(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039862
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20240315BHJP
【FI】
G02B30/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144552
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】代工 康宏
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BA42
2H199BA47
2H199BB08
2H199BB43
2H199BB50
2H199BB52
(57)【要約】
【課題】 表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供する。
【解決手段】 空中表示装置は、表示素子20と、光学素子40と、切替素子50とを含む。表示素子20は、画像を表示する。光学素子40は、表示素子20からの光を受けるように配置され、交互に配置された複数の第1領域及び複数の第2領域を有する。複数の第1領域は、表示素子20からの光を、表示素子20と反対側に反射し、空中に空中像を結像するように構成され、複数の第2領域は、表示素子20からの光を透過する。切替素子50は、光学素子40からの光を受けるように配置され、第1表示モードにおいて、複数の第2領域を遮光し、第2表示モードにおいて、複数の第1領域を遮光する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示素子と、
前記表示素子からの光を受けるように配置され、交互に配置された複数の第1領域及び複数の第2領域を有し、前記複数の第1領域は、前記表示素子からの光を、前記表示素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像するように構成され、前記複数の第2領域は、前記表示素子からの光を透過する、光学素子と、
前記光学素子からの光を受けるように配置され、第1表示モードにおいて、前記複数の第2領域を遮光し、第2表示モードにおいて、前記複数の第1領域を遮光する切替素子と、
を具備する空中表示装置。
【請求項2】
前記光学素子は、平面状の基材と、前記基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並び、前記複数の第1領域にそれぞれ設けられた複数の光学要素とを含み、
前記複数の光学要素の各々は、前記基材の法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有し、
前記光学素子の前記複数の第2領域はそれぞれ、複数の平面で構成される
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記切替素子は、前記第1方向に延び、前記第2方向に交互に並んだ複数の第1要素画素及び複数の第2要素画素を有し、
前記複数の第1要素画素はそれぞれ、前記複数の第1領域に設けられ、
前記複数の第2要素画素はそれぞれ、前記複数の第2領域に設けられ、
前記複数の第1要素画素及び前記複数の第2要素画素の各々は、透過状態と遮光状態とに設定可能である
請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記複数の第1要素画素及び前記複数の第2要素画素の各々は、前記第1方向に並んだ複数の画素を有し、
前記複数の画素は、透過状態と遮光状態とに設定可能である
請求項3に記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記光学素子は、前記反射面に設けられ、光を反射する反射層と、前記反射層上に設けられ、光を吸収する吸収層とを含む
請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、前記表示素子からの光のうち斜め方向の光成分を透過する配向制御素子をさらに具備する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記配向制御素子は、交互に配置された複数の透明部材及び複数の遮光部材を含み、
前記複数の遮光部材は、前記配向制御素子の法線に対して傾いている
請求項6に記載の空中表示装置。
【請求項8】
前記配向制御素子と前記光学素子との間に配置された光拡散素子をさらに具備し、
前記光拡散素子は、前記第1表示モードにおいて、光を透過する透過状態に設定され、前記第2表示モードにおいて、光を拡散する拡散状態に設定される
請求項6に記載の空中表示装置。
【請求項9】
前記表示素子、前記光学素子、及び前記切替素子は、互いに平行に配置される
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項10】
光を発光する照明素子をさらに具備し、
前記表示素子は、前記照明素子からの光を受けるように配置され、液晶表示素子で構成される
請求項1に記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像や動画などを空中像として表示可能な空中表示装置が研究され、新しいヒューマン・マシン・インターフェースとして期待されている。空中表示装置は、例えば、2面コーナーリフレクタがアレイ状に配列された2面コーナーリフレクタアレイを備え、表示素子の表示面から出射される光を反射し、空中に実像を結像する。2面コーナーリフレクタアレイによる表示方法は、収差が無く、面対称位置に実像(空中像)を表示することができる。
【0003】
特許文献1は、透明平板の表面から突出した透明な四角柱を2面コーナーリフレクタとして使用し、複数の四角柱を平面上にアレイ状に配置した光学素子を開示している。また、特許文献2は、第1及び第2光制御パネルの各々を、透明平板の内部に垂直に複数の平面光反射部を並べて形成し、第1及び第2光制御パネルを、互いの平面光反射部が直交するように配置した光学素子を開示している。特許文献1、2の光学素子は、表示素子から出射された光を直交する反射面で2回反射させ、空中像を生成している。
【0004】
特許文献1、2の光学素子を利用した表示装置は、光学素子の斜方向から観察することで空中像を認識できるものであり、光学素子の法線方向からの観察では良好な空中像を認識することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-191404号公報
【特許文献2】特開2011-175297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によると、画像を表示する表示素子と、前記表示素子からの光を受けるように配置され、交互に配置された複数の第1領域及び複数の第2領域を有し、前記複数の第1領域は、前記表示素子からの光を、前記表示素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像するように構成され、前記複数の第2領域は、前記表示素子からの光を透過する、光学素子と、前記光学素子からの光を受けるように配置され、第1表示モードにおいて、前記複数の第2領域を遮光し、第2表示モードにおいて、前記複数の第1領域を遮光する切替素子とを具備する空中表示装置が提供される。
【0008】
