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▶ 神谷 雅夫の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039798
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】落下防止具及び棚
(51)【国際特許分類】
   A47B 96/02 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A47B96/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144422
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】522361995
【氏名又は名称】神谷 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雅夫
(57)【要約】
【課題】地震発生時に、物品の棚からの落下を確実に防止可能な落下防止具を提供する。
【解決手段】棚の振動によりガードバー7の両端部の、待機部33での係止が解除されると、ガードバーが上方位置31から下方位置32まで下降して、物品の落下を防止する落下防止具2にあって、ガードバー7の端部の係止が解除されない係止位置47と、ガードバー7の端部の係止が解除される解除位置とに位置変換可能な可動部材42と、揺動可能に吊持された重錘55を下端部に備え、基端部を可動部材42と連繋して、可動部材42を係止位置47に引っ張る振子44と、重錘55の直下に、重錘55と離間した状態で固定されて、磁力によって重錘55を下方に吸引する吸引部材45と、可動部材42を解除位置に付勢する付勢手段43とを配設し、棚の振動に伴って振子44が可動部材42を係止位置47に引っ張る引張力が減少するよう構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚に配設されて、前記棚から物品が落下するのを防止する落下防止具であって、
前記棚の正面側に略水平に配置される杆状のガードバーと、前記ガードバーを上方位置と下方位置で支持可能なバー保持手段とを備え、
前記バー保持手段は、前記棚に固定されて、前記ガードバーの両端部を昇降可能に保持する左右一対の昇降保持具からなり、
左右の前記昇降保持具は、
前記ガードバーを前記上方位置に支持可能な高さの待機部に、前記ガードバーの端部を係止するとともに、
前記棚の振動時に、前記待機部での係止を解除するよう構成された係止解除手段を備え、
前記ガードバーの両端部の、前記待機部での係止が解除されると、前記ガードバーが前記上方位置から前記下方位置まで下降するよう構成されたものであり、
前記係止解除手段は、
前記ガードバーの端部の係止が解除されない係止位置と、前記ガードバーの端部の係止が解除される解除位置とに位置変換可能に配設された可動部材と、
任意の方向に揺動可能に吊持された重錘を下端部に備え、基端部を前記可動部材と連繋して、前記可動部材を前記係止位置に引っ張る振子と、
前記重錘の直下に、前記重錘と離間した状態で固定されて、磁力によって前記重錘を下方に吸引する吸引部材と、
前記可動部材を前記解除位置に付勢する付勢手段と
を備え、
前記棚の振動に伴って前記重錘が振動することにより、前記振子が可動部材を前記係止位置に引っ張る引張力が減少するよう構成されたものであり、
前記ガードバーの端部を待機部に係止した状態で、前記棚の振動により前記引張力が減少して、前記可動部材を前記係止位置に保持する力が、前記可動部材を前記解除位置に付勢する力を下回ると、前記可動部材が前記係止位置から前記解除位置に変位して、前記ガードバーの端部の、前記待機部での係止が解除されるよう構成されることを特徴とする落下防止具。
【請求項2】
左右の前記昇降保持具は、前記ガードバーの端部を、前記待機部から、前記ガードバーを前記下方位置に支持可能な高さの作動部まで案内し、当該作動部で支持可能に構成された案内溝を備え、
前記案内溝は、前記作動部から上方に延びる第一溝部と、前記待機部から略水平又は上方に延びる第二溝部とを接続してなるものであり、
前記係止解除手段は、前記可動部材の前記係止位置から前記解除位置への移動に伴って、前記待機部に係止した前記ガードバーの端部を、前記付勢手段の付勢力によって、前記第二溝部に沿って前記第一溝部の方向に送出するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の落下防止具。
【請求項3】
