(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039810
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240315BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A01B69/00 303T
A01B69/00 303M
A01C11/02 342Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144446
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
【テーマコード(参考)】
2B043
2B063
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB06
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA31
2B043EB05
2B043EC02
2B043EC12
2B043EC14
2B043EC15
2B043ED12
2B043ED14
2B063AA10
2B063AB01
2B063AB08
2B063CA04
2B063CB02
(57)【要約】
【課題】圃場の状態に関わらず作業車両に作業精度の高い作業を実行させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供する。
【解決手段】走行処理部111は、圃場Fに設定された目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させるとともに、作業車両10の植付部4に植付作業を実行させる。植付制御処理部112は、圃場Fの耕盤深さ及び硬度に基づいて植付部4の高さを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業領域に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両の作業部に所定の作業を実行させることと、
前記作業領域の土壌の状態に基づいて前記作業部の高さを制御することと、
を実行する自動走行方法。
【請求項2】
前記作業部の前記作業車両に対する高さ、及び、前記作業領域の接地面に接地するフロートの前記作業部に対する角度の少なくともいずれかに基づいて、前記作業領域の土壌の状態を推定すること、
をさらに実行する請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項3】
前記土壌を構成する耕盤から田面までの深さ、及び、前記土壌の軟らかさを表す硬度の少なくともいずれかを推定する、
請求項2に記載の自動走行方法。
【請求項4】
前記深さが所定深さ以上の場合、及び、前記硬度が所定硬度以上の場合の少なくともいずれかの場合に、前記作業部の高さを予め設定された設定高さよりも高い値に変更する、
請求項3に記載の自動走行方法。
【請求項5】
前記作業部は、前記土壌の田面を整地する整地装置を含み、
前記深さが所定深さ以上の場合、及び、前記硬度が所定硬度以上の場合の少なくともいずれかの場合に、前記整地装置の高さを予め設定された設定高さよりも高い値に変更する、
請求項3に記載の自動走行方法。
【請求項6】
前記硬度が大きいほど前記作業部の高さが高くなるように変更する、
請求項4に記載の自動走行方法。
【請求項7】
前記硬度が大きいほど前記整地装置の高さが高くなるように変更する、
請求項5に記載の自動走行方法。
【請求項8】
前記深さが所定深さ以上の場合、及び、前記硬度が所定硬度以上の場合の少なくともいずれかの場合に、さらに、前記作業車両の車速を予め設定された設定速度から減速させる、
請求項4~7のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項9】
前記深さが深いほど前記車速が遅くなるように減速させる、
請求項8に記載の自動走行方法。
【請求項10】
前記硬度が大きいほど前記車速が遅くなるように減速させる、
請求項8に記載の自動走行方法。
【請求項11】
作業領域に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させるとともに、前記作業車両の作業部に所定の作業を実行させる走行処理部と、
前記作業領域の土壌の状態に基づいて前記作業部の高さを制御する高さ制御処理部と、
を備える自動走行システム。
【請求項12】
作業領域に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両の作業部に所定の作業を実行させることと、
前記作業領域の土壌の状態に基づいて前記作業部の高さを制御することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させる自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業機械の自動化技術の進歩により、圃場内を目標経路に従って自動走行しながら作業を行う作業車両が導入されている。また、従来、外乱の影響によるスリップ(横滑り)が発生した場合でも目標経路に従って作業車両を安定して自動走行させるために、操舵装置の操舵感度を調整する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業車両の走行安定性に影響を及ぼす外乱には、圃場の田面の硬度、耕盤の深さなど圃場の状態に関する要因が含まれる。例えば、田面の表層に泥水、泥土などが含まれると、作業車両が走行した場合に作業部が泥水、泥土を押し流して、植え付けた苗を埋没させてしまったり傷めてしまったりする問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、圃場の状態に関わらず作業車両に作業精度の高い作業を実行させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動走行方法は、作業領域に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、前記作業車両の作業部に所定の作業を実行させることと、前記作業領域の土壌の状態に基づいて前記作業部の高さを制御することと、を実行する。
【0007】
本発明に係る自動走行システムは、走行処理部と高さ制御処理部とを備える。前記走行処理部は、作業領域に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させるとともに、前記作業車両の作業部に所定の作業を実行させる。前記高さ制御処理部は、前記作業領域の土壌の状態に基づいて前記作業部の高さを制御する。
【0008】
