(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039881
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】遮音構造体
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144587
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】野上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】安部 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】岡部 俊一
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA40
5D061BB40
5D061DD02
(57)【要約】
【課題】高い遮音性能を有し、かつ、採光性を有する遮音構造体を提供する。
【解決手段】開口部10を有する本体部1と、開口部10を閉塞するように取り付けられ、凹凸構造20を有し、採光性を有する遮音パネル2とを備える、遮音構造体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する本体部と、
前記開口部を閉塞するように取り付けられ、凹凸構造を有し、採光性を有する遮音パネルとを備える、遮音構造体。
【請求項2】
前記本体部における前記開口部の占める面積は、5%以上80%以下である、請求項1に記載の遮音構造体。
【請求項3】
前記遮音パネルは、ボルト及びナットにより前記開口部に取り付けられており、1Nm以上の締め付けトルクにより前記開口部に取り付けられている、請求項1又は2に記載の遮音構造体。
【請求項4】
前記遮音パネルは、接着層により前記開口部に取り付けられており、JIS K 6849:1994に準拠する前記接着層による前記遮音パネルと前記開口部との引張接着強さが1N/mm2以上である、請求項1又は2に記載の遮音構造体。
【請求項5】
前記本体部は、鋼板、コンクリート板、セラミック板、石膏板及びFRP板の少なくともいずれかにより構成される、請求項1又は2に記載の遮音構造体。
【請求項6】
前記遮音パネルは、樹脂板及びガラス板の少なくともいずれかにより構成される、請求項1又は2に記載の遮音構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物における室内環境を向上させるために、区画間を仕切る仕切り部において騒音を遮る性能の要求が増している。建築物における区画間を仕切る仕切り部において、騒音を遮る遮音性能の指標として、音響透過損失がある。音響透過損失は、仕切り部に配置された遮音構造体への入射音に対する透過音のエネルギーの低減量を表し、値が大きいほど遮音性能が高いことを示す。
音響透過損失は、遮音構造体の遮音パネルに採用された材質が均質単板材料の場合、基本的に質量で決定され、特に遮音パネルの1次共振周波数付近で値が低下する特性を示す。また、遮音パネルに採用された材質が均質単板材料の場合、1次共振周波数よりも低周波数域では剛性則領域と呼ばれ、1次共振周波数よりも高周波数域では共振領域と呼ばれ、共振領域よりも高周波数域では質量則領域と呼ばれ、各周波数領域でそれぞれ特性を示す。剛性則領域では、遮音パネルに採用された材質の剛性と、遮音パネルの境界の剛性条件が音響透過損失に影響し、剛性を向上させることで音響透過損失が大きくなる性質がある。共振領域では、透過音のエネルギーによる遮音パネルの振動モードの共振が音響透過損失に影響し、遮音パネルの振動モードにより音響透過損失にピークやディップが生じる。質量則領域では、遮音パネルに採用された材質の質量が大きいほど音響透過損失が大きくなる性質があり、遮音パネルの屈曲振動に起因するコインシデンス効果の影響により特定の周波数付近で音響透過損失が小さくなる性質がある。
【0003】
建築物の区画間を仕切る仕切り部に配置される遮音構造体の遮音パネルとして、例えば、均質単板材料であるアルミ板を採用した場合、アルミ板は、質量(面密度)を増すことで可聴域の遮音性能を向上させることができる。しかし、アルミ板等で質量(面密度)の大きいものを遮音パネルに採用した場合、可聴域の遮音性能を向上させることができる反面、採光性を確保できないという欠点が生じる。つまり、従来の遮音構造体は厚く質量(面密度)が大きいため遮音性能が高い一方で採光性を確保できないという課題がある。そこで、採光性を確保するために、全面が透光性を有する遮音パネルとする遮音構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、全面が透光性を有する遮音パネルである遮音構造体とした場合、コストがかかり、遮音性能が低くなるという問題がある。また、遮音構造体の遮音パネルの剛性が低くなり、割れやすいという問題もある。
【0006】
上記のような事情に鑑み、本発明は、高い遮音性能を有し、かつ、採光性を有する遮音構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、遮音構造体の遮音パネルにおいて、特定の形状及び採光性を有する材質のものを採用することで、高い遮音性能を有し、かつ、採光性を有する遮音構造体とすることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]開口部を有する本体部と、前記開口部を閉塞するように取り付けられ、凹凸構造を有し、採光性を有する遮音パネルとを備える、遮音構造体。
[2]前記本体部における前記開口部の占める面積は、5%以上80%以下である、[1]に記載の遮音構造体。
[3]前記遮音パネルは、ボルト及びナットにより前記開口部に取り付けられており、1Nm以上の締め付けトルクにより前記開口部に取り付けられている、[1]又は[2]に記載の遮音構造体。
[4]前記遮音パネルは、接着層により前記開口部に取り付けられており、JIS K 6849:1994に準拠する前記接着層による前記遮音パネルと前記開口部との引張接着強さが1N/mm2以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の遮音構造体。
[5]前記本体部は、鋼板、コンクリート板、セラミック板、石膏板及びFRP板の少なくともいずれかにより構成される、[1]~[4]のいずれかに記載の遮音構造体。
[6]前記遮音パネルは、樹脂板及びガラス板の少なくともいずれかにより構成される、[1]~[5]のいずれかに記載の遮音構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い遮音性能を有し、かつ、採光性を有する遮音構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る遮音構造体の断面図であり、
図1(b)は、本発明の第1の実施形態に係る遮音構造体の平面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る遮音パネルの平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のA-A線における断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る遮音パネルの凹凸構造の様々な形態を示す断面図(その1)である。
【
図4】本発明の実施形態に係る遮音パネルの凹凸構造の様々な形態を示す断面図(その2)である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る遮音構造体の断面図である。
【
図6】実施例1~6に係る遮音パネルの周波数ごとに面密度から計算した質量則を減算した結果を示すグラフである。
【
図7】比較例1~3に係る遮音パネルの周波数ごとに面密度から計算した質量則を減算した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る遮音構造体は、
図1(a)に示すように、区画間(第1の区画Aと、第2の区画B)を仕切る部材である。本発明の第1の実施形態に係る遮音構造体は、住居等の建築物において部屋を仕切る部材として使用することができ、また、高速道路防音壁等の空間を仕切る部材として使用することもできる。
本発明の第1の実施形態に係る遮音構造体は、
図1(a)及び(b)に示すように、開口部10を有する本体部1と、開口部1を閉塞するように取り付けられ、凹凸構造20を有し、採光性を有する遮音パネル2とを備える。
【0012】
本体部1に設けられる開口部10は、例えば、矩形、円形、楕円形、又は、これらに近似する形状を有すればよい。本体部1に設けられる開口部10は、効率的に採光できるようにする観点から、遮音構造体の上部付近及び中央付近に設けられることが好ましい。
【0013】
本体部1における開口部10の占める面積は、5%以上80%以下であることが好ましく、10%以上75%以下であることがより好ましく、15%以上70%以下であることがさらに好ましい。本体部1における開口部10の占める面積が上記下限値以上であることで、遮音構造体の採光性を確保することができる。また、本体部1における開口部10の占める面積が上記上限値以下であることで、遮音構造体の剛性を維持することができる。
【0014】
本体部1の曲げ剛性は、5Nm2以上であることが好ましく、150Nm2以上であることがより好ましく、700Nm2以上であることがさらに好ましい。本体部1の曲げ剛性が上記下限値以上であることで、遮音構造体の剛性を維持することができる。
なお、本体部1の曲げ剛性は、以下に示す式(1)により算出することができる。
曲げ剛性[Nm2]=(引張弾性率×本体部の厚みの3乗)/12 …(1)
【0015】
本体部1の引張弾性率は、0.2GPa以上であることが好ましく、2GPa以上であることがより好ましく、20GPa以上であることがさらに好ましい。凹凸構造20の引張弾性率の上限は特に限定されないが、1,000GPaが実質的な上限である。本体部1の引張弾性率が上記下限値以上であることで、弾性伸縮変形が抑制され、遮音構造体の剛性を維持することができる。
なお、本体部1の引張弾性率は、JIS K 7161-1:2014に準ずる方法により測定することができる。
【0016】
本体部1の厚みは、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。本体部1の厚みが上記下限値以上であることで、遮音構造体の剛性を維持することができ、かつ、遮音性を有することができる。
【0017】
本体部1の材質は、遮音構造体の剛性を維持することができ、かつ、遮音性を有するものであれば特に限定はない。
本体部1の材質としては、例えば、鋼板、コンクリート板、セラミック板、石膏板及びFRP板等が挙げられる。
【0018】
遮音パネル2は、採光性を有することで、区画間(第1の区画Aと、第2の区画B)を可視光が透過し、第1の区画A及び第2の区画Bに可視光を取り入れて、第1の区画A及び第2の区画Bのそれぞれを明るくすることができる。
遮音パネル2の採光性は可視光透過率によって評価される。可視光透過率とは、人間の目に光として感知できる電磁波が、透過する割合のことをいう。
【0019】
遮音パネル2の全光線透過率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。遮音パネル2の全光線透過率が上記下限値以上であることで、遮音パネル2の採光性を確保することができる。
なお、遮音パネル2の全光線透過率は、JIS K 7375:2008に準拠して測定することができる。
【0020】
遮音パネル2の凹凸構造20の凹凸形状とは、遮音パネル2の一方の面2A側、またはその逆の面2B側に突出し、内部が空洞の形状をいい、例えば、
図2(a)及び(b)に示すように、湾曲面からなる半球形状をいう。凹凸構造20は、全体として凹凸形状であればよく、完全に曲面である必要はなく多面体で構成されていてもよいし、局所的に凹部、平面部があってもよい。
凹凸構造20の凹凸形状としては、例えば、
図3(a)に示すように、曲率が高い曲面部からなる半球形状の凹凸構造20aであってもよく、
図3(b)に示すように、同じ凹凸構造20bが複数であってもよく、
図3(c)に示すように、異なる凹凸構造20c,20d,20eが設けられてもよい。また、凹凸構造20の凹凸形状としては、例えば、
図4(a)に示すように、平面部からなるピラミッド形状の凹凸構造20fであってもよく、
図4(b)に示すように、平面部からなる多面体形状の凹凸構造20gであってもよく、
図4(c)に示すように、曲面部と平面部が混在する凹凸構造20hであってもよい。
【0021】
遮音パネル2の厚みTは、0.1mm以上20mm以下であることが好ましく、0.5mm以上10mm以下であることがより好ましく、1mm以上5mm以下であることがさらに好ましい。遮音パネル2の厚みTが上記範囲内であることで、機械的剛性を有しつつ、軽量化に寄与し、透過音のエネルギーを効率よく振動を誘起させるエネルギーに変換することができる。
【0022】
遮音パネル2の引張弾性率は、0.1GPa以上であることが好ましく、1GPa以上であることがより好ましく、10GPa以上であることがさらに好ましい。遮音パネル2の引張弾性率の上限は特に限定されないが、1,000GPaが実質的な上限である。遮音パネル2の引張弾性率が上記下限値以上であることで、遮音パネル2の弾性伸縮変形が抑制され、透過音のエネルギーを効率よく振動を誘起させるエネルギーに変換することができる。
なお、遮音パネル2の引張弾性率は、JIS K 7161-1:2014に準ずる方法により測定することができる。
【0023】
遮音パネル2の1次共振周波数は、100Hz以上であることが好ましく、300Hz以上であることがより好ましく、500Hz以上であることがさらに好ましい。
なお、遮音パネル1の面外振動の1次共振周波数は、JIS C 60068-2-81:2007に準ずる方法により測定することができる。
【0024】
凹凸構造20の高さHは、0.01m以上1.00m以下であることが好ましく、0.03m以上0.50m以下であることがより好ましく、0.05m以上0.30m以下であることがさらに好ましい。凹凸構造20の高さHが上記範囲内であることで、凹凸構造20の剛性を維持することができる。
なお、凹凸構造20の高さHとは、凹凸構造20の最も低い部分から最も高い部分の高さをいい、具体的には、凹凸構造20の一番低い箇所(例えば、凹部底部)から凹凸構造20の一番高い箇所(例えば、凸部頂部)の高さをいう。凹凸構造20が複数である場合は、最も大きい値となる高さHを採用する。
【0025】
遮音パネル2の密度は、200kg/m3以上12,000kg/m3以下であることが好ましく、400kg/m3以上8,000kg/m3以下であることがより好ましく、600kg/m3以上4,000kg/m3以下であることがさらに好ましい。遮音パネル2の密度が上記範囲内であることで、機械的剛性を有しつつ、軽量化に寄与することができる。
なお、遮音パネル2の密度は、JIS Z 8807:2012に準ずる方法により測定することができる。
【0026】
遮音パネル2の材質は、採光性及び機械的剛性を有しつつ、遮音性能を向上させるために空気を通さないものであれば特に限定はない。
遮音パネル2の材質としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂及びエポキシ樹脂等の少なくともいずれか1種を含む樹脂板などの有機材料が挙げられる。また、遮音パネル2としては、例えば、ガラス板などの無機材料が挙げられる。
【0027】
遮音パネル2は、
図1(a)及び(b)に示すように、ボルト30及びナット31により開口部10に取り付けられる構成とすることができる。ボルト30及びナット31は、遮音パネル2の固定強度を向上させるために、ワッシャー等の治具32を遮音パネル2との間に介在させることが好ましい。
遮音パネル2は、1Nm以上の締め付けトルクにより開口部10に取り付けられていることが好ましく、5Nm以上の締め付けトルクであることがより好ましく、10Nm以上の締め付けトルクであることがさらに好ましい。遮音パネル2が上記下限値以上の締め付けトルクで開口部10に取り付けられていることで、遮音パネル2の1次共振周波数を本体部1より高くすることができ、遮音性能を向上させることができる。
【0028】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、
図5に示すように、遮音パネル2が接着層33によって開口部10に取り付けられている点である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0029】
遮音パネル2を開口部10に取り付ける接着層33は、遮音パネル2を接着層33に接着させることが可能な接着性を有するものであれば特に限定されない。接着層を構成する接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤、熱硬化性接着剤、紫外線硬化性接着剤及び湿気硬化型接着剤等が挙げられる。
【0030】
JIS K 6849:1994に準拠する接着層33による遮音パネル2と開口部10との引張接着強さは、1N/mm2以上であることが好ましく、5N/mm2以上であることがより好ましく、10N/mm2以上であることがさらに好ましい。遮音パネル2が上記下限値以上の引張接着強さで開口部10に取り付けられていることで、遮音パネル2の1次共振周波数を本体部1より高くすることができ、遮音性能を向上させることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
例えば、第1の実施形態の遮音構造体は、遮音パネル2が、ボルト30及びナット31により開口部10に取り付けられると示したが、第2の実施形態で示した接着層33を併用して固定強度を強化してもよい。
【実施例0032】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0033】
(音響透過損失の測定)
JIS A 1441-1:2007に準拠して、実施例及び比較例に係る遮音構造体の音響透過損失を算出した。具体的には、残響室(第1の区画A)と無響室(第2の区画B)との区画間を仕切る仕切り部に切り抜き箇所(0.8m×0.8m)を形成し、切り抜き箇所に遮音構造体(鋼板、厚み6mm、曲げ剛性3708Nm
2、引張弾性率206GPa)を設置した。遮音構造体の中央には開口部(0.4m×0.4m)が設けられ、開口部には実施例及び比較例に係る遮音パネル(0.42m×0.42m)を、ボルト、ナット及び治具を用いて5Nmの締め付けトルクにより開口部に取り付けた。なお、遮音パネルに凹凸構造を有するものは凸部が残響室側となるように配置した。残響室においてスピーカーから100dBのノイズを発生させ、残響室における平均音圧レベルおよび無響室の実施例及び比較例に係る遮音構造体から10cm離れた地点での音響インテンシティをそれぞれ測定し、1/3オクターブバンドごとの音響透過損失を算出した。算出した1/3オクターブバンドごとの音響透過損失から、周波数ごとに面密度から計算した質量則を減算した結果を
図6、
図7のグラフに示す。
【0034】
(全光線透過率の測定)
実施例及び比較例に係る遮音構造体に使用した遮音パネルの全光線透過率をJIS K 7375:2008に準拠して測定した。
【0035】
[実施例1]
曲面部からなる単数の半球形状の凹凸構造20を有する遮音パネル1(
図2(a)参照)としてドームガラス(商品名「透明ガラス」、日本電子工業株式会社製、縦0.42m×横0.42m×高さ0.05m×厚み2mm、)を採用した。実施例1に係る遮音パネルの面密度、引張弾性率、1次共振周波数、及び、全光線透過率を測定した結果を表1に示す。
【0036】
[実施例2]
曲面部からなる単数の半球形状の凹凸構造20を有する遮音パネル1(
図2(a)参照)としてドームポリプロピレン(ポリプロピレン樹脂、商品名「ポリプロピレン樹脂」、KDA社製、縦0.42m×横0.42m×高さ0.05m×厚み2mm、引張強度0.041GPa、破断時伸び100%)を採用した。実施例2に係る遮音パネルの面密度、引張弾性率、1次共振周波数、及び、全光線透過率を測定した結果を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
曲面部からなる単数の半球形状の凹凸構造20を有する遮音パネル1(
図2(a)参照)としてドーム塩化ビニル(塩化ビニル樹脂、商品名「硬質塩化ビニル樹脂」、KDA社製、縦0.42m×横0.42m×高さ0.05m×厚み2mm、引張強度0.052GPa、破断時伸び40%)を採用した。実施例3に係る遮音パネルの面密度、引張弾性率、1次共振周波数、及び、全光線透過率を測定した結果を表1に示す。
【0038】
[実施例4]
曲面部からなる単数の半球形状の凹凸構造20を有する遮音パネル1(
図2(a)参照)としてドームアクリル(アクリル樹脂、商品名「アクリル樹脂」、KDA社製、縦0.42m×横0.42m×高さ0.05m×厚み2mm、引張強度0.073GPa、破断時伸び2%)を採用した。実施例4に係る遮音パネルの面密度、引張弾性率、1次共振周波数、及び、全光線透過率を測定した結果を表1に示す。
【0039】
[実施例5]
曲面部からなる単数の半球形状の凹凸構造20を有する遮音パネル1(
図2(a)参照)としてドームポリカーボネート(ポリカーボネート樹脂、商品名「ポリカーボネート樹脂」、KDA社製、縦0.42m×横0.42m×高さ0.05m×厚み2mm、引張強度0.066GPa、破断時伸び110%)を採用した。実施例5に係る遮音パネルの面密度、引張弾性率、1次共振周波数、及び、全光線透過率を測定した結果を表1に示す。
【0040】
[実施例6]
曲面部からなる単数の半球形状の凹凸構造20を有する遮音パネル1(
図2(a)参照)としてドームエポキシ(エポキシ樹脂、商品名「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」、KDA社製、縦0.42m×横0.42m×高さ0.05m×厚み2mm、引張強度0.040GPa、破断時伸び16%)を採用した。実施例6に係る遮音パネルの面密度、引張弾性率、1次共振周波数、及び、全光線透過率を測定した結果を表1に示す。
【0041】
[比較例1]
遮音パネルとしてアルミ平板(商品名「A5052」、志摩鋼業社製、縦0.42m×横0.42m×厚み2mm)を採用した。比較例1に係る遮音パネルの面密度、引張弾性率、1次共振周波数、及び、全光線透過率を測定した結果を表1に示す。
【0042】
[比較例2]
遮音パネルとしてアクリル平板(アクリル樹脂、商品名「アクリル樹脂」、KDA社製、0.42m×横0.42m×厚み2mm、引張強度0.073GPa、破断時伸び2%)を採用した。比較例2に係る遮音パネルの面密度、引張弾性率、1次共振周波数、及び、全光線透過率を測定した結果を表1に示す。
【0043】
[比較例3]
遮音パネルとしてポリカーボネート平板(ポリカーボネート樹脂、商品名「ポリカーボネート樹脂」、KDA社製、縦0.42m×横0.42m×厚み2mm、引張強度0.066GPa、破断時伸び110%)を採用した。比較例3に係る遮音パネルの面密度、引張弾性率、1次共振周波数、及び、全光線透過率を測定した結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
図6,
図7に示したグラフより、凹凸構造を有する遮音パネルを遮音構造体に設置することで、透過音のエネルギー消費を増大させることが可能となり、全周波数域、特に低周波域(100~400Hz)での遮音性能の落ち込みを改善することができた。また、採光性を有する遮音パネルを遮音構造体に設置することで、遮音構造体の採光性を確保することができた。