(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039834
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 31/02 20060101AFI20240315BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A47C31/02 A
B68G7/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144488
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】和氣 大亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】羽場 梢
(57)【要約】
【課題】張地が緩んだ場合であっても、張地が座や背凭れを構成する板状部材から離脱し難い好適な構成を備えた椅子を提供する。
【解決手段】座3を構成する板状部材である座インナーシェルQと、座3の表層部を構成し端縁部heが座インナーシェルQの周縁部近傍に設けられた係留部q2に係留される座張地Hとを備えた椅子であって、係留部q2が、座インナーシェル本体q1から片持ち状に延設された基端延設部q21と、基端延設部q21に連続し座インナーシェルQの中央部方向に向かって延設された先端延設部q22とを備えたものとした。
【選択図】
図30
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座又は背凭れを構成する板状部材と、前記座又は前記背凭れの表層部を構成し端縁部が前記板状部材の周縁部近傍に設けられた係留部に係留される張地とを備えた椅子であって、
前記係留部が、板状部材本体から片持ち状に延設された基端延設部と、この基端延設部に連続し前記板状部材の中央部方向に向かって延設された先端延設部とを備えた椅子。
【請求項2】
前記先端延設部は、前記基端延設部の先端部に連続したものである請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記板状部材が、前記座を構成するものであり当該板状部材の上面に座クッションが載設されたものであり、
前記張地が、前記座クッションの上部及び外周部と、前記板状部材の周端縁を被覆するものである請求項1記載の椅子。
【請求項4】
前記係留部が、前記板状部材に備えた起立壁部の外向面側に設けられたものであり、
前記基端延設部が、前記外向面から外側方に延びてなる外方延出部分と、この外方延出部分の先端部から上方に延びてなる上方延出部分と、この上方延出部分の先端部に設けられた前記先端延設部とを備えたものである請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記外向面と前記外方延出部分との間に補強用のリブが配設されている請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記端縁部が環状をなし紐状部材により巾着状に縮径されることにより、前記外向面に添接又は近接するように配設されるものであって、
前記先端延設部が、前記端縁部の縮径状態が緩んだ場合に当該端縁部に対して密に係合し得るように構成されている請求項4記載の椅子。
【請求項7】
前記板状部材の外周端縁に、下方に垂下するように設けられ外面側が前記座クッションに添接するサポート壁が設けられたものであり、
前記先端延設部が、前記サポート壁の下端よりも上に配設されている請求項3記載の椅子。
【請求項8】
前記先端延設部の先端に、当該先端延設部の延出方向とは異なる方向に突出した突出部が設けられている請求項1記載の椅子。
【請求項9】
前記板状部材の下面側が座裏カバー体により覆われたものであり、この座裏カバー体の外周縁部が、前記張地を介して前記座クッションを押圧し得るものである請求項4記載の椅子。
【請求項10】
前記板状部材が、前記背凭れを構成するものであり当該板状部材の前面側に背クッションが添設されたものであり、
前記張地が、前記背クッションの前部及び外周部と、前記板状部材の周端縁を被覆するものである請求項1記載の椅子。
【請求項11】
前記板状部材の背面側が背裏カバー体により覆われたものであり、この背裏カバー体の外周縁部が、前記張地を介して前記背クッションを押圧し得るものである請求項6記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脚の上部に設けられ、基板における角部裏面に座張地の端縁を受け止める係止片を突設した座を設けた椅子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
座張地における環状の端縁部は、紐状部材等により縮径される構成をなしている。そして、座張地の端縁部は、縮径された状態で基板に設けられた係止片に係止されることにより、それよりも内方への移動が規制されたものとなっている。
【0004】
ところが、従来の構成のものでは、何らかの理由で張地の端縁部の縮径状態が緩んだ場合や張地の端縁部が部分的に大きく移動した場合には、座や構成する板状部材から離脱しやすいものとなっていた。
【0005】
