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特開2024-39764複列円すいころ軸受の組付け治具、及び、複列円すいころ軸受の組付け方法
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  • 特開-複列円すいころ軸受の組付け治具、及び、複列円すいころ軸受の組付け方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039764
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】複列円すいころ軸受の組付け治具、及び、複列円すいころ軸受の組付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 43/04 20060101AFI20240315BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20240315BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16C43/04
F16C19/38
F16C25/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144366
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】山崎 哲
【テーマコード(参考)】
3J012
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J012AB04
3J012BB03
3J012BB05
3J012CB10
3J012FB12
3J012GB10
3J012HB01
3J117AA02
3J117BA10
3J117CA06
3J117DB07
3J117HA04
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA77
3J701FA41
3J701FA46
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】複列円すいころ軸受の組付け時に、円すいころの大端側(円すいころの大端面と内輪の大鍔との間)に隙間が生じることを防止して、予圧が低下することを防止することが可能な複列円すいころ軸受の組付け治具を提供する。
【解決手段】複列円すいころ軸受の組付け治具10は、複列円すいころ軸受1が回転部材100に組付けられる際に、一方の円すいころ軸受(鉛直上方側にくる円すいころ軸受)を構成する円すいころ4の大端面4aと一方の内輪2の大鍔2aとの間の隙間を詰めるように、一方の保持器5を一方の内輪2の大端側に寄せて保持する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配された複数の円すいころと、前記複数の円すいころを保持する保持器と、を備えて構成される円すいころ軸受が、対となって、対向して配置された複列円すいころ軸受を回転部材に組付ける際に用いられる複列円すいころ軸受の組付け治具であって、
前記複列円すいころ軸受を回転部材に組付ける際に、一方の前記円すいころ軸受を構成する前記円すいころの大端面と一方の前記内輪の大鍔との間の隙間を詰めるように、一方の前記保持器を一方の前記内輪の大端側に寄せて保持する、又は、一方の前記内輪の大鍔を前記円すいころの大端側に寄せて保持することを特徴とする複列円すいころ軸受の組付け治具。
【請求項2】
一方の前記保持器の環状部の外周面に装着可能なように、前記円すいころの中心軸と略平行に延びる略直方体状の本体部と、
前記本体部の下端部に形成され、一方の前記保持器の前記円すいころが収容される収容部の大端側の辺に係合可能な爪部と、
前記本体部の上端部に突設され、可撓性を有し、装着時に、先端が一方の前記内輪の大端面に当接することにより、前記保持器に対して前記内輪の大端面方向の付勢力を付与する板バネ部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の複列円すいころ軸受の組付け治具。
【請求項3】
複数の前記組付け治具を円弧状に連結する連結部材をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の複列円すいころ軸受の組付け治具。
【請求項4】
一方の前記内輪の大端面及び前記外輪の端面に取り付け可能に、円弧状に形成された本体部と、
前記本体部の側面に設けられ、前記外輪の鍔に係合可能な爪部と、
一方の前記内輪の大端面と対向する前記本体部の内面に突設され、装着時に、前記円すいころの大端面と一方の前記内輪の大鍔との間の隙間を詰めるように、前記内輪の大端面に押し力を付与する凸部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の複列円すいころ軸受の組付け治具。
