(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039867
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】線源推定方法、線量低減対策評価方法、線源推定装置、線量低減対策評価装置、線源推定プログラム及び線量低減対策評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20240315BHJP
G21C 17/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G01T1/167 C
G21C17/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144563
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉原 拓真
(72)【発明者】
【氏名】福地 郁生
(72)【発明者】
【氏名】大村 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕也
【テーマコード(参考)】
2G075
2G188
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA20
2G075CA50
2G075DA08
2G075FA05
2G075FA18
2G075FB09
2G075GA37
2G188AA19
2G188AA23
2G188BB04
2G188BB18
2G188CC28
2G188EE25
2G188EE37
2G188EE39
(57)【要約】
【課題】精度よく線源を推定する方法を提供する。
【解決手段】線源推定方法は、評価対象の空間の形状情報を取得するステップ、空間のガンマ線強度分布画像を取得するステップ、各測定位置での線量率の測定値を取得するステップ、ガンマ線強度分布画像と形状情報に基づいて線源位置と線源形状を設定するステップ、線源の寄与率と前記線量率の測定値とに基づいて線量強度を設定するステップ、線量解析を行って線量率分布を算出するステップ、線量率分布の算出結果と線量率測定値を比較するステップ、比較結果に基づいて線源位置と線源形状と線量強度のうちの少なくとも1つを修正するステップ、を有し、線量率分布の算出結果と線量率測定値が目標精度で整合するまで、前記修正するステップ、前記算出するステップ、前記比較するステップ、を繰り返し行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の空間の形状情報を取得するステップと、
前記空間のガンマ線強度分布を可視化したガンマ線強度分布画像を取得するステップと、
前記空間の所定の測定位置における線量率の測定値を取得するステップと、
前記ガンマ線強度分布画像と前記形状情報に基づいて、前記空間における線源位置と線源形状とを設定するステップと、
前記ガンマ線強度分布画像に基づく線源の寄与率と前記線量率の測定値とに基づいて算出される線源強度を前記線源位置に設定するステップと、
前記形状情報と、前記線源位置と、前記線源形状と、前記線源強度と、に基づいて線量解析を行い、前記空間の線量率分布を算出するステップと、
前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較するステップと、
前記比較の結果に基づいて、前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうちの少なくとも1つを修正するステップと、
を有し、
前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とが所定の目標精度で整合するまで、前記修正するステップと、前記線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返し行う、
線源推定方法。
【請求項2】
前記線源強度の設定時には、前記寄与率に基づいて、前記ガンマ線強度分布画像の撮影位置と同じ位置で測定した前記線量率の測定値を前記線源位置に配分し、
前記配分した値と、前記撮影位置と前記線源位置の距離と、に基づいて、前記線源強度を設定する、
請求項1に記載の線源推定方法。
【請求項3】
前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較するステップでは、
複数位置での前記線量率の測定値と前記線量率分布の算出結果との比較を行い、
前記複数位置それぞれでの前記線量率の測定値と前記線量率分布の算出結果が前記目標精度で整合するまで、前記修正するステップと、前記線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返し行う、
請求項1又は請求項2に記載の線源推定方法。
【請求項4】
前記複数位置での前記線量率の測定値と前記線量率分布の算出結果との比較を行った結果、一つでも整合しない位置があれば、前記線源位置、前記線源形状および前記線源強度の何れかに誤りがあることを通知するステップ、
をさらに有する請求項3に記載の線源推定方法。
【請求項5】
前記比較の結果、前記目標精度で整合するかどうかを通知するステップ、
をさらに有する請求項1又は請求項2に記載の線源推定方法。
【請求項6】
前記ガンマ線強度分布画像を取得するステップでは、前記空間における複数の位置で撮影されたガンマ線強度分布画像を取得し、
各々の前記ガンマ線強度分布画像について、
前記線源位置と前記線源形状とを設定するステップと、
前記線源強度を設定するステップと、
前記線量率分布を算出するステップと、
前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較するステップと、
前記修正するステップと、
前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とが前記目標精度で整合するまで、前記修正するステップと、前記空間における線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返すこと、
を実行し、
さらに、各々の前記ガンマ線強度分布画像に基づいて得られた前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度を比較するステップ、
