(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039744
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】通過人数計測装置
(51)【国際特許分類】
G01V 8/10 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
G01V8/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144333
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000210403
【氏名又は名称】竹中エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 航佑
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105BB17
2G105CC04
2G105EE06
2G105HH01
(57)【要約】
【課題】検知エリアに関する画像から人の動きに関係する情報を過不足なく抽出することが可能な通過人数計測装置を提供する。
【解決手段】通過人数計測装置10Aは、2つの熱画像の差画像である原差画像を構成する画素のうち、熱変化が第1変化量未満であったことを示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより第1差画像を生成する第1差画像生成部22と、熱変化が第2変化量(ただし、第2変化量>第1変化量)未満であったことを示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより第2差画像を生成する第2差画像生成部23と、第2差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、第1差画像を構成する当該画素に対応する画素が示す熱変化と同じ熱変化があったことを示す画素に変更することにより最終差画像を生成する最終差画像生成部24とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置であって、
時間Δtが経過する毎に前記検知エリアに関する熱画像を生成する熱画像生成部と、
時刻tに生成された熱画像および時刻t+Δtに生成された熱画像の差画像である原差画像を生成する原差画像生成部と、
前記原差画像を構成する画素のうち、熱変化が予め設定した第1変化量未満であったことを示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより、第1差画像を生成する第1差画像生成部と、
前記原差画像を構成する画素のうち、熱変化が予め設定した第2変化量(ただし、前記第2変化量>前記第1変化量)未満であったことを示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより、第2差画像を生成する第2差画像生成部と、
前記第1差画像および前記第2差画像から最終差画像を生成する最終差画像生成部と、
前記最終差画像に基づいて前記検知エリアを通過した人の数を計測する計測部と、
を備え、
前記最終差画像生成部は、前記第2差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、前記第1差画像を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより前記最終差画像を生成する
ことを特徴とする通過人数計測装置。
【請求項2】
所定の検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置であって、
予め定めた時間の間に生じた前記検知エリアの熱変化に関する原画像を生成する原画像生成部と、
前記原画像を構成する画素のうち、予め設定した第1変化量未満の熱変化を示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより、第1差画像を生成する第1差画像生成部と、
前記原画像を構成する画素のうち、予め設定した第2変化量(ただし、前記第2変化量>前記第1変化量)未満の熱変化を示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより、第2差画像を生成する第2差画像生成部と、
前記第1差画像および前記第2差画像から最終差画像を生成する最終差画像生成部と、
前記最終差画像に基づいて前記検知エリアを通過した人の数を計測する計測部と、
を備え、
前記最終差画像生成部は、前記第2差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、前記第1差画像を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより前記最終差画像を生成する
ことを特徴とする通過人数計測装置。
【請求項3】
