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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039815
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/12 20120101AFI20240315BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20240315BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240315BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B60W50/12
B60W30/08
B60W40/08
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144455
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】石神 裕丈
(72)【発明者】
【氏名】夏目 充啓
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BC01
3D241CC01
3D241CD12
3D241CD20
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB06Z
3D241DC01Z
3D241DC33Z
3D241DD04Z
3D241DD07Z
5H181AA01
5H181CC27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】アクセル誤操作があった場合に適正に加速抑制制御を行うことが可能な車両制御装置及び車両制御プログラムを提供する。
【解決手段】車両制御装置20は、車両走行時に、ドライバによるアクセル操作量に応じて車両の駆動力を制御し、その制御において、車両の加速度を所定の上限加速度以下に制限する。車両制御装置20は、車両の加速度が、上限加速度よりも小さい所定の加速度閾値以上であるか否かを判定する加速度判定部24と、車両の加加速度が所定の加加速度閾値以上であるか否かを判定する加加速度判定部23と、加速度判定部によって加速度が加速度閾値以上であると判定され、かつ加加速度判定部によって加加速度が加加速度閾値以上であると判定された場合に、駆動力を、アクセル操作量に応じた要求駆動力に対して制限する駆動力制御部27と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行時に、ドライバによるアクセル操作量に応じて前記車両の駆動力を制御し、その制御において、前記車両の加速度を所定の上限加速度以下に制限する車両制御装置(20)であって、
前記車両の加速度が、前記上限加速度よりも小さい所定の加速度閾値以上であるか否かを判定する加速度判定部(24)と、
前記車両の加加速度が所定の加加速度閾値以上であるか否かを判定する加加速度判定部(23)と、
前記加速度判定部によって前記加速度が前記加速度閾値以上であると判定され、かつ前記加加速度判定部によって前記加加速度が前記加加速度閾値以上であると判定された場合に、前記駆動力を、前記アクセル操作量に応じた要求駆動力に対して制限する制御部(27)と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記加速度判定部は、前記加速度が、前記加速度閾値よりも大きくなった後に、当該加速度閾値よりも小さい第2加速度閾値以下になったか否かを判定するものであり、
前記アクセル操作量が所定の操作量閾値以下であるか否かを判定する操作量判定部をさらに備え、
前記制御部は、前記駆動力の制限開始後において、前記加速度判定部によって前記加速度が前記第2加速度閾値以下になったと判定され、かつ、前記操作量判定部によって前記アクセル操作量が前記操作量閾値以下であると判定された場合、前記駆動力の制限を終了する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
現時点の前記アクセル操作量に基づいて、現時点以降の将来加速度を予測する加速度予測部をさらに備え、
前記加速度判定部は、前記将来加速度が前記加速度閾値以上となるタイミングを推定し、
前記加加速度判定部は、前記将来加速度に基づいて現時点以降の加加速度を予測するとともに、前記将来加速度が前記加速度閾値となるタイミングでの加加速度が前記加加速度閾値以上になるか否かを判定し、
