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特開2024-39812走行制御方法、走行制御システム、及び走行制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039812
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】走行制御方法、走行制御システム、及び走行制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240315BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20240315BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240315BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20240315BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240315BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
A01B69/00 303
A01B69/00 303M
B62D6/00
B60W60/00
B60W50/08
B62D101:00
B62D113:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144448
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
(72)【発明者】
【氏名】宮井 謙一
【テーマコード(参考)】
2B043
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB06
2B043DA04
2B043EA08
2B043EA13
2B043EA18
2B043EB05
2B043EB12
2B043EB22
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043ED02
2B043ED12
2B043EE04
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA23
3D232DA84
3D232DA87
3D232DA88
3D232DA90
3D232DC09
3D232DC33
3D232DC34
3D232DC36
3D232DE09
3D232EB04
3D232EC34
3D232GG13
3D241BA30
3D241BB24
3D241CA20
3D241CC11
3D241CC17
3D241CD12
3D241CE02
3D241CE04
(57)【要約】
【課題】自動走行を手動走行に適切に切り替えることが可能な走行制御方法、走行制御システム、及び走行制御プログラムを提供すること。
【解決手段】受付処理部112は、作業車両10に所定の動作を実行させる操作具に対するユーザー操作を受け付ける。動作処理部114は、前記操作具に対する前記ユーザー操作に応じた動作を作業車両10に実行させる。走行処理部111は、作業車両10が自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える。設定処理部116は、作業車両10の設定情報及び作業情報の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動操舵による自動走行とユーザーの手動操舵による手動走行とを切り替え可能な作業車両の走行を制御する走行制御方法であって、
前記作業車両に所定の動作を実行させる操作具に対するユーザー操作を受け付けることと、
前記操作具に対する前記ユーザー操作に応じた動作を前記作業車両に実行させることと、
前記作業車両が自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替えることと、
前記作業車両の設定情報及び作業情報の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定することと、
を実行する走行制御方法。
【請求項2】
前記作業車両の車速、前記作業車両の作業内容、作業領域の状態、作業経路の位置の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定する、
請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項3】
前記操作具は、前記作業車両の走行方向を変更する操向装置、前記作業車両の作業機を昇降させる昇降装置、前記作業車両の車速を変更する変速装置の少なくともいずれかである、
請求項2に記載の走行制御方法。
【請求項4】
前記操作具は前記操向装置であって、
前記作業車両が第1車速で自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操向装置に関する変化量が第1閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替え、
前記作業車両が前記第1車速よりも遅い第2車速で自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操向装置に関する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える、
請求項3に記載の走行制御方法。
【請求項5】
前記作業車両の車速が遅いほど前記閾値を小さい値に設定する、
請求項4に記載の走行制御方法。
【請求項6】
前記操向装置に関する変化量は、前記操向装置の操向方向、操作時間、操作量、及び操作トルクの少なくともいずれかの変化量である、
請求項4又は5に記載の走行制御方法。
【請求項7】
前記作業車両は、所定の作業を行う作業機を備えており、
前記作業車両が手動走行中に前記作業機を駆動させる操作を受け付けた場合に、手動走行を自動走行に切り替えることをさらに実行する、
請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項8】
手動走行を自動走行に切り替えた場合に、前記閾値を前記作業車両の車速に応じて変更する、
請求項7に記載の走行制御方法。
【請求項9】
自動操舵による自動走行とユーザーの手動操舵による手動走行とを切り替え可能な作業車両の走行を制御する走行制御システムであって、
前記作業車両に所定の動作を実行させる操作具に対するユーザー操作を受け付ける受付処理部と、
前記操作具に対する前記ユーザー操作に応じた動作を前記作業車両に実行させる動作処理部と、
前記作業車両が自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える走行処理部と、
前記作業車両の設定情報及び作業情報の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定する設定処理部と、
を備える走行制御システム。
【請求項10】
自動操舵による自動走行とユーザーの手動操舵による手動走行とを切り替え可能な作業車両の走行を制御する走行制御プログラムであって、
前記作業車両に所定の動作を実行させる操作具に対するユーザー操作を受け付けることと、
前記操作具に対する前記ユーザー操作に応じた動作を前記作業車両に実行させることと、
前記作業車両が自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替えることと、
