(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039869
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/12 20110101AFI20240315BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20240315BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240315BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F24F1/12
F04B39/00 102S
F16F15/04 A
F16F7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144565
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 友司
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】金森 梓
【テーマコード(参考)】
3H003
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AC03
3H003BB06
3H003CD01
3J048AA01
3J048BA06
3J048DA01
3J048EA07
3J066BA01
3J066BB01
3J066BC05
3J066BD05
3J066BE01
(57)【要約】
【課題】より広い周波数域の振動を効果的に低減することが可能な空気調和機を提供する。
【解決手段】空気調和機は、ケーシングと、圧縮機と、圧縮機をケーシングに対して支持する支持部と、を備え、支持部は、ケーシングの底面に固定され、上方に向かって軸線方向に延びるスタッドボルトと、圧縮機を支持し、スタッドボルトを囲うとともに軸線を中心とする筒状の内周面、及び外周側を向く外周面を有し、内周面の下端がスタッドボルトに固定され、内周面の下端よりも上側の部分が隙間を介してスタッドボルトを収容する防振ゴムと、を有し、外周面には、軸線を中心とする円環状をなすとともに内周側に向かって凹むことで圧縮機が取り付けられる取付凹部が形成され、内周面上で軸線方向において取付け凹部と重なる位置には、下方から上方に向かうに従って縮径するテーパ面が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に設けられた圧縮機と、
前記圧縮機を前記ケーシングに対して支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、
前記ケーシングの底面に固定され、上方に向かって軸線方向に延びるスタッドボルトと、
前記圧縮機を支持し、前記スタッドボルトを囲うとともに前記軸線を中心とする筒状の内周面、及び外周側を向く外周面を有し、前記内周面の下端が前記スタッドボルトに固定され、前記内周面の下端よりも上側の部分が隙間を介して前記スタッドボルトを収容する防振ゴムと、
を有し、
前記外周面には、前記軸線を中心とする円環状をなすとともに内周側に向かって凹むことで前記圧縮機が取り付けられる取付凹部が形成され、
前記内周面上で前記軸線方向において前記取付け凹部と重なる位置には、下方から上方に向かうに従って縮径するテーパ面が形成されている空気調和機。
【請求項2】
前記外周面における前記取付け凹部の下方には、前記軸線を中心とする円環状をなすとともに内周側に向かって凹む変形凹部が形成されている請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数の前記変形凹部が形成され、上方に位置する前記変形凹部になるに従って、径方向の凹みが大きくなる請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記内周面における前記テーパ面よりも上側の部分は、前記テーパ面よりも下側の部分に比べて、前記スタッドボルトに近接している請求項1から3のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記内周面における前記テーパ面よりも下側の部分は、前記軸線方向の全域にわたって前記スタッドボルトとの離間距離が一定である請求項1に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記外周面の上端部は、下方から上方に向かうに従って次第に縮径している請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室外機は、ケーシングと、圧縮機と、熱交換器と、冷媒配管と、を主に備えている。