本発明に係る自動走行プログラムは、作業領域に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、前記作業車両の作業部に所定の作業を実行させることと、前記作業領域の土壌の状態に基づいて前記作業部の高さを制御することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圃場の状態に関わらず作業車両に作業精度の高い作業を実行させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る植付部の一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る植付部の一例を示す側面図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施形態に係る植付部の一例を示す側面図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の実施形態に係る植付部の一例を示す側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る圃場及び目標経路の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される操作画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される設定情報の設定方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る田面の硬度に対する植付部及び整地装置の対地高さ係数の変化を示すグラフである。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る田面の硬度に対する作業車両の車速の速度係数の変化を示すグラフである。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る耕盤深さに対する作業車両の車速の速度係数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る自動走行システム100は、作業車両1と操作端末60とを含んでいる。作業車両1及び操作端末60は、通信網N1を介して通信可能であり、互いに無線接続又は有線接続される。例えば、作業車両1及び操作端末60は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
本実施形態では、作業車両1が田植機である場合を例に挙げて説明する。なお、他の実施形態として、作業車両1は、トラクタ、コンバイン、建設機械、又は除雪車などであってもよい。作業車両1は、予め登録された圃場内を自動走行(自律走行)可能な構成を備える自動走行車両である。例えば、オペレータは作業対象の圃場を登録し、当該圃場に対して作業車両1を自動走行させる走行経路(目標経路)を設定する。作業車両1は、測位装置160により算出される作業車両1の現在位置の位置情報に基づいて、圃場に対して予め設定された目標経路に従って自動走行する。また、作業車両1は、圃場内において自動走行しながら所定の作業(例えば植付作業)を行うことが可能である。
【0014】
例えば、作業車両1は、
図6に示す圃場Fにおいて、作業開始位置Sから作業終了位置Gまで目標経路Rに従って自動走行する。目標経路Rは、
図6に示す経路に限定されず、圃場Fの形状、作業内容などに応じて適宜設定される。
【0015】
[作業車両1]
図2に示すように、作業車両1は、エンジン2、動力伝達部3、植付部4、及び昇降部5を備える。植付部4は、昇降部5を介して機体に連結されており、昇降部5の作動を制御することによって上下方向に自動昇降可能である。植付部4には、動力伝達部3を介してエンジン2からの動力が伝達される。作業車両1は、エンジン2の駆動によって走行しながら、植付部4によって圃場に苗を植え付ける。
【0016】
本実施形態では、圃場Fに田面水が張られた状態で、圃場Fの表面から所定の植え付け深さで苗の植付作業が行われる場合について説明する。なお、圃場Fに田面水が張られていない状態での植付作業についても同様の技術思想を適用できる。
【0017】
エンジン2からの駆動力は、動力伝達部3においてトランスミッション6を介して、PTO軸7に伝達される。PTO軸7はトランスミッション6から後方に突出して設けられる。PTO軸7からユニバーサルジョイントを介して植付伝動ケース8に動力が伝達されて、植付部4が駆動される。また、トランスミッション6から後方に向けて駆動軸9が設けられ、駆動軸9からリアアクスルケース10に駆動力が伝達される。
【0018】
植付部4は、植付アーム11、植付爪12、苗載台13、フロート14などを備える。植付爪12は、植付アーム11に取り付けられている。植付アーム11は、植付伝動ケース8から伝達される動力によって回転する。
【0019】
植付爪12には、苗載台13から苗が供給される。植付アーム11の回転運動に伴って、植付爪12が圃場F内に挿入され、所定の植付深さ(植付爪12の爪出量)となるように苗が植え付けられる。なお、本実施形態では、ロータリ式の植付爪を採用しているが、クランク式のものを用いてもよい。
【0020】
図3に示すように、植付部4は、左右方向に配置される複数のフロート14(本実施形態ではセンターフロート14A及び2つのサイドフロート14B)を備える。各フロート14は、植付部4を構成する植付フレーム15に取り付けられる。より具体的には、各フロート14の前端は植付フレーム15に対して上下方向に揺動可能に支持され、各フロート14の後端は植付フレーム15に設けられる回動支軸16にリンク機構17を介して昇降可能に取り付けられる。
【0021】
図4に示すように、回動支軸16又はリンク機構17には、ポテンショメータなどのセンサが取り付けられており、当該センサによりリンク高さh0が検出される。このリンク高さh0は、植付爪12の爪出量(植付爪12の先端部とフロート底面との距離)として検出される。そして、後述のようにセンターフロート14Aの沈下量dを用いて、実植付深さh(h=h0+d)として検出される。
【0022】
中央に配置されるセンターフロート14Aは、圃場接地面検知用のフロート検知体として利用される。具体的には、圃場Fの凹凸に応じて変化するセンターフロート14Aの揺動角(フロート前面で受ける抵抗に応じたピッチング方向の回動角度:フロート角α)及びオペレータなどによる設定操作に基づいてフロートの目標角βを決定し、フロート角αが目標角βに近付くように植付部4の高さ(植付深さ)が制御される。
【0023】
図3に示すように、植付部4の前部であって、フロート14(センターフロート14A、サイドフロート14B)の前方には、作業領域及び枕地領域を整地する整地装置20が設けられている。整地装置20は、植付フレーム15に対して高さ変更可能に支持される。
【0024】
駆動軸9からの動力の一部がリアアクスルケース10を介して整地伝動軸21に分岐され、整地伝動軸21からユニバーサルジョイント22、入力軸23、及び整地伝動ケース24を介して、両側方に向けて延出される駆動軸25に伝達される。各駆動軸25には、複数のロータ26が固定され、駆動軸25の回転駆動によってロータ26が回転して圃場Fが整地される。
【0025】
整地装置20は、中央が前方に配置され、中央から両側方に向かうに従ってそれぞれ前方から後方に向けて傾斜するように配置される。つまり、中央部が他の部位よりも前方に位置するように設けられている。上面視では、整地装置20はハの字状に配置される。
【0026】
整地装置20を上面視ハの字状に配置することで、センターフロート14Aの前方にスペースを確保することができる。このスペースを利用して、センターフロート14Aを前方に移動させることにより、センターフロート14Aの均平部と植付苗との間に後述するセンサ30を無理なく配置することができる。また、センターフロート14Aの回動支軸16の位置をサイドフロート14Bと同一側面位置に配置しても、センターフロート14A前方のスペースを利用して、センターフロート14Aを極力長くすることができる。
【0027】
また、整地装置20によって形成されるスペースを利用して、センターフロート14Aの後端面の位置はそのままで前端面を前方に延出することも可能であり、この場合も同様にフロート14によるセンシング精度の向上を図ることができる。また、センターフロート14Aの面積を長くすることにより、センシング能力が上がり、植付部4の昇降を最適に制御できる。さらに、センターフロート14Aのフロート形状を変更する際に、泥流の流れ及び形状バランスなどを最適に設計することができ、植付部4の昇降制御の精度をより向上できる。
