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特開2024-39845フローティング型ディスクブレーキ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039845
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】フローティング型ディスクブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/226 20060101AFI20240315BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16D55/226 104F
F16D65/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144515
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA63
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA84
3J058AA87
3J058BA46
3J058BA68
3J058CC23
3J058DD03
3J058EA03
3J058EA08
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】分割型のキャリパボディの軽量化と剛性の確保との両立を図れる、フローティング型ディスクブレーキ装置を実現する。
【解決手段】フローティング型のディスクブレーキ装置1を、インナパッドと、アウタパッドと、サポート2と、キャリパボディ3とを備えるものとする。キャリパボディ3を、インナボディ部15とアウタボディ部16とを軸方向に連結して構成し、このうちのアウタボディ部16を構成する径方向覆い部24を、径方向両側の周面及び軸方向内側の端面のそれぞれに開口した開口窓部29を有するものとする。そして、開口窓部29の内面を構成する周方向側面30a、30bの径方向中間部に、周方向に凹んだ凹部32a、32bを設ける。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの軸方向内側に配置されるインナパッドと、
前記ロータの軸方向外側に配置されるアウタパッドと、
車体に固定され、前記インナパッド及び前記アウタパッドのそれぞれを軸方向に移動可能に支持するサポートと、
前記サポートに対して軸方向に移動可能に支持されたキャリパボディと、を備え、
前記キャリパボディは、シリンダを有し、かつ、前記ロータよりも軸方向内側に配置されたインナボディ部と、制動時に前記アウタパッドを押圧するアウタボディ部とを、軸方向に連結して成り、
前記アウタボディ部は、前記ロータの径方向外側に配置され、かつ、軸方向内側の端面が前記インナボディ部に突き当てられた径方向覆い部を有し、
前記径方向覆い部は、径方向両側の周面及び軸方向内側の端面のそれぞれに開口した開口窓部を有し、
前記開口窓部の内面を構成する周方向側面の径方向中間部には、周方向に凹んだ凹部が備えられている、
フローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記開口窓部は、前記径方向覆い部の周方向中間部に1つだけ備えられている、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記開口窓部の内面を構成する周方向両側の前記周方向側面のそれぞれに、前記凹部が備えられている、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項4】
前記開口窓部の軸方向外側の端部は、前記ロータよりも軸方向外側に位置している、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記開口窓部の前記周方向側面の軸方向全長に備えられている、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項6】
前記開口窓部の径方向外側の開口部又は/及び前記開口窓部の径方向内側の開口部の周方向の開口幅は、前記開口窓部の少なくとも軸方向の一部で、軸方向内側に向かうほど広くなる、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項7】
前記開口窓部の径方向外側の開口部又は/及び前記開口窓部の径方向内側の開口部の周方向の開口幅の広がり方は、前記開口窓部の軸方向位置に応じて変化する、請求項6に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項8】
前記径方向覆い部は、前記凹部の径方向外側に外周側壁部を有し、かつ、前記凹部の径方向内側に内周側壁部を有している、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項9】
前記外周側壁部の径方向厚さと前記内周側壁部の径方向厚さとを同じ周方向位置で比べた場合、前記外周側壁部の径方向厚さは、前記内周側壁部の径方向厚さ以上である、請求項8に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項10】
前記外周側壁部の周方向の張出量と前記内周側壁部の周方向の張出量とを同じ軸方向位置で比べた場合、前記外周側壁部の周方向の張出量の方が、前記内周側壁部の周方向の張出量よりも大きい、請求項8に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項11】
前記凹部は、少なくとも周方向の一部に、径方向幅が周方向にわたって変化しない領域を有する、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項12】
前記凹部は、少なくとも周方向の一部に、径方向幅が周方向に関して前記凹部の奥側に向かうほど小さくなる領域を有する、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項13】
前記内周側壁部は、前記凹部と径方向に連通した水抜き部を有する、請求項8に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項14】
前記インナボディ部は、前記開口窓部の軸方向内側の端部と軸方向に対向する部分に、前記開口窓部と軸方向に連通する連通部を有する、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項15】
前記開口窓部の内面を構成する軸方向側面は、軸方向視で十字形状を有する、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【請求項16】
