(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039804
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】軸受ユニット及び軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法
(51)【国際特許分類】
F16N 1/00 20060101AFI20240315BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20240315BHJP
F16C 19/38 20060101ALI20240315BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20240315BHJP
F16C 33/76 20060101ALI20240315BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16N1/00
F16N31/00 B
F16C19/38
F16C33/66 Z
F16C33/76 A
F16J15/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144435
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】岩永 智秀
【テーマコード(参考)】
3J043
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J043AA16
3J043CB20
3J043DA20
3J216AA03
3J216AA14
3J216AB22
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB04
3J216CB11
3J216CB18
3J216CC70
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3J216EA06
3J216EA07
3J216EA09
3J701AA15
3J701AA25
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA54
3J701BA56
3J701BA77
3J701CA08
3J701CA17
3J701FA13
3J701FA31
3J701FA48
3J701GA41
(57)【要約】
【課題】軸受に対するグリースの供給や交換を容易に行うことができることで、軸受自体の寿命を最大限確保しながら、長期間にわたって安定して使用することができる軸受ユニット及び潤滑剤の交換方法を提供する。
【解決手段】軸受4がハウジング2の軸受収容部9に収容された軸受ユニット1において、軸受収容部9の両側をそれぞれ覆った状態で、ハウジング2に取り付けられた第1軸受カバー5及び第2軸受カバー6と、第1軸受カバー5から外方に延び、軸受4内の潤滑剤を第1排出口17bから排出するための第1潤滑剤排出管17と、第2軸受カバー6から外方に延び、軸受4内の潤滑剤を第2排出口27cから排出するための第2潤滑剤排出管27と、を備え、第1潤滑剤排出管17の先端部には、開閉自在の第1通気孔17cが設けられ、第2潤滑剤排出管27の先端部には、開閉自在の第2通気孔27cが設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に貫通した軸受収容部を有するハウジングと、前記軸受収容部に嵌合された状態に収容され、前記所定方向に沿って延びるシャフトを回転自在に支持する軸受とを備えた軸受ユニットであって、
前記軸受は、前記軸受収容部の周面に外周面が密着した外輪と、この外輪の内側に配置され、前記シャフトが貫通した状態で、当該シャフトに固定された内輪と、前記外輪及び内輪の間に周方向に沿って配置された複数の転動体を一組とする複数組の転動体列と、を有しており、
前記軸受収容部の周面及び前記外輪の外周面の少なくとも一方には、他方に向かって開口するとともに、周方向に沿って延びかつ当該周方向の全体にわたって形成されたリング状のリング溝が形成され、
前記ハウジングは、外部と前記リング溝を連通し、外部から前記軸受に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給通路を有し、
前記外輪は、前記リング溝と前記外輪の内周面側とを連通し、前記外輪の周方向に沿って互いに所定間隔を隔てて配置され、前記リング溝に供給された潤滑剤を前記外輪の内周面側に導入するための複数の潤滑剤導入孔を有しており、
前記シャフトが貫通するとともに前記軸受収容部をその両側からそれぞれ覆った状態で、前記ハウジングに取り付けられ、潤滑剤の漏出を防止するための第1及び第2軸受カバーと、
前記第1軸受カバーの所定部位から外方に所定長さ延びるように設けられ、前記軸受内の潤滑剤を、先端の第1排出口から外部に排出するための第1潤滑剤排出管と、
前記第2軸受カバーの所定部位から外方に所定長さ延びるように設けられ、前記軸受内の潤滑剤を、先端の第2排出口から外部に排出するための第2潤滑剤排出管と、
をさらに備え、
前記第1潤滑剤排出管の先端部には、当該第1潤滑剤排出管の内外を連通する開閉自在の第1通気孔が設けられ、
前記第2潤滑剤排出管の先端部には、当該第2潤滑剤排出管の内外を連通する開閉自在の第2通気孔が設けられていることを特徴とする軸受ユニット。
【請求項2】
前記複数組の転動体列は、2組の転動体列で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受ユニット。
【請求項3】
前記複数の潤滑剤導入孔の各々は、前記2組の転動体列の間に位置するように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の軸受ユニット。