前記作業車両の設定情報及び作業情報の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための走行制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を走行させる走行制御方法、走行制御システム、及び走行制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動走行可能な作業車両として、直進時のみ自動走行を行い、旋回時においてはオペレータによる手動操舵(手動操作)に応じて走行(手動走行)を行う作業車両が知られている。例えば、作業車両が自動走行中に操向装置がオペレータにより操作された場合に、自動走行を手動走行に切り替える技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-081982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術は、操向装置の操向状態を検出することにより自動走行を手動走行に切り替える構成のため、作業車両が自動走行中にオペレータが意図しない場所で操向装置の操向方向が変化した場合に手動走行に切り替わってしまう問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、自動走行を手動走行に適切に切り替えることが可能な走行制御方法、走行制御システム、及び走行制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る走行制御方法は、自動操舵による自動走行とユーザーの手動操舵による手動走行とを切り替え可能な作業車両の走行を制御する方法である。前記走行制御方法は、前記作業車両に所定の動作を実行させる操作具に対するユーザー操作を受け付けることと、前記操作具に対する前記ユーザー操作に応じた動作を前記作業車両に実行させることと、前記作業車両が自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替えることと、前記作業車両の設定情報及び作業情報の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定することと、を実行する。
【0007】
本発明に係る走行制御システムは、自動操舵による自動走行とユーザーの手動操舵による手動走行とを切り替え可能な作業車両の走行を制御するシステムである。前記受付処理部は、前記作業車両に所定の動作を実行させる操作具に対するユーザー操作を受け付ける。前記動作処理部は、前記操作具に対する前記ユーザー操作に応じた動作を前記作業車両に実行させる。前記走行処理部は、前記作業車両が自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える。前記設定処理部は、前記作業車両の設定情報及び作業情報の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定する。
【0008】
本発明に係る走行制御プログラムは、自動操舵による自動走行とユーザーの手動操舵による手動走行とを切り替え可能な作業車両の走行を制御するプログラムである。前記走行制御プログラムは、前記作業車両に所定の動作を実行させる操作具に対するユーザー操作を受け付けることと、前記操作具に対する前記ユーザー操作に応じた動作を前記作業車両に実行させることと、前記作業車両が自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替えることと、前記作業車両の設定情報及び作業情報の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動走行を手動走行に適切に切り替えることが可能な走行制御方法、走行制御システム、及び走行制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る作業車両の構成を示すブロック図である。
図2A図2Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す側面図である。
図2B図2Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す上面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る操作装置の一例を示す外観図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る作業車両の目標経路の一例を示す図である。
図5A図5Aは、本発明の実施形態に係る経路生成方法の一例を示す図である。
図5B図5Bは、本発明の実施形態に係る経路生成方法の一例を示す図である。
図5C図5Cは、本発明の実施形態に係る経路生成方法の一例を示す図である。
図6A図6Aは、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される作業画面の一例を示す図である。
図6B図6Bは、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される作業画面の一例を示す図である。
図7A図7Aは、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される設定画面の一例を示す図である。
図7B図7Bは、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される設定画面の一例を示す図である。
図7C図7Cは、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される設定画面の一例を示す図である。
図8A図8Aは、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される作業画面の一例を示す図である。
図8B図8Bは、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される作業画面の一例を示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る作業車両において実行される走行制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される作業画面の一例を示す図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される作業画面の一例を示す図である。
図12図12は、本発明の他の実施形態に係る操作装置に表示される設定画面の一例を示す図である。
図13図13は、本発明の他の実施形態に係る操作装置に表示される設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
本発明の実施形態に係る自動走行システムは、作業車両10と、衛星(不図示)と、基地局(不図示)とを含んでいる。本実施形態では、作業車両10が田植機である場合を例に挙げて説明する。なお、他の実施形態として、作業車両10は、トラクタ、コンバイン、建設機械、又は除雪車などであってもよい。作業車両10は、圃場F(図4参照)内をオペレータ(ユーザー)の操作に応じて、目標経路Rに従って走行しながら所定の作業(例えば植付作業)を行う。具体的には、作業車両10は、自動操舵に応じて目標経路Rを直進走行し、オペレータによる手動操舵(運転操作)に応じて旋回走行する。作業車両10は、直進経路の自動走行と旋回経路の手動走行とを切り替えながら圃場F内を走行して作業を行う。目標経路Rは、オペレータの操作に基づいて予め生成され、経路データとして記憶されてもよい。
【0013】
作業車両10は、例えば図4に示す圃場Fにおいて、直進走行と旋回走行とを繰り返しながら作業が終了するまで走行する。複数の直進経路のそれぞれは互いに略平行である。図4に示す目標経路Rは一例であって、目標経路Rは、作業車両10のサイズ、作業機14のサイズ、作業内容、圃場Fの形状などに応じて適宜決定される。
【0014】
なお、自動走行システムは、オペレータが操作する操作端末(タブレット端末、スマートフォンなど)を含んでもよい。前記操作端末は、携帯電話回線網、パケット回線網、無線LANなどの通信網を介して作業車両10と通信可能である。例えばオペレータは、前記操作端末において、各種情報(作業車両情報、圃場情報、作業情報など)などを登録する操作を行う。また、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、前記操作端末に表示される走行軌跡により、作業車両10の走行状況、作業状況などを把握することが可能である。
【0015】
[作業車両10]
図1及び図2に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、走行装置13、作業機14、通信部15、測位装置16、操作装置17などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、走行装置13、作業機14、測位装置16、操作装置17などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。また、車両制御装置11及び操作装置17は、無線通信可能であってもよい。
【0016】