本発明の第2態様によると、前記光学素子は、平面状の基材と、前記基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並び、前記複数の第1領域にそれぞれ設けられた複数の光学要素とを含み、前記複数の光学要素の各々は、前記基材の法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有し、前記光学素子の前記複数の第2領域はそれぞれ、複数の平面で構成される、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0009】
本発明の第3態様によると、前記切替素子は、前記第1方向に延び、前記第2方向に交互に並んだ複数の第1要素画素及び複数の第2要素画素を有し、前記複数の第1要素画素はそれぞれ、前記複数の第1領域に設けられ、前記複数の第2要素画素はそれぞれ、前記複数の第2領域に設けられ、前記複数の第1要素画素及び前記複数の第2要素画素の各々は、透過状態と遮光状態とに設定可能である、第2態様に係る空中表示装置が提供される。
【0010】
本発明の第4態様によると、前記複数の第1要素画素及び前記複数の第2要素画素の各々は、前記第1方向に並んだ複数の画素を有し、前記複数の画素は、透過状態と遮光状態とに設定可能である、第3態様に係る空中表示装置が提供される。
【0011】
本発明の第5態様によると、前記光学素子は、前記反射面に設けられ、光を反射する反射層と、前記反射層上に設けられ、光を吸収する吸収層とを含む、第2態様に係る空中表示装置が提供される。
【0012】
本発明の第6態様によると、前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、前記表示素子からの光のうち斜め方向の光成分を透過する配向制御素子をさらに具備する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0013】
本発明の第7態様によると、前記配向制御素子は、交互に配置された複数の透明部材及び複数の遮光部材を含み、前記複数の遮光部材は、前記配向制御素子の法線に対して傾いている、第6態様に係る空中表示装置が提供される。
【0014】
本発明の第8態様によると、前記配向制御素子と前記光学素子との間に配置された光拡散素子をさらに具備し、前記光拡散素子は、前記第1表示モードにおいて、光を透過する透過状態に設定され、前記第2表示モードにおいて、光を拡散する拡散状態に設定される、第6態様に係る空中表示装置が提供される。
【0015】
本発明の第9態様によると、前記表示素子、前記光学素子、及び前記切替素子は、互いに平行に配置される、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0016】
本発明の第10態様によると、光を発光する照明素子をさらに具備し、前記表示素子は、前記照明素子からの光を受けるように配置され、液晶表示素子で構成される、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る空中表示装置の斜視図である。
【
図7】
図7は、光学素子における光の反射の様子を説明する斜視図である。
【
図8】
図8は、光学素子における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
【
図9】
図9は、光学素子における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。
【
図10】
図10は、光学素子における入射面及び反射面の角度条件を説明する図である。
【
図11】
図11は、第1表示モードを説明するための空中表示装置の部分側面図である。
【
図12】
図12は、第2表示モードを説明するための空中表示装置の部分側面図である。
【
図13】
図13は、空中表示装置の表示動作を説明するフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の第2実施形態に係る切替素子の部分平面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第3実施形態に係る空中表示装置の斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明の第4実施形態に係る空中表示装置の斜視図である。
【
図18】
図18は、空中表示装置の動作を説明する側面図である。
【
図19】
図19は、光学素子の動作を説明する部分側面図である。
【
図20】
図20は、本発明の第5実施形態に係る空中表示装置の斜視図である。
【
図24】
図24は、光学素子における光の反射の様子を説明する斜視図である。
【
図25】
図25は、光学素子における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
【
図26】
図26は、第1表示モードを説明するための空中表示装置の斜視図である。
【
図27】
図27は、第2表示モードを説明するための空中表示装置の斜視図である。
【
図28】
図28は、空中表示装置の表示動作を説明するフローチャートである。
【
図29】
図29は、本発明の第6実施形態に係る空中表示装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[1] 第1実施形態
[1-1] 空中表示装置1の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る空中表示装置1の斜視図である。
図1において、X方向は、空中表示装置1のある1辺に沿った方向であり、Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向(法線方向ともいう)である。
図2は、
図1に示した空中表示装置1の側面図である。
【0021】
空中表示装置1は、画像(動画を含む)を表示する装置である。空中表示装置1は、自身の光出射面の上方の空中に、空中像を表示する。空中表示装置1の光出射面とは、空中表示装置1を構成する複数の部材のうち最上層に配置された部材の上面を意味する。空中像とは、空中に結像する実像である。
【0022】
空中表示装置1は、照明素子(バックライトともいう)10、表示素子20、配向制御素子30、光学素子40、及び切替素子50を備える。照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、光学素子40、及び切替素子50は、この順にZ方向に沿って配置され、互いに平行に配置される。照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、光学素子40、及び切替素子50は、互いに所望の間隔を空けるようにして、図示せぬ固定部材で所望の位置に固定される。
【0023】
照明素子10は、照明光を発光し、この照明光を表示素子20に向けて出射する。照明素子10は、光源部11、導光板12、及び反射シート13を備える。照明素子10は、例えばサイドライト型の照明素子である。照明素子10は、面光源を構成する。照明素子10は、後述する角度θ1の斜め方向に光強度がピークになるように構成してもよい。
【0024】
光源部11は、導光板12の側面に向き合うように配置される。光源部11は、導光板12の側面に向けて光を発光する。光源部11は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)からなる複数の発光素子を含む。導光板12は、光源部11からの照明光を導光し、照明光を自身の上面から出射する。反射シート13は、導光板12の底面から出射した照明光を、再び導光板12に向けて反射する。照明素子10は、導光板12の上面に、光学特性を向上させる部材(プリズムシート、及び拡散シートを含む)を備えていてもよい。
【0025】