前記開口窓部は、鋳抜き孔である、請求項1に記載したフローティング型ディスクブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティング型ディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車の制動を行うために、ディスクブレーキ装置が広く使用されている。ディスクブレーキ装置による制動時には、車輪とともに回転するロータの軸方向両側に配置された1対のパッドを、ピストンによりロータの軸方向両側面に押し付ける。このようなディスクブレーキ装置として、従来から各種構造のものが知られているが、フローティング型のディスクブレーキ装置は、軽量化やコストの低減の面で有利であることから、従来から広く使用されている。
【0003】
フローティング型のディスクブレーキ装置は、車体に固定されるサポートと、サポートに対して軸方向に移動可能に支持されたキャリパボディと、サポートに対し軸方向の移動を可能に支持されたインナパッド及びアウタパッドとを備える。なお、軸方向とは、特に断らない限り、ロータの軸方向をいう。
【0004】
キャリパボディは、シリンダを有し、かつ、ロータの軸方向内側に配置されるインナボディ部と、アウタパッドを軸方向に押圧するアウタボディ部とを備える。インナボディ部に備えられたシリンダの内側には、制動時にインナパッドを軸方向に押圧するピストンが嵌装されている。
【0005】
制動を行う際には、マスタシリンダからシリンダへと圧油を送り込み、ピストンによりインナパッドを、ロータの軸方向側面に押し付ける。すると、この押し付け力の反作用として、キャリパボディが、サポートに対して軸方向内側へと移動する。これにより、アウタボディ部が、アウタパッドをロータの軸方向側面に押し付ける。この結果、ロータが、インナパッドとアウタパッドとにより軸方向両側から強く挟持されて、制動が行われる。
【0006】
また、フローティング型のディスクブレーキ装置にあっては、特開2012-180905号公報(特許文献1)などに開示されるように、キャリパボディのうちで、インナパッド及びアウタパッドを径方向外側から覆う部分に、開口窓部を設けることで、インナパッド及びアウタパッドの摩耗状況を外部から確認することも、従来から行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-180905号公報
【特許文献2】実開平5-77633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
キャリパボディを、インナボディ部とアウタボディ部とに分割した分割構造とすることが、実開平5-77633号公報(特許文献2)などに記載され、従来から知られている。分割型のキャリパボディは、インナボディ部とアウタボディ部とを、異なる材料製とすることができるなどの優れた点がある。
【0009】
ただし、分割型のキャリパボディには、インナボディ部とアウタボディ部とが一体に構成された一体型のキャリパボディに比べて、剛性を確保することが難しいだけでなく、インナボディ部とアウタボディ部とを連結するための連結部材が必要になるため、重量が増加しやすい。
【0010】
一方、フローティング型のディスクブレーキ装置は、車両のうちで懸架装置を構成するバネよりも路面側に設けられるため、いわゆるバネ下荷重となる。このため、車両の燃費性能や走行性能の向上を目的として、軽量化を図ることが求められている。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、軽量化と剛性の確保との両立を図れる分割型のキャリパボディを備えた、フローティング型ディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置は、インナパッドと、アウタパッドと、サポートと、キャリパボディとを備える。
前記インナパッドは、ロータの軸方向内側に配置される。
前記アウタパッドは、前記ロータの軸方向外側に配置される。
前記サポートは、車体に固定され、前記インナパッド及び前記アウタパッドのそれぞれを軸方向に移動可能に支持する。
前記キャリパボディは、前記サポートに対して軸方向に移動可能に支持されている。
前記キャリパボディは、シリンダを有し、かつ、前記ロータよりも軸方向内側に配置されたインナボディ部と、制動時に前記アウタパッドを押圧するアウタボディ部とを、軸方向に連結して構成されている。
前記アウタボディ部は、前記ロータの径方向外側に配置され、かつ、軸方向内側の端面が前記インナボディ部に突き当てられた径方向覆い部を有している。
前記径方向覆い部は、径方向両側の周面及び軸方向内側の端面のそれぞれに開口し、前記インナパッド及び前記アウタパッドのそれぞれの摩耗状況を外部から確認するための、のぞき窓としての機能を有する、開口窓部を有している。
前記開口窓部の内面を構成する周方向側面の径方向中間部には、周方向に凹んだ凹部が備えられている。
【0013】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記開口窓部を、前記径方向覆い部の周方向中間部に1つだけ備えることができる。
あるいは、前記開口窓部を、前記径方向覆い部に複数備えることもできる。
【0014】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記開口窓部の内面を構成する周方向両側の前記周方向側面のそれぞれに、前記凹部を備えることができる。
あるいは、前記開口窓部の内面を構成する一方の前記周方向側面にのみ、前記凹部を備えることもできる。
【0015】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記開口窓部の軸方向外側の端部を、前記ロータよりも軸方向外側に位置させることができる。
【0016】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記凹部を、前記開口窓部の前記周方向側面の軸方向全長に備えることができる。
あるいは、前記凹部を、前記開口窓部の前記周方向側面の軸方向一部にのみ備えることもできる。
【0017】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記開口窓部の径方向外側の開口部又は/及び前記開口窓部の径方向内側の開口部の周方向の開口幅を、前記開口窓部の少なくとも軸方向の一部で、軸方向内側に向かうほど広くすることができる。
この場合には、前記開口窓部の径方向外側の開口部又は/及び前記開口窓部の径方向内側の開口部の周方向の開口幅の広がり方を、前記開口窓部の軸方向位置に応じて変化させることもできる。
【0018】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記径方向覆い部を、前記凹部の径方向外側に外周側壁部を有し、かつ、前記凹部の径方向内側に内周側壁部を有するものとすることができる。