初めに、作業車両10の一例である田植機について、図2A及び図2Bを参照して説明する。図2Aは作業車両10(田植機)の側面図であり、図2Bは作業車両10の平面図である。作業車両10は、車体部30、左右一対の前輪132、左右一対の後輪133、作業機14(植付部)などを備える。
【0017】
車体部30の前部に配置されたボンネット134の内部には、エンジン(駆動部)131が配置されている。エンジン131が発生させた動力はミッションケース135を介して前輪132及び後輪133に伝達される。ミッションケース135を介して伝達された動力は、車体部30の後部に配置されたPTO軸37を介して作業機14にも伝達される。なお、PTO軸37には、PTOクラッチ(作業クラッチ)(不図示)を介して動力が伝達されるように構成されている。車体部30の前後方向で前輪132と後輪133の間の位置には、オペレータが搭乗する運転座席138が設けられている。
【0018】
運転座席138の前方には、ハンドル137(図3参照)、変速レバー13L(図3参照)、PTOクラッチレバー14L(図2B参照)等の操作具が配置されている。ハンドル137は、作業車両10の舵角を変更するための操作具である。変速レバー13Lは、「前進」、「後進」、「中立」、「苗継」のポジションを少なくとも選択可能に構成されている。変速レバー13Lが「前進」の位置に操作されると、作業車両10を前進させる方向に前輪132及び後輪133が回転するように動力が伝達される。変速レバー13Lが「後進」の位置に操作されると、作業車両10を後進させる方向に前輪132及び後輪133が回転するように動力が駆動される。主変速レバーが「中立」の位置に操作されると、前輪132及び後輪133に対する動力の伝達が遮断される。変速レバー13Lが「苗継」の位置に操作されると、前輪132、後輪133及びPTO軸37に対する動力の伝達が遮断される。また、PTOクラッチレバー14Lが操作されることで、PTOクラッチがPTO軸37(即ち作業機14)へ動力を伝達する伝達状態と、PTOクラッチがPTO軸37(即ち作業機14)へ動力を伝達しない遮断状態と、を切り替えることができる。
【0019】
作業機14は、車体部30の後方に昇降リンク機構31を介して連結されている。昇降リンク機構31は、トップリンク39及びロワーリンク38等を含む平行リンク構造により構成されている。ロワーリンク38には昇降シリンダ32が連結されている。昇降シリンダ32を伸縮させることにより、作業機14全体を上下に昇降させることができる。これにより、作業機14を下降させて植付作業を行う下降位置と、作業機14を上昇させて植付作業を行わない上昇位置との間で作業機14の高さを変更させることができる。なお、昇降シリンダ32は油圧シリンダであるが、電動シリンダを用いてもよい。また、シリンダ以外のアクチュエータにより作業機14を昇降させる構成であってもよい。
【0020】
作業機14(植付部)は、植付入力ケース33、複数の植付ユニット34、苗載台35、複数のフロート36などを備えている。
【0021】
各植付ユニット34は、植付伝動ケース41及び回転ケース42を備えている。植付伝動ケース41には、PTO軸37及び植付入力ケース33を介して動力が伝達される。各植付伝動ケース41には、車幅方向の両側に回転ケース42が取り付けられている。各回転ケース42には、作業車両10の進行方向に並べて2つの植付爪43が取り付けられている。これら2つの植付爪43により1条分の植付が行われる。
【0022】
図2Aに示すように、苗載台35は、植付ユニット34の前方上方に配置されており、苗マットを載置可能に構成されている。苗載台35は、往復で横送り移動可能(横方向にスライド可能)に構成されている。また、苗載台35は、苗載台35の往復移動端で苗マットを間欠的に下方に縦送り搬送可能に構成されている。この構成により、苗載台35は、苗マットの苗を各植付ユニット34に対して供給できるようになっている。こうして、作業車両10では、各植付ユニット34に対して苗を順次供給し、連続的に苗の植付けを行うことができる。
【0023】
図2Aに示すフロート36は、作業機14の下部に設けられ、その下面が地面に接地することができるように配置されている。フロート36が地面に接地することにより、苗を植え付ける前の田面が整地される。また、フロート36には、フロート36の揺動角を検出するフロートセンサ(不図示)が設けられている。フロート36の揺動角は、田面と作業機14との距離に対応している。作業車両10は、フロート36の揺動角に基づいて昇降シリンダ32を動作させて作業機14を上下に昇降させることにより、作業機14の対地高さを一定に保つことができる。
【0024】
予備苗台19は、ボンネット134の車幅方向外側に配置されており、予備のマット苗を収容した苗箱を搭載可能である。左右一対の予備苗台19の上部同士は、上下方向及び車幅方向に延びる連結フレーム18によって互いに連結されている。連結フレーム18の車幅方向の中央には、測位装置16が配置されている。
【0025】
測位装置16は、図1に示すように、測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164などを備える。
【0026】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるための測位制御プログラム、及び測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記測位制御プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部162に記憶される。なお、前記測位制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網を介して測位装置16にダウンロードされて記憶部162に記憶されてもよい。
【0027】
通信部163は、測位装置16を有線又は無線で通信網に接続し、通信網を介して基地局サーバーなどの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0028】
測位用アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0029】
測位制御部161は、測位用アンテナ164が衛星から受信するGNSS信号に基づいて作業車両10の現在位置を算出する。例えば、作業車両10が圃場Fを自動走行する場合に、測位用アンテナ164が複数の衛星のそれぞれから発信される電波(発信時刻、軌道情報など)を受信すると、測位制御部161は、測位用アンテナ164と各衛星との距離を算出し、算出した距離に基づいて作業車両10の現在位置(緯度及び経度)を算出する。また、測位制御部161は、作業車両10に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置を算出する、リアルタイムキネマティック方式(RTK-GNSS測位方式(RTK方式))による測位を行ってもよい。このように、作業車両10は、RTK方式による測位情報を利用して自動走行を行う。なお、作業車両10の現在位置は、測位位置(例えば測位用アンテナ164の位置)と同一位置であってもよいし、測位位置からずれた位置であってもよい。
【0030】
通信部15は、作業車両10を有線又は無線で通信網に接続し、通信網を介して外部機器(操作端末など)との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0031】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に自動走行処理及び手動走行処理を含む走行制御処理(図9参照)を実行させるための走行制御プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記走行制御プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記走行制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作装置17において生成される目標経路Rのデータが記憶されてもよい。
【0032】
操作装置17は、作業車両10に搭乗するオペレータが操作する機器であり、各種情報を表示したり、オペレータの操作を受け付けたりする。具体的には、操作装置17は、各種設定画面を表示させてオペレータから各種の設定操作を受け付けたり、走行中の作業車両10に関する情報を表示させたりする。
【0033】
車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。また、車両制御装置11は、前記CPUで前記走行制御プログラムに従った各種の処理を実行する。
