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特開2024-39910ビスコースレーヨン用処理剤、ビスコースレーヨン、ビスコースレーヨン短繊維、及びスパンレース不織布の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039910
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ビスコースレーヨン用処理剤、ビスコースレーヨン、ビスコースレーヨン短繊維、及びスパンレース不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 13/224 20060101AFI20240315BHJP
D06M 13/184 20060101ALI20240315BHJP
D06M 13/152 20060101ALI20240315BHJP
D04H 1/4258 20120101ALI20240315BHJP
D04H 1/492 20120101ALI20240315BHJP
D06M 101/06 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
D06M13/224
D06M13/184
D06M13/152
D04H1/4258
D04H1/492
D06M101:06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144639
(22)【出願日】2022-09-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】市川 敏己
(72)【発明者】
【氏名】大海 卓滋
【テーマコード(参考)】
4L033
4L047
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC09
4L033AC15
4L033BA13
4L033BA16
4L033BA21
4L047AA12
4L047AB02
4L047BA04
(57)【要約】
【課題】水流交絡に使用した水の脱落起泡の低減効果を向上させるとともに、綿臭気の発生を低減できるビスコースレーヨン用処理剤等を提供する。
【解決手段】ビスコースレーヨン用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体、下記の脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに酸化防止剤を含有している。脂肪酸誘導体:炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを1モル以上30モル以下の割合で付加させた化合物、及びエチレングリコールを4モル以上50モル以下重合させた化合物1モルと炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル以上2モル以下とのエステル化合物、から選ばれる少なくとも一つ。脂肪酸:炭素数12以上24以下の脂肪酸。油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の脂肪酸誘導体、下記の脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに酸化防止剤を含有することを特徴とするビスコースレーヨン用処理剤。
脂肪酸誘導体:炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを1モル以上30モル以下の割合で付加させた化合物、及びエチレングリコールを4モル以上50モル以下重合させた化合物1モルと炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル以上2モル以下とのエステル化合物、から選ばれる少なくとも一つ。
脂肪酸:炭素数12以上24以下の脂肪酸。
油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ。
【請求項2】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに前記酸化防止剤の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記脂肪酸誘導体を5質量部以上99.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、並びに前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項3】
更に、下記の潤滑剤、及びアニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも一つを含有する請求項1に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
潤滑剤:炭化水素化合物、エステル化合物(前記油脂及び前記脂肪酸誘導体を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つ。
【請求項4】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記潤滑剤を含み、
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記脂肪酸誘導体を5質量部以上98.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、並びに前記潤滑剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項3に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項5】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記アニオン界面活性剤を含み、
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記脂肪酸誘導体を5質量部以上98.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、並びに前記アニオン界面活性剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項3に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項6】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、前記潤滑剤、並びに前記アニオン界面活性剤を含み、
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、前記潤滑剤、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記脂肪酸誘導体を5質量部以上97.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、前記潤滑剤を1質量部以上20質量部以下、並びに前記アニオン界面活性剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項3に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項7】
ビスコースレーヨンが、ビスコースレーヨン短繊維である請求項1~6のいずれか一項に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビスコースレーヨン用処理剤が付着していることを特徴とするビスコースレーヨン。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビスコースレーヨン用処理剤が付着していることを特徴とするビスコースレーヨン短繊維。
【請求項10】
下記の工程1~2を含むことを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
工程1:請求項9に記載のビスコースレーヨン短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程。
工程2:前記工程1で得られたウェブを水流にて交絡させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスコースレーヨン用処理剤、そのビスコースレーヨン用処理剤が付着しているビスコースレーヨン、同ビスコースレーヨン短繊維、及びスパンレース不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布に使用される原料繊維として、木綿繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリオレフィン等の合成樹脂が知られている。なかでも、パルプ、コットンリンター等を原料とした再生繊維であるビスコースレーヨンは、生分解性に優れ、吸湿性及び吸水性に優れる観点から注目されている。
【0003】
不織布を製造する際には、潤滑性、集束性等の各種特性を付与するために、原料繊維の表面に、界面活性剤等を含有する不織布用処理剤を付着させる処理が行われることがある。特許文献1は、スパンレース不織布を製造する際に、ビスコースレーヨン等の原料繊維に付着させるスパンレース繊維用処理剤を開示する。このスパンレース繊維用処理剤は、ポリオキシアルキレン誘導体及び機能付与剤を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来のスパンレース繊維用処理剤は、不織布製造工程の水流交絡に使用した水の脱落起泡の低減と、スパンレース繊維用処理剤を付着させた原料繊維の臭気低減との両立が不十分という課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の3成分を含有してなるビスコースレーヨン用処理剤がまさしく好適であることを見出した。
上記の課題を解決するビスコースレーヨン用処理剤の各態様を記載する。
【0007】
態様1のビスコースレーヨン用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体、下記の脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに酸化防止剤を含有することを要旨とする。脂肪酸誘導体:炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを1モル以上30モル以下の割合で付加させた化合物、及びエチレングリコールを4モル以上50モル以下重合させた化合物1モルと炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル以上2モル以下とのエステル化合物、から選ばれる少なくとも一つ。脂肪酸:炭素数12以上24以下の脂肪酸。油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ。
【0008】
態様2のビスコースレーヨン用処理剤は、態様1に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに前記酸化防止剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5質量部以上99.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、並びに前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有するとよい。
【0009】
態様3のビスコースレーヨン用処理剤は、態様1に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、更に、下記の潤滑剤、及びアニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも一つを含有するとよい。潤滑剤:炭化水素化合物、エステル化合物(前記油脂及び前記脂肪酸誘導体を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つ。
【0010】