前記案内溝は、前記第一溝部と前記第二溝部の接続部分に、前記ガードバーの端部を前記第二溝部から前記第一溝部に円滑に案内する、略円弧状に湾曲した円弧溝部を備えることを特徴とする請求項2に記載の落下防止具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の落下防止具を備える棚。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時に棚から物品が落下するのを防止する落下防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
地震発生時に棚から物品が落下するのを防止する落下防止具として、昇降可能なガードバーを具備する構成が提案されている。かかる落下防止具は、棚の正面側に配置したガードバーを、通常は、物品の出し入れの妨げとならない高さに保持し、地震発生時に、ガードバーを物品の真正面に下降させることにより、物品の落下を防止するよう構成される(特許文献1,2参照)。
【0003】
具体的には、特許文献1,2に記載の落下防止具では、ガードバーを逆L字状の溝に沿って移動可能に保持し、通常は、ガードバーを上方の水平溝上に係止して、物品の出し入れの邪魔とならないようにする。そして、地震発生時に、棚の揺れに伴ってガードバーが水平溝に沿って揺れ動き、逆L字状の溝の屈曲部分まで達すると、ガードバーが垂直溝に沿って下降して、物品の落下を防止し得る高さで支持されるよう構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】公開実用新案昭55-038946号公報
【特許文献2】登録実用新案3193786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の落下防止具は、物品が落下するおそれのある規模の地震が発生した時に、確実にガードバーの上方での係止を解除して、物品の落下を防止する位置に下降させることが求められる。しかしながら、上記特許文献1,2の構成では、地震の揺れの程度が同じであっても、棚が揺れる方向によって、ガードバーの係止が解除され易い場合と、解除され難い場合がある。具体的には、特許文献1,2の構成では、ガードバーが係止される水平溝の溝方向に棚が揺れた場合は、ガードバーが水平溝に沿って大きく揺れ動くため、ガードバーの係止が解除され易い。しかし、棚がガードバーの長手方向や上下方向に揺れた場合は、棚の揺れに対して、ガードバーが水平溝に沿って揺れ動く幅が小さくなるため、ガードバーの上方での係止が解除され難い。このように、従来の落下防止具は、物品が棚から落下し得る規模の地震であっても、棚が揺れる方向によっては、ガードバーの上方での係止が解除されなかったり、係止解除に時間を要したりして、物品の落下を十分に防止できない。
【0006】
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであり、地震発生時に、物品の棚からの落下を、より確実に防止可能な落下防止具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、棚に配設されて、前記棚から物品が落下するのを防止する落下防止具であって、前記棚の正面側に略水平に配置される杆状のガードバーと、前記ガードバーを上方位置と下方位置で支持可能なバー保持手段とを備え、前記バー保持手段は、前記棚に固定されて、前記ガードバーの両端部を昇降可能に保持する左右一対の昇降保持具からなり、左右の前記昇降保持具は、前記ガードバーを前記上方位置に支持可能な高さの待機部に、前記ガードバーの端部を係止するとともに、前記棚の振動時に、前記待機部での係止を解除するよう構成された係止解除手段を備え、前記ガードバーの両端部の、前記待機部での係止が解除されると、前記ガードバーが前記上方位置から前記下方位置まで下降するよう構成されたものであり、前記係止解除手段は、前記ガードバーの端部の係止が解除されない係止位置と、前記ガードバーの端部の係止が解除される解除位置とに位置変換可能に配設された可動部材と、任意の方向に揺動可能に吊持された重錘を下端部に備え、基端部を前記可動部材と連繋して、前記可動部材を前記係止位置に引っ張る振子と、前記重錘の直下に、前記重錘と離間した状態で固定されて、磁力によって前記重錘を下方に吸引する吸引部材と、前記可動部材を前記解除位置に付勢する付勢手段とを備え、前記棚の振動に伴って前記重錘が振動することにより、前記振子が可動部材を前記係止位置に引っ張る引張力が減少するよう構成されたものであり、前記ガードバーの端部を待機部に係止した状態で、前記棚の振動により前記引張力が減少して、前記可動部材を前記係止位置に保持する力が、前記可動部材を前記解除位置に付勢する力を下回ると、前記可動部材が前記係止位置から前記解除位置に変位して、前記ガードバーの端部の、前記待機部での係止が解除されるよう構成されることを特徴とする落下防止具である。