【請求項4】
前記潤滑剤供給通路は、前記ハウジングの上部に、上下方向に延びるように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の軸受ユニット。
【請求項5】
前記第1潤滑剤排出管は、その基端部が前記第1軸受カバーの下部に設けられ、前記シャフトに対して直角にかつ水平に延びるように構成されており、
前記第2潤滑剤排出管は、その基端部が前記第2軸受カバーの下部に設けられ、前記シャフトに対して直角にかつ水平に延びるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の軸受ユニット。
【請求項6】
前記第1通気孔及び前記第2通気孔に接続され、常時は当該第1通気孔及び当該第2通気孔を大気開放するように構成されるとともに、潤滑剤の供給時に、前記第1通気孔及び前記第2通気孔の一方を閉鎖し、かつ前記第1通気孔及び前記第2通気孔の他方を大気開放するように構成された通気孔開閉装置を、さらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の軸受ユニット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法であって、
前記第1潤滑剤排出管の前記第1排出口及び前記第1通気孔を開放するとともに、前記第2潤滑剤排出管の前記第2排出口及び前記第2通気孔を閉鎖した状態で、前記潤滑剤供給通路を介して、前記軸受に新たな潤滑剤を供給するとともに、前記第1排出口から劣化した潤滑剤を排出する第1潤滑剤供給・排出工程と、
前記第1排出口からの劣化した潤滑剤の排出完了後、前記第2潤滑剤排出管の前記第2排出口及び前記第2通気孔を開放するとともに、前記第1潤滑剤排出管の前記第1排出口及び前記第1通気孔を閉鎖した状態で、前記潤滑剤供給通路を介して、前記軸受に新たな潤滑剤を供給するとともに、前記第2排出口から劣化した潤滑剤を排出する第2潤滑剤供給・排出工程と、
を備えていることを特徴とする軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法。
【請求項8】
前記第2潤滑剤供給工程後、前記第1排出口及び前記第2排出口を開放した状態で、前記第1潤滑剤排出管及び前記第2潤滑剤排出管に残留する潤滑剤を、前記第1排出口及び前記第2排出口から外部に掻き出す潤滑剤掻き出し工程と、
前記第1排出口及び前記第2排出口を閉鎖する排出口閉鎖工程と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項7に記載の軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻上機などに適用され、シャフトを回転自在に支持する軸受ユニット及び軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の軸受ユニットとして、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に記載されたものが知られている。この軸受ユニットは、軸受を軸受箱に組み付けることによって構成されており、水平に延びる回転軸を回転自在に支持している。上記の軸受は、内輪と外輪の間に2列の転動体を有する複列タイプのものであり、内輪と外輪の間の両側面が一対のシールドによって密封されている。また、この軸受ユニットは、軸受の内外で空気の出入りを可能とする通気構造、及び軸受内に潤滑油としてのグリースを補充可能とする給油構造を備えている。
【0003】
通気構造は、軸受箱の上部において上下方向に延びるように設けられた軸受箱通気穴と、軸受の外輪の外周面において周方向の全体にわたって延びるように設けられ、軸受箱通気穴に連通する通気溝と、この通気溝の底部において外輪を貫通し、通気溝の周方向に互いに所定間隔を隔てて配置された複数の外輪通気穴などで構成されている。これらの軸受箱通気穴、通気溝及び外輪通気穴を介して、軸受の内外で空気の出入りが可能になっている。一方、給油構造は、軸受箱の上下方向の中央付近において、水平に対して若干傾斜した状態に延びるように設けられた軸受箱給油穴を有している。この軸受箱給油穴では、その外側の端部にグリースニップルが取り付けられる一方、内側の端部が外輪の通気溝に連通している。
【0004】
上記の軸受ユニットでは、グリースが軸受内にあらかじめ封入されており、軸受の潤滑性を高めることで、軸受箱に固定された外輪に対し、内輪と一体の回転軸を円滑に回転させるようになっている。また、軸受ユニットの長期間の使用により、グリースが減少することで、回転軸の回転不良が生じる場合には、上記の給油構造を介して、グリースが軸受内に補充される。具体的には、グリースニップルにグリースガンなどを接続し、軸受箱給油穴にグリースを圧入する。これにより、そのグリースは、軸受箱給油穴から、外輪の通気溝及び外輪通気穴を順に通って、軸受内に補充される。なおこの場合、軸受内の空気は、通気構造を介して、軸受ユニットの外部に排出され、それにより、軸受の内圧を上昇させることなく、グリースの補充が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した軸受ユニットでは、軸受内へのグリースの補充が可能であるので、軸受内のグリースが減少した際に、新たなグリースを補充することで、軸受ユニットの使用期間を長くすることが可能である。しかし、上記の軸受は、2列の転動体を有する複列タイプのものであるので、例えば補充されたグリースが転動体の一方の列側に多く、他方の列側に少なくなることにより、軸受内のグリースの充填度合が転動体の列間で偏ってしまうことがある。その場合には、軸受の十分な円滑性を得ることができなくなるおそれがある。
【0007】