表示素子20は、透過型の表示素子である。表示素子20は、例えば液晶表示素子で構成される。表示素子20の駆動モードについては特に限定されず、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、又はホモジニアスモードなどを用いることができる。表示素子20は、照明素子10から出射された照明光を受ける。表示素子20は、照明素子10からの照明光を透過して光変調を行う。そして、表示素子20は、その画面に所望の画像を表示する。
【0026】
配向制御素子30は、不要光を低減する機能を有する。不要光とは、空中像を生成するのに寄与しない光成分であり、法線方向に光学素子40を透過する光成分を含む。配向制御素子30は、法線方向に対して角度θ1の斜め方向を中心として所定の角度範囲の光成分を透過するとともに、上記角度範囲以外の光成分を遮光するように構成される。配向制御素子30の面積は、表示素子20の面積とほぼ同じに設定される。配向制御素子30の詳細な構成については後述する。
【0027】
光学素子40は、底面側から入射した光を上面側に反射する。また、光学素子40は、底面側から斜めに入射した入射光を、例えば正面方向(法線方向)に反射する。光学素子40の面積は、表示素子20の面積以上に設定される。光学素子40の詳細な構成については後述する。光学素子40は、空中に空中像2を結像する。空中像2は、光学素子40の素子面に平行であり、2次元の画像である。素子面とは、光学素子40が面内方向に広がる仮想的な平面を言う。素子面は、面内と同じ意味である。その他の素子の素子面についても同様の意味である。光学素子40の正面にいる観察者3は、空中像2を視認することができる。
【0028】
切替素子50は、空中表示装置1の上方の空中に空中像を表示する第1表示モードと、表示素子20の画面に表示された画像を表示する第2表示モードとを切り替える機能を有する。切替素子50は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の要素画素を備える。切替素子50は、複数の要素画素の各々に対して、光を透過する透過状態と、光を遮光する遮光状態とに設定可能である。本実施形態では、切替素子50による表示モードの切り替えにより、観察者3に視認される表示像の奥行き位置を切り替えることが可能である。切替素子50の面積は、光学素子40の面積とほぼ同じに設定される。切替素子50の詳細な構成については後述する。
【0029】
[1-1-1] 配向制御素子30の構成
図3Aは、
図1に示した配向制御素子30の平面図である。
図3Bは、
図3AのA-A´線に沿った配向制御素子30の断面図である。
【0030】
基材31は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。基材31は、光を透過する。
【0031】
基材31上には、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の透明部材33が設けられる。また、基材31上には、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の遮光部材34が設けられる。複数の透明部材33と複数の遮光部材34とは、隣接するもの同士が接するようにして交互に配置される。
【0032】
複数の透明部材33及び複数の遮光部材34上には、基材32が設けられる。基材32は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。基材32は、光を透過する。
【0033】
透明部材33は、XZ面において、基材31の法線方向に対して角度θ1の斜め方向に延びる。透明部材33は、XZ面において、側面が角度θ1だけ傾いた平行四辺形である。透明部材33は、光を透過する。
【0034】
遮光部材34は、XZ面において、基材31の法線方向に対して角度θ1の斜め方向に延びる。遮光部材34は、XZ面において、側面が角度θ1だけ傾いた平行四辺形である。遮光部材34は、光を遮光する。遮光部材34の厚みは、透明部材33の厚みより薄く設定される。
【0035】
隣接する2個の遮光部材34は、Z方向において互いの端部が若干重なるように配置される。
【0036】
基材31、32、及び透明部材33としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。遮光部材34としては、例えば、黒色の染料又は顔料が混入された樹脂が用いられる。
【0037】
なお、基材31、32の一方又は両方を省略して、配向制御素子30を構成してもよい。複数の透明部材33と複数の遮光部材34とが交互に配置されていれば、配向制御素子30の機能を実現できる。
【0038】
このように構成された配向制御素子30は、法線方向に対して角度θ1の斜め方向の光強度がピークになるように、表示光を透過することができる。例えば、配向制御素子30は、法線方向に対して30°±30°の範囲以外の光成分を遮光するように構成される。望ましくは、配向制御素子30は、法線方向に対して30°±20°の範囲以外の光成分を遮光するように構成される。
【0039】
なお、変形例として、配向制御素子30は、照明素子10と表示素子20との間に配置してもよい。また、配向制御素子30を省略して、空中表示装置1を構成してもよい。
【0040】
[1-1-2] 光学素子40の構成
図4は、
図1に示した光学素子40の部分側面図である。
【0041】
光学素子40は、基材41、及び複数の光学要素42を備える。基材41は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。
【0042】
基材41の底面には、複数の光学要素42が設けられる。複数の光学要素42の各々は、三角柱で構成される。光学要素42は、三角柱の3個の側面がXY面と平行になるように配置され、1つの側面が基材41に接する。複数の光学要素42は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んで配置される。また、隣接する光学要素42は、一定の間隔を空けて配置される。
【0043】
光学要素42が配置される領域を第1領域Saと呼び、光学要素42が配置されない領域を第2領域Sbと呼ぶ。複数の第1領域Saと複数の第2領域Sbとは交互に配置される。例えば、第1領域SaのX方向の長さは、第2領域SbのX方向の長さと同じである。この構成に限定されず、第1領域SaのX方向の長さは、第2領域SbのX方向の長さと異なっていてもよい。
【0044】
複数の光学要素42の各々は、入射面43及び反射面44を有する。Y方向から見て、左側の側面が入射面43であり、右側の側面が反射面44である。入射面43は、表示素子20からの光が入射する面である。反射面44は、入射面43に外部から入射した光を、光学要素42の内部で反射する面である。
【0045】
光学素子40の第2領域Sbは、隣接する光学要素42の間隔の部分に対応する。第2領域Sbにおける光学素子40の底面は、平面45で構成される。平面45は、XY面に水平な面である。
【0046】
基材41及び光学要素42は、透明材料で構成される。光学要素42は、例えば、基材41と同じ透明材料によって基材41と一体的に形成される。基材41と光学要素42とを個別に形成し、透明な接着材を用いて基材41に光学要素42を接着してもよい。基材41及び光学要素42を構成する透明材料としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。
【0047】
光学素子40の第1領域Saは、光学素子40の下側から入射した光を内部で反射して、空中に実像を結像する。また、光学素子40の第1領域Saは、素子面の正面の位置に、空中像を結像する。