【0028】
図3及び
図4に示すように、センターフロート14Aにおいて、植付部4の植付位置Pの直前方には、圃場表面(田面)を検出するセンサ30が設けられる。センサ30は、前方から後方に向けて延出される。センサ30は、植付フレーム15にピッチング方向に揺動自在に支持され、その揺動支点を中心として重力によって垂れ下がるため、先端部が田面に接触した状態が維持される。つまり、センサ30の先端部が常に田面を追従するように作業車両1が進行する。
【0029】
センサ30の揺動角度θ(
図4参照)を計測することによって、センサ30と圃場の位置関係を検出することができ、圃場の実高さ(苗を植え付ける田面高さ)を検出することができる。このように、センサ30によって圃場Fの実高さを検出することによって、センターフロート14Aの沈下量d(泥状の圃場への沈み込み量)を計測できる。
【0030】
以上のように、圃場接地面の検知用に用いられるセンターフロート14Aとは別にセンサ30を設けて、センサ30によって植付位置Pの近傍で圃場表面を検知している。このように、センサ30によって苗の植え付け直前でのセンシングを実現することで、センシング精度の向上を図ることができる。
【0031】
本実施形態において、植付位置Pは、リンク機構17を介して回動するフロート14の後端部の側方である。また、植付位置Pの直前方位置とは、苗を植え付けるためにフロート14で整地された後の圃場であり、そのような安定した状態の圃場をセンシングするため、圃場の表面に現れる凹凸形状がセンサ30に与える影響及びフロートによって生じる泥水流がセンサ30に与える影響を低減できる。
【0032】
図3及び
図4に示すように、センサ30は、圃場表面の凹凸に倣って追従する検知部31と、検知部31をピッチング方向に揺動自在に支持する支持部32を有する。検知部31は、複数の棒体40によって構成され、ステー41に複数の棒体40の同一端が支持されることで、レーキ状に形成される。各棒体40は、前後方向に平行に配置され、かつ、側面視で、その基部から後下方に向けて延出され、圃場表面を追従する先端部は基端部側より水平面との角度が小さくなるように、中途部から曲成される。ステー41は支柱42に固定される。
【0033】
支持部32は、各棒体40を支持するステー41と、ステー41を支持する支柱42と、植付フレーム15に設けられる揺動軸43とを含む。支柱42の基端部は揺動軸43に巻装されている。つまり、揺動軸43は、支柱42を揺動自在に支持する。
【0034】
以上のように、検知部31は、支持部32に揺動自在に支持されており、検知部31の圃場表面追従時における揺動角度を計測することにより田面を検知する。
【0035】
作業車両1では、植付深さの変更に連動してセンサ30の揺動支点位置が変更される。回動支軸16を、その上方に延出される植付深さ調節レバー(図示しない)を介してオペレータが回動させることで、もしくは、アクチュエータ50によって回動させることで、植付部4のフロート14に対する位置が変更されるため、植付爪12の爪出量(植付深さ)が調整される。
【0036】
本実施形態では、植付深さの変更による植付部4及びフロート14の相対位置の変化に伴って、センサ30のフロート14に対する高さが変化することを防止するために、植付深さを変更する回動支軸の動きに連動して揺動軸43の揺動支点位置を変更している。
【0037】
図4に示すように、センサ30の揺動軸43は植付フレーム15に設けられるギアボックス51に貫設される。ギアボックス51は、センサ30の揺動角度を計測する構造を収納する。ギアボックス51の後部は鉛直上下方向に摺動可能に植付フレーム15に取り付けられる。ギアボックス51の両側面の同高さからそれぞれ外方に向けてスライダ52が設けられる。
【0038】
各スライダ52を鉛直上下方向に摺動させるために、植付フレーム15にステー53を介して固設されるガイド板54が設けられる。ガイド板54は鉛直上下方向に長い形状の長穴55を有する。ガイド板54はギアボックス51の両側面にそれぞれ配置され、長穴55にスライダ52が摺動自在に係合される。このような構成にすることで、スライダ52が長穴55内を上下方向に摺動することで、ギアボックス51は、鉛直上下方向に移動可能となる。
【0039】
アクチュエータ50とスライダ52は、アーム56を介して連結される。アーム56の一端とアクチュエータ50の出力側が接続される。スライダ52と連結されるアーム56の他端には長孔が設けられ、スライダ52がその長孔内に摺動可能に係合される。アクチュエータ50が駆動されると、アーム56はアクチュエータ50を支点として回動され、スライダ52が長穴55内を上下方向に摺動する。スライダ52が上下方向に摺動されるとともに、ギアボックス51が上下方向に移動することで、センサ30の揺動支点位置は鉛直上下方向に移動する。
【0040】
このように、アクチュエータ50の駆動とギアボックス51の移動を連動させることで、植付深さの変更とセンサ30の揺動支点位置の上下動を連動させることができる。また、本実施形態のようにセンサ30の揺動支点位置を鉛直上下方向に移動させることで、例えば、平行リンク等を介して移動させるときよりも小さなスペースで移動させられるため、省スペースである。
【0041】
本実施形態では、揺動軸43を含むギアボックス51を植付深さの変更に応じて連動させているが、揺動角度の計測方法やギアボックス51の有無によっては、揺動軸43のみを植付深さの変更に応じて連動させることもできる。
【0042】
図5Aに示すように、回動支軸16が植付深さを浅くする方向に回動される場合は、センサ30の揺動支点位置は鉛直下方向に移動される。
【0043】
植付深さを浅くする場合、アクチュエータ50によって回動支軸16が時計回りに回動されるとともに、植付部4が上昇する。植付フレーム15のフロート14に対する高さが高くなるため、植付爪12の爪出量は小さくなる。回動支軸16の回動に応じて、スライダ52が長穴55内を鉛直下方向に摺動することで、センサ30の揺動支点位置が鉛直下方向に移動され、センサ30のフロート14に対する高さを一定に保つ。
【0044】
図5Bに示すように、回動支軸16が植付深さを深くする方向に回動される場合は、センサ30の揺動支点位置は鉛直上方向に移動する。
【0045】
植付深さを深くする場合、アクチュエータ50によって回動支軸16が反時計回りに回動されるとともに、植付部4が下降する。植付フレーム15のフロート14に対する高さが低くなるため、植付爪12の爪出量は大きくなる。回動支軸16の回動に応じて、スライダ52が長穴55内を鉛直上方向に摺動することで、センサ30の揺動支点位置が鉛直上方向に移動され、センサ30のフロート14に対する高さを一定に保つ。
【0046】
以上のように、植付深さの変更に応じてセンサ30の揺動支点位置を鉛直上下方向に移動させて、センサ30のフロート14に対する高さを一定に保つことができる。そのため、植付深さを変更しても、圃場表面に対するセンサ30の迎え角を一定に保ち、圃場表面に対するセンシング精度を維持できる。
【0047】
ところで、例えば、田面の表層に泥水、泥土が含まれると、作業車両1が走行した場合に植付部4が泥水、泥土を押し流して、植え付けた苗を埋没させてしまったり傷めてしまったりする問題が生じる。従来の技術では、田面の表層に泥水、泥土が多く含まるなど、作業車両1の走行安定性に影響を及ぼす外乱が生じた場合に、作業精度が低下する問題が生じる。これに対して、本実施形態に係る作業車両1は、以下に示すように、圃場の状態に関わらず作業精度を向上させることが可能な構成を備えている。