また、一般にグリースは、鉱油や合成油から成る基油に、3次元構造を有する増ちょう剤が分散されることで、半固体のペースト状に構成されており、増ちょう剤がスポンジのような役割をして基油を保持している。しかし、軸受ユニットの長期間の使用に伴い、増ちょう剤による基油の保持能力の低下や、基油自体の減少により、グリースが劣化し、その潤滑性能が低下してしまう。そのため、上述したように、新たなグリースが軸受内に補充されるものの、上記の軸受ユニットでは、以下のような問題がある。
【0008】
すなわち、軸受内には、劣化したグリースが残留しているため、補充された新たなグリースが劣化したグリースと混ざることなどにより、グリースによる本来の潤滑性能を発揮できなくなるおそれがある。もちろん、劣化したグリースを軸受から除去してから、新たなグリースを補充することにより、軸受内のグリースを交換することが考えられる。しかし、上記の軸受ユニットにおいてグリースを交換する場合には、軸受ユニットを回転軸から取り外し、さらに軸受からシールドを取り外して、劣化したグリースを除去する必要があり、その作業が非常に煩雑であり、手間がかかってしまう。したがって、上記の軸受ユニットには、改善の余地がある。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、軸受に対するグリースなどの潤滑剤の供給や交換を容易に行うことができ、それにより、軸受自体の寿命を最大限確保しながら、長期間にわたって安定して使用することができる軸受ユニット、及び軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、所定方向に貫通した軸受収容部を有するハウジングと、軸受収容部に嵌合された状態に収容され、所定方向に沿って延びるシャフトを回転自在に支持する軸受とを備えた軸受ユニットであって、軸受は、軸受収容部の周面に外周面が密着した外輪と、この外輪の内側に配置され、シャフトが貫通した状態で、シャフトに固定された内輪と、外輪及び内輪の間に周方向に沿って配置された複数の転動体を一組とする複数組の転動体列と、を有しており、軸受収容部の周面及び外輪の外周面の少なくとも一方には、他方に向かって開口するとともに、周方向に沿って延びかつ周方向の全体にわたって形成されたリング状のリング溝が形成され、ハウジングは、外部とリング溝を連通し、外部から軸受に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給通路を有し、外輪は、リング溝と外輪の内周面側とを連通し、外輪の周方向に沿って互いに所定間隔を隔てて配置され、リング溝に供給された潤滑剤を外輪の内周面側に導入するための複数の潤滑剤導入孔を有しており、シャフトが貫通するとともに軸受収容部をその両側からそれぞれ覆った状態で、ハウジングに取り付けられ、潤滑剤の漏出を防止するための第1及び第2軸受カバーと、第1軸受カバーの所定部位から外方に所定長さ延びるように設けられ、軸受内の潤滑剤を、先端の第1排出口から外部に排出するための第1潤滑剤排出管と、第2軸受カバーの所定部位から外方に所定長さ延びるように設けられ、軸受内の潤滑剤を、先端の第2排出口から外部に排出するための第2潤滑剤排出管と、をさらに備え、第1潤滑剤排出管の先端部には、第1潤滑剤排出管の内外を連通する開閉自在の第1通気孔が設けられ、第2潤滑剤排出管の先端部には、第2潤滑剤排出管の内外を連通する開閉自在の第2通気孔が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、複数組の転動体列を有する軸受がハウジングの軸受収容部に嵌合された状態に収容されるとともに、そのハウジングには、軸受収容部をその両側からそれぞれ覆うように、第1及び第2軸受カバーが取り付けられている。また、第1軸受カバーには、その所定部位から外方に延びる第1潤滑剤排出管が設けられる一方、第2軸受カバーには、その所定部位から外方に延びる第2潤滑剤排出管が設けられている。これらの第1潤滑剤排出管及び第2潤滑剤排出管には、それぞれの先端に第1排出口及び第2排出口が設けられ、さらに、それぞれの先端部に、内外を連通する開閉自在の第1通気孔及び第2通気孔が設けられている。
【0012】
上記のように構成された軸受ユニットにおいて、潤滑剤を軸受に供給する場合、軸受ユニットの外部からハウジングの潤滑剤供給通路に潤滑剤を注入する。この注入された潤滑剤は、ハウジングの軸受収容部の周面及び軸受の外輪の外周面の少なくとも一方に形成されたリング溝に供給され、さらに、外輪に設けられた複数の潤滑剤導入孔を介して、外輪の内周面側に導入される。これにより、軸受において、外輪と内輪との空間や、各転動体の周囲、さらには軸受の両側面と第1及び第2軸受カバーとの空間に潤滑剤が充填される。このようにして潤滑剤が充填された軸受ユニットにおいて、その使用による温度上昇に伴い、軸受の内圧が上昇する場合でも、軸受の内部が第1及び第2潤滑剤排出管にそれぞれ設けられた第1及び第2通気孔を介して大気開放されることにより、軸受の内圧の上昇を抑制することができる。これにより、第1及び第2軸受カバーからの潤滑剤の漏出を防止しながら、外輪に対する内輪の円滑な回転を確保することができる。
【0013】
また、潤滑剤が軸受に充填された軸受ユニットにおいて、軸受ユニットの長期間の使用に伴い、軸受内の潤滑剤が劣化した場合には、後述する軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法を実行することにより、軸受内の劣化した潤滑剤が、新たな潤滑剤に交換される。
【0014】