【0034】
図1に示すように、車両制御装置11は、走行処理部111、受付処理部112、表示処理部113、動作処理部114、判定処理部115、及び設定処理部116などの各種の処理部を含む。なお、車両制御装置11は、前記CPUで前記走行制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記走行制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0035】
走行処理部111は、作業車両10の走行を制御する。具体的には、走行処理部111は、作業車両10の走行モードが手動走行(手動走行モード)の場合に、オペレータの操作(手動操舵)に基づいて作業車両10を手動走行させる。例えば、走行処理部111は、オペレータによるハンドル操作、変速操作、シフト操作、アクセル操作、ブレーキ操作などの運転操作に対応する操作情報を取得し、当該操作情報に基づいて走行装置13に走行動作を実行させる。
【0036】
また、走行処理部111は、作業車両10の走行モードが自動走行(自動走行モード)の場合に、測位制御部161により測位される作業車両10の現在位置を示す位置情報(測位情報)に基づいて作業車両10を自動走行させる。例えば、走行処理部111は、作業車両10が自動走行開始条件を満たし、オペレータから走行開始指示を取得すると、前記測位情報に基づいて作業車両10の自動走行を開始させる。また、走行処理部111は、予め生成された目標経路R(直進経路)に従って作業車両10を自動走行させる。
【0037】
ここで、本実施形態に係る自動走行の具体例について、図5及び図6を参照しつつ説明する。本実施形態では、図4に示す圃場Fにおいて、直進経路を作業車両10に自動走行させる。例えば、自動走行用の目標経路Rは、操作装置17において生成される。
【0038】
先ず、オペレータは、目標経路Rである直進経路を生成するための基準線L1を設定する。例えば、オペレータは、圃場F内の任意の位置(例えば外周端部)において、作業車両10に走行及び作業させたい方向(目標方向)に、作業車両10を手動走行させる。具体的には、オペレータは、作業車両10が作業領域で作業する際の作業方向(例えば植付方向)に平行な方向に作業車両10を手動操舵により直進走行させる。そして、オペレータは、作業車両10を意図した目標方向に手動走行させているときに任意の位置(例えば、作業領域の前後端部)で操作装置17を2回操作(例えばタッチ操作)する。操作装置17は、オペレータの1回目の操作により作業車両10の位置(A点)を登録し、オペレータの2回目の操作により作業車両10の位置(B点)を登録する。操作装置17は、A点及びB点の位置情報を取得すると、A点及びB点を通る直線を基準線L1として設定する(図5A参照)。なお、操作装置17は、A点を登録してから作業車両10が所定距離(例えば5m)走行した場合にB点を登録可能としてもよい。これにより、より精度の高い基準線L1を設定することができる。
【0039】
操作装置17は、基準線L1と、基準線L1に平行な複数の直線とを含む走行経路(目標経路R)を生成する。例えば、操作装置17は、予め設定される作業幅(作業機14の横幅)及びラップ幅(隣接する作業済領域と重なる幅)に基づいて複数の平行な直線を、基準線L1を中心として左右に等間隔に生成する(図5B参照)。操作装置17は、生成した目標経路Rを記憶部12に登録するとともに、操作表示部171に表示させる。
【0040】
目標経路Rが生成された後、オペレータは、圃場F内において作業車両10を自動操舵により直進走行させる場合に、操作装置17に表示された目標経路Rを見ながら、作業車両10の方向(方位)が基準線L1の方向に対して所定範囲(所定方位)以内になる(自動走行開始条件を満たす)ように、手動操舵により作業車両10を移動させる(図5C参照)。
【0041】
図6Aには、作業車両10が自動走行開始条件を満たし自動走行可能な状態になったことを示す操作画面を示している。操作装置17は、作業車両10が自動走行開始条件を満たすと、図6Aに示す操作画面を操作表示部171に表示させる。作業車両10が自動走行可能な状態になると、オペレータは、操作表示部171の自動走行ボタン(不図示)を押下して走行開始指示を行う。操作装置17がオペレータから走行開始指示を受け付けると、車両制御装置11の走行処理部111は、作業車両10を、現在位置P0に最も近い直進経路に沿うように作業車両10の自動操舵を開始する(図5C参照)。これにより、走行処理部111は、作業車両10を直進経路に沿って自動操舵により自動走行させる。
【0042】
図6Bには、作業車両10が自動走行中の表示画面を示している。操作装置17は、作業車両10が自動走行を開始すると、図6Bに示す表示画面を操作表示部171に表示させる。操作装置17は、表示画面において、直進経路、作業済領域(作業状況)などを表示させる。
【0043】
以上のように、操作装置17は自動走行用の目標経路Rを生成し、車両制御装置11は目標経路Rに従って作業車両10に自動走行を実行させる。
【0044】
また、操作装置17は、作業車両10が自動操舵により直進走行して基準線L1のB点に対応する終端Pe(基準線L1に対するB点を通る垂線と直進経路(直線)との交点)(図5C参照)に近づくと、終端Peに近づいたことを示す案内情報をオペレータに報知(メッセージ表示、音声案内など)する。オペレータは案内情報を確認すると自動操舵を終了させる。
【0045】
また、走行処理部111は、作業車両10が終端Pe(直進経路の終端)に到達すると走行モードを手動走行に切り替える。走行処理部111は、オペレータの操作に応じて走行モードを手動走行に切り替える。走行モードが手動走行に切り替えられると、例えばオペレータは、手動操舵により作業車両10を旋回走行(手動走行)させる。
【0046】
以上のようにして、走行処理部111は、作業車両10を、自動操舵により直進経路(目標経路R)を自動走行させ、手動操舵により旋回経路を手動走行させる。
【0047】
ところで、従来、作業車両10が自動走行中に操向装置(例えばハンドル137)がオペレータにより操作された場合に、自動走行を手動走行に切り替える技術が知られている。これにより、自動走行から手動走行に切り替える操作を簡略化することができる。しかし、従来の技術は、操向装置の操向状態を検出することにより自動走行を手動走行に切り替える構成のため、作業車両10が自動走行中にオペレータが意図しない場所で操向装置の操向方向が変化した場合に手動走行に切り替わってしまう問題が生じる。これに対して、本実施形態に係る作業車両10は、以下に示すように、自動走行を手動走行に適切に切り替えることが可能な構成を備えている。
【0048】
具体的には、受付処理部112は、作業車両10に所定の動作を実行させる操作具に対するオペレータの操作を受け付ける。前記操作具には、ハンドル137(操向装置)、変速レバー13L(変速装置)、PTOクラッチレバー14L、昇降レバー(昇降装置)、シフトレバー、アクセルなどが含まれる。
【0049】
動作処理部114は、作業車両10に前記操作具に対するオペレータの操作に応じた動作を実行させる。例えば、動作処理部114は、ハンドル137に対するオペレータの操作(操向操作)に応じて作業車両10の走行方向(舵角)を制御する。また例えば、動作処理部114は、PTOクラッチレバー14Lに対するオペレータの操作(入り操作、切り操作)に応じて作業機14への動力の伝達を制御する。また例えば、動作処理部114は、昇降レバーに対するオペレータの操作(昇降操作)に応じて作業機14の昇降動作を制御する。
【0050】
走行処理部111は、前記操作具に対するオペレータの操作に基づいて作業車両10の自動走行及び手動走行を切り替える。具体的には、走行処理部111は、前記操作具に対するオペレータの第1操作が受け付けられた場合に作業車両10の自動走行を開始させ、前記操作具に対するオペレータの第2操作が受け付けられた場合に作業車両10の自動走行を停止させて手動走行に切り替える。例えば、オペレータがPTOクラッチレバー14LによりPTOクラッチを入れる操作(第1操作の一例)を行って受付処理部112が当該操作を受け付けると、走行処理部111は、作業車両10に自動走行を開始させる。また例えば、オペレータがハンドル137を所定量操舵(第2操作の一例)して受付処理部112が当該操作を受け付けると、走行処理部111は、作業車両10の自動走行を停止させて手動走行に切り替える。
【0051】
