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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003985
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/18 20140101AFI20240109BHJP
   E05B 85/24 20140101ALI20240109BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E05B81/18
E05B85/24
B60J5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103383
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】吉本 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】桑原 直也
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250HH01
2E250JJ45
2E250KK02
2E250LL05
2E250PP04
2E250RR13
2E250RR44
2E250SS08
(57)【要約】
【課題】モータでラッチ機構を駆動可能なドアラッチ装置の耐用年数を向上する。
【解決手段】ドアラッチ装置10が、ラッチ機構12と、ベースプレート21と、ベースプレート21に連結されるセットプレート22と、セットプレート22に回転可能に支持され、モータ13により駆動され、中立位置から回転することでラッチ機構12を操作する回転部材14と、第1および第2ストッパ61,62とを備える。第1ストッパ61は、セットプレート22に設けられ、回転部材14が中立位置から第1方向R1に第1角度θ1を超えて回転することを阻止する。第2ストッパ62は、ベースプレート21に設けられ、回転部材14が中立位置から第1方向R1に第2角度θ2を超えて回転することを阻止する。第1角度θ1は、第2角度θ2よりも小さい、または第2角度θ2と等しい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたストライカを保持するラッチ機構と、
前記ラッチ機構を収納するラッチ収納体の一部を構成するベースプレートと、
前記ベースプレートに連結されるセットプレートと、
前記セットプレートに回転可能に支持され、中立位置から第1方向に回転することで前記ストライカが離脱するように前記ラッチ機構を操作する回転部材と、
前記回転部材を回転駆動するモータと、
前記セットプレートに設けられ、前記回転部材が前記中立位置から前記第1方向に第1角度を超えて回転することを阻止する第1ストッパと、
前記ベースプレートに設けられ、前記回転部材が前記中立位置から前記第1方向に第2角度を超えて回転することを阻止する第2ストッパと
を備え、
前記第1角度が前記第2角度よりも小さく、前記回転部材の前記第1方向への回転が、前記第2ストッパよりも先に前記第1ストッパによって阻止される
ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記第1角度と前記第2角度との差が、前記モータから前記回転部材を介して前記第1ストッパに入力される荷重に応じた前記セットプレートの変形により、当該差が解消されるまで漸次小さくなる
請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項3】
前記セットプレートは、前記回転部材を軸支して前記回転部材の側面と対向する支持壁を有し、
前記回転部材が、前記側面から前記支持壁に向けて突出する突起を有し、
前記支持壁は、前記突起が挿入され、前記突起の移動軌跡をその内部に含んだ溝を有し、
前記第1ストッパが、前記溝の端部によって構成される
請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記溝が、前記移動軌跡に沿って、前記回転部材の軸を中心とする円弧状に形成される、
請求項3に記載のドアラッチ装置。
【請求項5】
前記セットプレートは、前記回転部材を軸支して前記回転部材の側面と対向する支持壁を有し、
前記第1ストッパが、前記支持壁から前記回転部材の前記側面に向けて突出する突起によって構成される
請求項1または2に記載のドアラッチ装置。
【請求項6】
車体に設けられたストライカを保持するラッチ機構と、
前記ラッチ機構を収納するラッチ収納体の一部を構成するベースプレートと、
前記ベースプレートに連結されるセットプレートと、
前記セットプレートに回転可能に支持され、中立位置から第1方向に回転することで前記ストライカが離脱するように前記ラッチ機構を操作する回転部材と、
前記回転部材を回転駆動するモータと、
前記セットプレートに設けられ、前記回転部材が前記中立位置から前記第1方向に第1角度を超えて回転することを阻止する第1ストッパと、
前記ベースプレートに設けられ、前記回転部材が前記中立位置から前記第1方向に第2角度を超えて回転することを阻止する第2ストッパと
を備え、
前記第1角度が前記第2角度と等しく、前記回転部材の前記第1方向への回転が、前記第1ストッパおよび前記第2ストッパの双方により阻止される
