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特開2024-3986グァーガム分解物の製造方法及びグァーガム分解物の使用方法
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  • 特開-グァーガム分解物の製造方法及びグァーガム分解物の使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003986
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】グァーガム分解物の製造方法及びグァーガム分解物の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20240109BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240109BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20240109BHJP
   A23G 9/34 20060101ALI20240109BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20240109BHJP
【FI】
C08B37/00 G
A23L29/256
A23L29/269
A23G9/34
A23L29/238
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103384
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】501360821
【氏名又は名称】MP五協フード&ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000238234
【氏名又は名称】シキボウ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522258891
【氏名又は名称】株式会社シキボウ堺
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大和谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田渕 彰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕弥
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和大
(72)【発明者】
【氏名】吉川 大貴
【テーマコード(参考)】
4B014
4B041
4C090
【Fターム(参考)】
4B014GB19
4B014GE12
4B014GG11
4B014GG14
4B014GK05
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP02
4B014GP12
4B014GP13
4B014GP14
4B041LC03
4B041LC05
4B041LC10
4B041LD02
4B041LD03
4B041LE01
4B041LH07
4B041LH10
4B041LH16
4B041LK02
4B041LK07
4B041LK44
4B041LP01
4B041LP03
4B041LP05
4B041LP07
4B041LP08
4C090AA04
4C090BA74
4C090BA92
4C090BB03
4C090BB13
4C090BB14
4C090BB32
4C090BB33
4C090BB36
4C090BB37
4C090BB52
4C090BC12
4C090CA43
4C090DA03
4C090DA27
(57)【要約】
【課題】本発明は、効率的なグァーガム分解物の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】グァーガムのガラクトースを酵素で除去してグァーガム分解物を生成させる反応工程を備え、前記反応工程では、前記グァーガムと前記酵素と水とを混合して反応前混合物を作製し、酵素反応後、前記グァーガム分解物と前記水とを含む反応後混合物を取得し、前記反応前混合物は、前記グァーガムの濃度が20質量%以上である、グァーガム分解物の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グァーガムのガラクトースを酵素で除去してグァーガム分解物を生成させる反応工程を備え、
前記反応工程では、前記グァーガムと前記酵素と水とを混合して反応前混合物を作製し、酵素反応後、前記グァーガム分解物と前記水とを含む反応後混合物を取得し、
前記反応前混合物は、前記グァーガムの濃度が20質量%以上である、グァーガム分解物の製造方法。
【請求項2】
前記反応後混合物でシートを作製して該シートを乾燥させる乾燥工程をさらに備える、請求項1に記載のグァーガム分解物の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程をドラムドライヤで実施する、請求項2に記載のグァーガム分解物の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法で得られたグァーガム分解物をゲル化剤に含ませる、グァーガム分解物の使用方法。
【請求項5】