【請求項5】
請求項2又は3に記載された複列円すいころ軸受の組付け治具を一方の前記内輪に取り付ける第1工程と、
前記複列円すいころ軸受の組付け治具が取り付けられた複列円すいころ軸受に回転部材を圧入する第2工程と、
前記複列円すいころ軸受の組付け治具を取り外す第3行程と、を備えることを特徴とする複列円すいころ軸受の組付け方法。
【請求項6】
天地が逆の状態で、一方の内輪を外輪に組付ける第1工程と、
天地が逆の状態で、請求項4に記載された複列円すいころ軸受の組付け治具を一方の前記内輪の大端面及び前記外輪の端面に取り付ける第2工程と、
天地を戻して、他方の前記内輪を組付ける第3工程と、
天地が戻された状態で、前記複列円すいころ軸受の組付け治具が取り付けられた複列円すいころ軸受に回転部材を圧入する第4工程と、
前記複列円すいころ軸受の組付け治具を取り外す第5工程と、を備えることを特徴とする複列円すいころ軸受の組付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複列円すいころ軸受の組付け治具、及び、該複列円すいころ軸受の組付け治具を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、ドライブピニオンシャフトやハブ等の回転部材を回転自在に軸支するため、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を同時に支えることができる複列円すいころ軸受(ダブルテーパローラベアリング)が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、複列円すいころ軸受は、耐久性(長寿命化)や信頼性確保等の観点から、内外輪-円すいころ間に予圧をかけて使用される。例えば、複列円すいころ軸受にシャフト等の回転部材を組付ける際に、複列円すいころ軸受(内輪)にシャフト等の回転部材を圧入して内輪径を拡大することにより、予圧が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-283805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複列円すいころ軸受の組付け時に、シャフト等の回転部材を圧入する際の作業条件等によっては、円すいころの大端側(円すいころの大端面と内輪の大鍔との間)に隙間が生じ、シャフトの圧入後にも隙間が残ることがある。そのような状態で複列円すいころ軸受を用いると予圧が低下するおそれがある。予圧の低下は複列円すいころ軸受の寿命を低下させる要因となるため、このような予圧の低下を防止する発明が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、複列円すいころ軸受の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受に回転部材が圧入される際に、円すいころの大端側(円すいころの大端面と内輪の大鍔との間)に隙間が生じることを防止して、予圧が低下することを防止することが可能な複列円すいころ軸受の組付け治具、及び、該組付け治具を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る複列円すいころ軸受の組付け治具は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に転動自在に配された複数の円すいころと、複数の円すいころを保持する保持器とを備えて構成される円すいころ軸受が、対となって、対向して配置された複列円すいころ軸受を回転部材に組付ける際に用いられる複列円すいころ軸受の組付け治具であって、複列円すいころ軸受を回転部材に組付ける際に、一方の円すいころ軸受を構成する円すいころの大端面と一方の内輪の大鍔との間の隙間を詰めるように、一方の保持器を一方の内輪の大端側に寄せて保持する、又は、一方の内輪の大鍔を円すいころの大端側に寄せて保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複列円すいころ軸受の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受に回転部材が圧入される際に、円すいころの大端側(円すいころの大端面と内輪の大鍔との間)に隙間が生じることを防止して、予圧が低下することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】複列円すいころ軸受の構成を示す断面図である。
図2】円すいころの大端側(円すいころの大端面と内輪の大鍔との間)に隙間が生じていない状態(正規の状態)を示す断面図である。