ドアラッチ装置。
【請求項7】
前記セットプレートは、前記回転部材を軸支して前記回転部材の側面と対向する支持壁を有し、
前記回転部材が、前記側面から前記支持壁に向けて突出する突起を有し、
前記支持壁は、前記突起が挿入され、前記突起の移動軌跡をその内部に含んだ溝を有し、
前記第1ストッパが、前記溝の端部によって構成される
請求項6に記載のドアラッチ装置。
【請求項8】
前記溝が、前記移動軌跡に沿って、前記回転部材の軸を中心とする円弧状に形成される、
請求項7に記載のドアラッチ装置。
【請求項9】
前記セットプレートは、前記回転部材を軸支して前記回転部材の側面と対向する支持壁を有し、
前記第1ストッパが、前記支持壁から前記回転部材の前記側面に向けて突出する突起によって構成される
請求項6に記載のドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、車体の開口(ゲート)を開閉するドアに設けられたドアラッチ装置を開示している。ドアラッチ装置は、車体に設けられたストライカを保持するラッチ機構を備える。ドアラッチ装置は、モータと、セクタギヤのような回転部材とを備える。所定の開扉操作が行われると、モータが作動する。これにより、回転部材がラッチ機構を操作し、ストライカがラッチ機構から離脱する。
【0003】
ドアラッチ装置は、ラッチ機構を収納するラッチ収納体と、モータおよび回転部材を支持するセットプレートとを備える。セットプレートは、ラッチ収納体の一部を構成するベースプレートに、ボルトのような固定具を用いて連結される。ベースプレートには、回転部材の回転を機械的に規制するストッパが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-090255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のドアラッチ装置においては、車両の利用期間中に、モータの回転駆動力に基づく荷重が、回転部材を介してベースプレートに入力される。荷重が繰返し入力されると、例えばベースプレートとセットプレートとの取付部のように、ドアラッチ装置の構成要素に疲労が蓄積され、ドアラッチ装置の耐久年数の短縮を招く。
【0006】
本発明は、モータでラッチ機構を駆動可能なドアラッチ装置の耐久性能を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車体に設けられたストライカを保持するラッチ機構と、前記ラッチ機構を収納するラッチ収納体の一部を構成するベースプレートと、前記ベースプレートに連結されるセットプレートと、前記セットプレートに回転可能に支持され、中立位置から第1方向に回転することで前記ストライカが離脱するように前記ラッチ機構を操作する回転部材と、前記回転部材を回転駆動するモータと、前記セットプレートに設けられ、前記回転部材が前記中立位置から前記第1方向に第1角度を超えて回転することを阻止する第1ストッパと、前記ベースプレートに設けられ、前記回転部材が前記中立位置から前記第1方向に第2角度を超えて回転することを阻止する第2ストッパとを備える、ドアラッチ装置を提供する。
【0008】
上記構成によれば、ストライカがラッチ機構から解放されているにも関わらず、何らかの理由でモータが回転し続ける場合に、回転部材の回転は、第1角度回転したところで、第1ストッパにより阻止される。第2ストッパは、回転部材が第2角度回転したときに機能する。2種のストッパがあるため、ベースプレートに入力される荷重を軽減できる。
【0009】
本発明の第1の態様は、前記第1角度が前記第2角度よりも小さく、前記回転部材の前記第1方向への回転が、前記第2ストッパよりも先に前記第1ストッパによって阻止される、ドアラッチ装置を提供する。第2角度が第1角度よりも大きいため、2種のストッパのうち、第1ストッパのみが先に機能する。モータの回転駆動力に基づく荷重は、回転部材を介してセットプレートに入力される。荷重がベースプレートに入力されることを抑止できる。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記第1角度が前記第2角度と等しく、前記回転部材の前記第1方向への回転が、前記第1ストッパおよび前記第2ストッパの双方により阻止される、ドアラッチ装置を提供する。第2角度が第1角度と等しいため、第1ストッパと第2ストッパの双方が機能する。モータの回転駆動力に基づく荷重は、回転部材を介し、セットプレートおよびベースプレートに入力される。セットプレートが荷重の一部を負担するため、ベースプレートに入力される荷重が軽減される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータでラッチ機構を駆動可能なドアラッチ装置の耐久性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るドアラッチ装置が設けられたドアを備える車両の側面図。
図2】第1実施形態に係るドアラッチ装置の斜視図。
図3】第1実施形態に係るドアラッチ装置の分解斜視図。
図4】第1実施形態に係るドアラッチ装置の制御系の概念図。
図5】制御系により実行されるラッチ解除処理を示すフローチャート。
図6】セクタギヤが中立位置に位置付けられている状態における、第1実施形態に係るドアラッチ装置の背面図。