前記ゲル化剤がカラギーナン又はキサンタンガムを含む、請求項4に記載のグァーガム分解物の使用方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法で得られたグァーガム分解物をとろみ調整剤に含ませる、グァーガム分解物の使用方法。
【請求項7】
前記とろみ調整剤がキサンタンガムを含む、請求項6に記載のグァーガム分解物の使用方法。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法で得られたグァーガム分解物を冷菓用保形剤に含ませる、グァーガム分解物の使用方法。
【請求項9】
前記冷菓用保形剤がタマリンドガムを含む、請求項8に記載のグァーガム分解物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グァーガム分解物の製造方法、及び、グァーガム分解物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グァーガムは、ガラクトマンナンと呼ばれる多糖類の一種である。ガラクトマンナンは、主に植物の種子から得られ、マンノースで構成される主鎖とガラクトースで構成される側鎖とを有する。グァーガムの他にガラクトマンナンに属する多糖類としては、ローカストビーンガムなどが知られている。グァーガムとローカストビーンガムとは、マンノースとガラクトースとの含有割合が異なっており、具体的には、グァーガムの方がローカストビーンガムよりもガラクトースの含有割合が大きい。
【0003】
ローカストビーンガムは、増粘剤、冷菓の保形剤、ゲル化剤など多岐の用途への可能性を有するものとして知られている。しかしながら、ローカストビーンガムは、これを含む種子の播種から収穫までの期間が10年以上と長く、また栽培が天候に大きく影響されるため、安定な供給や単価の抑制において課題がある。よって、特許文献1~4に記載のように、安定供給が可能で且つ安価なグァーガムから、ローカストビーンガムと類似の機能を有する多糖類、すなわちグァーガム分解物を取得することが提案されている。
【0004】
グァーガム分解物は、グァーガムのガラクトースを酵素で除去して得られる多糖類である。すなわち、グァーガム分解物は、酵素反応によって、マンノースとガラクトースとの含有割合がローカストビーンガムの当該含有割合に近付けられたものである。よって、グァーガム分解物は、ローカストビーンガムの代替物として使用され得る。
【0005】
例えば、特許文献1には、グァーガム分解物を含む冷菓用保形剤、及び、グァーガム分解物とキサンタンガムとを含む冷菓用保形剤が記載されている。また、特許文献2~4には、グァーガム分解物とカラギーナンとを含むペースト状食品やゲル状食品(ゼリー、プリン、ジャムなど)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59-205995号公報
【特許文献2】特開平1-247040号公報
【特許文献3】特開平1-247050号公報
【特許文献4】特開2021-48829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、グァーガム分解物は、ローカストビーンガムと同様、多岐の用途への可能性を有するものである。よって、グァーガム分解物を効率良く製造できる製造方法の提供が望まれる。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、効率的なグァーガム分解物の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、該製造方法によって得られたグァーガム分解物の使用方法を提供することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るグァーガム分解物の製造方法は、
グァーガムのガラクトースを酵素で除去してグァーガム分解物を生成させる反応工程を備え、
前記反応工程では、前記グァーガムと前記酵素と水とを混合して反応前混合物を作製し、酵素反応後、前記グァーガム分解物と前記水とを含む反応後混合物を取得し、
前記反応前混合物は、前記グァーガムの濃度が20質量%以上である。
【0010】
斯かる構成によれば、グァーガムの濃度を20質量%以上とすることによって、1回の反応工程で比較的多くのグァーガム分解物を取得することができる。すなわち、上記構成によれば、効率良くグァーガム分解物を製造することができる。
【0011】
また、本発明に係るグァーガム分解物の製造方法は、好ましくは、
前記反応後混合物でシートを作製して該シートを乾燥させる乾燥工程をさらに備える。
【0012】
斯かる構成によれば、反応後混合物をシートにして乾燥させることによって、得られるグァーガム分解物がゲル化性などの性能に優れるものとなる。
【0013】
また、本発明に係るグァーガム分解物の製造方法は、好ましくは、
前記乾燥工程をドラムドライヤで実施する。
【0014】
斯かる構成によれば、乾燥工程をドラムドライヤで実施することによって、得られるグァーガム分解物がさらにゲル化性などの性能に優れるものとなる。
【0015】
また、本発明に係るグァーガム分解物の使用方法は、上記の製造方法で得られたグァーガム分解物をゲル化剤に含ませ、好ましくは、前記ゲル化剤がカラギーナン又はキサンタンガムをさらに含む。
【0016】
斯かる構成のゲル化剤は、ゲル強度に優れるものとなる。
【0017】
また、本発明に係るグァーガム分解物の使用方法は、上記の製造方法で得られたグァーガム分解物をとろみ調整剤に含ませ、好ましくは、前記とろみ調整剤がキサンタンガムをさらに含む。