前記最終差画像生成部は、前記第2差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、前記第1差画像を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより第3差画像を生成した後、前記第3差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、前記第1差画像を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより前記最終差画像を生成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通過人数計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種施設や各種乗物の出入口付近等に設けられた検知エリアを通過した人の数を計測する通過人数計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の入退室監視装置が知られている。この装置は、出入口の上方に設けられた一対の熱感知センサ(室外側サーモパイルセンサおよび室内側サーモパイルセンサ)と、各センサの出力信号の差分を増幅する増幅器と、増幅器の出力信号に基づいて人の動きを判別するCPU処理部とを備えている。この装置によれば、人の入室および退室だけでなく、入室しようとした人が入室することなくUターンしたことや、退室しようとした人が退室することなくUターンしたことも判別することができる。
【0003】
しかしながら、この装置は、複数の入室または退室が同時に起こった場合に、入室または退室をした人の数を正確に特定することはできない。入室と退室とが同時に起こった場合についても同様である。
【0004】
この問題を解決するために、出入口付近に設けられた検知エリアに関する熱画像を一定時間毎に生成する熱画像センサと、異なる時間に生成された2つの熱画像の差画像に基づいて人の動きを判別する判別部とを備えたタイプの装置も提案されている。この装置によれば、検知エリアを通過した人の数と通過方向とを判別することができる。例えば、この装置によれば、出入口から2人が入って来るとともに、出入口から3人が出て行ったことを判別することができる。
【0005】
ところで、後者の装置では、差画像を構成する画素のうち予め設定した変化量(閾値)を超える熱変化があったことを示す画素を有効な画素(判別に使用する画素)とし、その他の画素を無効な画素(判別に使用しない画素)とすることがしばしば行われる。この手法によれば、人の動きに関係しない不要な情報が取り除かれ、人の動きをより正確に判別することができるようになると期待される。
【0006】
しかしながら、上記の手法は、閾値の設定が難しいという問題があった。閾値が小さすぎると、不要な情報が十分に取り除かれず、所望の効果が得られなくなる。反対に、閾値が大きすぎると、不要な情報だけでなく必要な情報も取り除かれてしまい、人の動きを十分に判別することが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、検知エリアに関する画像から人の動きに関係する情報を過不足なく抽出することが可能な通過人数計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の通過人数計測装置は、所定の検知エリアを通過した人の数を計測する装置であって、時間Δtが経過する毎に検知エリアに関する熱画像を生成する熱画像生成部と、時刻tに生成された熱画像および時刻t+Δtに生成された熱画像の差画像である原差画像を生成する原差画像生成部と、原差画像を構成する画素のうち、熱変化が予め設定した第1変化量未満であったことを示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより、第1差画像を生成する第1差画像生成部と、原差画像を構成する画素のうち、熱変化が予め設定した第2変化量(ただし、第2変化量>第1変化量)未満であったことを示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより、第2差画像を生成する第2差画像生成部と、第1差画像および第2差画像から最終差画像を生成する最終差画像生成部と、最終差画像に基づいて検知エリアを通過した人の数を計測する計測部とを備え、最終差画像生成部は、第2差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、第1差画像を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより最終差画像を生成する、との構成を有している。