図7】セクタギヤが中立位置から第1角度初期値だけ第1方向に回転した状態における、第1実施形態に係るドアラッチ装置の背面図。
図8】セクタギヤが中立位置から第2角度だけ第1方向に回転した状態における、第1実施形態に係るドアラッチ装置の背面図。
図9】セクタギヤが中立位置から第2方向に回転してクローズストッパが機能している状態における、第1実施形態に係るドアラッチ装置の背面図。
図10】本発明の第2実施形態に係るドアラッチ装置の背面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るドアラッチ装置の分解斜視図。
図12】セクタギヤが中立位置から第1角度だけ第1方向に回転した状態における、第3実施形態に係るドアラッチ装置の背面図。
図13】セクタギヤが中立位置から第2角度だけ第1方向に回転した状態における、第3実施形態に係るドアラッチ装置の背面図。
図14図12のXIV‐XIV線に沿って切断した断面図であって、左側が第1ストッパのみが機能する状態の断面図、右側が第1ストッパおよび第2ストッパの双方が機能する状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。同一のまたは対応する要素には全図を通じて同一の符号を付し、詳細説明の重複を省略する。
【0014】
図1を参照して、ドアラッチ装置10は、車両1のドア2に設けられている。ドア2は、車体3に形成された開口4を開閉する。本実施形態では、単なる一例として、開口4が、車室5を後方に開放するリアゲートであり、ドア2が、リアゲートを開閉するバックドアである。
【0015】
ドア2は、車体3の後上部で車幅方向に延びる揺動軸6周りに、開口4を閉鎖する閉位置(破線を参照)と開口4を開放する全開位置(二点鎖線を参照)との間で、回動可能に車体3に組み付けられる。車両1の左側面視において、時計回りが閉方向A1であり、反時計回りが開方向A2である。
【0016】
開口4の下周縁部には、U字状の金具で構成されたストライカ7が設けられている。ストライカ7は、その一対のピン部が前後方向に並び上下方向に延びる姿勢で、下周縁部に立設される。他方、ドアラッチ装置10は、ドア2の下辺縁部の内面側に配置されている。ドア2が閉方向A1に回転すると、ストライカ7の後側のピン部が、前方へ動いているドアラッチ装置10内へと進入し、ストライカ7がドアラッチ装置10と係合する。これにより、ドア2がラッチ状態となって閉位置で保持される。開口4の周縁部には全周にわたり、ウェザーストリップ8が設けられている。ラッチ状態では、ドア2がウェザーストリップ8を押し潰し、それにより開口4を封止する。
【0017】
ドア2の外面に露出された開スイッチ9が押し操作される等、所定の解錠条件が成立すると、ドアラッチ装置10は、ドア2をラッチ状態からアンラッチ状態へと電動で切り換え、ストライカ7をドアラッチ装置10から解放する。ウェザーストリップ8は、この切換えをアシストすることを期待されており、その弾性力がドア2に開方向A2に作用する。アンラッチ状態では、電動のスピンドルもしくは車両1の利用者が、ドア2を開方向A2へ持ち上げることで、開口4が開放される。
【0018】
図2および図3を参照し、ドアラッチ装置10は、フレーム11、ラッチ機構12、モータ13、およびセクタギヤ14を備える。フレーム11の下部は、ラッチ機構12を収容する矩形箱状のラッチ収納体15を形成する。フレーム11の後部は、モータ13およびセクタギヤ14を支持する支持体16を形成する。
【0019】
ラッチ収納体15は、ドアラッチ装置10全体の下部かつ前部に位置付けられる。ラッチ収納体15は、ストライカ7が挿抜される挿通溝17を形成する。挿通溝17は、ラッチ収納体15の前面および下面に開放され、前面から後方へ延びる。
【0020】
フレーム11は、ベースプレート21、セットプレート22、カバープレート23、およびフェンスブロック24を有する。セットプレート22は、支持体16を構成する。ベースプレート21は、ラッチ収納体15の一部、具体的には、底壁および両側壁を構成する。カバープレート23は、ラッチ収納体15の上壁および両側壁の上部を構成する。フェンスブロック24は、ラッチ収納体15の内部構造を構成し、ラッチ収納体15に収納されるラッチ機構12を支持する。
【0021】
ベースプレート21は、金属板材により成形され、底壁21a、一対の側壁21b、および一対の取付部21cを有する。底壁21aは、平面視で矩形状であり、挿通溝17を部分的に形成する。一対の側壁21bは、底壁21aの両側縁それぞれから上方へ突出し、側面視で三角形状である。この三角形は、前後方向中央部の頂点から前方および後方それぞれに向かって下傾する一対の斜辺縁を有する。一対の取付部21cは、一対の側壁21bの後側の斜辺縁それぞれから左右方向外側へ突出し、下方へ向かって後傾する。
【0022】
フェンスブロック24は、ベースプレート21の内空間(詳しくは、底壁21aおよび一対の側壁21bで囲まれた空間)に収容され、挿通溝17を部分的に形成する。カバープレート23は、上壁23a、一対の側壁23b、および一対の取付部23cを有する。上壁23aは、平面視で矩形状であり、フェンスブロック24上に重ねられる。一対の側壁23bは、上壁23aの両側縁それぞれから上方へ突出し、ベースプレート21の一対の側壁21bの内面の上部と近接する。一対の取付部23cは、一対の側壁23bそれぞれから左右方向外側へ突出し、ベースプレート21の取付部21cと同様に傾斜する。