圧縮機は、箱状をなすケーシングの底面に固定されている。具体的には、圧縮機は、円筒形状の圧縮機本体と、この圧縮機本体の底面から径方向に放射状に延びる複数の脚と、を有している。脚は板状をなすとともに、その先端には孔が形成されている。他方で、ケーシングの底面にはスタッドボルトが溶接やかしめ等により固定されている。このスタッドボルトの周囲に防振ゴムを取り付けた状態で、上記の脚の孔を防振ゴムにはめ込むことによって、圧縮機がケーシング内で固定される。
【0003】
防振ゴムの具体例として、例えば下記特許文献1に記載されたものが知られている。下記特許文献1に係る技術では、防振ゴムとスタッドボルトとの間に隙間が形成されている。隙間が形成されていることによって、圧縮機の振動がスタッドボルト経由でケーシングの底面に伝わりにくくなるため、騒音を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年では、省エネの観点から圧縮機を低回転数で運転する例が増えている。他方で、大出力が必要な場合には高回転数で運転される。つまり、圧縮機から発生する振動の周波数域が従来よりも広くなっている。また、圧縮機小型化により低質量かつ低慣性の設計となり、圧縮機振動が増大する傾向にある。この場合、低回転数での運転の騒音を低減しようとすれば、圧縮機の防振支持の固有振動数は低くする必要があるが、固有振動数が低くなると圧縮機の過渡的な運転や起動・停止時において圧縮機の振動・変位が大きくなる。上記のように単に防振ゴムとスタッドボルトとの間に隙間を設けただけでは、振動が大きいとき、防振ゴムとスタッドボルトが接触し、圧縮機の振動がスタッドボルト経由でケーシングの底面に伝わり、空気調和機から騒音が発生するとともに、振動により装置に強度的問題が発生する恐れがある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より広い周波数域の圧縮機振動に起因する騒音及び振動を効果的に低減することが可能な空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る空気調和機は、ケーシングと、前記ケーシング内に設けられた圧縮機と、前記圧縮機を前記ケーシングに対して支持する支持部と、を備え、前記支持部は、前記ケーシングの底面に固定され、上方に向かって軸線方向に延びるスタッドボルトと、前記圧縮機を支持し、前記スタッドボルトを囲うとともに前記軸線を中心とする筒状の内周面、及び外周側を向く外周面を有し、前記内周面の下端が前記スタッドボルトに固定され、前記内周面の下端よりも上側の部分が隙間を介して前記スタッドボルトを収容する防振ゴムと、を有し、前記外周面には、前記軸線を中心とする円環状をなすとともに内周側に向かって凹むことで前記圧縮機が取り付けられる取付凹部が形成され、前記内周面上で前記軸線方向において前記取付け凹部と重なる位置には、下方から上方に向かうに従って縮径するテーパ面が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より広い周波数域の圧縮機振動に起因する騒音及び振動を効果的に低減することが可能な空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る空気調和機の圧縮機周囲の構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る防振ゴムの構成を示す断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る防振ゴムの構成を示す要部拡大断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る防振ゴムが振動によって変形した状態を示す説明図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る防振ゴムが振動によってさらに変形した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(空気調和機の構成)
以下、本開示の実施形態に係る空気調和機1について、
図1から
