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特開2024-39765ターボ冷凍機、冷凍機制御装置、ターボ冷凍機の制御方法、プログラム
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  • 特開-ターボ冷凍機、冷凍機制御装置、ターボ冷凍機の制御方法、プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039765
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ターボ冷凍機、冷凍機制御装置、ターボ冷凍機の制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/053 20060101AFI20240315BHJP
   F04D 27/00 20060101ALI20240315BHJP
   F04D 29/46 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F25B1/053 M
F04D27/00 101F
F04D29/46 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144367
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】深澤 和馬
(72)【発明者】
【氏名】末光 亮介
(72)【発明者】
【氏名】横山 明正
【テーマコード(参考)】
3H021
3H130
【Fターム(参考)】
3H021AA01
3H021BA02
3H021BA05
3H021BA06
3H021CA02
3H021CA04
3H021DA11
3H021EA03
3H021EA16
3H130AA14
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC01
3H130AC11
3H130BA82B
3H130BA82J
3H130CA03
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DD01Z
3H130DG02X
(57)【要約】
【課題】起動時における冷媒ガスの状態に関わらず、起動性を高める。
【解決手段】ターボ冷凍機は、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、ターボ圧縮機に吸入される冷媒ガスの流量を調整可能なベーンと、ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器と、凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張弁によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器と、冷凍機制御装置と、を備え、冷凍機制御装置は、ターボ冷凍機の起動に際し、少なくとも冷媒ガスの状態量を取得する取得部と、取得された状態量に基づき、ベーンの開度を決定する開度決定部と、決定された開度に基づき、ベーンの開度を制御する開度制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、
前記ターボ圧縮機に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーンと、
前記ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器と、
冷凍機制御装置と、を備え、
前記冷凍機制御装置は、
ターボ冷凍機の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得する取得部と、
取得された前記状態量に基づき、前記ベーンの開度を決定する開度決定部と、
決定された前記開度に基づき、前記ベーンの開度を制御する開度制御部と、を備える
ターボ冷凍機。
【請求項2】
前記取得部は、前記冷媒ガスの状態量として、前記ターボ圧縮機に吸入される前記冷媒ガスの圧力、及び温度の少なくとも一つを取得する
請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項3】
前記蒸発器の出口側における前記冷媒ガスの圧力を検出する圧力センサを備え、
前記取得部は、前記圧力センサで検出される前記冷媒ガスの圧力を、前記冷媒ガスの状態量として取得する
請求項2に記載のターボ冷凍機。
【請求項4】
前記取得部は、前記ターボ冷凍機の定常運転時における前記ターボ圧縮機の運転回転数を取得し、
前記開度決定部は、前記ベーンにおける前記冷媒ガスの吸い込み方向上流側と下流側との差圧に基づき、前記ベーンの開度を算出する
請求項2又は3に記載のターボ冷凍機。
【請求項5】
前記開度決定部は、予め設定された前記ベーンの開度の最小開度設定値と最大開度設定値との間に収まるように、前記ベーンの開度を決定する
請求項1又は2に記載のターボ冷凍機。
【請求項6】
冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、
前記ターボ圧縮機に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーンと、