【0023】
セットプレート22は、金属板材もしくは樹脂材により成形され、支持壁22a、一対の側壁22b、および一対の取付部22cを有する。支持壁22aは、上下方向および左右方向に延びる。一対の側壁22bは、支持壁22aの両側縁それぞれから前方に突出する。一対の取付部22cは、一対の側壁22bの先端縁から左右方向内側へ突出し、ベースプレート21の取付部21cと同様に傾斜される。
【0024】
セットプレート22の取付部22cは、ベースプレート21の取付部21cと、カバープレート23の一対の取付部23cとの間に挟み込まれる。積層された取付部21c,22c,23cは、ボルト等の固定具(図示せず)を用いて互いに連結される。これにより、セットプレート22が、ラッチ収納体15を構成するベースプレート21およびカバープレート23と連結される。固定具は、取付部21c,22c,23cの積層方向に向けられる。固定具の延在方向(取付部21c,22c,23cの積層方向)は、下方に向かって前傾する。ベースプレート21に荷重が入力されると、取付部21c,22c,23cおよび固定具がその荷重を受け持つ。
【0025】
ラッチ機構12は、主として、フォーク30およびクローレバー35を有する。フォーク30は、フォークシャフト31に固着される。クローレバー35は、クローシャフト36に回転可能に支持される。フォークシャフト31およびクローシャフト36は、上下方向に平行に延び、ラッチ収納体15に支持される。フォークシャフト31およびクローシャフト36は、挿通溝17に対して互いに左右方向反対側に配置されている。フォーク30、クローレバー35、および挿通溝17の位置関係もこれと同様である。単なる一例として、フォーク30は、挿通溝17に対して前から向かって右側に配置され、クローレバー35は、挿通溝17に対して前から向かって左側に配置される。
【0026】
フォーク30は、挿通溝17を横切りストライカ7を保持するラッチ位置と、挿通溝17を開放してストライカ7の挿脱を許容するオープン位置との間で、フォークシャフト31の軸線周りに回転する。フォーク30は、オープン位置に向けて上から見て反時計回りに弾性的に付勢されている。クローレバー35は、フォーク30を係止してフォーク30の付勢方向の回転を規制する係止位置と、フォーク30から離隔されてフォーク30の付勢方向の回転を許容する非係止位置との間で、クローシャフト36の軸線周りに回転する。クロー35は、係止位置に向けて上から見て時計回りに弾性的に付勢される。
【0027】
フォーク30は、フォーク30と離隔可能に係合するクローレバー35のクロー部(図示略)とともに、ラッチ収納体15の内下部に収納される。フォークシャフト31の上端部は、ラッチ収納体15から上方へ突出する。フォークレバー32が、この上端部に固着される。フォークレバー32は、フォークシャフト31およびフォーク30と一体回転する。クローレバー35は、クロー部およびレバー部37を一体に有する。レバー部37は、クロー部の後部から上方へ立設される。ラッチ収納体15の右後部は、前方へ凹んでいる。レバー部37は、この凹所内に配置され、ラッチ収納体15の上壁よりも上方へ突出している。
【0028】
フォークレバー32およびレバー部37は、ラッチ収納体15の上方において、支持体16の前面(セットプレート22の支持壁22aの前面)に沿って配置される。モータ13は、支持壁22aの後面側に設けられ、セクタギヤ14は、支持壁22aの前面側に設けられる。セクタギヤ14は、回転方向に応じてフォークレバー32およびレバー部37のいずれかを選択的に押圧することでラッチ機構12を操作する回転部材の一例である。
【0029】
モータ13は、両方向回転型の電気モータであり、不図示の出力軸および減速機が収容されたハウジング41に取り付けられている。ピニオンシャフト42が、ハウジング41の内部から外前方へ突出し、ピニオン43が、ハウジング41外でピニオンシャフト42上に固着される。モータ13が作動すると、出力軸の回転が減速されてピニオンシャフト42に伝達され、ピニオン43が回転する。
【0030】
ハウジング41は、セットプレート22の支持壁22aの後面上に、ボルト等の固定具を用いて取り付けられる。支持壁22aは、貫通孔44およびフランジ45を有する。ハウジング41がセットプレート22に取り付けられると、ピニオンシャフト42が貫通孔44を通過し、ピニオン43が支持壁22aの前側に配置される。フランジ45は、側面視で逆L字に形成され、貫通孔44の上辺縁部から前方に突出して、下方へ折り曲げられている。ピニオンシャフト42の先端部は、フランジ45に回転可能に支持される。フランジ45は、下方に開放され、ピニオン43の歯部は、少なくとも下方に露出される。
【0031】
ギヤシャフト51が、支持壁22aの下部に形成された貫通孔1に固着される。セクタギヤ14は、ギヤシャフト51に回転可能に支持される。ギヤシャフト51は、抜け止めのため、ボビン状に形成されている。セクタギヤ14の一側面(後面)は、支持壁22aの前面と対向している。
【0032】