【0048】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるための測位制御プログラム、及び測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記測位制御プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部162に記憶される。なお、前記測位制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して測位装置160にダウンロードされて記憶部162に記憶されてもよい。
【0049】
通信部163は、測位装置160を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局サーバーなどの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0050】
測位用アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0051】
測位制御部161は、測位用アンテナ164が衛星から受信するGNSS信号に基づいて作業車両1の現在位置を算出する。例えば、作業車両1が圃場Fを自動走行する場合に、測位用アンテナ164が複数の衛星のそれぞれから発信される電波(発信時刻、軌道情報など)を受信すると、測位制御部161は、測位用アンテナ164と各衛星との距離を算出し、算出した距離に基づいて作業車両1の現在位置(緯度及び経度)を算出する。また、測位制御部161は、作業車両1に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して作業車両1の現在位置を算出する、リアルタイムキネマティック方式(RTK-GNSS測位方式(RTK方式))による測位を行ってもよい。このように、作業車両1は、RTK方式による測位情報を利用して自動走行を行う。なお、作業車両1の現在位置は、測位位置(例えば測位用アンテナ164の位置)と同一位置であってもよいし、測位位置からずれた位置であってもよい。
【0052】
通信部150は、作業車両1を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して外部機器(操作端末など)との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0053】
記憶部120は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部120には、車両制御装置110に自動走行処理(
図8参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部120に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して作業車両1にダウンロードされて記憶部120に記憶されてもよい。また、記憶部120には、操作端末60において生成される目標経路Rの経路データが記憶されてもよい。
【0054】
車両制御装置110は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置110は、前記ROM又は記憶部120に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両1を制御する。
【0055】
車両制御装置110は、作業車両1に対する各種のユーザー操作に応じて作業車両1の動作を制御する。また、車両制御装置110は、測位装置160により算出される作業車両1の現在位置と、予め設定される目標経路Rとに基づいて、当該作業車両1の自動走行処理を実行する。
【0056】
図1に示すように、車両制御装置110は、走行処理部111、植付制御処理部112、推定処理部113、整地制御処理部114、車速制御処理部115、報知処理部116などの各種の処理部を含む。なお、車両制御装置110は、前記CPUで前記自動走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記自動走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0057】
走行処理部111は、作業車両1の走行を制御する。具体的には、走行処理部111は、圃場Fに設定された目標経路Rに従って作業車両1を自動走行させる。例えば、走行処理部111は、操作端末60から走行開始指示を取得すると作業車両1の自動走行を開始させる。例えば、作業車両1の現在位置が走行開始条件を満たす位置にある場合において、操作端末60の操作画面においてオペレータがスタートボタンを押下すると、操作端末60は走行開始指示を作業車両1に出力する。走行処理部111は、操作端末60から前記走行開始指示を取得すると、目標経路Rに従って自動走行を開始させる。また、走行処理部111は、目標経路Rに従って作業車両1を自動走行させながら、植付部4に植付作業を実行させる。例えば、走行処理部111は、目標経路Rの直進経路(作業経路)において植付作業を実行させる。
【0058】
また、走行処理部111は、操作端末60から走行停止指示を取得すると作業車両1の自動走行を停止させる。例えば、操作端末60の操作画面においてオペレータが一時停止ボタンを押下すると、操作端末60は走行停止指示を作業車両1に出力する。
【0059】
植付制御処理部112は、植付部4の高さを制御する。具体的には、フロート14は、植付部4の下部に設けられ、その下面が田面に接触することができるように配置されている。フロート14が田面に接触することにより、苗を植え付ける前の田面が整地される。また、フロート14には、リンク機構57の回動角を検出する角度センサ(例えばフロートセンサ(不図示))が設けられている。前記回動角は、田面と植付部4との距離に対応している。植付制御処理部112は、前記回動角が予め設定された目標角度になるように植付部4を昇降させて植付部4の対地高さを制御する。これにより、植付部4が田面に対して一定の高さに維持されるため、植付作業の精度が安定する。植付制御処理部112は、本発明の高さ制御処理部の一例である。
【0060】
推定処理部113は、圃場Fの土壌の状態を推定する。具体的には、推定処理部113は、植付部4の作業車両1に対する高さ、及び、圃場Fの接地面(田面)に接地するフロート14の植付部4に対する角度の少なくともいずれかに基づいて、圃場Fの土壌の状態を推定する。また、推定処理部113は、土壌を構成する耕盤から田面までの深さ(耕盤深さ)、及び、土壌の軟らかさを表す硬度の少なくともいずれかを推定する。耕盤深さ及び硬度は、本発明の土壌の状態を表す情報の一例である。
【0061】
例えば、推定処理部113は、作業車両1の車体に対する植付部4の高さに基づいて、耕盤深さを推定する。一般的に水田圃場などでは、対地作業を行う作業面(田面)に対して、作業車両1が走行する走行面(車輪が接触する耕盤)は、田面(表層)よりも下層に位置する。推定処理部113は、耕盤から田面までの高さの差(耕盤深さ)を推定する。例えば、推定処理部113は、植付制御処理部112により植付部4の高さが制御された状態において、昇降部5に設けられた角度センサ(例えばリフト角センサ58(
図2参照))の検出角度に基づいて、耕盤深さを推定する。
【0062】