なお、以上の事情は、背凭れにおいても同様に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、張地が座や背凭れを構成する板状部材から離脱し難い好適な構成を備えた椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、座又は背凭れを構成する板状部材と、前記座又は前記背凭れの表層部を構成し端縁部が前記板状部材の周縁部近傍に設けられた係留部に係留される張地とを備えた椅子であって、前記係留部が、板状部材本体から片持ち状に延設された基端延設部と、この基端延設部に連続し前記板状部材の中央部方向に向かって延設された先端延設部とを備えた椅子である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記先端延設部は、前記基端延設部の先端部に連続したものである請求項1記載の椅子である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記板状部材が、前記座を構成するものであり当該板状部材の上面に座クッションが載設されたものであり、前記張地が、前記座クッションの上部及び外周部と、前記板状部材の周端縁を被覆するものである請求項1記載の椅子である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記係留部が、前記板状部材に備えた起立壁部の外向面側に設けられたものであり、前記基端延設部が、前記外向面から外側方に延びてなる外方延出部分と、この外方延出部分の先端部から上方に延びてなる上方延出部分と、この上方延出部分の先端部に設けられた前記先端延設部とを備えたものである請求項3記載の椅子である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記外向面と前記外方延出部分との間に補強用のリブが配設されている請求項4記載の椅子である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記端縁部が環状をなし紐状部材により巾着状に縮径されることにより、前記外向面に添接又は近接するように配設されるものであって、前記先端延設部が、前記端縁部の縮径状態が緩んだ場合に当該端縁部に対して密に係合し得るように構成されている請求項4記載の椅子である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記板状部材の外周端縁に、下方に垂下するように設けられ外面側が前記座クッションに添接するサポート壁が設けられたものであり、前記先端延設部が、前記サポート壁の下端よりも上に配設されている請求項3記載の椅子である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記先端延設部の先端に、当該先端延設部の延出方向とは異なる方向に突出した突出部が設けられている請求項1記載の椅子である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記板状部材の下面側が座裏カバー体により覆われたものであり、この座裏カバー体の外周縁部が、前記張地を介して前記座クッションを押圧し得るものである請求項4記載の椅子である。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記板状部材が、前記背凭れを構成するものであり当該板状部材の前面側に背クッションが添設されたものであり、前記張地が、前記背クッションの前部及び外周部と、前記板状部材の周端縁を被覆するものである請求項1記載の椅子である。
【0019】
請求項11に記載の発明は、前記板状部材の背面側が背裏カバー体により覆われたものであり、この背裏カバー体の外周縁部が、前記張地を介して前記背クッションを押圧し得るものである請求項6記載の椅子である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、張地が座や背凭れを構成する板状部材から離脱し難い好適な構成を備えた椅子を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図23】同実施形態におけるカバー体(展開状態)の正面図。
【
図24】同実施形態におけるカバー体(展開状態)の背面図。
【
図27】同実施形態における座インナーシェル(板状部材)の底面図。
【
図28】同実施形態における座インナーシェル(板状部材)の部分拡大斜視図。
【
図29】同実施形態における座インナーシェル(板状部材)の部分拡大斜視図。
【
図30】同実施形態における座の前部構造を説明するための断面図。
【
図31】同実施形態における座の後部構造を説明するための断面図。
【
図32】他の実施形態(脚体X1を適用した椅子)を示す斜視図。
【
図33】他の実施形態(脚体X2を適用した椅子)を示す斜視図。
【
図34】他の実施形態(脚体X3を適用した椅子)を示す斜視図。
【
図35】他の実施形態を説明するための部分拡大斜視図。
【
図36】他の実施形態を説明するための部分拡大斜視図。
【
図37】他の実施形態を説明するための部分拡大斜視図。
【
図38】同実施形態の底面側から見た部分拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~31を参照して説明する。
【0023】
椅子は、脚体Aと、脚体Aよりも上に配されたものであり座3と背凭れRと肘掛けTを一体的に備えた着座者支持構造物Cと、脚体Aと着座者支持構造物Cとの間に介設された傾動ユニットBとを備えたものである。
【0024】
この実施形態の椅子は、形態の異なる複数タイプの脚体、すなわち、四本の木脚タイプの脚体A(
図1~8等を参照)、四本のキャスタ無し金属フレームタイプの脚体X1(
図32を参照)、四本のキャスタ付金属フレームタイプの脚体X2(
図33を参照)、及び、昇降脚タイプの脚体X3(
図34を参照)から選択された一の脚体を選択可能に構成されている。
【0025】
そして、選択された何れか一つの脚体の上には、複数タイプの脚体A、X1、X2、X3に対してねじv2により連結可能な構成を有する共通仕様の傾動ユニットBが配設されるようになっている。つまり、この実施形態の椅子は、選択された一の脚体の上に取り付けられた傾動ユニットBに対して、座3を含んで構成された着座者支持構造物Cを取り付けたものである。
【0026】
なお、本明細書では、形態の異なる複数タイプの脚体A、X1、X2、X3の中から、四本の木脚タイプの脚体Aが選択された実施形態に基づいて詳述する。
【0027】
<<脚体A>>
脚体Aは、複数すなわち上下方向に延びた四本の脚本体である左右の前脚Ef及び左右の後脚Erと、左右の前脚Ef及び左右の後脚Erに支持された基部Dとを備えたものである。
【0028】
<前脚Ef・後脚Er>
前脚Ef及び後脚Erは、上下方向に延びてなる木製の主脚本体部e1と、主脚本体部e1の上部分にのみ挿入される上下方向に延びた被挿入部分esを有し主脚本体部e1と基部Dとの間に介設された脚フレーム部e2とを備えている。