【0018】
斯かる構成のとろみ調整剤は、嚥下困難者用の食品に適度なとろみを付与する機能に優れるものとなる。
【0019】
また、本発明に係るグァーガム分解物の使用方法は、上記の製造方法で得られたグァーガム分解物を冷菓用保形剤に含ませ、好ましくは、前記冷菓用保形剤がタマリンドガムをさらに含む。
【0020】
斯かる構成の冷菓用保形剤は、冷菓の保形性に優れるものとなる。
【発明の効果】
【0021】
以上の通り、本発明によれば、効率的なグァーガム分解物の製造方法及び該製造方法によって得られたグァーガム分解物の使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態のグァーガム分解物の製造方法の乾燥工程で用いられるドラムドライヤの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、一実施形態に係るグァーガム分解物の製造方法について説明する。以下では、回分式(バッチ式)でグァーガム分解物を製造するグァーガム分解物の製造方法を例示する。
【0024】
本実施形態に係るグァーガム分解物の製造方法は、グァーガムと酵素と水とを含む反応前混合物を調製し、酵素を含む水中でグァーガムのガラクトースを除去してグァーガム分解物を生成させる反応工程と、前記水を除去してグァーガム分解物を含む乾燥物を得る乾燥工程とを備える。そして、本実施形態のグァーガム分解物の製造方法では、反応工程における基質濃度を少なくとも20質量%以上とする。これによって、本実施形態のグァーガム分解物の製造方法は、1バッチあたりのグァーガム分解物の取得量を高めることによって効率化を図るものである。かかる観点から、反応工程における基質濃度は、25質量%以上であってもよく、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることがとりわけ好ましい。基質濃度は、通常、90質量%以下である。酵素反応が短時間で完結するという観点からは、基質濃度は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、55質量%以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、基質濃度は、反応前混合物中のグァーガム及び水の合計質量に対するグァーガムの質量割合を意味する。
【0025】
グァーガムは、グアー(Cyamopsis tetragonolobus)の種子から得られる多糖類である。グァーガムは、ガラクトマンナンの一種であり、すなわち、マンノースで構成される主鎖とガラクトースで構成される側鎖とを有する。なお、本実施形態では、前記種子から得られたグァーガムを低分子化することなく用いてもよく、前記種子から得られたグァーガムの主鎖を分解し低分子化(すなわち低粘性化)して用いてもよい。前記低分子化は、酸又はアルカリなどでの化学的処理や、粉砕などの物理的処理を意味し、酵素で側鎖のガラクトースを除去することによる低分子化は含まない。グァーガムは、通常、ガラクトース及びマンノースの合計質量に対するガラクトースの質量割合が35~45%である。
【0026】
本実施形態の製造方法では、原料としてグァーガムの粉を用いる。グァーガムの粉と水との混合物は、前記基質濃度が20質量%以上の場合、湿潤粉末状となり得る。本発明者らは、上記のような基質濃度が高い条件であっても、反応前混合物を湿潤粉末状にすることによって、酵素反応を速やかに進行させることができることを見出した。湿潤粉末状の反応前混合物は、グァーガムの粉が水を吸収してこれらが一体となった状態であることが好ましく、離水のない状態であることがより好ましい。湿潤粉末状の反応前混合物は、グァーガムの粉が水を吸収しつつもサラサラとした状態のものであることが好ましい。また、反応前混合物は、餅状、粘土状、又はしっとりした生地状のものであってもよい。なお、湿潤粉末状の反応前混合物は、グァーガムの粉が水に溶解した溶液状のものや、一部のグァーガムの粉が水に溶解した溶液に残部のグァーガムの粉が懸濁したもののように、流動性を示すものとは異なるものである。
【0027】
グァーガム分解物は、グァーガムからガラクトースを部分的に除去したものを意味する。グァーガム分解物は、ガラクトース及びマンノースの合計質量に対するガラクトースの質量割合が10~35%(好ましくは10~25%)となるように、グァーガムからガラクトースを除去して得られたものである。なお、グァーガム分解物は、グァーガムの主鎖のみを分解して低粘性化したものとは異なるものである。
【0028】
本実施形態の反応工程では、グァーガムと酵素と水とを混合して反応前混合物を作製し、酵素反応後、グァーガム分解物と水とを含む反応後混合物を取得する。
【0029】
反応工程で用いる酵素としては、高分子に作用するα-ガラクトシダーゼ活性を有するものであればよい。かかる酵素としては、グアーの種子由来のα-ガラクトシダーゼ、糸状菌由来のα-ガラクトシダーゼ、放線菌由来のα-ガラクトシダーゼ、酵母由来のα-ガラクトシダーゼなどが挙げられる。反応工程で用いる酵素は、夾雑活性となるβ-マンナナーゼ活性を有しないものであることが好ましい。β-マンナナーゼ活性を有しない酵素は、β-マンナナーゼ活性を有する酵素を精製することによって、又は、β-マンナナーゼ活性を熱やpH調整で失活処理して作製され得る。β-マンナナーゼ活性を有しない酵素を用いることによって、主鎖の分解が抑制され、所望の増粘性を示すグァーガム分解物を得ることができる。