【0019】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記外周側壁部の径方向厚さと前記内周側壁部の径方向厚さとを同じ周方向位置で比べた場合に、前記外周側壁部の径方向厚さを、前記内周側壁部の径方向厚さ以上とすることができる。
【0020】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記外周側壁部の周方向の張出量と前記内周側壁部の周方向の張出量とを同じ軸方向位置で比べた場合に、前記外周側壁部の周方向の張出量を、前記内周側壁部の周方向の張出量よりも大きくすることができる。
【0021】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記凹部を、少なくとも周方向の一部に、径方向幅が周方向にわたって変化しない領域を有するものとすることができる。
【0022】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記凹部を、少なくとも周方向の一部に、径方向幅が周方向に関して前記凹部の奥側に向かうほど小さくなる領域を有するものとすることができる。
【0023】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記内周側壁部に、前記凹部と径方向に連通した水抜き部を設けることができる。
【0024】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記インナボディ部のうちで、前記開口窓部の軸方向内側の端部と軸方向に対向する部分に、前記開口窓部と軸方向に連通する連通部を設けることができる。
【0025】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記開口窓部の内面を構成する軸方向側面を、軸方向視で十字形状を有するものとすることができる。
【0026】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置では、前記開口窓部を、鋳抜き孔とすることができる。
あるいは、前記開口窓部を、切削孔とすることもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のフローティング型ディスクブレーキ装置によれば、分割型のキャリパボディに関して、軽量化と剛性の確保との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を、軸方向外側から見た正面図である。
図2図2は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を、軸方向内側から見た背面図である。
図3図3は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を、径方向外側から見た部分切断平面図である。
図4図4は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を、径方向内側から見た底面図である。
図5図5は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を、図1の右側から見た側面図である。
図6図6は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を、軸方向外側かつ径方向外側から見た斜視図である。
図7図7は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を、軸方向内側かつ径方向外側から見た斜視図である。
図8図8は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を、軸方向外側かつ径方向内側から見た斜視図である。
図9図9は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置を、軸方向内側かつ径方向内側から見た斜視図である。
図10図10は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置からアウタボディ部を取り出して、軸方向内側から見た図である。
図11図11は、図10の部分拡大図である。
図12図12は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置からアウタボディ部を取り出して、径方向外側から見た図である。
図13図13は、図12の部分拡大図である。
図14図14は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置からアウタボディ部を取り出して、径方向内側から見た図である。
図15図15は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置からアウタボディ部を取り出して、軸方向内側かつ径方向外側からみた斜視図である。
図16図16は、実施の形態の第1例にかかるディスクブレーキ装置からアウタボディ部を取り出して、軸方向内側かつ径方向内側から見た斜視図である。
図17図17は、実施の形態の第2例を示す、図11に相当する図である。
図18図18は、実施の形態の第2例を示す、図15に相当する図である。
図19図19は、実施の形態の第3例を示す、図11に相当する図である。
図20図20は、実施の形態の第3例を示す、図15に相当する図である。
図21図21は、実施の形態の第4例を示す、図11に相当する図である。
図22図22は、実施の形態の第4例を示す、図12に相当する図である。
図23図23は、実施の形態の第4例を示す、図14に相当する図である。
図24図24は、実施の形態の第4例を示す、図16に相当する図である。
図25図25は、実施の形態の第5例を示す、図11に相当する図である。
図26図26は、実施の形態の第5例を示す、図14に相当する図である。
図27図27は、実施の形態の第5例を示す、図15に相当する図である。
図28図28は、実施の形態の第6例を示す、図2に相当する図である。
図29図29は、実施の形態の第6例にかかるディスクブレーキ装置からインナボディ部を取り出して、軸方向内側かつ径方向外側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図16を用いて説明する。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲全体で、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」とは、特に断らない限り、車輪とともに回転する円板状のロータの軸方向、径方向及び周方向をいう。また、ディスクブレーキ装置を車体に取り付けた状態で、車体の幅方向外側を軸方向外側といい、車体の幅方向中央側を軸方向内側という。また、ディスクブレーキ装置の周方向中央側を周方向内側といい、ディスクブレーキ装置の周方向両側を周方向外側という。さらに、回入側とは、周方向外側のうちで、車両の前進時に、キャリパボディに対してロータが入り込む側をいい、回出側とは、周方向外側のうちで、車両の前進時に、キャリパボディからロータが抜け出て行く側をいう。