態様4のビスコースレーヨン用処理剤は、態様3に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記潤滑剤を含み、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5質量部以上98.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、並びに前記潤滑剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有するとよい。
【0011】
態様5のビスコースレーヨン用処理剤は、態様3に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記アニオン界面活性剤を含み、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5質量部以上98.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、並びに前記アニオン界面活性剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有するとよい。
【0012】
態様6のビスコースレーヨン用処理剤は、態様3に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、前記潤滑剤、並びに前記アニオン界面活性剤を含み、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、前記潤滑剤、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5質量部以上97.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、前記潤滑剤を1質量部以上20質量部以下、並びに前記アニオン界面活性剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有するとよい。
【0013】
態様7のビスコースレーヨン用処理剤は、態様1~6のいずれか一態様に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、ビスコースレーヨンが、ビスコースレーヨン短繊維であるとよい。
【0014】
上記の課題を解決するビスコースレーヨンの各態様を記載する。
態様8のビスコースレーヨンは、態様1~7のいずれか一態様に記載のビスコースレーヨン用処理剤が付着していることを要旨とする。
【0015】
態様9のビスコースレーヨン短繊維は、態様1~7のいずれか一態様に記載のビスコースレーヨン用処理剤が付着していることを要旨とする。
上記の課題を解決するスパンレース不織布の製造方法の態様を記載する。
【0016】
態様10のスパンレース不織布の製造方法は、下記の工程1~2を含むことを要旨とする。工程1:態様9のビスコースレーヨン短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程。工程2:工程1で得られたウェブを水流にて交絡させる工程。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水流交絡に使用した水の脱落起泡の低減効果を向上させるとともに、ビスコースレーヨンの綿臭気の発生を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明のビスコースレーヨン用処理剤(以下、「処理剤」という。)を具体化した第1実施形態を説明する。処理剤は、下記の脂肪酸誘導体、下記の脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに酸化防止剤を含有する。脂肪酸誘導体は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを1モル以上30モル以下の割合で付加させた化合物、及びエチレングリコールを4モル以上50モル以下重合させた化合物1モルと炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル以上2モル以下とのエステル化合物、から選ばれる少なくとも一つである。脂肪酸は、炭素数12以上24以下の脂肪酸である。油脂は、植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つである。さらに、必要に応じて、潤滑剤、及び/又はアニオン界面活性剤を含有してもよい。
【0019】
<脂肪酸誘導体(A)について>
本実施形態の処理剤に供する脂肪酸誘導体(A)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを1モル以上30モル以下の割合で付加させた化合物、及びエチレングリコールを4モル以上50モル以下重合させた化合物1モルと炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル以上2モル以下とのエステル化合物、から選ばれる少なくとも一つである。
【0020】
脂肪酸誘導体(A)の原料となる脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。脂肪酸の炭素数は、12以上24以下、好ましくは12以上22以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0021】
エチレンオキサイドの付加モル数は、1モル以上30モル以下、好ましくは2モル以上25モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、エチレンオキサイドの付加モル数は、原料である脂肪酸1モルに対するエチレンオキサイドのモル数を示す。
【0022】
上記脂肪酸誘導体(A)の具体例としては、(1)オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを30モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ラウリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物等の飽和又は不飽和脂肪酸にエチレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシエチレンアルキル(又はアルキレン)エステル、(2)エチレングリコールを9モル重合させた化合物1モルとオレイン酸1モルとのエステル化合物、エチレングリコールを14モル重合させた化合物1モルとオレイン酸2モルとのエステル化合物、エチレングリコールを23モル重合させた化合物1モルとステアリン酸1モルとのエステル化合物、エチレングリコールを9モル重合させた化合物1モルとラウリン酸2モルとのエステル化合物、エチレングリコールを23モル重合させた化合物1モルとステアリン酸2モルとのエステル化合物等の飽和又は不飽和脂肪酸にポリエチレングリコールを付加反応させて得られるポリエチレングリコールアルキル(又はアルキレン)エステル、(3)ひまし油1モルに対してエチレンオキサイドを30モル付加させた化合物、硬化ひまし油1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ヤシ脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物等の天然由来の脂肪酸にエチレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシエチレンの油脂由来脂肪酸のエステル等が挙げられる。
【0023】
脂肪酸誘導体(A)は、1種の脂肪酸誘導体を単独で使用してもよく、2種以上の脂肪酸誘導体を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、脂肪酸誘導体(A)の含有割合の下限は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。また、かかる脂肪酸誘導体(A)の含有割合の上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0024】
<脂肪酸(B1)及び油脂(B2)について>
本実施形態の処理剤に供する脂肪酸(B1)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸である。炭素数12以上24以下の脂肪酸は、公知のものを適宜採用できる。飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。脂肪酸(B1)の炭素数は、12以上24以下、好ましくは12以上22以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。脂肪酸(B1)の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ヤシ脂肪酸等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の処理剤に供する油脂(B2)は、植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つである。油脂(B2)の具体例としては、ひまし油、ごま油、トール油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、豚脂、牛脂、鯨油等、これらの硬化油、例えば、ひまし硬化油、パーム硬化油等が挙げられる。
【0026】
脂肪酸(B1)及び油脂(B2)は、1種の脂肪酸及び/又は油脂を単独で使用してもよく、2種以上の脂肪酸及び/又は油脂を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つの含有割合の下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、脱落起泡の低減効果をより向上できる。また、かかる成分の含有割合の上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0027】
<酸化防止剤(C)について>
本実施形態の処理剤に供する酸化防止剤(C)としては、公知のものを適宜採用できる。酸化防止剤(C)の具体例としては、(1)1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)ー1,3,5ートリアジンー2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3′,5′-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2′-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニ)ブタン、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等のフェノール系酸化防止剤、(2)4,4′-チオビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、ジラウリル-3,3′-チオジプロピオナート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3′-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル系酸化防止剤、(3)3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,3-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、4,4′-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシル)ホスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4′-ビフェニレンフォスファナイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリストール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4′-ビフェニレンジホスフォナイト、テトラトリデシル-4,4′-ブチリデン-ビス-(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、トリドデシルトリチオホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0028】