【0008】
かかる構成にあっては、振子が可動部材を係止位置に引っ張る引張力には、重錘に働く重力と、吸引部材が重錘を吸引する吸引力が含まれる。かかる引張力は、地震発生時の棚の振動に伴って一時的に減少する。すなわち、棚が横揺れすると、重錘は吸引部材の上方で揺動し、重錘と吸引部材の距離や位置関係が変動することにより、吸引部材による吸引力が減少して、振子の引張力が一時的に減少する。また、地震によって棚が縦揺れすると、重錘が真上に引き上げられて、上下に振動することによって、振子の引張力が一時的に減少する。かかる引張力の減少度合いは、重錘の揺れ幅が大きいほど大きくなる。
重錘は、いずれの方向にも振動可能であり、また、摩擦の影響を受けるなく振動するため、重錘は、地震発生時に、地震(棚)の揺れの方向に、地震(棚)の揺れの大きさに比例した揺れ幅で振動する。このため、本発明に係る係止解除手段は、地震(棚)の揺れの方向に関わらず、揺れの大きさが所定閾値を超えた場合に、ガードバーの端部の係止を解除できる。
このように、本発明では、棚の揺れる方向に関わらず、揺れの大きさに応じてガードバーの端部の係止が解除されるため、物品の落下を防止すべき大きさの揺れが生じた際に、物品の棚からの落下を、従来構成よりも確実に防止できる。
【0009】
本発明の具体的構成として、左右の前記昇降保持具は、前記ガードバーの端部を、前記待機部から、前記ガードバーを前記下方位置に支持可能な高さの作動部まで案内し、当該作動部で支持可能に構成された案内溝を備え、前記案内溝は、前記作動部から上方に延びる第一溝部と、前記待機部から略水平又は上方に延びる第二溝部とを接続してなるものであり、前記係止解除手段は、前記可動部材の前記係止位置から前記解除位置への移動に伴って、前記待機部に係止した前記ガードバーの端部を、前記付勢手段の付勢力によって、前記第二溝部に沿って前記第一溝部の方向に送出するよう構成されている構成が提案される。
【0010】
かかる構成にあっては、待機部での係止を解除する際に、付勢手段の付勢力によって、ガードバーの端部を待機部から勢いよく送出できるため、地震発生時にガードバーを上方位置から下方位置に速やかに移動させることができる。
【0011】
上記構成にあって、前記案内溝は、前記第一溝部と前記第二溝部の接続部分に、前記ガードバーの端部を前記第二溝部から前記第一溝部に円滑に案内する、略円弧状に湾曲した円弧溝部を備えることが提案される。
【0012】
かかる構成にあっては、付勢手段によって待機部から送出されるガードバーの端部を、送出時の勢いを減衰させることなく、第二溝部から第一溝部に進入させることができるため、地震発生時にガードバーを一層速やかに移動させることができる。
【0013】
また、本発明の別形態として、本発明の落下防止具を備える棚が提案される。
【発明の効果】
【0014】
以上に述べたように、本発明によれば、地震発生時に、棚の揺れる方向に関わらず、物品が棚から落下するのを従来構成よりも確実に防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例の落下防止具2を取り付けた本棚1の斜視図である。
図2】落下防止具2の斜視図である。
図3】本棚1の拡大図であり、(A)はガードバー7が上方位置31にある状態を示し、(B)はガードバー7が下方位置32にある状態を示す。
図4】係止解除手段40を切断して示す、ガードバー7を上方位置31に支持した状態の、落下防止具2の(A)右側面と、(B)正面右側部拡大図である。
図5】係止解除手段40を切断して示す、ガードバー7を下方位置32に支持した状態の、落下防止具2の(A)右側面と、(B)正面右側部拡大図である。
図6】変形例の落下防止具2aの右側面図である。
図7】変形例の落下防止具2bを取り付けた本棚1の拡大図であり、(A)はガードバー7が上方位置31にある状態を示し、(B)はガードバー7が下方位置32にある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
図1は、本棚1に、実施例の落下防止具2を取り付けた状態を示す斜視図である。落下防止具2は、本棚1の正面側に略水平に配置される杆状のガードバー7と、ガードバー7を保持するバー保持手段5とを備えてなる。かかる落下防止具2は、本棚1の段ごとに取り付けられるものであり、図1は、本棚1の全ての段に、落下防止具2を1つずつ取り付けた状態を示している。
【0017】
図1,2に示すように、バー保持手段5は、本棚1の左右の側板10に固定されて、ガードバー7の端部を昇降可能に保持する左右一対の昇降保持具8により構成される。左右の昇降保持具8は、左右対称かつ同一構成を有し、本棚1の同じ高さに配設される。昇降保持具8は、上下に長尺で、平面視L字状をなす保持金具20を備えている。保持金具20の一方の片部は、ねじや釘によって本棚1の側板10の正面に固定される固定片部21を構成する。保持金具20の他方の片部は、本棚1の側板37の前方に延出して、ガードバー7の端部を保持する保持片部22を構成する。
【0018】
図1,2に示すように、ガードバー7は、本棚1の幅と略同じ長さを有する、断面円形の杆状材である。ガードバー7の両端部には、保持片部22からの脱落を防止する円環状の留具30が取り付けられる。ガードバー7は、地震発生時に本棚1から書籍12が落下するのを防止するためのものであり、バー保持手段5によって、両端部を昇降可能に保持されるとともに、上方位置31と下方位置32に選択的に支持可能となっている。
【0019】
図3に示すように、落下防止具2は、上方位置31のガードバー7が、本棚1の正面側で書籍12の出し入れを阻害せず、かつ、下方位置32のガードバー7が、本棚1の正面側で書籍12の落下を防止する高さとなるように、本棚1に取り付けられる。具体的には、図3(A)に示すように、落下防止具2を本棚1に取り付けた状態で、上方位置31のガードバー7は、本棚1の棚板9(最上段は天板11)の略正面に、水平に配置される。また、図3(B)に示すように、下方位置32のガードバー7は、落下防止具2が取り付けられた段の書籍12の正面側中央部又は正面側上部を横切るような高さに、水平に配置される。
【0020】
落下防止具2は、少なくとも、本棚1に書籍12を出し入れする際は、図3(A)に示すように、ガードバー7を上方位置31に支持して、ガードバー7によって書籍12の出し入れが阻害されない状態とされる。そして、かかる状態で比較的揺れの大きな地震が発生すると、落下防止具2は、図3(B)に示すように、ガードバー7を下降させて下方位置32に支持し、ガードバー7によって、本棚1から書籍12が落下するのを防止するよう構成される。
【0021】
具体的には、図2に示すように、左右の昇降保持具8が、ガードバー7の両端部を上方の待機部33に係止することにより、ガードバー7が上方位置31に支持される。昇降保持具8には、本棚1の振動時に、ガードバー7の端部の待機部33での係止を解除するよう構成された係止解除手段40が配設されており、係止解除手段40によってガードバー7の両端部の係止が解除されることにより、ガードバー7が上方位置31から下降する。そして、ガードバー7の両端部が下方の作動部34で係止されることにより、ガードバー7が下方位置32で支持されるよう構成される。
【0022】
以下に、昇降保持具8について詳述する。
図4,5に示すように、保持金具20の保持片部22には、ガードバー7の外径より一回り広い幅寸法を有し、挿通されたガードバー7の端部を溝方向に案内する案内溝24が形成される。案内溝24は、略上下方向に伸びる2本の溝部25,26を上端部の円弧溝部27で逆U字状に接続してなるものである。一方の溝部25は、下端部を作動部34とし、作動部34にガードバー7の端部を係止可能な第一溝部であり、他方の溝部26は、下端部を待機部33とし、待機部33にガードバー7の端部を係止可能な第二溝部である。
【0023】
すなわち、ガードバー7の端部が第一溝部25に挿通された状態では、ガードバー7の端部は、第一溝部25に沿って下降して作動部34に係止される。一方、ガードバー7の端部が第二溝部26に挿通された状態では、ガードバー7の端部は、第二溝部26に沿って下降して待機部33に係止される。ここで、第一溝部25の下部には、クランク形状に屈曲したクランク部28が形成される。これは、地震発生時に、作動部34に係止したガードバー7の端部が、地震の振動によって、書籍12の落下を防止し難い高さに跳ね上がるのを抑制するためである。
【0024】
上述のように、左右の昇降保持具8は、地震発生時に、ガードバー7の端部の、待機部33での係止を解除する係止解除手段40を備える。図4,5に示すように、係止解除手段40は、保持金具20の保持片部22に固定されるケーシング41と、ケーシング41に昇降可能に保持される可動部材42と、ケーシング41に収容されて、可動部材42を上方付勢する圧縮コイルバネ43と、可動部材42に連結された振子44と、振子44の直下に固定された吸引部材45とを備えてなる。
【0025】
図4,5に示すように、可動部材42は、上部のバー当接部50と、下部のバネ当接部51とを、杆状の連携部52により上下に連結してなるものである。可動部材42は、バネ当接部51をケーシング41の内部に配置し、バー当接部50をケーシング41の上方に突出させている。可動部材42は、図4に示すように、バー当接部50がケーシング41の上部に当接する下方の位置を、ガードバー7の端部を待機部33に係止可能な係止位置47とし、図5に示すように、バネ当接部51がケーシング41の上部に突き当たる上方の位置を、ガードバー7の端部の係止を解除する解除位置48とする。
【0026】
圧縮コイルバネ43は、ケーシング41の内部で可動部材42のバネ当接部51と当接し、弾性力によって可動部材42を上方の解除位置48へ付勢する。
【0027】
振子44は、基端部を可動部材42のバネ当接部51に連結されるワイヤー54と、ワイヤー54の下端部に吊持される重錘55とからなる。ワイヤー54は、ケーシング41の下部を貫通して、ケーシング41の下方まで垂下している。重錘55の周囲には、重錘55の揺動を阻害する障害物は配設されず、重錘55はケーシング41の下方で任意の方向に揺動可能となっている。重錘55は、鋼球によって構成される。重錘55は、可動部材42の係止位置47から解除位置48への移動に伴って上昇し、解除位置48から係止位置47へ移動に伴って下降する。すなわち、振子44は、重錘55の重みによって可動部材42を下方に引っ張ることにより、可動部材42を係止位置47に付勢する。
【0028】
吸引部材45は永久磁石からなるものであり、重錘55の直下に配置されて、磁力によって重錘55を下方に吸引する。具体的には、吸引部材45は、保持片部22の側面に固着された取付片56に、直上の重錘55を吸引するよう磁化方向を上下方向に向けて固定される。すなわち、かかる構成によれば、吸引部材45が重錘55を吸引する磁力が、振子44が可動部材42を係止位置47に付勢する引張力に加わることとなる。
【0029】
ここで、吸引部材45が重錘55を吸引する磁力は、図4に示すように、重錘55が吸引部材45に最も近接した状態、すなわち、可動部材42が係止位置47にある状態で最大となり、図5に示すように、重錘55が吸引部材45から最も離間した状態、すなわち、可動部材42が解除位置48にある状態で最小となる。したがって、振子44が可動部材42を係止位置に付勢する引張力は、可動部材42が係止位置47にある状態で最大となり、可動部材42が解除位置48にある状態で最小となる。
【0030】
振子44が可動部材42を係止位置47に付勢する引張力は、本棚1が揺れて、重錘55が振動することにより一時的に減少する。具体的には、本棚1が横揺れして、重錘55が揺動すると、吸引部材45と重錘55の間隔が拡がるとともに、重錘55が吸引部材45と上下に対向する位置から外れることにより、吸引部材45が重錘55を吸引する力が一時的に減少する。また、本棚1が縦揺れした際には、重錘55が鉛直方向に振動することにより、振子44の引張力が一時的に減少する。なお、本実施例では、図4に示すように、可動部材42が係止位置47にある状態でも、重錘55が振動し易いように、重錘55は吸引部材45と数mmの間隙を空けて配置される。
【0031】
重錘55の振動により、振子44の引張力が減少する度合いは、重錘55の振幅、すなわち本棚1の揺れの大きさに応じて大きくなる。そして、本実施例では、振子44の引張力が所定閾値未満にまで減少した場合に、可動部材42を係止位置47に保持する力が、圧縮コイルバネ43による上方への付勢力を下回って、可動部材42が解除位置48に変位するよう構成される。
【0032】
以下、係止解除手段40の作動について詳述する。
図4は、ガードバー7の端部を待機部33に係止した状態である。本棚1の静止状態では、係止解除手段40はガードバー7の端部の係止を解除せず、かかる状態が維持される。具体的には、かかる状態では、ガードバー7の端部が可動部材42のバー当接部50に乗載されることにより、可動部材42は、ガードバー7の重みや、振子44の引張力等によって下方付勢される。本棚1の静止状態では、これらの下方付勢する力が、圧縮コイルバネ43が可動部材42を上方付勢する力を上回ることによって、可動部材42が係止位置47に保持され、ガードバー7の端部の係止が維持される。
【0033】
一方、ガードバー7の端部を待機部33に係止した状態にあって、地震により本棚1が振動すると、上述のように、振子44による引張力が減少することで、可動部材42を係止位置47に保持する付勢力が減少する。上述のように、振子44の引張力は、本棚1の揺れの大きさに応じて減少する。このため、本棚1が比較的大きく揺れて、振子44の引張力が所定閾値未満に減少すると、可動部材42を下方付勢する力が、圧縮コイルバネ43が可動部材42を上方付勢する力を下回り、可動部材42が係止位置47から解除位置48に変位する。
【0034】
図5に示すように、可動部材42が係止位置47から解除位置48へ変位すると、ガードバー7の端部は、待機部33での係止が解除されて、作動部34へ送出される。具体的には、圧縮コイルバネ43の復元力によって、可動部材42が解除位置48に押し上げられることにより、可動部材42に乗載されていたガードバー7の端部が跳ね上げられる。そして、跳ね上げられたガードバー7の端部は、第二溝部26に沿って上昇し、円弧溝部27の案内作用によってU字状に方向転換して、第一溝部25に進入し、第一溝部25に沿って下降して、第一溝部25の下端部の作動部34に係止される。
【0035】
このように、ガードバー7を上方位置31に支持した状態で、比較的揺れの大きい地震が発生すると、ガードバー7の両端部の待機部33での係止が解除され、ガードバー7が下方位置32に下降して、下方位置32で支持されることにより、書籍12の落下が防止される。
【0036】
地震により下方位置32に下降したガードバー7は、手動で上方位置31へ復帰させることができる。具体的には、下方位置32のガードバー7を手で押し上げて、ガードバー7の両端部を案内溝24に沿って作動部34から待機部33まで摺動させる。そして、待機部33において、ガードバー7の両端部で、左右の係止解除手段40の可動部材42を押し下げて、解除位置48から係止位置47に変位させる。これにより、ガードバー7の両端部が待機部33に係止され、ガードバー7が上方位置31に支持される。
【0037】
このように、本実施例の落下防止具1は、ガードバー7を上方位置31に支持した状態で、書籍12が落下するおそれのある地震が発生した時に、ガードバー7が下方位置32に下降して、書籍12の落下を防止するよう構成される。したがって、本実施例の落下防止具1は、ガードバー7を上方位置31に支持して、書籍12を本棚1に容易に出し入れ可能な状態にしておいても、地震発生時には書籍12の落下を防止できる。なお、落下防止具2は、地震発生時以外は、常にガードバー7を上方位置31に支持しておくようにしてもよいし、本棚1に書籍12を長期間出し入れしない時(書店や図書館の休業時間帯など)は、予め下方位置32に支持しておくようにしてもよい。
【0038】
また、本実施例では、振子44の重錘55は、前後・左右・上下いずれの方向にも振動可能であり、摩擦の影響も受けないため、地震発生時に、重錘55は、地震(本棚1)の揺れの方向に、地震の揺れの大きさに比例した揺れ幅で振動し、振子44の引張力は、地震の揺れの方向に関わらず、地震の揺れの大きさに応じて減少することとなる。このため、本実施例の落下防止具2は、地震の揺れが、書籍12の落下のおそれのある大きさであった時に、地震の揺れの方向に関わらず、係止解除手段40によってガードバー7の端部の係止が確実に解除されるよう構成できる。したがって、本実施例によれば、地震発生時に、本棚1の揺れる方向に関わらず、書籍12が本棚1から落下するのを従来構成よりも確実に防止できる。
【0039】
また、本実施例では、可動部材42の係止位置47から解除位置48への移動に伴って、待機部33に係止したガードバー7の端部が、圧縮コイルバネ43の付勢力によって、第一溝部25の方向に勢いよく送出されるため、地震発生時に、ガードバー7を上方位置31から下方位置32に短時間で移動させられるという利点がある。特に、本実施例では、第一溝部25と第二溝部26の接続部分に設けられた円弧溝部27によって、待機部33から送出されるガードバー7の端部を、送出時の勢いを減衰させることなく、第一溝部25に進入させることができるため、書籍12が落下する前に、確実にガードバー7を下方位置32まで下降させることができる。
【0040】
また、従来構成では、ガードバーの端部は、地震発生時に揺動し得るよう係止されるため、通常時にガタついて騒音等が発生し易いが、振子44によってガードバー7の係止を解除する本実施例では、ガードバー7の端部が揺動しないよう強固に係止できるという利点がある。
【0041】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限られず、例えば、上記実施例の構成を以下のように変更可能である。
【0042】
例えば、図6は、変形例の落下防止具2aである。なお、図6では、上記実施例と共通する構成について、上記実施例と同一符号を付している。
かかる変形例は、第二溝部26を傾斜させて、可動部材42の係止位置47から解除位置48への移動に伴って、ガードバー7の端部を待機部33から斜め上方に送出するようにしたものである。このように、第二溝部26は、垂直なものに限られず、斜めに傾斜させるようにしてもよい。また、第二溝部26を略水平にして、可動部材42の係止位置47から解除位置48への移動に伴って、ガードバー7の端部を待機部33から斜めに送出するよう構成してもよい。
【0043】
また、図7は、別の変形例の落下防止具2bを取り付けた本棚1である。なお、図7では、上記実施例と共通する構成について、上記実施例と同一符号を付している。
かかる変形例の落下防止具2bは、昇降可能なガードバー7に加えて、昇降不能な固定ガードバー6が昇降保持具8に保持される。かかる固定ガードバー6は、ガードバー7の上方で水平に保持され、本棚1に取り付けた状態で、ガードバー7の一つ上の段の書籍12の正面側下部を横切る高さに配置される。かかる固定ガードバー6は、書籍12の下部の高さに配置されるため、書籍12の出し入れを大きく阻害せず、一方で、書籍12の落下をある程度防止できる。このように、本発明の落下防止具は、昇降可能なガードバーに加えて、昇降不能な固定ガードバーを具備するものであってもよい。
【0044】
また、上記実施例では、ガードバー7の端部を待機部33に係止した状態で、ガードバー7の端部を、可動部材42に乗載して支持しているが、ガードバー7の端部を、可動部材42で支持せず、案内溝24の縁で待機部33に支持するようにしてもよい。
【0045】
上記実施例では、鋼球(強磁性体)で構成される重錘55を、永久磁石で構成される吸引部材45で吸引するよう構成されるが、本発明は、かかる構成に限られず、重錘55と、直下の吸引部材45が、磁力で引き合うよう構成されていればよい。すなわち、重錘55を永久磁石で構成し、吸引部材45を強磁性体で構成したり、重錘55と吸引部材45の双方を永久磁石で構成したりしてもよい。
【0046】
また、上記実施例は、落下防止具2を本棚1に取り付けた例であるが、本発明の落下防止具2は、本棚以外の棚にも同様に取り付けることで適用可能である。
【0047】
また、上記実施例では、本棚1の全ての段に落下防止具2が取り付けられているが、落下防止具2は、本棚1の一部の段に対してのみ取り付けてもよい。
【0048】
実施例では、昇降保持具8を、本棚1の側板10の正面に固定しているが、側板の正面でなく、外側面や内側面に固定するようにしてもよい。また、昇降保持具8は、棚の仕切板に取り付けても良い。
【0049】
落下防止具2を、本棚1の複数の段に取り付ける場合、夫々の段に取り付ける昇降保持具8の保持金具20を一体の金具で構成してもよい。
【0050】
落下防止具2は、既設の棚に取り付けられるものに限らず、棚の製造時に、棚に備え付けられるものであってもよい。落下防止具2を、新規の棚に備え付ける場合、落下防止具2の保持金具20を、棚の側板と一体化させることができる。
【0051】
上記実施例に係る左右の昇降保持具8は同一構成であるが、左右で同様に作動するものであれば、同一構成でなくても構わない。
【0052】
上記実施例では、可動部材42で待機部33のガードバー7の端部を直接押すよう構成されるが、かかる構成に限らず、可動部材42の係止位置47から解除位置48への移動により、待機部33におけるガードバー7の端部の係止が、間接的に解除されるものであってもよい。例えば、ガードバー7の端部を、可動式ストッパーによって待機部33に係止しておき、可動部材42の係止位置47から解除位置48への移動に伴って、当該可動式ストッパーによる係止が解除される構成が提案される。また、ガードバー7の端部を、可動部材42の係止位置47から解除位置48への移動に伴って、可動部材42とは別に配設された送出手段が、待機部33に係止されたガードバー7の端部を、作動部34へ送出する構成も提案される。
【符号の説明】
【0053】
1 本棚(棚)
2,2a,2b 落下防止具
5 バー保持手段
6 固定ガードバー
7 ガードバー
8 昇降保持具
9 棚板
10 側板
11 天板
12 書籍(物品)
20 保持金具
21 固定片部
22 保持片部
24 案内溝
25 第一溝
26 第二溝
27 円弧溝部
28 クランク部
30 留具
31 上方位置
32 下方位置
33 待機部
34 作動部
40 係止解除手段
41 ケーシング
42 可動部材
43 圧縮コイルバネ(付勢手段)
44 振子
45 吸引部材
47 係止位置
48 解除位置
50 バー当接部
51 バネ当接部
52 連携部
54 ワイヤー
55 重錘
56 取付片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7