【0031】
〔ディスクブレーキ装置の構造説明〕
本例のディスクブレーキ装置1は、フローティング型のディスクブレーキ装置であり、サポート2と、キャリパボディ3と、インナパッド4と、アウタパッド5とを備える。
【0032】
〈サポート〉
サポート2は、鋳鉄などの鉄系合金製の鋳造品であり、車体に固定される。サポート2は、キャリパボディ3を軸方向に移動可能に支持するとともに、インナパッド4及びアウタパッド5のそれぞれを軸方向に移動可能に支持する。
【0033】
サポート2は、周方向両外側の端部に配置された1対のガイド部7と、ロータ6(図3参照)よりも軸方向内側に配置され、周方向に伸長したインナ側周方向連結部8と、ロータ6よりも軸方向外側に配置され、周方向に伸長したアウタ側周方向連結部9とを有する。サポート2は、インナ側周方向連結部8の周方向両外側の端部に備えられた1対の固定孔10を利用して、車体を構成する懸架装置に固定される。なお、本発明を実施する場合には、サポート2からアウタ側周方向連結部9を省略することもできる。
【0034】
1対のガイド部7のそれぞれは、周方向視で逆U字形状を有しており、ロータ6を径方向外側から跨ぐように配置される。1対のガイド部7のそれぞれは、インナパッド4を軸方向に移動可能に支持するためのインナガイド部11と、アウタパッド5を軸方向に移動可能に支持するためのアウタガイド部12と、これらインナガイド部11及びアウタガイド部12のそれぞれの径方向外側の端部を軸方向に連結したキャリパガイド部13とを備える。
【0035】
インナガイド部11は、ロータ6よりも軸方向内側に配置されており、径方向に伸長している。インナガイド部11の径方向内側の端部は、インナ側周方向連結部8の周方向外側の端部に連結されている。
【0036】
アウタガイド部12は、ロータ6よりも軸方向外側に配置されており、径方向に伸長している。アウタガイド部12の径方向内側の端部は、アウタ側周方向連結部9の周方向外側の端部に連結されている。
【0037】
キャリパガイド部13は、ロータ6の径方向外側に配置されており、軸方向に伸長している。キャリパガイド部13の内部には、軸方向に伸長した支持孔44が備えられている。支持孔44には、後述するスライドピン14の先半部が摺動可能に挿入される。
【0038】
〈キャリパボディ〉
キャリパボディ3は、1対のスライドピン14を利用して、サポート2に対し軸方向に移動可能に支持されている。
【0039】
本例のキャリパボディ3は、一体構造ではなく、分割構造を有している。すなわち、キャリパボディ3は、互いに別体に構成されたインナボディ部15とアウタボディ部16とを、複数本(図示の例では合計4本)の連結部材17a、17bによって軸方向に連結して構成されている。
【0040】
複数本の連結部材17a、17bは、周方向に離隔して配置されている。複数本の連結部材17a、17bのうち、周方向両外側に配置された1対の連結部材17aは、インナボディ部15とアウタボディ部16との周方向両外側の端部同士を軸方向に連結しており、残りの連結部材17bは、インナボディ部15とアウタボディ部16との周方向内側(中央寄り)部分同士を軸方向に連結している。なお、本発明を実施する場合に、連結部材の数は、特に限定されない。
【0041】
インナボディ部15とアウタボディ部16とは、異なる材料製とすることもできるし、同じ材料製とすることもできる。本例では、インナボディ部15及びアウタボディ部16をいずれも、アルミニウム系合金製としているが、鉄系合金製又はその他の材料製とすることもできる。さらに、インナボディ部15とアウタボディ部16との一方を、アルミニウム合金製とし、インナボディ部15とアウタボディ部16との他方を、鉄系合金製又はその他の材料製とすることもできる。
【0042】
《インナボディ部》
インナボディ部15は、ロータ6よりも軸方向内側に配置されている。インナボディ部15は、2つのシリンダ18と、1対の周方向腕部19a、19bと、1対の径方向張出部20a、20bと、連通部21とを有している。なお、本発明を実施する場合に、インナボディ部に設けるシリンダの数は、特に限定されず、1つだけ設けても良いし、3つ以上設けても良い。
【0043】
2つのシリンダ18は、インナボディ部15の周方向内側部(中間部)に備えられている。2つのシリンダ18は、それぞれの中心軸をロータ6の中心軸と平行にした状態で、周方向に並んで配置されている。シリンダ18は、略円筒形状を有しており、軸方向外側にのみ開口している。シリンダ18の内側には、図示しないピストンが軸方向に移動可能に嵌装されている。
【0044】
1対の周方向腕部19a、19bは、周方向に関して2つのシリンダ18を挟んで、インナボディ部15の周方向両外側部に備えられている。回入側に配置された周方向腕部19aは、回入側に配置されたシリンダ18の外周面から回入側に向けて伸長しており、回出側に配置された周方向腕部19bは、回出側に配置されたシリンダ18の外周面から回出側に向けて伸長している。
【0045】
1対の径方向張出部20a、20bは、周方向に互いに離隔しており、インナボディ部15の周方向内側部に配置されている。径方向張出部20a、20bのそれぞれは、シリンダ18の軸方向外側部の径方向外側に配置されている。
【0046】
径方向張出部20a、20bのそれぞれは、平板状に構成されており、シリンダ18の外周面から径方向外側に向けて張り出している。径方向張出部20a、20bの軸方向外側面は、平坦面である。
【0047】
径方向張出部20a、20bは、連結板部22により周方向に連結されている。連結板部22は、周方向に関して径方向張出部20a、20bの間部分に配置されている。具体的には、連結板部22は、周方向に関して径方向張出部20a、20bの間部分のうち、径方向内側部から径方向中間部にわたる範囲に配置されている。
【0048】
連通部21は、周方向に関して径方向張出部20a、20bの間部分の径方向外側部に備えられている。つまり、連通部21は、連結板部22の径方向外側に配置されている。連通部21は、インナボディ部15の軸方向両側及び径方向外側にそれぞれ開口している。連通部21は、アウタボディ部16に備えられた後述する開口窓部29の軸方向内側の端部に対向する部分に備えられており、開口窓部29と軸方向に連通している。連通部21の周方向幅は、開口窓部29の軸方向内側の端部の周方向幅とほぼ同じである。
【0049】
《アウタボディ部》