酸化防止剤(C)は、1種の酸化防止剤を単独で使用してもよく、2種以上の酸化防止剤を組み合わせて使用してもよい。1種の酸化防止剤を単独で使用する場合、フェノール系酸化防止剤、又はチオエーテル系酸化防止剤を使用することが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果、特に綿臭気の低減の効果をより向上できる。2種以上の酸化防止剤を組み合わせて使用する場合、フェノール系酸化防止剤及びチオエーテル系酸化防止剤を併用することが好ましい。かかる構成の場合、綿臭気の低減の効果をさらに向上できる。
【0029】
本実施形態の処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)との含有割合に特に制限はない。上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つ、並びに酸化防止剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体(A)を5質量部以上99.89質量部以下、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、並びに酸化防止剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有してなることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上できる。
【0030】
処理剤中において、酸化防止剤(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、特に綿臭気の低減の効果をより向上できる。また、かかる酸化防止剤(C)の含有割合の上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0031】
<潤滑剤(D)について>
本実施形態の処理剤(D)は、更に炭化水素化合物、エステル化合物(上記脂肪酸誘導体(A)及び上記油脂(B2)を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つの潤滑剤を含有してもよい。この潤滑剤(D)を配合することにより、本発明の効果、特にカード通過性をより向上できる。
【0032】
炭化水素化合物の具体例としては、鉱物油、パラフィンワックス等が挙げられる。
エステル化合物の具体例としては、ブチルステアラート、ステアリルステアラート等の脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、グリセリンモノオレアート、グリセリントリオレアート、ソルビタンモノラウラート、ソルビタントリラウラート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタントリステアラート等の脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物等が挙げられる。なお、潤滑剤として使用するエステル化合物は、脂肪酸とアルコールを反応させて得られる化合物であって、上記脂肪酸誘導体(A)及び上記油脂(B2)を除いたものを言う。
【0033】
シリコーンの具体例としては、ジメチルシリコーン、アミノシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
潤滑剤(D)は、1種の潤滑剤を単独で使用してもよく、2種以上の潤滑剤を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本実施形態の処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)と、潤滑剤(D)を含有する場合、これらの含有割合に特に制限はない。上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つ、酸化防止剤(C)、並びに潤滑剤(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体(A)を5質量部以上98.89質量部以下、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、酸化防止剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下、並びに潤滑剤(D)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有してなることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上できる。
【0035】
処理剤中において、潤滑剤(D)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、特にカード通過性をより向上できる。また、かかる潤滑剤(D)の含有割合の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0036】
<アニオン界面活性剤(E)について>
本実施形態の処理剤は、更にアニオン界面活性剤(E)を含有してもよい。このアニオン界面活性剤(E)を配合することにより、本発明の効果、特に処理剤が水性液に調製された際の乳化安定性をより向上できる。
【0037】
アニオン界面活性剤(E)としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤(E)の具体例としては、(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルキルスルホン酸(C13~15)塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0038】
アニオン界面活性剤(E)は、1種のアニオン界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上のアニオン界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態の処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)と、アニオン界面活性剤(E)を含有する場合、これらの含有割合に特に制限はない。上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つ、酸化防止剤(C)、並びにアニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体(A)を5質量部以上98.89質量部以下、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、酸化防止剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下、並びにアニオン界面活性剤(E)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有してなることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上できる。
【0039】
また、本実施形態の処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)と、潤滑剤(D)と、アニオン界面活性剤(E)を含有する場合、これらの含有割合に特に制限はない。上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つ、酸化防止剤(C)、潤滑剤(D)、並びにアニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体(A)を5質量部以上97.89質量部以下、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、酸化防止剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下、潤滑剤(D)を1質量部以上20質量部以下、並びにアニオン界面活性剤(E)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有してなることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上できる。
【0040】
処理剤中において、アニオン界面活性剤(E)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、特に乳化安定性をより向上できる。また、かかるアニオン界面活性剤(E)の含有割合の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、脱落起泡の低減効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0041】
<その他成分について>
本実施形態の処理剤は、本発明の効果を妨げない範囲において、その他成分として、更に上記以外の非イオン性界面活性剤、多価アルコール等を含有していてもよい。
【0042】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、(1)ラウリルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物、オレイルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを30モル付加させた化合物、C12-13アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ラウリルアルコール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのそれぞれ10モルをランダム付加させた化合物、C12-13アルコール1モルに対しエチレンオキサイド6モルとプロピレンオキサイド2モルをランダム付加させた化合物、イソデシルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物、イソデシルアルコール1モルに対しプロピレンオキサイドを2モル付加させた後、エチレンオキサイドを5モル付加させた化合物、等の飽和又は不飽和脂肪族1価アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、(2)ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド10モルを付加させた後、ラウリン酸1モルを付加させた化合物、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、ステアリン酸3モルを付加させた化合物等の脂肪族多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、(3)オクチルフェノールにエチレンオキサイド10モルを付加させた化合物、ノニルフェノールにエチレンオキサイド10モルを付加させた化合物等のアルキルフェノールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、(4)オクチルアミンにエチレンオキサイド5モルを付加させた化合物、ラウリルアミンにエチレンオキサイド8モルを付加させた化合物、ステアリルアミンにエチレンオキサイド20モルを付加させた化合物等の飽和又は不飽和脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアミノエーテル等が挙げられる。なお、アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0043】
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールとアルキレンオキサイドの反応物等が挙げられる。
【0044】
これらのその他成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのその他成分の処理剤中における含有量は、本発明の効果を妨げない観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0045】
本実施形態の処理剤が適用されるビスコースレーヨンは、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維であってもよく、一般にステープルと呼ばれる短繊維であってもよい。短繊維であることが好ましい。本実施形態における短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましく、51mm以下であることがより好ましい。