【0029】
前脚Ef及び後脚Erを構成する主脚本体部e1及び脚フレーム部e2はそれぞれ同一の構造のものであるため、以下、纏めて説明する。
【0030】
[主脚本体部e1]
主脚本体部e1は、木製のものである。主脚本体部e1は、その長手方向に沿って脚フレーム部e2に設けられた被挿入部分esが挿入されるフレーム収容穴e11が穿設されている。
【0031】
フレーム収容穴e11は、主脚本体部e1の上端面から主脚本体部e1の軸心に沿うように下方に向かって穿設されている。フレーム収容穴e11は、上下方向に直線状に延びてなる被挿入部分esを収容し得る有底のものである。フレーム収容穴e11は、主脚本体部e1における長手寸法全長の二分の一よりも短い深さ寸法に設定されている。
【0032】
主脚本体部e1における上部の内側部には、当該主脚本体部e1に対して略直交する方向に延びてなるねじ挿通孔h1が設けられている。ねじ挿通孔h1には、ねじv1の頭部が収容される頭部収容凹部h11が形成されている。
【0033】
主脚本体部e1の下端には、床面に接する接地部材Lが設けられている。
【0034】
主脚本体部e1は、略四角柱状に形成されたものである。ねじ挿通孔h1が設けられた各主脚本体部e1における内側部の内向面emは、椅子全体における前後方向及び左右方向の中心部を向くように設定されている。
【0035】
[脚フレーム部e2]
脚フレーム部e2は、脚本体である前脚Ef及び後脚Erの基端部を構成するものである。脚フレーム部e2は、上下方向に延びた金属製のパイプ材を主体に構成されている。脚フレーム部e2は、下方に向かって漸次椅子の中心部に対して離れる方向に傾斜して延びている。
【0036】
この実施形態では、左の前脚Efを構成する脚フレーム部e2、及び、左の後脚Erを構成する脚フレーム部e2は、前後方向に延びた左の水平フレーム部e3を介して一体に繋がっている。同様に、右の前脚Efを構成する脚フレーム部e2、及び、右の後脚Erを構成する脚フレーム部e2は、前後方向に水平に延びた右の水平フレーム部e3を介して一体に繋がっている。左右の水平フレーム部e3は、基部Dにおける基部本体d1の左右両側部に配設されている。
【0037】
左右の水平フレーム部e3は、基部Dの基部本体d1に対して溶接により剛結されている。換言すれば、脚体Aは、前後の脚フレーム部e2及び水平フレーム部e3を一体に有し基部本体d1に対して剛結されたフレーム材Fを備えている。
【0038】
脚フレーム部e2の下部に設けられた被挿入部分esは、主脚本体部e1に対してねじv1により固定されるものである。被挿入部分esは、金属製のパイプ材により構成されたパイプ形状部eaを主体に構成されている。
【0039】
被挿入部分esは、ねじv1が挿通されるねじ挿通孔hfが設けられたパイプ形状部eaと、パイプ形状部eaの内部に配設されねじv1が螺着されるナット部n1が設けられたナット配設部材ebとを備えている。
【0040】
パイプ形状部eaは、内部にナット配設部材ebが挿入可能なものである。パイプ形状部eaの下端部には、内部に収容されたナット配設部材ebにおける幅広部edの両側端部が係合し得る一対の切欠部ecが設けられている。
【0041】
ナット配設部材ebは、金属製のものであり全体として縦長の板状をなしている。ナット配設部材ebは、パイプ形状部eaの内部に下側から挿入されるものである。ナット配設部材ebは、その下端部に他の部位よりも幅広に設定された幅広部edが形成されている。ナット配設部材ebは、パイプ形状部ea内に挿入され幅広部edの両側端部が切欠部ecに係合することにより位置決めされるようになっている。
【0042】
<基部D>
基部Dは、左右の前脚Ef及び左右の後脚Erに支持され座3の下に配設されたものである。
【0043】
基部Dは、傾動ユニットBが載設される水平板状部分d11を有した金属製の基部本体d1と、基部本体d1に対して着脱可能に設けられ傾動ユニットBの外周部を囲繞する合成樹脂製の保護枠部材d2とを備えたものである。
【0044】
[基部本体d1]
基部本体d1は、前後方向及び左右方向中央部に位置し傾動ユニットBの第一ユニット部材1が取り付けられる略矩形状をなす水平板状部分d11と、水平板状部分d11の前端部及び後端部に立設され左右両端部を水平フレーム部e3の位置決め部とした起立壁部分d12とを有してなるものである。
【0045】
水平板状部分d11には、複数箇所に第一ユニット部材1を水平板状部分d11に螺着するためのねじv2が下から上に向かって挿通されるねじ挿通孔h2が設けられている。
【0046】
水平板状部分d11の左右両端部には、脚フレーム部e2を有するフレーム材Fを溶接するための接続片d13が立設されている。また、接続片d13の基端部の前後には、保護枠部材d2に設けられた湾曲壁部分d23の下端に突設された位置決め突起dtが係わり合う切欠孔d14が隣設されている。
【0047】
起立壁部分d12の左右両端部は、略四分の一円弧状に切り欠かれた形状をなしている。起立壁部分d12の左右両端部は、水平フレーム部e3が基部本体d1に対して溶着される際の位置決め部として機能するようになっている。また、起立壁部分d12の上部には、前後方向に貫通し保護枠部材d2に設けられた複数の係合凸部dkが係合する複数の係合孔d15が左右方向に一定の間隔を空けて設けられている。
【0048】
[保護枠部材d2]
保護枠部材d2は、基部本体d1の上に配設された合成樹脂製のものである。保護枠部材d2は、座シェル体32に設けられた保護壁32bと協働して、着座者支持構造物Cの傾動時における指挟み等の不具合が生じ得る隙間の出現を抑制し得るものとなっている。
【0049】
保護枠部材d2は、基部本体d1に対して外方に延出するようにフランジ状に設けられた水平枠状部分d21と、水平枠状部分d21の外周縁から四方を囲むように上方に延設された起立周壁部分d22とを備えたものである。
【0050】
水平枠状部分d21は略四角枠状をなしている。水平枠状部分d21における左右枠構成部d24の各内側端からは、内方に向かって漸次下方に位置するように延びた湾曲壁部分d23が延設されている。左右の湾曲壁部分d23は、延出端である下端部に前後一対の位置決め突起dtが設けられている。
