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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039796
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】トレモロユニットおよびサドル
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/153 20200101AFI20240315BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G10D3/153
G10D1/08 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144420
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】592201092
【氏名又は名称】後藤ガット有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌甲
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA05
5D002CC42
(57)【要約】
【課題】弦を強固に締め付けることができ、安定してクランプすることができるトレモロユニットを提供する。
【解決手段】弦楽器の表面に配置されるベースプレート10と、ベースプレート10の表面に取り付けられたサドル100とを備え、サドルは100、サドル本体110と、サドル本体110に回動可能に取り付けられたクランパ160とを備え、サドル本体110は、弦が挿通される貫通孔140と、貫通孔140から弦楽器のネック側に引き出された弦を受ける鞍部120とを備えたトレモロユニットである。クランパ160は、鞍部120側のネック側端部が鞍部120に対して接近離間するように支持部161が回動可能に支持され、クランパ160のネック側と逆側の端部に、サドル本体110を押圧して端部をサドル本体110から離間させる操作部164を設けた。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器の表面に配置されるベースプレートと、
前記ベースプレートの表面に取り付けられたサドルと、
前記ベースプレートの表面に設けられたアーム取付部と、
前記ベースプレートに固定されて板厚方向裏側に延在するブロックと、
を備え、
前記ブロックは、弦を挿通させて弦球を係止する弦球係止部を備え、
前記サドルは、サドル本体と、該サドル本体に回動可能に取り付けられた弦押圧部材とを備え、
前記サドル本体は、前記ブロック側から弦が挿通される弦挿通部と、前記弦挿通部から弦楽器のネック側に引き出された弦を受ける弦受部とを備え、
前記弦押圧部材は、前記弦受部側のネック側端部が前記弦受部に対して接近離間するように支持部が回動可能に支持され、
前記弦押圧部材のネック側と逆側の端部に、前記サドル本体を押圧して該端部を該サドル本体から離間させる操作部を設けたことを特徴とするトレモロユニット。
【請求項2】
前記操作部は、前記弦押圧部材に螺合させたネジであり、前記ネジの先端が前記サドル本体に当接していることを特徴とする請求項1に記載のトレモロユニット。
【請求項3】
前記弦押圧部材の前記支持部に軸が固定され、前記弦押圧部材の両側に配置された前記サドル本体の支持部に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項2に記載のトレモロユニット。
【請求項4】
前記サドル本体の支持部には、ネック側の側部に開口部を有する凹部が形成され、前記軸は、前記開口部を通して前記凹部に収容されていることを特徴とする請求項3に記載のトレモロユニット。
【請求項5】
前記弦受部は、前記ネック側へ向けて上り勾配となる傾斜面を備え、前記弦押圧部材の前記先端部は、前記傾斜面に添った形状を有することを特徴とする請求項1に記載のトレモロユニット。
【請求項6】
弦楽器のトレモロユニットまたはブリッジのベースプレートに装着されるサドルであって、
前記サドルは、サドル本体と、該サドル本体に回動可能に取り付けられた弦押圧部材とを備え、
前記サドル本体は、前記ブロック側から弦が挿通される弦挿通部と、前記弦挿通部から弦楽器のネック側に引き出された弦を受ける弦受部とを備え、
前記弦押圧部材は、前記弦受部側のネック側端部が前記弦受部に対して接近離間するように支持部が回動可能に支持され、
前記押圧部材のネック側と逆側の端部に、前記サドル本体を押圧して該端部を該サドル本体から離間させる操作部を設けたことを特徴とするサドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレキギターやエレキベースに装着されるトレモロユニットに係り、簡単な構成で弦を強固にクランプする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エレキギターやエレキベース等の弦楽器には、演奏中に音程を上下させてチョーキングやビブラートをかけるトレモロユニットを備えたものがある。たとえば、特許文献1に開示されたトレモロユニットは、エレキギターの表面に装着したベースプレートに、ベースプレートの板厚方向裏側に延在するトレモロブロックを固定し、ベースプレートの表面にサドルを取り付けて構成されている。