【0046】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の処理剤は、上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)とを含む。したがって、処理剤が付着したビスコースレーヨンを水流交絡した際に、水流交絡に使用した水の脱落起泡の低減効果を向上できる。これにより、スパンレース不織布作製工程において、操業効率を向上できる。また、処理剤が付着したビスコースレーヨンの綿臭気の発生を低減できる。また、処理剤が付着したビスコースレーヨンの綿の変色を低減できる。また、処理剤が付着したビスコースレーヨンをカード機に通過させる際のカード通過性を向上できる。また、処理剤を水性液として調製した際の乳化安定性を向上できる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るビスコースレーヨンを具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態のビスコースレーヨンは、第1実施形態の処理剤が付着している。
【0048】
処理剤の付着方法としては、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、シャワー法、ローラー法、滴下・流下法等を適用することができる。また、付着させる工程としては、特に限定されないが、例えば精錬工程の後工程、紡績工程等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の処理剤で処理するビスコースレーヨンは、前記のものを適用することができる。
ビスコースレーヨンに付着させる際の処理剤の形態としては、例えば水性液、有機溶媒溶液等が挙げられる。ビスコースレーヨンの処理方法は、第1実施形態の処理剤を水で希釈して濃度0.5~20質量%の水性液となし、この水性液をビスコースレーヨンに対して付着させることが好ましい。処理剤の付着量は、ビスコースレーヨンに対し、溶媒を含まない固形分が0.1~1質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。
【0050】
(第3実施形態)
本発明に係るスパンレース不織布の製造方法を具体化した第3実施形態について説明する。
【0051】
スパンレース不織布は、ビスコースレーヨンにカーディングを行って、ウェブを製造するウェブ形成工程(工程1)と、水流にてウェブを交絡させる水流交絡工程(工程2)を順に経ることにより製造される。
【0052】
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、上記処理剤が付着したビスコースレーヨンにカーディングを行い、ウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
【0053】
(水流交絡工程)
水流交絡工程は、ウェブ形成工程により得られたウェブを水流にて交絡させる工程である。ウェブに高圧水流を照射し、水流の圧力によって繊維同士を絡み合わせてシート状にすることができる。水流交絡工程を行った後、適宜、乾燥工程や巻取り工程を行ってもよい。
【0054】
第2,3実施形態によれば、上記(1)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2)水流交絡で使用した水の脱落起泡の低減効果を向上できるため、水流交絡で使用した水を循環させて水流交絡を行うことができる。したがって、水流交絡を好適に行うことができ、スパンレース不織布の地合を向上できる。
【0055】
第1実施形態~第3実施形態は、以下のように変更して実施できる。第1実施形態~第3実施形態、及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0056】
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上記以外のその他成分として、処理剤の品質保持のための上記以外の界面活性剤、帯電防止剤、つなぎ剤、紫外線吸収剤、pH調整剤等の通常処理剤に用いられる成分を更に配合してもよい。
【実施例0057】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例を挙げる。本発明は、これらの実施例に限定されるというものではない。
試験区分1<処理剤の調製>
(実施例1)
処理剤の原料として以下の材料を使用した。なお、表1に示される各成分の数値は処理剤中の含有量を示す。
【0058】
脂肪酸誘導体(A):オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
脂肪酸(B):ステアリン酸
酸化防止剤(C):フェノール系酸化防止剤である1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、及びチオエーテル系酸化防止剤であるジトリデカン-1-イル=3,3′-スルファンジイルジプロパノアート
潤滑剤(D):ステアリルステアラート
アニオン界面活性剤(E):ラウリルリン酸エステルカリウム塩
表1に示される含有割合となるように調製した処理剤100部に水900部を加え、50℃で撹拌して、処理剤を10質量%含有する10%水性液を調製した。
【0059】
(実施例2~24及び比較例1~6)
実施例1の処理剤及びその水性液の調製と同様にして、実施例2~24及び比較例1~6の処理剤を調製し、これらの10%水性液を調製した。
【0060】
以上で調製した各例の処理剤の内容を表1にまとめて示した。実施例3~4、6、8、24及び比較例1~2、6の処理剤は、その他成分として、非イオン性界面活性剤及び/又は多価アルコールを含有している。表1の実施例24では、その他成分の含有量(質量部(*))は、(A)~(E)成分の合計100質量部に対する質量部として示している。
【0061】
脂肪酸誘導体(A)の種類と含有量、脂肪酸(B1)又は油脂(B2)の種類と含有量、酸化防止剤(C)の種類と含有量、潤滑剤(D)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(E)の種類と含有量、その他成分の種類と含有量を、表1の「脂肪酸誘導体(A)」欄、「脂肪酸、油脂(B)」欄、「酸化防止剤(C)」欄、「潤滑剤(D)」欄、「アニオン界面活性剤(E)」欄、「その他成分」欄にそれぞれ示す。
【0062】
【表1】
表1に記載する脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)又は油脂(B2)、酸化防止剤(C)、潤滑剤(D)、アニオン界面活性剤(E)、その他成分の詳細は以下のとおりである。
【0063】
(脂肪酸誘導体(A))
A-1:オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
A-2:ステアリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-3:ステアリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-4:エチレングリコールを9モル重合させた化合物1モルとラウリン酸2モルとのエステル化合物
A-5:エチレングリコールを23モル重合させた化合物1モルとステアリン酸2モルとのエステル化合物
A-6:ヤシ脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-7:エチレングリコールを14モル重合させた化合物1モルとオレイン酸2モルとのエステル化合物
A-8:オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-9:オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを30モル付加させた化合物
A-10:エチレングリコールを9モル重合させた化合物1モルとオレイン酸1モルとのエステル化合物
(脂肪酸(B1)又は油脂(B2))
B-1:牛脂
B-2:ステアリン酸
B-3:パルミチン酸
B-4:ヤシ油
B-5:パーム油
B-6:ベヘニン酸
B-7:パーム硬化油
B-8:ひまし硬化油
B-9:ひまし油
B-10:オレイン酸
B-11:豚脂
B-12:ラウリン酸
B-13:ヤシ脂肪酸
(酸化防止剤(C))
C-1:フェノール系酸化防止剤である1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン
C-2:フェノール系酸化防止剤であるペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]
C-3:リン系酸化防止剤である3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン
C-4:チオエーテル系酸化防止剤であるジトリデカン-1-イル=3,3′-スルファンジイルジプロパノアート
C-5:チオエーテル系酸化防止剤である2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]
(潤滑剤(D))
D-1:ステアリルステアラート
D-2:鉱物油(粘度500秒)
D-3:ジメチルシリコーン
D-4:鉱物油(粘度180秒)
D-5:アミノシリコーン
D-6:パラフィンワックス
D-7:鉱物油(粘度60秒)
D-8:グリセリンモノオレアート
D-9:鉱物油(粘度80秒)
D-10:ソルビタントリステアラート
D-11:ソルビタンモノステアラート
(アニオン界面活性剤(E))
E-1:ラウリルリン酸エステルカリウム塩
E-2:ジオクチルスルホサクシナートナトリウム塩
E-3:テトラデカンスルホナートナトリウム塩
E-4:オレイン酸ナトリウム
E-5:牛脂硫酸エステルナトリウム塩
E-6:ステアリン酸カリウム
(その他成分)
F-1:ステアリルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
F-2:C12-13アルコール1モルに対しエチレンオキサイド6モルとプロピレンオキサイド2モルをランダム付加させた化合物
F-3:イソデシルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物
F-4:イソデシルアルコール1モルに対しプロピレンオキサイドを2モル付加させた後、エチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
F-5:ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
F-6:ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、ステアリン酸3モルを付加させた化合物
F-7:プロピレングリコールを8モル重合させた化合物
F-8:エチレングリコールを45モル重合させた化合物
試験区分2<ビスコースレーヨン繊維への処理剤の付着>
試験区分1で調製した各処理剤の10%水性液を、更に水で希釈して0.2%水性エマルジョン(質量%)を調製した。各例の水性エマルジョンを、繊度1.3×10-4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのビスコースレーヨン繊維に、付着量(溶媒を除く)が0.2質量%となるようにスプレー給油で付着させた。80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調潤して、処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維を得た。
【0064】
試験区分3<処理剤の評価>
(評価試験)
処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維を用いて、脱落起泡性試験、綿臭気試験、綿変色試験、カード通過性試験、乳化安定性試験の各試験を行った。各試験の手順について以下に示す。また、各試験結果を表2に示す。
【0065】
(脱落起泡性試験)
まず、処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維20gを150gの水に投入し、15分後にハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10gを25ml共栓付メスシリンダーに入れて30秒間強振した。30秒間静置した後、再度30秒間強振した。5分間静置した後、水面から泡の上面までの高さを測った。結果を表2の「脱落起泡性試験」欄に示す。