を有する請求項1に記載の線源推定方法。
【請求項7】
前記線量率分布を算出するステップでは、ガンマ線の挙動を再現できる3次元輸送計算コードによって前記線量解析を行う、
請求項1又は請求項2に記載の線源推定方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の線源推定方法で推定された前記線源位置ごとに線量低減対策を設定するステップと、
前記線量低減対策を実施した後の前記線源位置ごとの前記線源強度および前記線源形状に基づいて、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布を算出するステップと、
前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布に基づいて前記空間の線量率が所定の目標に到達しているか否かを判定するステップと、
を有する線量低減対策評価方法。
【請求項9】
評価対象の空間の形状情報を取得する手段と、
前記空間のガンマ線強度分布を可視化したガンマ線強度分布画像を取得する手段と、
前記空間の所定の測定位置における線量率の測定値を取得する手段と、
前記ガンマ線強度分布画像と前記形状情報に基づいて、前記空間における線源位置と線源形状とを設定する手段と、
前記ガンマ線強度分布画像に基づく線源の寄与率と前記線量率の測定値とに基づいて算出される線源強度を前記線源位置に設定する手段と、
前記形状情報と、前記線源位置と、前記線源形状と、前記線源強度と、に基づいて線量解析を行い、前記空間の線量率分布を算出する手段と、
前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較する手段と、
前記比較の結果に基づいて、前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうちの少なくとも1つを修正する手段と、
を有し、
前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とが所定の目標精度で整合するまで、前記修正する手段が前記修正を行い、前記算出する手段が前記修正に基づいて前記線量率分布を算出し、前記比較する手段が前記修正に基づく前記線量率分布と前記線量率の測定値の比較を行うこと、を繰り返し行う、
線源推定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の線源推定装置によって推定された前記線源位置ごとに線量低減対策を設定する手段と、
前記線量低減対策を実施した後の前記線源位置ごとの前記線源強度および前記線源形状に基づいて、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布を算出する手段と、
前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布に基づいて前記空間の線量率が所定の目標に到達しているか否かを判定する手段と、
を有する線量低減対策評価装置。
【請求項11】
コンピュータに、
評価対象の空間の形状情報と、前記空間のガンマ線強度分布を可視化したガンマ線強度分布画像と前記形状情報に基づいて設定される前記空間における線源位置および線源形状と、前記ガンマ線強度分布画像に基づく線源の寄与率と前記空間の所定の測定位置における線量率の測定値とに基づいて設定される前記線源位置の線源強度と、に基づいて線量解析を行い、前記空間の線量率分布を算出するステップと、
前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値と、を比較するステップと、
前記比較の結果に基づいて前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうちの少なくとも1つが修正されると、前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうち修正された情報を適用して再度前記線量解析を行い、前記修正された情報を適用した後の前記空間の線量率分布を算出するステップと、
を有し、
前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とが所定の目標精度で整合するまで、前記適用した後の前記空間の線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返し行う処理、
を実行させる線源推定プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
請求項11に記載の線源推定プログラムによって推定された前記線源位置ごとに線量低減対策を設定するステップと、
前記線量低減対策を実施した後の前記線源位置ごとの前記線源強度および前記線源形状に基づいて、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布を算出するステップと、
前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布に基づいて前記空間の線量率が所定の目標に到達しているか否かを判定するステップと、
を実行させる線量低減対策評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、線源推定方法、線量低減対策評価方法、線源推定装置、線量低減対策評価装置、線源推定プログラム及び線量低減対策評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
福島第一原子力発電所のように原子炉施設内に放射性物質が広範囲に分布し、且つその位置が特定できない環境での作業を安全に行うためには、線量低減対策を実施し、作業環境の線量を改善する必要がある。効果的な線量低減対策を実施するためには、精度よく線源(放射線の発生源)の位置を特定する必要がある。特許文献1には、構造物の外部からの計測結果を用いて、構造物の内部における放射線源の強度分布を推定する方法が開示されている。しかし、線源の位置が特定できない場合、上記文献の手法にて強度分布を推定することが難しい。効果的な線量低減対策を実施するためには、正確に線源の位置を特定した上で強度分布を推定することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
