(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039835
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】検出装置、検出システム、検出方法、検出プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
B65B 57/00 20060101AFI20240315BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B65B57/00 A
G01N21/88 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144494
(22)【出願日】2022-09-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】590002666
【氏名又は名称】新日本電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB20
2G051CA04
2G051CB01
2G051ED21
(57)【要約】
【課題】加締部の異常を精度良く検出することができる検出装置、検出システム、検出方法、検出プログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】金属板部材に形成された円形状の開口部に円筒状の口金が加締められて成る環状の加締部の異常を検出する検出装置3であって、加締部を撮像する撮像装置2から加締部画像Pを取得する入力部60(画像取得手段)と、加締部画像Pから加締部の内周側の第1稜線と加締部の外周側の第2稜線とを抽出する稜線抽出部40(稜線抽出手段)と、第1稜線及び第2稜線間の間隔を加締部の帯幅として加締部の全周に亘って計測して帯幅データを得る帯幅計測部41(帯幅計測手段)と、帯幅データに基づいて加締部の異常の有無を判定する判定部43(判定手段)と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板部材に形成された円形状の開口部に円筒状の口金が加締められて成る環状の加締部の異常を検出する検出装置であって、
前記加締部を撮像する撮像装置から加締部画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された前記加締部画像から前記加締部の内周側の第1稜線と前記加締部の外周側の第2稜線とを抽出する稜線抽出手段と、
前記稜線抽出手段により抽出された前記第1稜線及び前記第2稜線間の間隔を前記加締部の帯幅として前記加締部の全周に亘って計測して帯幅データを得る帯幅計測手段と、
前記帯幅計測手段により得られた前記帯幅データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
金属板部材に形成された円形状の開口部に円筒状の口金が加締められて成る環状の加締部の異常を検出する検出装置であって、
前記加締部を撮像する撮像装置から加締部画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された前記加締部画像から前記加締部の内周側の第1稜線と前記加締部の外周側の第2稜線と該第1及び第2稜線の間であって前記加締部上の所定の凹凸を囲む第3稜線とを抽出する稜線抽出手段と、
前記稜線抽出手段により抽出された前記第1稜線及び前記第2稜線間の間隔と前記第3稜線で囲われた領域の幅との差を前記加締部の帯幅として前記加締部の全周に亘って計測して帯幅データを得る帯幅計測手段と、
前記帯幅計測手段により得られた前記帯幅データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の検出装置であって、
前記判定手段は、
前記帯幅データにおける前記帯幅の最大値と最小値との差が所定差を超える場合に、前記加締部に異常が有ると判定することを特徴とする検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検出装置であって、
前記判定手段は、
前記帯幅データにおける前記帯幅の前記最大値が所定値を超える場合に、前記加締部に異常が有ると判定することを特徴とする検出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の検出装置であって、
前記帯幅計測手段により得られた前記帯幅データにおける前記帯幅の変化量を算出して変化量データを得る変化量算出手段をさらに備え、
前記判定手段は、
前記変化量算出手段により得られた前記変化量データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定することを特徴とする検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の検出装置と、前記撮像装置と、を備えたことを特徴とする検出システム。
【請求項7】
金属板部材に形成された円形状の開口部に円筒状の口金が加締められて成る環状の加締部の異常を検出する検出方法であって、
前記加締部を撮像する撮像装置から加締部画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにより取得された前記加締部画像から前記加締部の内周側の第1稜線と前記加締部の外周側の第2稜線とを抽出する稜線抽出ステップと、