【0066】
脱落起泡性試験の評価基準
◎(良好);水面から泡の上面までの高さが1mm未満
○(可);水面から泡の上面までの高さが1mm以上且つ2mm未満
×(不可);水面から泡の上面までの高さが2mm以上
(綿臭気試験)
処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維20gを150gの水に投入し、30分間密閉した後に臭気を嗅いだ。綿臭気試験は、10人の試験者に対して行った。結果を表2の「綿臭気試験」欄に示す。
【0067】
綿臭気試験の評価基準
◎◎(優れる);臭気有りの判定者なし
◎(良好);1~2人が臭気有りと判定
○(可);3~5人が臭気有りと判定
×(不可);6人以上が臭気有りと判定
(綿変色試験)
処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維に、処理剤の付着前と比較して黄ばむ等の変色が生じたか否かを判定した。綿変色試験は、10人の試験者に対して行った。結果を表2の「綿変色試験」欄に示す。
【0068】
綿変色試験の評価基準
◎◎(優れる);変色有りの判定者なし
◎(良好);1~2人が変色有りと判定
○(可);3~5人が変色有りと判定
×(不可);6人以上が変色有りと判定
(カード通過性の評価)
処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維20gを、20℃で65%RHの恒温室内で24時間調湿した後、ミニチュアカード機に供した。投入量に対する排出量の割合を算出し、下記の評価基準で評価した。結果を表2の「カード通過性試験」欄に示す。
【0069】
カード通過性の評価基準
◎(良好):排出量が90%以上
○(可):排出量が80%以上90%未満
×(不可):排出量が80%未満
(乳化安定性の評価)
試験区分1で調製した各処理剤の10%水性液を、100mlニンジン型沈殿瓶に100g入れて、25℃で静置した。24時間経過後に沈殿量を確認し、下記の評価基準で評価した。結果を表2の「乳化安定性試験」欄に示す。
【0070】
乳化安定性の評価基準
◎(良好);沈殿量が0.1ml以下
○(可);沈殿量が0.1ml超0.5ml以下
×(不可);沈殿量が0.5ml超
【0071】
【表2】
表2の結果から明らかなように、本発明の処理剤によれば、水流交絡で使用した水の脱落起泡の低減効果を向上できるという効果がある。また、処理剤を付着させた繊維の綿臭気を少なくできるという効果がある。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の脂肪酸誘導体、下記の脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに酸化防止剤を含有することを特徴とするビスコースレーヨン用処理剤であって、
前記ビスコースレーヨン用処理剤中における前記酸化防止剤の含有量が0.1質量%以上10質量%以下であるビスコースレーヨン用処理剤。
脂肪酸誘導体:炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを1モル以上30モル以下の割合で付加させた化合物、及びエチレングリコールを4モル以上50モル以下重合させた化合物1モルと炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル以上2モル以下とのエステル化合物、から選ばれる少なくとも一つ。
脂肪酸:炭素数12以上24以下の脂肪酸。
油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ。
【請求項2】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに前記酸化防止剤の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記脂肪酸誘導体を80質量部以上99.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、並びに前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項3】
更に、下記の潤滑剤、及びアニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも一つを含有する請求項1に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
潤滑剤:炭化水素化合物、エステル化合物(前記油脂及び前記脂肪酸誘導体を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つ。
【請求項4】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記潤滑剤を含み、
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記脂肪酸誘導体を60質量部以上98.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、並びに前記潤滑剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項3に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項5】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記アニオン界面活性剤を含み、
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記脂肪酸誘導体を60質量部以上98.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、並びに前記アニオン界面活性剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項3に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項6】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、前記潤滑剤、並びに前記アニオン界面活性剤を含み、
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、前記潤滑剤、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記脂肪酸誘導体を40質量部以上97.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、前記潤滑剤を1質量部以上20質量部以下、並びに前記アニオン界面活性剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項3に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項7】
ビスコースレーヨンが、ビスコースレーヨン短繊維である請求項1~6のいずれか一項に記載のビスコースレーヨン用処理剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビスコースレーヨン用処理剤が付着していることを特徴とするビスコースレーヨン。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビスコースレーヨン用処理剤が付着していることを特徴とするビスコースレーヨン短繊維。
【請求項10】
下記の工程1~2を含むことを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
工程1:請求項9に記載のビスコースレーヨン短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程。
工程2:前記工程1で得られたウェブを水流にて交絡させる工程。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスコースレーヨン用処理剤、そのビスコースレーヨン用処理剤が付着しているビスコースレーヨン、同ビスコースレーヨン短繊維、及びスパンレース不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布に使用される原料繊維として、木綿繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリオレフィン等の合成樹脂が知られている。なかでも、パルプ、コットンリンター等を原料とした再生繊維であるビスコースレーヨンは、生分解性に優れ、吸湿性及び吸水性に優れる観点から注目されている。
【0003】
不織布を製造する際には、潤滑性、集束性等の各種特性を付与するために、原料繊維の表面に、界面活性剤等を含有する不織布用処理剤を付着させる処理が行われることがある。特許文献1は、スパンレース不織布を製造する際に、ビスコースレーヨン等の原料繊維に付着させるスパンレース繊維用処理剤を開示する。このスパンレース繊維用処理剤は、ポリオキシアルキレン誘導体及び機能付与剤を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来のスパンレース繊維用処理剤は、不織布製造工程の水流交絡に使用した水の脱落起泡の低減と、スパンレース繊維用処理剤を付着させた原料繊維の臭気低減との両立が不十分という課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の3成分を含有してなるビスコースレーヨン用処理剤がまさしく好適であることを見出した。
上記の課題を解決するビスコースレーヨン用処理剤の各態様を記載する。
【0007】
態様1のビスコースレーヨン用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体、下記の脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに酸化防止剤を含有し、前記ビスコースレーヨン用処理剤中における前記酸化防止剤の含有量が0.1質量%以上10質量%以下であることを要旨とする。脂肪酸誘導体:炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを1モル以上30モル以下の割合で付加させた化合物、及びエチレングリコールを4モル以上50モル以下重合させた化合物1モルと炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル以上2モル以下とのエステル化合物、から選ばれる少なくとも一つ。脂肪酸:炭素数12以上24以下の脂肪酸。油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ。
【0008】
態様2のビスコースレーヨン用処理剤は、態様1に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに前記酸化防止剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を80質量部以上99.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、並びに前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有するとよい。
【0009】
態様3のビスコースレーヨン用処理剤は、態様1に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、更に、下記の潤滑剤、及びアニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも一つを含有するとよい。潤滑剤:炭化水素化合物、エステル化合物(前記油脂及び前記脂肪酸誘導体を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つ。
【0010】
態様4のビスコースレーヨン用処理剤は、態様3に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記潤滑剤を含み、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を60質量部以上98.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、並びに前記潤滑剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有するとよい。