図5を参照して説明する。本実施形態に係る空気調和機1は、室外に設置されて外気と冷媒とを熱交換させるための装置である。言い換えると、この空気調和機1は、いわゆる室外機である。室外機で外気と熱交換した冷媒は、配管を通って室内機の熱交換器に送られる。室内の空気と冷媒との熱交換を行うことで、室内に温度調節された風が送られる。
【0011】
図1に示すように、空気調和機1は、ケーシング10と、圧縮機20と、支持部30と、を備えている。ケーシング10は、箱状の容器である。ケーシング10内部に形成された空間には、送風ファン、熱交換器、冷媒配管、弁装置(いずれも不図示)に加えて、圧縮機20が収容されている。圧縮機20として具体的には、スクロール圧縮機やロータリ圧縮機が用いられる。
【0012】
圧縮機20は、上下方向を中心軸とする円柱形状をなしている。圧縮機20は、ロータリピストンや旋回スクロール、及び固定スクロール等を含む圧縮機本体21と、この圧縮機本体21の下部に設けられた複数の脚部22と、を有している。詳しくは図示しないが、脚部22は、上下方向から見て、圧縮機本体21から径方向外側に突出するとともに、周方向に間隔をあけて複数設けられている。それぞれの脚部22は上下方向を厚さ方向とする板状をなし、その先端部には円形の貫通孔23(
図2参照)が形成されている。
【0013】
(支持部の構成)
支持部30は、これら脚部22を介して圧縮機本体21をケーシング10の底面11に固定している。
図2に示すように、支持部30は、スタッドボルト31と、防振ゴム32と、を有する。スタッドボルト31は、ケーシング10の底面11に形成された開口部12から上方に向かって突出するように挿入されている。具体的には、スタッドボルト31は、円形の頭部33と、この頭部33から上下方向に延びる軸線O方向の一方側(上側)に突出する軸部34と、を有する。
【0014】
ケーシング10の底面11に形成された開口部12の径は、軸部34の外径よりもわずかに大きく、頭部33の外径よりも十分に小さく設定されている。したがって、軸部34のみが開口部12の上方に突出し、頭部33はケーシング10の底面11の下側に留まった状態となっている。スタッドボルト31は、ケーシング10に対して溶接によって固定されている。また、
図2に示すように、開口部12の端縁は軸線O方向の上側に向かって円筒状に突出している。これは、スタッドボルト31の倒れを防止するためである。
【0015】
(防振ゴムの構成)
防振ゴム32は、スタッドボルト31の軸部34を外周側から囲う筒状をなしている。つまり、防振ゴム32は、上記の軸線Oを中心とする筒状をなしている。防振ゴム32の外周面には、軸線O方向一方側から他方側に向かって順に、挿入テーパ面41、取付凹部42、変形凹部43、縮径部44が形成されている。挿入テーパ面41は、上述した脚部22の貫通孔23に防振ゴム32を挿入しやすくするために設けられている。挿入テーパ面41は、軸線O方向一方側から他方側に向かうに従って次第に拡径している。つまり、挿入テーパ面41の上側の端縁は、下側の端縁よりも小径である。また、挿入テーパ面41は、軸線O方向から見て円環状をなしている。
【0016】
挿入テーパ面41の軸線O方向他方側(下側)には、取付凹部42が形成されている。取付凹部42は、上記の脚部22が収容されるための部分である。この取付凹部42は、軸線Oを中心とする円環状をなすとともに内周側に向かって矩形状に凹んでいる。挿入凹部の内周側の面は、挿入テーパ面41の下側の端縁よりも内周側に位置している。脚部22の貫通孔23に挿入テーパ面41を挿入すると、防振ゴム32が弾性変形することで一時的に貫通孔23よりも小さな外径となる。挿入テーパ面41を乗り越えると、当該挿入テーパ面41の弾性変形は復元され、脚部22は取付凹部42内に収容された状態となる。つまり、挿入テーパ面41が取付凹部42よりも外周側に突出していることで、脚部22を脱落不能に固定している。
【0017】
取付凹部42の軸線O方向他方側(下側)には、複数(一例として2つ)の変形凹部43a、43bが形成されている。変形凹部43a、43bは、軸線Oを中心として内周側に凹んでいる。軸線Oを含む断面視で、変形凹部43a、43bの断面形状は、略V字型、又はU字型である。2つの変形凹部43a、43bのうち、軸線O方向一方側(上側)の変形凹部43aは、下側の変形凹部43bに比べて、内周側に大きく凹んでいる。また、軸線O方向の寸法も下側の変形凹部43bよりも大きい。つまり、上側の変形凹部43aの容積は、下側の変形凹部43bの容積よりも大きく設定されている。また、これら2つの変形凹部43a、43bは、軸線O方向に間隔をあけて配列されている。
【0018】