このように、オペレータがPTOクラッチを入れる操作を行うと、動作処理部114が作業機14を駆動状態(伝達状態)に移行させるとともに、走行処理部111が作業車両10の自動走行を開始させる。一方、オペレータがハンドル137を所定量操舵すると、動作処理部114が作業車両10の走行方向を変更させるとともに、走行処理部111が作業車両10を手動走行(自動走行を停止)させる。
【0052】
車両制御装置11は、オペレータから所定の操作具に対する第1操作を受け付けた場合に、作業車両10に当該操作具に対応する第1動作を実行させるとともに自動走行を開始させ、オペレータから当該操作具に対する第2操作を受け付けた場合に、作業車両10に当該操作具に対応する第2動作を実行させるとともに手動走行を開始(自動走行を停止)させる。すなわち、本実施形態に係る作業車両10では、前記操作具が、当該操作具が本来的に担う動作の指示を受け付ける機能と、自動走行及び手動走行を切り替える指示を受け付ける機能(走行モード切替機能)とを兼ね備えてもよい。また、車両制御装置11は、前記操作具に対するオペレータの操作に連動させて、自動走行及び手動走行を切り替えてもよい。
【0053】
上記構成によれば、例えば、オペレータは、作業経路(直進経路)において作業を行う場合にPTOクラッチレバー14Lを操作することにより、手動走行から自動走行への切り替えと、作業機14による作業とを行うことができる。また、オペレータは、非作業経路(旋回経路)において作業車両10を旋回走行させる場合にハンドル137を操作することにより、自動走行から手動走行への切り替えと、作業車両10の旋回動作とを行うことができる。よって、例えば、オペレータが自動走行を開始及び終了させるボタンを押下する操作を省略することができるため、操作性を向上させることができる。
【0054】
次に、自動走行から手動走行に切り替えるための前記第2操作の具体的構成について説明する。オペレータは、作業車両10を自動走行から手動走行に切り替える際に前記第2操作を行う。
【0055】
具体的には、判定処理部115は、作業車両10が自動走行中にオペレータによる前記第2操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えたか否かを判定する。走行処理部111は、判定処理部115により前記操作具に関する変化量が閾値を超えたと判定された場合に、自動走行を手動走行に切り替える。
【0056】
例えば、作業車両10が目標経路Rの直進経路を自動走行して直進経路の終端Pe(図5C参照)に近付いて案内情報を報知すると、オペレータは車速を減速させてハンドル137を、次の直進経路の方に操舵する。判定処理部115は、ハンドル137の操向方向及び操作時間の変化量が閾値を超えたか否かを判定する。
【0057】
例えば、走行処理部111は、ハンドル137に対するオペレータによる操向方向が自動走行に応じて自動操舵される操向方向とは異なる方向であって、当該異なる方向への操舵が所定時間経過した場合に、ハンドル137の変化量が閾値を超えたと判定する。
【0058】
ここで、設定処理部116は、作業車両10の設定情報に基づいて前記変化量の閾値を設定する。具体的には、設定処理部116は、作業車両10の車速に応じて前記閾値を設定する。例えば、設定処理部116は、作業車両10の車速が高速の場合に第1閾値を設定し、作業車両10の車速が低速の場合に前記第1閾値よりも小さい第2閾値を設定する。作業車両10の車速は、本発明の設定情報の一例である。
【0059】
この場合、作業車両10が高速(第1車速)で自動走行しているときは、オペレータの操作に応じたハンドル137の変化量が前記第1閾値を超えた場合に、走行処理部111は、自動走行を手動走行に切り替える。これにより、例えば、作業車両10が目標経路Rの直進経路を作業しながら自動走行している状態では、オペレータがハンドル137を多少操舵したとしても、手動走行に切り替わることなく自動走行が維持される。
【0060】
これに対して、作業車両10が低速(第2車速)で自動走行しているときは、オペレータの操作に応じたハンドル137の変化量が前記第2閾値(第2閾値<第1閾値)を超えた場合に、走行処理部111は、自動走行を手動走行に切り替える。これにより、例えば、目標経路Rの直進経路の終端Peに近付いてオペレータの減速操作(又は自動減速処理)により車速が低速に切り替えられると、オペレータがハンドル137を少し操舵することによって、自動走行から手動走行に切り替えることができる。ハンドル137の変化量は、本発明の操作具の変化量の一例である。
【0061】
このように、車両制御装置11は、自動走行を手動走行に切り替えるための前記変化量の閾値を、一定値に固定することなく車速に応じて変更する構成を備えている。この構成によれば、作業車両10が目標経路Rに従って作業経路を自動走行しながら作業しているときにオペレータの意図しない場所で手動走行に切り替わることを防ぐことができる。また、上記構成によれば、作業車両10を次の作業経路に移動させるためにオペレータが車速を減速させて旋回操作(ハンドル137の操舵)を行うことにより、自動的に手動走行に切り替えることができる。よって、自動走行を手動走行に適切に切り替えることができ、また走行モードを切り替える際の操作性を向上させることができる。
【0062】
他の実施形態として、設定処理部116は、作業車両10の車速が遅いほど前記変化量の閾値を小さい値に設定してもよい。例えば、設定処理部116は、作業車両10の車速が遅くなるほど段階的又は漸次的に小さくなるように前記閾値を設定してもよい。
【0063】
なお、ハンドル137の変化量は、ハンドル137の操向方向、操作時間、操作量(操舵角)、及び操作トルクの少なくともいずれかの変化量であってもよい。例えば、作業車両10が高速で自動走行中にオペレータによるハンドル137の操作量(操舵角)が第1閾値を超えた場合に、自動走行を停止又は手動走行に切り替え、作業車両10が低速で自動走行中にオペレータによるハンドル137の操作量(操舵角)が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える。
【0064】
また、例えば、作業車両10が高速で自動走行中にオペレータによるハンドル137の操作トルクが第1閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替え、作業車両10が低速で自動走行中にオペレータによるハンドル137の操作トルクが前記第1閾値よりも小さい第2閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える。これにより、例えば、目標経路Rの直進経路を作業しながら自動走行している状態では、オペレータがハンドル137を軽い力(操作荷重)で操舵したとしても、手動走行に切り替わることなく自動走行が維持される。これに対して、例えば、目標経路Rの直進経路の終端Peに近付いてオペレータの減速操作などにより車速が低速に切り替えられると、オペレータがハンドル137を軽い力で操舵することによって、自動走行から手動走行に切り替えることができる。なお、操作トルクにより走行モードを切り替える構成の場合、車両制御装置11は、操作トルクを検出するトルクセンサーの検出結果を利用して走行モードの切替処理を実行することができる。
【0065】
車両制御装置11は、ハンドル137の操向方向、操作時間、操作量(操舵角)、及び操作トルクのいずれか1つの情報の変化量及び当該情報に対応する閾値に基づいて、自動走行を手動走行に切り替えてもよいし、これらの情報のうち複数の情報の変化量及び当該各情報に対応する各閾値に基づいて、自動走行を手動走行に切り替えてもよい。なお、本発明の変化量は、操作具の物理的な変化量(移動量など)であってもよいし、操作具による前記情報(操向方向、操作時間、操作量、操作トルク)の変化量であってもよい。
【0066】
他の実施形態として、前記操作具は、変速レバー13L又は変速ペダル(不図示)であってもよい。具体的には、車両制御装置11は、変速レバー13Lの変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替えてもよい。例えば、車両制御装置11は、変速レバー13Lの操作量又は変速レバー13Lによる車速の減速量が、当該車速に応じた閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替えてもよい。これにより、例えば作業車両10を高速から中速に減速させた場合は自動走行を維持し、作業車両10を高速から低速に減速させた場合に手動走行に切り替えることができる。また他の実施形態として、車両制御装置11は、作業車両10の車速が所定車速以下なったことを条件として自動走行を手動走行に切り替えてもよい。変速レバー13Lは、本発明の操作具の一例であり、変速レバー13Lの変化量は、本発明の操作具の変化量の一例である。