【0051】
水平枠状部分d21における前後枠構成部d25の内方端部には、左右方向に一定の間隔を空けて基部本体d1の起立壁部分d12の係合孔d15に係わり合う係合凸部dkが突設されている。
【0052】
<<傾動ユニットB>>
傾動ユニットBは、脚体Aの基部Dと座3の座シェル体32との間に介設されている。
【0053】
この実施形態では、傾動ユニットBは、座3を含んで構成された着座者支持構造物Cを脚体Aに対して前傾及び後傾動作可能に支持している。換言すれば、着座者支持構造物Cは、傾動ユニットBを介して脚体Aに支持されている。
【0054】
傾動ユニットBは、脚体Aに対してねじv2により固定される第一ユニット部材1と、第一ユニット部材1に対して回転可能に支持されるとともに座3に対してねじv3により固定される第二ユニット部材2とを備えている。
【0055】
<第一ユニット部材1>
第一ユニット部材1は、全体として、上方が開放された矩形ボックス状をなしている。
【0056】
第一ユニット部材1は、底面視において前後方向に長手をなす略矩形状をなした底壁部11と、底壁部11の周縁部に立設された下の周壁部12すなわち前起立壁12a、後起立壁12b、及び、左右の側起立壁12cとを備えたものである。
【0057】
[底壁部11]
底壁部11は、その下面が脚体Aの基部Dにおける水平板状部分d11の上面に当接するものである。
【0058】
底壁部11における前部の左右二箇所及び後部の左右二箇所の下面側には、それぞれ基部Dに対して止着するためのねじv2が螺着されるナット部n2が配設されている。
【0059】
底壁部11における前後方向中央部の上面側には、左右方向に延びてなる支軸Jを保持するための円環状又は半円環状をなす複数の第一軸保持部11aが配設されている。
【0060】
底壁部11における前部及び後部の上面側、すなわち第一軸保持部11aの前及び後には、円筒状をなすゴム材により構成された弾性体Sに係わり合い当該弾性体Sを位置決めするボス部11bが立設されている。
【0061】
換言すれば、支軸Jよりも前における第一、第二ユニット部材1、2間、及び、支軸Jよりも後における第一、第二ユニット部材1、2間には、第二ユニット部材2を前傾姿勢から初期姿勢(中間位置)に復帰させるための付勢力を付与し得る前の弾性体Sと、第二ユニット部材2を後傾姿勢から初期姿勢(中間位置)に復帰させるための付勢力を付与し得る後の弾性体Sが配設されている。
【0062】
[下の周壁部12]
下の周壁部12における四つの角部には、ゴム製のダンパー部材13が配設されている。ダンパー部材13は、座3の傾動時において第二ユニット部材2における天壁部21の下面に当接した場合に所定の緩衝機能を発揮し得るものである。
【0063】
<第二ユニット部材2>
第二ユニット部材2は、左右方向に延びてなる支軸Jを介して第一ユニット部材1に対して前後方向に回転可能に支持されたものである。
【0064】
第二ユニット部材2は、平面視において略矩形状をなした天壁部21と、天壁部21に垂設された上の周壁部22すなわち前垂下壁22a、後垂下壁22b、及び、左右の側垂下壁22cとを備えたものである。
【0065】
[天壁部21]
天壁部21は、その上面が座シェル体32の下面に当接するものである。天壁部21は、座シェル体32に設けられた傾動ユニット配設部32aに配設されるものである。
【0066】
天壁部21には、上の周壁部22における左右の側垂下壁22cよりも外側方に鍔状に張り出した左右の延出部分21bが設けられている。天壁部21の左右両側部すなわち左右の延出部分21bには座3の座シェル体32に螺着するための複数のねじv3が挿通される複数のねじ挿通孔h3が上下方向に貫設されている。つまり、傾動ユニットBを構成する第二ユニット部材2は、ナット部n3を有する座シェル体32に対してねじv3により固定されている。
【0067】
天壁部21の前後方向及び左右方向の中央部の下面側には、支軸Jを保持するための円環状をなす第二軸保持部21aが設けられている。
【0068】
[下の周壁部12]
下の周壁部12における左右の側垂下壁22cには、支軸Jを保持するための左右方向に貫通した軸保持孔22dが設けられている。軸保持孔22dは、左右の側垂下壁22cにおける前後方向中央部に設けられている。なお、支軸Jの先端部(右端部)は、軸受部材jbを介して、右の側垂下壁22cに設けられた軸保持孔22dに支持されるようになっている。
【0069】
<<着座者支持構造物C>>
着座者支持構造物Cは、上面を着座面とした座3と、座3の後部に立設された背凭れRと、座3の左右両側部に立設された左右の肘掛けTとを備えたものである。
【0070】
着座者支持構造物Cには、合成樹脂によりシェル状に形成され座3を構成する座シェル体32、及び、合成樹脂によりシェル状に形成され背凭れRを構成する背凭れ本体部4と肘掛けTを構成する肘掛け本体部5とを有してなる支持シェル体Gが一体的に構成されてなる合成シェル体Uを含んでいる。
【0071】
この実施形態の着座者支持構造物Cは、傾動ユニットBに連結される座シェル体32を有した座3と、合成樹脂によりシェル状に形成され座シェル体32に取り付けられた支持シェル体Gと、支持シェル体Gを覆うカバー体Kとを備えたものである。
【0072】
<座3>
座3は、着座面を有する座本体31と、座本体31の下面に取り付けられる座シェル体32とを備えている。
【0073】
[座本体31]
座本体31は、クッション性を有する座クッションIと、座クッションIにおける上部及び外周部を被覆する座張地Hと、座クッションIの下に取り付けられる板状部材である座インナーシェルQとを備えたものである。
【0074】
座クッションIは、発泡材であるウレタンフォーム材を主体に作られたものである。座クッションIの下面には、板状部材である座インナーシェルQが取り付けられている。
【0075】
座クッションIは、座インナーシェルQに対して上側から外嵌し得るような形状をなしている。座クッションIにおける周縁部には、座インナーシェルQに設けられたサポート壁q12の外面に添接し得る内面を有した垂設部isが設けられている。垂設部isは、座クッションIの周縁部において下方に垂下するような形態をなす部位である。なお、座クッションIにおける垂設部isの下端部は、座インナーシェルQのサポート壁q12における下端qeの直下に位置するように成形されている。
【0076】
座張地Hは、座3の表層部を構成するものである。座張地Hは、内面に発泡シート材を添設させた生地を主体に構成されたものである。座張地Hは、座クッションIの上部及び外周部と、座インナーシェルQの周端縁を被覆するものである。座張地Hは下向きに開放された袋状をなしている。
【0077】
座張地Hの端縁部heは、略環状をなしている。座張地Hの端縁部heは、図示しない紐状部材により巾着状に縮径されるようになっている。座張地Hの端縁部heは、紐状部材により窄まされることにより、起立壁部q11の外向面smに添接又は近接するように配設されるものとなっている。
【0078】
座張地Hの端縁部heは、座インナーシェルQの周縁部近傍に設けられた係留部である第一、第二係留部q2、q3に係留され得るようになっている。
【0079】
座インナーシェルQは、合成樹脂によりシェル状に形成されたものである。座インナーシェルQは、座クッションIを支持するものである。座インナーシェルQは、座本体31の最下部を構成している。座インナーシェルQは、座シェル体32の上面に添設されている。
【0080】
座インナーシェルQには、複数のナット部n6が設けられている。座インナーシェルQは、座シェル体32の周縁部32cに設けられたねじ挿通孔h6に挿通されたねじv6をナット部n6に螺着することにより、座シェル体32に対して取り付けられている。
【0081】
座インナーシェルQは、その上面に座クッションIが載設されたものである。座インナーシェルQは、座インナーシェル本体q1と、座インナーシェル本体q1の周縁部近傍に設けられた係留部である第一、第二係留部q2、q3とを備えたものである。
【0082】
座インナーシェル本体q1は、座シェル体32と座クッションIとの間に介設された座インナーシェルQの主要部を構成するものである。
【0083】
座インナーシェル本体q1は、基板をなす天壁部q10と、天壁部q10の外周端縁に下方に垂下するように設けられ外面側が座クッションIに形成された垂設部isの内面に添接するサポート壁q12と、サポート壁q12よりも内側すなわち座インナーシェル本体q1における中央部側に配設され上下方向に延びた壁状部分である起立壁部q11が設けられている。天壁部q10から下方に垂設されたサポート壁q12及び起立壁部q11との間には、座張地Hの端縁heが収容されるようになっている。
【0084】
第一、第二係留部q2、q3は、座張地Hの端縁heを座インナーシェル本体q1の周縁部に留めるためのものである。第一、第二係留部q2、q3は、座インナーシェルQに設けられた起立壁部q11の外向面sm側に設けられたものである。すなわち、第一、第二係留部q2、q3は、座インナーシェル本体q1を構成するサポート壁q12と起立壁部q11との間に配設されている。
【0085】
第一係留部q2は、座インナーシェルQにおける前部の左右二箇所、及び、座インナーシェルQにおける後部の左右二箇所に配設されている。
【0086】
第二係留部q3は、座インナーシェルQにおける四つの角部、及び、左右両側縁部における前後方向中央部に配設されている。
【0087】
第一係留部q2は、座インナーシェル本体q1の起立壁部q11から片持ち状に延設された基端延設部q21と、基端延設部q21の先端部に連続し座インナーシェルQの中央部方向に向かって延設された先端延設部q22とを備えたものである。
【0088】
基端延設部q21は、起立壁部q11の下端部から外側方に延びてなる外方延出部分qaと、外方延出部分qaの先端部から当該外方延出部分qaに対して略直交する上方に延びてなる上方延出部分qbとを備えたものである。
【0089】
先端延設部q22は、上方延出部分qbの先端部である上端部に設けられ当該上方延出部分qbに対して略直交する内方向に略水平に延びてなるものである。
【0090】
先端延設部q22は、基端から先端に向かって漸次幅狭になるように構成された略三角突片状のものである。先端延設部q22は、座インナーシェルQに設けられたサポート壁q12の下端qeよりも上に配設されている。
【0091】
先端延設部q22は、座張地Hの端縁部heの縮径状態が緩んだ場合、当該端縁部heに対して密に係合し得るように構成されている。なお、座張地Hにおける端縁部heの縮径状態とは、紐状部材により絞り込まれて、端縁部heが起立壁部q11の外向面smに添接又は近接した位置に留め置かれている正規の取付状態のことを指している。
【0092】
座インナーシェル本体q1と第一係留部q2との間、すなわち、起立壁部q11の外向面smと基端延設部q21の外方延出部分qaとの間には、補強用のリブqrが配設されている。
【0093】
[座シェル体32]
座シェル体32は、座本体31を支持するものである。座シェル体32は、支持シェル体Gとは別体のものである。座シェル体32は、傾動ユニットBに支持されるものである。
【0094】
座シェル体32は、座インナーシェルQの周端縁近傍に留め置かれた座張地Hの端縁部heを覆い隠すように座クッションQの下面側に取り付けられるようになっている。
【0095】
座シェル体32は、前後方向及び左右方向中央部の下面側に設けられた傾動ユニット配設部32aと、傾動ユニット配設部32aの外側を、溝状隙間skを介して囲繞するように設けられた保護壁32bと、保護壁32bの外側に設けられた周縁部32cとを備えている。
【0096】
傾動ユニット配設部32aには、傾動ユニットBの第二ユニット部材2が配設されるようになっている。傾動ユニット配設部32aは全体として上方に凹んだ形態をなしている。傾動ユニット配設部32aには、第二ユニット部材2のねじ挿通孔h3に挿通されたねじv3が螺着されるナット部n3が設けられている。また、傾動ユニット配設部32aには、第二ユニット部材2における天壁部21の周端縁に係わり合うように位置決め用の隆起部32dが形成されている。
【0097】
保護壁32bは、基部Dにおける上部の周縁部を覆い得るものである。保護壁32bは、基部Dにおける保護周壁部d2の起立周壁部分d22の外側に配設されている。保護壁32bは、保護周壁部d2との協働により、座3を含む着座者支持構造物Cの傾動時において当該着座者支持構造物Cと基部Dとの間に隙間が露出し難いように構成されている。傾動ユニット配設部32aと保護壁32bとの間の溝状隙間skには、基部Dを構成する保護枠部材d2の起立周壁部分d22が配設されている。
【0098】
周縁部32cには、支持シェル体Gの後取付部tr及び側取付部tsが取り付けられる部位を有している。支持シェル体Gの後取付部tr及び側取付部tsは、周縁部32cの下面側に添接する態様で、座シェル体32に対してねじ止めされている。
【0099】
周縁部32cの後縁部分には、後取付部trのねじ挿通孔h4に挿通されたねじv4が螺着されるナット部n4が配設されている。周縁部32cの左右側縁部分には、側取付部tsのねじ挿通孔h5に挿通されたねじv5が螺着されるナット部n5が配設されている。
【0100】
また、周縁部32cには、座インナーシェルQに設けられたナット部n6に螺着するためのねじv6が挿通されるねじ挿通孔h6が設けられている。
【0101】
<支持シェル体G>
支持シェル体Gは、座3の周縁部に立設された合成樹脂一体成形品である。
【0102】
支持シェル体Gは、起立壁状の部分を主体に構成された背凭れ本体部4と、起立壁状の部分を主体に構成され背凭れ本体部4の左右両側部から前方に向かって一体に延設され上端部を着座者の肘当て部51とした肘掛け本体部5と、背凭れ本体部4の下端部から前方に延設され座シェル体32の下面に取り付けられる後取付部trと、左右の肘掛け本体部5の各下端部から内側方に延設され座シェル体32の下面に取り付けられる側取付部tsとを備えたものであり、これら背凭れ本体部4、左右の肘掛け本体部5、後取付部tr、及び、側取付部tsが合成樹脂により一体に形成されたものである。
【0103】
[背凭れ本体部4]
背凭れ本体部4は、背凭れRを構成するシェル状のものである。背凭れ本体部4は、上下方向及び左右方向に延びた起立壁状の部分を主体に構成されている。背凭れ本体部4は、平面視において後方に凸をなすように湾曲した形状をなしている。また、背凭れ本体部4の上縁部は、正面視において左右方向中央部から外方に向かって漸次下に位置するように緩やかに湾曲したものとなっている。
【0104】
背凭れ本体部4の上端部は、左右の肘掛け本体部5の上端部よりも上方に位置するものとなっている。
【0105】
[左右の肘掛け本体部5]
左右の肘掛け本体部5は、左右の肘掛けTを構成するシェル状をなしたものである。左右の肘掛け本体部5は、上下方向及び前後方向に延びた起立壁状の部分を主体に構成されている。左の肘掛け本体部5と右の肘掛け本体部5は、左右対称に設けられている。
【0106】
左右の肘掛け本体部5には、上端部に着座者の肘当てとして機能する肘当て部51が設けられている。肘当て部51は、側面視において前方に向かって漸次下方に位置するように傾斜している。
【0107】
左右の肘掛け本体部5の下部には、左右方向に貫通した貫通孔52が設けられている。貫通孔52は、水平方向に長手をなした長孔状のものである。
【0108】
左右の貫通孔52は、支持シェル体Gに対してカバー体Kを取り付けるために設けられている。貫通孔52には、支持シェル体Gの上部をカバーするためのカバー体Kに設けられた左右の連結片状部7が挿通されるようになっている。
【0109】
[後取付部tr]
後取付部trは、背凭れ本体部4の下端部から前方に延設されたシェル状のものである。後取付部trの左右二箇所には、座シェル体32に連結するためのねじv4が挿通されるねじ挿通孔h4が設けられている。
【0110】
[側取付部ts]
側取付部tsは、肘掛け本体部5の下端部から内側方に延設されたシェル状のものである。左右の側取付部tsは、後取付部trとは連設されておらず、当該後取付部trから前方に離れた位置に配設されている。左右の側取付部tsには、座シェル体32に連結するためのねじv5が挿通されるねじ挿通孔h5が設けられている。
【0111】
左右の側取付部tsの後部には内方に向かって保護壁32bの切欠部分32eに係わり合う位置決め用の突片tpが突設されている。
【0112】
<カバー体K>
カバー体Kは、着座者支持構造物Cを構成する支持シェル体Gを覆うものである。カバー体Kは、生地を用いた縫製品である。カバー体Kは、内面に発泡シート材を添設させた生地を主体に構成されている。
【0113】
カバー体Kは、下方に開放された袋状をなしている。カバー体Kは、背凭れ本体部4及び肘掛け本体部5を覆うカバー本体部6と、カバー本体部6に連設され左右の肘掛け本体部5の双方に設けられた貫通孔52に挿通されるとともに当該挿通された端部がカバー本体部6の外面に対して止着される左右の連結片状部7と、カバー本体部6に連設され座3の後端部に対して止着される座連結片状部8とを備えたものである。
【0114】
[カバー本体部6]
カバー本体部6は、支持シェル体Gの内面側を被覆する内面被覆部61と、支持シェル体Gの外面側を被覆する外面被覆部62とを備えている。
【0115】
カバー本体部6は、内面被覆部61及び外面被覆部62が連続する境界部分、すなわち、内面被覆部61及び外面被覆部62が繋がっている境界部分が、支持シェル体Gの端縁に沿うように構成されている。
【0116】
肘掛け本体部5に対応する位置に配設された外面被覆部62の外面には、左右の連結片状部7が着脱可能なスナップボタンPを構成する他方のスナップボタン要素p2が配設されている。
【0117】
カバー本体部6の下端縁6eは、略水平に延びるように設定されている。カバー本体部6の下端縁6eよりも下には、カバー本体部6により覆われていない背凭れ本体部4及び肘掛け本体部5の下部が外部に露出するようになっている。
【0118】
[左右の連結片状部7]
左右の連結片状部7は、カバー本体部6における左右の肘掛け本体部5の内面側を被覆する部分に連設されている。
【0119】
左右の連結片状部7は、内面被覆部61の下端部に連設されたものである。左右の連結片状部7は、止着手段であるスナップボタンPにより外面被覆部62の外面に対して着脱可能に構成されている。