アウタボディ部16は、アウタパッド5よりも軸方向外側に配置された、略弓形状の軸方向覆い部23と、ロータ6の径方向外側に配置された、部分円筒形状の径方向覆い部24とを有している。アウタボディ部16は、ロータ6の中心軸を含む仮想平面に関して、略L字形の断面形状を有している。軸方向覆い部23と径方向覆い部24とは、一体に構成されている。
【0050】
軸方向覆い部23は、略弓形の平板状に構成されており、制動時に、アウタパッド5を軸方向に直接押圧する。
【0051】
軸方向覆い部23の周方向両外側部は、1対のガイド部7よりも周方向外側に突出している。これにより、軸方向覆い部23は、1対のガイド部7を軸方向外側から覆っている。本例では、軸方向覆い部23の周方向寸法を、サポート2の周方向寸法よりも大きくすることで、軸方向覆い部23の軸方向外側面により構成される意匠面を大きく確保している。
【0052】
軸方向覆い部23は、軸方向内側面の周方向内側部に、張出部25を有する。張出部25の軸方向内側面(先端面)には、軸方向内側に盛り上がった当接凸部26が設けられている。図示の例では、当接凸部26は、略格子形状を有している。当接凸部26は、制動時にアウタパッド5を構成する裏板40bの軸方向外側面(裏面)に、シム板43を介して当接する。
【0053】
軸方向覆い部23は、軸方向内側面のうちの張出部25の周方向両外側部に、1対の逃げ凹部27を有する。逃げ凹部27は、軸方向覆い部23の軸方向内側面のうちで、サポート2を構成する1対のアウタガイド部12及びその近傍部分と軸方向に対向する部分に備えられている。
【0054】
インナパッド4及びアウタパッド5の摩耗が進行し、キャリパボディ3がサポート2に対して軸方向内側に移動した際に、アウタガイド部12の軸方向外側部が逃げ凹部27の内側に進入する。このような構成により、アウタガイド部12とアウタボディ部16との干渉を防止する。
【0055】
径方向覆い部24は、部分円筒形状を有しており、軸方向覆い部23の外周縁部から軸方向内側に向けて伸長している。径方向覆い部24は、サポート2を構成する1対のガイド部7、ロータ6の周方向一部、及びインナ、アウタ両パッド4、5のそれぞれを、径方向外側から覆う。径方向覆い部24の周方向寸法は、インナボディ部15の周方向寸法と同じである。
【0056】
径方向覆い部24は、周方向複数箇所(図示の例では4箇所)に、連結部材17a、17bの先端部を固定するための取付孔(ねじ孔)28を有している。取付孔28は、径方向覆い部24の軸方向内側の端面に開口している。
【0057】
(開口窓部)
径方向覆い部24は、インナパッド4及びアウタパッド5のそれぞれの摩耗状況を外部から確認可能とするために、のぞき窓として機能する開口窓部29を有する。
【0058】
開口窓部29は、径方向覆い部24の軸方向内側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に備えられており、径方向覆い部24の径方向両側の周面及び軸方向内側の端面のそれぞれに開口している。開口窓部29は、軸方向に伸長した切り欠きである。
【0059】
開口窓部29は、径方向覆い部24の周方向中央部に1つだけ備えられている。
【0060】
本例では、開口窓部29の径方向外側の開口部と、開口窓部29の径方向内側の開口部とが、互いに同じ開口形状を有している。
【0061】
開口窓部29の径方向両側の開口部は、径方向視で略ロート形状を有しており、略Y字状(略V字状)の輪郭形状を有している。
【0062】
開口窓部29の径方向両側の開口部のそれぞれの周方向の開口幅(W29)は、開口窓部29の軸方向の全長で、軸方向内側に向かうほど広くなる。ただし、周方向の開口幅の広がり方は、軸方向にわたり一定ではなく、開口窓部29の軸方向位置に応じて変化している。具体的には、周方向の開口幅の広がり方に相当する開き角度は、開口窓部29の軸方向外側半部よりも開口窓部29の軸方向内側半部で大きくなる。図示の例では、開口窓部29の軸方向外側半部の開き角度はおよそ5度であるのに対し、開口窓部29の軸方向内側半部の開き角度はおよそ35度である。
【0063】
本例では、開口窓部29の径方向両側の開口部のそれぞれは、周方向に関して対称形状を有している。
【0064】
開口窓部29の閉鎖端である軸方向外側の端部は、ロータ6よりも軸方向外側に位置している。具体的には、開口窓部29の軸方向外側の端部は、ロータ6の軸方向外側面よりも、数mm程度だけ軸方向外側に位置している。このため、開口窓部29を通じて、インナパッド4の摩耗状況だけでなく、アウタパッド5の摩耗状況を確認することが可能である。
【0065】
開口窓部29の内面は、周方向に対向して配置された1対の周方向側面30a、30bと、軸方向内側を向いた1つの軸方向側面31とから構成されている。
【0066】
周方向側面30a、30bのそれぞれは、ロータ6の中心軸を含み、かつ、径方向覆い部24の周方向中央部を通る仮想平面Pに対して傾斜している。具体的には、回入側に配置された周方向側面30aは、前記仮想平面Pに対して、軸方向内側に向かうほど回入側に向かう方向に傾斜している。また、回出側に配置された周方向側面30bは、前記仮想平面Pに対して、軸方向内側に向かうほど回出側に向かう方向に傾斜している。このため、開口窓部29の開口部の周方向の開口幅は、軸方向内側に向かうほど広くなっている。
【0067】
周方向側面30a、30bのそれぞれの径方向中間部には、周方向に凹んだ凹部32a、32bが備えられている。つまり、回入側に配置された周方向側面30aの径方向中間部には、回入側に向けて凹んだ凹部32aが備えられており、回出側に配置された周方向側面30bの径方向中間部には、回出側に向けて凹んだ凹部32bが備えられている。
【0068】
凹部32a、32bは、周方向側面30a、30bのそれぞれの軸方向全長に備えられている。凹部32a、32bのそれぞれの周方向深さ(D32)は、軸方向にわたり一定である。
【0069】
ロータ6の中心軸に直交する仮想平面に関する凹部32a、32bの断面形状は、軸方向にわたりほぼ一定である。凹部32aの断面形状と凹部32bの断面形状とは、周方向に関する向きが反対である点を除いて、互いに同じである。本例では、凹部32a、32bのそれぞれは、略半長円形の断面形状を有している。
【0070】
凹部32a、32bのそれぞれの内面は、周方向側面30a、30bの径方向中間部を構成する。ロータ6の中心軸に直交する仮想平面に関する凹部32a、32bの内面の断面形状は、略C字形又は略U字形である。
【0071】
本例では、凹部32a、32bのそれぞれの内面は、径方向内側を向いた外側平坦面部33と、径方向外側を向いた内側平坦面部34と、周方向内側を向いた平坦面状の底面部35と、凹曲面状の2つの隅角部36a、36bとからなる。
【0072】
本例では、外側平坦面部33と内側平坦面部34とは、互いに略平行に配置さている。このため、凹部32a、32は、凹部32a、32bの開口側部分に、径方向幅(R32)が周方向にわたって変化しない領域を有している。
【0073】