精度よく線源を推定する方法が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる線源推定方法、線量低減対策評価方法、線源推定装置、線量低減対策評価装置、線源推定プログラム及び線量低減対策評価プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る線源推定方法は、評価対象の空間の形状情報を取得するステップと、前記空間のガンマ線強度分布を可視化したガンマ線強度分布画像を取得するステップと、前記空間の所定の測定位置における線量率の測定値を取得するステップと、前記ガンマ線強度分布画像と前記形状情報に基づいて、前記空間における線源位置と線源形状とを設定するステップと、前記ガンマ線強度分布画像に基づく線源の寄与率と前記線量率の測定値とに基づいて算出される線源強度を前記線源位置に設定するステップと、前記形状情報と、前記線源位置と、前記線源形状と、前記線源強度に基づいて線量解析を行い、前記空間の線量率分布を算出するステップと、前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較するステップと、前記比較の結果に基づいて、前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうちの少なくとも1つを修正するステップと、を有し、前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とが所定の目標精度で整合するまで、前記修正するステップと、前記線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返し行う。
【0007】
本開示に係る線量低減対策評価方法は、上記の線源推定方法で推定された前記線源位置ごとに線量低減対策を設定するステップと、前記線量低減対策を実施した後の前記線源位置ごとの前記線源強度および前記線源形状に基づいて、前記線量低減対策実施後の線量率分布を算出するステップと、前記線量低減対策実施後の線量率分布に基づいて前記空間の線量率が所定の目標に到達しているか否かを判定するステップと、を有する。
【0008】
本開示に係る線源推定装置は、評価対象の空間の形状情報を取得する手段と、前記空間のガンマ線強度分布を可視化したガンマ線強度分布画像を取得する手段と、前記空間の所定の測定位置における線量率の測定値を取得する手段と、前記ガンマ線強度分布画像と前記形状情報に基づいて、前記空間における線源位置と線源形状とを設定する手段と、前記ガンマ線強度分布画像に基づく線源の寄与率と前記線量率の測定値とに基づいて算出される線源強度を前記線源位置に設定する手段と、前記形状情報と、前記線源位置と、前記線源形状と、前記線源強度に基づいて線量解析を行い、前記空間の線量率分布を算出する手段と、前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較する手段と、前記比較の結果に基づいて、前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうちの少なくとも1つを修正する手段と、を有し、前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とが所定の目標精度で整合するまで、前記修正する手段が前記修正を行い、前記算出する手段が前記修正に基づいて前記線量率分布を算出し、前記比較する手段が前記修正に基づく前記線量率分布と前記線量率の測定値の比較を行うことを繰り返し行う。
【0009】
本開示に係る線量低減対策評価装置は、上記の線源推定装置によって推定された前記線源位置ごとに線量低減対策を設定する手段と、前記線量低減対策を実施した後の前記線源位置ごとの前記線源強度および前記線源形状に基づいて、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布を算出する手段と、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布に基づいて前記空間の線量率が所定の目標に到達しているか否かを判定する手段と、を有する。
【0010】
本開示に係る線源推定プログラムは、コンピュータに、評価対象の空間の形状情報と、前記空間のガンマ線強度分布を可視化したガンマ線強度分布画像と前記形状情報に基づいて設定される前記空間における線源位置および線源形状と、前記ガンマ線強度分布画像に基づく線源の寄与率と前記空間の所定の測定位置における線量率の測定値とに基づいて設定される前記線源位置の線源強度と、に基づいて線量解析を行い、前記空間の線量率分布を算出するステップと、前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とを比較するステップと、前記比較の結果に基づいて前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうちの少なくとも1つが修正されると、前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうち修正された情報を適用して再度前記線量解析を行い、前記修正された情報を適用した後の前記空間の線量率分布を算出するステップと、を有し、前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とが所定の目標精度で整合するまで、前記適用した後の前記空間の線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返し行う処理、を実行させる。
【0011】