前記制御部は、前記将来加速度が前記加速度閾値となるタイミングでの加加速度が前記加加速度閾値以上になると判定された場合に、前記駆動力の制限を実施する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記アクセル操作量又は前記車両の加速度が大きいほど、前記加加速度閾値を小さい値に設定にする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両の走行速度が大きいほど、前記加速度閾値及び前記加加速度閾値の少なくともいずれかを小さい値に設定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記加速度閾値は、第1加速度閾値であり、
前記制御部は、
前記加速度判定部によって前記加速度が前記第1加速度閾値以上であると判定され、かつ前記加加速度判定部によって前記加加速度が前記加加速度閾値以上であると判定されたことに基づいて、前記駆動力の制限を実施する第1抑制制御と、
前記加速度判定部によって前記加速度が第2加速度閾値以上であると判定されたことに基づいて、前記駆動力の制限を実施する第2抑制制御と、のいずれかを行うものであり、
前記車両の発進時において、前記第1抑制制御による前記駆動力の制限を実施し、
前記車両の発進後における走行期間において、前記第2抑制制御による前記駆動力の制限を実施する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記第1加速度閾値は、前記第2加速度閾値より小さい、請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記車両の進行方向における物体の有無を判定する物体判定部をさらに備え、
前記制御部は、前記物体判定部によって存在すると判定された前記物体までの距離が短いほど、前記加速度閾値及び前記加加速度閾値の少なくともいずれかを小さい値に設定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記車両の進行方向において前記車両に対する物体の相対速度を算出する相対速度算出部をさらに備え、
前記制御部は、前記相対速度算出部によって算出された前記相対速度が小さいほど、前記加速度閾値及び前記加加速度閾値の少なくともいずれかを小さい値に設定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記車両のドライバの異常の有無を判定するドライバ異常判定部をさらに備え、
前記制御部は、前記ドライバ異常判定部によって前記ドライバに異常があると判定された場合に、前記加速度閾値及び前記加加速度閾値の少なくともいずれかを小さい値に設定する、請求項1~9のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項11】
車両走行時に、ドライバによるアクセル操作量に応じて前記車両の駆動力を制御し、その制御において、前記車両の加速度を所定の上限加速度以下に制限する車両制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記車両の加速度が、前記上限加速度よりも小さい所定の加速度閾値以上であるか否かを判定させる処理と、
前記車両の加加速度が所定の加加速度閾値以上であるか否かを判定させる処理と、
前記加速度が前記加速度閾値以上であると判定され、かつ前記加加速度が前記加加速度閾値以上であると判定された場合に、前記駆動力を、前記アクセル操作量に応じた要求駆動力に対して制限させる処理と、を実行させる車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置及び車両制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクセルペダルの誤踏みに起因する車両の急激な加速や、誤発進による車両と障害物との衝突を防止する発明が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された発明は、アクセルペダルの操作量が閾値を超えた場合に駆動力を制限する。これにより加速が抑制され、障害物との衝突防止に貢献する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5941895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車等の車両では、一般に、障害物に対する衝突危険性の回避などを目的として、車両の上限加速度が定められており、車両の加速度が上限加速度を上回った際に、車両の駆動力が制限される。例えば、アクセルペダルの誤踏みに伴い車両が急発進する場合において、そのアクセルペダルの誤踏みの状況が、車両の加速度が上限加速度を上回るものである場合に、車両の駆動力が制限される。しかしながら、安全性を確保するには、車両の発進後において、より早いタイミングで加速抑制が行われることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、アクセル誤操作があった場合に適正に加速抑制制御を行うことが可能な車両制御装置及び車両制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