【0003】
トレモロブロックには、板厚方向に延在する貫通孔が形成され、貫通孔に弦を通して弦球を貫通孔の縁部の弦球止に係合させ、弦をサドルに掛けてその先端部を糸巻で巻いて調弦する。エレキギターのボディには、トレモロブロックを収容する穴が形成され、トレモロブロックの端部とエレキギターのボディにはコイルばねが取り付けられている。これにより、トレモロブロックは、常に弦を張る方向に付勢され、ベースプレートに取り付けたトレモロアームを操作することでベースプレートのネック側縁部を支点としてトレモロブロックが傾き、弦の張力が変化して音程が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-52711号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成のトレモロユニットでは、弦を鳴らしたときの音程は、サドルから糸巻までの間の弦の張力で決定される。そして、トレモロアームを操作することでサドルから糸巻までの間の距離が変化し、弦の張力が変化して音程が変化する。しかしながら、弦球止からサドルまでの間にも弦の一部が存在するため、その部分でも弦が伸縮し、サドル-糸巻間の調弦に狂いが生じる。
【0006】
そこで、サドルにおいて弦をクランプすることが行われている。たとえば、サドルにネジをねじ込み、ネジの頭部とサドルの上面とで弦を締め付けることによって、弦がネジと糸巻との間で固定されるようにした構造が知られている。
【0007】
しかしながら、上記のようなクランプ方式では、ネジの頭部に偏った力が作用し、ネジの首部の変形によってクランプ力が低下するという問題があった。したがって、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、弦を強固に締め付けることができ、安定してクランプすることができるトレモロユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、弦楽器の表面に配置されるベースプレートと、前記ベースプレートの表面に取り付けられたサドルと、前記ベースプレートの表面に設けられたアーム取付部と、前記ベースプレートに固定されて板厚方向裏側に延在するブロックと、を備え、前記ブロックは、弦を挿通させて弦球を係止する弦球係止部を備え、前記サドルは、サドル本体と、該サドル本体に回動可能に取り付けられた弦押圧部材とを備え、前記サドル本体は、前記ブロック側から弦が挿通される弦挿通部と、前記弦挿通部から弦楽器のネック側に引き出された弦を受ける弦受部とを備え、前記弦押圧部材は、前記弦受部側のネック側端部が前記弦受部に対して接近離間するように支持部が回動可能に支持され、前記弦押圧部材のネック側と逆側の端部に、前記サドル本体を押圧して該端部を該サドル本体から離間させる操作部を設けたことを特徴とするトレモロユニットである。
【0009】
上記構成のトレモロユニットにあっては、操作部により弦押圧部材のネック側と逆側の端部をサドル本体から離間させると、弦押圧部材のネック側の端部が弦受部側へ移動して弦を締め付けるから、弦は弦受部に強固に締め付けられ、安定してクランプすることができる。
【0010】
ここで、操作部は、弦押圧部材に螺合させたネジであり、ネジの先端がサドル本体に当接している態様が好ましい。この態様では、ネジを順方向(締付方向)に回転させると、ネジの螺旋に添って操作部がネジの頭部側へ移動し、弦押圧部材の先端部が弦受部側へ移動して弦を締め付ける。このように、簡単な構成で弦のクランプ機構を実現することができる。
【0011】
また、弦押圧部材の支持部に軸が固定され、弦押圧部材の両側に配置されたサドル本体の支持部に回転可能に支持されている態様が好ましい。この態様では、弦押圧部材の支持部が両側で支持されるから、支持が安定する。
【0012】
この場合、サドル本体の支持部には、ネック側の側部に開口部を有する凹部が形成され、軸は、開口部を通して凹部に収容されている態様が好ましい。この態様では、軸を固定した弦押圧部材を簡単にサドルに装着することができる。
【0013】
また、弦受部は、ネック側へ向けて上り勾配となる傾斜面を備え、弦押圧部材の先端部は、傾斜面に添った形状を有する態様が好ましい。この態様では、弦は、傾斜面を上りきった頂部でネック側へ引き出されるから、弦の張力の一部は頂部に至るコーナーで受け止められる。