【0030】
反応工程で用いる水は、通常、pH2~8に調整したバッファーである。バッファーとしては、酢酸と酢酸ナトリウムとを用いて調製したpH5の酢酸バッファーが好ましい。
【0031】
湿潤粉末状の反応前混合物を作製するには、グァーガムと酵素と水(バッファー)とを含む混合物を反応前に強力に撹拌し、これらを均質に分散させることが重要である。反応前混合物を作製するための撹拌装置は、前記反応前混合物を収容する収容部と、前記収容部内の前記反応前混合物を撹拌する撹拌部とを備えている。
【0032】
前記撹拌装置としては、底部と該底部の外周縁から立ち上がる側壁部とを有する前記収容部としての容器と、撹拌羽で構成された前記撹拌部とを備えた縦型撹拌装置が挙げられる。前記撹拌部は、好ましくは、上下方向に延びる公転軸周りを公転するように構成され、前記公転軸から左右方向に離れて位置する自転軸を有する軸部と、前記軸部から下方に延びる鉤状の撹拌羽とを有する。より好ましくは、前記公転及び前記自転の回転方向が反対方向である。この他、前記縦型撹拌装置としては、カッターミキサであってもよく、該カッターミキサは、前記底部から上方に延びる回転軸を有する軸部と、前記軸部から前記側壁部に向かって延びる板状の撹拌羽とを有する。
【0033】
また、前記撹拌装置としては、ロータとステータとで構成された前記撹拌部を備える乳化装置が挙げられ、例えば、ホモジナイザ、超音波ホモジナイザ、ホモミキサ、マイルダー、コロイドミルなどが挙げられる。前記乳化装置は、前記ロータの回転によって前記ステータ内に前記反応前混合物を吸引し、前記ロータと前記ステータとの間に設けられた隙間に前記反応前混合物を通過させ、前記ステータに形成された開口を介して前記反応前混合物を前記ステータから排出するように構成されている。
【0034】
また、前記撹拌装置としては、水平方向に沿って延びる前記収容部としてのシリンダと、前記シリンダ内に配された一対のスクリューで構成された前記撹拌部とを備えた二軸混練装置が挙げられる。各スクリューは、水平方向に沿って延びる軸部と、前記軸部の周りを回転する複数の撹拌羽(パドル)とを備えており、一方のスクリューの撹拌羽と他方のスクリューの撹拌羽とが噛み合うように設けられている。かかる二軸混練機としては、例えば、エクストルーダ、コンティニュアスニーダなどが挙げられる。前記混練装置は、スクリューを回転させることによって、前記シリンダ内の前記反応前混合物を前記パドルにより剪断しつつ前記反応前混合物を圧縮するように構成されている。
【0035】
上記の他、前記撹拌装置として、バーチカルグラニュレータなどの高速での撹拌が可能な装置であってもよい。
【0036】
ここで、グァーガムの粉と水と接触させるとダマが発生する場合がある。ダマは、一部のグァーガムが水に溶解することによって形成される増粘層の内側に、非溶解状態の(粉状のままの)グァーガムの粉が取り込まれた状態のものである。このため、ダマの内側のグァーガムは、該増粘層によって酵素との接触が阻害される。すなわち、ダマの内側では、酵素反応が停滞する。よって、酵素反応においてダマが形成されることは好ましくない。そして、かかるダマは、上記のように基質濃度が高い場合において発生し易く、特に、水よりも多いグァーガムの粉を短時間で該水と混合する場合に発生し易い。ダマの抑制方法としては、水とグァーガムの粉とを時間をかけて混合することが考えられるが、グァーガム分解物を大量に効率良く製造する上では時間をかけることは好ましい方法ではない。これに対して、本発明者らは、グァーガムの粉と水とを一度に混合した場合であっても、当該混合物を上記のように強力に撹拌して湿潤粉末状とすることによって、反応混合物において均質に酵素反応が進行することを見出した。
【0037】
反応工程では、反応前混合物を30~60℃、好ましくは45~55℃に加温して反応混合物とし、酵素反応を進行させる。酵素反応においては、反応混合物を静置してもよく、間欠的に撹拌してもよく、湿潤粉末状の反応前混合物を作製するときよりも緩やかに撹拌してもよい。湿潤粉末状の反応前混合物の作製によって、反応混合物を静置する条件や比較的緩やかに撹拌する条件であっても十分に酵素反応が進行する。
【0038】
反応工程では、ガラクトースの前記質量割合が35~45%のグァーガムを酵素分解し、ガラクトースの前記質量割合が10~35%(好ましくは10~28%)のグァーガム分解物を生成させる。本実施形態では、酵素反応のモニタリングは、反応混合物から採取した試料とキサンタンガムとを混合した混合物のゲル強度を測定することによって実施する。この方法は、グァーガム分解物とキサンタンガムとを含む水溶液がゲル化するのに対して、グァーガムとキサンタンガムとを含む水溶液はゲル化しないという原理に基づいている。すなわち、本実施形態の反応工程では、反応混合物(から採取した試料)がゲル化するか否かに基づいて、酵素反応において所望の量のグァーガム分解物が生成しているか否かを判断する。なお、具体的なモニタリング方法については、実施例を参照されたい。
【0039】
上記の他、酵素反応のモニタリングは、グァーガムから除去されて遊離したガラクトース(以下、遊離ガラクトース)を定量することによって実施してもよく、この定量による方法と、上記のゲル強度を測定する方法とを併用してもよい。遊離ガラクトースの定量は、例えば、示差屈折検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて実施することができる。また、遊離ガラクトースの定量は、ガラクトースオキシダーゼとガラクトースプローブとを備える検出キットを用いて実施してもよく、具体的には、試料中の遊離ガラクトースをガラクトースオキシダーゼで酸化して酸化物を生成させた後、該酸化物をガラクトースプローブと反応させることで産生する色素体を比色法又は蛍光法で定量してもよい。さらに別の定量による方法として、遊離ガラクトースをβ-NADとともにガラクトースデヒドロゲナーゼで処理することにより生成させたβ-NADHをUV検出法で定量してもよい。