【0048】
光学素子40の第2領域Sbは、光学素子40の下側から入射した光を反射せずに透過する。光学素子40の第2領域Sbでは、空中像を結像することなく、表示素子20の画面に表示された平面像がそのまま観察者に視認される。平面像とは、表示素子20の画面に表示された画像を意味する。
【0049】
[1-1-3] 切替素子50の構成
図5は、
図1に示した切替素子50の部分平面図である。
図5には、光学素子40と切替素子50との対応関係が理解できるように、光学素子40の部分側面図も示している。なお、前述した
図4には、切替素子50の側面図も示している。
図4の構成例では、切替素子50は、光学素子40の上面に接している。
【0050】
切替素子50は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の要素画素51a、51bを備える。複数の要素画素51aと複数の要素画素51bとは交互に配置される。複数の要素画素51a、51bの各々は、例えば複数の画素で構成される。
【0051】
複数の要素画素51aはそれぞれ、光学素子40の複数の第1領域Saの上方に配置される。要素画素51aのX方向の長さ及びY方向の長さはそれぞれ、第1領域SaのX方向の長さ及びY方向の長さと同じである。複数の要素画素51bはそれぞれ、光学素子40の複数の第2領域Sbの上方に配置される。要素画素51bのX方向の長さ及びY方向の長さはそれぞれ、第2領域SbのX方向の長さ及びY方向の長さと同じである。
【0052】
切替素子50は、複数の要素画素51a、51bの各々に対して、光を透過する透過状態と、光を遮光する遮光状態とに設定可能である。
【0053】
切替素子50は、液晶素子で構成することが可能である。液晶素子は、偏光板を備え、画素ごとに、光を透過する透過状態と、光を遮光する遮光状態とに設定可能である。
【0054】
また、切替素子50は、エレクトロクロミック素子、又は高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)素子で構成してもよい。
【0055】
また、他の構成例として、切替素子50は、複数の要素画素の領域に1つ置きに配置された複数の遮光板を有する。そして、複数の遮光板を1要素画素分だけ一斉にずらすことで、機械的に透過領域と遮光領域との位置を切り替えてもよい。
【0056】
[1-1-4] 空中表示装置1のブロック構成
図6は、空中表示装置1のブロック図である。空中表示装置1は、制御部60、記憶部61、入出力インターフェース(入出力IF)62、表示部63、及び入力部64を備える。制御部60、記憶部61、及び入出力インターフェース62は、バス65を介して互いに接続される。
【0057】
入出力インターフェース62は、表示部63、及び入力部64に接続される。入出力インターフェース62は、表示部63、及び入力部64のそれぞれに対して、所定の規格に応じたインターフェース処理を行う。
【0058】
表示部63は、照明素子10、表示素子20、及び切替素子50を備える。表示部63は、画像を表示する。
【0059】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサにより構成される。制御部60は、記憶部61に格納されたプログラムを実行することで各種機能を実現する。制御部60は、表示処理部60A、及び情報処理部60Bを備える。
【0060】
表示処理部60Aは、表示部63(具体的には、照明素子10、表示素子20、及び切替素子50)の動作を制御する。表示処理部60Aは、照明素子10のオン及びオフを制御する。表示処理部60Aは、表示素子20に画像信号を送信し、表示素子20に画像を表示させる。表示処理部60Aは、表示モードに応じて、切替素子50の要素画素51a、51bを透過状態又は遮光状態に設定する。
【0061】
情報処理部60Bは、空中表示装置1が表示する画像を生成する。情報処理部60Bは、記憶部61に格納された画像データを用いることが可能である。情報処理部60Bは、図示せぬ通信機能を用いて外部から画像データを取得してもよい。
【0062】
記憶部61は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置と、RAM(Random Access Memory)、及びレジスタ等の揮発性記憶装置とを含む。記憶部61は、制御部60が実行するプログラムを格納する。記憶部61は、制御部60の制御に必要な各種データを格納する。さらに、記憶部61は、空中表示装置1が表示する画像のデータを格納する。
【0063】
入力部64は、例えばタッチパネルやボタンなどを含み、ユーザが入力した情報を受け付ける。情報処理部60Bは、入力部64が受け付けた情報に基づいて、表示部63に表示する画像を選択することが可能である。
【0064】
[1-2] 空中表示装置1の動作
次に、上記のように構成された空中表示装置1の動作について説明する。
【0065】
[1-2-1] 空中像2の表示動作
まず、空中像2の表示動作について説明する。
図2の矢印は、光路を示している。
図2に示すように、表示素子20の任意の点“o”から出射された光は、配向制御素子30に入射する。表示素子20から出射された光のうち角度θ
1の光成分(角度θ
1を中心とした所定の角度範囲の光成分を含む)は、配向制御素子30を透過する。配向制御素子30を透過した光は、光学素子40に入射する。光学素子40は、入射光を、配向制御素子30と反対側の空中に結像し、空中に空中像2を表示する。
【0066】
図7は、光学素子40における光の反射の様子を説明する斜視図である。
図8は、光学素子40における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
図8は、観察者3の両目(すなわち、両目を結ぶ線)がX方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。
図9は、光学素子40における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。
図9は、観察者3の両目がY方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。
【0067】
表示素子20の任意の点“o”から出射された光は、光学素子40の入射面43に入射し、反射面44に到達する。反射面44の法線方向に対して臨界角よりも大きい角度で反射面44に到達した光は、反射面44で全反射され、光学素子40の光学要素42が形成されている側の反対側の平面から出射される。臨界角とは、その入射角を超えると全反射する最少の入射角である。臨界角は、入射面の垂線に対する角度である。
【0068】
図8のXZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素42の反射面44で全反射され、その光は空中で結像されて空中像を生成する。
【0069】
図9のYZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素42の反射面44で反射されず、その光は空中で結像することがないため空中像の生成に寄与しない。
【0070】
すなわち、観察者3が空中像を視認できる条件は、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態(例えばX方向に対して±10度)である。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に認識することができる。
【0071】
図10は、光学素子40における入射面43及び反射面44の角度条件を説明する図である。