車両走行時に、ドライバによるアクセル操作量に応じて前記車両の駆動力を制御し、その制御において、前記車両の加速度を所定の上限加速度以下に制限する車両制御装置であって、
前記車両の加速度が、前記上限加速度よりも小さい所定の加速度閾値以上であるか否かを判定する加速度判定部と、
前記車両の加加速度が所定の加加速度閾値以上であるか否かを判定する加加速度判定部と、
前記加速度判定部によって前記加速度が前記加速度閾値以上であると判定され、かつ前記加加速度判定部によって前記加加速度が前記加加速度閾値以上であると判定された場合に、前記駆動力を、前記アクセル操作量に応じた要求駆動力に対して制限する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、例えば車両の発進時において、車両の加速度が、上限加速度よりも小さい加速度閾値以上になり、かつ車両の加加速度が所定の加加速度閾値以上であることを条件に、車両の駆動力が、アクセルの操作量に応じた要求駆動力に対して制限される。この場合、車両の加加速度によれば、加速度が増加に伴い上限加速度に到達するかどうかを事前に判断することができ、いち早く加速制限を行わせることができる。その結果、アクセル誤操作があった場合に適正に加速抑制制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加速抑制システムの構成図。
図2】ECUの一動作例を説明するフローチャート。
図3】ECUの一動作例を説明するフローチャート。
図4】アクセル開度又は加速度と閾値との関係を示す図。
図5】速度と閾値との関係を示す図。
図6】駆動力を制限するタイミングを説明するタイミングチャート。
図7】ECUの一動作例を説明するフローチャート。
図8】ECUの一動作例を説明するフローチャート。
図9】ECUの一動作例を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して、本実施形態に係る加速抑制システム100の構成例について説明する。以下では加速抑制システム100は、四輪車等の自動車に搭載されるものとして説明する。図1に示すように、加速抑制システム100は、加速度センサ10と、アクセル開度センサ11と、車速センサ12と、ECU20(Electronic Control Unit)と、走行駆動装置13を備える。
【0011】
加速度センサ10は、車両の加速度を検出するセンサであり、車両の加速度に応じた加速度信号をECU20に出力する。アクセル開度センサ11は、ドライバの操作対象であるアクセルペダルの操作量(アクセル操作量)をアクセル開度として検出し、そのアクセル開度を示すアクセル開度信号をECU20に出力する。車速センサ12は、車両の速度に応じた速度信号をECU20に出力する。走行駆動装置13は、車両の走行時に走行用動力を生じさせる装置であり、例えばエンジンや走行用モータである。
【0012】
ECU20は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。記憶部は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、又はRAM(Random Access Memory)などであり、ECU20の備えるCPUが実行する各種プログラム(ファームウェアやアプリケーションプログラムなど)やCPUが実行した処理の結果などを格納する。ECU20は、アクセル開度に応じて車両の要求駆動力TR(要求トルク)を算出し、その要求駆動力TRに基づいて走行駆動装置13の駆動を制御する。要求駆動力TRは、例えばアクセル開度と駆動力との関係を定めた相関マップを用い、アクセル開度に応じて決定される。また、ECU20は、エンジンに対してスロットル開度制御や点火時期制御などを行ったり、走行用モータに対してトルク指令信号を出力したりすることで、車両の駆動力を制御する。
【0013】
ECU20が備える加速度取得部21は、加速度センサ10から出力される加速度信号を取得する。同様に、ECU20が備える操作量取得部25は、アクセル開度センサ11から出力されるアクセル開度信号を取得する。
【0014】