【0120】
つまり、左右の連結片状部7には、スナップボタンPを構成する一方のスナップボタン要素p1が配設されており、カバー本体部6における外面被覆部62の外面には一方のスナップボタン要素p1が止着し得る他方のスナップボタン要素p2が配設されている。
【0121】
[座連結片状部8]
座連結片状部8は、カバー本体部6における背凭れ本体部4の内面側を被覆する部分の下端部に連設されている。
【0122】
座連結片状部8は、内面被覆部61の下端部に連設されたものである。座連結片状部8は、止着手段である面ファスナMにより座3の後端部である座本体31の背面に対して着脱可能に構成されている。
【0123】
つまり、座連結片状部8には、面ファスナMを構成する一方の面ファスナ要素m1が配設されており、座本体31の背面には、一方の面ファスナ要素m1が止着し得る他方の面ファスナ要素m2が配設されている。
【0124】
<<脚体のバリエーションを柔軟に設定できる構成について>>
この実施形態の椅子は、形態の異なる複数タイプの脚体すなわち四本の木脚タイプの脚体A(
図1~8等を参照)、四本のキャスタ無し金属フレームタイプの脚体X1(
図32を参照)、四本のキャスタ付金属フレームタイプの脚体X2(
図33を参照)、及び、昇降脚タイプの脚体X3(
図34を参照)から選択された一の脚体を選択可能に構成されている。
【0125】
図32では、四本のキャスタ無し金属フレームタイプの脚体X1を示している。当該脚体X1は、下端にキャスタを設けていない金属フレーム製の脚本体Eと、脚本体Eに支持された基部Dとを備えている。
図32に示す脚体X1の基部Dは、先に詳述した四本の木脚タイプの脚体Aの基部Dと同一の構造をなしている。
【0126】
図33では、四本のキャスタ付金属フレームタイプの脚体X2を示している。当該脚体X2は、下端にキャスタcsを設けた金属フレーム製の脚本体Eと、脚本体Eに支持された基部Dとを備えている。
図33に示す脚体X2の基部Dは、先に詳述した四本の木脚タイプの脚体Aの基部Dと同一の構造をなしている。
【0127】
図34では、昇降脚タイプの脚体X3を示している。当該脚体X3の脚本体Eは、先端部にキャスタcsを設けた複数の脚羽根xaと、上下方向に延びてなり脚羽根xaの基端部が接続される脚支柱xbとを備えたものである。脚体X3の脚支柱xbは、下部に配された脚支柱ベースxb1と、脚支柱ベースxb1に対して上下動可能に支持された脚支柱シリンダーxb2とを備えたものである。脚体X3の基部Dは、シリンダー部材xb2の上端部がテーパー嵌合し得る嵌合穴xcを有するとともに上下方向に貫通した複数のねじ挿通孔xdを有し傾動ユニットBにおける底壁部11の下面に連結されるものとなっている。
【0128】
この実施形態の椅子は、選択された一の脚体に共通仕様の傾動ユニットBを取り付けることができるようになっている。そして、共通仕様の傾動ユニットBに対して座3を含んで構成された着座者支持構造物Cを支持させている。そのため、脚体のバリエーションを柔軟に設定可能な構成が実現されたものとなっている。
【0129】
上述した実施形態の椅子であれば、傾動ユニットBを介して脚体(脚体A、脚体X1、脚体X2、脚体X3)と座3とを繋げた構成にしており、傾動ユニットBの第一ユニット部材1がねじv2により脚体に対して固定される構成を採るものであるため、脚体Aに対して傾動可能な座3を有した椅子において、脚体のバリエーションを柔軟に設定し得る設計の自由度に優れた構成、すなわち、様々な脚体を展開し易い構成を提供することができるものとなる。
【0130】
また、上述した実施形態の椅子であれば、カバー体Kが、支持シェル体Gの左右に設けられた貫通孔52に挿通される左右の連結片状部7を備えているため、支持シェル体Gに設けられた背凭れ本体部4と左右の肘掛け本体部5とをカバー体Kにより好適に覆うことができるものとなっている。
【0131】
また、上述した実施形態の椅子であれば、好適な外観の形成に資する木製の主脚本体部e1を適用し得るとともに当該主脚本体部e1に支持される脚フレーム部e2を好適に形成し得る設計の自由度に優れたものとなる。
【0132】
また、上述した実施形態であれば、座シェル体32が支持シェル体Gとは別個に構成されて、止着具であるねじを用いて支持シェル体Gに対して連結されたものであるため、着座者支持構造物Cの基礎的な構造をなすシェル体すなわち座シェル体32と支持シェル体Gとの連結構造物を柔軟に形成し得る設計の自由度に優れたものとなっている。
【0133】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子は、座3を構成する板状部材である座インナーシェルQと、座3の表層部を構成し端縁部heが座インナーシェルQの周縁部近傍に設けられた係留部である第一、第二係留部q2、q3に係留される張地たる座張地Hとを備えたものである。
【0134】
そして、第一係留部q2が、座インナーシェル本体q1から片持ち状に延設された基端延設部q21と、基端延設部q21の先端部に連続し座インナーシェルQの中央部方向に向かって延設された先端延設部q22とを備えたものである。基端延設部q21と先端延設部q22との境界部で延びる方向が変化したものとなっている。
【0135】
このため、本実施形態であれば、座張地Hの端縁部heを縮径させる紐状部材が緩んでしまった場合や、座張地H全体の収縮力や着座荷重等によって座張地Hにおける特定の端縁部heが外方に過大にずれ動いてしまった場合であっても、座張地Hの端縁部heが座インナーシェルQから離脱し難い好適な構成を備えた椅子を提供することができるものとなる。
【0136】
先端延設部q22は、基端から先端に向かって漸次幅狭になるように構成された略三角突片状のものである。
【0137】
このため、先端延設部q22は、座張地Hの端縁部heに引っ掛かるように係合し易い好適な形状のものとなっている。
【0138】
他方、基端延設部の形態が略四角突片状のものであってもよい。そして、略四角突片状をなす基端延設部の先端部側に設けられる一対の角部を丸く形成すれば、座張地Hが基端延設部によって破れにくいものとなる。
【0139】