【0072】
Z方向(素子面に垂直な方向)に対する入射面43の角度をθ2、Z方向に対する反射面44の角度をθ3、入射面43と反射面44とのなす角度をθpとする。角度をθpは、以下の式(1)で表される。
θp=θ2+θ3 ・・・(1)
【0073】
配向制御素子30から角度θ1で出射された光は、入射面43に入射する。光学素子40の材料の屈折率をnp、空気の屈折率を1とする。入射面43における入射角をθ4、屈折角をθ5とする。反射面44における入射角をθ6、反射角をθ7(=θ6)とする。光学素子40の上面における入射角をθ8、屈折角をθ9とする。屈折角θ9が出射角である。出射角θ9は、以下の式(2)で表される。
θ9=sin-1(np*sin(sin-1((1/np)*sin(90°-(θ1+θ2)))+θ2+2θ3-90°)) ・・・(2)
【0074】
反射面44における臨界角は、以下の式(3)で表される。
臨界角<θ6(=θ7)
臨界角=sin-1(1/np) ・・・(3)
【0075】
すなわち、反射面44における入射角θ6は、反射面44における臨界角より大きく設定される。換言すると、反射面44の角度θ3は、反射面44に入射する光の入射角が臨界角より大きくなるように設定される。
【0076】
また、入射面43に入射した光は、入射面43で全反射されないように設定される。すなわち、入射面43の角度θ2は、入射面43に入射する光の入射角が臨界角より小さくなるように設定される。
【0077】
光学素子40の素子面と空中像2の面との角度、及び光学素子40の素子面と空中像2の面との距離は、光学素子40に入射する光の角度θ1、光学素子40の屈折率、光学素子40の入射面43の角度θ2、光学素子40の反射面44の角度θ3を最適に設定することで調整が可能である。
【0078】
[1-2-2] 2種類の表示モード
次に、2種類の表示モードにおける動作について説明する。空中表示装置1は、空中像2を表示する第1表示モードと、表示素子20の画面の平面像を表示する第2表示モードとの2種類の表示モードを実行することが可能である。表示モードの切り替えは、切替素子50を用いて行われる。
【0079】
図11は、空中像2を表示する第1表示モードを説明するための空中表示装置1の部分側面図である。
第1表示モードにおいて、切替素子50は、第1領域Saに対応する要素画素51aを透過状態に設定し、第2領域Sbに対応する要素画素51bを遮光状態に設定する。
図11において、遮光状態の要素画素に斜線ハッチングを付している。
【0080】
表示素子20は、自身の画面に画像を表示する。表示素子20から配向制御素子30を介して光学素子40に入射した光のうち第1領域Saの光成分は、光学素子40の光学要素42で反射されて、切替素子50の第1領域Saを透過する。切替素子50の第1領域Saを透過した光成分は、
図11に示した表示面Aiの位置に空中像2を生成する。
【0081】
表示素子20から配向制御素子30を介して光学素子40に入射した光のうち第2領域Sbの光成分(光学素子40の平面45に入射した光成分)は、光学素子40を透過し、切替素子50の第2領域Sbで遮光される。よって、光学素子40に入射した光のうち第2領域Sbの光成分は、空中像2の表示に寄与しない。
【0082】
図12は、表示素子20の画面の平面像を表示する第2表示モードを説明するための空中表示装置1の部分側面図である。
第2表示モードにおいて、切替素子50は、第1領域Saに対応する要素画素51aを遮光状態に設定し、第2領域Sbに対応する要素画素51bを透過状態に設定する。
図12において、遮光状態の要素画素に斜線ハッチングを付している。
【0083】
表示素子20は、自身の画面に画像を表示する。表示素子20から配向制御素子30を介して光学素子40に入射した光のうち第1領域Saの光成分は、光学素子40の光学要素42で反射され、切替素子50の第1領域Saで遮光される。よって、光学素子40により空中像は結像されない。
【0084】
表示素子20から配向制御素子30を介して光学素子40に入射した光のうち第2領域Sbの光成分(光学素子40の平面45に入射した光成分)は、光学素子40を透過し、切替素子50の第2領域Sbを透過する。切替素子50の第2領域Sbを透過した光成分は、観察者3にそのまま視認される。よって、
図12に示した表示面Biの位置に平面像21が表示される。
【0085】
このように、空中表示装置1は、第1表示モードにおいて、空中表示装置1の上方の表示面Aiの位置に空中像2を表示することができる。また、空中表示装置1は、第2表示モードにおいて、表示素子20の画面に対応する表示面Biの位置に平面像21を表示することができる。
【0086】
図13は、空中表示装置1の表示動作を説明するフローチャートである。
情報処理部60Bは、空中表示装置1が表示する画像データを選択する(ステップS100)。例えば、情報処理部60Bは、初期値として設定された画像データに関する情報を記憶部61から読み出し、この読み出した情報に基づいて、記憶部61から画像データを読み出す。情報処理部60Bは、入力部64を用いてユーザが入力した情報に基づいて、記憶部61から画像データを読み出してもよい。情報処理部60Bは、通信機能を用いて外部から送信された画像データを選択してもよい。
【0087】
続いて、表示処理部60Aは、空中表示(第1表示モード)が選択されたか否か、すなわち、第1表示モード及び第2表示モードのどちらが選択されたかを判定する(ステップS101)。例えば、表示処理部60Aは、初期値として設定された表示モードに関する情報を記憶部61から読み出し、この読み出した情報に基づいて、表示モードを判定する。表示処理部60Aは、入力部64を用いてユーザが入力した情報に基づいて、表示モードを判定してもよい。
【0088】
続いて、第1表示モードが選択された場合(ステップS101=Yes)、表示処理部60Aは、切替素子50の要素画素51bを遮光状態に設定し、切替素子50の要素画素51aを透過状態に設定する(ステップS102)。
【0089】
続いて、表示処理部60Aは、ステップS100で選択した画像を、表示素子20に表示する(ステップS103)。これにより、光学素子40の光学要素42で反射された光成分が空中で結像し、空中像2が表示される。
【0090】
一方、第2表示モードが選択された場合(ステップS101=No)、表示処理部60Aは、切替素子50の要素画素51aを遮光状態に設定し、切替素子50の要素画素51bを透過状態に設定する(ステップS104)。
【0091】
続いて、表示処理部60Aは、ステップS100で選択した画像を、表示素子20に表示する(ステップS103)。これにより、光学素子40の第2領域Sbを透過した光成分が観察者3に視認され、表示素子20の画面に表示された平面像21が観察者3に視認される。
【0092】
[1-3] 変形例
変形例として、表示素子20に表示される画像のうち一部の領域を第1表示モードで表示し、他の一部の領域を第2表示モードで表示するようにしてもよい。
【0093】
表示処理部60Aは、空中像を表示する領域において、切替素子50の要素画素51bを遮光状態に設定し、切替素子50の要素画素51aを透過状態に設定する。また、表示処理部60Aは、表示素子20の画像を表示する領域において、切替素子50の要素画素51aを遮光状態に設定し、切替素子50の要素画素51bを透過状態に設定する。
【0094】
変形例によれば、表示素子20に表示された画像のうち一部の画像を空中像として表示し、他の一部の画像を表示素子20の画面に表示することができる。
【0095】
[1-4] 第1実施形態の効果