図3】円すいころの大端側(円すいころの大端面と内輪の大鍔との間)に隙間が生じている状態を示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具の構成を示す図である。
図5】第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具が取り付けられる前の内輪、円すいころ、及び保持器を示す図である。
図6】第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具が取り付けられた内輪、円すいころ、及び保持器を示す図である。
図7】第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具の爪部が係合される保持器の収容部を拡大して示した断面図である。
図8】第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具が取り付けられた複列円すいころ軸受を示す図である。
図9】第2実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具の構成を示す斜視図である。
図10】第2実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具の要部を拡大して示した断面図である。
図11】第2実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法(第2工程)を説明するための図である。
図12】第2実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法(第3工程)を説明するための図である。
図13】第2実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法(第4工程)を説明するための図である。
図14】第2実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法(第5工程)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、図1図8を併せて用いて、第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具10の構成について説明する。図1は、複列円すいころ軸受1の構成を示す断面図である。図2は、円すいころ4の大端側(円すいころ4の大端面4aと内輪2の大鍔2aとの間)に隙間が生じていない状態(正規の状態)を示す断面図である。図3は、円すいころ4の大端側(円すいころ4の大端面4aと内輪2の大鍔2aとの間)に隙間が生じている状態を示す断面図である。図4は、複列円すいころ軸受の組付け治具10の構成を示す図である。図5は、複列円すいころ軸受の組付け治具10が取り付けられる前の内輪2、円すいころ4、及び保持器5を示す図である。図6は、複列円すいころ軸受の組付け治具10が取り付けられた内輪2、円すいころ4、及び保持器5を示す図である。図7は、複列円すいころ軸受の組付け治具10の爪部12が係合される保持器5の収容部5aを拡大して示した断面図である。図8は、複列円すいころ軸受の組付け治具10が取り付けられた複列円すいころ軸受1を示す図である。
【0012】
複列円すいころ軸受(ダブルテーパローラベアリング)1は、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を同時に支えることができ、例えば、ドライブピニオンシャフトやハブ等の回転部材100を回転自在に軸支する(図14参照)。
【0013】
複列円すいころ軸受1は、内輪2と、外輪3と、内輪2と外輪3との間に転動自在に配された複数の円すいころ4と、複数の円すいころ4を周方向に沿って所定間隔毎に保持する保持器5とを備えて構成される2個の円すいころ軸受が、対となって、対向して配置されて構成される。例えば、本実施形態に係る複列円すいころ軸受1は、一対の内輪2と、一個の外輪3と、一方の内輪2と外輪3との間、及び、他方の内輪2と外輪3との間それぞれに転動自在に配された複数の円すいころ4と、複数の円すいころ4を周方向に沿って所定間隔毎に保持する一対の保持器5とを備えて構成される、外向き形の複列円すいころ軸受である。
【0014】
より詳細には、内輪2は、その外径面に円すい状の軌道面を有し、軌道面の大端側(大径側)には、外径側へ突出する大鍔(鍔部)2aが形成されている。また、円すいころ4が小端側へ脱落することを防止するために、内輪2の小端側(小径側)には小鍔(鍔部)2bが形成されている。
【0015】
外輪3はその内径面に一対の円すい状の軌道面を有し、この軌道面と内輪2の軌道面とを、保持器5で保持された複数の円すいころ4が転動する。