したがって、弦の張力に対する把持力が高く、弦の緩みを抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、弦楽器のトレモロユニットまたはブリッジのベースプレートに装着されるサドルであって、前記サドルは、サドル本体と、該サドル本体に回動可能に取り付けられた弦押圧部材とを備え、前記サドル本体は、前記ブロック側から弦が挿通される弦挿通部と、前記弦挿通部から弦楽器のネック側に引き出された弦を受ける弦受部とを備え、前記弦押圧部材は、前記弦受部側のネック側端部が前記弦受部に対して接近離間するように支持部が回動可能に支持され、前記押圧部材のネック側と逆側の端部に、前記サドル本体を押圧して該端部を該サドル本体から離間させる操作部を設けたことを特徴とするサドルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトレモロユニットによれば、弦を強固に締め付けることができ、安定してクランプすることができるトレモロユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態のトレモロユニットを示す平面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】第1実施形態のトレモロユニットからサドルを省いた状態の平面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】第1実施形態のトレモロユニットを示す裏面図である。
図6図1のVI-VI線断面図である。
図7】第1実施形態におけるサドルを示す(A)側面図、(B)断面図、(C)背面図、(D)平面図である。
図8】第1実施形態のトレモロユニットの背面図である。
図9】本発明の第2実施形態におけるサドルを示す断面図である。
図10】第2実施形態におけるサドル本体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態のトレモロユニット1の平面図、図2図1のII-II線断面図である。このトレモロユニット1は、エレキギターのボディBに装着される。なお、以下の説明においては、エレキギターのネック側を先端側、その反対側を後端側と称する。また、以下の説明に用いる「上」および「下」の用語は、エレキギターを平板上においたときの上下方向を示し、「左」および「右」は、先端側を向いたときの上下方向に直交する方向を示す。
【0018】
図において符号10はベースプレートである。ベースプレート10は、平面視で矩形状の平板部11と、平板部11の後端側縁部から上方へ向けて延在する側板部12、および平板部11の右側一側から右方向に突出するフランジ部13とからなっている。
【0019】
図2に示すように、平板部11の先端部の下面には、先端側へ向かうに従って厚さが薄くなる傾斜面11aが形成されている。また、平板部11の先端部には、傾斜面11aに重ねて貫通孔11bが形成されている。貫通孔11bには、その内径よりも外径が小さいネジ14が挿通され、ネジ14はボディBにねじ込まれている。
【0020】
フランジ部13には、トレモロアームAの基部が貫通する貫通孔13aが表裏に貫通して形成されている。貫通孔13aの内周面とトレモロアームAの基部の外周面との間には隙間が設けられている。
【0021】
ベースプレート10の裏面には、ブロック20が取り付けられている。図3および図4示すように、皿ネジ15が平板部11を貫通してブロック20に形成したネジ孔20aにねじ込まれることにより、ブロック20はベースプレート10に装着されている。ブロック20は、エレキギターの裏面に形成された穴30に収容されている。
【0022】
図5および図6に示すように、穴30は、先端側の矩形穴31と、矩形穴31の後端側に隣接する長円穴32とからなっている。矩形穴31は、エレキギターのボディBの中程までの深さを有している。長円穴32は、ボディBの表面付近までの深さに達すると、長円穴32の後端縁からベースプレート10の側板部12と重複する部分まで庇部33が形成され、庇部33の先端側の部分がボディBの表面に抜けている。長円穴32は、ボディBの表面側からはベースプレート10に隠れて見えないようになっている。
【0023】
ブロック20は、平面視で長円状をなしている。ブロック20は、ボディBの裏面付近まで延在する先端側の加圧部21と、加圧部21の手前まで延在する作動部22とからなっている。前述の皿ネジ15は、作動部22に形成されたネジ孔20aにねじ込まれている(図4参照)。
【0024】
加圧部21の下端面には複数(この例では5個)の穴23が形成されている。一方、ボディBの裏面に形成された矩形穴31の内側面には、ネジ34がねじ込まれ、ネジ34には、連結具35を介してコイルばね36の一端部が取り付けられ、コイルばね36の他端部は穴23に接続されている。この構成のもとに、ブロック20は、図6において反時計回りの方向に付勢されている。
【0025】
ブロック20の作動部22には、アーム取付孔(アーム取付部)25が形成され、アーム取付孔25は、ベースプレート10の貫通孔13aと重複している。アーム取付孔25には、例えば樹脂製のブッシュが嵌合され、トレモロアームAの基部をブッシュに圧入することで、回転可能に固定される。すなわち、使用者は、トレモロアームAを回転させて好みの位置に設定するが、トレモロアームAの基部はある程度の強さでブッシュから締め付けられており、意図せず回転するようなことがない。
【0026】
演奏時には、トレモロアームAをボディB側へ押し付ける。すると、ベースプレート10が、傾斜面11aの後端縁11c(図6参照)を支点にして時計回りの方向へ傾動し、弦Sの張力が減少して音程が下がる。
【0027】