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る第2の通過人数計測装置は、所定の検知エリアを通過した人の数を計測する装置であって、予め定めた時間の間に生じた検知エリアの熱変化に関する原画像を生成する原画像生成部と、原画像を構成する画素のうち、予め設定した第1変化量未満の熱変化を示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより、第1差画像を生成する第1差画像生成部と、原画像を構成する画素のうち、予め設定した第2変化量(ただし、第2変化量>第1変化量)未満の熱変化を示す画素を熱変化がなかったことを示す画素に変更することにより、第2差画像を生成する第2差画像生成部と、第1差画像および第2差画像から最終差画像を生成する最終差画像生成部と、最終差画像に基づいて検知エリアを通過した人の数を計測する計測部とを備え、最終差画像生成部は、第2差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、第1差画像を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより最終差画像を生成する、との構成を有している。
【0011】
上記最終差画像生成部は、第2差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、第1差画像を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより第3差画像を生成した後、第3差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、第1差画像を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより最終差画像を生成する、との構成を有していてもよい。
【0012】
ここで、本明細書では、次の[1]~[4]のいずれかの条件を満たす場合に、画素αと画素βが「隣接」するものとする。[1]の条件を採用した場合は、画素αに隣接する画素βの数は4個となり、[2]の条件を採用した場合は、画素αに隣接する画素βの数は8個となる。
[1]画素αと画素βが、辺において互いに重なり合う場合
[2]画素αと画素βが、辺または角において互いに重なり合う場合
[3]画素αと画素βの間のユークリッド距離が、予め定めた閾値を下回る場合
[4]画素αと画素βの間のマンハッタン距離が、予め定めた閾値を下回る場合
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検知エリアに関する画像から人の動きに関係する情報を過不足なく抽出することが可能な通過人数計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例に係る通過人数計測装置のブロック図である。
【
図2】第1実施例に係る通過人数計測装置によって生成された原差画像の一例を示す図である。
【
図3】第1実施例に係る通過人数計測装置によって生成された第1差画像の一例を示す図である。
【
図4】第1実施例に係る通過人数計測装置によって生成された第2差画像の一例を示す図である。
【
図5】第1実施例に係る通過人数計測装置によって生成された最終差画像の一例を示す図である。
【
図6】第1実施例に係る通過人数計測装置による最終差画像の生成の手順に関する図である。
【
図7】第1実施例に係る通過人数計測装置の動作フロー図である。
【
図8】本発明の第2実施例に係る通過人数計測装置のブロック図である。
【
図9】本発明の変形例に係る通過人数計測装置による最終差画像の生成の手順に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る通過人数計測装置の実施例について説明する。
【0016】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る通過人数計測装置10Aを示す。通過人数計測装置10Aは、商業施設の出入口付近の床200に設けられた検知エリアAをM1方向に通過する歩行者W1の数とM2方向に通過する歩行者W2の数とを計測するためのもので、同図に示すように、熱画像生成部11Aと、記憶部12と、制御部20Aと、設定部13と、外部インタフェース部14と、音声出力部15と、発光部16と、これらを収容する筐体とを備えている。通過人数計測装置10Aは、熱画像生成部11Aが検知エリアAを向くように、天井100に取り付けられている。
【0017】
本実施例では、取り付け高さHが4mである。また、本実施例の検知エリアAは、想定される通過方向M1,M2に直交する辺の長さが4m、通過方向M1,M2に平行な辺の長さが3mの長方形である。取り付け高さHが変化すると、これに応じて検知エリアAの大きさも変化する。
【0018】
熱画像生成部11Aは、二次元の熱画像センサで構成されている。熱画像生成部11Aは、検知エリアA(床200)または当該エリアA内にいる歩行者W1,W2から放射される遠赤外線を検出し、検出結果に対応した60画素×45画素の熱画像(より正確には、熱画像に関するデータ)を生成する。熱画像の生成は、1/10s毎に行われる。生成された熱画像は、順次記憶部12に送られる。
【0019】
記憶部12は、揮発性または不揮発性のメモリで構成されている。記憶部12は、熱画像生成部11Aから1/10s毎に送られてきた熱画像のうち、少なくとも最新のものとその1つ前のものとを格納している。言い換えると、記憶部12には、最後に生成された熱画像(以下、「第2熱画像」という)と、その1/10s前に生成された熱画像(以下、「第1熱画像」という)とが格納されている。