【0016】
保持器5は、一対の環状部(大径側環状部及び小径側環状部)と、該環状部(大径側環状部と小径側環状部)を連結する柱部とを備え、周方向に沿って隣合う柱部間に形成された収容部(ポケット)5aに円すいころ4が回転自在に収容される。
【0017】
各円すいころ軸受では、円すいころ4と内外輪の軌道面とが線接触しており、内・外輪軌道面およびころ中心が軸心上の一点で一致するよう設計されている。
【0018】
ところで、通常、複列円すいころ軸受1は、耐久性(長寿命化)や信頼性確保等の観点から、内外輪-円すいころ間に予圧をかけて使用される。例えば、複列円すいころ軸受1にシャフト等の回転部材100を組付ける際に、複列円すいころ軸受1(内輪2)にシャフト等の回転部材100を圧入して内輪径を拡大することにより、予圧が付与される。
【0019】
しかしながら、複列円すいころ軸受1の組付け時に、シャフト等の回転部材100を圧入する際の作業条件等によっては、例えば、外輪3や鉛直上方の円すいころ4が自重で落ちることにより、図3に示されるように、円すいころ4の大端側(円すいころ4の大端面4aと内輪2の大鍔2aとの間)に隙間が生じ、回転部材100の圧入後にも隙間が残ることがある。そのような状態で複列円すいころ軸受1を用いると予圧が低下するおそれがある。
【0020】
ここで、複列円すいころ軸受の組付け治具(以下、単に「組付け治具」ということもある)10は、複列円すいころ軸受1の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入される際に、円すいころ4の大端側(円すいころ4の大端面4aと内輪2の大鍔2aとの間)に隙間が生じることを防止して、予圧が低下することを防止する(ひいては、複列円すいころ軸受1の耐久性や信頼性の向上を図る)機能を有している。
【0021】
そのため、複列円すいころ軸受の組付け治具10は、複列円すいころ軸受1が回転部材(シャフト)100に組付けられる際に、一方の円すいころ軸受(鉛直上方側にくる円すいころ軸受)を構成する円すいころ4の大端面4aと一方の内輪2の大鍔2aとの間の隙間を詰めるように(円すいころ4が自重等で落ちないように)、一方の保持器5を一方の内輪2の大端側(大径側)に寄せて保持する。ここで、保持器5を一方の内輪2の大端側に寄せて保持することにより、複数(例えば18個)の円すいころ4をまとめて保持することができる。
【0022】
より具体的には、複列円すいころ軸受の組付け治具10は、主として、本体部11と、爪部12と、板バネ部13と、連結部材14とを有して構成されている。
【0023】
本体部11は、一方の保持器5の環状部の外周面に装着可能なように、円すいころ4のころ中心(中心軸)と略平行に延びる、略直方体状に形成されている。
【0024】
爪部12は、本体部11の下端部(一方の端部)に形成され、一方の保持器5の円すいころ4が収容される収容部5aの大端側(大径側環状部)の辺に係合可能に(引っ掛けられるように)形成されている。
【0025】
板バネ部13は、本体部11の上端部(他方の端部)に突設され、可撓性(バネ性)を有し、装着時に、その先端が一方の内輪2の大端面2cに当接することにより、弓なりに反りかえり、保持器5に対して内輪2の大端面2c方向の付勢力を付与する。この付勢力により、保持器5が内輪2の大端側に寄せられて保持される。
【0026】
複列円すいころ軸受の組付け治具10(本体部11、爪部12、板バネ部13)は、例えば、樹脂(エンジニアリングプラスチック)等から形成される。
【0027】
複列円すいころ軸受の組付け治具10は、例えば、3個で1組(セット)として使用される。すなわち、組付け時には、保持器5を3箇所で内輪2の大端側に寄せて保持することができる。
【0028】
そこで、組付け時の作業性を向上させるために、複列円すいころ軸受の組付け治具10は、複数(本実施形態では3個)の組付け治具10を円弧状に連結する連結部材14を備えている。
【0029】
連結部材14は、柔軟性を有する樹脂やゴム等からなり、例えば、断面が円形のひも状に形成される。連結部材14は、例えば、各組付け治具10の本体部11の側面に接続される。
【0030】
次に、複列円すいころ軸受の組付け治具10を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法について説明する。
【0031】
複列円すいころ軸受1に回転部材(シャフト)100が組付けられる際に、まず、第1工程では、複列円すいころ軸受の組付け治具10が一方の内輪2に取り付けられる(図6、8参照)。これにより、一方の保持器5が一方の内輪2の大端側に寄せられて保持される。
【0032】