以上のように、本発明の軸受ユニットによれば、軸受内への潤滑剤の供給や交換を容易に行うことができ、それにより、軸受ユニットにおける軸受自体の寿命を最大限確保しながら、長期間にわたって安定して使用することができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の軸受ユニットにおいて、複数組の転動体列は、2組の転動体列で構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、軸受における複数組の転動体列として、2組の転動体列を採用するので、比較的汎用される一般的な軸受を用い、また、3組以上の転動体列を有する軸受を用いる場合に比べて、軸受ユニットを容易にかつ安価に構成することができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の軸受ユニットにおいて、複数の潤滑剤導入孔の各々は、2組の転動体列の間に位置するように設けられていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、複数の潤滑剤導入孔の各々が、2組の転動体列の間に位置しているので、軸受ユニットへの潤滑剤の供給の際に、各潤滑剤導入孔から外輪の内周面側に導入された潤滑剤を、両転動体列に対し、比較的バランス良く流動させながら、軸受内に供給することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の軸受ユニットにおいて、潤滑剤供給通路は、ハウジングの上部に、上下方向に延びるように設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、外部から潤滑剤を供給するための潤滑剤供給通路が、ハウジングの上部に上下方向に延びるように設けられているので、潤滑剤供給通路の上端部から潤滑剤を注入することにより、その潤滑剤を、自重を利用しながら、軸受の上部から下部にわたって流動させ、軸受ユニットに容易に充填することができる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の軸受ユニットにおいて、第1潤滑剤排出管は、その基端部が第1軸受カバーの下部に設けられ、シャフトに対して直角にかつ水平に延びるように構成されており、第2潤滑剤排出管は、その基端部が第2軸受カバーの下部に設けられ、シャフトに対して直角にかつ水平に延びるように構成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第1及び第2潤滑剤排出管が、それぞれ対応する第1及び第2軸受カバーの下部から、シャフトに対して直角にかつ水平に所定長さ延びるように構成されている。つまり、第1及び第2潤滑剤排出管のそれぞれの先端の第1及び第2排出口は、シャフトから離れるように設けられている。そのため、潤滑剤の交換の際などに、各潤滑剤排出管の排出口から排出された潤滑剤がシャフトに付着するのを回避しながら、その潤滑剤を比較的容易に回収することができる。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の軸受ユニットにおいて、第1通気孔及び第2通気孔にそれぞれ接続され、常時は第1通気孔及び第2通気孔を大気開放するように構成されるとともに、潤滑剤の供給時に、第1通気孔及び第2通気孔の一方を閉鎖し、かつ第1通気孔及び第2通気孔の他方を大気開放するように構成された通気孔開閉装置を、さらに備えていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、第1通気孔及び第2通気孔に接続された通気孔開閉装置を操作するだけで、第1通気孔及び第2通気孔を上記のように開閉することができ、軸受ユニットの通常の使用時や潤滑剤の供給時における第1通気孔及び第2通気孔の開閉状態の切り替えを容易に行うことができる。
【0025】
請求項7に係る発明は、請求項1~6のいずれかに記載の軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法であって、第1潤滑剤排出管の第1排出口及び第1通気孔を開放するとともに、第2潤滑剤排出管の第2排出口及び第2通気孔を閉鎖した状態で、潤滑剤供給通路を介して、軸受に新たな潤滑剤を供給するとともに、第1排出口から劣化した潤滑剤を排出する第1潤滑剤供給・排出工程と、第1排出口からの劣化した潤滑剤の排出完了後、第2潤滑剤排出管の第2排出口及び第2通気孔を開放するとともに、第1潤滑剤排出管の第1排出口及び第1通気孔を閉鎖した状態で、潤滑剤供給通路を介して、軸受に新たな潤滑剤を供給するとともに、第2排出口から劣化した潤滑剤を排出する第2潤滑剤供給・排出工程と、を備えていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、請求項1~6のいずれかに記載の軸受ユニットにおいて、軸受にすでに充填され、劣化した潤滑剤(以下、本欄において適宜「劣化潤滑剤」という)を、次のようにして、新たな潤滑剤(以下、本欄において適宜「新規潤滑剤」という)に交換する。まず、第1潤滑剤排出管の第1排出口及び第1通気孔を開放するとともに、第2潤滑剤排出管の第2排出口及び第2通気孔を閉鎖する。そして、この状態を維持しながら、ハウジングの潤滑剤供給通路を介して、新規潤滑剤を供給する。この場合、閉鎖された第2排出口及び第2通気孔を有する第2潤滑剤排出管、及びその基端部付近の第2軸受カバーと軸受との空間では、その内圧が上昇することで、潤滑剤が流入しにくくなる一方、開放された第1排出口及び第1通気孔を有する第1潤滑剤排出管では、内圧が上昇することなく、潤滑剤が流入しやすくなる。
【0027】
このため、上記のように、第1排出口及び第1通気孔を開放し、第2排出口及び第2通気孔を閉鎖した状態で、新規潤滑剤を潤滑剤供給通路に圧入などで供給することにより、軸受内や第1軸受カバーと軸受との空間に新規潤滑剤が充填されるとともに、軸受内の劣化潤滑剤が、新規潤滑剤で押圧されながら第1潤滑剤排出管に送り出され、第1排出口を介して外部に排出される(第1潤滑剤供給・排出工程)。そして、第1排出口からの劣化潤滑剤の排出完了後、第1及び第2排出口並びに第1及び第2通気孔の開閉状態を逆にする。
【0028】