前記ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器と、
を備えたターボ冷凍機の冷凍機制御装置であって、
前記ターボ冷凍機の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得する取得部と、
取得された前記状態量に基づき、前記ベーンの開度を決定する開度決定部と、
決定された前記開度に基づき、前記ベーンの開度を制御する開度制御部と、を備える
冷凍機制御装置。
【請求項7】
冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、
前記ターボ圧縮機に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーンと、
前記ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器と、
を備えたターボ冷凍機の制御方法であって、
前記ターボ冷凍機の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得し、
取得された前記状態量に基づき、前記ベーンの開度を決定し、
決定された前記開度に基づき、前記ベーンの開度を制御する、
ターボ冷凍機の制御方法。
【請求項8】
冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、
前記ターボ圧縮機に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーンと、
前記ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器と、
を有するターボ冷凍機が備えるコンピュータに、
前記ターボ冷凍機の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得する手順、
取得された前記状態量に基づき、前記ベーンの開度を決定する手順、
決定された前記開度に基づき、前記ベーンの開度を制御する手順、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターボ冷凍機、冷凍機制御装置、ターボ冷凍機の制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、ターボ圧縮機を通る冷媒ガスの容量を制御する吸入容量制御部と、を備えているターボ冷凍機が開示されている。特許文献1に開示されたターボ冷凍機では、ターボ圧縮機を起動させるとき、吸入容量制御部を目標開度に設定している。このような吸入容量制御部の目標開度への設定は、ターボ冷凍機の起動時に、ターボ圧縮機の油タンク内の潤滑油に溶けている冷媒がフォーミングを起こし、油上がりを抑制することを目的として行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-186030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ターボ冷凍機においては、起動時にターボ圧縮機に吸い込む冷媒ガスによる負荷が大きい場合、ターボ圧縮機を駆動する電動機の起動電流、起動時間が増大する。このため、ターボ冷凍機の起動時には、ターボ圧縮機における冷媒ガスの入口に設けたベーンの開度を小さくし、冷媒ガスの吸い込み流量を制限することが行われている。
しかしながら、起動時にターボ圧縮機に吸い込まれる冷媒ガスの流量は、起動時における冷媒の密度等の冷媒の状態によって変動し得る。このため、当初設定したベーンの開度のままでは、ターボ圧縮機の起動時における冷媒ガスの状態にマッチせず、ターボ圧縮機の起動不良に繋がるという問題がある。
特許文献1に記載のターボ冷凍機は、このような問題を解決するものではない。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、起動時における冷媒ガスの状態に関わらず、起動性を高めることができるターボ冷凍機、冷凍機制御装置、ターボ冷凍機の制御方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るターボ冷凍機は、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、前記ターボ圧縮機に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーンと、前記ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器と、冷凍機制御装置と、を備え、前記冷凍機制御装置は、前記ターボ冷凍機の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得する取得部と、取得された前記状態量に基づき、前記ベーンの開度を決定する開度決定部と、決定された前記開度に基づき、前記ベーンの開度を制御する開度制御部と、を備える。
【0007】