下側の変形凹部43bのさらに下側(軸線O方向他方側)には、縮径部44が形成されている。縮径部44は、上側から下側(つまり、軸線O方向一方側から他方側)に向かうに従って、次第に径寸法が小さくなっている。防振ゴム32の下面は、ケーシング10の底面11に当接している。つまり、この下面は、軸線Oに直交する面に沿って広がる平面状をなしている。
【0019】
防振ゴム32の内周面とスタッドボルト31の外周面との間には、隙間が形成されている。防振ゴム32の内周面には、軸線O方向一方側から他方側に向かって順に、小径部51、テーパ面52、大径部53、固定部54が形成されている。
【0020】
小径部51は、軸線Oを中心とする円筒面状をなしている。小径部51は、軸線O方向において上述した挿入テーパ面41と重なる位置に設けられている。小径部51の内径寸法は、軸線O方向の全域にわたって一定である。小径部51は、スタッドボルト31の外周面に対して周方向全域に広がる隙間を介して対向している。
【0021】
小径部51の軸線O方向他方側(下側)には、テーパ面52が形成されている。テーパ面52は、軸線O方向一方側から他方側に向かうに従って次第に径寸法が拡大している。テーパ面52は、軸線O方向において上述の取付凹部42と重なる位置に設けられている。言い換えれば、
図3に示すように、テーパ面52の上側の端縁は取付凹部42の上側の端縁と同一の位置にあり、テーパ面52の下側の端縁は取付凹部42の下側の端縁と同一の位置にある。つまり、圧縮機20が振動して脚部22が水平方向に変位する際には、テーパ面52に水平方向の力が加わる。テーパ面52も、スタッドボルト31の外周面に対して周方向全域に広がる隙間を介して対向している。なお、ここで言う「同一」とは実質的な同一を指すものであって、製造上の誤差や設計上の公差は許容される。以下、同様である。
【0022】
図2に示すように、テーパ面52の軸線O方向他方側(下側)には、大径部53が形成されている。大径部53は、軸線Oを中心とする円筒面状をなしている。大径部53は、軸線O方向において上述した変形凹部43と重なる位置に設けられている。大径部53の内径寸法は、上述の小径部51の内径寸法よりも大きい。また、大径部53の内径寸法は、軸線O方向の全域にわたって一定である。つまり、スタッドボルト31と大径部53の径方向における離間距離は、軸線O方向の全域にわたって一定である。大径部53は、スタッドボルト31の外周面に対して周方向全域に広がる隙間を介して対向している。
【0023】
大径部53の軸線O方向他方側(下側)には、固定部54が設けられている。固定部54は、大径部53よりも内周側に突出する円環状をなしている。大径部53は、スタッドボルト31に対してケーシング10の一部(開口部12の端縁の突出部分)を介してスタッドボルト31に接続されている。固定部54の内径寸法は、スタッドボルト31の軸部34の外径寸法よりもわずかに大きいか又は同一である。また、スタッドボルト先端55にはナット56が取付られており、防振ゴム32全体がスタッドボルト31から脱落しないようにされている。
【0024】
(作用効果)
続いて、上述の空気調和機1の動作、挙動の一例について説明する。圧縮機20の運転中、及び起動・停止時には、上下方向(軸線O方向)、水平方向、及びこれらを複合した方向に様々な振動が生じ得る。このような振動が続くと、騒音が生じるだけでなく、装置の疲労破壊を招く虞もある。そこで、本実施形態では、上述の防振ゴム32が支持部30に設けられている。
【0025】
まず、圧縮機20に上下方向の振動が生じた場合には、脚部22を介して防振ゴム32にもその振動が伝わる。振動が伝わると、防振ゴム32の変形凹部43a、43bが軸線O方向両側からつぶれるようにして弾性変形する。つまり、変形凹部43a、43bが形成されていることで、防振ゴム32はばねのような振る舞いを積極的にするようになる。このばね要素による上下方向の防振ゴム32による圧縮機20を支持する固有振動数を圧縮機運転範囲以下の適切な周波数とすることで上下方向の振動が防振ゴム32によって防振されるため、ケーシング10側には当該振動が伝わりにくくなる。その結果、騒音を大きく低減することが可能となる。
【0026】
特に、上記構成によれば、上方に位置する変形凹部43aになるほど、つまり、振動源である圧縮機20に近い変形凹部43aほど、径方向の凹みが大きい。即ち、変形凹部43aは43bに対し、ばね定数が小さくなる。したがって、圧縮機20の上下方向の振動に対して、変形凹部43aが優先的に変形することになる。圧縮機20の上下方向振動が大きくなると変形凹部43aが変形した結果、当該変形凹部43aの上下の面同士が接触し、断面積が大きくなる。即ちばね定数が大きくなり、圧縮機の一定以上の振動を抑制することとなり装置の破損を防止することができる。したがって、上下方向の振動の周波数や振幅が変化した場合であっても、より柔軟かつ広範囲の周波数域にわたって、効果的に振動を防振することが可能となる。これにより、圧縮機20の運転回転数によらず、安定的に振動・騒音を低減することができる。