【0040】
酵素反応の停止は、反応混合物を加熱し酵素を失活させることによって行うことができる。酵素は、通常、90℃以上で5~10分加熱することで失活する。本実施形態では、酵素反応の停止は、乾燥工程における加熱で行う。本実施形態で得られる酵素反応後の反応後混合物は、湿潤粉末状である。また、反応後混合物は、餅状、粘土状、又はしっとりした生地状のものであってもよい。なお、酵素反応後の反応後混合物は、水分の含有量によっては、ペースト状であってもよく、半固形状であってもよい。
【0041】
本実施形態の乾燥工程では、反応混合物をドラムドライヤで乾燥し、反応後混合物とする。図1に示すように、ドラムドライヤ1は、外周面たる加熱面11を有する一対の回転ドラム10を備えている。一対の回転ドラム10a及び回転ドラム10bは、互いの回転軸が平行するように配置されている。また、回転ドラム10a及び回転ドラム10bは、それぞれが反対方向に回転するように構成されている。回転ドラム10a及び回転ドラム10bは、内部に蒸気が供給され、それによって、加熱面11を100℃以上に加温することが可能となっている。
【0042】
ドラムドライヤ1は、回転ドラム10a及び回転ドラム10bの間に反応混合物Mを巻き込むようにして展延し、加熱面11に反応混合物MのシートSを積層するように構成されている。すなわち、ドラムドライヤ1は、加熱面11に反応混合物Mを積層する積層部12を回転ドラム10aと回転ドラム10bとの間に備えている。ドラムドライヤ1では、加熱面11と積層部12とが相対移動することによって、該相対移動の方向に反応混合物Mが展延されつつ加熱面11の上にシートSが形成されて加熱乾燥が行われる。このように、反応混合物Mを加熱面11の上に展延しつつ乾燥するドラムドライヤ1では、単に反応混合物を乾燥しただけの場合(例えば、容器に充填しての減圧乾燥や送風乾燥)よりも水溶性に優れた乾燥物が形成され易い。このことは、ドラムドライヤ1の乾燥ではグァーガム分解物が短時間において加熱されて乾燥される(水分が除去される)ため、アモルファス状に乾燥され易いことが影響していると考えられる。また、被乾燥物を展延可能なドラムドライヤ1は、湿潤粉末状の反応混合物Mを効率的に乾燥させるのに適している。加えて、本実施形態では、反応混合物Mが湿潤粉末状であり水分含量が比較的少ないため、乾燥時間を短くすることができ、乾燥工程が効率的なものとなる。
【0043】
ドラムドライヤ1は、さらに、乾燥後のシートSを掻き取る掻き取り部20と、掻き取り部20が掻き取った乾燥物Dを受ける受部30とを備えている。掻き取り部20は、先端部21を加熱面11に接近させ且つ加熱面11から先端部21を離反可能に構成されている。先端部21は、回転ドラム10の回転軸に平行し、加熱面11の長さに対応した長さの先端縁を有する。掻き取り部20は、先端部21を加熱面11に接近させてシートSに接触し、加熱面11からシートSを掻き取るように構成されている。掻き取られたシートSは、薄片状の乾燥物Dとなり、受部30に受け入れられる。
【0044】
本実施形態のグァーガム分解物の製造方法は、さらに、乾燥物Dを粉砕することによって粉砕物を得る粉砕工程と、前記粉砕物を篩過することによって篩過品を得る篩過工程とを備える。
【0045】
本実施形態の粉砕工程で用いる粉砕機としては、ピンミルが好ましい。薄片状の乾燥物Dをさらに粉砕することによって、水への溶解性に優れ、延いてはゲル化性に優れる粉砕物を製造することができる。
【0046】
本実施形態の篩過工程では、前記粉砕物を篩にかける。篩は、60メッシュ以上であることが好ましく、80メッシュ以上であることがより好ましい。
【0047】
本実施形態のグァーガム分解物の製造方法によれば、乾燥工程においてドラムドライヤを使用することによって、乾燥物Dが篩過工程において篩過され易くなるため、収率良くグァーガム分解物を製造することができる。また、ドラムドライヤでの乾燥を経て製造されるグァーガム分解物は、ゲル化性能に優れるものとなる。すなわち、本実施形態の製造方法によれば、ゲル化性能に優れるグァーガム分解物を効率良く製造することができる。
【0048】
次に、上記実施形態の製造方法で得られたグァーガム分解物の使用方法について説明する。なお、以下では、前記篩過品を用いる態様を例示するが、この他、前記篩過品の他、乾燥物D又は前記粉砕物を用いてもよい。
【0049】
使用方法の第1実施形態では、前記篩過品を冷菓用保形剤として使用する。本実施形態の冷菓用保形剤は、前記篩過品に含まれるグァーガム分解物と、タマリンドガムとを含む。
【0050】
タマリンドガムは、タマリンド(Tamarindus Indica L.)の種子から得られる増粘性の多糖類である。タマリンドガムは、キシログルカンと呼ばれる多糖類の一種である。タマリンドガムにおけるキシログルカンは、β-グルコースで構成される主鎖と、α-キシロース及びガラクトースにより構成される側鎖とを有する。
【0051】
グァーガム分解物は、冷菓の総質量に対して、0.01~3.0質量%含有されることが好ましく、0.1~0.5質量%含有されることがより好ましい。
【0052】
タマリンドガムは、冷菓の総質量に対して、0.01~3.0質量%含有されることが好ましく、0.1~0.3質量%含有されることがより好ましい。
【0053】
冷菓用保形剤において、グァーガム分解物とタマリンドガムとの質量比は1:0.5~1:3であることが好ましい。
【0054】
本実施形態の冷菓用保形剤は、グァーガム分解物とタマリンドガムとを含有することによって、冷菓の保形性の向上に優れ、室温に放置しても溶けにくい冷菓の製造に好適である。なお、グァーガムは、冷菓においてタマリンドガムやローカストビーンガムと併用される場合があるが、それ自身に冷菓の保形性を向上させる機能は無く、タマリンドガムとの併用でも保形性を示さない。
【0055】
使用方法の第2の実施形態では、前記篩過品をゲル化剤として使用する。本実施形態のゲル化剤は、前記篩過品に含まれるグァーガム分解物と、キサンタンガム又はカラギーナンとを含む。
【0056】
キサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリスが醗酵過程で菌体外に産生する天然の多糖類であり、グルコース、マンノース及びグルクロン酸で構成される構造を有する。
【0057】
グァーガム分解物は、ゲルの総質量に対して、0.01~3.0質量%含有されることが好ましく、0.5~2.0質量%含有されることがより好ましい。キサンタンガムとカラギーナンとが併用される場合、グァーガム分解物は、0.05~0.5質量%含有されることが好ましい。
【0058】
キサンタンガムは、ゲルの総質量に対して、0.01~3.0質量%含有されることが好ましく、0.5~1.0質量%含有されることがより好ましい。カラギーナンと併用される場合、キサンタンガムは、0.1~0.5質量%含有されることが好ましい。
【0059】
カラギーナンは、ゲルの総質量に対して、0.01~3.0質量%含有されることが好ましく、0.1~2.0質量%含有されることがより好ましく、0.1~1.0質量%含有されることがさらに好ましい。
【0060】
ゲル化剤において、グァーガム分解物とキサンタンガムとの質量比は1:9~9:1であることが好ましい。また、ゲル化剤において、グァーガム分解物とカラギーナンとの質量比は1:9~9:1であることが好ましい。
【0061】
本実施形態のゲル化剤は、水を含む材料(例えば、80%以上の水を含む食品材料)に溶解させた溶解物を80℃以上(好ましくは85℃以上)に加熱後、25℃以下(好ましくは10℃以下)に冷却して用いられる。これによって、本実施形態のゲル化剤は、前記材料をゲル化させる。
【0062】
使用方法の第3の実施形態では、前記篩過品をとろみ調整剤として使用する。本実施形態のとろみ調整剤は、嚥下困難者用の食品に用いられるものである。本実施形態のとろみ調整剤は、前記篩過品に含まれるグァーガム分解物と、キサンタンガムとを含む。
【0063】
グァーガム分解物は、食品の総質量に対して、0.01~3.0質量%含有されることが好ましく、0.5~2.0質量%含有されることがより好ましい。
【0064】
キサンタンガムは、食品の総質量に対して、0.01~3.0質量%含有されることが好ましく、0.5~2.0質量%含有されることがより好ましい。
【0065】
とろみ調整剤において、グァーガム分解物とキサンタンガムとの質量比は1:9~9:1であることが好ましい。
【0066】
本実施形態のとろみ調整剤は、水を含む材料(例えば、80%以上の水を含む食品材料)と室温(10~35℃、好ましくは20~30℃)で混合して用いられる。また、本実施形態のとろみ調整剤は、室温より高い温度での混合や、混合後の冷却(例えば10℃以下の冷却)なしに、前記材料にとろみを付与し得る。
【0067】
また、本実施形態のとろみ調整剤は、グァーガム分解物とキサンタンガムとを含有することによって、嚥下困難者であっても飲み込みやすいとろみのある食品を調製することができる。さらに、本実施形態のとろみ調整剤は、35℃以下の材料にとろみを付与し得る。すなわち、本実施形態のとろみ調整剤を含む食品は、35℃より高い温度に加熱されなくとも、とろみが付与され得る。よって、本実施形態のとろみ調整剤は、とろみのある食品を調整する際の煩雑さを低減することができる。
【0068】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係るグァーガム分解物の製造方法及びその使用方法は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るグァーガム分解物の製造方法及びその使用方法は、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係るグァーガム分解物の製造方法及びその使用方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0069】
例えば、前記乾燥工程では、前記ドラムドライヤに代えて、乾燥機能付き気流粉砕機(以下、気流粉砕乾燥機)を用いてもよい。前記気流粉砕乾燥機は、粉砕室と、前記粉砕室に前記反応混合物を投入するための投入部と、前記粉砕室内に高速気流を発生させるローターブレードと、前記粉砕室内に温風を送る温風発生部と、前記粉砕室の空気を排気する排気部とを備えている。前記気流粉砕乾燥機による乾燥では、前記投入部から前記粉砕室に供給された前記反応混合物が前記ローターブレードに剪断され又は前記高速気流によって前記粉砕室の内壁に衝突することによって粉砕されつつ、前記温風によって乾燥されて、粉状の前記乾燥物となる。これによって、前記気流粉砕乾燥機による乾燥では、前記ドラムドライヤと同様に、グァーガム分解物が短時間において加熱されて乾燥される(水分が除去される)こととなる。