前記稜線抽出ステップにより抽出された前記第1稜線及び前記第2稜線間の間隔を前記加締部の帯幅として前記加締部の全周に亘って計測して帯幅データを得る帯幅計測ステップと、
前記帯幅計測ステップにより得られた前記帯幅データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定する判定ステップと、を備えたことを特徴とする検出方法。
【請求項8】
請求項7に記載の検出方法をコンピュータに実行させることを特徴とする検出プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の検出プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属製缶の天板部材等の金属板部材に形成された開口部に口金が加締められて成る加締部の異常を検出するための検出装置、検出システム、検出方法、検出プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、燃料、溶剤、油等の液体を収容する金属製缶の天板部材には、収容物である液体を注ぎだすための注出口が設けられている。注出口は、例えば、天板部材に形成された円形状の開口部に加締めて装着された円筒状の口金で形成されている。口金が天板部材に適切に加締められていないと、その加締部から液漏れが発生する虞がある。このため、加締部の異常として加締不良を検出するために、例えば、特許文献1に記載のような検出方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の検出方法は、加締部の内外両側の稜線R1,R2を切り出し、各稜線と近似真円とに囲まれた領域Z1,Z2の面積が所定の判定基準面積以上である場合に、加締不良と判定する(特許文献1における
図8参照)。
【0005】
しかしながら、そのような手法では、何等かの異常によって加締部の膨出或いは陥没が発生したとしても、領域Z1,Z2の面積が所定の判定基準面積未満であれば、実際には加締部の加締が不良であって加締部の異常が有るにも拘らず加締部に異常が無いと誤判定されてしまうことがあるという問題があった。
【0006】
本開示は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、加締部の異常を精度良く検出することができる検出装置、検出システム、検出方法、検出プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本明細書で開示される検出装置は、金属板部材に形成された円形状の開口部に円筒状の口金が加締められて成る環状の加締部の異常を検出する検出装置であって、前記加締部を撮像する撮像装置から加締部画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得された前記加締部画像から前記加締部の内周側の第1稜線と前記加締部の外周側の第2稜線とを抽出する稜線抽出手段と、前記稜線抽出手段により抽出された前記第1稜線及び前記第2稜線間の間隔を前記加締部の帯幅として前記加締部の全周に亘って計測して帯幅データを得る帯幅計測手段と、前記帯幅計測手段により得られた前記帯幅データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本明細書で開示される他の検出装置は、金属板部材に形成された円形状の開口部に円筒状の口金が加締められて成る環状の加締部の異常を検出する検出装置であって、前記加締部を撮像する撮像装置から加締部画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得された前記加締部画像から前記加締部の内周側の第1稜線と前記加締部の外周側の第2稜線と該第1及び第2稜線の間であって前記加締部上の所定の凹凸を囲む第3稜線とを抽出する稜線抽出手段と、前記稜線抽出手段により抽出された前記第1稜線及び前記第2稜線間の間隔と前記第3稜線で囲われた領域の幅との差を前記加締部の帯幅として前記加締部の全周に亘って計測して帯幅データを得る帯幅計測手段と、前記帯幅計測手段により得られた前記帯幅データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
前記検出装置において、前記判定手段は、前記帯幅データにおける前記帯幅の最大値と最小値との差が所定差を超える場合に、前記加締部に異常が有ると判定してもよい。
【0010】
前記検出装置において、前記判定手段は、前記帯幅データにおける前記帯幅の前記最大値が所定値を超える場合に、前記加締部に異常が有ると判定してもよい。
【0011】
前記検出装置において、前記帯幅計測手段により得られた前記帯幅データにおける前記帯幅の変化量を算出して変化量データを得る変化量算出手段をさらに備え、前記判定手段は、前記変化量算出手段により得られた前記変化量データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定してもよい。
【0012】
本明細書で開示される検出システムは、前記検出装置と、前記撮像装置と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