本開示に係る線量低減対策評価プログラムは、コンピュータに、上記の線源推定プログラムによって推定された前記線源位置ごとに線量低減対策を設定するステップと、前記線量低減対策を実施した後の前記線源位置ごとの前記線源強度および前記線源形状に基づいて、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布を算出するステップと、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布に基づいて前記空間の線量率が所定の目標に到達しているか否かを判定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の線源推定方法、線源推定装置及び線源推定プログラムによれば、精度よく線源を推定することができる。本開示の線量低減対策評価方法、線量低減対策評価装置及び線量低減対策評価プログラムによれば、効果的な線量低減対策を計画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る線源推定装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る線源推定処理および線量低減対策評価処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る評価対象空間の形状情報の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るガンマ線強度分布画像の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る線量率の測定結果の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る線量解析結果の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る線源強度の設定処理について説明する図である。
【
図8】実施形態に係る線源位置と測定位置の一例を示す第1の図である。
【
図9】実施形態に係る線源位置と測定位置の一例を示す第2の図である。
【
図10】実施形態に係る線源位置と測定位置の一例を示す第3の図である。
【
図11】実施形態の線源推定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、本開示の線源推定装置について、
図1~
図11を参照しながら説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係る線源推定装置の一例を示すブロック図である。
線源推定装置10は、線量率分布の解析値と測定値の整合性に基づいて、設定された線源の位置、形状、強度の妥当性を確認することにより線源を推定する。図示するように、線源推定装置10は、ガンマ線強度分布画像取得部11と、測定値取得部12と、入力受付部13と、制御部14と、記憶部15と、を備える。
【0015】
ガンマ線強度分布画像取得部11は、ガンマ線カメラが撮影した画像(ガンマ線強度分布画像と呼ぶ。)を取得する。ガンマ線カメラは、例えば、半導体検出器により放射線の方向性と強度の相対比の情報を取得し、その情報をカメラで撮影した画像に重畳して出力することにより、ガンマ線強度分布を可視化する画像を撮影する装置である。ガンマ線カメラで、例えば、放射性物質が広範囲に分布した原子炉施設内を撮影した場合、施設内の壁、床、機器、ダクト、ケーブルトレイなどに重畳して線源がそれぞれの分布位置に表示された画像が撮影される。線源は、その強度に応じて、赤、黄、緑、青などの色で表示される。赤で表示された位置は、当該位置から飛来するガンマ線の線量が高く、黄、緑、青となるにつれ線量が低くなることを意味している。ガンマ線強度分布画像を参照することにより、線源の位置、分布形状、相対的な線量の高低を知ることができるが、線量の絶対値を把握することはできない。
【0016】
測定値取得部12は、ガンマ線の測定器によって測定されたガンマ線の測定値を取得する。例えば、作業従事者が計測器を携えて施設内を移動しながら測定し、ガンマ線の線量率を測定したり、遠隔計測器を用いて線量率を測定したりする。あるいは、施設内の複数位置に計測器を設置して線量率の計測を行ったりしてもよい。測定値取得部12は、施設内各所で測定された測定値を取得する。測定値取得部12が取得するガンマ線の測定値は線量率の絶対値である。
【0017】
入力受付部13は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン等の入力装置を用いて入力された各種の設定情報や処理の開始・終了等を指示する指示情報などを受け付ける。例えば、入力受付部13は、評価対象となる空間αの形状情報を受け付ける。評価対象となる空間αとは、例えば、原子炉施設である。形状情報とは、例えば、原子炉施設の建設当時の形状を示すCADデータ、原子炉施設の内部を撮影した画像、施設内部を3次元測定装置で測定した3次元の点群情報などである。また、入力受付部13は、線源の位置、形状(厚さ・範囲)、強度の設定を受け付ける。入力受付部13は、受け付けた情報を記憶部15に記録したり、制御部14へ出力したりする。
【0018】
制御部14は、線源推定処理の実行・制御を行う。制御部14は、解析部141と、評価部142と、出力部143と、を備える。
解析部141は、例えば、MCNP(Monte Carlo N-Particle Transport Code)、PHITS(Particle and Heavy Ion Transport code System)等のガンマ線の挙動を精緻に再現できる3次元輸送計算コードを使って、空間αの3次元の線量率の分布を解析する。例えば、解析部141は、入力受付部13が受け付けた空間αの形状情報と線源の位置、形状、強度等の情報をMCNP等に入力して、MCNP等が解析した空間αの線量率分布を出力する。
評価部142は、解析部141が解析した空間αの線量率分布と測定値取得部12が取得した空間αの複数位置で測定された線量率を比較し、両者が整合するか否かを評価する。
出力部143は、空間αの形状情報(
図3)、ガンマ線強度分布画像(
図4)、測定値の分布(
図5)、解析部141が解析した線量率分布(
図6)、評価部142による評価結果などの各種情報を表示装置や電子ファイル等に出力する。
記憶部15は、MCNP等の計算コード、処理中のデータなどを記憶する。
【0019】
(動作)
次に本実施形態の線源推定処理および線量低減対策評価処理について説明する。
図2は、実施形態に係る線源推定処理および線量低減対策評価処理の一例を示すフローチャートである。
【0020】
(線源推定処理)
まず、評価対象とする空間の形状情報を設定する(ステップS11)。例えば、解析者が、空間αのCADデータ、空間αに設置する機器のサイズや設置位置などの情報を入力する。CADデータには、空間αの床や壁の他、空間αに敷設されるダクトやケーブルトレイの3次元情報が含まれる。入力受付部13は、形状情報を取得して記憶部15に記録する。空間αの形状情報の一例を