セクタギヤ14の側面は、軸方向に見て、扇形から三角形を切り欠いた形状、換言するとL字状に形成されている。セクタギヤ14は、腕部14aおよび円弧部14bを有する。腕部14aの基端部に、ギヤシャフト51に挿通される中心孔14cが形成される。腕部14aは、その中心孔14cの軸線を中心に径方向に延びる。円弧部14bは、腕部14aの先端部から、前から見て時計回り方向に延びる。
【0033】
セクタギヤ14の歯部は、円弧部14bの外周縁部に形成される。セクタギヤ14の円弧部14bおよび歯部の角度範囲は、例えば約90度であり、ラッチ機構12を操作するために必要とされる動作範囲よりも僅かに大きく設定される。セクタギヤ14が、円盤の外周縁に部分的に歯を設ける形態ではないため、大径のセクタギヤ14をフレーム11の下部で軸支でき、コンパクトな構成で高い減速比(トルク増幅比)が得られる。また、後述するとおり、セクタギヤ14の回転を機械的に阻止するために腕部14aを活用可能になり、電動式のドアラッチ装置10のメカニカルストップを簡素な構成で実現できる。
【0034】
セクタギヤ14の支持体16とは反対側の側面(前面)には、操作部材53が設けられる。操作部材53は、側面から前方へ突出する。操作部材53は、比較的に長尺の第1ピン53aと、第1ピン53aよりも上方に配置されて第1ピン53aよりも短い第2ピン53bとを含む。図2では、セクタギヤ14が中立位置に位置付けられている。セクタギヤ14が中立位置に位置付けられている状態で、操作部材53は、左右方向においてフォークレバー32とレバー部37との間に配置される。
【0035】
図4を参照して、ドアラッチ装置10は、制御器90、フォークセンサ91、および中立位置センサ92を備える。制御器90は、開スイッチ9、モータ13、フォークセンサ91、および中立位置センサ92と接続される。開スイッチ9は、例えば、利用者により押し操作されるボタン式の操作子と一体化され、ドア2の外面に設けられる。
【0036】
フォークセンサ91は、フォーク30の回転位置を検出する。フォークセンサ91は、例えば、ロータリースイッチで構成される。フォークセンサ91は、ラッチ収納体15の右後下部に取り付けられ、フォーク30と近接して配置されている(図2を参照)。なお、フォークセンサ91の検出信号はドア2の開閉に伴う車内灯95の点灯/消灯の制御に用いられることから、フォークセンサ91は、ランプスイッチとも称される。
【0037】
中立位置センサ92は、セクタギヤ14が中立位置に位置付けられているか否かを検出する。図2も参照すると、中立位置センサ92は、支持壁22aの前面に取り付けられ、セクタギヤ14よりも径方向外側に配置される。中立位置センサ92は、例えば、リミットスイッチまたは電磁ピックアップで構成される。セクタギヤ14の前面には、被検出体93が取り付けられている。セクタギヤ14が中立位置に位置付けられると、被検出体93が、中立位置センサ92と近接対向または接触する。これにより、中立位置センサ92は、セクタギヤ14が中立位置に位置付けられた旨を示す信号を制御器90に出力する。
【0038】
図1図4を参照して、ドアラッチ装置10の動作について説明する。まず、ドア2がアンラッチ状態にあり、ドア2が例えば全開位置に位置付けられているものと仮想する。このとき、セクタギヤ14は、中立位置に位置付けられる(図2を参照)。フォーク30は、オープン位置に付勢されている。クローレバー35は、係止位置に付勢されているが、オープン位置に位置付けられたフォーク30からは離隔されている。フォークセンサ91は、フォーク30がオープン位置に位置付けられている旨の信号を制御器90に出力する。これにより、車内灯95が点灯されてもよい。
【0039】
電動スピンドルもしくは利用者がドア2を全開位置から閉方向A1へ回転させると、ラッチ収納体15の下面が、開口4の下周縁部の僅かに上方で前方へ移動し、ストライカ7の後側のピン部が、挿通溝17内へと前および下から導入される。ストライカ7は、挿通溝17内でフォーク30に挟持され、フォーク30を後方へ押す。これにより、フォーク30が、付勢力に抗して上から見て時計回りに回転し、オープン位置とラッチ位置との中間のハーフラッチ位置へと変位する。クローレバー35は、係止位置に留まりつつ、回転変位を生じたフォーク30と係合し、フォーク30をハーフラッチ位置で係止する。
【0040】
フォークセンサ91は、フォーク30がハーフラッチ位置に位置付けられている旨の信号を制御器90に出力する。制御器90は、これに応じてモータ13を逆転させる。モータ13の逆転に伴い、セクタギヤ14が、中立位置から第2方向R2(前から見て時計回り)に回転し、操作部材53が、フォークレバー32を右方へ押す。フォークレバー32は、フォークシャフト31およびフォーク30とともに、上から見て時計回りに回転する。フォーク30は、ストライカ7を挟持したまま回転し、ストライカ7を挿通溝17内で後方へ相対移動させる。すなわち、ドア2が前方(閉方向A1)へ変位する。
【0041】
フォーク30がラッチ位置まで回転すると、係止位置に留まるクローレバー35が、フォーク30と再び係合し、フォーク30をラッチ位置で係止する。ラッチ位置で係止されたフォーク30は、左右方向に延びて挿通溝17を横切り、ストライカ7の前方への離脱を阻止する。すなわち、ドア2がラッチ状態に切り換わる。フォーク30がオープン位置からラッチ位置へと変位する過程において、ドア2がウェザーストリップ8を押し潰し、それにより開口4が封止される。