また、ECU20は、図1に示す加加速度算出部22、加加速度判定部23、加速度判定部24、操作量判定部26、及び駆動力制御部27を備えており、これらは、加速度センサ10やアクセル開度センサ11などから取得した情報に基づいて記憶部に格納されたプログラムをCPUが実行することにより機能するソフトウェア機能部である。ECU20が提供する機能は、実体的な記憶部に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータだけでなく、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供されてもよい。ECU20が「車両制御装置」に相当する。
【0015】
加加速度算出部22は、加速度取得部21によって取得された加速度を用いて加加速度を算出する。加加速度の算出方法の一例として、加速度の時間微分が挙げられる。加加速度判定部23は、加加速度算出部22によって算出された加加速度が所定の加加速度閾値以上であるか否かを判定する。この加加速度閾値は、駆動力の制限を開始するか否かを判定する際に用いられ、その値の一例は0.1G/sである。
【0016】
加速度判定部24は、加速度取得部21によって取得された加速度が上限加速度よりも小さい加速度で設定された加速度閾値以上であるか否かを判定する。ここでいう上限加速度とは、車両にて許容される最大許容加速度であり、一例は0.3Gである。加速度閾値は、上限加速度よりも小さい値として設定され、一例は0.15Gである。この加速度閾値は、駆動力の制限を開始するか否かを判定する際に用いられる。
【0017】
操作量判定部26は、操作量取得部25によって取得されたアクセル開度が所定の操作量閾値以下であるか否かを判定する。この操作量閾値は、駆動力の制限を終了するか否かを判定する際に用いられる。
【0018】
駆動力制御部27は、車両走行時において、アクセル開度に応じて車両の駆動力を制御し、その制御により、車両の加速度を所定の上限加速度以下に制限することで加速抑制を実施する。駆動力制御部27は、加速度判定部24によって加速度が加速度閾値以上であると判定され、かつ加加速度判定部23によって加加速度が加加速度閾値以上であると判定された場合に、駆動力をアクセル開度に応じた要求駆動力に対して制限する。駆動力制御部27が「制御部」に相当する。
【0019】
次に、図2のフローチャートを参照して、ECU20により実行される加速抑制処理の一例を説明する。図2に示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0020】
ステップS101において、ECU20は、アクセル開度センサ11から出力されるアクセル開度信号を取得する。続くステップS102において、ECU20は、車速センサ12から出力される速度信号を取得する。続くステップS103において、ECU20は、加速度センサ10から出力される加速度信号を取得する。続くステップS104において、ECU20は、ステップS103で取得した加速度を用いて加加速度を算出する。
【0021】
ステップS105において、ECU20は、加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2を設定する「閾値設定処理」を実行する。ステップS106において、ECU20は、ステップS103で取得した加速度が加速度閾値TH1以上であり、かつ、ステップS104で算出した加加速度が加加速度閾値TH2以上であるか否かを判定する。ステップS103で取得した加速度が加速度閾値TH1以上であると判定され、かつ、ステップS104で算出した加加速度が加加速度閾値TH2以上であると判定された場合(ステップS106でYES)、処理はステップS107に進む。一方、ステップS106の判定結果がNOである場合、ECU20は一連の処理を終了させる。
【0022】
ステップS107において、ECU20は、車両の駆動力をアクセル開度に応じた要求駆動力に対して制限し、車両の加速を抑制する。
【0023】
次に、上述した「閾値設定処理」のサブルーチンの詳細について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0024】
ステップS201において、ECU20は、車両が通常走行時であるか否かを判定する。ここでは、車両が発進し移動状態である場合において、車両の発進時であるか、その後の通常走行時であるかを区別することとしている。判定方法は特に限定されないが、ECU20は、例えば車両の移動開始からの経過時間(速度>0になってからの経過時間)に基づいて、車両が発進時であるか通常走行時であるか否かを判定する。または、ECU20は、図2のステップS102で取得した速度に基づいて、車両が発進時であるか通常走行時であるか否かを判定する。
【0025】