本明細書で開示される検出方法は、金属板部材に形成された円形状の開口部に円筒状の口金が加締められて成る環状の加締部の異常を検出する検出方法であって、前記加締部を撮像する撮像装置から加締部画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにより取得された前記加締部画像から前記加締部の内周側の第1稜線と前記加締部の外周側の第2稜線とを抽出する稜線抽出ステップと、前記稜線抽出ステップにより抽出された前記第1稜線及び前記第2稜線間の間隔を前記加締部の帯幅として前記加締部の全周に亘って計測して帯幅データを得る帯幅計測ステップと、前記帯幅計測ステップにより得られた前記帯幅データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定する判定ステップと、を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
本明細書で開示される検出プログラムは、前記検出方法をコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0015】
本明細書で開示される記録媒体は、前記検出プログラムを記録したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、加締部の異常を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1における検出システムの模式図である。
【
図5】検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】検出装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】判定部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態1における稜線抽出部及び帯幅計測部による処理を説明するための図である。
【
図9】加締部の加締が良好である場合の帯幅データの一例を示す図である。
【
図10】加締部の加締が不良である場合の帯幅データの一例を示す図である。
【
図11】加締部の加締が不良である場合の帯幅データの他の例を示す図である。
【
図12】加締部の加締が良好である場合の変化量データの一例を示す図である。
【
図13】加締部の加締が不良である場合の変化量データの一例を示す図である。
【
図14】加締部の加締が不良である場合の変化量データの他の例を示す図である。
【
図15】加締部画像の他の例の一部を示す図である。
【
図16】実施形態1における稜線抽出部及び帯幅計測部による処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各実施形態の間で同一の構成要素には同一の符号を付し、それら構成要素について重複する説明は省略する。
【0019】
(実施形態1)
-検出システム-
図1は、実施形態1における検出システム1の模式図である。
図1において、矢符Xは、搬送ラインLの搬送方向を示すものである。
図2は、金属製缶Aの一例を示す斜視図である。
図3は、加締部93の一例を示す断面図である。
【0020】
検出システム1は、例えば、金属製缶Aの天板部材11として用いられる金属板部材90の製造工程の後工程である検査工程で用いられるものである(
図1参照)。
【0021】
金属製缶Aは、例えば
図2に示すような角缶であり、板材の両端部がシーム溶接等のシーム部10aで継ぎ合わされて成る角筒部材10と、角筒部材10の上下両端の開口を閉塞する天板部材11及び底板部材12と、を含んで構成されている。なお、金属製缶Aは、ペール缶等であってもよく、金属製缶Aの容量及び形態は限定されない。
【0022】
金属製缶Aの天板部材11には、収容物である液体を注ぎだすための注出口13が設けられている。注出口13は、天板部材11(金属板部材90)に形成された円形状の開口部91に加締めて装着された円筒状の口金92で形成されている(
図2参照)。口金92は、例えば
図3に示すように、開口部91の周縁部を折り返して形成された開口折返し部91aに、口金92の基端周縁部を折り返して形成された口金折返し部92aを嵌合させることで、金属板部材90の開口部91に加締められる。口金92が金属板部材90の開口部91に加締められて成る加締部93は、環状を呈している。
【0023】
なお、
図3に示す加締部93の断面図は、一例を示したにすぎず、金属板部材90の開口部91に対する口金92の加締の形態は限定されない。
【0024】
検出システム1は、金属板部材90における加締部93の異常を検出するものであり、搬送ラインL上に配された撮像装置2と、撮像装置2に通信可能に接続された検出装置3と、を備えている(
図1参照)。本実施形態において、加締部93の異常とは、加締部93の加締不良を含む。搬送ラインL上には、検出装置3により加締部93の異常が検出された金属板部材90を不良品として搬送ラインL外に排出する不良品排出部8が設けられている。不良品排出部8は、例えば、不良品を搬送ラインLから離脱させるエアシリンダ80と、不良品を収容する不良品収容箱81と、を含んで構成されている。
【0025】
【0026】