第1実施形態によれば、空中表示装置1は、第1表示モードと第2表示モードとの2種類の表示モードを実行することができる。空中表示装置1は、第1表示モードにおいて、空中表示装置1の上方の表示面Aiの位置に空中像2を表示することができる。空中表示装置1は、第2表示モードにおいて、表示素子20の画面に対応する表示面Biの位置に平面像21を表示することができる。また、空中表示装置1は、奥行き方向において異なる2つの位置にそれぞれ2次元の画像を表示することができる。
【0096】
また、空中表示装置1は、表示素子20から出射された光を光学素子40で反射させることで、空中に空中像を表示することができる。また、空中表示装置1は、その正面方向において、光学素子40の素子面に平行に空中像を表示することができる。また、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置1を実現できる。
【0097】
また、観察者3の両眼がX方向(すなわち、複数の光学要素42が並ぶ方向)に平行、又はそれに近い状態で光学素子40を見た場合に、観察者3は、空中像を視認することができる。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に視認することができる。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態において、より広い視野角を実現できる。
【0098】
また、空中表示装置1を構成する複数の素子を平行に配置することができる。これにより、Z方向に小型化が可能な空中表示装置1を実現できる。
【0099】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、切替素子50をマトリクス状に配置された複数の画素で構成し、画素ごとに透過状態と遮光状態とを切り替えるようにしている。
【0100】
図14は、本発明の第2実施形態に係る切替素子50の部分平面図である。
図14には、光学素子40と切替素子50との対応関係が理解できるように、光学素子40の部分側面図も示している。
【0101】
切替素子50は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の要素画素51a、51bを備える。複数の要素画素51aと複数の要素画素51bとは交互に配置される。
【0102】
各要素画素51aは、Y方向に並んだ複数の画素52aを備える。各要素画素51bは、Y方向に並んだ複数の画素52bを備える。すなわち、複数の画素52a、52bは、マトリクス状に配置される。複数の画素52a、52bの各々は、例えば正方形を有する。切替素子50は、複数の画素52a、52bの各々に対して、光を透過する透過状態と光を遮光する遮光状態とに設定可能である。
【0103】
表示処理部60Aは、空中像を表示する領域において、切替素子50の画素52bを遮光状態に設定し、切替素子50の画素52aを透過状態に設定する。また、表示処理部60Aは、表示素子20の画像を表示する領域において、切替素子50の画素52aを遮光状態に設定し、切替素子50の画素52bを透過状態に設定する。
【0104】
第2実施形態によれば、表示素子20に表示された画像のうち一部の画像を空中像として表示し、他の一部の画像を表示素子20の画面に表示することができる。さらに、Y方向に隣接するようにして、空中像と平面像(表示素子20の画面に表示される画像)とを表示することができる。
【0105】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、第2表示モードにおいて、配向制御素子30から斜めに出射された光を、光拡散素子70を用いて拡散させるようにしている。
【0106】
図15は、本発明の第3実施形態に係る空中表示装置1の斜視図である。空中表示装置1は、光拡散素子70をさらに備える。光拡散素子70は、配向制御素子30と光学素子40との間に配置される。
【0107】
光拡散素子70は、全面において、光を透過する透過状態と、光を拡散する拡散状態とに設定可能である。なお、光拡散素子70の全面とは、光変調領域全体を意味し、光拡散素子70を駆動する回路が配置される周辺領域が存在する場合、この周辺領域は除かれる。光拡散素子70の面積は、配向制御素子30の面積とほぼ同じに設定される。光拡散素子70は、例えば高分子分散型液晶(PDLC)素子で構成される。
【0108】
光拡散素子70は、第1表示モードにおいて、全面が透過状態に設定され、第2表示モードにおいて、全面が拡散状態に設定される。表示処理部60Aは、第1表示モードにおいて、光拡散素子70を透過状態に設定し、第2表示モードにおいて、光拡散素子70を拡散状態に設定する。
【0109】
第3実施形態によれば、配向制御素子30から斜めに出射された光を、光拡散素子70で拡散することができる。これにより、空中表示装置1を見る角度に依存して表示像が劣化するのを抑制することができる。また、第2表示モードにおいて、表示像の品質を向上させることができる。
【0110】
[4] 第4実施形態
第4実施形態では、光学素子40は、空中像の結像に不要な光成分を吸収する吸収層47をさらに備える。そして、配向制御素子30を省略して空中表示装置1を構成するようにしている。
【0111】
図16は、本発明の第4実施形態に係る空中表示装置1の斜視図である。空中表示装置1は、照明素子10、表示素子20、光学素子40、及び切替素子50を備える。第4実施形態では、第1実施形態で示した配向制御素子30が省略されている。照明素子10、表示素子20、光学素子40、及び切替素子50は、この順にZ方向に沿って配置され、互いに平行に配置される。照明素子10、表示素子20、光学素子40、及び切替素子50は、互いに所望の間隔を空けるようにして、図示せぬ固定部材で所望の位置に固定される。
【0112】
図17は、
図16に示した光学素子40のX方向に沿った部分断面図である。
光学要素42の反射面44には、反射層46が設けられる。反射層46は、反射面44の全体を覆うように構成される。反射層46は、光を反射する機能を有する。反射層46は、反射率の高い材料で構成される。反射層46としては、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、又はこれらの1つを含む合金が用いられる。
【0113】
反射層46上には、吸収層47が設けられる。吸収層47は、反射層46の全体を覆うように構成される。吸収層47は、光を吸収する機能を有する。吸収層47は、光吸収率が高い材料で構成される。吸収層47としては、例えば、黒色の染料又は顔料が混入された樹脂が用いられる。
【0114】
次に、上記のように構成された空中表示装置1の動作について説明する。
図18は、空中表示装置1の動作を説明する側面図である。
図19は、光学素子40の動作を説明する部分側面図である。
図18及び
図19の矢印は、光路を示している。
【0115】
表示素子20の点“o”から放射状に光が出射される。表示素子20から出射された光のうち角度θ1の光成分(角度θ1を中心とした所定の角度範囲の光成分を含む)は、光学要素42の入射面43に入射する。入射面43に入射して反射面44に到達した光は、反射面44及び反射層46で反射される。また、反射層46の存在により、反射面44に到達した光は、より確実に反射される。
【0116】
一方、光学素子40の外から吸収層47に直接入射する光は、吸収層47で吸収される。具体的には、光学素子40に入射する光のうち、光学素子40の素子面に垂直な方向(Z方向)を基準にして入射面43が傾く側の光成分は、吸収層47で吸収される。吸収層47に直接入射する光は、光学素子40によって反射されず、観察者3に視認されない。
【0117】