発進時であれば、ECU20は、ステップS201を否定する。この場合、ECU20は、ステップS202において、車両の発進時におけるアクセル開度又は車両の加速度に基づいて加加速度閾値TH2を設定する。具体的には、図4に示すように、アクセル開度又は車両の加速度が大きいほど、加加速度閾値TH2を小さい値に設定する。つまり、車両の発進時において、ドライバによるアクセル操作量が大きいほど、又はドライバのアクセル操作による発進時加速度が大きいほど、加加速度閾値TH2が小さい値に設定される。なお、車両の発進時におけるアクセル開度又は車両の加速度は、例えば、車両の移動開始から所定時間が経過した時点でのアクセル開度又は加速度、又は車両の移動開始から所定時間が経過するまでの期間におけるアクセル開度又は加速度の平均値であるとよい。
【0026】
一方、通常走行時であれば、ECU20は、ステップS201を肯定する。この場合、ECU20は、ステップS203において、車両の走行速度に基づいて、加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2を設定する。具体的には、図5に示すように、走行速度が大きいほど、加速度閾値TH1を小さい値に設定する。また、走行速度が大きいほど、加加速度閾値TH2を小さい値に設定する。なお、加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2のいずれか一方が、車両の走行速度に基づき設定されるようになっていてもよい。
【0027】
車両が発進時であるか、その後の通常走行時であるかに関わらず、車両が移動状態にある走行中において、図4の関係を用い、アクセル開度又は車両の加速度に基づいて加加速度閾値TH2を設定することも可能である。
【0028】
加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2は変動値ではなく、固定値として予め設定されていてもよい。加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2が固定値として設定されている場合、図3の処理は省略されてもよい。また、加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2が固定値として設定されている場合、加速度閾値TH1の一例は0.15Gであり、加加速度閾値TH2の一例は0.1G/sである。
【0029】
次に、図6のタイミングチャートを参照して、車両の発進時における駆動力抑制のタイミングについて説明する。図6のタイミングチャートは、アクセル誤操作によるアクセル開度の急上昇、及びこの急上昇に伴う車両の速度、車両の加速度、車両の加加速度の推移をシミュレーション波形として示したものである。図6では、加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2は、固定値として設定されているものとする。
【0030】
時刻T1において、ドライバによるアクセル誤操作(誤踏み込み)が発生したものとする。このアクセル誤操作の発生により時刻T1以降、アクセル開度が急上昇し、これに伴い車両が発進することにより、車両の速度、加速度、及び加加速度が上昇する。
【0031】
時刻T2において、加加速度が加加速度閾値TH2以上となる。続く時刻T3において、加加速度が加加速度閾値TH2以上になったまま、加速度が加速度閾値TH1以上となる。本実施形態では、時刻T3のタイミングで、加速度が加速度閾値TH1以上であると判定され、かつ、加加速度が加加速度閾値TH2以上であると判定される。この判定結果に基づいて、時刻T3のタイミングで、車両の駆動力の制限が行われ、実線で示すように車両の加速は抑制される。ここで、上述した既存の技術のように加速度が上限加速度(例えば0.3G)に到達してから駆動力の制限が開始される場合には、時刻T4にて駆動力が制限されることになる(一点鎖線)。これに対し、本実施形態では、加速度と加加速度を組み合わせることにより、加加速度によれば、加速度が増加に伴い上限加速度に到達するかどうかを事前に判断することができ、いち早く加速制限を行わせることができる。その結果、アクセル誤操作があった場合に適正に加速抑制制御を行うことが可能となる。
【0032】
図6では時刻T3において、加速度が加速度閾値TH1以上となっており、加加速度も加加速度閾値TH2以上となっている、と説明した。ここで、加加速度に関しては、時刻T3より前の時刻T2にてすでに加加速度閾値TH2以上となっているため、必ずしも時刻T3において加加速度閾値TH2以上である必要はない。ECU20の内部処理の一例として、加加速度が加加速度閾値TH2以上であると判定された場合に判定フラグが1にセットされるとする。この判定フラグは所定のリセット処理が行われるまでは、たとえその後に加加速度が加加速度閾値TH2を下回ったとしても1で固定されるものとする。このような方法で判定フラグが管理されていれば、加加速度が加加速度閾値TH2以上となった後、加速度が加速度閾値TH1以上になったタイミングにおいて加加速度が加加速度閾値TH2を下回っていたとしても、両方が条件を満たしたと判定してもよい。なお、図6では、加加速度が加加速度閾値TH2以上となった後に、加速度が加速度閾値TH1以上となるケースを取り上げたが、順番は逆でもよい。