図3に示す。
【0021】
次に、ガンマ線強度分布画像取得部11が、ガンマ線強度分布画像を取得する(ステップS12)。ガンマ線強度分布画像は、空間αの所定の位置で撮影される。ガンマ線強度分布画像取得部11は、入力されたガンマ線強度分布画像を取得して記憶部15に記録する。ガンマ線強度分布画像の一例を
図4に示す。(
図4に記載された「C:ダクト10%」等の情報は、ガンマ線強度分布画像に含まれない。これらの情報については後述する。)
【0022】
次に、測定値取得部12が、線量率の測定値を取得する(ステップS13)。測定値取得部12は、空間αの各所で測定されたガンマ線の線量率の測定値を取得する。測定値取得部12は、入力された測定値を取得して記憶部15に記録する。各所で測定された測定値の一例を
図5に示す。
【0023】
次に解析者が、線源位置、形状を設定する(ステップS14)。例えば、解析者が所定の操作を行うと、出力部143は、ガンマ線強度分布画像(例えば、
図4)と、ステップS11で設定した形状情報に基づく空間αの3次元モデル(例えば、
図3)を表示装置へ出力する。解析者は、ガンマ線強度分布画像を参照して、赤、黄、緑、青などの色が表示された画像位置に対応する空間α内の位置を特定する。例えば、ガンマ線強度分布画像のある部分に赤い円形が表示されていれば、解析者は、空間αの形状情報における当該部分に対応する位置を線源として設定する。また、解析者は、特定した線源位置に存在する壁、ダクト、機器などにおける赤い円形に相当する範囲とその範囲に付着する放射線物質の層の厚さ(例えば、1cm等)を線源の形状として設定する。解析者は、設定した空間α内の線源の位置および形状を線源推定装置10に入力する。入力受付部13は、入力された線源の位置および形状を取得し、記憶部15に記録(設定)する。
【0024】
次に解析者が、線源強度を設定する(ステップS15)。まず、解析者は、ガンマ線強度分布画像に表示された色に基づいて、ステップS14で設定された各線源位置の寄与率(ガンマ線強度分布画像を撮影した位置で測定される線量率への寄与率)を算出し、算出した寄与率を線源推定装置10に入力する。
図4のガンマ線強度分布画像では、位置Aの機器に重畳して赤が表示され、位置Bのホットスポットには赤が表示され、位置Cのダクトには緑、位置Dの配管には緑が表示されている。例えば、解析者は、赤が表示された位置Aおよび位置Bには40%の寄与率を設定し、緑が表示された位置Cおよび位置Dには10%の寄与率を設定する。次に解析者は、寄与率と距離に応じた線源強度を各線源位置に設定する。例えば、
図7に例示するようにガンマ線強度分布画像を撮影した位置Pにおける線量率の測定値が10(mSv/h)であるとする。位置Pの10(mSv/h)を上記の寄与率に従って配分すると、位置Aから位置Pへ到達するガンマ線の線量率は4(mSv/h)、位置Bから位置Pへ到達するガンマ線の線量率は4(mSv/h)、位置Cから位置Pへ到達するガンマ線の線量率は1(mSv/h)、位置Dから位置Pへ到達するガンマ線の線量率は1(mSv/h)と配分することができる。次に解析者は、位置Pと位置A~Dの各位置の距離に応じて、位置Pへ配分した線量率が到達するために必要な線源強度を計算する。例えば、位置Pと位置Aの距離を考慮して、位置Pでの線量率が4(mSv/h)となるためには、位置Aの線源強度が100でなければならないことを逆算する。また、解析者は、位置Pと位置Bの距離と位置Pでの線量率1(mSv/h)から位置Bの線源強度10を逆算する。同様に、解析者は、位置Cの線源強度10、位置Dの線源強度20を計算する。解析者は、計算した各位置A~Dの線源強度を線源推定装置10に入力する。入力受付部13は、入力された線源強度を取得し、記憶部15に記録(設定)する。
【0025】
位置A~Dの線源強度の設定は、線源推定装置10によって行われてもよい。例えば、解析者が、位置Pにおける測定値と位置A~Dの寄与率を線源推定装置10に入力する。入力受付部13は、入力された寄与率を取得し、記憶部15に記録(設定)する。すると、制御部14が、空間αの形状情報から位置Pから位置A~Dまでの距離をそれぞれ算出し、入力された位置Pにおける測定値(10(mSv/h))、位置A~Dそれぞれの寄与率、算出した位置Pから位置A~Dまでの各距離に基づいて、位置A~Dの線源強度を算出し、算出した位置A~Dの線源強度を記憶部15に記録(設定)する。あるいは、解析部141がMCNP等によって線源強度を推定してもよい。また、寄与率の設定は、解析者によらず、線源推定装置10によって行われてもよい。例えば、線源推定装置10にガンマ線強度分布画像を画像処理する機能を持たせ、この機能により、ガンマ線強度分布画像から、赤、黄、緑、青の各色の画素領域を抽出する。そして、制御部14が、赤、黄、緑、青の領域の寄与率がこの順で小さくなるように(赤の寄与率が最も高く、青の寄与率が最も低い)各色に寄与率を設定してもよい。例えば、赤色の場合、赤色の寄与率=(赤色の相対強度×個数)/{(赤色の相対強度×個数)+(黄色の相対強度×個数)+(緑色の相対強度×個数)+(青色の相対強度×個数)}×100によって算出することができる。他の色についても同様である。
【0026】
次に解析部141が、線量率分布解析を実行する(ステップS16)。解析部141は、空間αの形状情報、線源位置A~Dの線源強度および形状(範囲、厚さ)等をMCNP等の計算コードへ入力し、線量解析を実行し、空間αの3次元の線量率分布を算出する。例えば、
図6に例示する線量率分布の解析結果が得られる(
図6には、一例として2次元の線量率分布図を示す。)。
【0027】
次に評価部142が、線量率の再現性を確認する(ステップS17)。線量率の再現性とは、線量率分布解析で算出された線量率の分布が、実際の線量率の分布を再現しているかどうか、つまり、線量率分布の解析結果が各所で測定された線量率の測定値と整合するかどうかということである。評価部142は、ステップS16で得られた線量率分布の解析結果(例えば、
図6)とステップS13で取得した線量率の測定値(例えば、