このように、光学素子40は、空中像2を生成するための光のみを反射し、それ以外の光を反射しないように機能する。すなわち、光学素子40は、空中像2の生成に寄与しない不要光を遮光することができる。
【0118】
切替素子50の動作は、第1実施形態と同じである。
【0119】
第4実施形態によれば、配向制御素子30を省略して空中表示装置1を構成することができる。これにより、Z方向により小型化が可能な空中表示装置1を実現できる。
【0120】
[5] 第5実施形態
第5実施形態は、光学素子40を用いて空中像を表示しつつ、観察者に対して光学素子40の向きを変えることで、第1表示モードと第2表示モードとを実行するようにしている。
【0121】
[5-1] 空中表示装置1の構成
図20は、本発明の第5実施形態に係る空中表示装置1の斜視図である。
図21は、
図20に示した空中表示装置1の側面図である。
【0122】
空中表示装置1は、照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、光学素子40、及び回転機構80を備える。照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40は、この順にZ方向に沿って配置され、互いに平行に配置される。照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40は、互いに所望の間隔を空けるようにして、図示せぬ固定部材で所望の位置に固定される。
【0123】
回転機構80は、照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40からなるユニットを、XY平面において90度回転させる機能を有する。回転機構80は、照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40を纏めて固定する固定部材(図示せず)に取り付けられ、この固定部材を回転させることで、上記ユニットを一斉に回転させる。又は、照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40からなるユニットが互いに固定され、回転機構80は、上記ユニットの最下層の照明素子10に取り付けられる。そして、回転機構80は、照明素子10を回転させることで、上記ユニットを一斉に回転させる。
【0124】
[5-1-1] 光学素子40の構成
図22は、
図1に示した光学素子40の斜視図である。
図22には、光学素子40の一部を拡大した拡大図も図示している。
図22の拡大図は、XZ面における側面図である。
【0125】
光学素子40は、基材41、及び複数の光学要素42を備える。基材41は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。
【0126】
基材41の底面には、複数の光学要素42が設けられる。複数の光学要素42の各々の構成は、第1実施形態と同じである。複数の光学要素42は、X方向に並んで配置され、また、隣接するもの同士が接するように配置される。換言すると、複数の光学要素42は、XZ面において鋸歯状を有する。
【0127】
基材41及び光学要素42は、透明材料で構成される。光学要素42は、例えば、基材41と同じ透明材料によって基材41と一体的に形成される。基材41と光学要素42とを個別に形成し、透明な接着材を用いて基材41に光学要素42を接着してもよい。基材41及び光学要素42を構成する透明材料としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。
【0128】
このように構成された光学素子40は、入射光を内部で反射して、空中に実像を結像する。また、光学素子40は、素子面の正面の位置に、空中像を結像する。
【0129】
[5-1-2] 空中表示装置1のブロック構成
図23は、空中表示装置1のブロック図である。
【0130】
表示部63は、照明素子10、及び表示素子20を備える。表示部63は、画像を表示する。
【0131】
入出力インターフェース62は、回転機構80に接続される。入出力インターフェース62は、回転機構80に対して、所定の規格に応じたインターフェース処理を行う。
【0132】
表示処理部60Aは、表示部63(具体的には、照明素子10、及び表示素子20)の動作を制御する。表示処理部60Aは、照明素子10のオン及びオフを制御する。表示処理部60Aは、表示素子20に画像信号を送信し、表示素子20に画像を表示させる。
【0133】
制御部60は、回転駆動部60Cをさらに備える。回転駆動部60Cは、回転機構80を回転させる。回転駆動部60Cは、第1表示モードが選択された場合、回転機構80を用いて、ユニット(照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40)を第1表示モードの位置(光学素子40のX方向が観察者3の両目と平行になる位置)に回転させる。回転駆動部60Cは、第2表示モードが選択された場合、回転機構80を用いて、上記ユニットを第2表示モードの位置(光学素子40のY方向が観察者3の両目と平行になる位置)に回転させる。
【0134】
その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0135】
[5-2] 空中表示装置1の動作
次に、上記のように構成された空中表示装置1の動作について説明する。
【0136】
[5-2-1] 空中像2の表示動作
図21の矢印は、光路を示している。
図21に示すように、表示素子20の任意の点“o”から出射された光は、配向制御素子30に入射する。表示素子20から出射された光のうち角度θ
1の光成分(角度θ
1を中心とした所定の角度範囲の光成分を含む)は、配向制御素子30を透過する。配向制御素子30を透過した光は、光学素子40に入射する。光学素子40は、入射光を、配向制御素子30と反対側の空中に結像し、空中に空中像2を表示する。
【0137】
図24は、光学素子40における光の反射の様子を説明する斜視図である。
図25は、光学素子40における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
図25は、観察者3の両目(すなわち、両目を結ぶ線)がX方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。
【0138】
表示素子20の任意の点“o”から出射された光は、光学素子40の入射面43に入射し、反射面44に到達する。反射面44の法線方向に対して臨界角よりも大きい角度で反射面44に到達した光は、反射面44で全反射され、光学素子40の光学要素42が形成されている側の反対側の平面から出射される。
図25のXZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素42の反射面44で全反射され、その光は空中で結像されて空中像を生成する。
【0139】
光学素子40における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図は、第1実施形態で説明した
図9と同じである。
図9は、観察者3の両目がY方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。
図9のYZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素42の反射面44で反射されず、その光は空中で結像することがないため空中像の生成に寄与しない。
【0140】