【0011】
態様5のビスコースレーヨン用処理剤は、態様3に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記アニオン界面活性剤を含み、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を60質量部以上98.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、並びに前記アニオン界面活性剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有するとよい。
【0012】
態様6のビスコースレーヨン用処理剤は、態様3に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、前記潤滑剤、並びに前記アニオン界面活性剤を含み、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記酸化防止剤、前記潤滑剤、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を40質量部以上97.89質量部以下、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部、前記酸化防止剤を0.1質量部以上10質量部以下、前記潤滑剤を1質量部以上20質量部以下、並びに前記アニオン界面活性剤を1質量部以上20質量部以下の割合で含有するとよい。
【0013】
態様7のビスコースレーヨン用処理剤は、態様1~6のいずれか一態様に記載のビスコースレーヨン用処理剤において、ビスコースレーヨンが、ビスコースレーヨン短繊維であるとよい。
【0014】
上記の課題を解決するビスコースレーヨンの各態様を記載する。
態様8のビスコースレーヨンは、態様1~7のいずれか一態様に記載のビスコースレーヨン用処理剤が付着していることを要旨とする。
【0015】
態様9のビスコースレーヨン短繊維は、態様1~7のいずれか一態様に記載のビスコースレーヨン用処理剤が付着していることを要旨とする。
上記の課題を解決するスパンレース不織布の製造方法の態様を記載する。
【0016】
態様10のスパンレース不織布の製造方法は、下記の工程1~2を含むことを要旨とする。工程1:態様9のビスコースレーヨン短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程。工程2:工程1で得られたウェブを水流にて交絡させる工程。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水流交絡に使用した水の脱落起泡の低減効果を向上させるとともに、ビスコースレーヨンの綿臭気の発生を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明のビスコースレーヨン用処理剤(以下、「処理剤」という。)を具体化した第1実施形態を説明する。処理剤は、下記の脂肪酸誘導体、下記の脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに酸化防止剤を含有する。脂肪酸誘導体は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを1モル以上30モル以下の割合で付加させた化合物、及びエチレングリコールを4モル以上50モル以下重合させた化合物1モルと炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル以上2モル以下とのエステル化合物、から選ばれる少なくとも一つである。脂肪酸は、炭素数12以上24以下の脂肪酸である。油脂は、植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つである。さらに、必要に応じて、潤滑剤、及び/又はアニオン界面活性剤を含有してもよい。
【0019】
<脂肪酸誘導体(A)について>
本実施形態の処理剤に供する脂肪酸誘導体(A)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを1モル以上30モル以下の割合で付加させた化合物、及びエチレングリコールを4モル以上50モル以下重合させた化合物1モルと炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル以上2モル以下とのエステル化合物、から選ばれる少なくとも一つである。
【0020】
脂肪酸誘導体(A)の原料となる脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。脂肪酸の炭素数は、12以上24以下、好ましくは12以上22以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0021】
エチレンオキサイドの付加モル数は、1モル以上30モル以下、好ましくは2モル以上25モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、エチレンオキサイドの付加モル数は、原料である脂肪酸1モルに対するエチレンオキサイドのモル数を示す。
【0022】
上記脂肪酸誘導体(A)の具体例としては、(1)オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを30モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ラウリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物等の飽和又は不飽和脂肪酸にエチレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシエチレンアルキル(又はアルキレン)エステル、(2)エチレングリコールを9モル重合させた化合物1モルとオレイン酸1モルとのエステル化合物、エチレングリコールを14モル重合させた化合物1モルとオレイン酸2モルとのエステル化合物、エチレングリコールを23モル重合させた化合物1モルとステアリン酸1モルとのエステル化合物、エチレングリコールを9モル重合させた化合物1モルとラウリン酸2モルとのエステル化合物、エチレングリコールを23モル重合させた化合物1モルとステアリン酸2モルとのエステル化合物等の飽和又は不飽和脂肪酸にポリエチレングリコールを付加反応させて得られるポリエチレングリコールアルキル(又はアルキレン)エステル、(3)ひまし油1モルに対してエチレンオキサイドを30モル付加させた化合物、硬化ひまし油1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ヤシ脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物等の天然由来の脂肪酸にエチレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシエチレンの油脂由来脂肪酸のエステル等が挙げられる。
【0023】
脂肪酸誘導体(A)は、1種の脂肪酸誘導体を単独で使用してもよく、2種以上の脂肪酸誘導体を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、脂肪酸誘導体(A)の含有割合の下限は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。また、かかる脂肪酸誘導体(A)の含有割合の上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0024】
<脂肪酸(B1)及び油脂(B2)について>
本実施形態の処理剤に供する脂肪酸(B1)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸である。炭素数12以上24以下の脂肪酸は、公知のものを適宜採用できる。飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。脂肪酸(B1)の炭素数は、12以上24以下、好ましくは12以上22以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。脂肪酸(B1)の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ヤシ脂肪酸等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の処理剤に供する油脂(B2)は、植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つである。油脂(B2)の具体例としては、ひまし油、ごま油、トール油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、豚脂、牛脂、鯨油等、これらの硬化油、例えば、ひまし硬化油、パーム硬化油等が挙げられる。
【0026】
脂肪酸(B1)及び油脂(B2)は、1種の脂肪酸及び/又は油脂を単独で使用してもよく、2種以上の脂肪酸及び/又は油脂を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つの含有割合の下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、脱落起泡の低減効果をより向上できる。また、かかる成分の含有割合の上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0027】
<酸化防止剤(C)について>
本実施形態の処理剤に供する酸化防止剤(C)としては、公知のものを適宜採用できる。酸化防止剤(C)の具体例としては、(1)1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)ー1,3,5ートリアジンー2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3′,5′-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2′-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニ)ブタン、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等のフェノール系酸化防止剤、(2)4,4′-チオビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、ジラウリル-3,3′-チオジプロピオナート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3′-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル系酸化防止剤、(3)3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,3-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、4,4′-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシル)ホスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4′-ビフェニレンフォスファナイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリストール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4′-ビフェニレンジホスフォナイト、テトラトリデシル-4,4′-ブチリデン-ビス-(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、トリドデシルトリチオホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0028】