【0033】
次に、図7のフローチャートを参照して、ECU20により実行される加速抑制処理の解除について説明する。図7に示す処理は、図2のステップS107の続きとして説明する。つまり、図7に示す処理は、加速抑制処理がすでに行われている状態から開始する。
【0034】
ステップS301において、ECU20は、加速度センサ10から出力される加速度信号を取得する。続くステップS302において、ECU20は、アクセル開度センサ11から出力されるアクセル開度信号を取得する。
【0035】
ステップS303において、ECU20は、ステップS301で取得した加速度が加速度閾値TH1よりも小さい第2加速度閾値TH3以下になり、かつ、ステップS302で取得したアクセル開度が所定の開度TH4以下であるか否かを判定する。ステップS301で取得した加速度が第2加速度閾値TH3以下になったと判定され、かつ、ステップS302で取得したアクセル開度が所定の開度TH4以下であると判定された場合(ステップS303でYES)、処理はステップS304に進む。一方、ステップS303の判定結果がNOである場合、ECU20は一連の処理を終了させる。第2加速度閾値TH3は駆動力の制限を終了するか否かを判定する際に用いられ、その値の一例は0.0Gである。「所定の開度TH4」の一例は、0%である。アクセル開度が0%とは、アクセルペダルからドライバの足が離れている状態を指す。ただし、「所定の開度TH4」は0%に限定されず、アクセルペダルの遊びを考慮して、アクセルペダルの全ストローク量を100%としたときの10%以下であってもよい。ステップS304において、ECU20は、駆動力の制限を終了する。
【0036】
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0037】
上記構成によれば、例えば車両の発進時において、車両の加速度が、上限加速度よりも小さい加速度閾値TH1以上になり、かつ車両の加加速度が所定の加加速度閾値TH2以上であることを条件に、車両の駆動力が、アクセル開度に応じた要求駆動力に対して制限される。この場合、車両の加加速度によれば、加速度が増加に伴い上限加速度に到達するかどうかを事前に判断することができ、いち早く加速制限を行わせることができる。その結果、アクセル誤操作があった場合に適正に加速抑制制御を行うことが可能となる。
【0038】
駆動力の制限開始後において、車両の加速度が下降に転じたことに基づいて駆動力の制限を終了することが考えられる。ただし、加速度のみに基づいて駆動力の制限を終了した場合、ドライバによるアクセル誤操作の状態が継続されていると、車両の再加速により駆動力の制限が再開され、ひいては加速抑制制御のハンチングが発生することが懸念される。この点を考慮し、本実施形態では駆動力の制限開始後において、車両の加速度が第2加速度閾値TH3以下になったと判定され、かつ、アクセル開度が所定の開度TH4以下であると判定された場合、駆動力の制限を終了するようにした。これにより、駆動力の制限終了後において、車両の再加速に起因する加速抑制制御のハンチングを抑制することができる。
【0039】
ドライバのアクセル操作態様はまちまちであり、そのアクセル操作態様に応じて車両の加速度が相違する。この場合、アクセル急操作によりアクセル開度が大きくなるほど車両の加速度が大きくなり、上限加速度に到達し易くなる。この点を考慮し、アクセル開度又は車両の加速度が大きいほど、加加速度閾値TH2を小さい値に設定するようにした。これにより、車両の急発進時や急加速時において一層早いタイミングでの駆動力制限が可能となり、安全性の向上が可能となる。
【0040】
車両の走行中において、その速度が大きい状態では、そこからさらにアクセルペダルを踏み込んでも加速度及び加加速度の変化は小さい。この点を考慮し、車両の速度が大きいほど、加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2の少なくともいずれかを小さい値に設定するようにした。これにより、先行車両に追従して走行するシーンなどにおいて一層早いタイミングでの駆動力制限が可能となり、安全性の向上が可能となる。なお、車両の速度が大きいほど、加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2の両方を小さくしてもよい。
【0041】
(変形例1)
「閾値設定処理」のサブルーチンでは、アクセル開度や車両の速度などに基づいて、加速度閾値TH1や加加速度閾値TH2を可変にする例を説明したが、加速度閾値TH1や加加速度閾値TH2を可変にする方法はこれに限定されない。他の方法を変形例1~3として説明する。ECU20は、図2のステップS105において、車両の進行方向における物体の有無を判定し、物体までの距離が短いほど、加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2の少なくともいずれかを小さい値に設定する。車両の進行方向における物体までの距離が短いほど速やかな加速抑制制御が求められる。そこで、物体までの距離が短いほど加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2の少なくともいずれかを小さくすることにより、いち早く加速制限を行わせることができる。ここでいう物体判定処理は「物体判定部」に相当する。物体の有無は、例えばカメラで撮像した画像を用いて判定すればよい。
【0042】
(変形例2)
ECU20は、図2のステップS105において、車両の進行方向において車両に対する物体の相対速度を算出し、算出した相対速度が小さいほど加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2の少なくともいずれかを小さい値に設定する。車両の進行方向において車両に対する物体の相対速度が小さいほど速やかな加速抑制制御が求められる。そこで、車両に対する物体の相対速度が小さいほど加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2の少なくともいずれかを小さくすることにより、いち早く加速制限を行わせることができる。ここでいう相対速度算出処理は「相対速度算出部」に相当する。
【0043】
(変形例3)
ECU20は、図2のステップS105において、車両のドライバの異常の有無を判定し、ドライバに異常があると判定した場合に、加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2の少なくともいずれかを小さい値に設定する。ここでいう「ドライバの異常」は、例えば、顔向き、開眼度、顔位置などにより判定可能である。具体的には顔向きの場合、ドライバが脇見していれば異常と判定される。開眼度の場合、ドライバの目が閉じていれば異常と判定される。顔位置の場合、正常な姿勢時とは異なる位置に顔があれば異常と判定される。これらの異常は、例えば車室内に設けられたカメラの画像から判定することができる。このような異常が検出された場合、速やかな加速抑制制御が求められる。そこで、異常が検出された場合に加速度閾値TH1及び加加速度閾値TH2の少なくともいずれかを小さくすることにより、いち早く加速制限を行わせることができる。ここでいう異常判定処理は「ドライバ異常判定部」に相当する。
【0044】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、加速度センサ10によって検出された加速度を加速度閾値TH1との比較対象として説明したが、比較対象となる加速度は検出値ではなく予測値であってもよい。加速度の予測方法として、例えばECU20は、現時点のアクセル開度に基づいて、現時点以降の将来加速度を予測すればよい。あるいは、現時点以前の加速度に基づいて、現時点以降の将来加速度を予測してもよい。ここでいう加速度予測処理は「加速度予測部」に相当する。予測した将来加速度を用いて駆動力を制限する方法を図8のフローチャートを参照して説明する。
【0045】
ステップS401において、ECU20は、加速度センサ10から出力される加速度信号を取得する。将来加速度を予測するために所定数の過去の加速度が必要であるから、過去の加速度が所定数蓄積されるまでECU20は待機する(ステップS402)。例えば車両の発進時であれば、車両の移動開始から所定時間が経過するまでECU20は待機する。ステップS403において、ECU20は、現時点以前の加速度に基づいて現時点以降の将来加速度を予測する。また、ECU20は、予測した将来加速度を用いて現時点以降の将来加加速度を予測する。
【0046】