すなわち、観察者3が空中像を認識できる条件は、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態(例えばX方向に対して±10度)である。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に認識することができる。
【0141】
[5-2-2] 2種類の表示モード
次に、2種類の表示モードにおける動作について説明する。空中表示装置1は、空中像2を表示する第1表示モードと、表示素子20の画面に平面像を表示する第2表示モードとの2種類の表示モードを実行することが可能である。表示モードの切り替えは、回転機構80を用いて行われる。
【0142】
図26は、空中像2を表示する第1表示モードを説明するための空中表示装置1の斜視図である。
第1表示モードにおいて、回転機構80は、光学素子40のX方向が観察者3の両目と平行になるように、照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40からなるユニットを回転させる。
【0143】
表示素子20は、自身の画面に画像を表示する。第1表示モードにおいて、表示素子20から配向制御素子30を介して光学素子40に入射した光成分は、光学素子40の光学要素42で反射される。そして、空中表示装置1は、
図26に示した表示面Aiの位置に空中像2を表示する。
【0144】
図27は、表示素子20の画面に平面像を表示する第2表示モードを説明するための空中表示装置1の斜視図である。
第2表示モードにおいて、回転機構80は、光学素子40のY方向が観察者3の両目と平行になるように、上記ユニットを回転させる。
【0145】
表示素子20は、自身の画面に画像を表示する。第2表示モードにおいて、表示素子20から配向制御素子30を介して光学素子40に入射した光成分は、光学素子40を透過する。第2表示モードでは、光学素子40により空中像は結像されない。そして、空中表示装置1は、
図27に示した表示面Biの位置に平面像21を表示する。
【0146】
このように、空中表示装置1は、第1表示モードにおいて、空中表示装置1の上方の表示面Aiの位置に空中像2を表示することができる。また、空中表示装置1は、第2表示モードにおいて、表示素子20の画面に対応する表示面Biの位置に平面像21を表示することができる。
【0147】
図28は、空中表示装置1の表示動作を説明するフローチャートである。ステップS100及びS101の動作は、第1実施形態と同じである。
【0148】
続いて、第1表示モードが選択された場合(ステップS101=Yes)、回転駆動部60Cは、回転機構80を用いて、上記ユニットを第1表示モードの位置に回転させる(ステップS200)。すなわち、回転駆動部60Cは、光学素子40のX方向が観察者3の両目と平行になるように、上記ユニットを回転させる。
【0149】
続いて、表示処理部60Aは、ステップS100で選択した画像を、表示素子20に表示する(ステップS103)。これにより、光学素子40の光学要素42で反射された光成分が空中で結像し、空中像2が表示される。
【0150】
一方、第2表示モードが選択された場合(ステップS101=No)、回転駆動部60Cは、回転機構80を用いて、上記ユニットを第2表示モードの位置に回転させる(ステップS201)。すなわち、回転駆動部60Cは、光学素子40のY方向が観察者3の両目と平行になるように、上記ユニットを回転させる。
【0151】
続いて、表示処理部60Aは、ステップS100で選択した画像を、表示素子20に表示する(ステップS103)。これにより、光学素子40を透過した光成分が観察者3に視認され、表示素子20の画面に表示された平面像21が観察者3に視認される。
【0152】
[5-3] 第5実施形態の効果
第5実施形態によれば、第1実施形態と同様に、空中表示装置1は、奥行き方向において異なる2つの位置にそれぞれ2次元の画像を表示することができる。
【0153】
なお、第5実施形態に、第3実施形態及び第4実施形態を適用することも可能である。
【0154】
[6] 第6実施形態
第6実施形態は、第5実施形態の変形例である。
【0155】
図29は、本発明の第6実施形態に係る空中表示装置1の動作を説明する図である。
図29の横軸は、回転機構80による回転角度(度)であり、縦軸は、知覚される像の高さである。回転角度は、第1表示モードにおける表示面Aiを0度、第2表示モードにおける表示面Biを90度とする。
【0156】
空中表示装置1の基本的な構成は、第5実施形態と同じである。回転機構80は、照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40からなるユニットを0度から90度の範囲で回転可能である。
【0157】
図29に示すように、知覚される像の高さは、回転角度の変化に応じて線形で変化する。本実施形態では、一例として、回転角度が45度の場合に、光学素子40の上面(すなわち、空中表示装置1の最上面)に像が表示されるように、照明素子10、表示素子20、配向制御素子30、及び光学素子40のZ方向の位置関係が設定される。
【0158】
第3表示モードが選択された場合、回転駆動部60Cは、回転機構80を用いて、上記ユニットを第3表示モードの位置、すなわち、回転角度が45度の位置に回転させる。これにより、空中表示装置1の最上面に表示された像が観察者に視認される。視認される画像の向きは、表示素子20に表示する画像の向きに基づいて調整可能である。
【0159】
なお、第3表示モードにおける回転角度は、0度より大きく90度より小さい角度範囲の任意の角度に設定することが可能である。これに応じて、第3表示モードにおける像の高さは、
図29の関係を有する特定の位置に設定される。
【0160】
[7] 変形例
上記実施形態では、表示素子20と光学素子40とを平行に配置している。しかし、これに限定されず、光学素子40に対して表示素子20を斜めに配置してもよい。表示素子20と光学素子40との角度は、0度より大きく45度より小さい範囲に設定される。この変形例では、配向制御素子30を省略できる。
【0161】
上記実施形態では、光学要素42の左側の側面が入射面43、右側の側面が反射面44として定義している。しかし、これに限定されず、入射面43と反射面44とを逆に構成してもよい。この場合、実施形態で説明した空中表示装置1の作用も左右が逆になる。
【0162】
上記実施形態では、表示素子20として液晶表示素子を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。表示素子20は、自発光型である有機EL(electroluminescence)表示素子、又はマイクロLED(Light Emitting Diode)表示素子などを用いることも可能である。マイクロLED表示素子は、画素を構成するR(赤)、G(緑)、B(青)をそれぞれLEDで発光させる表示素子である。自発光型の表示素子20を用いる場合、照明素子10は不要である。
【0163】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0164】
1…空中表示装置、2…空中像、3…観察者、10…照明素子、11…光源部、12…導光板、13…反射シート、20…表示素子、21…平面像、30…配向制御素子、31,32…基材、33…透明部材、34…遮光部材、40…光学素子、41…基材、42…光学要素、43…入射面、44…反射面、45…平面、46…反射層、47…吸収層、50…切替素子、51a,51b…要素画素、52a,52b…画素、60…制御部、60A…表示処理部、60B…情報処理部、60C…回転駆動部、61…記憶部、62…入出力インターフェース、63…表示部、64…入力部、65…バス、70…光拡散素子、80…回転機構。