【0020】
制御部20Aは、マイクロプロセッサ(MPU)と当該プロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムとで構成されている。本実施例では、コンピュータプログラムの実行により、原差画像生成部21、第1差画像生成部22、第2差画像生成部23、最終差画像生成部24、および計測部25が制御部20A内に形成されている。
【0021】
原差画像生成部21は、記憶部12に格納された第1熱画像および第2熱画像に基づいて、
図2に示すような60画素×45画素の原差画像P0(より正確には、原差画像P0に関するデータ)を生成する。例えば、原差画像生成部21は、第2熱画像を構成する座標(0,0)の画素が示す温度から第1熱画像を構成する座標(0,0)の画素が示す温度を引くことにより、原差画像P0を構成する座標(0,0)の画素が示すべき熱変化を求める。原差画像P0は、1/10sの間にどのような熱変化があったのかを示しているといえる。
【0022】
なお、
図2では、熱変化の絶対値が0℃よりも大きく2℃(=後述する「第1変化量」)よりも小さかったことを示す画素をハッチング付きとし、熱変化の絶対値が2℃以上5℃(=後述する「第2変化量」)未満であったことを示す画素を灰色で塗り潰し、熱変化の絶対値が5℃以上であったことを示す画素を黒色で塗り潰し、熱変化の絶対値が0℃であったことを示す画素を白色とした。
図3,4,5についても同様である。
【0023】
第1差画像生成部22は、原差画像P0を構成する画素のうち、熱変化の絶対値が予め設定した第1変化量未満であったことを示す画素(すなわち、ハッチング付きの画素)を熱変化がなかったことを示す画素(すなわち、白色の画素)に変更することにより、
図3に示したような第1差画像P1(より正確には、第1差画像P1に関するデータ)を生成する。第1差画像P1は、熱変化の絶対値が第1変化量以上であったことを示す画素を抽出したものといえる。
【0024】
第2差画像生成部23は、原差画像P0を構成する画素のうち、熱変化の絶対値が予め設定した第2変化量未満であったことを示す画素(すなわち、ハッチング付きの画素および灰色の画素)を熱変化がなかったことを示す画素(すなわち、白色の画素)に変更することにより、
図4に示したような第2差画像P2(より正確には、第2差画像P2に関するデータ)を生成する。第2差画像P2は、熱変化の絶対値が第2変化量以上であったことを示す画素を抽出したものといえる。
【0025】
最終差画像生成部24は、第1差画像P1および第2差画像P2から、
図5に示したような最終差画像PF(より正確には、最終差画像PFに関するデータ)を生成する。より詳しくは、最終差画像生成部24は、第2差画像P2を構成する熱変化があったことを示す画素(すなわち、黒色の画素)に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、第1差画像P1を構成する当該画素に対応する画素が示す熱変化と同じ熱変化があったことを示す画素に変更することにより、最終差画像PFを生成する。なお、本実施例および後述する第2実施例では、辺または角において互いに重なり合う2つの画素を「隣接」する画素とする。
【0026】
最終差画像PFの生成について、
図6を参照しながら具体的に説明する。
【0027】
最終差画像生成部24は、まず、第2差画像P2を構成する熱変化があったことを示す2個の画素のうち、座標(0,0)に近い熱変化が+6℃であったことを示す画素(4,3)に注目する。画素(4,3)に隣接する8個の画素(3,2),(4,2),(5,2),(3,3),(5,3),(3,4),(4,4),(5,4)のうち、画素(3,2),(4,2),(5,2),(3,3),(3,4),(4,4),(5,4)は熱変化がなかったことを示している。このため、最終差画像生成部24は、第1差画像P1の画素(3,2),(4,2),(5,2),(3,3),(3,4),(4,4),(5,4)を参照する。
【0028】
第1差画像P1の画素(3,2)は、熱変化がなかったことを示す画素である。このため、最終差画像生成部24は、第2差画像P2の画素(3,2)に変更を加えない。
【0029】
第1差画像P1の画素(4,2)は、+4℃の熱変化があったことを示す画素である。このため、最終差画像生成部24は、第2差画像P2の画素(4,2)を+4℃の熱変化があったことを示す画素に変更する。
【0030】
第1差画像P1の画素(5,2)は、+3℃の熱変化があったことを示す画素である。このため、最終差画像生成部24は、第2差画像P2の画素(5,2)を+3℃の熱変化があったことを示す画素に変更する。
【0031】
最終差画像生成部24は、画素(3,3),(3,4),(4,4),(5,4)についても同様の処理を行う。
【0032】