本開示に係る冷凍機制御装置は、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、前記ターボ圧縮機に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーンと、前記ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器と、を備えたターボ冷凍機の冷凍機制御装置であって、前記ターボ冷凍機の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得する取得部と、取得された前記状態量に基づき、前記ベーンの開度を決定する開度決定部と、決定された前記開度に基づき、前記ベーンの開度を制御する開度制御部と、を備える。
【0008】
本開示に係るターボ冷凍機の制御方法は、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、前記ターボ圧縮機に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーンと、前記ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器と、を備えたターボ冷凍機の制御方法であって、前記ターボ冷凍機の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得し、取得された前記状態量に基づき、前記ベーンの開度を決定し、決定された前記開度に基づき、前記ベーンの開度を制御する。
【0009】
本開示に係るプログラムは、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機と、前記ターボ圧縮機に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーンと、前記ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器と、を有するターボ冷凍機が備えるコンピュータに、前記ターボ冷凍機の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得する手順、取得された前記状態量に基づき、前記ベーンの開度を決定する手順、決定された前記開度に基づき、前記ベーンの開度を制御する手順、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示のターボ冷凍機、冷凍機制御装置、ターボ冷凍機の制御方法、プログラムによれば、起動時における冷媒ガスの状態に関わらず、起動性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係るターボ冷凍機の全体構成を示す図である。
図2】上記ターボ冷凍機の冷凍機制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】本開示の実施形態に係るターボ冷凍機の制御方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示によるターボ冷凍機、冷凍機制御装置、ターボ冷凍機の制御方法、プログラムを実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
(ターボ冷凍機の全体構成)
図1に示すように、ターボ冷凍機1は、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機3と、凝縮器5と、膨張弁7と、蒸発器9と、冷凍機制御装置100と、を主に備えている。
【0013】
凝縮器5は、ターボ圧縮機3によって圧縮された高温高圧のガス冷媒を凝縮する。凝縮器5は、ターボ圧縮機3によって圧縮された冷媒ガスを、冷却水との熱交換により放熱させて凝縮させる。凝縮器5としては、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器を例示することができる。
【0014】
膨張弁7は、凝縮器5で凝縮された液冷媒を膨張させる。膨張弁7は、例えば電動式であり、冷凍機制御装置100によって開度が任意に設定される。
【0015】
蒸発器9は、膨張弁7によって膨張された液冷媒を蒸発させる。蒸発器9は、膨張弁7によって膨張された液冷媒を、冷却対象となる水等との熱交換により吸熱させて蒸発させる。蒸発器9としては、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器を例示することができる。
【0016】
ターボ圧縮機3は、遠心式圧縮機であり、インバータ(図示無し)によって回転数制御された電動機11によって駆動される。インバータは、冷凍機制御装置100によってその出力が制御される。ターボ圧縮機3は、回転軸3b周りに回転する羽根車3aを備えている。回転軸3bには、増速機15を介して電動機11から回転動力が伝達される。回転軸3bは、軸受3cによって、回転軸3bの中心軸回りに回転自在に支持されている。ターボ圧縮機3は、ターボ圧縮機3のハウジング(図示無し)内に吸い込んだ冷媒ガスを、回転軸3b周りに回転する羽根車3aによって圧縮し、凝縮器5へと吐出する。
なお、ターボ圧縮機3は、増速機15を具備しない態様(例えば、電動機直結型)であってもよい。
【0017】