また、例えば、作業車両1の前方部(前輪)が後方部(後輪)よりも上方に傾斜するなど作業車両1の車体の姿勢が変化する場合がある。車体の姿勢が変化すると、前記耕盤深さが変動してしまう。そこで、推定処理部113は、前記リフト角センサの検出角度に加えて、車体に設けられた姿勢角センサ(例えばIMUセンサ)の検出角度を利用して耕盤深さを推定してもよい。これにより、車体の姿勢が変化した場合であっても、正確な耕盤深さを推定することができる。
【0063】
また、推定処理部113は、作業車両1に設けられた回転部材の田面に対する接触状態に基づいて、田面の硬度を推定する。例えば、回転部材であるフロート14及びセンサ30のそれぞれは、形状及び材質が互いに異なるため、田面に対する接触程度(田面に対する沈下量など)が異なる。そこで、推定処理部113は、フロート14及びセンサ30のそれぞれの田面に対する接触程度を比較することにより(沈下量の差により)、田面の硬度を推定することができる。また例えば、推定処理部113は、フロート14の対地高さとセンサ30の対地高さとの差、又は、フロート14の検知角度とセンサ30の検知角度との差に基づいて、田面の硬度を推定することができる。また、推定処理部113は、田面の硬度を推定することにより、泥水、泥土の量を推定することができる。例えば、田面の硬度が小さい場合は、泥水、泥土が少ないと推定することができ、田面の硬度が大きい場合は、泥水、泥土が多いと推定することができる。なお、本実施形態では、「硬度」を土壌の軟らかさを表す指標として用いるため、田面の硬度が大きいほど土壌が軟らかいことを示している。
【0064】
また、植付制御処理部112は、圃場Fの土壌の状態に基づいて植付部4の高さを制御(変更)する。具体的には、植付制御処理部112は、推定処理部113により推定される圃場Fの耕盤深さ及び硬度の少なくともいずれかに基づいて、植付部4の高さを変更する。また、植付制御処理部112は、耕盤深さが所定深さ以上の場合、及び、田面の硬度が所定硬度以上の場合の少なくともいずれかの場合に、植付部4の高さを予め設定された設定高さよりも高い値に変更する。
【0065】
例えば、推定処理部113が、田面の硬度が大きく、泥水、泥土などが多いと推定すると、植付制御処理部112は、フロート14に対応する目標角度に応じて設定された植付部4の高さ(目標対地高さ)を、より高くなるように変更する。このように、植付部4の対地高さの目標値を、植付部4が田面から離れる方向(上方)に高く設定することにより、植付部4による田面表層の泥水、泥土を押し流すことを抑制することができ、また押し流した後の引き波の発生を抑制することができる。
【0066】
整地制御処理部114は、植付制御処理部112による植付部4の高さの変更処理と同様に、推定処理部113により推定される圃場Fの耕盤深さ及び硬度の少なくともいずれかに基づいて、整地装置20の高さを変更する。具体的には、整地制御処理部114は、耕盤深さが所定深さ以上の場合、及び、田面の硬度が所定硬度以上の場合の少なくともいずれかの場合に、整地装置20の高さを予め設定された設定高さよりも高い値に変更する。
【0067】
例えば、推定処理部113が、田面の硬度が大きく、泥水、泥土などが多いと推定すると、整地制御処理部114は、整地装置20の高さ(目標対地高さ)又はフロート14に対する高さを、より高くなるように変更する。このように、整地装置20の対地高さの目標値を、整地装置20が田面から離れる方向(上方)に高く設定することにより、整地装置20による田面表層の泥水、泥土を押し流すことを抑制することができ、また押し流した後の引き波の発生を抑制することができる。整地制御処理部114は、本発明の高さ制御処理部の一例である。
【0068】
車速制御処理部115は、推定処理部113により推定される圃場Fの耕盤深さ及び硬度の少なくともいずれかに基づいて、作業車両1の車速を制御する。例えば、推定処理部113が田面の硬度が大きく、泥水、泥土が多いと推定した場合、及び、推定処理部113が、植付部4のリフト角センサの検出角度が所定角度より大きく、耕盤深さが深いと推定した場合の少なくともいずれかの場合に、車速制御処理部115は、作業車両1の車速を設定速度から減速させる。車速を減速させることにより、植付部4の田面に対する圧力を低減されるため、植付部4による田面表層の泥水、泥土を押し流すことを抑制することができ、また押し流した後の引き波の発生を抑制することができる。
【0069】
また耕盤深さが深い場合、作業車両1の下部(例えばミッションケースなど)が田面に接触することで泥押しが発生し易くなるが、車速を減速させることにより、耕盤深さが深いことによる泥押しを抑制することが可能になる。
【0070】
報知処理部116は、植付制御処理部112、整地制御処理部114、及び車速制御処理部115による制御情報をオペレータに報知する。具体的には、推定処理部113が田面の硬度が大きい(田面に泥水、泥土が多く存在する)と推定して、植付制御処理部112による植付部4の対地高さの変更処理、整地制御処理部114による整地装置20の対地高さの変更処理、及び、車速制御処理部115による車速の減速処理の少なくともいずれかの処理を実行する場合に、報知処理部116は、当該処理を実行することを示す情報をオペレータに報知する。例えば、報知処理部116は、前記情報を示すメッセージを操作端末60に表示させる。これにより、例えばオペレータが作業車両1に乗車している場合には、オペレータは作業車両1の車速が減速する前に認識することができるため、安全性を確保することができる。また、無人走行の場合には、オペレータは操作端末60の前記メッセージを確認することにより作業車両1に注意を払うことできるため、作業精度を確認しながら適宜作業車両1の作業状態を調整することができる。
【0071】
車両制御装置110は、報知処理部116が前記制御情報をオペレータに報知して、オペレータから指示を取得した場合に、植付部4の対地高さの変更処理、整地装置20の対地高さの変更処理、車速の減速処理などを実行してもよい。
【0072】
また、車両制御装置110は、推定処理部113により推定された耕盤深さ及び硬度の情報を記憶部120に記憶してもよい。例えば、車両制御装置110は、作業車両1の位置、有人作業、無人作業などに関わらず、推定処理部113が推定した耕盤深さ、硬度(泥水、泥土の量)の情報を、目標経路R及び作業履歴のいずれかに対応付けて記憶部120に記憶する。これらの情報は、圃場F内の位置情報に対応付けて記憶部120に記憶されるとともに、位置情報に基づいて読出可能に記憶部120に記憶される。
【0073】
これにより、例えば、圃場F内の泥押しなどが発生し易い場所を記憶することが可能となる。このため、作業車両1が、泥押しなどが発生し易い場所又はその周辺を走行する際に、泥押しなどを抑制するように、予め植付部4の対地高さの変更処理、整地装置20の対地高さの変更処理、及び、車速の減速処理を実行することが可能となり、作業精度を向上させることができる。また、作業車両1が、泥押しなどが発生し易い場所又はその周辺を走行する際に、事前にオペレータに報知することが可能となる。
【0074】
[操作端末60]
図1に示すように、操作端末60は、操作制御部61、記憶部62、操作表示部63、及び通信部64などを備える情報処理装置である。操作端末60は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0075】
通信部64は、操作端末60を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両1などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0076】