【0067】
また、他の実施形態として、車両制御装置11は、作業機14の昇降レバーの変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替えてもよい。例えば、車両制御装置11は、昇降レバーの操作量又は昇降レバーによる作業機14の下降量が、車速に応じた閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替えてもよい。これにより、例えば作業車両10が高速で作業機14を下降させた場合は自動走行を維持し、作業車両10が低速で作業機14を下降させた場合に手動走行に切り替えることができる。昇降レバーは、本発明の操作具の一例であり、昇降レバーの変化量(作業機14の昇降量)は、本発明の操作具の変化量の一例である。
【0068】
以上のようにして、走行モードが自動走行から手動走行に切り替えられると、オペレータは、手動操舵により作業車両10を旋回走行(手動走行)させる。その後、オペレータが次の作業経路(直進経路)の作業開始位置に作業車両10を位置合わせしてPTOクラッチレバー14LによりPTOクラッチを入れる操作を行うと、動作処理部114が作業機14を駆動状態(伝達状態)に移行させるとともに、走行処理部111が自動走行に切り替えて作業車両10を目標経路Rに従って自動走行させる。すなわち、走行処理部111は、作業車両10が手動走行中に作業機14を駆動させる操作を受け付けた場合に、手動走行を自動走行に切り替える。
【0069】
ここで、手動走行から自動走行に切り替えた場合に、設定処理部116は、前記変化量の閾値を作業車両10の車速に応じて変更する。具体的には、設定処理部116は、手動走行に切り替えた際の前記第2閾値を、作業経路を高速走行する際の前記第1閾値に変更する。他の実施形態として、設定処理部116は、自動走行に切り替えた後の作業車両10の車速の増速量に応じて、前記第2閾値から前記第1閾値まで段階的又は漸次的に大きくなるように変更してもよい。
【0070】
なお、走行処理部111は、オペレータからPTOクラッチを入れる操作を受け付けた場合に、作業車両10を予め設定された距離(略6m未満)走行させ、さらに自動走行に切り替えることを示す情報を報知して一定時間(1秒程度)経過した後に、自動走行を開始させてもよい。これにより、オペレータは、自動走行が開始されるまでの間、作業車両10の位置、方位などを修正することができるため、自身の安全性を確保し易くなり作業性及び安全性を向上させることができる。
【0071】
他の実施形態として、受付処理部112は、前記操作具に対するオペレータの操作に応じて所定の動作を実行させる第1機能と、前記操作具に対するオペレータの操作に応じて自動走行及び手動走行を切り替える第2機能(走行モード切替機能)とを連動させるか否かを設定する設定操作をオペレータから受け付けてもよい。すなわち、作業車両10は、前記操作具に対する操作に、前記走行モード切替機能を連動させるか否かを、オペレータが選択可能な構成であってもよい。
【0072】
例えば、オペレータが操作装置17の操作表示部171に表示されるメニュー画面(不図示)において設定メニューを選択すると、表示処理部113は、図7Aに示す設定画面P1を表示させる。設定画面P1に表示される複数の設定項目のうち「本機操作オート連動」の項目K1が、前記走行モード切替機能を連動させるか否かを設定するための項目である。項目K1が「OFF」の場合、前記操作具に対する操作に、前記走行モード切替機能が連動しない状態になる。この場合は、オペレータは、自動走行ボタンを押下して自動走行を開始させる。
【0073】
前記操作具に対する操作に前記走行モード切替機能を連動させる場合、オペレータは、設定画面P1において項目K1を選択(決定ボタンを押下)する。オペレータが項目K1を選択すると、表示処理部113は、図7Bに示す設定画面P2を表示させる。オペレータが設定画面P2において「ON」を選択すると、受付処理部112は、前記走行モード切替機能をONに設定し、表示処理部113は、設定画面P1の項目K1を「ON」に更新する(図7C参照)。これにより、前記操作具に対する操作に、前記走行モード切替機能が連動した状態になる。
【0074】
項目K1が「ON」に設定されると、前記操作具に対する操作に、前記走行モード切替機能が連動した状態になる。この場合、オペレータがPTOクラッチレバー14Lを入れる操作を行うことにより自動走行が開始され、オペレータがハンドル137を前記変化量が前記閾値を超えるまで操向操作することにより手動走行が開始(自動走行が停止)される。
【0075】
上記構成によれば、オペレータは、前記操作具に対する操作に、前記走行モード切替機能を連動させるか否かを選択することができる。例えば、自動走行ボタンにより自動走行の開始指示を行うことを希望するオペレータは、項目K1を「OFF」(図7A参照)にして前記走行モード切替機能を連動させない設定にすることができる。一方、前記操作具の操作に連動させて自動走行の開始指示を行うことを希望するオペレータは、項目K1を「ON」(図7C参照)にして前記走行モード切替機能を連動させる設定にすることができる。
【0076】
また、表示処理部113は、前記操作具に対する操作に前記走行モード切替機能が連動しているか否かを示す情報を作業画面P3に表示させてもよい。図8A及び図8Bには、操作表示部171に表示される作業画面P3の一例を示している。設定画面P1の「本機操作オート連動」が「ON」(図7C参照)に設定され、前記走行モード切替機能が連動している場合、表示処理部113は、図8Aに示すように、作業車両10が走行中に、作業画面P3において、前記走行モード切替機能が連動していることを示すアイコン画像C1を表示させる。一方、設定画面P1の「本機操作オート連動」が「OFF」(図7A参照)に設定され、前記走行モード切替機能が連動していない場合、表示処理部113は、図8Bに示すように、作業車両10が走行中に、作業画面P3において、アイコン画像C1を表示させない。なお、表示処理部113は、前記走行モード切替機能が連動しているときにアイコン画像C1を点灯又は点滅させ、前記走行モード切替機能が連動していないときにアイコン画像C1を消灯(グレーアウト)させてもよい。また、表示処理部113は、前記走行モード切替機能が連動しているか否かに応じてアイコン画像C1の表示色を変更してもよい。
【0077】
また、受付処理部112は、作業画面P3(図8A及び図8B参照)において、前記走行モード切替機能を連動させるか否かをオペレータが選択する操作を受け付けてもよい。例えば、表示処理部113は、作業画面P3において、前記走行モード切替機能を連動させるか否かをオペレータが選択する選択部K3を表示させる。作業画面P3において、オペレータが選択部K3を選択すると、表示処理部113は、図7Bに示す設定画面P2を表示させて、オペレータの選択操作を受け付ける。オペレータは、作業画面P3において、作業状況を確認しながら、前記走行モード切替機能の連動をON/OFFすることができる。
【0078】
このように、受付処理部112は、作業車両10の作業開始前及び作業開始後のいずれにおいても、前記走行モード切替機能を連動させるか否かを選択する設定操作を受け付け可能な構成であってもよい。ここで、圃場F全体を作業する場合、中央領域と枕地領域とで領域を分けて作業を行う必要がある。このような場合において、枕地領域における作業は畦に近いため精度の高い作業が求められる。この点、上記構成によれば、中央領域についてのみ前記走行モード切替機能の連動をONにし、枕地領域については前記走行モード切替機能の連動をOFFにすることにより、オペレータの操作性を向上させることができる。
【0079】
また、作業車両10は、前記設定操作を受け付ける物理スイッチ(不図示)を備えてもよい。これにより、オペレータは前記設定操作用の操作部を容易に把握することできるため、前記設定操作の操作性を向上させることができる。
【0080】
なお、車両制御装置11は、自動走行を開始するための条件判定を行い、当該条件を満たした場合に報知処理を行ってもよい。また、車両制御装置11は、判定結果に基づいてオペレータによる自動走行開始操作を待つ準備モードと、オペレータによる自動走行開始操作を待たずに自動的に自動走行を開始する自動走行優先モードとを備え、オペレータから準備モード及び自動走行優先モードの選択操作を受け付けてもよい。この構成によれば、オペレータが自動走行優先モードに設定した場合、所定の条件が満たされ次第、自動的に自動走行が開始されるため、オペレータが自動走行開始操作を行う必要がなく操作性を向上させることができる。また、オペレータが準備モードに設定した場合、前記走行モード切替機能を連動させることにより、オペレータの好みに合せた作業を行うことができるためより作業性を向上させることができる。