【0070】
また、本発明のグァーガム分解物の製造方法は、低級アルコールを含む水溶液を用いて反応後混合物又は乾燥物Dを精製する精製工程を備えていてもよい。精製工程によって、遊離ガラクトースなどの夾雑物を除去することができる。
【0071】
また、本発明のグァーガム分解物を冷菓用保形剤に使用する場合、冷菓用保形剤は、グァーガム分解物と、カラギーナン(タマリンドガムに代えて)とを含んでいてもよい。
【0072】
また、本発明のグァーガム分解物をとろみ調整剤に使用する場合、とろみ調整剤は、デキストリン、デンプン、グァーガム、キサンタンガムなどの多糖類、塩化カリウムなどの塩類などの他の添加剤を含んでいてもよい。
【実施例0073】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0074】
[使用原料]
グァーガム:ガラクトースの質量割合39.1%、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製
酵素:E-AGLGU、Megazyme社製
水(pH5酢酸バッファー):8.2gの酢酸ナトリウムを約800mLの脱イオン水に溶解し、脱イオン水で1Lにメスアップし、0.1M酢酸ナトリウムを調製した。次に、5.8mLの氷酢酸を約800mLの脱イオン水に溶解し、脱イオン水で1Lにメスアップし、0.1M酢酸を調製した。0.1M酢酸ナトリウムに0.1M酢酸を滴下し、pH5.0の酢酸バッファーを調製した。
キサンタンガム(酵素反応モニタリング用):住友ファーマフード&ケミカル株式会社製エコーガムT
【0075】
[試験例1~6:大量製造及び撹拌装置の検証]
表1に示すように、基質量及び基質濃度の条件、及び、撹拌装置を変更し、酵素反応を実施した。なお、反応工程の水は、pH5の50mMクエン酸ナトリウムバッファーとした。試験例2及び試験例3のカッターミキサ、試験例4及び試験例5の縦型混練機の場合、ジャケット加温で反応前混合物の温度を45℃~55℃に昇温して反応混合物とし、この温度範囲を維持して酵素反応を実施した。試験例6のコンティニュアスニーダの場合、反応前混合物をトレイに移し、50℃に設定したインキュベーター内に静置して反応混合物とし、酵素反応を開始した。酵素反応の終了確認後、酵素を失活させた各反応後混合物をトレイに移し、50℃の送風乾燥機で約15時間乾燥させた。乾燥物を卓上粉砕機で粉砕後、60~80メッシュの篩で篩過して篩過品を得た。
【0076】
(乾燥物の評価)
得られた篩過品に含まれるグァーガム分解物のゲル化性について、ローカストビーンガムとキサンタンガムとを含む水溶液から調製したゲルのゲル強度と比較することにより評価した。具体的には、グァーガム分解物(0.75g)とキサンタンガム(エコーガムT、0.75g)と室温の水(250~280g)とをビーカー内で混合し、水溶液を作製した。次いで、ビーカーを水浴に浸し、水溶液の温度が85℃以上になるように加熱し、10~15分間撹拌した。撹拌後、液量が300gになるまで水を添加し、グァーガム分解物とキサンタンガムとを含む混合液を作製した。混合液を45gずつゲルカップに分注し、室温で2時間静置後、10℃のインキュベーターでオーバーナイト静置し、ゲル化させた。ゲルのゲル破断強度をレオメータを用いて測定した。結果は、表1に示したとおりである。
【0077】
ゲル強度の比較対象として、ローカストビーンガムとキサンタンガムとを用いて、上記と同様にして比較用ゲルを作製し、比較用ゲルのゲル破断強度を測定した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、縦型撹拌装置(試験例2~5)、混練装置(試験例6)を用いた場合、乾燥物を用いて作製したゲルのゲル破断強度が比較対象のゲル破断強度よりも高いことから、試験例2~6では、速やかに酵素反応が進行し、グァーガム分解物が十分な量生成したと考えられる。これらのなかでも試験例4~5では、より酵素反応が進行し易い(大量生産向けの)湿潤粉末状の反応前混合物が得られたと考えられる。
一方、手撹拌(試験例1)では、ゲル破断強度が比較対象のゲル破断強度よりも低いことから、所望のゲル化性を有するグァーガム分解物を得ることは困難であると考えられる。
以上から、反応前混合物を強力に撹拌することが、速やかに酵素反応を進行させ、グァーガム分解物を十分な量生成させるために重要であることがわかった。
【0080】
[試験例7~21:乾燥工程における乾燥方法の検証1]
表2に示す基質濃度で酵素反応を実施し、ドラムドライヤ、棚段式の送風乾燥機、減圧乾燥機、又はバーチカルグラニュレータを用いて反応混合物を乾燥させ、グァーガム分解物を含む乾燥物を作製した。次いで、乾燥物を粉砕機(サンプルミル)で粉砕し、粉砕物を得た。さらに、粉砕物を80メッシュの篩で篩過し、試験例7~21の篩過品とした。
【0081】
(粉砕物の篩過性の評価)
80メッシュの篩で篩過した際、全体量の何%が篩過されたかを求めることによって、粉砕物の篩過性について評価した。結果は、表2に示したとおりである。
【0082】
(グァーガム分解物の評価)