次に、第2工程では、組付け治具10が取り付けられた複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入される。その後、第3工程において、複列円すいころ軸受1から組付け治具10が取り外される。
【0033】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、複列円すいころ軸受1が回転部材100に組付けられる際に、一方の円すいころ軸受(鉛直上方側にくる円すいころ軸受)を構成する円すいころ4の大端面4aと一方の内輪2の大鍔2aとの間の隙間を詰めるように、一方の保持器5が一方の内輪2の大端側に寄せて保持される。そのため、複列円すいころ軸受1の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受1に回転部材100を圧入する際に、円すいころ4の大端側(円すいころ4の大端面4aと内輪2の大鍔2aとの間)に隙間が生じることを防止して、予圧が低下することを防止する(ひいては、複列円すいころ軸受1の耐久性や信頼性の向上を図る)ことが可能となる。
【0034】
特に、本実施形態によれば、複列円すいころ軸受の組付け治具10が、一方の保持器5の環状部の外周面に装着可能なように、円すいころ4の中心軸と略平行に延びる略直方体状の本体部11と、本体部11の下端部に形成され、一方の保持器5の収容部5aの大端側の辺に係合可能な爪部12と、本体部11の上端部に突設され、可撓性を有し、装着時に、先端が一方の内輪2の大端面2cに当接することにより、弓なりに反りかえって、保持器5に対して内輪2の大端面2c方向の付勢力を付与する板バネ部13とを有している。そのため、複列円すいころ軸受1が回転部材100に組付けられる際に、円すいころ4の大端面4aと一方の内輪2の大鍔2aとの間の隙間を詰めるように、一方の保持器5を一方の内輪2の大端側に寄せて保持することができる。
【0035】
本実施形態によれば、複数(例えば3個)の組付け治具10を円弧状に連結する連結部材14を備えるため、組付け時の作業性を向上することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、複列円すいころ軸受1に回転部材100が組付けられる際に、まず、複列円すいころ軸受の組付け治具10が一方の内輪2に取り付けられ、一方の保持器5が一方の内輪2の大端側に寄せられて保持され(第1工程)、次に、組付け治具10が取り付けられた複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入され(第2工程)、そして、その後、組付け治具10が取り外される(第3行程)。そのため、複列円すいころ軸受1の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入される際に、円すいころ4の大端側(円すいころ4の大端面4aと内輪2の大鍔2aとの間)に隙間が生じることを防止して、予圧が低下することを防止する(ひいては、複列円すいころ軸受1の耐久性や信頼性の向上を図る)ことが可能となる。
【0037】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、複列円すいころ軸受1を回転部材100に組付ける際に、円すいころ4の大端面4aと一方の内輪2の大鍔2aとの間の隙間を詰めるように、一方の保持器5を一方の内輪2の大端側に寄せて保持する構成としたが、一方の内輪2の大鍔2aを円すいころ4の大端側に寄せて保持する構成としてもよい。
【0038】
そこで、次に、図9~14を併せて用いて、第2実施形態に係る複列円すいころ軸受の組付け治具20について説明する。図9は、複列円すいころ軸受の組付け治具20の構成を示す斜視図である。図10は、複列円すいころ軸受の組付け治具20の要部を拡大して示した断面図である。図11図14は、複列円すいころ軸受の組付け治具20を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法(第2工程~第5工程)を説明するための図である。
【0039】
本実施形態は、一方の保持器5を一方の内輪2の大端側に寄せて保持する構成に代えて、一方の内輪2の大鍔2aを円すいころ4の大端側に寄せて保持する構成とした点で、上述した第1実施形態と異なっている。
【0040】
より具体的には、複列円すいころ軸受の組付け治具20は、例えば、樹脂(エンジニアリングプラスチック)等からなり、主として、本体部21と、爪部22と、凸部23とを有して構成されている。
【0041】
本体部21は、一方の内輪2の大端面2c及び外輪3の端面に取り付け可能に、円弧状に形成されている。本体部21には、回転部材100の組付け後に、組付け部材20を横方向にスライドさせて取り外すことができるように、切り欠きが形成されている。
【0042】