撮像装置2は、撮像用照明2aとともに、遮光性の撮像ボックス2b内に収容されている。撮像装置2は、スチルカメラ、ビデオカメラ等により構成されており、搬送ラインL上で撮像ボックス2b内に搬送されてきた金属板部材90における加締部93を金属板部材90の裏面側から撮像し、その撮像画像である加締部画像Pを検出装置3に出力する。加締部93は、撮像用照明2aの光を反射することで、
図4に示すように加締部画像Pにおいて明るく現れる。
【0027】
図5は、検出装置3の構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
検出装置3は、処理部4と、記憶部5と、入力部60(取得部)と、出力部61と、表示部7と、を備えている(
図5参照)。
【0029】
処理部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって実現される。処理部4は、稜線抽出部40(稜線抽出手段)と、帯幅計測部41(帯幅計測手段)と、変化量算出部42(変化量算出手段)と、判定部43(判定手段)と、を有している(
図5参照)。これら各部は、記憶部5に記憶されたプログラム50の一部であり、処理部4の制御によって読み出されることにより処理を実行する。これら各部による処理については、後にフローチャートを参照して詳述する。
【0030】
記憶部5は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、PROM(Programmable ROM)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリによって実現される。記憶部5には、プログラム50が記憶されるとともに、処理部4による処理に用いるための各種データ等が記憶される。また、記憶部5には、処理部4によって出力された各種データが記憶される。
【0031】
入力部60には、撮像装置2が接続されている。出力部61には、コントローラ80aを介してエアシリンダ80が接続されている。
【0032】
表示部7は、例えば、処理部4の処理状況等の各種情報を表示するディスプレイ70と、加締部93の異常が検出された際に点灯するシグナルタワー71と、を含んで構成されている(
図1参照)。
【0033】
-検出装置による処理手順-
続いて、本実施形態における検出装置3による処理手順を説明する。
【0034】
図6は、検出装置3による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7は、判定部43による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8は、実施形態1における稜線抽出部40及び帯幅計測部41による処理を説明するための図である。
【0035】
先ず、
図6に示すステップST1において、検出装置3は、入力部60で撮像装置2から加締部画像Pを取得する。
【0036】
次に、ステップST2において、処理部4の稜線抽出部40は、ステップST1で取得された加締部画像Pに公知のエッジ強調処理等を施して、
図8に示すように加締部画像Pから加締部93の内周側の第1稜線E1と加締部93の外周側の第2稜線E2とを抽出する。稜線抽出部40が第1稜線E1及び第2稜線E2を抽出する際に、加締部画像Pに二値化処理が施されてもよいし、加締部画像Pに明暗反転処理或いは白黒反転処理が施されてもよい。
【0037】
図9は、加締部93の加締が良好である場合の帯幅データWの一例を示す図である。
図10は、加締部93の加締が不良である場合の帯幅データWの一例を示す図である。
図11は、加締部93の加締が不良である場合の帯幅データWの他の例を示す図である。
図9~
図11において、横軸は、加締部93の周方向における角度位置(位相)を示し、縦軸は、加締部93の帯幅を示す。
【0038】
続いて、ステップST3において、処理部4の帯幅計測部41は、ステップST2で稜線抽出部40により抽出された第1稜線E1及び第2稜線E2間の間隔を加締部93の帯幅として加締部93の全周に亘って計測する。
【0039】
帯幅計測部41は、例えば、次のように加締部93の帯幅を計測する。帯幅計測部41は、
図8に示すように加締部画像Pから加締部93の中心O(オー)を特定し、中心Oから加締部93の径方向に基準線RLを引く。そして、帯幅計測部41は、中心Oから加締部93の径方向に延びる仮想線VLが第1稜線E1,第2稜線E2とそれぞれ交差する第1交差点P1,第2交差点P2間の距離Dを帯幅として計測し、仮想線VL及び基準線RLが成す角度θと帯幅との関係を、
図9~
図11に示すような帯幅データWとして得る。仮想線VLと基準線RLとが成す角度θは、加締部93の周方向における角度位置(位相)に相当する。
【0040】
図12は、加締部93の加締が良好である場合の変化量データVの一例を示す図である。
図13は、加締部93の加締が不良である場合の変化量データVの一例を示す図である。
図14は、加締部93の加締が不良である場合の変化量データVの他の例を示す図である。
図12~
図14において、横軸は、加締部93の周方向における角度位置(位相)を示し、縦軸は、加締部93の帯幅変化量を示す。
【0041】
さらに、ステップST4において、処理部4の変化量算出部42は、ステップST3で帯幅計測部41により得られた帯幅データWにおける帯幅の変化量(帯幅変化量)を算出する。変化量算出部42は、例えば、加締部93の周方向における角度位置(位相)と、
図9~
図11に示すような位相の変化量ΔXに対する帯幅変化量ΔYであるΔY/ΔXの絶対値との関係を、
図12~
図14に示すような変化量データVとして得る。変化量データVは、帯幅データWが表す曲線を一次微分して絶対値で表したものに類似する。なお、帯幅データWにおける帯幅の変化量(帯幅変化量)を算出方法は、上記に限定されない。
【0042】
そして、ステップST5において、処理部4の判定部43は、ステップST3で帯幅計測部41により得られた帯幅データWとステップST4で変化量算出部42により得られた変化量データVとに基づいて加締部93の異常の有無を判定する。判定部43による処理の一例を、
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
ステップST50において、判定部43は、帯幅データWにおける帯幅の最大値W1を所定の閾値T1と比較する。閾値T1は、例えば、加締部93の帯幅の設計寸法の110%程度である。
【0044】
加締部93の加締が良好である場合、加締部93の全周に亘って帯幅が概ね均等となることから、
図9に示すように帯幅の最大値W1が閾値T1以下となる。この場合、判定部43は、次のステップST51に進む。
【0045】
一方で、加締部93の加締が不良である場合、
図10に示すように帯幅の最大値W1が閾値T1を超え得る。これは、例えば異物のみ込み、口金92或いは開口部91の変形不足或いは材料不良等の異常によって加締が良好に成されなかった結果、加締部93の膨出が発生することで、加締部93の帯幅が過度に大きくなることによる。従って、判定部43は、最大値W1が閾値T1を超える場合に、ステップST53に進み、加締部93に異常が有ると判定する。
【0046】
続いて、ステップST51において、判定部43は、帯幅データWにおける帯幅の最大値W1と最小値W2との差ΔWを所定の差閾値(図示しない)と比較する。差閾値は、例えば、加締部93の帯幅の設計寸法の30%程度である。
【0047】
加締部93の加締が良好である場合、加締部93の全周に亘って帯幅が概ね均等となることから、差ΔWが差閾値以下となる。この場合、判定部43は、次のステップST52に進む。
【0048】
一方で、加締部93の加締が不良である場合、差ΔWが差閾値を超え得る。これは、例えば異物のみ込み、口金92或いは開口部91の変形不足或いは材料不良等の異常によって加締が良好に成されなかった結果、加締部93の膨出或いは陥没が発生することで、加締部93の帯幅が過度に大きく或いは小さくなることによる。従って、判定部43は、最大値W1と最小値W2と差ΔWが差閾値を超える場合に、ステップST53に進み、加締部93に異常が有ると判定する。
【0049】
さらに、ステップST52において、判定部43は、変化量データVにおける帯幅変化量の変動具合を所定の条件と比較する。判定部43は、例えば
図14に示すような帯幅変化量の値が所定の変化量閾値T2を超える変化量増加部α1~α4を比較対象として抽出し、変化量増加部α1~α4における位相の幅β1~β4のいずれかが所定の位相幅閾値(図示しない)を超える場合に、帯幅変化量の変動が大きいと判断する。変化量閾値T2は、例えば、加締部93の帯幅の設計寸法の15%程度であり、位相幅閾値は、例えば、4~20°程度である。変化量増加部α1~α4が出現しているが位相の幅β1~β4のいずれもが位相幅閾値以下である場合、判定部43は、変化量増加部α1~α4が帯幅データWにおけるノイズに起因するものであるとして、帯幅変化量の変動が小さいと判断する。
【0050】
加締部93の加締が良好である場合、加締部93の全周に亘って帯幅が概ね均等となることから、例えば
図12に示すように、帯幅変化量の値が変化量閾値T2以下となる。この場合、ステップST52において、判定部43は、帯幅変化量の変動が小さいと判断する。判定部43は、ステップST54に進み、ステップST50~ステップST52における処理の結果、加締部93に異常が無いと判定する。
【0051】
一方で、加締部93の加締が不良である場合、例えば
図14に示すように、変化量増加部α1~α4が出現し、かつ、変化量増加部α2,α4における位相の幅α2,α4が位相幅閾値を超え得る。これは、例えば異物のみ込み、口金92或いは開口部91の変形不足或いは材料不良等の異常によって加締が良好に成されなかった結果、加締部93の局所的な膨出或いは陥没が発生することで、帯幅変化量が過度に変動することによる。この場合、ステップST52において、判定部43は、帯幅変化量の変動が大きいと判断する。従って、判定部43は、帯幅変化量の変動が大きいと判断した場合に、ステップST53に進み、加締部93に異常が有ると判定する。
【0052】
ステップST5において処理部4の判定部43が加締部93に異常が有ると判定した場合、図示しないステップにおいて、検出装置3は、出力部61からエアシリンダ80に対して、加締部93の異常が検出された不良品を搬送ラインLから離脱させるように指示するとともに、表示部7のシグナルタワー71を点灯させる。
【0053】
このようにして、検出装置3は、処理部4の判定部43で帯幅データW及び変化量データVに基づいて加締部93の異常の有無を判定することで、加締部93の異常を検出する。
【0054】
上記のような検出装置3によって、加締が良好に成されなかった結果発生した加締部93の膨出或いは陥没が帯幅データW及び変化量データVに基づいて検出されることから、加締部93の加締不良を含む加締部93の異常を精度良く検出することができる。
【0055】
なお、閾値T1、差閾値、変化量閾値T2及び位相幅閾値の各種閾値は、上記の設定に限られず、また、金属板部材90のマスターワーク(理想的な形状の加締部93を有する金属板部材90のワーク)に基づいて設定されてもよい。また、各種閾値は、製品の異品種、異ロット等の混入の検知にも用いられ得る。
【0056】
なお、
図6に示すステップST5において、処理部4の判定部43は、単に、ステップST3で帯幅計測部41により得られた帯幅データWに基づいて加締部93の異常の有無を判定してもよい。このような場合であっても、加締が良好に成されなかった結果発生した加締部93の膨出或いは陥没が帯幅データWに基づいて検出されることから、加締部93の加締不良を含む加締部93の異常を精度良く検出することができるという上記の効果に変わりはない。
【0057】
例えば、
図7に示すステップST51において、判定部43は、帯幅データWにおける差ΔWが差閾値以下である場合にステップST54に進み、加締部93に異常が無いと判定してもよい。あるいは、
図7に示すステップST50において、判定部43は、帯幅の最大値W1が閾値T1以下である場合にステップST54に進み、加締部93に異常が無いと判定してもよい。
【0058】
上記のステップST52のように、判定部43が変化量データVに基づいて加締部93の異常の有無を判定することにより、例えば、
図11に示すように帯幅の最大値W1が閾値T1以下でありかつ差ΔWが差閾値以下であって、一見、加締部93に異常が無いと見受けられる場合であっても、加締が良好に成されなかった結果発生した加締部93の局所的な膨出或いは陥没が変化量データVに基づいて検出される。これにより、加締部93の加締不良を含む加締部93の異常をさらに精度良く検出することができる。
【0059】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、上記実施形態1とは異なる点についてのみ説明する。実施形態2において、加締部93の異常とは、加締部93の加締不良と、加締部93上の凹み、汚れ、傷等の加締部93の外観不良と、を含む。
【0060】
図15は、加締部画像Pの他の例の一部を示す図である。
図16は、実施形態2における稜線抽出部40及び帯幅計測部41による処理を説明するための図である。
【0061】
実施形態2において、
図6に示すステップST2及びステップST3の処理は、実施形態1におけるものと以下に説明するように異なる。
【0062】
ステップST2において、検出装置3の処理部4の稜線抽出部40は、ステップST1で取得された加締部画像Pに公知のエッジ強調処理等を施して、
図16に示すように加締部画像Pから加締部93の内周側の第1稜線E1と加締部93の外周側の第2稜線E2とに加えて、第1稜線E1及び第2稜線E2の間であって加締部93上の所定の凹凸を囲む第3稜線E3とを抽出する。所定の凹凸とは、例えば、加締部93上の凹み、汚れ、傷等によって、
図15に示すように加締部画像Pにおいて周辺部分に対してコントラスト(明暗の差)が強く現れる凹凸Uのような凹凸である。
【0063】
なお、第3稜線E3は、1つに限られず、加締部93上の凹み、汚れ、傷等の数に応じて複数抽出されてもよい。
【0064】
ステップST3において、帯幅計測部41は、ステップST2で稜線抽出部40により抽出された第1稜線E1及び第2稜線E2間の間隔と第3稜線E3で囲われた領域Rの幅との差を加締部93の帯幅として加締部93の全周に亘って計測する。
【0065】
帯幅計測部41は、例えば、
図8に示すように仮想線VLが第1稜線E1,第2稜線E2とそれぞれ交差する第1交差点P1,第2交差点P2に加えて、仮想線VLが第3稜線E3と交差する複数の第3交差点P3(
図16に示す例では、2つの第3交差点P31,P32)を特定する。そして、帯幅計測部41は、第1交差点P1,第3交差点P31間の距離D1と第3交差点P32,第2交差点P2間の距離D2との和を帯幅として計測し、仮想線VLと基準線RLとが成す角度θと帯幅との関係を、帯幅データWとして得る。
【0066】
距離D1と距離D2と和は、第1交差点P1,第2交差点P2間の距離Dと、第3稜線E3で囲われた領域Rにおいて仮想線VLに沿う方向の幅Wrと、の差と同等である。すなわち、実施形態2における帯幅計測部41は、実施形態1における帯幅計測部41が計測する帯幅から、領域Rで表される所定の凹凸の幅分を差し引いたものを帯幅として計測する。従って、実施形態2における加締部93の帯幅は、加締部93の外観不良が発生することで、過度に小さくなる。加締部93の外観が不良である場合、帯幅データWにおける差ΔWが差閾値を超え得るとともに、変化量データVにおける帯幅変化量の変動が大きくなり得る。
【0067】
このため、ステップST5において、処理部4の判定部43は、ステップST3で帯幅計測部41により得られた帯幅データWとステップST4で変化量算出部42により得られた変化量データVとに基づいて、加締部93の加締不良及び外観不良を含む加締部93の異常の有無を判定する。なお、ステップST5、ステップST50~ステップST54における処理の内容は、実施形態1におけるものと同様である。
【0068】
なお、ステップST2において複数の第3稜線E3が抽出された場合、「第3稜線E3で囲われた領域Rの幅」は、各第3稜線E3で囲われた各領域において仮想線VLに沿う方向の各幅の総和であってもよい。