ゲル破断強度を測定することにより、各篩過品に含まれるグァーガム分解物のゲル化性能について評価した。結果は、表2に示したとおりである。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すように、ドラムドライヤを用いた試験例7~16では、乾燥物が薄片状であり、篩過性に優れるものであった。一方、送風乾燥機又は減圧乾燥機を用いた試験例17~21では、乾燥物が粒状又は塊状であり、篩過性に劣るものであった。よって、ドラムドライを用いるグァーガム分解物の製造方法は、収率の面で他の乾燥機よりも優れており、大量生産に適していることがわかった。
加えて、ドラムドライヤでの乾燥を経て得られた試験例7~16のグァーガム分解物は、送風乾燥機又は減圧乾燥機での乾燥を経て得られた試験例17~21のグァーガム分解物よりも、強度に優れるゲルを形成した。
【0085】
[冷菓用保形剤への使用の検証1]
表3に示す処方に従って、試験例7で得られた篩過品を用い、ラクトアイスを作製した。そして、各ラクトアイスの保形性について、冷菓残存率によって評価した。
(ラクトアイスの製造例)
(1)粉末の原料を混合し、撹拌しながら水に加えた。
(2)撹拌しながら液状の原料(牛乳、クリーム、植物油脂、異性化液糖)を分散させた。
(3)撹拌しながら85℃まで加熱した。
(4)ホモジナイザで混合液を乳化させた。
(5)乳化液を5℃で保存して一晩エイジングを行った。
(6)乳化液にバニラフレーバーを添加後、均質になるまで撹拌した。
(7)フリージングした後、90mLのペーパーカップに冷菓を充填し、環境試験機にて-40℃で2時間硬化させた。
(8)環境試験機-25℃で一晩保管した。
(9)金網(100mm×100mm、6メッシュ)の上にペーパーカップから取り出したラクトアイスを置き、25℃で2時間経過後に融出した質量を測定した。
(10)金網上に置いたラクトアイスの質量と融出した質量から、金網上の残存部分の割合を計算して、これを冷菓残存率とした。
【0086】
【表3】
【0087】
表3に示すように、上記で得られた篩過品のグァーガム分解物を含むラクトアイス(実施例1)は、ローカストビーンガムを含むラクトアイス(比較例2)と同等の冷菓残存率を示した。
【0088】
[冷菓用保形剤への使用の検証2]
表4に示す処方に従って、試験例7で得られた篩過品を用い、アイスミルクを作製した。そして、各アイスミルクの保形性について、冷菓残存率によって評価した。
(アイスミルクの製造例)
(1)牛乳、クリーム、水あめを攪拌して混合した。
(2)粉末原料を混合して加えた。
(3)撹拌しながら85℃まで加熱した。
(4)ホモジナイザで混合液を乳化させた。
(5)乳化液を5℃で保存して一晩エイジングを行った。
(6)乳化液にバニラフレーバーを添加後、均質になるまで撹拌した。
(7)フリージングした後、90mLのペーパーカップに冷菓を充填し、環境試験機にて-40℃で2時間硬化させた。
(8)環境試験機-25℃で一晩保管した。
(9)金網(100mm×100mm、6メッシュ)の上にペーパーカップから取り出したアイスミルクを置き、25℃で1.5時間経過後までに融出した質量を10分間隔で測定した。
(10)金網上に置いたアイスミルクの質量と融出した質量から、金網上の残存部分の割合を計算して、これを冷菓残存率とした。
【0089】
【表4】
【0090】
表4に示すように、上記で得られた篩過品のグァーガム分解物単独のアイスミルク(実施例2)は、ローカストビーンガムの代替品の一つとして知られているタラガム単独(比較例5)より優れた冷菓残存率(保形性)を示し、ローカストビーンガム単独(比較例3)と同等の冷菓残存率を示した。さらに、グァーガム分解物とタマリンドガムとを含むアイスミルク(実施例3)は、グァーガム分解物単独(実施例2)、又はタラガム単独(比較例5)、又はタラガムとタマリンドガムとを含むアイスミルク(比較例6)より優れた冷菓残存率を示し、ローカストビーンガムとタマリンドガムとを含むアイスミルク(比較例4)と同等の冷菓残存率を示した。表4の結果から、冷菓用安定剤において、グァーガム分解物とタマリンドガムと併用が、ローカストビーンガムの代替手段になり得ることがわかった。
【0091】
[キサンタンガムと併用したゲル化剤への使用の検証]
(手順)
表5に示す処方に従って調製した水溶液を85℃で15分間加熱した後、放冷し、一晩冷蔵後、ゲル化させた。
(評価)
実施例4で作製したゲルは、弾力感が強すぎず、スプーン切れが良いゲルであった。一方、比較例8で作製したゲルは、弾力感が強すぎスプーン切れが悪いゲルであった。
【0092】
【表5】
【0093】
[カラギーナンと併用したゲル化剤への使用の検証]
(手順)
表6に示す処方に従って調製した水溶液を85℃で15分間加熱した後、放冷し、一晩冷蔵後、ゲル化させた。
(評価)
実施例5で作製したゲルは、弾力感が強すぎず、スプーン切れが良いゲルであった。また、実施例5で作製したゲルは、口の中で細かく崩れ、溶けるような好ましい食感であった。一方、比較例9で作製したゲルは、弾力感が強すぎスプーン切れが悪いゲルであった。
【0094】
【表6】
【0095】
[とろみ調整剤への使用の検証]
(手順)
表7に示す配合のとろみ調整剤を作製した。各とろみ調整剤3gと水100gとを室温で強力に撹拌することにより混合した。
(評価)
実施例6で作製したとろみ調整剤は、とろみを付与することが可能であり、嚥下困難者用に適切なものであった。一方、比較例10で作製したとろみ調整剤は、とろみの付与が不十分であった。
【0096】
【表7】
【符号の説明】
【0097】
1:ドラムドライヤ、10:回転ドラム、11:加熱面、12:積層部、20:掻き取り部、21:先端部、30:受部、M:反応混合物、S:シート、D:乾燥物
図1