図5に示すように、ブロック20の加圧部21には、上下に貫通する複数(この例では6個)の弦通し孔(弦挿通部)26が形成されている。弦通し孔26同士の間には、コイルばね36が接続された穴23が位置している。弦通し孔26には、弦Sが挿通され、弦Sの弦球E(図2参照)が弦通し孔26の縁部に係合する。そして、弦Sは、弦通し孔26から引き出され、サドル100によってクランプされる。
【0028】
図7にサドル100を示す。サドル100は、ベースプレート10に載置されており、サドル本体110とクランパ(弦押圧部材)160とからなっている。サドル本体110は、平面視で矩形状をなしており、先端側に鞍部(弦受部)120と、後端側にネジ受部130を備えている。また、鞍部120とネジ受部130との間には貫通孔(弦挿通部)140が形成され、貫通孔140の左右両側には支持部150が形成されている。
【0029】
鞍部120には、貫通孔140の先端側縁部から立ち上がって上り勾配となる第1傾斜面121が形成され、第1傾斜面121の頂部122から先には下り勾配となる第2傾斜面123が形成されている。
【0030】
第1傾斜面121と貫通孔140との境界には、面取部124が形成されている。ブロック20の弦通し孔26から引き出された弦Sは、貫通孔140を通して面取部124と第1傾斜面121とに掛けられ、エレキギターのヘッドに装着された糸巻に巻かれる。
【0031】
鞍部120には、一対の螺子孔125が形成され、螺子孔125には、止めネジ126が螺合している。止めネジ126の先端部はベースプレート10の表面に当接しており、止めネジ126を回転させることで螺子孔125の上下方向の位置が変化し、サドル100の高さ、つまり弦高を調節できるようになっている。
【0032】
支持部150は、貫通孔140の後端部の両側に位置して上方へ突出する凸部151を備えている。凸部151には、左右方向に貫通する孔151aが形成されている。孔151aには、後述するクランパ160の軸162が回転可能な状態で支持されている。
【0033】
ネジ受部130は、その上面が平坦な平坦面131とされ、クランパ160に装着したネジ165(図1および図2参照)の先端が当接して押圧されるようになっている。また、ネジ受部130には、先後方向に貫通するネジ孔130aが形成されている。
【0034】
ベースプレート10の側板部12には、ネジ18が回転可能に支持され、側板部12とネジ受部130との間には、ネジ18によって貫通されたコイルばね16(図1および図2参照)が圧縮された状態で配置されている。ネジ18の先端部は、ネジ受部130のネジ孔130aに螺合しており、ネジ18を回転させることにより、ネジ18の螺旋に添ってサドル100が先後方向に移動し、サドル100から糸巻までの有効弦長を調節できるようになっている。
【0035】
クランパ160は先後方向に延在する幅が一様な長尺のもので、長手方向中間部に先後部よりも下方に膨らんだ支持部161を備えている。支持部161には左右方向に貫通する貫通孔161aが形成され、貫通孔161aには軸162が圧入等の手段により固定されている。軸162は、サドル本体110の孔151aに回転自在な状態で挿入されている。
【0036】
支持部161の先端側には、押圧部163が設けられている。押圧部163の下面は、サドル本体110の第1傾斜面121に添う形状を有している。また、支持部161の後端側には、操作部164が設けられている。操作部164は、ネジ受部130の上方に配置され、ネジ孔164aが形成されている。ネジ孔163aにはネジ165が取り付けられている。ネジ165の先端は、ネジ受部130の平坦面131に当接している。
【0037】
2.効果
上記構成のもとに、ネジ165を順方向(締付方向)に回転させると、ネジ165の先端がネジ受部130の平坦面131に当接しているから、ネジ165の螺旋に添って操作部164がネジ165の頭部165a側へ移動し、クランパ160の押圧部163がサドル本体110の第1傾斜面121側へ移動して弦Sを締め付ける。したがって、弦Sを安定してクランプすることができる。
【0038】
特に、上記第1実施形態では、操作部164に螺合させたネジ165によって操作部164を移動させる構成であるから、簡単な構成で弦のクランプ機構を実現することができる。
【0039】
また、上記第1実施形態では、クランパ160の支持部161に軸162が固定され、クランパ160の両側に配置されたサドル本体110の支持部150に回転可能に支持されているから。クランパ160の支持部161が両側で支持され、支持が安定する。
【0040】
また、サドル本体110は、先端側へ向けて上り勾配となる第1傾斜面121を備え、クランパ160の押圧部163は、第1傾斜面121に添った形状を有しているから、弦Sは、第1傾斜面121を上りきった頂部122で先端側へ引き出され、弦Sの張力の一部は頂部122に至るコーナーで受け止められる。したがって、弦Sの張力に対する把持力が高く、弦Sの緩みを抑制することができる。
【0041】
3.第2実施形態
図9および図10を参照して本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、サドル本体の構成のみが第1実施例と異なっている。よって、以下の説明においては、上記第1実施形態と同等の構成要素には同符号を付してその説明を省略する。
【0042】