操作表示部63は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。例えば、オペレータは、前記操作部において、作業対象の圃場Fを登録する操作を行う。
【0077】
また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両1に対する走行開始指示、走行停止指示などを行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両1から離れた場所において、操作端末60に表示される走行軌跡により、圃場Fを目標経路Rに従って自動走行する作業車両1の走行状態を把握することが可能である。
【0078】
記憶部62は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部62には、操作制御部61に所定の処理を実行させるための制御プログラムが記憶されている。例えば、前記制御プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部62に記憶される。なお、前記制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末60にダウンロードされて記憶部62に記憶されてもよい。
【0079】
また、記憶部62には、作業車両1を自動走行させるための専用アプリケーションがインストールされている。操作制御部61は、前記専用アプリケーションを起動させて、作業車両1に関する各種情報の設定処理、作業車両1の目標経路Rの生成処理、作業車両1に対する自動走行指示などを行う。
【0080】
また、記憶部62には、作業車両1に関する情報である作業車両情報、目標経路Rに関する情報である目標経路情報などのデータが記憶される。前記作業車両情報には、作業車両1ごとに、車両番号、型式などの情報が含まれる。前記車両番号は、作業車両1の識別情報である。前記型式は、作業車両1の型式である。
【0081】
また、記憶部62には、1台の作業車両1に関する前記作業車両情報が記憶されてもよいし、複数台の作業車両1に関する前記作業車両情報が記憶されてもよい。例えば、特定のオペレータが複数台の作業車両1を所有する場合、各作業車両1に関する前記作業車両情報が記憶部62に記憶される。
【0082】
前記目標経路情報には、目標経路Rごとに、経路名、圃場名、住所、圃場面積、作業時間などの情報が含まれる。前記経路名は、操作端末60において生成された目標経路Rの経路名である。前記圃場名は、目標経路Rが設定された作業対象の圃場Fの名称である。前記住所は、圃場Fの住所であり、前記圃場面積は、圃場Fの面積である。前記作業時間は、作業車両1により圃場Fの作業に要する時間である。
【0083】
また、記憶部62には、一つの目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶されてもよいし、複数の目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶されてもよい。例えば、特定のオペレータが、自身が所有する一又は複数の圃場Fに対して複数の目標経路Rを生成した場合、各目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶部62に記憶される。なお、一つの圃場Fに対して、一つの目標経路Rが設定されてもよいし、複数の目標経路Rが設定されてもよい。
【0084】
なお、他の実施形態として、前記作業車両情報、前記目標経路情報などの情報の一部又は全部が、操作端末60からアクセス可能なサーバーに記憶されてもよい。オペレータは、前記サーバー(例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバーなど)において前記作業車両情報及び前記目標経路情報を登録する操作を行ってもよい。
【0085】
操作制御部61は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリとして使用される。そして、操作制御部61は、前記ROM又は記憶部62に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末60を制御する。
【0086】
図1に示すように、操作制御部61は、設定処理部611、出力処理部612などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部61は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0087】
設定処理部611は、作業車両1に関する情報(以下、作業車両情報という。)、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報という。)を設定する。設定処理部611は、例えば
図7に示す設定画面D1においてオペレータの設定操作を受け付けて各設定情報を登録する。
【0088】
具体的には、設定処理部611は、作業車両1の機種、作業車両1において測位用アンテナ164が取り付けられている位置、作業機の種類、作業機のサイズ及び形状、作業機の作業車両1に対する位置、作業車両1の作業中の走行速度及びエンジン回転数、作業車両1の旋回中の走行速度及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末60において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。ここでは、作業機として、植付部4の情報が設定される。
【0089】
また、設定処理部611は、圃場Fの位置及び形状、作業を開始する作業開始位置S及び作業を終了する作業終了位置G、作業方向等の情報について、操作端末60において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0090】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両1に搭乗して圃場Fの外周に沿って一回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末60に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末60を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両1を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0091】
設定処理部611は、作業情報として、作業車両1(無人車両)と有人の作業車両1の協調作業の有無、作業車両1が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅、及び非作業地の幅等を設定可能に構成されている。
【0092】
例えば、設定処理部611は、登録された圃場Fにおいて実際に作業を行うための作業領域を設定する。例えば、オペレータが設定画面D1(
図7参照)の「作業領域登録」を選択し、作業領域を登録する圃場Fを選択すると、設定処理部611は、作業開始位置S及び作業終了位置Gを登録する登録画面(地図画面)を表示させる。オペレータは前記登録画面において、圃場F内の任意の位置に作業開始位置S及び作業終了位置Gを登録する。
【0093】
また、設定処理部611は、前記各設定情報に基づいて、圃場Fにおいて作業車両1を自動走行させる目標経路Rを生成する。例えば、オペレータが設定画面D1(