すなわち、第2排出口及び第2通気孔を開放するとともに、第1排出口及び第1通気孔を閉鎖する。そして、この状態で、新規潤滑剤を、潤滑剤供給通路を介して再度、供給する。これにより、第2潤滑剤排出管の基端部付近の第2軸受カバーと軸受との空間にも新規潤滑剤が充填されるとともに、軸受内の残りの劣化潤滑剤が、新規潤滑剤で押圧されながら、第2潤滑剤排出管に送り出され、第2排出口を介して外部に排出される(第2潤滑剤供給・排出工程)。
【0029】
以上のように、本発明の軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法によれば、軸受内への潤滑剤の供給や交換を容易に行うことができ、それにより、軸受ユニットにおける軸受自体の寿命を最大限確保しながら、軸受ユニットを長期間にわたって安定して使用することができる。
【0030】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の軸受ユニットにおける潤滑剤の交換方法であって、第2潤滑剤供給工程後、第1排出口及び第2排出口を開放した状態で、第1潤滑剤排出管及び第2潤滑剤排出管に残留する潤滑剤を、第1排出口及び第2排出口から外部に掻き出す潤滑剤掻き出し工程と、第1排出口及び第2排出口を閉鎖する排出口閉鎖工程と、をさらに備えていることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、第2潤滑剤供給工程後、第1潤滑剤排出管及び第2潤滑剤排出管に残留する潤滑剤を、第1排出口及び第2排出口から外部に掻き出す(潤滑剤掻き出し工程)。そして、第1排出口及び第2排出口を閉鎖する(排出口閉鎖工程)。これにより、第1及び第2潤滑剤排出管の第1及び第2通気孔を介して、軸受内を外部と連通させることができるので、軸受の内圧の上昇を抑制し、第1及び第2軸受カバーからの潤滑剤の漏出を防止することができる。なお、通常時には、第1及び第2排出口が閉鎖されているので、軸受ユニットの使用中に、仮に潤滑剤が第1又は第2排出口に達した場合でも、その潤滑剤が漏出するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態による軸受ユニットを示しており、(a)は左側面図及び左グリース排出管の先端部の拡大図、(b)は縦断面図、(c)は右側面図及び右グリース排出管の先端部の拡大図である。
【
図2】
図1(b)に示す軸受ユニットの縦断面図を拡大して示す図である。
【
図3】軸受ユニットにおけるグリース交換の際の第1グリース供給・排出工程を説明するための図であり、(a)及び(b)は、
図1(a)及び(c)にそれぞれ対応する図である。
【
図4】第1グリース供給・排出工程におけるグリースの流れを説明するための図であり、(a)及び(b)は、
図1(a)及び(c)にそれぞれ対応する図である。
【
図5】軸受ユニットにおけるグリース交換の際のグリースの流れを説明するための図であり、
図1(b)に対応する図である。
【
図6】軸受ユニットにおけるグリース交換の際の第2グリース供給・排出工程を説明するための図であり、(a)及び(b)は、
図1(a)及び(c)にそれぞれ対応する図である。
【
図7】第2グリース供給・排出工程におけるグリースの流れを説明するための図であり、(a)及び(b)は、
図1(a)及び(c)にそれぞれ対応する図である。
【
図8】両通気孔を開閉操作するための三方弁を模式的に示す図である。
【
図9】両通気孔の開閉状態を説明するための図であり、(a)は両通気孔が大気開放した状態、(b)は左通気孔が大気開放しかつ右通気孔が閉鎖した状態、(c)は右通気孔が大気開放しかつ左通気孔が閉鎖した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による軸受ユニットを示しており、(a)は左側面図、(b)は縦断面図、(c)は右側面図である。また、
図2は、
図1(b)に示す軸受ユニットの縦断面図を拡大して示している。この軸受ユニット1は、エレベータの巻上機などに適用され、その巻上機のシャフトを回転自在に支持するものである。
【0034】
図1及び
図2に示すように、軸受ユニット1は、所定形状を有するペデスタル2(ハウジング)と、このペデスタル2に収容された状態に保持され、水平に延びるシャフト3を回転自在に支持する軸受4と、シャフト3が貫通した状態で、軸受4の両側面をそれぞれ覆うようにペデスタル2に取り付けられた外小蓋5(第1又は第2軸受カバー)及び内小蓋6(第2又は第1軸受カバー)とを備えている。なお、図示は省略するが、
図1(b)及び
図2に示す軸受ユニット1に対して、その右側には、シャフト3と一体に回転する巻上機のシーブが設けられる一方、左側には、シャフト3を回転駆動するモータが設けられている。
【0035】
ペデスタル2は、鋳造などによって成形されており、平面形状が横長矩形状で、所定の厚さを有する板状のベース部7と、このベース部7の上側に一体に設けられ、軸受4を保持する軸受ホルダ部8とで構成されている。ベース部7には、上下方向に貫通する複数の取付孔(図示せず)が形成されており、これらの取付孔にボルトが挿通されることにより、軸受ユニット1が固定される。一方、軸受ホルダ部8には、軸受4が嵌入される軸受収容部9が形成されている。この軸受収容部9は、水平方向に貫通し、軸受4の後述する外輪11の外径とほぼ同じ径を有している。
【0036】
また、軸受ホルダ部8の上部には、上下方向に貫通して延び、軸受4に潤滑剤としてのグリースを供給するためのグリース供給通路10(潤滑剤供給通路)が設けられている。このグリース供給通路10は、比較的小さな所定の径を有しており、軸受ホルダ部8の厚さ方向(
図2の左右方向)のほぼ中央に設けられている。
【0037】
軸受4は、外輪11、内輪12、複数のころ13(転動体)、及び図示しない保持器で構成されている。より具体的には、外輪11は、ペデスタル2の軸受収容部9の径とほぼ同じ外径を有しており、外周面が軸受収容部9の周面に密着している。また、外輪11の外周面には、その幅方向(
図2の左右方向)の中央に、外方に向かって開放するとともに、外輪11の周方向の全体にわたって延びるリング溝11aが形成されている。加えて、このリング溝11aには、周方向に沿って互いに所定間隔ごとに貫通するように形成され、グリースを外輪11の内周面側に導入するための複数(例えば10~20個)のグリース導入孔11b(潤滑剤導入孔)が形成されている。
【0038】
内輪12は、外輪11の内径よりも小さい外径を有するとともに、内輪12が固定されるシャフト3の所定部位3aの外径とほぼ同じ内径を有している。
【0039】
各ころ13は、たる形に形成されている。外輪11の内周面と内輪12の外周面との間には、それらの周方向に沿って所定間隔ごとに配置された複数のころ13を一組とする2組のころ列13A、13B(転動体列)が、軸受4の幅方向(
図2の左右方向)に並設されている。したがって、この軸受4は、いわゆる自動調心ころ軸受で構成されている。
【0040】
外小蓋5及び内小蓋6はいずれも、金属板などから成り、平面形状がドーナツ状で、厚さ方向(
図2の左右方向)に立体的に形成されている。外小蓋5は、軸受ユニット1の左側、すなわち図示しないモータ側に配置され、軸受ホルダ部8の左側面に、外小蓋5の外周部に沿って配置された複数(
図1(a)では8つ)のボルト14によって固定されている。
【0041】
また、外小蓋5は、所定径を有するリング状のオイルシール15を内輪12の左側面との間に介在させた状態で、さらに、オイルシール15よりも大きい径を有するリング状のオイルパッキン16を軸受ホルダ部8の左側面との間に介在させた状態で、軸受ユニット1の左側に配置されている。上記のオイルシール15は、内輪12の左側面及びシャフト3の外周面に摺接するように設置される一方、上記のオイルパッキン16は、軸受ホルダ部8の左側面に圧接するように設置されている。上記の外小蓋5、オイルシール15及びオイルパッキン16により、軸受4の左側のスペース(以下「左スペース」という)LSが、液密状態に保持されている。
【0042】
また、外小蓋5の下部には、水平な状態で前後方向(
図1(a)の左右方向)に所定長さ延びるグリース排出管17(第1又は第2潤滑剤排出管)の基端部が連結されている。このグリース排出管17は、外観が角柱状に形成されるとともに、その内部には、長さ方向の全体にわたり、横断面が円形で、軸受4内の劣化したグリースを排出するための排出通路17aが形成され、その先端に排出口17b(第1又は第2排出口)が設けられている。また、グリース排出管17の先端部には、排出通路17aと外部とを連通し、上方に開口する通気孔17c(第1又は第2通気孔)が形成されている。
【0043】
一方、内小蓋6は、上述した外小蓋5とほぼ左右対称に構成されている。具体的には、内小蓋6は、軸受ユニット1の右側、すなわち図示しないシーブ側に配置され、軸受ホルダ部8の右側面に、内小蓋6の外周部に沿って配置された複数(
図1(c)では8つ)のボルト24によって固定されている。
【0044】
また、内小蓋6は、上記のオイルシール15及びオイルパッキン16とほぼ同様に構成されたオイルシール25及びオイルパッキン26を介して、軸受ユニット1の右側に配置されている。そして、上記の内小蓋6、オイルシール25及びオイルパッキン26により、軸受4の右側のスペース(以下「右スペース」という)RSが、液密状態に保持されている。
【0045】
また、内小蓋6の下部には、外小蓋5に連結されたグリース排出管17と同様に構成されたグリース排出管27(第2又は第1潤滑剤排出管)が設けられている。すなわち、このグリース排出管27は、水平な状態で前後方向(
図1(c)の左右方向)に所定長さ延び、基端部が内小蓋6の下部に連結されている。また、このグリース排出管27には、前述したグリース排出管17と同様、排出通路27a及び排出口27b(第2又は第1排出口)が設けられ、先端部に、上方に開口する通気孔27c(第2又は第1排出口)が形成されている。
【0046】
なお、以下の説明では、外小蓋5に連結され、軸受ユニット1の左側に配置されたグリース排出管17を適宜、「左グリース排出管17」といい、内小蓋6に連結され、軸受ユニット1の右側に配置されたグリース排出管27を適宜、「右グリース排出管27」というものとする。
【0047】
以上のように構成された軸受ユニット1は、グリースを軸受4内に充填した状態、具体的には、外輪11と内輪12の間や各ころ13の周囲にグリースが存する状態で使用される。また、軸受ユニット1の通常の使用時には、左右のグリース排出管17、27の両排出口17b、27bはいずれも、後述する栓18、28によって閉鎖される一方、両通気孔17c、27cはいずれも、開放された状態に保持される。両排出口17b、27bが閉鎖されることにより、軸受ユニット1の使用時に、両排出口17b、27bからのグリースの漏出が防止され、両通気孔17c、27cが開放されることにより、軸受4の内圧の上昇が抑制される。
【0048】
次に、
図3~
図7を参照しながら、軸受ユニット1におけるグリースの交換方法について説明する。このグリースの交換は、軸受ユニット1によるシャフト3の円滑な回転支持を維持するために、例えば所定期間ごとに実施される。なお、この軸受ユニット1には、グリースがあらかじめ充填されており、以下の説明において、軸受ユニット1内の交換すべきグリース及び新たに供給するグリースを区別する場合には、前者を「劣化グリース」、後者を「新規グリース」というものとする。
【0049】