座インナーシェルQは、その上面に座クッションIが載設されたものであり、座張地Hが、座クッションIの上部及び外周部と、座インナーシェルQの周端縁を被覆するものである。
【0140】
このため、座張地Hは、座クッションIを好適に被覆し得るものとなっている。
【0141】
座張地Hは、座クッションIを圧縮して紐状部材により巾着絞りされ、端縁部heは座クッションIの反発で外側に引っ張られる。そのため、紐状部材を有する端縁部heは、先端延設部q22に引っ掛かるか、又は、先端延設部q22と基端延設部q21との間の境界部分近傍に収まるものとなる。
【0142】
また、座インナーシェルQの周端縁であるサポート壁q12の下端qeと座張地Hとの間には座クッションIの垂設部isが介在するため、座張地Hが擦り切れることが適切に抑制されるものとなっている。
【0143】
座インナーシェルQに備えた起立壁部q11は、着座者の動作等によって座張地Hがずれ動いた場合や座張地Hを取り付ける際に、紐状部材により巾着状に縮径し過ぎた場合において、座張地Hの端縁heが座インナーシェル本体q1の中心部裏面側に入り込むことを防ぐものとなっている。
【0144】
第一係留部q2が、座インナーシェルQに備えた起立壁部q11の外向面sm側に設けられたものである。そして、基端延設部q21が、外向面smから外側方に延びてなる外方延出部分qaと、外方延出部分qaの先端部から上方に延びてなる上方延出部分qbと、上方延出部分qbの先端部に設けられた先端延設部q22とを備えたものである。
【0145】
このため、第一係留部q2は、座張地Hの端縁部heが緩んだり移動したりした場合であっても、当該端縁部heを先端延設部q22によって係止し得る好適な形態に設定されたものとなっている。
【0146】
外向面smと外方延出部分qaとの間に補強用のリブqrが配設されている。
【0147】
このため、第一係留部q2は、座インナーシェル本体q1の起立壁部q11に対して強度が確保された態様で好適に配設されたものとなっている。
【0148】
端縁部heが環状をなし、図示しない紐状部材により巾着状に縮径されることにより、外向面smに添接又は近接するように配設されるものである。そして、先端延設部q22が、端縁部heの縮径状態が緩んだ場合に当該端縁部heに対して密に係合し得るように構成されている。
【0149】
このため、先端延設部q22は、縮径状態が緩んだ端縁部heに対して密に係合することにより、所期の離脱抑制機能を好適に発揮し得るものとなっている。
【0150】
座インナーシェルQの外周端縁に、下方に垂下するように設けられ外面側が座クッションIに添接するサポート壁 q12が設けられたものである。そして、先端延設部q22が、サポート壁q22の下端よりも上に配設されている。
【0151】
このため、先端延設部q22は、縮径状態が緩んだ端縁部heに対して係合し易い好適な高さ位置に配設されたものとなっている。
【0152】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0153】
座を構成する板状部材の下面側が座裏カバー体により覆われたものであり、この座裏カバー体の外周縁部が、張地を介して座クッションを押圧し得る構成のものであってもよい。
【0154】
係留部を設けた構成は座に限られるものではなく、背凭れであってもよい。
【0155】
つまり、座や背凭れを構成する板状部材と、座や背凭れの表層部を構成し端縁部が板状部材の周縁部近傍に設けられた係留部に係留される張地とを備えた椅子であって、係留部が、板状部材本体から片持ち状に延設された基端延設部と、この基端延設部の先端部に連続し前記板状部材の中央部方向に向かって延設された先端延設部とを備えたものであってもよい。
【0156】
かかる座や背凭れについてより具体的に説明すれば、板状部材が、座や背凭れを構成するものであり当該板状部材の前面側に座クッション又は背クッションが添設されたものであり、張地が、座や背クッションの前部及び外周部と、板状部材の周端縁を被覆するものを挙げることができる。
【0157】
例えば、
図35に示すように、板状部材Qの背面側がシェル体である背座裏カバー体32により覆われたものであり、この背座裏カバー体32の外周縁部32eが、背座張地Hsを介して背座クッションIsを押圧し得るものであってもよい。背座裏カバー体32の外周縁部32eと座インナーシェルQの周端縁であるサポート壁q12の間に背座張地Hs及び背座クッションIsを挟み込んで圧縮する状態にしてもよい。
【0158】
また、
図36に示すように、座及び背凭れにおいて、先端延設部q22の先端に、当該先端延設部q22の延出方向とは異なる方向に突出した突出部qtが設けられているものであってもよい。
【0159】
基端延出部は、上述した実施形態のように外方延出部分と上方延出部分とを備えた二方向に延びたL字状の形態のものでなくてもよい。換言すれば、基端延出部は、特定の一方向に延びてなるだけのものであってもよいし、三方向又はそれよりも多くの多方向に延びてなる構成のものであってもよい。
【0160】
また、基端延出部が、そのまま同方向に延びて先端延出部に繋がったものであってもよい。
【0161】
その一例として、
図37及び
図38に示すように、基板であるシェル本体q1の一部に外向きコ字状の切り抜き孔kaを設け、その内部に内向き突片状をなす先端延出部q22及び突出部qtが出現するように構成するものを挙げることができる。なお、この例の場合、コ字状の切り抜き孔kaの周縁部には、張地Hの端縁部he及び紐状部材を先端延出部q22に対して係合させやすくするために、端縁部he及び紐状部材を案内・誘導する傾斜面SLを設けることが好ましい。
【0162】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0163】
A…脚体
B…傾動ユニット
C…着座者支持構造物
D…基部
Ef・Er…前脚・後脚(脚本体)
H…座張地(張地)
he…端縁部
K…カバー体
G…支持シェル体
Q…座インナーシェル(板状部材)
q2…係留部
1…第一ユニット部材
2…第二ユニット部材
3…座
4…背凭れ本体部
5…肘掛け本体部
6…カバー本体部
7…連結片状部