【0027】
次に、圧縮機20に水平方向(つまり、軸線Oに直交する方向)に振動が生じた場合について考える。この場合にも、脚部22を介して防振ゴム32にもその振動が伝わる。
内周面におけるテーパ面52よりも下側の部分(大径部53)は、軸線O方向の全域にわたってスタッドボルト31との離間距離が一定である。上記構成によれば、テーパ面52よりも下側の部分(大径部53)がスタッドボルト31と一定の離間距離のもとで隙間をあけて対向した状態となる。圧縮機20の振動が小さい場合、内周面とスタッドボルト31は接触せず、圧縮機20の振動がスタッドボルト31に直接的に伝わらない。加えて、防振ゴム32のばね定数を小さくすることが可能なため、圧縮機20を支持する固有振動数を圧縮機運転範囲以下の適切な周波数とすることで水平方向の振動が防振ゴム32によって防振され、ケーシング10側には当該振動が伝わりにくくなる。その結果、騒音を大きく低減することが可能となる。
【0028】
圧縮機20から大きな振動が伝わると、
図4に示すように、まずテーパ面52と小径部51との境界がスタッドボルト31の軸部34に瞬間的に当接する。その後、防振ゴム32はスタッドボルト31から離れたり、当接したりする運動を繰り返す。ここで、防振ゴム32がスタッドボルト31に当接している場合には、当接する防振ゴム32の面積が小さいことから、空気調和機1の騒音および振動を抑制することができる。
【0029】
なおも振動の振幅が大きくなると、
図5に示すように、テーパ面52の上側の一部がスタッドボルト31の軸部34に面接触した状態となる。これにより、防振ゴム32のばね定数はさらに大きくなる。したがって、圧縮機20の一定以上の振動・変位を抑制することとなり、空気調和機1の大幅な騒音・振動の悪化や破損を防止することができる。その結果、近年の省エネを志向する低回転数での圧縮機20運転や起動・停止を安定的に継続することが可能となる。このように、圧縮機20の振動の周波数や振幅に応じて、テーパ面52とスタッドボルト31との接触面積が変化する。つまり、振動の特性に応じて、防振ゴム32のばね定数が見かけ上変化する。これにより、様々な周波数域に対応して、防振ゴム32と圧縮機20との共振回避と圧縮機の振動・変位の抑制が両立される。その結果、空気調和機1の振動や騒音を低減することができる。
【0030】
さらに、内周面におけるテーパ面52よりも上側の部分(小径部51)は、テーパ面52よりも下側の部分(大径部53)に比べて、スタッドボルト31に近接している。上記構成によれば、例えば空気調和機1の運搬時等に、非常に大きな振幅を伴う振動や衝撃が生じた場合に、テーパ面52よりも上側の部分(小径部51)がスタッドボルト31に接触することで、圧縮機20の変位量を抑制することができる。言い換えれば、スタッドボルト31と脚部22との間に防振ゴム32が介在するため、運搬時に圧縮機20に接続されている配管が外部振動及び衝撃によって損壊する可能性を大きく低減することが可能となる。
【0031】
加えて、防振ゴム32の外周面の上端部(挿入テーパ面41)は、下方から上方に向かうに従って次第に縮径している。上記構成によれば、外周面の上端部(挿入テーパ面41)が次第に縮径していることから、圧縮機20の脚部22を取り付ける際に、脚部22の貫通孔23に防振ゴム32を挿入するに当たって、大きな力を加えなくても、より小さな力で容易に当該防振ゴム32を弾性変形させることができる。これにより、空気調和機1の組立作業の効率性を向上させることができる。
【0032】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、変形凹部43の数は上述の2つに限定されず。1つや3つ以上であってもよい。また、圧縮機20の脚部22の個数は特に限定されず、設計や仕様に応じて適宜設定されてよい。また、テーパ面52が小径部51、又は大径部53に対してなす角度は、圧縮機20の振動特性や運転特性に応じて適宜設定されてよい。
【0033】
<付記>
各実施形態に記載の空気調和機1は、例えば以下のように把握される。
【0034】