図3は、軸受ユニット1への新規グリースの供給直前の状態を示しており、(a)は左側面図及び左グリース排出管17の先端部の拡大図、(b)は右側面図及び右グリース排出管27の先端部の拡大図である。同図に示すように、軸受ユニット1の上端部、具体的には、ペデスタル2のグリース供給通路10の上端部には、グリースニップル30が装着される。このグリースニップル30は、逆止弁を有しており、外部からグリース供給通路10への新規グリースの圧入を許容し、圧入された新規グリースの逆流を阻止するように構成されている。なお、このグリースニップル30は、グリース供給通路10に常時、装着しておいてもよい。
【0050】
また、
図3(a)の拡大図に示すように、左グリース排出管17では、その排出口17b及び通気孔17cが開放した状態に保持される。一方、
図3(b)の拡大図に示すように、右グリース排出管27では、その排出口27b及び通気孔27cがそれぞれ、栓28及び29によって、閉鎖した状態に保持される。なお、これらの栓28及び29はそれぞれ、排出口27b及び通気孔27cに対して気密状態にねじ込み可能に構成されており、ねじ込み方向と逆方向に回されることにより、簡単に取り外せるようになっている。
【0051】
軸受ユニット1の上述した状態において、まず、新規グリースが封入されたグリースガンなどのグリース供給装置を用い、そのグリース供給装置をグリースニップル30に接続し、新規グリースをペデスタル2のグリース供給通路10に圧入する。なおこの場合、シャフト3を回転させながら、新規グリースを圧入する。これにより、軸受4の温度が上昇するので、軸受4内のグリースの粘性を低下させ、流動性を高めることができる。
【0052】
図4及び
図5は、軸受ユニット1におけるグリース交換の際のグリースの流れを矢印で示している。両図に示すように、グリースニップル30を介してペデスタル2のグリース供給通路10に圧入された新規グリースは、軸受4の外輪11における外周面のリング溝11aに到達し、そのリング溝11aに沿って、下方に流れる。この場合、リング溝11aに到達した新規グリースは、複数のグリース導入孔11bを介して、外輪11の内周面側、すなわち外輪11と内輪12の間で、かつ両ころ列13A、13Bの間に導入される。そして、両ころ列13A、13B間に導入された新規グリースは、劣化グリースを押圧しながら、軸受4の両側面側、すなわち左スペースLS及び右スペースRSに流れる。
【0053】
また、左スペースLSに流れた新規グリースは、劣化グリースをさらに押圧しながら、左グリース排出管17の排出通路17aに流れる。そして、左グリース排出管17の排出通路17aに流入した劣化グリースは、排出口17bを介して外部に排出される。なおこの場合、
図4(b)に示すように、右グリース排出管27の排出口27b及び通気孔27cがいずれも、気密状態に閉鎖されているため、右グリース排出管27の排出通路27aや、右グリース排出管27の基端部付近の右スペースRSでは、内圧が高くなり、グリースの流れが抑制される。
【0054】
そして、左グリース排出管17の排出口17bから流出していた劣化グリースが新規グリースに変わったときに、左グリース排出管17から排出される劣化グリースが全て排出されたとして、新規グリースの供給を一時、中止する。なお、以上の新規グリースの供給及び劣化グリースの排出の工程(
図3~
図5)は、本発明の第1潤滑剤供給・排出工程に相当する第1グリース供給・排出工程である。
【0055】
次いで、
図6(a)に示すように、左グリース排出管17の排出口17b及び通気孔17cを、前述した栓28及び29と同様に構成された栓18及び19によってそれぞれ閉鎖する。一方、右グリース排出管27については、栓28及び29を取り外し、
図6(b)に示すように、排出口27b及び通気孔27cを開放する。そして、この状態において、新規グリースの供給を再開する。
【0056】
図7は、前述した
図4と同様の図であり、軸受ユニット1における新規グリースの供給再開後のグリースの流れを示している。
図7(b)に示すように、新規グリースの供給再開後には、右グリース排出管27の排出口27b及び通気孔27cが開放されているため、右スペースRSに流れた新規グリースは、劣化グリースを押圧しながら、右グリース排出管27の排出通路27aに流れる。そして、右グリース排出管27の排出通路27aに流入した劣化グリースは、排出口27bを介して外部に排出される。なお、この場合、左グリース排出管17では、排出口17b及び通気孔17cが閉鎖されており、しかも排出通路17aには、新規グリースが満杯の状態であるので、排出通路17aの新規グリースが流動することはない。
【0057】
そして、右グリース排出管27の排出口27bから流出していた劣化グリースが新規グリースに変わったときに、軸受ユニット1の劣化グリースが新規グリースに交換されたとして、新規グリースの供給を停止する。なお、以上の新規グリースの供給及び劣化グリースの排出の工程(
図6及び
図7)は、本発明の第2潤滑剤供給・排出工程に相当する第2グリース供給・排出工程である。
【0058】
以上のようにして、軸受ユニット1内のグリースを交換した直後には、左右のグリース排出管17及び27の排出通路17a及び27aは、新規グリースによって満杯の状態になっている。そのため、その後の軸受ユニット1の使用時に、軸受ユニット1の内部を、両通気孔17c及び27cを介して外部と連通するために、所定の工具を使用して、両排出通路17a及び27aの新規グリースが掻き出される(潤滑剤掻き出し工程)。そして、左右のグリース排出管17及び27からの新規グリースの掻き出し後、両排出口17b及び27bが、栓18及び28によって閉鎖される(排出口閉鎖工程)。以上により、軸受ユニット1におけるグリースの交換が終了する。
【0059】
なお、上述した軸受ユニット1では、左右のグリース排出管17及び27の通気孔17c、27cに対し、栓19、29を着脱することによって、両通気孔17c、27cを開閉するようにしたが、以下のような三方弁40を用いて、開閉操作するようにしてもよい。
【0060】