【0081】
[走行制御処理]
以下、図9を参照しつつ、車両制御装置11によって実行される前記走行制御処理の一例について説明する。なお、本発明は、車両制御装置11が前記走行制御処理の一部又は全部を実行する走行制御方法の発明、又は、当該走行制御方法の一部又は全部を車両制御装置11に実行させるための走行制御プログラムの発明として捉えてもよい。また、一又は複数のプロセッサーが前記走行制御処理を実行してもよい。
【0082】
以下では、本発明の操作具がPTOクラッチレバー14L及びハンドル137であり、PTOクラッチレバー14L及びハンドル137に前記走行モード切替機能が連動(「本機操作オート連動:ON」に設定)(図7C参照)されている場合を例に挙げる。
【0083】
先ずステップS1において、車両制御装置11は、作業車両10が自動走行可能な状態であるか否かを判定する。例えば、車両制御装置11は、作業車両10の方位が所定方位内であることなどの自動走行開始条件を満たす場合に、作業車両10が自動走行可能な状態であると判定する。車両制御装置11は、作業車両10が自動走行可能な状態であると判定すると(S1:Yes)、処理をステップS2に移行させる。車両制御装置11は、作業車両10が自動走行可能な状態になるまで待機する(S1:No)。なお、ステップS1では、作業車両10は、PTOクラッチが切れた状態(作業機14への動力が遮断された状態)でオペレータの手動操舵に従って自動走行開始条件を満たす位置に移動する。
【0084】
また、作業車両10が自動走行可能な状態である場合(S1:Yes)、車両制御装置11は、自動走行が可能であることを示すメッセージを操作表示部171に表示させてもよい(図6A参照)。これにより、オペレータは、作業車両10が自動走行可能であることを認識することができる。
【0085】
ステップS2において、車両制御装置11は、オペレータからPTOクラッチレバー14LによりPTOクラッチを入れる操作を受け付けたか否かを判定する。車両制御装置11は、PTOクラッチを入れる操作を受け付けると(S2:Yes)、処理をステップS3に移行させる。一方、車両制御装置11は、オペレータからPTOクラッチを入れる操作を受け付けない場合(S2:No)、処理をステップS6に移行させる。
【0086】
ステップS3において、車両制御装置11は、目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させる。目標経路Rは、例えば、オペレータの操作により登録されたA点及びB点を通る基準線L1に平行な直進経路であり、操作装置17において生成される。車両制御装置11は、オペレータからPTOクラッチを入れる操作を受け付けた場合に、作業車両10を、目標経路Rに含まれる複数の直進経路のうち現在位置P0に最も近い直進経路に沿うように自動操舵を開始する(図5C参照)。これにより、車両制御装置11は、作業車両10を直進経路に沿って自動操舵により自動走行させるとともに、作業機14を駆動状態(作業機14への動力が伝達された状態)にして作業(例えば植付作業)を実行させる。
【0087】
次にステップS4において、車両制御装置11は、オペレータからハンドル137の操向操作(操舵)を受け付けたか否かを判定する。車両制御装置11は、オペレータからハンドル137の操向操作を受け付けると(S4:Yes)、処理をステップS5に移行させる。例えば、オペレータは、作業車両10が直進経路の終端Pe(旋回経路の始端)(図5C参照)に近付くと、車速を減速させてハンドル137を次の直進経路の方に操舵する。一方、車両制御装置11は、オペレータからハンドル137の操向操作を受け付けない場合(S4:No)、処理をステップS3に移行させる。車両制御装置11は、オペレータからハンドル137の操向操作を受け付けるまで自動走行処理を継続する(S4:No)。
【0088】
ステップS5において、車両制御装置11は、ハンドル137の変化量が閾値を超えたか否かを判定する。例えば、車両制御装置11は、ハンドル137の操向方向及び操作時間の変化量が、作業車両10の車速に応じて設定された閾値を超えたか否かを判定する。ここで、車両制御装置11は、作業車両10の車速が高速の場合に第1閾値を設定し、作業車両10の車速が低速の場合に前記第1閾値よりも小さい第2閾値を設定する。また、車両制御装置11は、作業車両10の車速が遅いほど前記閾値を小さい値に設定してもよい。
【0089】
車両制御装置11は、ハンドル137の変化量が車速に応じた閾値(第1閾値又は第2閾値)を超えた場合(S5:Yes)、処理をステップS6に移行させる。一方、車両制御装置11は、ハンドル137の変化量が車速に応じた閾値を超えない場合(S5:No)、処理をステップS3に移行させる。車両制御装置11は、ハンドル137の変化量が車速に応じた閾値を超えるまで自動走行処理を継続する(S5:No)。
【0090】
ステップS6において、車両制御装置11は、自動走行から手動走行に切り替える。例えば、車両制御装置11は、作業車両10が高速で自動走行中にハンドル137の変化量が第1閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える。また例えば、車両制御装置11は、作業車両10が低速で自動走行中にハンドル137の変化量が第2閾値(但し、第2閾値<第1閾値)を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える。これにより、例えば、作業車両10が直進経路の終端Peに近付いてオペレータが車速を減速させてハンドル137を次の直進経路の方に操舵することにより、ハンドル137の変化量が第2閾値を超えて、自動走行から手動走行に切り替えられる。
【0091】
上述の各ステップの処理において、車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了した時点(作業終了位置に到達して時点)で前記走行制御処理を終了する。車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了するまでステップS1~S6の処理を繰り返す。
【0092】
以上のようにして、車両制御装置11は、作業車両10に対する前記走行制御処理を実行する。
【0093】
以上説明したように、本実施形態に係る車両制御装置11は、自動操舵による自動走行とユーザーの手動操舵による手動走行とを切り替え可能な作業車両10の走行を制御する。また、車両制御装置11は、作業車両10に所定の動作を実行させる操作具に対するユーザー操作を受け付け、前記操作具に対する前記ユーザー操作に応じた動作を作業車両10に実行させ、作業車両10が自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える。
【0094】
また、車両制御装置11は、作業車両10の設定情報に基づいて前記閾値を設定する。例えば、車両制御装置11は、作業車両10の車速に応じて前記閾値を設定する。他の実施形態として、車両制御装置11は、作業車両10の作業情報に基づいて前記閾値を設定してもよい。具体的には、車両制御装置11は、作業車両10の作業内容、圃場F(作業領域)の状態、作業経路の位置などに基づいて前記閾値を設定してもよい。すなわち、車両制御装置11は、作業車両10の車速、作業車両10の作業内容、作業領域の状態、作業経路の位置の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定する。
【0095】
例えば、車両制御装置11は、田植作業を行う場合のハンドル137の変化量の閾値と、耕耘作業を行う場合のハンドル137の変化量の閾値とを異なる値に設定してもよい。
【0096】
また例えば、車両制御装置11は、圃場Fの耕盤深さに応じて前記閾値を設定してもよい。例えば、車両制御装置11は、耕盤深さが深い場所(作業経路)ではハンドル137の変化量の閾値を大きい値に設定してステアリング操作感度を鈍感にし、耕盤深さが浅い場所(作業経路)ではハンドル137の変化量の閾値を小さい値に設定してステアリング操作感度を敏感にする。また、車両制御装置11は、図10に示すように、前記閾値に対応するステアリング操作感度を敏感に設定するか否かを選択する選択画面P4を表示させてもよい。車両制御装置11は、選択画面P4におけるオペレータの選択操作に応じて前記閾値を設定する。