径方向外側の隅角部36aは、周方向外側に向かうほど径方向内側に向かう方向に湾曲しており、外側平坦面部33と底面部35とを滑らかに接続している。これに対し、径方向内側の隅角部36bは、周方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に湾曲しており、内側平坦面部34と底面部35とを滑らかに接続している。このため、凹部32a、32bは、凹部32a、32bの奥側部分に、径方向幅(R32)が周方向に関して凹部32a、32bの奥側に向かうほど小さくなる領域を有している。
なお、本発明を実施する場合には、凹部32a、32bの内面全体を凹曲面から構成することもできる。
【0074】
本例では、開口窓部29の内面を構成する周方向側面30a、30bに凹部32a、32bを形成しているため、径方向覆い部24のうちで開口窓部29を挟んで周方向両側に存在する部分は、ロータ6の中心軸に直交する仮想平面に関して略C字形(略U字形)の断面形状を有している。
【0075】
径方向覆い部24は、凹部32aの径方向外側に外周側壁部37aを有し、かつ、凹部32aの径方向内側に内周側壁部38aを有している。
【0076】
外周側壁部37aは、凹部32aを径方向外側から覆っており、回出側に向けて周方向に張り出している。内周側壁部38aは、凹部32aを径方向内側から覆っており、回出側に向けて周方向に張り出している。
【0077】
外周側壁部37aの周方向内側の端面(回出側の端面)は、周方向側面30aの径方向外側部を構成する。また、外周側壁部37aの内周面は、凹部32aの内面のうちの外側平坦面部33及び径方向外側の隅角部36aを構成する。これに対し、内周側壁部38aの周方向内側の端面(回出側の端面)は、周方向側面30aの径方向内側部を構成する。また、内周側壁部38aの外周面は、凹部32aの内面のうちの内側平坦面部34及び径方向内側の隅角部36bを構成する。
【0078】
また、径方向覆い部24は、凹部32bの径方向外側に外周側壁部37bを有し、かつ、該凹部32bの径方向内側に内周側壁部38bを有している。
【0079】
外周側壁部37bは、凹部32bを径方向外側から覆っており、回入側に向けて周方向に張り出している。内周側壁部38bは、凹部32bを径方向内側から覆っており、回入側に向けて周方向に張り出している。
【0080】
したがって、1対の外周側壁部37a、37bは、周方向に関して互いに近づく方向に張り出しており、開口窓部29の径方向外側の開口部を構成する。また、1対の内周側壁部38a、38bは、周方向に関して互いに近づく方向に張り出しており、開口窓部29の径方向内側の開口部を構成する。
【0081】
外周側壁部37bの周方向内側の端面(回入側の端面)は、周方向側面30bの径方向外側部を構成する。また、外周側壁部37bの内周面は、凹部32bの内面のうちの外側平坦面部33及び径方向外側の隅角部36aを構成する。これに対し、内周側壁部38bの周方向内側の端面(回入側の端面)は、周方向側面30bの径方向内側部を構成する。また、内周側壁部38bの外周面は、凹部32bの内面のうちの内側平坦面部34及び径方向内側の隅角部36bを構成する。
【0082】
本例では、凹部32a、32bの断面形状を互いに同じとしているため、回入側に配置された外周側壁部37aと回出側に配置された外周側壁部37bとは、周方向に関して対称形状を有している。また、回入側に配置された内周側壁部38aと回出側に配置された内周側壁部38bとは、周方向に関して対称形状を有している。
【0083】
本例では、開口窓部29の径方向外側の開口部と、開口窓部29の径方向内側の開口部とを、互いに同じ開口形状としているため、外周側壁部37a及び内周側壁部38aの同じ軸方向位置での周方向の張出量(L37a、L38a)は、互いに同じである(L37a=L38a)。同様に、外周側壁部37b及び内周側壁部38bの同じ軸方向位置での周方向の張出量(L37b、L38b)は、互いに同じである(L37b=L38b)。
【0084】
本例では、外周側壁部37a及び内周側壁部38aの同じ周方向位置での径方向厚さ(T37a、T38a)は、互いに同じである(T37a=T38a)。同様に、外周側壁部37b及び内周側壁部38bの同じ周方向位置での径方向厚さ(T37b、T38b)は、互いに同じである(T37b=T38b)。ただし、本発明を実施する場合には、外周側壁部の径方向厚さを、内周側壁部の径方向厚さよりも大きくすることもできる。
【0085】
開口窓部29の内面を構成する軸方向側面31は、周方向側面30a、30bの軸方向外側の端部を互いに接続している。軸方向側面31は、凹部32a、32bの分だけ径方向中間部の周方向幅が、径方向外側部及び径方向内側部のそれぞれの周方向幅よりも大きくなっており、軸方向視で略十字形状を有している。
【0086】
本例では、アウタボディ部16を鋳造加工により製造する際に、開口窓部29を形成している。つまり、鋳型のキャビティのうちで開口窓部29を形成する部分に、開口窓部29の内面形状に合致した外面形状を有する中子を配置し、該中子を軸方向内側に向けて引き抜くことにより開口窓部29を形成している。このため、本例の開口窓部29は鋳抜き孔である。
【0087】
軸方向覆い部23と径方向覆い部24とからなるアウタボディ部16は、それぞれがボルトである連結部材17a、17bを利用して、インナボディ部15の軸方向外側に固定されている。具体的には、インナボディ部15の周方向腕部19a、19bのそれぞれを軸方向に挿通した連結部材17aの先端部を、アウタボディ部16の径方向覆い部24の周方向外側部に備えられた取付孔28に螺合し、かつ、インナボディ部15の径方向張出部20a、20bのそれぞれを軸方向に挿通した連結部材17bの先端部を、アウタボディ部16の径方向覆い部24の周方向内側部に備えられた取付孔28に螺合する。これにより、インナボディ部15の軸方向外側にアウタボディ部16を、連結部材17a、17bを利用して連結している。
【0088】
インナボディ部15とアウタボディ部16とを連結した状態で、インナボディ部15に備えられた連通部21とアウタボディ部16に備えられた開口窓部29の径方向外側部とが、軸方向に連通する。開口窓部29の軸方向内側の開口部の大部分(径方向中間部ないし径方向内側部)は、連結板部22によって塞がれる。
【0089】
キャリパボディ3は、サポート2に対し軸方向に関する移動を可能に支持されている。このために、インナボディ部15を構成する周方向腕部19a、19bのそれぞれの周方向中間部にスライドピン14の基端部を固定し、該スライドピン14の先半部を、サポート2を構成するキャリパガイド部13に形成した支持孔44に、軸方向に相対変位(摺動)を可能に挿入している。
【0090】
〈インナパッド及びアウタパッド〉
インナパッド4は、ライニング39aと、裏板40aと、シム板43とを備えている。なお、図示の例では、裏板40aの裏面側に二枚のシム板43が重ね合わされている。
【0091】
インナパッド4は、裏板40aの周方向両外側の端部に備えられた耳部を、インナガイド部11の周方向内側面に備えられたインナ側ガイド凹溝に対して凹凸係合させることで、1対のインナガイド部11同士の間に、軸方向に移動可能に支持されている。
【0092】
アウタパッド5は、ライニング39bと、裏板40bと、シム板43とを備えている。
なお、図示の例では、裏板40bの裏面側に二枚のシム板43が重ね合わされている。
【0093】
アウタパッド5は、裏板40bの周方向両外側の端部に備えられた耳部を、アウタガイド部12の周方向内側面に備えられたアウタ側ガイド凹溝に対して凹凸係合させることで、1対のアウタガイド部12同士の間に、軸方向に移動可能に支持されている。
【0094】
インナパッド4を構成する裏板40aの周方向両外側面と1対のインナガイド部11のそれぞれの周方向内側面との間には、パッドクリップ41aが挟持されている。また、アウタパッド5を構成する裏板40bの周方向両外側面と1対のアウタガイド部12のそれぞれの周方向内側面との間には、パッドクリップ41bが挟持されている。これにより、インナパッド4及びアウタパッド5の円滑な軸方向移動を可能としている。
【0095】
〔ディスクブレーキ装置の動作説明〕
本例のディスクブレーキ装置1により制動を行うには、キャリパボディ3のシリンダ18にマスタシリンダから圧油を送り込む。これにより、図示しないピストンを軸方向外側に向けて押し出す。そして、ピストンによりインナパッド4を、ロータ6の軸方向内側面に押し付け、キャリパボディ3をサポート2に対して軸方向内側に移動させる。これにより、キャリパボディ3を構成する軸方向覆い部23に備えられた張出部25の当接凸部26を、アウタパッド5を構成する裏板40bの裏面にシム板43を介して押し付ける。これにより、アウタパッド5をロータ6の軸方向外側面に押し付ける。この結果、ロータ6が、インナパッド4及びアウタパッド5により軸方向両側から強く挟持されて制動が行われる。
【0096】
制動解除時には、キャリパボディ3のシリンダ18から圧油を排出する。これにより、ピストンに外嵌した図示しないピストンシールの弾性復元力によって、ピストンをシリンダ18の奥側(軸方向内側)へと引き戻し(ロールバックし)、インナパッド4とロータ6の軸方向内側面との間のクリアランスを確保する。この結果、キャリパボディ3がサポート2に対して軸方向外側へとわずかに移動し、アウタパッド5とロータ6の軸方向外側面との間にもクリアランスが確保される。
【0097】
以上のような本例のディスクブレーキ装置1によれば、分割型のキャリパボディ3に関して、軽量化と剛性の確保との両立を図ることができる。
【0098】
すなわち、本例では、インナパッド4及びアウタパッド5の摩耗状況を外部から確認するためにアウタボディ部16に形成した開口窓部29の周方向側面30a、30bに、周方向に凹んだ凹部32a、32bをそれぞれ設けている。このため、凹部32a、32bを設けた分だけ、アウタボディ部16の軽量化を図ることができる。
【0099】
また、本例では、開口窓部29の周方向側面30a、30bの径方向中間部といった、径方向覆い部24の剛性確保に対して寄与度の低い部分に、凹部32a、32bを形成している。しかも、凹部32a、32bを、開口窓部29の周方向側面30a、30bの径方向中間部に形成することで、径方向覆い部24のうちで、開口窓部29を挟んで周方向両側に存在する部分の断面形状を、建築資材などに広く採用されているH字形の断面形状と同等の断面係数を有する、略C字形としている。このため、径方向覆い部24の剛性を十分に確保できる。具体的には、制動時に、径方向覆い部24のうちの径方向外側部には圧縮応力が作用し、径方向覆い部24のうちの径方向内側部には引張応力が作用するが、このうちの圧縮応力を外周側壁部37a、37bによって支承できるため、径方向覆い部24の剛性を十分に確保できる。
【0100】
この結果、本例のディスクブレーキ装置1によれば、分割型のキャリパボディ3に関して、軽量化と剛性の確保との両立を図ることができる。
【0101】
また、本例では、インナボディ部15のうちで、開口窓部29の軸方向内側の端部と軸方向に対向する部分に、連通部21を設けているため、開口窓部29の内側に進入した水分などを、連通部21を通じて軸方向内側に排出することができる。
【0102】
また、本例では、開口窓部29を鋳抜き孔としているため、開口窓部29を切削加工などにより形成する場合に比べて、ディスクブレーキ装置1の製造コストを抑えることができる。
【0103】
また、本例では、開口窓部29の径方向両側の開口部のそれぞれの周方向の開口幅(W29)を、軸方向内側に向かうほど広くしている。このため、キャリパボディ3の剛性の低下を十分に抑えつつ、キャリパボディ3の軽量化を効果的に図れる。また、アウタボディ部16を鋳造加工により製造する際に、中子を軸方向に引き抜きやすくすることができる。このため、アウタボディ部16の加工工数の低減を図れる。
【0104】
また、開口窓部29の周方向側面30a、30bに凹部32a、32bを設けることで、凹部32a、32bを設けない場合に比べて、キャリパボディ3の表面積を増やすことができる。このため、キャリパボディ3の冷却性能を高めることもできる。
【0105】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図17及び図18を用いて説明する。
【0106】
本例では、開口窓部29の周方向側面30a、30bに形成する凹部32c、32dの周方向深さを、実施の形態の第1例の構造よりも大きくしている。具体的には、凹部32c、32dの周方向深さを、実施の形態の第1例にかかる凹部32a、32bの周方向深さのおよそ2倍としている。
【0107】
このために本例では、凹部32c、32dのそれぞれの内面を構成する外側平坦面部33a及び内側平坦面部34aの周方向幅を、実施の形態の第1例にかかる外側平坦面部33及び内側平坦面部34の周方向幅のおよそ2倍としている。また、外周側壁部37c、37d及び内周側壁部38c、38dのそれぞれの周方向の張出量を、実施の形態の第1例にかかる外周側壁部37a、37b及び内周側壁部38a、38bのそれぞれの周方向の張出量のおよそ2倍としている。
【0108】
以上のような構成を有する本例では、凹部32c、32dの容積を大きくできるため、キャリパボディ3のさらなる軽量化を図れる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0109】
[実施の形態の第3例]
実施の形態の第3例について、図19及び図20を用いて説明する。
【0110】
本例では、開口窓部29の周方向側面30a、30bに形成する凹部32e、32fの断面形状を、実施の形態の第1例の構造から変更している。すなわち、本例では、ロータ6(図3参照)の中心軸に直交する仮想平面に関する凹部32e、32fのそれぞれの断面形状を、略二等辺三角形としている。