サドル200は、サドル本体210にクランパ160を回動自在に支持して構成されている。サドル本体210は、平面視で矩形状をなしており、先端側に鞍部(弦受部)220と、後端側にネジ受部230を備えている。また、鞍部220とネジ受部230との間には貫通孔240が形成され、貫通孔240の左右両側には支持部250が形成されている。
【0043】
鞍部220には、貫通孔240の先端側縁部から立ち上がって上り勾配となる第1傾斜面221が形成され、第1傾斜面221の頂部222から先には断面円弧状の円筒面223が形成されている。
【0044】
第1傾斜面221と貫通孔240との境界には、円筒曲面からなる面取部224が形成されている。ブロック20の弦通し孔26から引き出された弦Sは、貫通孔240を通して面取部224と第1傾斜面221とに掛けられ、エレキギターのヘッドに装着された糸巻に巻かれる。
【0045】
なお、図示は省略するが、鞍部220には、上下方向に貫通する一対の螺子孔が形成され、螺子孔には、止めネジが螺合している。止めネジの先端部はベースプレート10の表面に当接しており、止めネジを回転させることで螺子孔の上下方向の位置が変化し、サドル200の高さ、つまり弦高を調節できるようになっている。
【0046】
支持部250は、貫通孔240の後端部の両側に位置して上方へ突出する凸部251を備えている。凸部251には、左右方向に貫通する凹部252が形成されている。凹部252は、先端側に開放された開口253を備え、凹部252には、クランパ160の軸162が開口253を通して挿入されて回転可能な状態で支持されている。
【0047】
ネジ受部230は、その上面が平坦な平坦面231とされ、クランパ160に装着したネジ165(図1および図2参照)の先端が当接して押圧されるようになっている。また、ネジ受部230には、先後方向に貫通するネジ孔230aが形成されている。
【0048】
上記第2実施形態のトレモロユニットにあっては、前記第2実施形態と同等の効果を奏することは勿論のこと、クランパ160の軸162は凹部252の開口253を通して挿入されて回転可能な状態で支持されているから、クランパ160を容易にサドル200に装着することができる。
【0049】
4.変更例
本発明は前記実施形態に限定されることなく以下のように種々の変更が可能である。
i)前記実施形態では、ネジ165によって操作部164を移動させるように構成しているが、同様の構成を、カムを用いて達成することができる。たとえば、ボルトの形状を有するピンの首部を操作部164で回転自在に支持し、ピンの先端にカム面を形成しておく。一方、ネジ受部130の上面に上記カム面接触するカム受面を形成しておき、カム面をカム受面に対して回転させることで、ピンが上方へ移動するように構成する。
【0050】
ii)上記変更例の別の例として、クランパ160の操作部164とネジ受部130の平坦面131との間にコイルばねを介装することができる。この場合、弦Sを通すために、クランパ160の押圧部163をサドル100の鞍部120から離間させる必要があるが、たとえば、クランパ160の操作部164の端から端までを覆うバーを配置し、バーの両端部にボルトを挿通させてボルトの先端をベースプレート10に形成したネジ孔に螺合させて操作部164を押し下げるように構成することができる。
【0051】
iii)本発明は、エレキギターやエレキベース用のトレモロユニットに限定されるものではなく、アコースティックギターやマンドリンなどあらゆる弦楽器に対応可能であり、また、トレモロユニットではないブリッジにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、エレキギターやエレキベース用のトレモロユニット等の産業に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…トレモロユニット、10…ベースプレート、11…平板部、11a…傾斜面、11b…貫通孔、11c…後端縁、12…側板部、13…フランジ部、13a…貫通孔、14…ネジ、15…皿ネジ、16…コイルばね、18…ネジ、20…ブロック、20a…ネジ孔、21…加圧部、22…作動部、23…穴、25…アーム取付孔(アーム取付部)、26…弦通し孔(弦挿通部)、30…穴、31…矩形穴、32…長円穴、33…庇部、34…ネジ、35…連結具、36…コイルばね、100…サドル、110…サドル本体、120…鞍部(弦受部)、121…第1傾斜面、122…頂部、123…第2傾斜面、124…面取部、125…螺子孔、126…止めネジ、130…ネジ受部、130a…ネジ孔、131…平坦面、140…貫通孔(弦挿通部)、150…支持部、151…凸部、151a…孔、160…クランパ(弦押圧部材)、161…支持部、161a…貫通孔、162…軸、163…押圧部、164…操作部、164a…ネジ孔、165…ネジ、165a…頭部、200…サドル、210…サドル本体、220…鞍部(弦受部)、221…第1傾斜面、222…頂部、223…円筒面、224…面取部、230…ネジ受部、ネジ…230a孔、231…平坦面、240…貫通孔、250…支持部、251…凸部、252…凹部、253…開口、A…トレモロアーム、B…ボディ、S…弦。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10