【0042】
フォークセンサ91は、フォーク30がラッチ位置に位置付けられている旨の信号を制御器90に出力する。これにより、車内灯95が消灯されてもよい。制御器90は、フォーク30のラッチ位置への変位に応じて、モータ13を正転させ、セクタギヤ14を中立位置に復帰させる。中立位置センサ92が、セクタギヤ14が中立位置に位置付けられた旨の信号を出力すると、制御器90は、モータ13を停止する。
【0043】
図5を参照して、ドア2がラッチ状態にあってセクタギヤ14が中立位置に位置付けられている状態では、制御器90は、所定の解錠条件の成否を判定する(ステップS1)。解錠条件は、特に限定されないが、一例として、車両1に固有の鍵が車両1の近傍にあり且つ開スイッチ9が押し操作されるとの条件を挙げることができる。解錠条件が非成立であれば(ステップS1:N)、現状が維持される。
【0044】
解錠条件が成立すると(ステップS1:Y)、制御器90がモータ13を正転させる(ステップS2)。セクタギヤ14が中立位置から第1方向R1(前から見て反時計回り)に回転し、操作部材53がレバー部37を左方へ押す。クローレバー35は、上から見て反時計回りに回転する。クローレバー35は、クローレバー35に作用する付勢力、ラッチ位置のフォーク30からクローレバー35に作用する付勢力、およびフォーク30とクローレバー35との間で発生する摩擦力に抗して回転する。セクタギヤ14には、これら力への対抗に十分なトルクが伝達されている。
【0045】
クローレバー35が係止位置から或る解放角だけ回転すると、クローレバー35は、フォーク30から離隔され、フォーク30の付勢力を支持しなくなる。これにより、フォーク30は、付勢力に基づいて上から見て反時計回りに回転することを許容される。この際、押し潰されていたウェザーストリップ8は原形状に復元しようとする。その弾性力は、ドア2に対して後方に作用し、ストライカ7のラッチ機構12に対する前方への相対変位を促す。ストライカ7の相対変位が促されることで、フォーク30の反時計回りの回転も促される。
【0046】
モータ13の正転が開始されると、制御器90は、フォークセンサ91からの出力を監視し、フォーク30がラッチ位置から変位したか否かを判定する(ステップS3)。モータ13の正転は、時限処理であり、所定の設定時間(例えば、1.5秒)が経過すればフォーク30の位置に関わらず終了する。
【0047】
フォーク30が設定時間内にラッチ位置から変位したと判定されると(ステップS3:Y)、制御器90がモータ13を逆転させる(ステップS5)。セクタギヤ14は、第2方向R2に回転駆動される。次いで、制御器90は、中立位置センサ92からの出力を監視し、セクタギヤ14が中立位置に到達したか否かを判定する(ステップS6)。セクタギヤ14が中立位置に到達すると(ステップS6:Y)、制御器90は、モータ13を停止させる(ステップS7)。これにより、セクタギヤ14が、中立位置に位置付けられる。なお、モータ13の逆転の開始と同時的に、車内灯95が点灯されてもよい(ステップS8)。
【0048】
これに対し、ウェザーストリップ8の弾性力によってはドア2を閉位置から後方(開方向A2)へ変位させることができず、クローレバー35がフォーク30から離隔されていても、フォーク30がラッチ位置から変位しない事態が生じ得る。その要因として、開口4の鉛直下向きに対する後方への傾斜、ドア2の重量、あるいは路面の縦断勾配や駐車場の水勾配などを例示できる。図1に示すように、開口4の傾斜角φが大きい場合、閉位置に保持されているドア2には、自重に基づいて閉方向A1の回転モーメントが作用し、ストライカ7がフォーク30および挿通溝17に留まり続ける。
【0049】
フォーク30がラッチ位置から変位したと判定されることなく設定時間が経過すると(ステップS3:N)、一旦、制御器90は、モータ13を逆転させ(ステップS5)、セクタギヤ14を中立位置に戻す(ステップS6)。
【0050】
このように、フォーク30の変位を促しにくい状況下であっても、モータ13は適時に停止する。ただし、設定時間が経過するまでの期間、モータ13は作動し続ける。この期間内にセクタギヤ14の第1方向R1の回転を機械的に阻止するため、ドアラッチ装置10は、オープンストッパ60(図6を参照)を備える。
【0051】
図3および図6を参照して、オープンストッパ60には、セットプレート22に設けられた第1ストッパ61と、ベースプレート21に設けられた第2ストッパ62とが含まれる。第1ストッパ61は、セットプレート22とセクタギヤ14との協働により、セクタギヤ14が中立位置から第1方向R1に第1角度θ1を超えて回転することを阻止する。第2ストッパ62は、ベースプレート21とセクタギヤ14との協働により、セクタギヤ14が中立位置から第1方向R1に後述の第2角度θ2を超えて回転することを阻止する。
【0052】
第1ストッパ61に関し、セクタギヤ14の背面には、突起61aが設けられている。突起61aの形状は、特に限定されないが、一例として、楕円形状または長円形状であり、外周面が曲面部を有する。曲面部は、少なくとも突起61aの周方向の両端部に設けられる。他方、セットプレート22は、突起61aが挿入される溝61bを有する。溝61bは、セクタギヤ14が回転する際の突起61aの移動軌跡に沿って、貫通孔52(すなわち、セクタギヤ14の回転中心)を中心とする円弧状に形成されている。
【0053】
図7を参照して、セクタギヤ14が、中立位置からクローレバー35を解放角まで回転させる解放角度を超えて第1方向R1に回転し続けると、突起61aの外周面が溝61bの第1端部61cに当接する。これにより、セクタギヤ14の第1方向R1に第1角度θ1を超える回転が規制される。このように、本実施形態では、溝61bの第1端部61c(および突起61a)が、第1ストッパ61としての役割を果たす。
【0054】
第2ストッパ62に関し、ベースプレート21の底壁21aの後縁部に、側面視においてL字状の突出片62aが設けられている。突出片62aは、底壁21aから僅かに上方へ突出し、後方に向けて折り曲げられている。突出片62aは、左右方向に比較的長尺である。他方、セクタギヤ14の腕部14aの端面の一部は、第1方向R1に突出されており、当接面62bを成している。
【0055】
図8を参照して、セクタギヤ14が、中立位置から解放角度を超えて第1方向R1に回転し続けると、当接面62bが突出片62aの上面に当接する。特に、本実施形態では、当接面62bは突出片62aに面接触するため、セクタギヤ14およびベースプレート21の接触部分での応力集中が緩和される。このようにして、セクタギヤ14の第1方向R1の回転が阻止される。本実施形態では、突出片62bの上面(およびセクタギヤ14の腕部の当接面62b)が、第2ストッパ62としての役割を果たす。
【0056】
以下、ドアラッチ装置10の新品状態における第1角度θ1を、「第1角度初期値θ1a」と称する(図7を参照)。本実施形態では、第1角度初期値θ1が、第2角度θ2よりも小さい。
【0057】
そのため、車両1の実用開始当初において、クローレバー35がフォーク30から離隔されているにも関わらずフォーク30が十分に回転し得ない場合に、セクタギヤ14の突起61aは、設定時間が経過するまで第1ストッパ61に当接し続ける。このとき、モータ13の回転駆動力に基づく荷重が、セクタギヤ14を介し、セットプレート22の第1ストッパ61(すなわち、溝61bの第1端部61c)に作用する。
【0058】
セットプレート22は、モータ13およびセクタギヤ14を支持する支持体16を構成しているから、この荷重は、その殆ど全てが第1ストッパ61で受け持たれる。例えば、セットプレート22の取付部22cおよびこれに適用された固定具に作用することはない。そのため、ドア2の開放に際して荷重が繰返し入力されることがあっても、取付部22cに疲労が蓄積されることを防止できる。
【0059】
一例として、セクタギヤ14は、熱処理された鉄鋼材で成形される一方、セットプレート22は、折曲げ成形の容易性を考慮し、セクタギヤ14よりも低強度の鉄鋼材で成形される。このため、車両1が長期間実用される過程で、荷重の繰返し入力により、第1ストッパ61に塑性変形が生じる。本例では、突起61aの外周面の形状が転写されるようにして、溝61bの第1端部61cが突起61aによって掘られていく。
【0060】
これにより、第1角度θ1は、経年で漸次大きくなっていく。その間、第2ストッパ62は機能しておらず、荷重は、取付部22cを始めとして、ドアラッチ装置10の溝61b以外の要素には変形をもたらさない。そのため、第1角度θ1と第2角度θ2との差が、セットプレート22の変形(特に、その溝61bの変形)により、経年で漸次小さくなっていく。第1角度θ1と第2角度θ2との差が解消されるまで、第1角度θ1は漸次大きくなっていく。
【0061】
図8を参照して、第1角度θ1が第2角度θ2と等しくなるまで溝61bが変形すると、モータ13の回転駆動力に基づく荷重は、セクタギヤ14を介し、第1ストッパ61と第2ストッパ62との双方に同時的に作用する。荷重が、第1ストッパ61および第2ストッパ62に分散する。そのため、第1ストッパ61に作用する荷重は、これまで作用していた荷重と比べ、軽減される。
【0062】
第2ストッパ62には、セクタギヤ14の当接面62cから、荷重が下向きに作用する。突出片62が下向きに弾性変形するとともに、ベースプレート21の取付部21cおよびこれに適用されている固定具にも、下向きの荷重が作用する。すなわち、セクタギヤ14が軸支されたセットプレート22の取付部22cと、第2ストッパ62が設けられたベースプレート21の取付部21cとを引き離す方向に荷重が作用する。しかし、第2ストッパ62に作用する荷重は、第2ストッパ62が単独で荷重を受け持つ場合と比べ、軽減されている。
【0063】
このため、取付部21c、22cおよびこれに適用される固定具に蓄積される疲労を軽減できる。したがって、取付部21c、22cひいてはドアラッチ装置10の耐用年数が向上する。特に、本実施形態では、第2ストッパ62が荷重を受け持つようになる段階より先に、第1ストッパ61のみが荷重を受け持つ段階がある。そのため、耐用年数が一層向上する。
【0064】
なお、図2に示すように、ドアラッチ装置10は、クローレバー35を手動で回転させるための非常レバー59を備えている。そのため、電源としての車載バッテリの残容量が少なくなってモータ13でラッチ機構12を動作できなくても、ドア2の開放は可能である。
【0065】