【0069】
上記のような検出装置3によって、加締が良好に成されなかった結果発生した加締部93の膨出或いは陥没と、加締部93の外観不良と、が帯幅データW及び変化量データVに基づいて包括的に検出されることから、加締部93の加締不良のみならず外観不良をも含む加締部93の異常を精度良く検出することができる。
【0070】
なお、
図6に示すステップST5において、処理部4の判定部43は、単に、ステップST3で帯幅計測部41により得られた帯幅データWに基づいて加締部93の異常の有無を判定してもよい。このような場合であっても、加締が良好に成されなかった結果発生した加締部93の膨出或いは陥没と、加締部93の外観不良と、が帯幅データWに基づいて包括的に検出されることから、加締部93の加締不良のみならず外観不良をも含む加締部93の異常を精度良く検出することができるという上記の効果に変わりはない。
【0071】
上記の実施形態及び実施例はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記の実施形態及び実施例のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0072】
A 金属製缶
10 角筒部材
11 天板部材
12 底板部材
13 注出口
90 金属板部材
91 開口部
92 口金
93 加締部
1 検出システム
2 撮像装置
3 検出装置
4 処理部
40 稜線抽出部(稜線抽出手段)
41 帯幅計測部(帯幅計測手段)
42 変化量算出部(変化量算出手段)
43 判定部(判定手段)
5 記憶部
60 入力部(画像取得手段)
61 出力部
7 表示部
8 不良品排出部
E1 第1稜線
E2 第2稜線
P 加締部画像
V 変化量データ
W 帯幅データ
W1 最大値
W2 最小値
【手続補正書】
【提出日】2023-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板部材に形成された円形状の開口部に円筒状の口金が加締められて成る環状の加締部の異常を検出する検出装置であって、
前記加締部を撮像する撮像装置から加締部画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された前記加締部画像から前記加締部の内周側の第1稜線と前記加締部の外周側の第2稜線と該第1及び第2稜線の間であって前記加締部上の所定の凹凸を囲む第3稜線とを抽出する稜線抽出手段と、
前記稜線抽出手段により抽出された前記第1稜線及び前記第2稜線間の間隔と前記第3稜線で囲われた領域の幅との差を前記加締部の帯幅として前記加締部の全周に亘って計測して帯幅データを得る帯幅計測手段と、
前記帯幅計測手段により得られた前記帯幅データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記判定手段は、
前記帯幅データにおける前記帯幅の最大値と最小値との差が所定差を超える場合に、前記加締部に異常が有ると判定することを特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検出装置であって、
前記判定手段は、
前記帯幅データにおける前記帯幅の前記最大値が所定値を超える場合に、前記加締部に異常が有ると判定することを特徴とする検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の検出装置であって、
前記帯幅計測手段により得られた前記帯幅データにおける前記帯幅の変化量を算出して変化量データを得る変化量算出手段をさらに備え、
前記判定手段は、
前記変化量算出手段により得られた前記変化量データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定することを特徴とする検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検出装置と、前記撮像装置と、を備えたことを特徴とする検出システム。
【請求項6】
金属板部材に形成された円形状の開口部に円筒状の口金が加締められて成る環状の加締
部の異常を検出する検出方法であって、
前記加締部を撮像する撮像装置から加締部画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにより取得された前記加締部画像から前記加締部の内周側の第1稜線と前記加締部の外周側の第2稜線と該第1及び第2稜線の間であって前記加締部上の所定の凹凸を囲む第3稜線とを抽出する稜線抽出ステップと、
前記稜線抽出ステップにより抽出された前記第1稜線及び前記第2稜線間の間隔と前記第3稜線で囲われた領域の幅との差を前記加締部の帯幅として前記加締部の全周に亘って計測して帯幅データを得る帯幅計測ステップと、
前記帯幅計測ステップにより得られた前記帯幅データに基づいて前記加締部の異常の有無を判定する判定ステップと、を備えたことを特徴とする検出方法。
【請求項7】
請求項6に記載の検出方法をコンピュータに実行させることを特徴とする検出プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の検出プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。