次に、最終差画像生成部24は、第2差画像P2を構成するもうひとつの熱変化があったことを示す画素(5,3)に注目する。画素(5,3)に隣接する8個の画素(4,2),(5,2),(6,2),(4,3),(6,3),(4,4),(5,4),(6,4)のうち、この時点で熱変化がなかったことを示しているのは画素(6,2),(6,3),(6,4)である。このため、最終差画像生成部24は、第1差画像P1の画素(6,2),(6,3),(6,4)を参照する。
【0033】
第1差画像P1の画素(6,2)は、熱変化がなかったことを示す画素である。このため、最終差画像生成部24は、第2差画像P2の画素(6,2)に変更を加えない。
【0034】
第1差画像P1の画素(6,3)は、+2℃の熱変化があったことを示す画素である。このため、最終差画像生成部24は、第2差画像P2の画素(6,3)を+2℃の熱変化があったことを示す画素に変更する。
【0035】
第1差画像P1の画素(6,4)は、+3℃の熱変化があったことを示す画素である。このため、最終差画像生成部24は、第2差画像P2の画素(6,4)を+3℃の熱変化があったことを示す画素に変更する。
【0036】
最終差画像生成部24は、第2差画像P2に上記のような変更を加えていくことにより、最終差画像PFを生成する。
図3,4,5から理解されるように、最終差画像PFは、熱変化が第1変化量以上であった領域を超えない範囲で、熱変化が第2変化量以上であった領域を最大で1画素分だけ拡張したものといえる。
【0037】
計測部25は、最終差画像PFに基づいて、検知エリアAをM1方向に通過した歩行者W1の数とM2方向に通過した歩行者W2の数とを計測する。この計測には、種々の既知の手法を用いることができる。
【0038】
外部インタフェース部14は、適当な外部機器に接続されている。外部インタフェース部14は、計測部25による計測の結果を予め定めたタイミングおよび形式で当該外部機器に送信することができる。
【0039】
音声出力部15は、ブザーまたはスピーカーで構成されている。音声出力部15は、計測部25による計測の結果に対応した音声を出力することにより、計測結果を周辺にいる者に知らせることができる。
【0040】
発光部16は、少なくとも1つの発光ダイオードで構成されている。発光部16は、計測部25による計測の結果に対応した態様(色、明るさ等)で点灯または点滅することにより、計測結果を周辺にいる者に知らせることができる。
【0041】
設定部13は、ディップスイッチで構成されている。ユーザは、設定部13を介して前述の第1変化量および第2変化量を設定することができる。また、ユーザは、設定部13を介して、外部インタフェース部14、音声出力部15および発光部16のオン/オフを個別に切り替えることもできる。
【0042】
図7は、これまでに述べてきた各部の動きを時系列に記述した、本実施例に係る通過人数計測装置10Aの動作フロー図である。
【0043】
ステップS1では、熱画像生成部11Aが生成した第1熱画像を記憶部12が格納する。
【0044】
ステップS1の1/10s後に実行されるステップS2では、熱画像生成部11Aが生成した第2熱画像を記憶部12が格納する。
【0045】
ステップS2の後に実行されるステップS3では、原差画像生成部21が第1熱画像および第2熱画像から原差画像P0を生成する。
【0046】
ステップS3の後に実行されるステップS4では、第1差画像生成部22が原差画像P0から第1差画像P1を生成するとともに、第2差画像生成部23が原差画像P0から第2差画像P2を生成する。第1差画像P1の生成および第2差画像P2の生成は、同時に行われてもよいし、どちらかが先に行われてもよい。
【0047】
ステップS4の後に実行されるステップS5では、最終差画像生成部24が第1差画像P1および第2差画像P2から最終差画像PFを生成する。
【0048】
ステップS5の後に実行されるステップS6では、計測部25が最終差画像PFに基づいて通過人数等を計測する。
【0049】
本実施例に係る通過人数計測装置10Aは、1/10s毎にこの動作フローにしたがって繰り返し動作する。なお、2巡目のフローでは、1巡目で生成・格納された第2熱画像が第1熱画像となる。3巡目以降についても同様である。
【0050】
このように、本実施例に係る通過人数計測装置10Aは、第1変化量を閾値として生成した第1差画像P1および第2変化量を閾値として生成した第2差画像P2のいいとこ取りをしたものといえる最終差画像PFに基づいて歩行者W1,W2の数を計測する。すなわち、通過人数計測装置10Aは、検知エリアAに関する原差画像P0から歩行者W1,W2の動きに関係する情報を過不足なく抽出した画像である最終差画像PFに基づいて歩行者W1,W2の数を計測する。このため、通過人数計測装置10Aによれば、従来のものよりも正確に歩行者W1,W2の数を計測することができる。
【0051】
[第2実施例]
図8に、本発明の第2実施例に係る通過人数計測装置10Bを示す。通過人数計測装置10Bは、熱画像生成部11Aの代わりに熱画像生成部11Bを備えている点と、制御部20Aの代わりに制御部20Bを備えている点と、記憶部12を備えていない点とにおいて通過人数計測装置10Aと相違しているが、他の点においては通過人数計測装置10Aと共通している。
【0052】
熱画像生成部11Bは、予め定めた時間(例えば、1/10s)の間に生じた検知エリアAの熱変化に関する画像、すなわち、第1実施例の原差画像P0に相当する画像を生成することができるタイプの二次元の熱画像センサで構成されている。
【0053】
制御部20Bは、制御部20Aと同様、マイクロプロセッサと当該プロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムとで構成されている。本実施例では、コンピュータプログラムの実行により、第1差画像生成部22、第2差画像生成部23、最終差画像生成部24、および計測部25が制御部20B内に形成されている。
【0054】
第1差画像生成部22は、熱画像生成部11Bが生成した画像(原差画像P0)から第1差画像P1を生成する。
【0055】
第2差画像生成部23は、熱画像生成部11Bが生成した画像(原差画像P0)から第2差画像P2を生成する。
【0056】
本実施例に係る通過人数計測装置10Bによれば、記憶部12の分だけ製造コストを低減することができるとともに、原差画像生成部21の分だけコンピュータプログラムを簡略化することができる。当然ながら、通過人数計測装置10Bによれば、通過人数計測装置10Aと同じ効果を得ることもできる。
【0057】
[変形例]
以上、本発明に係る通過人数計測装置の第1実施例および第2実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0058】
例えば、通過人数計測装置10A,10Bは、商業施設以外の各種施設や各種乗物の出入口付近等に設けられた検知エリアAを通過した人を計測してもよい。
【0059】
また、通過人数計測装置10A,10Bの取り付け場所は、壁面であってもよい。
【0060】
また、通過人数計測装置10A,10Bは、設定部13、外部インタフェース部14、音声出力部15および発光部16の全部または一部を備えていなくてもよい。
【0061】
また、通過人数計測装置10A,10Bの最終画像生成部24は、第2差画像P2を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、第1差画像P1を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより最終差画像PFを生成してもよい。つまり、最終画像生成部24は、第2差画像P2を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を熱変化があったことを示す画素に変更する際に、第1差画像P1から熱変化の量を引き継がなくてもよい。
【0062】
また、通過人数計測装置10A,10Bの最終画像生成部24は、第2差画像P2を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、第1差画像P1を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより第3差画像を生成した後、第3差画像を構成する熱変化があったことを示す画素に隣接する熱変化がなかったことを示す画素を、第1差画像P1を構成する当該画素に対応する画素が熱変化があったことを示す画素である場合に、熱変化があったことを示す画素に変更することにより最終差画像PFを生成してもよい。
図9(C)に示すように、本変形例の最終差画像PFは、熱変化が第1変化量以上であった領域を超えない範囲で、熱変化が第2変化量以上であった領域を最大で2画素分だけ拡張したものといえる。
【0063】
また、通過人数計測装置10A,10Bが生成する原差画像P0、第1差画像P1、第2差画像P2、第3差画像および最終差画像PFは、熱変化があったことを示す画素の座標情報のみで構成されていてもよい。例えば、
図6(B)に示す第2差画像P2は、座標情報“(4,3),(5,3)”で構成されていてもよく、同図(C)に示す最終差画像PFは、座標情報“(4,2),(5,2),(3,3),(4,3),(5,3),(6,3),(3,4),(4,4),(5,4),(6,4)”で構成されていてもよい。座標情報のみで構成されたものはもはや「画像」とは呼べないかもしれないが、本明細書ではこのようなものも「画像」と呼ぶ点に注意されたい。
【0064】
また、第1実施例および第2実施例における、各差画像P0,P1,P2を構成する画素の数(60×45=2700個)は単なる一例である。第1実施例および第2実施例における、第1変化量(2℃)および第2変化量(5℃)も単なる一例である。ただし、第2変化量は第1変化量よりも大きくなければならない。
【符号の説明】
【0065】
10A,10B 通過人数計測装置
11A,11B 熱画像生成部
12 記憶部
13 設定部
14 外部インタフェース部
15 音声出力部
16 発光部
20A,20B 制御部
21 原差画像生成部
22 第1差画像生成部
23 第2差画像生成部
24 最終差画像生成部
25 計測部
100 天井
200 床
P0 原差画像
P1 第1差画像
P2 第2差画像
PF 最終差画像
W1,W2 歩行者