図5)とを比較し、各位置における線量率の解析値と測定値が所定の目標精度で整合するかどうか(両者が一致する又は両者の差が所定の範囲内に収まるかどうか)を判定する。例えば、全ての測定位置における測定値と解析値の差が所定の範囲内であれば、評価部142は、線量率の再現性は良好であると判定する。1か所でも大きく異なる点があれば、評価部142は、線量率の再現性は良好ではないと判定する。評価部142が線量率の再現性が良好であると判定すると(ステップS18;Yes)、ステップS14~S15で設定した線源の位置、形状、強度は妥当であると考えられる。制御部14は、ステップS14~S15で設定した位置、形状、強度で規定される線源を評価対象の空間αに分布する線源として決定する(ステップS19)。
【0028】
評価部142が線量率の再現性が良好ではないと判定すると(ステップS18;No)、出力部143が「設定した線源位置、形状、強度に誤りがあります。」など、再現性が低いことを通知する文言等の出力を行い(ステップS181)、ステップS14以降の処理を繰り返す。例えば、解析者は、線源位置、線源形状、線源強度の少なくとも一つを修正し、修正した情報を線源推定装置10に入力する。入力受付部13は、入力された修正後の線源位置等を取得し記憶部15に記録(修正)する(ステップS14,S15)。そして、解析部141が、修正後の線源位置等に基づいて線量率分布解析を実行(ステップS16)し、評価部142が線量率の再現性の確認および判定(ステップS17,S18)を行うという処理を、評価部142によって線量率の再現性が良好であると判定されるまで、繰り返し実行する。
【0029】
ここで、
図8~
図10を参照して、ステップS14~S15で設定した線源位置などの再現性を低下させる要因について説明する。ホットスポットEとガンマ線強度分布画像の測定位置Pの関係が
図8に示すように線源Eからの直接線が測定位置Pに到達するような位置関係にあれば線源推定は比較的容易である。しかし、
図9に示すように真の線源Fとガンマ線強度分布画像の測定位置Pの間に構造物F1が存在し、ガンマ線が構造物F1を迂回して壁F3に当たって散乱した散乱線が測定位置Pへ到達するような場合、測定位置Pで撮影したガンマ線強度分布画像では、散乱位置F2に赤や黄の色が表示される。このガンマ線強度分布画像を参照して、線源位置を設定した場合、F2を線源位置として設定することになる。すると、例えば、真の線源Fに近い位置P1で測定された実際の線量率と散乱位置F2を線源位置として解析した線量率分布が示す位置P1の線量率との間には乖離が生じる。1か所(例えば、位置P)の測定結果だけであれば、F2を線源位置として設定しても、設定した線源位置の誤りに気付くことはできない。しかし、複数位置で測定された線量率の測定値と解析値を比較することによって、線源位置の誤りに気が付くことができる。また、
図10に例示するように、壁F3を隔てた測定位置Pの反対側に高線量機器が存在し、例えば、壁F3の局所的に壁厚が薄くなった一部の領域F4に存在する貫通孔等を透過して測定位置Pに至るストリーミング線(ストリーミング線とは、壁との間の隙間や壁の貫通孔等の狭い箇所を抜けてくる放射線のことである。)をガンマ線カメラで撮影したような場合、測定位置Pで撮影したガンマ線強度分布画像では、透過位置F4に赤や黄の色が表示される。このガンマ線強度分布画像を参照して線源位置を設定すると、透過位置F4を線源位置として特定することになる。この場合も測定位置P以外で測定された線量率の測定値とMCNP等による解析結果には乖離が生じる可能性が高い。このように複数個所での線量率の測定値と線量率分布の解析結果を比較することにより、推定した線源位置などの誤りに気づくことができる。再現性低が出力されると(ステップS181)、解析者は、空間αの形状情報を参照しながら、例えばガンマ線強度分布画像に写った線源が散乱線やストリーミング線である可能性を考慮する等して工学的な判断を行い、線源位置、線源形状、線源強度を再設定し、ステップS14からの処理を繰り返し行う。
【0030】
なお、ガンマ線強度分布画像は、空間α内の複数の位置で撮影されてもよい。その場合、ステップS12では複数位置で撮影されたガンマ線強度分布画像を取得する。そして、各々のガンマ線強度分布画像について、ステップS14~S18の処理が実行される。この場合、各々のガンマ線強度分布画像に基づいて決定した線源位置と線源形状と線源強度を比較するステップをさらに設け、比較の結果から線源位置等をさらに調節するようにしてもよい。あるいは、複数のガンマ線強度分布画像に基づいて、解析者が、線源の位置、形状、強度の設定を行い(ステップS14~15)、この設定に対して、再現性の確認を行う処理(ステップS16~S18)を繰り返し実行するようにしてもよい。
また、解析者による線源の位置、形状、強度の設定を行うステップS14~S15においては、ステップS12~S13での取得データに基づいたデータ同化法によって例えば統計モデルを用いた推定によって線源の位置、形状、強度を設定することで代替できる。
【0031】
(線量低減対策評価処理)
以上の処理で線源が決定すると、線量低減対策評価処理の実行が可能になる。
まず、解析者は、線源ごとの線量寄与率を設定する(ステップS20)。解析者は、線源からの直接線、散乱線、ストリーミング線を考慮しながら、空間αの各所への各線源の寄与率を設定する。
次に解析者は、線源ごとの線量低減目標の設定する(ステップS21)。例えば、解析者は、床に存在する「線源1」からの線量率を7(mSv/h)から0.1(mSv/h)へ低減するといった目標を設定し、その目標値を線源推定装置10に入力する。入力受付部13は、入力された目標値を取得し、記憶部15に記録(設定)する。
次に解析者は、線量低減対策の設定を行う(ステップS22)。例えば、解析者は、ケーブルトレイに存在する「線源2」への対策として遮蔽対策を行う、壁に存在する「線源3」や天井に存在する「線源4」への対策として洗浄や拭き取りを行うなど、ステップS19で決定された線源ごとに線量低減対策を設定し、その線量低減対策を線源推定装置10に入力する。入力受付部13は、入力された線源ごとの線量低減対策を取得し、記憶部15に記録(設定)する。線源推定処理によって精度よく線源の位置、形状、強度を推定することができるので、ステップS22では、その推定結果に基づいて、ステップS21で設定した目標を達成するための線量低減対策を適切に設定することができる。
【0032】