酸化防止剤(C)は、1種の酸化防止剤を単独で使用してもよく、2種以上の酸化防止剤を組み合わせて使用してもよい。1種の酸化防止剤を単独で使用する場合、フェノール系酸化防止剤、又はチオエーテル系酸化防止剤を使用することが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果、特に綿臭気の低減の効果をより向上できる。2種以上の酸化防止剤を組み合わせて使用する場合、フェノール系酸化防止剤及びチオエーテル系酸化防止剤を併用することが好ましい。かかる構成の場合、綿臭気の低減の効果をさらに向上できる。
【0029】
本実施形態の処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)との含有割合に特に制限はない。上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つ、並びに酸化防止剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体(A)を5質量部以上99.89質量部以下、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、並びに酸化防止剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有してなることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上できる。本発明では、脂肪酸誘導体(A)の含有割合は、80質量部以上99.89質量部以下が採用される。
【0030】
処理剤中において、酸化防止剤(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、特に綿臭気の低減の効果をより向上できる。また、かかる酸化防止剤(C)の含有割合の上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。本発明では、酸化防止剤(C)の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下が採用される。
【0031】
<潤滑剤(D)について>
本実施形態の処理剤(D)は、更に炭化水素化合物、エステル化合物(上記脂肪酸誘導体(A)及び上記油脂(B2)を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つの潤滑剤を含有してもよい。この潤滑剤(D)を配合することにより、本発明の効果、特にカード通過性をより向上できる。
【0032】
炭化水素化合物の具体例としては、鉱物油、パラフィンワックス等が挙げられる。
エステル化合物の具体例としては、ブチルステアラート、ステアリルステアラート等の脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、グリセリンモノオレアート、グリセリントリオレアート、ソルビタンモノラウラート、ソルビタントリラウラート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタントリステアラート等の脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物等が挙げられる。なお、潤滑剤として使用するエステル化合物は、脂肪酸とアルコールを反応させて得られる化合物であって、上記脂肪酸誘導体(A)及び上記油脂(B2)を除いたものを言う。
【0033】
シリコーンの具体例としては、ジメチルシリコーン、アミノシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
潤滑剤(D)は、1種の潤滑剤を単独で使用してもよく、2種以上の潤滑剤を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本実施形態の処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)と、潤滑剤(D)を含有する場合、これらの含有割合に特に制限はない。上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つ、酸化防止剤(C)、並びに潤滑剤(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体(A)を5質量部以上98.89質量部以下、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、酸化防止剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下、並びに潤滑剤(D)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有してなることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上できる。本発明では、脂肪酸誘導体(A)の含有割合は、60質量部以上98.89質量部以下が採用される。
【0035】
処理剤中において、潤滑剤(D)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、特にカード通過性をより向上できる。また、かかる潤滑剤(D)の含有割合の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0036】
<アニオン界面活性剤(E)について>
本実施形態の処理剤は、更にアニオン界面活性剤(E)を含有してもよい。このアニオン界面活性剤(E)を配合することにより、本発明の効果、特に処理剤が水性液に調製された際の乳化安定性をより向上できる。
【0037】
アニオン界面活性剤(E)としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤(E)の具体例としては、(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルキルスルホン酸(C13~15)塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0038】
アニオン界面活性剤(E)は、1種のアニオン界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上のアニオン界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態の処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)と、アニオン界面活性剤(E)を含有する場合、これらの含有割合に特に制限はない。上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つ、酸化防止剤(C)、並びにアニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体(A)を5質量部以上98.89質量部以下、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、酸化防止剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下、並びにアニオン界面活性剤(E)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有してなることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上できる。本発明では、脂肪酸誘導体(A)の含有割合は、60質量部以上98.89質量部以下が採用される。
【0039】
また、本実施形態の処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)と、潤滑剤(D)と、アニオン界面活性剤(E)を含有する場合、これらの含有割合に特に制限はない。上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つ、酸化防止剤(C)、潤滑剤(D)、並びにアニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体(A)を5質量部以上97.89質量部以下、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つを0.01質量部以上10質量部以下、酸化防止剤(C)を0.1質量部以上10質量部以下、潤滑剤(D)を1質量部以上20質量部以下、並びにアニオン界面活性剤(E)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有してなることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上できる。本発明では、脂肪酸誘導体(A)の含有割合は、40質量部以上97.89質量部以下が採用される。
【0040】
処理剤中において、アニオン界面活性剤(E)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、特に乳化安定性をより向上できる。また、かかるアニオン界面活性剤(E)の含有割合の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、脱落起泡の低減効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0041】
<その他成分について>
本実施形態の処理剤は、本発明の効果を妨げない範囲において、その他成分として、更に上記以外の非イオン性界面活性剤、多価アルコール等を含有していてもよい。
【0042】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、(1)ラウリルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物、オレイルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを30モル付加させた化合物、C12-13アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ラウリルアルコール1モルに対しエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのそれぞれ10モルをランダム付加させた化合物、C12-13アルコール1モルに対しエチレンオキサイド6モルとプロピレンオキサイド2モルをランダム付加させた化合物、イソデシルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物、イソデシルアルコール1モルに対しプロピレンオキサイドを2モル付加させた後、エチレンオキサイドを5モル付加させた化合物、等の飽和又は不飽和脂肪族1価アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、(2)ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド10モルを付加させた後、ラウリン酸1モルを付加させた化合物、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、ステアリン酸3モルを付加させた化合物等の脂肪族多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、(3)オクチルフェノールにエチレンオキサイド10モルを付加させた化合物、ノニルフェノールにエチレンオキサイド10モルを付加させた化合物等のアルキルフェノールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、(4)オクチルアミンにエチレンオキサイド5モルを付加させた化合物、ラウリルアミンにエチレンオキサイド8モルを付加させた化合物、ステアリルアミンにエチレンオキサイド20モルを付加させた化合物等の飽和又は不飽和脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアミノエーテル等が挙げられる。なお、アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0043】
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールとアルキレンオキサイドの反応物等が挙げられる。
【0044】
これらのその他成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのその他成分の処理剤中における含有量は、本発明の効果を妨げない観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0045】