また、図2および図9を参照して、ドアラッチ装置10は、セクタギヤ14の第2方向の回転を機械的に規制するクローズストッパ65も備えている。本実施形態では、クローズストッパ65は、突出片62aのうち当接面62bと接触する側とは反対側の端部(前から向かって右端部)によって構成される。セクタギヤ14は、腕部14aから第2方向R2に突出する凸片65aを有する。セクタギヤ14が第2回転方向に回転し続けると、凸片65aがクローズストッパ65に係止される。それにより、セクタギヤ14の回転が規制される。
【0066】
図示例では、クローズストッパ65が機能する状態において、突起61aは、61bの第2端部61dとは離隔されている。このように、溝61bはクローズストッパ65としての役割を果たさなくてもよく、溝61bの第2端部61dは、突出片62aの右端部とともにクローズストッパ65としての役割を同時的に果たしてもよい。
【0067】
次に、図10を参照して、上記実施形態との相違点を中心にして、第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1角度初期値θ1aが、第2角度θ2と等しい。そのため、車両の実用開始当初より、クローレバー35がフォーク30から離隔されているにも関わらずフォーク30が十分に回転し得ない場合において、セクタギヤ14の突起61aが溝61bの第1端部61cに当接するとともに、セクタギヤ14の当接面62bが、突出片62aの上面62bに接触する。
【0068】
本実施形態においても、第1実施形態において第1角度θ1が第2角度θ2と等しくなるまで大きくなった場合と同様にして、モータ13の回転駆動力に基づく荷重が、第1ストッパ61および第2ストッパ62に分散される。それにより、セットプレート22の取付部22cひいてはドアラッチ装置10の耐用年数を向上させることができる。
【0069】
次に、図11図14を参照して、上記実施形態との相違点を中心にして、第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1角度初期値が第2角度よりも小さい。
【0070】
図11を参照して、第1ストッパ161が、セットプレート22の支持壁22aに設けられた突起161aによって構成される。突起161aは、支持壁22a前方に突出する。一例として、突起161aが、支持壁22aの下辺縁に折曲げによって形成されるが、切り起こしによって形成されてもよい。
【0071】
図12および図14左部を参照して、セクタギヤ14は、中立位置から第1方向に第1角度だけ回転すると、突起161aに当接する。セクタギヤ14は、突起に当接するための構成を有するが、その形態は突起161aの位置等により適宜変更可能である。例えば、突起161aが支持壁22aの上部に配置された場合には、セクタギヤ14は、腕部14aに突起161aを受容する円弧状の溝を有していてもよい。本実施形態のように、突起161aが、支持壁22aの下端に設けられた場合には、セクタギヤ14の腕部14aの端面に突起161aに当接させる突当て面161bを形成してもよい。
【0072】
車両の実用開始当初においては、セクタギヤ14が第1方向に回転し続けた場合に、セクタギヤ14は第1ストッパ161にのみ先に当接し、それにより回転が機械的に阻止される。図14を参照して、荷重が第1ストッパ161に繰返し入力されることで、突起161aは変形する。この突起161aの突出量は、セクタギヤ14が中立位置から第1方向R1に第1角度初期値θ1aだけ回転した状態における、当接面62bと突出片62aとの間隔よりも長い。
【0073】
そのため、図13および図14右部を参照して、突起161aの変形が進行して第1角度が大きくなる過程で、突起161aがセクタギヤ14と当接する状態を維持したまま、第1角度が第2角度と等しくなる。つまり、第1ストッパ161のみが機能する状態から、第1ストッパ161と第2ストッパ62の双方が機能する状態へ移行し、第2ストッパ62にのみ荷重が作用する状態を避けることができる。したがって、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0074】
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記の構成は、本発明の範囲内で適宜変更、追加、および削除可能である。
【0075】
第1ストッパがセットプレートに設けられた突起で構成される場合において、第2実施形態と同様に、第1角度初期値θ1a第2角度θ2と等しくてもよい。
【0076】
ドア2がバックドアである場合を例示したが、ドアラッチ装置10はサイドドアに適用されてもよい。
【0077】
溝61bは、貫通孔52を中心とする円弧状に形成されているが、セクタギヤ14が回転する際の突起61aの移動軌跡に沿った円弧状の溝を内部に含んだ形状であればよく、例えば矩形状であってもよい。突起と溝の配置をセットプレートとセクタギヤとで入れ替えた場合においても、同様である。
【符号の説明】
【0078】
3 車体
7 ストライカ
10 ドアラッチ装置
12 ラッチ機構
13 モータ
14 セクタギヤ
15 ラッチ収納体
21 ベースプレート
22 セットプレート
22a 支持壁
61,161 第1ストッパ
61a 突起1
61b 溝
61c 第1端部
161a 突起
161b 凹面
62 第2ストッパ
θ1 第1角度
θ2 第2角度
R1 第1方向
R2 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14