ターボ圧縮機3の冷媒吸入口には、ベーン13(いわゆるインレットガイドベーン:IGV)が設けられている。ベーン13は、モータ等を備えた開度調整機構17により、冷媒吸入口の開度を調整可能とされている。ベーン13の開度を調整することで、冷媒吸入口における、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒の流量が調整される。
【0018】
冷凍機制御装置100は、ターボ冷凍機1の各部の動作を制御する。本実施形態において、冷凍機制御装置100は、ターボ冷凍機1の起動に際し、開度調整機構17を制御することで、ベーン13の開度を制御する。
【0019】
蒸発器9の出口側には、圧力センサ120が設けられている。圧力センサ120は、蒸発器9の出口側における冷媒ガスの圧力を検出する。圧力センサ120は、冷媒ガスの圧力の検出結果を、冷凍機制御装置100に出力する。
【0020】
図2は、上記ターボ冷凍機の冷凍機制御装置の機能構成を示すブロック図である。
冷凍機制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)、揮発性および不揮発性の記憶装置、入出力装置、通信装置等を備えたコンピュータと、コンピュータの周辺回路や周辺装置等を含むハードウェアを用いて構成することができる。図2に示すように、冷凍機制御装置100は、ハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、取得部101と、開度決定部102と、開度制御部103と、記憶部105と、を備える。
【0021】
取得部101は、ターボ冷凍機1の起動に際して必要なベーン13の開度(以下、これを必要ベーン開度と称する)を決定するために必要な情報を取得する。
取得部101は、ターボ圧縮機3の機器情報を取得する。ターボ圧縮機3の機器情報としては、例えば、ターボ圧縮機3の型式、使用される冷媒の種類、ベーン13の形状等が例示できる。
ターボ圧縮機3の機器情報は、オペレータが、冷凍機制御装置100に対して、外部から入力してもよいし、ターボ圧縮機3の機器情報を記憶した外部の記憶装置等から取得してもよい。
【0022】
また、取得部101は、必要ベーン開度を決定するために必要な情報として、ターボ冷凍機1の起動時(起動直前)における状態情報を取得する。取得部101は、状態情報として、少なくとも冷媒ガスの状態量を取得する。本実施形態では、取得部101は、冷媒ガスの状態量として、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒ガスの圧力を取得する。取得部101は、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒ガスの圧力として、圧力センサ120で検出された、蒸発器9の出口側における冷媒ガスの圧力の検出結果を取得する。取得部101は、冷媒ガスの状態量として、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒ガスの温度を取得するようにしてもよい。
【0023】
さらに、取得部101は、状態情報として、ターボ冷凍機1の定常運転時における、ターボ圧縮機3の使用回転数を取得する。使用回転数は、例えば、オペレータが、冷凍機制御装置100に対して、外部から入力してもよいし、ターボ冷凍機1の起動に際して、予め外部から冷凍機制御装置100に設定され、記憶部105に記憶された使用回転数の値を取得してもよい。
【0024】
記憶部105は、取得部101で取得した機器情報、状態情報等を記憶している。
【0025】
開度決定部102は、取得部101により取得された機器情報、及び状態情報に基づき、ターボ冷凍機1を起動する際のベーン13の必要ベーン開度を決定する。
開度制御部103は、開度決定部102で決定された必要ベーン開度に基づき、開度調整機構17を制御することで、ベーン13の開度を制御する。
【0026】
(ターボ冷凍機の制御方法)
図3は、本開示の実施形態に係るターボ冷凍機の制御方法の手順を示すフローチャートである。
図3に示すように、ターボ冷凍機1を起動するに際しては、まず、取得部101が、ターボ圧縮機3の機器情報を取得する(ステップS10)。取得部101は、ターボ圧縮機3の機器情報として、例えば、ターボ圧縮機3の型式、使用される冷媒の種類、ベーン13の形状等を、記憶部105から読み出して取得する。より具体的には、取得部101は、ベーン13の形状等に基づいて予め設定されている、ベーン13の許容前後差圧ΔPsbを取得する。ベーン13の許容前後差圧ΔPsbとは、予め設定される、ベーン13における冷媒ガスの吸い込み方向上流側と下流側との差圧の許容値である。また、取得部101は、ターボ圧縮機3の型式に応じて予め設定されている、許容前後差圧ΔPsbの補正値Kを取得する。また、取得部101は、使用される冷媒の種類毎に予め設定されている、冷媒の圧力(又は温度)と、冷媒の密度ρとの相関を示す関数(計算式)を取得する。この関数は、冷媒の物性値データベース(例えば、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)によるREFPROP)に基づき、冷媒の(飽和)圧力-(飽和)温度-密度の情報を取得し、そのデータから近似式を作成することで得られる。
【0027】