【0111】
このために本例では、凹部32e、32fの内面を構成する外側平坦面部33bを、周方向外側に向かうほど径方向内側に向かう方向に傾斜したテーパ面とし、かつ、凹部32e、32fの内面を構成する内側平坦面部34bを、周方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜したテーパ面としている。
【0112】
したがって、凹部32e、32fの径方向幅は、凹部32e、32fの周方向の全長にわたって、周方向に関して凹部32e、32fの奥側に向かうほど小さくなる。また、外周側壁部37e、37f及び内周側壁部38e、38fのそれぞれの径方向厚さは、周方向に関して先端側から基端側に向かうほど大きくなる。
【0113】
以上のような構成を有する本例では、キャリパボディ3の軽量化と剛性の確保とを高次元で両立できる。すなわち、径方向覆い部24には、制動時に、開口窓部29から周方向外側に離れるほど大きな圧縮応力が作用しやすいため、本例では、外周側壁部37e、37fの径方向厚さを、支承する圧縮応力の大きさに合わせて変化させることができる。したがって、キャリパボディ3の軽量化と剛性の確保とを高次元で両立できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0114】
[実施の形態の第4例]
実施の形態の第4例について、図21図24を用いて説明する。
【0115】
本例では、開口窓部29の径方向外側の開口部の開口形状と、開口窓部29の径方向内側の開口部の開口形状とを、互いに異ならせている。すなわち、開口窓部29の径方向外側の開口部の開口形状は、実施の形態の第1例の構造と同様に、径方向視で略ロート形状としているのに対し、開口窓部29の径方向内側の開口部の開口形状は、矩形状としている。
【0116】
このために本例では、内周側壁部38g、38hの周方向の張出量(L38g、L38h)を、実施の形態の第1例の構造に比べて小さくしている。これにより、外周側壁部37a、37bの周方向の張出量と内周側壁部38g、38hの周方向の張出量とを同じ軸方向位置で比べた場合に、外周側壁部37a、37bの張出量(L37a、L37b)の方が、内周側壁部38g、38hの張出量(L38g、L38h)よりも大きくなるようにしている(L37a、>L38g、L37b>L38h)。
【0117】
以上のような構成を有する本例では、制動時に、キャリパボディ3に作用する圧縮応力を支承し、径方向覆い部24の剛性確保に対する寄与度の高い外周側壁部37a、37bの張出量を確保しつつ、径方向覆い部24の剛性確保に対する寄与度の低い内周側壁部38g、38hの張出量を小さくできるため、キャリパボディ3の軽量化と剛性の確保とを高次元で両立できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0118】
[実施の形態の第5例]
実施の形態の第5例について、図25図27を用いて説明する。
【0119】
本例では、内周側壁部38a、38bのそれぞれの軸方向内側の端部に、径方向に貫通した水抜き部42を形成している。水抜き部42は、凹部32a、32bと内周側壁部38a、38bの径方向内側に存在する空間とを、径方向に連通している。本発明を実施する場合には、水抜き部の形成位置及び水抜き部の形状を適宜変更することができる。
【0120】
ディスクブレーキ装置は、長手方向(周方向)を上下方向に向けて車両に組み付けられる場合が多いため、下方に配置される凹部32a(又は凹部32b)に水がとどまりやすくなるが、以上のような構成を有する本例では、凹部32a、32bの内側に侵入した水分を、水抜き部42を通じて、内周側壁部38a、38bの径方向内側に排出することができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0121】
[実施の形態の第6例]
実施の形態の第6例について、図28及び図29を用いて説明する。
【0122】
本例では、インナボディ部15aの周方向内側部に、平板状の径方向張出部20cを1つだけ設けている。径方向張出部20cは、2つのシリンダ18を周方向に跨ぐように配置されている。
【0123】
径方向張出部20cは、周方向内側部に、軸方向にのみ貫通した貫通孔である連通部21aを有している。連通部21aは、開口窓部29の軸方向内側の端部と対向する部分に備えられており、開口窓部29と軸方向に連通している。また、連通部21aの周方向幅は、開口窓部29の軸方向内側の端部の周方向幅とほぼ同じである。
【0124】
以上のような構成を有する本例では、実施の形態の第1例の構造に比べて、インナボディ部15aの周方向に関する剛性を向上させることができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0125】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、実施の形態の各例の構造は、矛盾を生じない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。
【0126】
本発明を実施する場合に、開口窓部の開口形状は、実施の形態の各例の構造に限定されず、適宜変更することができる。また、開口窓部の周方向内側面に形成する凹部の断面形状や周方向深さについても、実施の形態の各例の構造に限定されず、適宜変更することができる。
【0127】
実施の形態の各例の構造では、インナボディ部に、シリンダを2つ有する構造を示したが、本発明を実施する場合には、シリンダの数は、1つでも良いし、3つ以上でも良い。
【符号の説明】
【0128】
1 ディスクブレーキ装置
2 サポート
3 キャリパボディ
4 インナパッド
5 アウタパッド
6 ロータ
7 ガイド部
8 インナ側周方向連結部
9 アウタ側周方向連結部
10 固定孔
11 インナガイド部
12 アウタガイド部
13 キャリパガイド部
14 スライドピン
15、15a インナボディ部
16 アウタボディ部
17a、17b 連結部材
18 シリンダ
19a、19b 周方向腕部
20a、20b、20c 径方向張出部
21、21a 連通部
22 連結板部
23 軸方向覆い部
24 径方向覆い部
25 張出部
26 当接凸部
27 逃げ凹部
28 取付孔
29 開口窓部
30a、30b 周方向側面
31 軸方向側面
32a~32f 凹部
33、33a、33b 外側平坦面部
34、34a、34b 内側平坦面部
35 底面部
36a、36b 隅角部
37a~37f 外周側壁部
38a~38h 内周側壁部
39a、39b ライニング
40a、40b 裏板
41a、41b パッドクリップ
42 水抜き部
43 シム板
44 支持孔
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