爪部22は、本体部21の側面に設けられ、外輪3の鍔(フランジ)3aに係合可能に形成されている。該爪部22が外輪3の鍔3aに引っ掛けられることによって、組付け部材20が複列円すいころ軸受1に取り付けられる。
【0043】
凸部23は、内輪2の大端面2cと対向する本体部21の内面に突設され、装着時に、円すいころ4の大端面4aと一方の内輪2の大鍔2aとの間の隙間を詰めるように(内輪2を押し上げるように)、内輪2の大端面2cに押し力を付与する。なお、その他の構成は、上述した第1実施形態と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
次に、図11~14を併せて参照しつつ、複列円すいころ軸受の組付け治具20を用いた複列円すいころ軸受の組付け方法について説明する。
【0045】
複列円すいころ軸受1に回転部材100が組付けられる際に、まず、第1工程では、天地が逆の状態で、一方の内輪2(上内輪)が外輪3に組付けられる。
【0046】
次に、第2工程では、天地が逆の状態で、複列円すいころ軸受の組付け治具20が一方の内輪2(上内輪)の下部に取り付けられる(図11参照)。これにより、内輪2が押し上げられ、円すいころ4の大端面4aと一方の内輪2の大鍔2aとの間の隙間が詰められる。すなわち、一方の内輪2の大鍔2aが円すいころ4の大端面4aに寄せられて保持される。
【0047】
続いて、第3工程では、天地が戻されて、他方の内輪2(下内輪)が組付けられる(図12参照)。
【0048】
その後、第4工程では、天地が戻された状態で、組付け治具20が取り付けられた複列円すいころ軸受1に回転部材(シャフト)100が圧入される(図13参照)。
【0049】
そして、その後、第5工程において、複列円すいころ軸受1から組付け治具20が取り外される(図14参照)。
【0050】
本実施形態によれば、複列円すいころ軸受の組付け治具20が、一方の内輪2の大端面2c及び外輪3の端面に取り付け可能に、円弧状に形成された本体部21と、本体部21の側面に設けられ、外輪3の鍔3aに係合可能な爪部22と、内輪2の大端面2cと対向する本体部21の内面に設けられ、装着時に、円すいころ4の大端面4aと一方の内輪2の大鍔2aとの間の隙間を詰めるように、内輪2の大端面2cに押し力を付与する凸部23とを有している。そのため、複列円すいころ軸受1を回転部材100に組付ける際に、円すいころ4の大端面4aと一方の内輪2の大鍔2aとの間の隙間を詰めるように、一方の内輪2の大鍔2aを円すいころ4の大端側に寄せて保持することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、複列円すいころ軸受1に回転部材100が組付けられる際に、まず、天地が逆の状態で、一方の内輪2(上内輪)が外輪3に組付けられ(第1工程)、次に、天地が逆の状態で、複列円すいころ軸受の組付け治具20が一方の内輪2(上内輪)に取り付けられ(第2工程)、続いて、天地が戻されて、他方の内輪2(下内輪)が組付けられ(第3工程)、天地が戻された状態で、組付け治具20が取り付けられた複列円すいころ軸受1に回転部材100が圧入され(第4工程)、その後、組付け治具20が取り外される(第5工程)。そのため、複列円すいころ軸受1の組付け時、すなわち、複列円すいころ軸受1に回転部材100を圧入する際に、円すいころ4の大端側(円すいころ4の大端面4aと内輪2の大鍔2aとの間)に隙間が生じることを防止して、予圧が低下することを防止する(ひいては、複列円すいころ軸受1の耐久性や信頼性の向上を図る)ことができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、外向き形(複列外輪使用)の複列円すいころ軸受1を例にして説明したが、本発明は、内向き形(複列内輪使用)の複列円すいころ軸受や、組合せ円すいころ軸受に適用することもできる。
【0053】
また、複列円すいころ軸受の組付け治具10、20の数や、形状、素材、サイズ等は、上記実施形態に限られることなく、例えば、適用される複列円すいころ軸受や要件等に応じて任意に変更することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 複列円すいころ軸受(ダブルテーパローラベアリング)
2 内輪
2a 大鍔
2b 小鍔
2c 大端面
3 外輪
3a 鍔(フランジ)
4 円すいころ
4a 大端面
5 保持器
5a 収容部(ポケット)
10、20 複列円すいころ軸受の組付け治具
11 本体部
12 爪部
13 板バネ部
14 連結部材
21 本体部
22 爪部
23 凸部
100 回転部材(シャフト)
図1
図2
図3
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図5
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図14