ステップS404において、ECU20は、予測した将来加速度が加速度閾値TH1となるタイミングでの将来加加速度が加加速度閾値TH2以上となるか否かを判定する。ステップS404の判定結果がYESであれば、処理はステップS405に進み、ECU20は、現時点において車両の駆動力をアクセル開度に応じた要求駆動力に対して制限し、車両の加速を抑制する。このように、将来加速度が加速度閾値TH1となるタイミングでの将来加加速度が加加速度閾値TH2以上となると判定された場合は、実際の将来にてそのような状態になることを待つことなく、現時点において車両の加速を抑制する。車両の加速度に基づいて加速抑制制御を実施する場合には、加速度の検出や駆動力の制限処理などに要する時間により制御遅れが発生する。これに対し上記構成によれば、例えば図6で説明した時刻T3以前に加速を抑制することが可能となり、より一層早いタイミングでの駆動力制限が可能となる。なお、ステップS404の判定結果がNOである場合、ECU20は一連の処理を終了させる。
【0047】
また、実際の加速度と加加速度とに基づいて駆動力制限の要否を判定する処理(図2の処理)と、将来の加速度と加加速度とに基づいて駆動力制限の要否を判定する処理(図8の処理)とを使い分ける構成としてもよい。この場合、例えば、アクセル開度又は車両の加速度が所定値以上であれば、早期に駆動力制限が実施されることが望ましいため、図8の処理を実施する。これに対し、アクセル開度又は車両の加速度が所定値未満であれば、駆動力制限を確実に実施すべく(すなわち不要な駆動力制限が行われないようにすべく)、図2の処理を実施する。
【0048】
ECU20が、加速度と加加速度とに基づいて駆動力制限を実施する第1抑制制御と、加速度に基づいて駆動力制限を実施する第2抑制制御とを選択的に実施する構成としてもよい。ここで、第1抑制制御は、加速度が第1加速度閾値TH1A以上であると判定され、かつ加加速度が加加速度閾値TH2以上であると判定されたことに基づいて駆動力制限を実施する処理である。第2抑制制御は、加速度が第2加速度閾値TH1B以上であると判定されたことに基づいて駆動力制限を実施する処理である。ECU20は、車両の発進時において、第1抑制制御による駆動力制限を実施し、車両の発進後における走行期間において、第2抑制制御による駆動力制限を実施する。以下、その詳細を図9のフローチャートを参照して説明する。なお、第1加速度閾値TH1A、第2加速度閾値TH1Bは、いずれも加速度判定のための閾値であるが、互いに異なる値となっている。第1抑制制御は、図2で説明した処理と同じであるとよい。
【0049】
ステップS501において、ECU20は、加速度センサ10から出力される加速度信号を取得する。続くステップS502において、ECU20は、ステップS501で取得した加速度を用いて加加速度を算出する。ステップS503において、ECU20は、車両の発進時であるか否かを判定する。車両の発進時であるか否かの判定は、車両の移動開始からの経過時間や、車両の速度に基づいて行われるとよい。発進時であると判定された場合(ステップS503でYES)、処理はステップS504に進み、ECU20は、加速度が第1加速度閾値TH1A以上であり、かつ加加速度が加加速度閾値TH2以上であるか否かを判定する。
【0050】
加速度が第1加速度閾値TH1A以上であり、かつ加加速度が加加速度閾値TH2以上であると判定された場合、処理はステップS505に進み、ECU20は、駆動力の制限を実施する(第1抑制制御)。ステップS503の判定結果がNOである場合、処理はステップS506に進み、ECU20は、加速度が第2加速度閾値TH1B以上であるか否かを判定する。加速度が第2加速度閾値TH1B以上であると判定された場合、処理はステップS505に進み、ECU20は、駆動力の制限を実施する(第2抑制制御)。
【0051】
車両の発進時と、その後の走行時とを比べると、前者のシーンにおいて、アクセルペダルの踏み間違い等のアクセル誤操作の発生の可能性が高いと考えられる。この点を考慮し、車両の発進時には、車両の加速度及び加加速度を用いた駆動力の制限(第1抑制制御)を実施し、発進後の走行時には、加速度を用いた駆動力の制限(第2抑制制御)を実施するとよい。これにより、アクセルペダルの踏み間違い等のアクセル誤操作が発生した際における衝突危険性を軽減することができる。
【0052】
第1加速度閾値TH1Aと第2加速度閾値TH1Bは異なると説明したが、例えば、第1加速度閾値TH1Aは、第2加速度閾値TH1Bより小さいとよい。これにより、車両の発進時においていち早く加速制限を行わせることができる。一方で、車両発進後の走行時においては、発進時と比べてアクセル誤操作の発生の可能性は低いと考えられるため、閾値を発進時と比べて高くすることにより、加速抑制制御が発生しにくくなる。これにより加速抑制制御を煩わしく感じるドライバに対しては、その煩わしさを軽減できる。
【0053】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
20…ECU、24…加速度判定部、23…加加速度判定部、27…駆動力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9