(1)第1の態様に係る空気調和機1は、ケーシング10と、前記ケーシング10内に設けられた圧縮機20と、前記圧縮機20を前記ケーシング10に対して支持する支持部30と、を備え、前記支持部30は、前記ケーシング10の底面11に固定され、上方に向かって軸線O方向に延びるスタッドボルト31と、前記圧縮機20を支持し、前記スタッドボルト31を囲うとともに前記軸線Oを中心とする筒状の内周面、及び外周側を向く外周面を有し、前記内周面の下端が前記スタッドボルト31に固定され、前記内周面の下端よりも上側の部分が隙間を介して前記スタッドボルト31を収容する防振ゴム32と、を有し、前記外周面には、前記軸線Oを中心とする円環状をなすとともに内周側に向かって凹むことで前記圧縮機20が取り付けられる取付凹部42が形成され、前記内周面上で前記軸線O方向において前記取付け凹部と重なる位置には、下方から上方に向かうに従って縮径するテーパ面52が形成されている。
【0035】
上記構成によれば、圧縮機20に振動が生じた場合には、振動の周波数や振幅に応じて、テーパ面52とスタッドボルト31との接触面積が変化する。つまり、振動の特性に応じて、防振ゴム32の固有振動数が見かけ上変化する。これにより、様々な周波数域に対応して、防振ゴム32と圧縮機20との共振が回避される。その結果、空気調和機1の振動や騒音を低減することができる。
【0036】
(2)第2の態様に係る空気調和機1は、(1)の空気調和機1であって、前記外周面における前記取付け凹部の下方には、前記軸線Oを中心とする円環状をなすとともに内周側に向かって凹む変形凹部43が形成されている。
【0037】
上記構成によれば、圧縮機20に軸線O方向の振動が生じた場合には、変形凹部43が軸線O方向両側からつぶれるように弾性変形する。これにより、当該振動を防振ゴム32によって吸収することができる。
【0038】
(3)第3の態様に係る空気調和機1は、(2)の空気調和機1であって、前記軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の前記変形凹部43が形成され、上方に位置する前記変形凹部43になるに従って、径方向の凹みが大きくなる。
【0039】
上記構成によれば、上方に位置する変形凹部43になるほど、つまり、振動源である圧縮機20に近い変形凹部43ほど、径方向の凹みが大きい。つまり、変形凹部43としてのばね定数を小さくすることができる。したがって、防振ゴム32が実質的に柔らかくなるため、上下方向の振動をより積極的に吸収することが可能となる。
【0040】
(4)第4の態様に係る空気調和機1は、(1)から(3)のいずれか一態様に係る空気調和機1であって、前記内周面における前記テーパ面52よりも上側の部分は、前記テーパ面52よりも下側の部分に比べて、前記スタッドボルト31に近接している。
【0041】
上記構成によれば、例えば空気調和機1の運搬時等に、非常に大きな振幅を伴う振動が生じた場合に、テーパ面52よりも上側の部分が優先的にスタッドボルト31に接触することで、当該振動を効果的に吸収することができる。
【0042】
(5)第5の態様に係る空気調和機1は、(1)から(4)のいずれか一態様に係る空気調和機1であって、前記内周面における前記テーパ面52よりも下側の部分は、前記軸線O方向の全域にわたって前記スタッドボルト31との離間距離が一定である。
【0043】
上記構成によれば、テーパ面52よりも下側の部分がスタッドボルト31と一定の離間距離のもとで隙間をあけて対向した状態となる。これにより、圧縮機20の振動がスタッドボルト31に直接的に伝わってしまう可能性を低減することができる。その結果、ケーシング10に振動が伝播せず、騒音をさらに低減することが可能となる。
【0044】
(6)第6の態様に係る空気調和機1は、(1)から(5)のいずれか一態様に係る空気調和機1であって、前記外周面の上端部は、下方から上方に向かうに従って次第に縮径している。
【0045】
上記構成によれば、外周面の上端部が次第に縮径していることから、圧縮機20の脚部22を取り付ける際に、より容易に防振ゴム32を弾性変形させることができる。これにより、空気調和機1の組立作業の効率性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…空気調和機
10…ケーシング
11…底面
12…開口部
20…圧縮機
21…圧縮機本体
22…脚部
23…貫通孔
30…支持部
31…スタッドボルト
32…防振ゴム
33…頭部
34…軸部
41…挿入テーパ面
42…取付凹部
43a…変形凹部
43b…変形凹部
44…縮径部
51…小径部
52…テーパ面
53…大径部
54…固定部
O…軸線