図8は、左右のグリース排出管17及び27の両通気孔17c及び27cを開閉操作するための三方弁40(通気孔開閉装置)を模式的に示している。この三方弁40は、左グリース排出管17に対し、左接続具41及び左配管41aを介して、左グリース排出管17の通気孔17cに接続されている。また、三方弁40は、右グリース排出管27に対し、右接続具42及び右配管42aを介して、右グリース排出管27の通気孔27cに接続されている。さらに、三方弁40は、配管40aを介して、大気開放されている。
【0061】
上記のように構成されかつ両通気孔17c及び27cに接続された三方弁40により、両通気孔17c及び27cは、
図9(a)~(c)に示す3つのパターンで開閉される。なお、同図では、三方弁40による通気を白抜き矢印で示している。
【0062】
図9(a)に示す第1パターンでは、両通気孔17c及び27cがいずれも大気開放されている。また、同図(b)に示す第2パターンでは、左グリース排出管17の通気孔17cが大気開放される一方、右グリース排出管27の通気孔27cが閉鎖されている。さらに、同図(c)に示す第3パターンでは、左グリース排出管17の通気孔17cが閉鎖される一方、右グリース排出管27の通気孔27cが大気開放されている。
【0063】
以上のように構成された三方弁40により、軸受ユニット1の通常の使用時には、三方弁40が第1パターンに設定される。一方、グリースの交換時には、三方弁40を第2パターンに設定して、前述した第1グリース供給・排出工程が実行され、その後、三方弁40を第3パターンに設定して、前述した第2グリース供給・排出工程が実行される。以上のように、三方弁40を操作するだけで、左右のグリース排出管17及び27の両通気孔17c及び27cを開閉することができ、軸受ユニット1の通常の使用時やグリースの交換時における両通気孔17c及び27cの開閉状態の切り替えを容易に行うことができる。
【0064】
以上詳述したように、本実施形態によれば、グリースが充填された軸受ユニット1において、その使用による温度上昇に伴い、軸受4の内圧が上昇する場合でも、軸受4の内部が左右のグリース排出管17及び27にそれぞれ設けられた2つの通気孔17c及び27cを介して大気開放されているので、軸受4の内圧の上昇を抑制し、外小蓋5及び内小蓋6からのグリースの漏出を防止しながら、外輪11に対する内輪12の円滑な回転を確保することができる。
【0065】
また、軸受ユニット1においてグリースを交換する場合、左右のグリース排出管17及び27において、一方の排出口17b(27b)及び通気孔17c(27c)を閉鎖するとともに、他方の排出口27b(17b)及び通気孔27c(17c)を開放した状態で、新規グリースを軸受ユニット1内に注入する。これにより、軸受ユニット1内の劣化グリースを新規グリースで押圧しながら、排出口27b(17b)を介して外部に排出するとともに、新規グリースを軸受ユニット1内に充填することができる。このように、軸受ユニット1内へのグリースの供給及び交換を容易に行うことができ、それにより、軸受ユニット1における軸受4自体の寿命を最大限確保しながら、長期間にわたって安定して使用することができる。
【0066】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明の軸受ユニット1を巻上機に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の機器に適用することが可能である。また、実施形態では、軸受ユニット1における軸受4として、2組のころ列13A、13Bを有する自動調心ころ軸受を採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3組以上のころ列を有する軸受や、転動体として玉を用いかつ2組以上の玉列を有する複列の玉軸受を採用することも可能である。さらに、1組の転動体列を有する2つの軸受を組み合わせることにより、軸受4を構成することも可能である。
【0067】
また、実施形態では、軸受4の外輪11の外周面にリング溝11aを形成し、このリング溝11aを介して、ペデスタル2のグリース供給通路10と外輪11のグリース導入孔11bとを連通するようにしたが、上記のリング溝11aに代えて、又はリング溝11aとともに、ペデスタル2の軸受収容部9の周面全体に、同様のリング溝を形成することも可能である。
【0068】
また、実施形態では、グリースがすでに充填されている軸受ユニット1におけるグリースの交換方法について説明したが、最初のグリースの充填の際に、前述したグリースの交換方法と同様にして、グリースを充填することも可能である。
【0069】
さらに、実施形態では、本発明の潤滑剤としてグリースを採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、軸受4の潤滑剤として適切な各種の潤滑剤を採用することが可能である。
【0070】
また、実施形態で示した軸受ユニット1、軸受4、外小蓋5、内小蓋6、及びグリース排出管17、27の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 軸受ユニット
2 ペデスタル(ハウジング)
3 シャフト
4 軸受
5 外小蓋(第1又は第2軸受カバー)
6 内小蓋(第2又は第1軸受カバー)
7 ベース部
8 軸受ホルダ部
9 軸受収容部
10 グリース供給通路(潤滑剤供給通路)
11 外輪
11a リング溝
11b グリース導入孔(潤滑剤導入孔)
12 内輪
13 ころ(転動体)
13A ころ列(転動体列)
13B ころ列(転動体列)
17 グリース排出管(第1又は第2潤滑剤排出管)
17a 排出通路
17b 排出口(第1又は第2排出口)
17c 通気孔(第1又は第2通気孔)
27 グリース排出管(第2又は第1潤滑剤排出管)
27a 排出通路
27b 排出口(第2又は第1排出口)
27c 通気孔(第2又は第1通気孔)
30 グリースニップル
40 三方弁(通気孔開閉装置)
LS 左スペース
RS 右スペース