【0097】
また例えば、車両制御装置11は、圃場Fの暗渠の有無に応じて前記閾値を設定してもよい。例えば、車両制御装置11は、暗渠が存在する場所(作業経路)ではハンドル137の変化量の閾値を大きい値に設定してステアリング操作感度を鈍感にし、暗渠が存在しない場所(作業経路)ではハンドル137の変化量の閾値を小さい値に設定してステアリング操作感度を敏感にする。また、車両制御装置11は、図11に示すように、前記閾値に対応するステアリング操作感度を敏感に設定するか否かを選択する選択画面P5を表示させてもよい。車両制御装置11は、選択画面P5におけるオペレータの選択操作に応じて前記閾値を設定する。
【0098】
また例えば、車両制御装置11は、圃場Fの土性(砂地、粘土など)に応じて前記閾値を設定してもよい。例えば、車両制御装置11は、圃場Fが砂地の場合にはハンドル137の変化量の閾値を小さい値に設定し、圃場Fが粘土の場合にはハンドル137の変化量の閾値を大きい値に設定する。
【0099】
このように、耕盤深さが深い場合、暗渠が存在する場合、土性が粘土質である場合などでは、操舵による車輪にかかる負荷が大きくため、操舵角を大きくしたり、早く操舵したりする必要がある。このため、ハンドル137自身の慣性力も大きくなるため、操舵による車輪にかかる負荷が大きくなる、ハンドル137の変化量の閾値を大きい値に設定することが好ましい。
【0100】
また例えば、車両制御装置11は、苗、肥料、薬剤などの残量に応じて前記閾値を設定してもよい。例えば、車両制御装置11は、前記残量が少ない場合にはハンドル137の変化量の閾値を小さい値に設定し、前記残量が多い場合にはハンドル137の変化量の閾値を大きい値に設定する。
【0101】
前記作業内容、圃場Fの耕盤深さ、圃場Fの暗渠の有無、圃場Fの土性、苗、肥料、薬剤などの残量などの情報は、作業車両10の作業情報の一例である。以上のように、車両制御装置11は、作業車両10の設定情報(例えば車速)に基づいて前記閾値を設定してもよいし、前記作業情報に基づいて前記閾値を設定してもよい。また、車両制御装置11は、前記設定情報及び前記作業情報を組み合わせた情報に基づいて前記閾値を設定してもよい。
【0102】
本実施形態の構成によれば、作業車両10の前記設定情報及び前記作業情報の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定して、作業車両10が自動走行中にユーザー操作に応じた操作具に関する変化量が前記閾値を超えた場合に自動走行を手動走行に切り替えるため、例えば、作業車両10が自動走行中にオペレータが意図しない場所で手動走行に切り替わってしまうことを防ぐことができる。よって、自動走行を手動走行に適切に切り替えることが可能となる。
【0103】
[他の実施形態]
本発明は上述の実施形態に限定されない。以下、本発明の他の実施形態について説明する。
【0104】
車両制御装置11は、前記走行モード切替機能を連動させる操作具をオペレータが選択可能な構成であってもよい。具体的には、車両制御装置11は、設定画面において、前記走行モード切替機能を連動させる前記操作具の種別を選択する操作を受け付ける。例えば、図7Cに示す設定画面P1には、前記走行モード切替機能を連動させる前記操作具を選択するための「連動操作選択」の項目K2が表示される。なお、表示処理部113は、「本機操作オート連動」の項目K1が「ON」に設定された場合に、「連動操作選択」の項目K2を選択可能な状態(アクティブ状態)に表示させてもよい。
【0105】
オペレータが、設定画面P1において項目K2を選択(決定ボタンを押下)すると、表示処理部113は、図12に示す設定画面P6を表示させる。オペレータが設定画面P6において操作具(図12では「PTO入り」、「ハンドル操舵」)を選択して「決定」を押下すると、受付処理部112は、選択操作を受け付けて、前記走行モード切替機能を連動させる操作具としてPTOクラッチレバー14L及びハンドル137を設定する。
【0106】
また、オペレータが自動走行開始用の操作具としてPTOクラッチレバー14Lを選択し、自動走行停止用(手動走行開始用)の操作具としてハンドル137を選択した場合に、表示処理部113は、図13に示すように、設定画面P1の「連動操作選択」の項目K2に設定内容を表示させてもよい。
【0107】
これにより、オペレータは、所望の操作具に、前記走行モード切替機能を連動させることができる。
【0108】
なお、自動走行開始用の操作具と自動走行停止用(手動走行開始用)の操作具とが同一の操作具であってもよい。
【0109】
本発明の走行制御システムは、作業車両10単体で構成されてもよいし、車両制御装置11に含まれる各処理部を備えたサーバーで構成されてもよい。また、前記走行制御システムは、車両制御装置11を備える作業車両10で構成されてもよい。
【0110】
[発明の付記]
以下、実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0111】
<付記1>
自動操舵による自動走行とユーザーの手動操舵による手動走行とを切り替え可能な作業車両の走行を制御する走行制御方法であって、
前記作業車両に所定の動作を実行させる操作具に対するユーザー操作を受け付けることと、
前記操作具に対する前記ユーザー操作に応じた動作を前記作業車両に実行させることと、
前記作業車両が自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操作具に関する変化量が閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替えることと、
前記作業車両の設定情報及び作業情報の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定することと、
を実行する走行制御方法。
【0112】
<付記2>
前記作業車両の車速、前記作業車両の作業内容、作業領域の状態、作業経路の位置の少なくともいずれかに基づいて前記閾値を設定する、
付記1に記載の走行制御方法。
【0113】
<付記3>
前記操作具は、前記作業車両の走行方向を変更する操向装置、前記作業車両の作業機を昇降させる昇降装置、前記作業車両の車速を変更する変速装置の少なくともいずれかである、
付記2に記載の走行制御方法。
【0114】
<付記4>
前記操作具は前記操向装置であって、
前記作業車両が第1車速で自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操向装置に関する変化量が第1閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替え、
前記作業車両が前記第1車速よりも遅い第2車速で自動走行中に前記ユーザー操作に応じた前記操向装置に関する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を超えた場合に、自動走行を手動走行に切り替える、
付記3に記載の走行制御方法。
【0115】
<付記5>
前記作業車両の車速が遅いほど前記閾値を小さい値に設定する、
付記4に記載の走行制御方法。
【0116】
<付記6>
前記操向装置に関する変化量は、前記操向装置の操向方向、操作時間、操作量、及び操作トルクの少なくともいずれかの変化量である、
付記4又は5に記載の走行制御方法。
【0117】
<付記7>
前記作業車両は、所定の作業を行う作業機を備えており、
前記作業車両が手動走行中に前記作業機を駆動させる操作を受け付けた場合に、手動走行を自動走行に切り替えることをさらに実行する、
付記1~6のいずれかに記載の走行制御方法。
【0118】
<付記8>
手動走行を自動走行に切り替えた場合に、前記閾値を前記作業車両の車速に応じて変更する、
付記7に記載の走行制御方法。
【符号の説明】
【0119】
10 :作業車両
11 :車両制御装置
12 :記憶部
13 :走行装置
13L :変速レバー(操作具)
14 :作業機
14L :PTOクラッチレバー(操作具)
15 :通信部
16 :測位装置
17 :操作装置
111 :走行処理部
112 :受付処理部
113 :表示処理部
114 :動作処理部
115 :判定処理部
116 :設定処理部
137 :ハンドル(操作具)
F :圃場
R :目標経路
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13