図7参照)の「経路作成」を選択すると、設定処理部611は、経路を生成するための登録画面(不図示)を表示させる。前記登録画面において、オペレータは、圃場F、作業機、旋回方法、枕地、車速、エンジン回転などの各情報を登録した後、経路生成指示を行う。設定処理部611は、前記経路生成指示を取得すると、作業開始位置S、作業終了位置G、及び前記各情報に基づいて目標経路Rを生成する。
【0094】
例えば
図6に示すように、設定処理部611は、作業開始位置S、作業終了位置G、目標経路Rを生成する。設定処理部611は、生成した目標経路Rを圃場Fに関連付けて登録する。
【0095】
出力処理部612は、目標経路Rの経路データを作業車両1に出力する。例えば、オペレータが作業対象の圃場F及び作業経路(目標経路R)を選択して作業開始操作を行うと、圃場Fに対応する目標経路Rの経路データを作業車両1に出力する。
【0096】
作業車両1は、操作端末60において生成された目標経路Rの経路データを受信すると記憶部120に記憶する。また、作業車両1は、前記走行開始条件を満たす場合に、オペレータによる走行開始指示に応じて自動走行を開始する。オペレータは、作業車両1が自動走行している間、操作端末60において、圃場F内における走行状態を把握することが可能である。
【0097】
なお、操作端末60は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末60は、操作制御部61によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0098】
[自動走行処理]
以下、
図8~
図12を参照しつつ、自動走行システム100が実行する前記自動走行処理の一例について説明する。
【0099】
なお、本発明は、前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する自動走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記自動走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは車両制御装置110が前記自動走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該自動走行処理における各ステップを分散して実行する自動走行方法も他の実施形態として考えられる。
【0100】
先ず、ステップS1において、作業車両1の車両制御装置110は、操作端末60から前記走行開始指示を取得したか否かを判定する。車両制御装置110は、前記走行開始指示を取得すると(S1:Yes)、処理をステップS2に移行させる。車両制御装置110は、前記走行開始指示を取得するまで待機する(S1:No)。
【0101】
ステップS2において、車両制御装置110は、作業車両1の自動走行を開始させる。車両制御装置110は、作業開始位置S(
図6参照)から目標経路Rに従って作業車両1の自動走行を開始させる。これにより、作業車両1は、例えば、植付部4を下降させた状態で目標経路Rの作業経路(直進経路)を自動走行しながら植付作業を行う。また、作業車両1は、植付部4を上昇させた状態で目標経路Rの旋回経路を自動走行して次の作業経路に移動する。
【0102】
次にステップS3において、車両制御装置110は、圃場Fの土壌の状態(耕盤深さ及び硬度)を推定する。具体的には、車両制御装置110は、作業車両1の車体に対する植付部4の高さ及び作業車両1の姿勢に基づいて、耕盤から田面までの耕盤深さを推定する。例えば、車両制御装置110は、昇降部5に設けられた角度センサ(リフト角センサ)の検出角度と、姿勢角センサ(IMUセンサ)の検出角度とに基づいて、耕盤深さを推定する。
【0103】
次にステップS4において、車両制御装置110は、圃場Fの耕盤深さ及び硬度の推定値が所定値以上であるか否かを判定する。例えば、車両制御装置110は、圃場Fの耕盤深さの推定値及び硬度の推定値の少なくともいずれかが所定値以上である場合に(S4:Yes)、処理をステップS5に移行させる。一方、車両制御装置110は、圃場Fの耕盤深さの推定値及び硬度の推定値の両方が所定値未満である場合には(S4:No)、処理をステップS6に移行させる。
【0104】
ステップS5では、車両制御装置110は、植付部4の高さ及び作業車両1の車速の少なくともいずれかの設定値(設定高さ、設定速度)を変更する処理を実行する。以下、前記設定値の変更処理の具体例を、
図9~
図12を用いて説明する。
【0105】
図9には、田面の硬度と耕盤深さとの複数の組み合わせのそれぞれに対応する、作業車速、旋回車速、植付部4の対地高さ、整地装置20の対地高さの算出方法の一例を示している。
図9に示すように、植付部4の対地高さは、予め設定された設定高さに対地高さ係数Hpを乗算して算出される。また、整地装置20の対地高さは、予め設定された設定高さに補正量を加算して算出される。なお、前記補正量は、前記設定高さに対地高さ係数Hrを乗算して算出される。
【0106】
例えば
図10に示すように、車両制御装置110は、田面の硬度が所定硬度以上の場合、すなわち田面が所定の軟らかさ以上である場合に、田面の硬度が大きくなるほど植付部4の対地高さ係数Hpが大きくなるように設定する。車両制御装置110は、
図10に示す対地高さ係数Hpの変化特性に基づいて、植付部4の対地高さを、「設定高さ」から「設定高さ×対地高さ係数Hp」(
図9参照)で算出された値に変更する。なお、
図10において、対地高さ係数「k35」は対地高さ係数Hp=1に対応し、この場合、植付部4の対地高さは「設定高さ」となる。
【0107】
また例えば
図10に示すように、車両制御装置110は、田面の硬度が大きくなるほど、整地装置20の対地高さ係数Hrが大きくなるように設定する。なお、
図10のグラフにおいて、整地装置20の前記設定高さは、整地装置20の下面がフロート14の下面より上方の場合にプラスの値(
図10のk44~k47)となり、整地装置20の下面がフロート14の下面より下方の場合にマイナスの値(
図10のk41~k43)となる。車両制御装置110は、
図10に示す対地高さ係数Hrの変化特性に基づいて、整地装置20の対地高さを、「設定高さ」から「設定高さ+補正量(補正量=設定高さ×対地高さ係数Hr)」(
図9参照)で算出された値に変更する。なお、対地高さ係数Hrが「0」の場合、前記補正量は「0」となるため、整地装置20の対地高さは「設定高さ」となる。
【0108】
図10に示す対地高さ係数Hp、Hrは、予め設定されて記憶部120に記憶される。車両制御装置110は、田面の硬度を推定(算出)すると、推定した硬度に対応する対地高さ係数Hp、Hrを用いて、植付部4の対地高さ及び整地装置20の対地高さを算出して設定する。なお、車両制御装置110は、植付部4の田面に対する圧力を検出して、検出結果に基づいて対地高さ係数Hp、Hrの変化特性(
図10参照)を設定(変更)してもよいし、オペレータの設定操作(変更操作)に基づいて対地高さ係数Hp、Hrの変化特性を設定(変更)してもよい。
【0109】
また、車両制御装置110は、田面の硬度が所定硬度以上の場合に、作業車両1の車速を、設定速度から減速させてもよい。例えば、
図9に示すように、作業車両1の車速は、予め設定された設定速度に、田面の硬度に応じた速度係数Khと、耕盤深さに応じた速度係数Kdとを乗算して算出される。
【0110】
例えば
図11に示すように、車両制御装置110は、田面の硬度が所定硬度以上の場合、すなわち田面が所定の軟らかさ以上である場合に、田面の硬度が大きくなるほど田面の硬度に対応する速度係数Khが小さくなるように設定する。なお、
図11において、速度係数「k15」は、速度係数Kh=1に対応する。
【0111】
また例えば