続いて、取得部101が、ターボ冷凍機1の起動時(起動直前)における状態情報を取得する(ステップS20)。取得部101は、状態情報として、圧力センサ120で検出された、蒸発器9の出口側における冷媒ガスの圧力の検出結果を取得する。また、取得部101は、状態情報として、ターボ冷凍機1の定常運転時における、ターボ圧縮機3の使用回転数を取得する。
【0028】
次いで、開度決定部102が、ステップS10で取得された機器情報と、ステップS20で取得された状態情報とに基づいて、ターボ圧縮機3を起動させる際のベーン13の開度として、必要ベーン開度を決定する(ステップS30)。本実施形態において、このステップS30は、以下に示すステップS31~S36を含んでいる。
【0029】
まず、開度決定部102が、ターボ圧縮機3を起動させる際に必要な、ベーン13の必要ベーン開度を演算する(ステップS31)。
これには、開度決定部102が、ステップS10で取得したターボ冷凍機1で使用される冷媒の種類と、ステップS20で取得した冷媒ガスの圧力の検出結果と基づき、予め設定されている関数により、ターボ圧縮機3を起動させる直前における冷媒の密度ρを算出する。
【0030】
また、開度決定部102は、ステップS10で取得した、許容前後差圧ΔPsb、補正値K、ステップS20で取得したターボ圧縮機3の使用回転数を用い、下式(1)に基づいて、ベーン開度増減係数Xを算出する。
=(ΔPsb×K)/(f(ρ)×X) ・・・(1)
なお、f(ρ)は、冷媒ガスの密度に基づいて、予め定められた関数によって算出される、ターボ圧縮機3の起動時におけるベーン13の基準推定差圧である。記憶部105から読み出すターボ圧縮機3の機器情報には、各機種毎の差(機種差)が含まれる。基準推定差圧は、この機種差を含むためのものであり、ターボ圧縮機3の各機種毎における、制御の基準(ベース)として用いられる。また、Xは、ターボ圧縮機3の回転数に応じて定まるマッハ数の増減係数である。マッハ数(ターボ圧縮機3の回転数)が大きいほど、より多くの冷媒がターボ圧縮機3内に流入し、ベーン13への負荷が増大する。マッハ数の増減係数は、このマッハ数に応じたベーン13への負荷変動を加味するためものである。
【0031】
開度決定部102は、式(1)によって算出される、ベーン開度増減係数Xに基づき、予め定められた関数f(X)によって、ターボ圧縮機3を起動させる際に必要な、ベーン13の必要ベーン開度を算出する。ここで、ベーン13は、開度(=角度)が変わると、それに伴い、冷媒(流体)から受ける力(ベーン13を動かすための抵抗力)が変わる。このため、ベーン開度増減係数Xを加味し、ベーン13の必要ベーン開度を算出するのが好ましい。
このようにしてステップS31で算出されるベーン13の必要ベーン開度は、ステップS20で取得される冷媒ガスの圧力が高いほど、大きくなる。また、ベーン13の必要ベーン開度は、ステップS20で取得されるターボ圧縮機3の使用回転数が高いほど、大きくなる。
【0032】
続いて、開度決定部102は、ステップS31で算出されたベーン13の必要ベーン開度が、予め設定されたベーン13の設定開度範囲内に収まっているか否かを確認する。開度決定部102は、予め設定された前記ベーン13の最小開度設定値と最大開度設定値との間に収まるように、前記ベーン13の必要ベーン開度を決定する。
これにはまず、開度決定部102は、ステップS31で算出されたベーン13の必要ベーン開度が、予め設定された最小開度設定値以上であるか否かを判定する(ステップS32)。
【0033】
ステップS32において、必要ベーン開度が、最小開度設定値以上ではない場合(ステップS32:No)、開度決定部102は、ターボ圧縮機3を起動させる際のベーン13の必要ベーン開度を、最小開度設定値に更新して決定する(ステップS33)。これにより、ターボ圧縮機3を起動させる際に、ベーン13の実開度が、過度に小さくなることを抑える。
【0034】
また、ステップS32において、必要ベーン開度が、最小開度設定値以上であった場合(ステップS32:Yes)、開度決定部102は、ステップS31で算出されたベーン13の必要ベーン開度が、予め設定された最大開度設定値以下であるか否かを判定する(ステップS34)。
【0035】
ステップS34において、必要ベーン開度が、最大開度設定値以下ではない場合(ステップS34:No)、開度決定部102は、ターボ圧縮機3を起動させる際のベーン13の必要ベーン開度を、最大開度設定値に更新して決定する(ステップS35)。これにより、ターボ圧縮機3を起動させる際に、ベーン13の実開度が、過度に大きくなることを抑える。
【0036】
また、ステップS34において、必要ベーン開度が、最大開度設定値以下であった場合(ステップS34:Yes)、開度決定部102は、ステップS31で算出されたベーン13の必要ベーン開度を、そのまま、ターボ圧縮機3を起動させる際のベーン13の必要ベーン開度として決定する(ステップS36)。
【0037】
開度制御部103は、上記のようにして決定された必要ベーン開度に基づいて、開度調整機構17を制御することで、ベーン13の実開度を調整する。その後、冷凍機制御装置100が、ターボ圧縮機3を起動させる。
冷凍機制御装置100は、ターボ圧縮機3の起動後、ベーン13の開度を、ターボ圧縮機3の使用回転数に合わせて調整する。
【0038】
(作用効果)