次に線量低減対策後の線量率分布評価を行う(ステップS23)。例えば、解析者は、各線源に対して、ステップS22で設定した線量低減対策を実施した後の線源の強度や形状(範囲、厚さ)を設定し、それらの値を線源推定装置10に入力する。入力受付部13は、入力された線源ごとの強度および形状を取得し、記憶部15に記録(設定)する。次に解析部141が、空間αの形状情報、ステップS19で決定した各線源の位置、線量低減対策実施後の線源強度および形状等をMCNP等へ入力し、計算コードを実行する。これにより、
図6に例示する空間αの線量率分布が得られる。制御部14は、解析部141による解析結果と所定の目標値を比較して、線量低減対策実施後の空間αの線量率が目標に到達したかどうかを判定する(ステップS24)。例えば、解析部141による線量率分布の解析結果が、空間αのどの位置でも線量率が目標値以下となっていることを示していれば、制御部14は、目標到達と判定し、そうでない場合には、目標に到達していないと判定する。制御部14が目標到達と判定すると(ステップS24;Yes)、解析者は、ステップS22で設定した線量低減対策に基づいて、線量低減対策工事を計画する(ステップS25)。
【0033】
制御部14が目標に到達していないと判定すると(ステップS24;No)、出力部143が、線量低減対策が不足していることを通知する文言やステップS23の解析結果等の出力を行い(ステップS241)、ステップS21以降の処理を繰り返す。これにより、目標線量率を達成することができる線量低減対策の策定が可能になる。
【0034】
(効果)
以上、説明したように、本実施形態によれば、評価対象の空間に分布する線源の位置、形状、強度を精度よく推定することができる。また、線源推定の結果に基づいて効果的な線量低減対策を決定することができる。
【0035】
図11は、線源推定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の線源推定装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0036】
なお、線源推定装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0037】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0038】
<付記>
実施形態に記載の線源推定方法、線量低減対策評価方法、線源推定装置、線量低減対策評価装置、線源推定プログラム及び線量低減対策評価プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)第1の態様に係る線源推定方法は、評価対象の空間の形状情報を取得するステップと、前記空間のガンマ線強度分布を可視化したガンマ線強度分布画像を取得するステップと、前記空間の所定の測定位置における線量率の測定値を取得するステップと、前記ガンマ線強度分布画像と前記形状情報に基づいて、前記空間における線源位置と線源形状とを設定するステップと、前記ガンマ線強度分布画像に基づいて設定される線源の寄与率と前記線量率の測定値とに基づいて算出される線源強度を前記線源位置に設定するステップと、前記形状情報と、前記線源位置と、前記線源形状と、前記線源強度とに基づいて線量解析を行い、前記空間の線量率分布を算出するステップと、前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較するステップと、前記比較の結果、前記比較の結果に基づいて、前記空間における線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうちの少なくとも1つを修正するステップと、を有し、前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とが所定の目標精度で整合するまで、前記修正するステップと、前記線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返し行う。
これにより、精度よく線源を推定することができる。
【0040】
(2)第2の態様に係る線源推定方法は、(1)の線源推定方法であって、前記線源強度の設定時には、前記寄与率に基づいて、前記ガンマ線強度分布画像の撮影位置と同じ位置で測定した前記線量率の測定値を配分し、前記配分した値と、測定位置と前記線源位置の距離と、に基づいて、前記線源強度を設定する。
これにより、線源強度の具体的な値を設定することができる。
【0041】
(3)第3の態様に係る線源推定方法は、(1)~(2)の線源推定方法であって、前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較するステップでは、複数位置での前記線量率の測定値と前記線量率分布の算出結果との比較を行い、前記複数位置それぞれでの前記線量率の測定値と前記線量率分布の算出結果が前記目標精度で整合するまで、前記修正するステップと、前記線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返し行う。
これにより、最初に設定した線源位置、線源形状、線量の妥当性を確認することができる。線量率分布の算出結果と各所の線量測定値が異なる場合には、線源位置等の設定を修正する。これにより、精度よく線源位置を推定することができる。
【0042】
(4)第4の態様に係る線源推定方法は、(3)の線源推定方法であって、前記複数位置での前記線量率の測定値と前記線量率分布の算出結果との比較を行った結果、一つでも整合しない位置があれば、前記線源位置、前記線源形状および前記線源強度の何れかに誤りがあることを通知するステップ、をさらに有する。
これにより、例えば、散乱線やストリーミング線などの影響により誤って線源を設定してしまったような場合にその誤りに気付くことができる。
【0043】
(5)第5の態様に係る線源推定方法は、(1)~(4)の線源推定方法であって、前記比較の結果、前記目標精度で整合するかどうかを通知するステップ、をさらに有する。
これにより、設定した線源位置、線源形状、線源強度が妥当かどうかを把握することができる。
【0044】