図12に示すように、車両制御装置110は、田面の硬度が所定硬度以上の場合、すなわち田面が所定の軟らかさ以上である場合に、田面の硬度が大きくなるほど耕盤深さに対応する速度係数Kdが小さくなるように設定する。なお、
図12において、速度係数「k24」は速度係数Kd=1に対応する。
【0112】
車両制御装置110は、田面の硬度が所定硬度以上の場合に、作業車両1の車速を、「設定速度」から「設定速度×速度係数Kh×速度係数Kd」(
図9参照)で算出された値に変更する。
【0113】
図11に示す速度係数Kh及び
図12に示す速度係数Kdは、予め設定されて記憶部120に記憶される。車両制御装置110は、田面の硬度を推定(算出)すると、推定した硬度に対応する速度係数Khを用いて、作業車両1の車速を算出して設定する。また車両制御装置110は、耕盤深さを推定(算出)すると、推定した耕盤深さに対応する速度係数Kdを用いて、作業車両1の車速を算出して設定する。なお、車両制御装置110は、植付部4の田面に対する圧力を検出して、検出結果に基づいて速度係数Kh、Kdの変化特性(
図11及び
図12参照)を設定(変更)してもよいし、オペレータの設定操作(変更操作)に基づいて速度係数Kh、Kdの変化特性を設定(変更)してもよい。
【0114】
このように、車両制御装置110は、田面の硬度及び耕盤深さに基づいて、
図9に示す算出式により、植付部4の対地高さ、整地装置20の対地高さ、作業車両1の車速を設定(変更)する処理を実行する。また、車両制御装置110は、田面の硬度が大きいほど植付部4の対地高さが高くなるように変更する。また、車両制御装置110は、田面の硬度が大きいほど整地装置20の対地高さが高くなるように変更する。
【0115】
また、車両制御装置110は、耕盤深さが所定深さ以上の場合、及び、田面の硬度が所定硬度以上の場合の少なくともいずれかの場合に、さらに、作業車両1の車速を予め設定された設定速度から減速させる。例えば、車両制御装置110は、耕盤深さが深いほど作業車両1の車速が遅くなるように減速させる。また、車両制御装置110は、田面の硬度が大きいほど作業車両1の車速が遅くなるように減速させる。
【0116】
車両制御装置110は、ステップS5の後、処理をステップS6に移行させる。ステップS6において、車両制御装置110は、作業車両1が作業終了位置G(
図6参照)に到達したか否かを判定する。例えば、車両制御装置110は、作業車両1が作業終了位置Gに到達すると(S6:Yes)、処理を終了する。車両制御装置110は、作業車両1が作業終了位置Gに到達するまで上述の処理(S3~S5)を継続する(S6:No)。車両制御装置110は、以上のようにして前記自動走行処理を実行する。
【0117】
他の実施形態として、車両制御装置110は、ステップS4の判定処理を省略して、ステップS3において推定した耕盤深さ及び硬度に基づいて、
図9に示す算出式により植付部4の対地高さ、整地装置20の対地高さ、作業車両1の車速を算出し、各設定値を更新しながら自動走行を行ってもよい。
【0118】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム100は、圃場Fに設定された目標経路Rに従って作業車両1を自動走行させ、作業車両1の作業部(植付部4)に所定の作業(植付作業)を実行させ、圃場Fの土壌の状態(田面の硬度、耕盤深さなど)に基づいて作業部の高さを制御する。例えば、自動走行システム100は、田面の硬度が軟らかい場合又は耕盤深さが深い場合に、植付部4の対地高さ、整地装置20の対地高さを、予め設定された設定高さよりも高くなるように制御する。
【0119】
また、自動走行システム100は、圃場Fの土壌の状態に基づいて作業車両1の車速を制御する。例えば、自動走行システム100は、田面の硬度が軟らかい場合又は耕盤深さが深い場合に、作業車両1の車速を、予め設定された設定速度よりも遅い速度に減速する。
【0120】
上記構成によれば、例えば田面の表層に泥土、泥水が含まれ場合に、植付部4により泥土、泥水の押し流しを抑制することができるため、植え付けた苗を埋没させてしまったり傷めてしまったりすることを防ぐことができる。
【0121】
本実施形態に係る車両制御装置110の各機能は、作業車両1の外に配置されてもよいし、操作端末60の操作制御部61に含まれてもよい。すなわち、上述の実施形態では、車両制御装置110が本発明に係る自動走行システムに相当するが、本発明に係る自動走行システムは、操作端末60単体で構成されてもよい。また、本発明に係る自動走行システムは、作業車両1及び操作端末60を含んで構成されてもよい。また、車両制御装置110の各機能が、作業車両1と通信可能なサーバーに含まれてもよい。
【0122】
[発明の付記]
以下、実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0123】
<付記1>
作業領域に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両の作業部に所定の作業を実行させることと、
前記作業領域の土壌の状態に基づいて前記作業部の高さを制御することと、
を実行する自動走行方法。
【0124】
<付記2>
前記作業部の前記作業車両に対する高さ、及び、前記作業領域の接地面に接地するフロートの前記作業部に対する角度の少なくともいずれかに基づいて、前記作業領域の土壌の状態を推定すること、
をさらに実行する付記1に記載の自動走行方法。
【0125】
<付記3>
前記土壌を構成する耕盤から田面までの深さ、及び、前記土壌の軟らかさを表す硬度の少なくともいずれかを推定する、
付記2に記載の自動走行方法。
【0126】
<付記4>
前記深さが所定深さ以上の場合、及び、前記硬度が所定硬度以上の場合の少なくともいずれかの場合に、前記作業部の高さを予め設定された設定高さよりも高い値に変更する、
付記3に記載の自動走行方法。
【0127】
<付記5>
前記作業部は、前記土壌の田面を整地する整地装置を含み、
前記深さが所定深さ以上の場合、及び、前記硬度が所定硬度以上の場合の少なくともいずれかの場合に、前記整地装置の高さを予め設定された設定高さよりも高い値に変更する、
付記3又は4に記載の自動走行方法。
【0128】
<付記6>
前記硬度が大きいほど前記作業部の高さが高くなるように変更する、
付記3~5のいずれかに記載の自動走行方法。
【0129】
<付記7>
前記硬度が大きいほど前記整地装置の高さが高くなるように変更する、
付記3~6のいずれかに記載の自動走行方法。
【0130】
<付記8>
前記深さが所定深さ以上の場合、及び、前記硬度が所定硬度以上の場合の少なくともいずれかの場合に、さらに、前記作業車両の車速を予め設定された設定速度から減速させる、
付記3~7のいずれかに記載の自動走行方法。
【0131】
<付記9>
前記深さが深いほど前記車速が遅くなるように減速させる、
付記8に記載の自動走行方法。
【0132】
<付記10>
前記硬度が大きいほど前記車速が遅くなるように減速させる、
付記8又は9に記載の自動走行方法。
【符号の説明】
【0133】
1 :作業車両
4 :植付部(作業部)
5 :昇降部
14 :フロート
14A :センターフロート
14B :サイドフロート
20 :整地装置
60 :操作端末
100 :自動走行システム
110 :車両制御装置
111 :走行処理部
112 :植付制御処理部(高さ制御処理部)
113 :推定処理部
114 :整地制御処理部(高さ制御処理部)
115 :車速制御処理部
116 :報知処理部
F :圃場(作業領域)
Hp :対地高さ係数
Hr :対地高さ係数
Kd :速度係数
Kh :速度係数
R :目標経路