上記構成のターボ冷凍機1、冷凍機制御装置100、ターボ冷凍機の制御方法、プログラムでは、ターボ冷凍機1の起動に際し、少なくとも冷媒ガスの状態量を取得し、取得された状態量に基づいて、ベーン13の開度を制御する。これにより、ターボ冷凍機1の起動時に、ベーン13の開度を、そのときの冷媒ガスの状態に応じたものとすることができる。したがって、起動時における冷媒ガスの状態に関わらず、ターボ冷凍機1の起動性を高めることができる。
【0039】
また、冷媒ガスの状態量として、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒ガスの圧力を取得することで、冷媒ガスの密度を算出することができる。これにより、ターボ冷凍機1の起動時における冷媒ガスの密度に応じて、ベーン13の開度を制御することができる。
【0040】
さらに、蒸発器9の出口側における冷媒ガスの圧力を圧力センサ120で検出することによって、冷媒ガスの状態量として、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒ガスの圧力を容易に取得することができる。
【0041】
また、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒ガスの圧力と、ターボ冷凍機1の定常運転時におけるターボ圧縮機3の使用回転数と、に基づいて、ベーン13に作用する冷媒ガスによる差圧を求めることができる。求められた差圧に基づいて、ベーン13の開度を算出することで、ベーン13に作用する差圧によって、ベーン13の開度調整が妨げられるのを抑えつつ、ベーン13の開度を適切に調整することができる。
【0042】
また、ベーン13の開度を、最小開度設定値と最大設定値との間に収まるように決定することで、ベーン13の開度を適切に調整することができる。
【0043】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、ターボ冷凍機1の制御方法の手順を例示したが、その順序は適宜変更可能である。
【0044】
また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータが読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【0045】
<付記>
実施形態に記載のターボ冷凍機1、冷凍機制御装置100、ターボ冷凍機1の制御方法、プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0046】
(1)第1の態様に係るターボ冷凍機1は、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機3と、前記ターボ圧縮機3に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーン13と、前記ターボ圧縮機3によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器5と、前記凝縮器5から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁7と、前記膨張弁7によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器9と、冷凍機制御装置100と、を備え、前記冷凍機制御装置100は、前記ターボ冷凍機1の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得する取得部101と、取得された前記状態量に基づき、前記ベーン13の開度を決定する開度決定部102と、決定された前記開度に基づき、前記ベーン13の開度を制御する開度制御部103と、を備える。
【0047】
このターボ冷凍機1は、ターボ冷凍機1の起動に際し、少なくとも冷媒ガスの状態量を取得し、取得された状態量に基づいて、ベーン13の開度を制御する。これにより、ターボ冷凍機1の起動時に、ベーン13の開度を、そのときの冷媒ガスの状態に応じたものとすることができる。したがって、起動時における冷媒ガスの状態に関わらず、ターボ冷凍機1の起動性を高めることができる。
【0048】
(2)第2の態様に係るターボ冷凍機1は、(1)のターボ冷凍機1であって、前記取得部101は、前記冷媒ガスの状態量として、前記ターボ圧縮機3に吸入される前記冷媒ガスの圧力、及び温度の少なくとも一つを取得する。
【0049】
これにより、冷媒ガスの状態量として、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒ガスの圧力、及び温度の少なくとも一つを取得することで、ターボ冷凍機1の起動時における冷媒ガスの状態に応じて、ベーン13の開度を制御することができる。
【0050】
(3)第3の態様に係るターボ冷凍機1は、(2)のターボ冷凍機1であって、前記蒸発器9の出口側における前記冷媒ガスの圧力を検出する圧力センサ120を備え、前記取得部101は、前記圧力センサ120で検出される前記冷媒ガスの圧力を、前記冷媒ガスの状態量として取得する。
【0051】
これにより、蒸発器9の出口側における冷媒ガスの圧力を圧力センサ120で検出することによって、冷媒ガスの状態量として、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒ガスの圧力を容易に取得することができる。
【0052】
(4)第4の態様に係るターボ冷凍機1は、(2)又は(3)のターボ冷凍機1であって、前記取得部101は、前記ターボ冷凍機1の定常運転時における前記ターボ圧縮機3の運転回転数を取得し、前記開度決定部102は、前記ベーン13における前記冷媒ガスの吸い込み方向上流側と下流側との差圧に基づき、前記ベーン13の開度を算出する。
【0053】
これにより、ターボ圧縮機3に吸入される冷媒ガスの圧力、温度の少なくとも一つと、ターボ冷凍機1の定常運転時における前記ターボ圧縮機3の運転回転数と、に基づいて、ベーン13における冷媒ガスの吸い込み方向上流側と下流側との差圧を求めることができる。求められた差圧に基づいて、ベーン13の開度を算出することで、ベーン13に作用する差圧によって、ベーン13の開度調整が妨げられるのを抑えつつ、ベーン13の開度を適切に調整することができる。
【0054】
(5)第5の態様に係るターボ冷凍機1は、(1)から(4)の何れか一つのターボ冷凍機1であって、前記開度決定部102は、予め設定された前記ベーン13の開度の最小設定値と最大設定値との間に収まるように、前記ベーン13の開度を決定する。
【0055】
これにより、ベーン13の開度を、最小設定値と最大設定値との間に収まるように決定することで、ベーン13の開度を適切に調整することができる。
【0056】
(6)第6の態様に係る冷凍機制御装置100は、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機3と、前記ターボ圧縮機3に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーン13と、前記ターボ圧縮機3によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器5と、前記凝縮器5から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁7と、前記膨張弁7によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器9と、を備えたターボ冷凍機1の冷凍機制御装置100であって、前記ターボ冷凍機1の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得する取得部101と、取得された前記状態量に基づき、前記ベーン13の開度を決定する開度決定部102と、決定された前記開度に基づき、前記ベーン13の開度を制御する開度制御部103と、を備える。
【0057】
これにより、起動時における冷媒ガスの状態に関わらず、ターボ冷凍機1の起動性を高めることができる。
【0058】
(7)第7の態様に係るターボ冷凍機1の制御方法は、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機3と、前記ターボ圧縮機3に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーン13と、前記ターボ圧縮機3によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器5と、前記凝縮器5から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁7と、前記膨張弁7によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器9と、を備えたターボ冷凍機1の制御方法であって、前記ターボ冷凍機1の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得し、取得された前記状態量に基づき、前記ベーン13の開度を決定し、決定された前記開度に基づき、前記ベーン13の開度を制御する。
【0059】
これにより、起動時における冷媒ガスの状態に関わらず、ターボ冷凍機1の起動性を高めることができる。
【0060】
(8)第8の態様に係るプログラムは、冷媒ガスを圧縮するターボ圧縮機3と、前記ターボ圧縮機3に吸入される前記冷媒ガスの流量を調整可能なベーン13と、前記ターボ圧縮機3によって圧縮された冷媒ガスを熱交換により放熱させて凝縮させる凝縮器5と、前記凝縮器5から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁7と、前記膨張弁7によって膨張された液冷媒を熱交換により吸熱させて蒸発させる蒸発器9と、を有するターボ冷凍機1が備えるコンピュータに、前記ターボ冷凍機1の起動に際し、少なくとも前記冷媒ガスの状態量を取得する手順、取得された前記状態量に基づき、前記ベーン13の開度を決定する手順、決定された前記開度に基づき、前記ベーン13の開度を制御する手順、を実行させる。
【0061】
これにより、起動時における冷媒ガスの状態に関わらず、ターボ冷凍機1の起動性を高めることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…ターボ冷凍機
3…ターボ圧縮機
3a…羽根車
3b…回転軸
3c…軸受
5…凝縮器
7…膨張弁
9…蒸発器
11…電動機
13…ベーン
15…増速機
17…開度調整機構
100…冷凍機制御装置
101…取得部
102…開度決定部
103…開度制御部
105…記憶部
120…圧力センサ
図1
図2
図3