(6)第6の態様に係る線源推定方法は、(1)~(5)の線源推定方法であって、前記ガンマ線強度分布画像を取得するステップでは、前記空間における複数の位置で撮影されたガンマ線強度分布画像を取得し、各々の前記ガンマ線強度分布画像について、前記空間における線源位置と前記線源形状と前記寄与率とを設定するステップと、前記線源強度を設定するステップと、前記線量解析によって前記空間における線量率分布を算出するステップと、前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較するステップと、前記修正するステップと、前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とが前記目標精度で整合するまで、前記修正するステップと、前記空間における線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返すこと、を実行し、さらに、各々の前記ガンマ線強度分布画像に基づいて得られた前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度を比較するステップ、を有する。
これにより、複数のガンマ線強度分布画像に基づいて線源位置・形状・強度を算出、その結果を比較して、同じエリア内で線源位置や線量に齟齬があれば、散乱やストリーミングの可能性を検討して、正確な線源位置を推定することができる。
【0045】
(7)第7の態様に係る線源推定方法は、(1)~(6)の線源推定方法であって、前記線量率分布を算出するステップでは、ガンマ線の挙動を再現できる3次元輸送計算コードによって前記線量解析を行う。
これにより、線量率分布を算出することができる。
【0046】
(8)第8の態様に係る線量低減対策評価方法は、(1)~(7)の線源推定方法で推定された前記線源位置ごとに線量低減対策を設定するステップと、前記線量低減対策を実施した後の前記線源位置ごとの前記線源強度および前記線源形状に基づいて、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布を算出するステップと、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布に基づいて前記空間の線量率が所定の目標に到達しているか否かを判定するステップと、を有する。
これにより目標達成可能な線量低減対策を計画することができる。
【0047】
(9)第9の態様に係る線源推定装置は、評価対象の空間の形状情報を取得する手段と、前記空間のガンマ線強度分布を可視化したガンマ線強度分布画像を取得する手段と、前記空間の所定の測定位置における線量率の測定値を取得する手段と、前記ガンマ線強度分布画像と前記形状情報に基づいて、前記空間における線源位置と線源形状とを設定する手段と、前記ガンマ線強度分布画像に基づいて設定される線源の寄与率と前記線量率の測定値とに基づいて算出される線源強度を前記線源位置に設定する手段と、前記形状情報と前記線源強度に基づいて線量解析を行い、前記空間の線量率分布を算出する手段と、前記線量率分布の算出結果と、前記線量率の測定値とを比較する手段と、前記比較の結果に基づいて、前記空間における線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうちの少なくとも1つを修正する手段と、を有し、前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とが所定の目標精度で整合するまで、前記修正する手段が前記修正を行い、前記算出する手段が前記修正に基づいて前記線量率分布を算出し、前記比較する手段が前記修正後の前記線量率分布と前記線量率の測定値の比較を行ことを、繰り返し行う。
【0048】
(10)第10の態様に係る線量低減対策評価装置は、(9)に記載の線源推定装置によって推定された前記線源位置ごとに線量低減対策を設定する手段と、前記線量低減対策を実施した後の前記線源位置ごとの前記線源強度および前記線源形状に基づいて、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布を算出する手段と、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布に基づいて前記空間の線量率が所定の目標に到達しているか否かを判定する手段と、を有する。
【0049】
(11)第11の態様に係る線源推定プログラムは、コンピュータ900に、評価対象の空間の形状情報と、前記空間のガンマ線強度分布を可視化したガンマ線強度分布画像と前記形状情報に基づいて設定される前記空間における線源位置および線源形状と、前記ガンマ線強度分布画像に基づく線源の寄与率と前記空間の所定の測定位置における線量率の測定値とに基づいて設定される前記線源位置の線源強度と、に基づいて線量解析を行い、前記空間の線量率分布を算出するステップと、前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とを比較するステップと、前記比較の結果に基づいて前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうちの少なくとも1つが修正されると、前記線源位置と前記線源形状と前記線源強度のうち修正された情報を適用して再度前記線量解析を行い、前記修正された情報を適用した後の前記空間の線量率分布を算出するステップと、を有し、前記線量解析による前記線量率分布の算出結果と前記線量率の測定値とが所定の目標精度で整合するまで、前記適用した後の前記空間の線量率分布を算出するステップと、前記比較するステップと、を繰り返し行う処理、を実行させる。
【0050】
(12)第12の態様に係る線量低減対策評価プログラムは、コンピュータ900に、(11)に記載の線源推定プログラムによって推定された前記線源位置ごとに線量低減対策を設定するステップと、前記線量低減対策を実施した後の前記線源位置ごとの前記線源強度および前記線源形状に基づいて、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布を算出するステップと、前記線量低減対策を実施した後の前記線量率分布に基づいて前記空間の線量率が所定の目標に到達しているか否かを判定するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0051】
10・・・線源推定装置
11・・・ガンマ線強度分布画像取得部
12・・・測定値取得部
13・・・入力受付部
14・・・制御部
141・・・解析部
142・・・評価部
143・・・出力部
15・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース