(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000399
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】連結機構
(51)【国際特許分類】
F16L 27/12 20060101AFI20231225BHJP
F16L 21/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
F16L27/12 B
F16L21/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099154
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】武田 悟
【テーマコード(参考)】
3H015
3H104
【Fターム(参考)】
3H015BA02
3H015BB05
3H015BC01
3H015CA02
3H104JA07
3H104JA08
3H104JB01
3H104LB36
3H104LG30
3H104MA10
(57)【要約】
【課題】密封部材の摩耗を抑止可能な連結機構を提供する。
【解決手段】軸方向に相対移動可能に嵌合される一対の管路構成部材3,6と、一方の管路構成部材6側に設けられている密封部材20と、を備える連結機構10であって、密封部材20近傍に滑剤を供給する供給空間S1が設けられており、一対の管路構成部材3,6同士の相対移動によって、供給空間S1内の滑剤が他方の管路構成部材3の表面3aに供給されるようになっている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に相対移動可能に嵌合される一対の管路構成部材と、一方の管路構成部材側に設けられている密封部材と、を備える連結機構であって、
前記密封部材近傍に滑剤を供給する供給空間が設けられており、前記一対の管路構成部材同士の相対移動によって、前記供給空間内の滑剤が他方の管路構成部材表面に供給されるようになっていることを特徴とする連結機構。
【請求項2】
前記供給空間は、前記密封部材と、該密封部材の外側に配置されているシール部材との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結機構。
【請求項3】
前記供給空間を画成する取付部材を有し、
前記取付部材には、前記シール部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の連結機構。
【請求項4】
前記取付部材は、分割構造であることを特徴とする請求項3に記載の連結機構。
【請求項5】
前記供給空間は、前記他方の管路構成部材表面に環状に面していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の連結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の管路構成部材を相対移動可能かつ密封状に連結可能な連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
水やガス等が流れる管路を構成する管路構成部材と、他の管路構成部材とを内外に嵌合して連結する連結機構がある。このような連結機構には、一対の管路構成部材同士の相対移動を許容しつつ密封状に連結できるものもある。
【0003】
例えば、特許文献1の連結機構は、一方の管路構成部材としてのソケット継手と、他方の管路構成部材としての流体管と、密封部材から構成されている。密封部材は、ソケット継手の内周面より外径方向に凹設されている溝内に配置されている。この連結機構は、溝内に密封部材を配置した状態で、ソケット継手における受口部内に流体管を挿入することで、ソケット継手と流体管の相対移動を許容しつつ密封状に連結することができる。
【0004】
また、特許文献2の連結機構のように、一方の管路構成部材としてのカバーと、他方の管路構成部材としての伸縮可撓管と、伸縮可撓管とカバーの間に配置される密封部材と、密封部材をカバーに向かって押圧するための押輪から構成されているものもある。カバーは、伸縮可撓管において伸縮可撓可能に設けられている伸縮可撓部に漏洩等が生じた場合に、伸縮可撓部を囲繞するためのものである。この連結機構は、伸縮可撓部をカバーにて囲繞し、押輪によって密封部材をカバーと伸縮可撓管にそれぞれ圧着させることで、伸縮可撓管とカバーの相対移動を許容しつつ密封状に連結することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-270883号公報(第4,5頁、第2図)
【特許文献2】特開2004-116708号公報(第4,5頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1,2の連結機構にあっては、流体管や伸縮可撓管が密封部材に摺接しながら相対移動可能であるため、これら管に熱伸縮が生じた場合には、密封状態を保ちつつ熱伸縮を許容することが可能となっている。しかしながら、これら管が密封部材に対して密接摺動することで生じる摩擦により、密封部材が摩耗し、漏洩の要因となる虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、密封部材の摩耗を抑止可能な連結機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の連結機構は、
軸方向に相対移動可能に嵌合される一対の管路構成部材と、一方の管路構成部材側に設けられている密封部材と、を備える連結機構であって、
前記密封部材近傍に滑剤を供給する供給空間が設けられており、前記一対の管路構成部材同士の相対移動によって、前記供給空間内の滑剤が他方の管路構成部材表面に供給されるようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、一対の管路構成部材同士の相対移動において、密封部材と密接摺動する相手面に滑剤を供給することが可能となる。これにより、他方の管路構成部材と密封部材との密接摺動により生じる摩擦力を軽減することができるため、相対移動に起因する密封部材の摩耗を抑止することができる。
【0009】
前記供給空間は、前記密封部材と、該密封部材の外側に配置されているシール部材との間に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、滑剤の漏出を防止することができる。
【0010】
前記供給空間を画成する取付部材を有し、
前記取付部材には、前記シール部材が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、既存の管路構成部材であっても、供給空間を配置することができる。
【0011】
前記取付部材は、分割構造であることを特徴としている。
この特徴によれば、取付部材を分割することで滑剤を充填することができる。
【0012】
前記供給空間は、前記他方の管路構成部材表面に環状に面していることを特徴としている。
この特徴によれば、密封部材を全周に亘って確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1における連結機構が適用されている流体管路を示す正面図である。
【
図2】連結機構が用いられている流体管路を軸方向から見た図である。
【
図3】(a)は押輪を構成する分割体を軸方向から見たであり、(b)は(a)におけるA矢視図であり、(c)は(a)におけるB-B断面図であり、(d)は(a)におけるC-C断面図である。
【
図4】(a)は滑剤充填金具を構成する分割体を軸方向から見たであり、(b)は(a)におけるD矢視図であり、(c)は(a)におけるE-E断面図であり、(d)は(a)におけるF-F断面図である。
【
図5】(a)はゴム材及びゴム板が設けられた滑剤充填金具を構成する分割体を軸方向から見た図であり、(b)は(a)におけるH矢視図である。
【
図6】連結機構を用いた連結方法について説明するための図である。
【
図7】連結機構を用いた連結方法について説明するための図である。
【
図8】滑剤充填金具にハケが適用されている形態を示す図である。
【
図9】滑剤充填金具にヒレが適用されている形態を示す図である。
【
図10】連結機構の機能について説明するための図である。
【
図11】連結機構の機能について説明するための図である。
【
図12】実施例2における連結機構が適用されているフランジアダプタを示す正面図である。
【
図13】実施例2における連結機構が適用されているフランジアダプタを軸方向から見た図である。
【
図14】実施例3における連結機構が適用されている伸縮可撓管を示す正面図である。
【
図15】実施例4における連結機構を示す正面図である。
【
図16】実施例5における連結機構を用いて受口と挿口を連結している状況を示す正面図である。
【
図17】実施例5における連結機構を用いて受口と挿口を連結している状況を軸方向から見た図である。
【
図18】実施例6における連結機構を用いて受口と挿口を連結している状況を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る連結機構を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例1に係る連結機構につき、
図1から
図11を参照して説明する。
図1を参照して、流体管路1は、複数のベローズ管2,2’及びこれらに隣接する流体管を互いに接続することにより構成されている。なお、流体管路1内の流体は、本実施例では上水であるが、これに限らず例えば、工業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。また、ベローズ管2’はベローズ管2の向きを入れ替えたものであるため構成は略同一である。そのため、特に断らない限り、ベローズ管2を例示して説明する。
【0016】
本実施例におけるベローズ管2は、軸方向一方側の管部材3と他方側の管部材4がベローズ部材5を介して密封状に接続されて構成されている。これにより、管部材3,4は、ベローズ部材5が伸縮変形や可撓変形可能であることを利用して、管軸方向に相対移動可能かつ管軸方向に対して相対傾動可能となっている。なお、ベローズ管2は周知のベローズ管であるため、その詳細な説明や図示を省略する。
【0017】
ベローズ管2における管部材3,4は、ダクタイル鋳鉄管であって、断面視略円筒状に形成されている。なお、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらになお、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0018】
また、流体管路1において連接されている2つのベローズ管2,2’には、漏洩の予防若しくは補修を目的として、カバー6が密封且つ遊嵌状に囲繞されている。本実施例の連結機構10,10’は、ベローズ管2,2’における管部材3,3を、カバー6に対して軸方向に相対移動可能かつ密封状に連結するものである。カバー6は、少なくとも周方向に分割構造を有し、ベローズ管2,2’の伸縮可撓性を許容した状態で、これらベローズ管2,2’に密封状に外嵌している。なお、連結機構10’は連結機構10の向きを入れ替えたものであるため構成は略同一である。そのため、特に断らない限り、ベローズ管2側に取り付けられる連結機構10を例示して説明する。
【0019】
図1,
図2に示されるように、連結機構10は、一方の管路構成部材としてのカバー6と、他方の管路構成部材としての管部材3と、密封部材としてのシールリング20と、取付部材としての押輪30と、取付部材としての滑剤充填金具40から主に構成されている。なお、
図2では、部材の境界を明確にするべく、押輪30に網掛けを付している。
【0020】
カバー6は、段付き円筒状に形成された中空状の部材であり、半割にされている一対の分割体同士を締結部材F(
図2参照)で密封状に組付けることで構成されている。また、カバー6は、軸方向端にフランジ状の側壁6aを有している。
【0021】
また、
図6に示されるように、側壁6aにおける内径側には、側壁6a外面から軸方向内側に向かって軸方向に延びる環状の内周面6bと、内周面6bの軸方向端から内径側に傾斜して延びる環状の傾斜面6cが形成されている。なお、本実施例において、外側内側とは、カバー6を基準としてカバー6よりも外方が外側であり、ベローズ部材5が配置される空間側が内側である。
【0022】
図2に示されるように、押輪30は、カバー6の側壁6aに接続されることで管部材3に外装される環状の部材であり、半割にされている分割体31,31から構成されている。
【0023】
図3に示されるように、各分割体31は、軸方向から見て半円弧状に形成されている平板状の基部32(
図3(a)参照)と、この基部32の周方向端に溶接等で一体に設けられ、軸方向の一方に突出形成されている接続部33,34(
図3(b)参照)を有している。
【0024】
図3(b)~(d)に示されるように、基部32における内径側には、接続部33,34側に向かって軸方向に延びる半円弧状の内周面32aと、内周面32aの軸方向端から内径側に傾斜して延びる半円弧状の傾斜面32bが形成されている。
【0025】
図3(a)(c)(d)に示されるように、基部32における外径側には、軸方向、すなわち基部32における厚み方向に延びる雌ネジ穴32c(
図3(c)参照)と、厚み方向に貫通する貫通孔32d(
図3(d)参照)が形成されている。本実施例において、雌ネジ穴32cは周方向1時側と同11時側の2カ所に形成されており、貫通孔32dは6等配されている。なお、雌ネジ穴32cは、周方向1時側と同11時側の2カ所に限られず、その数、配置については適宜変更されてもよい。これは貫通孔32dについても同様である。
【0026】
接続部33は、直角三角形状に形成されている側が内径側に配置され、矩形状に形成されている側が基部32よりも外径側に突出している。すなわち、接続部33における傾斜面33aは基部32と軸方向に重なる部分に配置されている。また、基部32よりも外径側に突出している部分には、基部32における外周面の法線方向、すなわち接続部33における厚み方向に貫通する貫通孔33bが配置されている。
【0027】
接続部34は、接続部33と同様に、基部32と軸方向に重なる部分に傾斜面34aが配置されており、基部32よりも外径側に突出する部分に貫通孔34bが配置されている。
【0028】
図2,
図5に示されるように、滑剤充填金具40は、押輪30に接続されることで管部材3に外装される環状の部材であり、半割にされている分割体41,41(
図2参照)と、シール部材としてのゴム材50,50(
図5参照)と、シール部材としてのゴム板51,51(
図5参照)から構成されている。
【0029】
図4に示されるように、分割体41は、軸方向から見て半円弧状に湾曲形成されている曲板状の基部42(
図4(a)参照)と、この基部42の周方向端に溶接等で一体に設けられている平板状の接続部43,44(
図4(b)参照)と、基部42の湾曲外面に溶接等で一体に設けられている平板状の押輪接続部45,45(
図4(a)参照)を有している。
【0030】
図4(b)~(d)に示されるように、基部42における内径側には、周方向に亘って延びる幅広溝42aと、周方向に亘って延びる幅狭溝42bが軸方向に並設されている。
【0031】
幅広溝42a及び幅狭溝42bは、基部42における内周面より外径側に凹設され、内径側に開放されている。また、幅広溝42aにおける軸方向寸法は、幅狭溝42bにおける軸方向寸法よりも長寸、すなわち幅広となっている。
【0032】
図5(b)に示されるように、幅広溝42a内には、潤滑剤としてのグリースGが充填される。グリースGは粘性が高く流動性の低い滑剤である。なお、幅広溝42aのようにグリースGが充填される充填部は、グリースGが十分に充填される寸法であれば、幅狭溝42bと同等若しくは幅狭の溝であってもよく、凹部であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0033】
図5(a)(b)に示されるように、幅狭溝42b内にはゴム材50が配置される。ゴム材50は、Oリングを半割にした有端紐状の部材である。
【0034】
図4(a)(b)に示されるように、接続部43における外径側端部には、接続部43の厚み方向に貫通する貫通孔43aが形成されている。
【0035】
接続部44は、接続部43と同様に、外径側端部に貫通孔44aが形成されている。
【0036】
図4(a)(d)に示されるように、押輪接続部45,45は、基部42における外周面の周方向1時側と同11時側の2カ所に溶接固定されており、外径側に突出している(
図4(a)参照)。また、押輪接続部45における外径側端部には、軸方向、すなわち押輪接続部45における厚み方向に貫通する貫通孔45aが形成されている。なお、押輪接続部45,45は、周方向1時側と同11時側の2カ所に限られず、その数、配置については適宜変更されてもよい。
【0037】
また、基部42における一方側の周方向端面、すなわち接続部43側の周方向端面には、その形状に合わせて形成された薄板状のゴム板51が貼着されている。
【0038】
次に、連結機構10による連結方法について説明する。
図2を参照して、まず管部材3を挟んで配置させたカバー6の分割体同士を締結部材Fで締結した後、分割体同士を溶接し、カバー6を管部材3に外装する。または、直接の図示は省略するが、カバー6の分割体同士の間にシール部材を介在させ、これら分割体をボルトとナットで締結することでカバー6を管部材3に外装する。
【0039】
図6に示されるように、管部材3における外周面3aに清掃等の表面仕上げを行った後、グリースGを刷毛で塗布し、ドット柄を付して示される塗布領域G1を形成する。
【0040】
なお、本実施例では、
図6に示されるように、塗布領域G1は、カバー6における傾斜面6cの位置まで及んでいるが、例えばカバー6を外装する前に管部材3の外周面3aを広く塗布する等してベローズ部材5の近傍まで及んでいてもよく、塗布領域G1は適宜変更されてもよい。
【0041】
そして、カバー6の側壁6aの端面に形成されている雌ネジ穴6dに全ネジ60を螺合する。全ネジ60は周方向に12等配される(
図2参照)。なお、全ネジ60は、12等配に限られず、その数、配置については適宜変更されてもよい。
【0042】
図7を参照して、シールリング20、押輪30、滑剤充填金具40の順で組み付ける。これについて詳しくは、まずシールリング20を管部材3における外周面3aに周方向に亘って配置する。
【0043】
次いで、
図2を参照して、押輪30における分割体31,31を、管部材3を挟んで配置し、対向配置される接続部33,34を、それぞれの貫通孔33b,34b(
図3参照)に挿通させたボルトB1とナットN1で締結し、押輪30を管部材3に外装する。
【0044】
そして、押輪30とカバー6における側壁6aを、押輪30における貫通孔32d(
図3参照)に挿通させた全ネジ60とナット61で締結する。これにより、押輪30と側壁6aそれぞれの傾斜面32b(
図3参照),6cによって挟圧されるシールリング20は、傾斜面32b,6cばかりでなく、押輪30と側壁6aそれぞれの内周面30a(
図3参照),6b及び管部材3における外周面3aに圧着される。すなわち、管部材3とカバー6との間がシールリング20によって密封される。
【0045】
図5を参照して、滑剤充填金具40における各分割体41の幅広溝42a内にグリースGを充填し、各分割体41の幅狭溝42b内にゴム材50を挿入する。また、各分割体41における接続部43側の周方向端面にゴム板51を接着剤で貼着する。
【0046】
図2を参照して、分割体41,41を、管部材3を挟んで配置し、対向配置される接続部43,44を、それぞれの貫通孔43a,44a(
図4参照)に挿通させたボルトB2とナットN2で締結し、滑剤充填金具40を管部材3に外装する。グリースGは流動性が低く、液だれしにくいことから、分割体41,41の取り回しが容易である。
【0047】
これにより、幅狭溝42bにおける内周面と、管部材3における外周面3aに各ゴム材50,50が圧着され、密封される。また、各ゴム材50,50同士も互いの周方向端面が圧着され、密封される。さらに、各ゴム板51,51は、自身が貼着されている分割体41とは別の分割体41における接続部44側の周方向端面に圧着され、密封される。
【0048】
そして、滑剤充填金具40を軸方向に移動させて押輪30における軸方向端面に当接させる。このとき、滑剤充填金具40が押輪30における各傾斜面33a,34aによって案内されるため、径方向におけるおおよその位置合わせがなされる。また、滑剤充填金具40を周方向に回動させるにあたって、各接続部33,34に当接することで径方向への大きな位置ずれが防止される。これらにより、滑剤充填金具40における押輪接続部45の貫通孔45a(
図4参照)と、押輪30における雌ネジ穴32c(
図3参照)との位置合わせを容易に行うことができる。
【0049】
その後、滑剤充填金具40と押輪30を、滑剤充填金具40における貫通孔45a(
図4参照)に挿通させたボルト62(
図2参照)を押輪30における雌ネジ穴32c(
図3参照)に螺合させて締結する。
【0050】
このようにして、連結機構10により、カバー6に対して管部材3を軸方向に相対移動可能かつ密封状に連結することができるとともに、シールリング20よりも軸方向外側に、管部材3、押輪30、及びゴム材50,50が設けられている滑剤充填金具40によってグリースGが貯留される供給空間S1(
図7参照)を画成することができる。
【0051】
供給空間S1へのグリースGの貯留について詳しくは、滑剤充填金具40における幅広溝42a,42a内に充填されているグリースGが重力によって鉛直方向へと流動しながら、管部材3の外周面3aに全周に亘り広く接する。また、グリースGは、シールリング20、ゴム材50,50及びゴム板51,51により漏出が防止される。これらにより、グリースGは、シールリング20、押輪30、滑剤充填金具40によって密封状に画成されている供給空間S1に貯留される。
【0052】
なお、滑剤充填金具40を装着し、グリースGを管部材3の外周面3aに全周に亘って軸方向に広く供給するための軸方向導入機構が設けられていてもよい。軸方向導入機構の具体例については、滑剤充填金具40における幅広溝42a内に固定され、管部材3の外周面3aに近接または当接する、軸方向に長尺なハケ、スポンジ、ヒレ等である。
【0053】
このような構成であれば、滑剤充填金具40を装着した直後等、後述するような滑剤充填金具40と管部材3の相対的な軸方向への移動が生じる前や、同移動が僅かであっても、軸方向導入機構を伝わせることで滑剤充填金具40に充填されたグリースGを軸方向に広く導くことができる。さらになお、軸方向導入機構は取付部材に固定されているのであれば、その位置は適宜変更されてもよい。
【0054】
また、グリースGを管部材3の外周面3aに全周に亘って供給するための周方向導入機構が設けられていてもよい。周方向導入機構の具体例については、
図8に示されるように、滑剤充填金具40における幅広溝42a内に固定され、管部材3の外周面3aに近接または当接するように環状に配置されたハケ46であってもよく、
図9に示されるように、同様に配置されたヒレ47であってもよい。
【0055】
このような構成であれば、滑剤充填金具40を装着した直後等、後述するような滑剤充填金具40と管部材3の相対的な軸方向への移動が生じる前や、同移動が僅かであっても、ハケ46、ヒレ47等の周方向導入機構を伝わせることで滑剤充填金具40に充填されたグリースGを周方向に広く導くことができる。加えて、後述するような滑剤充填金具40と、管部材3との相対的な軸方向への移動が生じた場合には、略均一の薄層の厚みでグリースGを全周に亘って塗布することができる。さらになお、周方向導入機構はハケ46、ヒレ47以外に、スポンジ、クロス等であってもよく、適宜変更されてもよい。さらに、周方向導入機構は、取付部材に固定されているのであれば、その位置は適宜変更されてもよい。
【0056】
また、スポンジ、クロス等の浸透手段が供給空間S1内に周方向に亘って、または鉛直方向上方側に配置されていてもよく、このような構成であれば、鉛直方向下方側に貯留される滑剤を浸透手段に浸透させて鉛直方向上方側に導くことができる。すなわち、供給空間S1内に滑剤を充填する頻度を低減することができる。さらになお、浸透手段は、供給空間内に配置されているのであれば、取付部材に固定されていてもよく、他方の管路構成部材に固定されているのであってもよく、所定以上の移動が規制されている状態で配置されていてもよく、その配置は適宜変更されてもよい。
【0057】
なお、押輪30に対して滑剤充填金具40を組み付ける前に、押輪30と管部材3における外周面3aとの間にグリースGを充填してもよい。これは、滑剤充填金具40と外周面3aとの間についても同様であり、このようにグリースGを充填する場合には、分割体41,41を接続する前にグリースGが幅広溝42a内に充填されていなくてもよい。すなわち、供給空間S1へのグリースGの供給方法について適宜変更されてもよい。
【0058】
供給空間S1は、管部材3における外周面3aに対して全周に亘って面しているため、管部材3における外周面3aに全周に亘ってグリースGを付着させて、斜め格子柄を付して示される供給領域G2を形成することができる。
【0059】
次に、ベローズ管2が熱伸縮等により伸縮した場合について説明する。
図7の状態からベローズ管2が収縮すると、
図10にて白抜き矢印で示すように、管部材3はカバー6に対してベローズ部材5側(図示右側)に相対移動する。これにより、管部材3は、その外周面3aがシールリング20、及びゴム材50,50に対し密接しながら軸方向に摺動する。このとき、管部材3における塗布領域G1がゴム材50,50に密接摺動するため、発生する摩擦力が低減される。
【0060】
また、管部材3は、順次供給空間S1を通過することで、その外周面3aにグリースGが付着した後、シールリング20に密接摺動する。言い換えれば、管部材3における供給領域G2がシールリング20に密接摺動するため、発生する摩擦力が低減される。
【0061】
さらに、管部材3がシールリング20に密接摺動することにより、外周面3aに付着したグリースGの大半はシールリング20を通過することなく、すなわちグリースGの大半を供給空間S1内に留めることができる。すなわち、シールリング20を通過した供給領域G2に付着するグリースGの量(厚み)を低減することができる。これにより、供給空間S1内のグリースGが枯渇しにくく、長期にわたりグリースGを使用可能となっている。
【0062】
加えて、シールリング20を通過した後の供給領域G2は、略均一の薄層の厚みでグリースGが全周に亘って塗布された状態となる。すなわち、供給領域G2を拡張することができる。
【0063】
これにより、
図10に示される状態から、管部材3がシールリング20に対してベローズ部材5とは反対側に相対移動する場合にも、管部材3における供給領域G2がシールリング20に密接摺動するため、発生する摩擦力が低減される。
【0064】
また、管部材3は、供給空間S1を通過した後、ゴム材50,50に密接摺動するため、発生する摩擦力が低減される。加えて、ゴム材50,50は、グリースGの大半を供給空間S1内に留めつつ、ゴム材50,50を通過した後の供給領域G2に、略均一の薄層の厚みでグリースGを全周に亘って塗布することができる。
【0065】
図7の状態からベローズ管2が伸長すると、
図11にて白抜き矢印で示すように、管部材3はカバー6に対してベローズ部材5とは反対側(図示左側)に相対移動する。これにより、管部材3は、その外周面3aがシールリング20、及びゴム材50,50に対し密接しながら軸方向に摺動する。このとき、管部材3は、供給空間S1を通過した後、ゴム材50,50に密接摺動するため、発生する摩擦力が低減される。加えて、ゴム材50,50は、グリースGの大半を供給空間S1内に留めつつ、ゴム材50,50を通過した後の供給領域G2に、略均一の薄層の厚みでグリースGを全周に亘って塗布することができる。
【0066】
また、管部材3における塗布領域G1がシールリング20に密接摺動するため、発生する摩擦力が低減される。塗布領域G1よりも外側(ベローズ部材5側)については、管部材3がシールリング20に密接摺動するにあたって、塗布領域G1に塗布されているグリースGが引き延ばされるため、格子柄を付して示す延長領域G3を形成することができる。シールリング20を通過した延長領域G3は、供給空間S1に面してグリースGが供給される供給領域となる。
【0067】
これらにより、
図11に示される状態から、管部材3がシールリング20に対してベローズ部材5側(図示右側)に相対移動する場合にも、管部材3における延長領域G3または供給領域G2がシールリング20に密接摺動するため、管部材3がシールリング20に密接摺動することにより発生する摩擦力が低減される。加えて、シールリング20は、グリースGの大半を供給空間S1内に留めつつ、シールリング20を通過した後の供給領域G2に、略均一の薄層の厚みでグリースGを全周に亘って塗布することができる。
【0068】
また、管部材3における供給領域G2がゴム材50,50に密接摺動するため、発生する摩擦力が低減される。
【0069】
また、シールリング20がカバー6における側壁6a及び押輪30それぞれの内周面よりも内径側に膨出しているため、カバー6に対して管部材3が軸方向に傾動することを許容しつつ、シールリング20が管部材3に追従するように弾性変形することにより密封状態を保つことができる。同様に、ゴム材50,50が滑剤充填金具40における内周面よりも内径側に膨出しているため、カバー6に対して管部材3が軸方向に傾動することを許容しつつ、ゴム材50,50が管部材3に追従するように弾性変形することにより密封状態を保つことができる。これらにより、供給空間S1に貯留されているグリースGを保持することができる。
【0070】
以上説明したように、本実施例の連結機構10は、熱伸縮によって管部材3がカバー6に対して軸方向の両方向に往復動することによって、供給空間S1より管部材3における外周面3aにグリースGを供給して供給領域G2や延長領域G3を更新することができる。これにより、管部材3と、シールリング20やゴム材50,50との相対移動に起因するシールリング20やゴム材50,50の摩耗を抑止することができる。なお、管部材3がカバー6に対して軸方向に相対移動する要因については、地震、車両通行などによる振動等も含まれ、熱伸縮に限定されるものではない。
【0071】
また、滑剤充填金具40はゴム材50,50及びゴム板51を配置して、押輪30を介してカバー6に組付けることにより、供給空間が設けられていない既存のベローズ管2やカバー6であっても、供給空間S1配置することができる。
【0072】
また、滑剤充填金具40は、分割体41,41をボルトB2とナットN2で締結することで構成される分割構造であるため、カバー6に取り付けた後、ボルトB2とナットN2による締結を解除して分割することによって、グリースGを充填することができる。
【0073】
また、供給空間S1は全周に亘り連通し且つ内径側に開放されているため、例えば滑剤充填金具の適所に供給空間に連通する開閉可能な供給口を形成することで、当該供給口を介しグリースGを充填若しくは再充填(グリースアップ)することができる。
【0074】
また、滑剤充填金具40における幅広溝42a内にグリースGを充填することにより、滑剤充填金具40の組付け後に供給空間S1内にグリースGを供給することができるため、供給空間S1に連通する供給口や空気抜き用の排出口を必ずしも設けずともよく、滑剤充填金具40を簡素に構成することができる。
大径管部材102内には、小径管部材103が挿入されて入れ子状に嵌合されている。また、押輪30は、大径管部材102における外径側環状凸部102bと、T頭ボルトB3及びナットN3で締結されており、大径管部材102における内径側環状凸部102aと共にシールリング120を狭圧している。これにより、シールリング120は、大径管部材102と小径管部材103の間を密封している。また、押輪30には、前記実施例1と同様に滑剤充填金具40が取付けられている。
これらシールリング120、押輪30、及びゴム材50,50が設けられている滑剤充填金具40により供給空間S2が画成されている。供給空間S2は小径管部材103における外周面103aに全周に亘って面しているため、全周に亘って外周面103aにグリースGを供給することが可能である。これにより、小径管部材103とシールリング120との密接摺動により生じる摩擦力を軽減することができるため、相対移動に起因するシールリング120の摩耗を抑止することができる。
また、フランジアダプタ101は、大径管部材102及び小径管部材103それぞれの係止片102c,103bの貫通孔に全ネジ104を挿通させて、全ネジ104に螺合されている4つのナット105で各係止片102c,103bを軸方向両側から締め付けることで、フランジアダプタ101の軸方向寸法を所望の寸法で保持することができる。
これにより、フランジアダプタ101は、大径管部材102から小径管部材103が意図せず脱け出すことを防止しつつ、所望の軸方向寸法を保持したまま、接続位置に配置することができる。なお、フランジアダプタ101を配置し、流体管路を構成する流体管に接続するにあたって、全ネジ104及び各ナット105は取外される。