】
第1差画像P1を構成するセルC22は、昇温を示す画素の数が108個、降温を示す画素の数が0個であった。0は、下限値である3よりも小さい。このため、第1ノイズ除去処理部22、セルC22を構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理を行う(同図(B)参照)。
【0027】
第1差画像P1を構成するセルC44は、昇温を示す画素の数が0個、降温を示す画素の数が91個であった。0は、下限値である3よりも小さい。このため、第1ノイズ除去処理部22は、セルC44を構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理を行う(同図(C)参照)。
【0028】
第1差画像P1を構成するセルに昇温を示す画素および降温を示す画素の両方が含まれている場合、この昇温および降温は、検知エリアAの当該セルに対応する部分を歩行者W1,W2が通過したことにより生じたものと考えられる。一方、第1差画像P1を構成するセルに昇温を示す画素および降温を示す画素の一方のみが含まれている場合、この昇温または降温は、外的要因により生じたものと考えられる。第1ノイズ除去処理によれば、歩行者W1,W2の通過により生じたと考えられる温度変化のみを記録した第2差画像P2を得ることができる。
【0029】
計測部23は、第1ノイズ除去処理部22が生成した第2差画像P2に基づいて、検知エリアAをM1方向に通過した歩行者W1の数とM2方向に通過した歩行者W2の数とを計測する。この計測には、種々の既知の手法を用いることができる。
【0030】
外部インタフェース部14は、適当な外部機器に接続されている。外部インタフェース部14は、計測部23による計測の結果を予め定めたタイミングおよび形式で当該外部機器に送信することができる。
【0031】
音声出力部15は、ブザーまたはスピーカーで構成されている。音声出力部15は、計測部23による計測の結果に対応した音声を出力することにより、計測結果を周辺にいる者に知らせることができる。
【0032】
発光部16は、少なくとも1つの発光ダイオードで構成されている。発光部16は、計測部23による計測の結果に対応した態様(色、明るさ等)で点灯または点滅することにより、計測結果を周辺にいる者に知らせることができる。
【0033】
設定部13は、ディップスイッチで構成されている。ユーザは、設定部13を介して前述の下限値および後述の最大比率を設定することができる。また、ユーザは、設定部13を介して、外部インタフェース部14、音声出力部15および発光部16のオン/オフを個別に切り替えることもできる。
【0034】
図4は、これまでに述べてきた各部の動きを時系列に記述した、本実施例に係る通過人数計測装置10Aの動作フロー図である。
【0035】
ステップS1-1では、熱画像生成部11が生成した第1熱画像を記憶部12が格納する。
【0036】
ステップS1-1の1/10s後に実行されるステップS1-2では、熱画像生成部11が生成した第2熱画像を記憶部12が格納する。
【0037】
ステップS1-2の後に実行されるステップS1-3では、差画像生成部21が第1熱画像および第2熱画像から第1差画像P1を生成する。
【0038】
ステップS1-3の後に実行されるステップS1-4では、第1ノイズ除去処理部22が第1差画像P1に第1ノイズ除去処理を施すことにより、第2差画像P2を生成する。
【0039】
ステップS1-4の後に実行されるステップS1-5では、計測部23が第2差画像P2に基づいて通過人数等を計測する。
【0040】
本実施例に係る通過人数計測装置10Aは、1/10s毎にこの動作フローにしたがって繰り返し動作する。なお、2巡目のフローでは、1巡目で生成・格納された第2熱画像が第1熱画像となる。3巡目以降についても同様である。
【0041】
このように、本実施例に係る通過人数計測装置10Aでは、ノイズとなる外的要因の影響が取り除かれた第2差画像P2に基づいて通過人数等を計測する。このため、通過人数計測装置10Aによれば、外的要因の影響を受けることなく通過人数等を正確に計測することができる。
【0042】
[第2実施例]
図5に、本発明の第2実施例に係る通過人数計測装置10Bを示す。通過人数計測装置10Bは、制御部20Aの代わりに制御部20Bを備えている点において通過人数計測装置10Aと相違しているが、他の点においては通過人数計測装置10Aと共通している。
【0043】
制御部20Bは、制御部20Aと同様、マイクロプロセッサと当該プロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムとで構成されている。ただし、本実施例では、コンピュータプログラムの実行により、差画像生成部21、第1ノイズ除去処理部22、計測部23に加え、判定処理部24および第2ノイズ除去処理部25が制御部20B内に形成されている。
【0044】
判定処理部24は、差画像生成部21が生成した第1差画像P1に基づいて、第1ノイズ除去処理部22による第1ノイズ除去処理が必要か否かを判定する判定処理を行う。ここで、判定処理とは、第1差画像P1の全体において昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数のうちのいずれかが予め定めた下限値よりも小さければ第1ノイズ除去処理は不要との判定をし、そうでなければ第1ノイズ除去処理が必要との判定をする処理をいう。判定処理は、検知エリアA内に歩行者W1,W2が明らかに存在しないことを確認する処理であるともいえる。
【0045】
第2ノイズ除去処理部25は、判定処理部24が不要との判定をした場合(すなわち、検知エリアAを通過中の歩行者W1,W2が明らかに存在しない場合)にのみ、差画像生成部21が生成した第1差画像P1に対して第2ノイズ除去処理を施すことにより、第3差画像P3(より正確には、第3差画像P3に関するデータ)を生成する。ここで、第2ノイズ除去処理とは、第1差画像P1を構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理をいう。
【0046】
判定処理部24が必要との判定をした場合(すなわち、検知エリアAを通過中の歩行者W1,W2が存在するかもしれない場合)は、第1実施例と同様、第1ノイズ除去処理部22が第1差画像P1に対して第1ノイズ除去処理を施すことにより、第2差画像P2を生成する。
【0047】
図6を参照しながら、第1ノイズ除去処理および第2ノイズ除去処理の具体例について説明する。なお、この例では、下限値を1とした。
【0048】
2700個の画素で構成された第1差画像P1が、下限値以上の数の昇温を示す画素および下限値以上の数の降温を示す画素の両方を含んでいる場合は、第1ノイズ除去処理部22が第1差画像P1に対して第1ノイズ除去処理を施し、その結果、第2差画像P2が生成される(同図(A)参照)。
【0049】
一方、第1差画像P1が、下限値以上の数の降温を示す画素を含んでいない場合は、第2ノイズ除去処理部25が第1差画像P1に対して第2ノイズ除去処理を施し、その結果、第3差画像P3が生成される(同図(B)参照)。第1差画像P1が、下限値以上の数の昇温を示す画素を含んでいない場合も、第2ノイズ除去処理部25が第1差画像P1に対して第2ノイズ除去処理を施し、その結果、第3差画像P3が生成される(同図(C)参照)。
【0050】
計測部23は、第1ノイズ除去処理部22が生成した第2差画像P2、または第2ノイズ除去処理部25が生成した第3差画像P3に基づいて、検知エリアAをM1方向に通過した歩行者W1の数とM2方向に通過した歩行者W2の数とを計測する。
【0051】
図7は、本実施例に係る通過人数計測装置10Bの動作フロー図である。
【0052】
ステップS2-1では、熱画像生成部11が生成した第1熱画像を記憶部12が格納する。
【0053】
ステップS2-1の1/10s後に実行されるステップS2-2では、熱画像生成部11が生成した第2熱画像を記憶部12が格納する。
【0054】
ステップS2-2の後に実行されるステップS2-3では、差画像生成部21が第1熱画像および第2熱画像から第1差画像P1を生成する。
【0055】
ステップS2-3の後に実行されるステップS2-4では、判定処理部24が第1差画像P1に基づく判定処理を行う。
【0056】
ステップS2-4において第1ノイズ除去処理が必要との判定がなされた場合に実行されるステップS2-5では、第1ノイズ除去処理部22が第1差画像P1に第1ノイズ除去処理を施すことにより、第2差画像P2を生成する。
【0057】
ステップS2-4において第1ノイズ除去処理は不要との判定がなされた場合に実行されるステップS2-6では、第2ノイズ除去処理部25が第1差画像P1に第2ノイズ除去処理を施すことにより、第3差画像P3を生成する。
【0058】
ステップS2-5またはステップS2-6の後に実行されるステップS2-7では、計測部23が第2差画像P2または第3差画像P3に基づいて通過人数等を計測する。
【0059】
本実施例に係る通過人数計測装置10Bは、1/10s毎にこの動作フローにしたがって繰り返し動作する。なお、2巡目のフローでは、1巡目で生成・格納された第2熱画像が第1熱画像となる。3巡目以降についても同様である。
【0060】
このように、本実施例に係る通過人数計測装置10Bでは、検知エリアAを通過中の歩行者W1,W2が存在するかもしれない場合に限って、第2ノイズ除去処理よりも処理負担が大きい第1ノイズ除去処理を実行する。このため、通過人数計測装置10Bによれば、制御部20Bの処理負担を軽減することができるとともに、外的要因の影響を受けることなく通過人数等を正確に計測することができる。
【0061】
[変形例]
以上、本発明に係る通過人数計測装置の第1実施例および第2実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0062】
例えば、通過人数計測装置10A,10Bは、商業施設以外の各種施設や各種乗物の出入口付近等に設けられた検知エリアAを通過する人を計測してもよい。
【0063】
また、通過人数計測装置10A,10Bの取り付け場所は、壁面であってもよい。
【0064】
また、第1ノイズ除去処理は、第1差画像P1を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数(例えば、12個。以下同様)および降温を示す画素の数(2個)を計測し、計測した2つの数のうちの小さい方に対する大きい方の比率(6倍)が予め定めた最大比率よりも大きいセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理であってもよい。最大比率の一例は、10倍である。
【0065】
本発明では、「第1差画像P1を構成する複数のセルのそれぞれにおいて昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たすセルがあれば、当該セルを構成する全画素を昇温も降温も示さない画素に変更する処理」である限りにおいて、第1ノイズ除去処理の内容を適宜変更することができる。
【0066】
また、判定処理は、第1差画像P1の全体において昇温を示す画素の数(例えば、1000個。以下同様)および降温を示す画素の数(4個)を計測し、計測した2つの数のうちの小さい方に対する大きい方の比率(250倍)が予め定めた最大比率よりも大きければ、第1ノイズ除去処理は不要との判定をする処理であってもよい。最大比率の一例は、200倍である。
【0067】
本発明では、「第1差画像P1の全体において昇温を示す画素の数および降温を示す画素の数を計測し、計測した2つの数、またはこれらの比率が予め定めた判定条件を満たした場合は第1ノイズ除去処理が必要との判定をし、そうでない場合は第1ノイズ除去処理が不要との判定をする処理」である限りにおいて、判定処理の内容を適宜変更することができる。
【0068】
また、通過人数計測装置10A,10Bは、その熱画像生成部11が予め定めた時間(例えば、1/10s)の間に生じた検知エリアAの熱変化に関する熱画像(より正確には、熱画像に関するデータ)を生成することができる場合は、差画像生成部21(および記憶部12)を備えていなくてもよい。この場合、第1ノイズ除去処理部22および判定処理部24は、熱画像生成部11が生成した熱画像を第1差画像P1として使用する。
【0069】
また、通過人数計測装置10A,10Bは、設定部13、外部インタフェース部14、音声出力部15および発光部16の全部または一部を備えていなくてもよい。
【0070】
第1実施例および第2実施例における、第1差画像P1等を構成する画素の数(2700個)およびセルの数(25個)も単なる一例である。
【符号の説明】
【0071】
10A,10B 通過人数計測装置
11 熱画像生成部
12 記憶部
13 設定部
14 外部インタフェース部
15 音声出力部
16 発光部
20A,20B 制御部
21 差画像生成部
22 第1ノイズ除去処理部
23 計測部
24 判定処理部
25 第2ノイズ除去処理部
100 天井
200 床
P1 第1差画像
P2 第2差画像
P3 第3差画像
W1,W2 歩行者