本実施形態の処理剤が適用されるビスコースレーヨンは、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維であってもよく、一般にステープルと呼ばれる短繊維であってもよい。短繊維であることが好ましい。本実施形態における短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましく、51mm以下であることがより好ましい。
【0046】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の処理剤は、上述した脂肪酸誘導体(A)と、脂肪酸(B1)及び油脂(B2)から選ばれる少なくとも一つと、酸化防止剤(C)とを含み、処理剤中における酸化防止剤の含有量が0.1質量%以上10質量%以下である。したがって、処理剤が付着したビスコースレーヨンを水流交絡した際に、水流交絡に使用した水の脱落起泡の低減効果を向上できる。これにより、スパンレース不織布作製工程において、操業効率を向上できる。また、処理剤が付着したビスコースレーヨンの綿臭気の発生を低減できる。また、処理剤が付着したビスコースレーヨンの綿の変色を低減できる。また、処理剤が付着したビスコースレーヨンをカード機に通過させる際のカード通過性を向上できる。また、処理剤を水性液として調製した際の乳化安定性を向上できる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るビスコースレーヨンを具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態のビスコースレーヨンは、第1実施形態の処理剤が付着している。
【0048】
処理剤の付着方法としては、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、シャワー法、ローラー法、滴下・流下法等を適用することができる。また、付着させる工程としては、特に限定されないが、例えば精錬工程の後工程、紡績工程等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の処理剤で処理するビスコースレーヨンは、前記のものを適用することができる。
ビスコースレーヨンに付着させる際の処理剤の形態としては、例えば水性液、有機溶媒溶液等が挙げられる。ビスコースレーヨンの処理方法は、第1実施形態の処理剤を水で希釈して濃度0.5~20質量%の水性液となし、この水性液をビスコースレーヨンに対して付着させることが好ましい。処理剤の付着量は、ビスコースレーヨンに対し、溶媒を含まない固形分が0.1~1質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。
【0050】
(第3実施形態)
本発明に係るスパンレース不織布の製造方法を具体化した第3実施形態について説明する。
【0051】
スパンレース不織布は、ビスコースレーヨンにカーディングを行って、ウェブを製造するウェブ形成工程(工程1)と、水流にてウェブを交絡させる水流交絡工程(工程2)を順に経ることにより製造される。
【0052】
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、上記処理剤が付着したビスコースレーヨンにカーディングを行い、ウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
【0053】
(水流交絡工程)
水流交絡工程は、ウェブ形成工程により得られたウェブを水流にて交絡させる工程である。ウェブに高圧水流を照射し、水流の圧力によって繊維同士を絡み合わせてシート状にすることができる。水流交絡工程を行った後、適宜、乾燥工程や巻取り工程を行ってもよい。
【0054】
第2,3実施形態によれば、上記(1)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2)水流交絡で使用した水の脱落起泡の低減効果を向上できるため、水流交絡で使用した水を循環させて水流交絡を行うことができる。したがって、水流交絡を好適に行うことができ、スパンレース不織布の地合を向上できる。
【0055】
第1実施形態~第3実施形態は、以下のように変更して実施できる。第1実施形態~第3実施形態、及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0056】
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上記以外のその他成分として、処理剤の品質保持のための上記以外の界面活性剤、帯電防止剤、つなぎ剤、紫外線吸収剤、pH調整剤等の通常処理剤に用いられる成分を更に配合してもよい。
【実施例0057】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例を挙げる。本発明は、これらの実施例に限定されるというものではない。
試験区分1<処理剤の調製>
(実施例1)
処理剤の原料として以下の材料を使用した。なお、表1に示される各成分の数値は処理剤中の含有量を示す。
【0058】
脂肪酸誘導体(A):オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
脂肪酸(B):ステアリン酸
酸化防止剤(C):フェノール系酸化防止剤である1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、及びチオエーテル系酸化防止剤であるジトリデカン-1-イル=3,3′-スルファンジイルジプロパノアート
潤滑剤(D):ステアリルステアラート
アニオン界面活性剤(E):ラウリルリン酸エステルカリウム塩
表1に示される含有割合となるように調製した処理剤100部に水900部を加え、50℃で撹拌して、処理剤を10質量%含有する10%水性液を調製した。
【0059】
(実施例2~24及び比較例1~6)
実施例1の処理剤及びその水性液の調製と同様にして、実施例2~24及び比較例1~6の処理剤を調製し、これらの10%水性液を調製した。
【0060】
以上で調製した各例の処理剤の内容を表1にまとめて示した。実施例3~4、6、8、24及び比較例1~2、6の処理剤は、その他成分として、非イオン性界面活性剤及び/又は多価アルコールを含有している。表1の実施例24では、その他成分の含有量(質量部(*))は、(A)~(E)成分の合計100質量部に対する質量部として示している。
【0061】
脂肪酸誘導体(A)の種類と含有量、脂肪酸(B1)又は油脂(B2)の種類と含有量、酸化防止剤(C)の種類と含有量、潤滑剤(D)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(E)の種類と含有量、その他成分の種類と含有量を、表1の「脂肪酸誘導体(A)」欄、「脂肪酸、油脂(B)」欄、「酸化防止剤(C)」欄、「潤滑剤(D)」欄、「アニオン界面活性剤(E)」欄、「その他成分」欄にそれぞれ示す。
【0062】
【表1】
表1に記載する脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸(B1)又は油脂(B2)、酸化防止剤(C)、潤滑剤(D)、アニオン界面活性剤(E)、その他成分の詳細は以下のとおりである。
【0063】
(脂肪酸誘導体(A))
A-1:オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
A-2:ステアリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-3:ステアリン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-4:エチレングリコールを9モル重合させた化合物1モルとラウリン酸2モルとのエステル化合物
A-5:エチレングリコールを23モル重合させた化合物1モルとステアリン酸2モルとのエステル化合物
A-6:ヤシ脂肪酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-7:エチレングリコールを14モル重合させた化合物1モルとオレイン酸2モルとのエステル化合物
A-8:オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-9:オレイン酸1モルに対しエチレンオキサイドを30モル付加させた化合物
A-10:エチレングリコールを9モル重合させた化合物1モルとオレイン酸1モルとのエステル化合物
(脂肪酸(B1)又は油脂(B2))
B-1:牛脂
B-2:ステアリン酸
B-3:パルミチン酸
B-4:ヤシ油
B-5:パーム油
B-6:ベヘニン酸
B-7:パーム硬化油
B-8:ひまし硬化油
B-9:ひまし油
B-10:オレイン酸
B-11:豚脂
B-12:ラウリン酸
B-13:ヤシ脂肪酸
(酸化防止剤(C))
C-1:フェノール系酸化防止剤である1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン
C-2:フェノール系酸化防止剤であるペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]
C-3:リン系酸化防止剤である3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン
C-4:チオエーテル系酸化防止剤であるジトリデカン-1-イル=3,3′-スルファンジイルジプロパノアート
C-5:チオエーテル系酸化防止剤である2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]
(潤滑剤(D))
D-1:ステアリルステアラート
D-2:鉱物油(粘度500秒)
D-3:ジメチルシリコーン
D-4:鉱物油(粘度180秒)
D-5:アミノシリコーン
D-6:パラフィンワックス
D-7:鉱物油(粘度60秒)
D-8:グリセリンモノオレアート
D-9:鉱物油(粘度80秒)
D-10:ソルビタントリステアラート
D-11:ソルビタンモノステアラート
(アニオン界面活性剤(E))
E-1:ラウリルリン酸エステルカリウム塩
E-2:ジオクチルスルホサクシナートナトリウム塩
E-3:テトラデカンスルホナートナトリウム塩
E-4:オレイン酸ナトリウム
E-5:牛脂硫酸エステルナトリウム塩
E-6:ステアリン酸カリウム
(その他成分)
F-1:ステアリルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
F-2:C12-13アルコール1モルに対しエチレンオキサイド6モルとプロピレンオキサイド2モルをランダム付加させた化合物
F-3:イソデシルアルコール1モルに対しエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物
F-4:イソデシルアルコール1モルに対しプロピレンオキサイドを2モル付加させた後、エチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
F-5:ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
F-6:ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイド20モルを付加させた後、ステアリン酸3モルを付加させた化合物
F-7:プロピレングリコールを8モル重合させた化合物
F-8:エチレングリコールを45モル重合させた化合物
試験区分2<ビスコースレーヨン繊維への処理剤の付着>
試験区分1で調製した各処理剤の10%水性液を、更に水で希釈して0.2%水性エマルジョン(質量%)を調製した。各例の水性エマルジョンを、繊度1.3×10-4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのビスコースレーヨン繊維に、付着量(溶媒を除く)が0.2質量%となるようにスプレー給油で付着させた。80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調潤して、処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維を得た。
【0064】
試験区分3<処理剤の評価>
(評価試験)
処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維を用いて、脱落起泡性試験、綿臭気試験、綿変色試験、カード通過性試験、乳化安定性試験の各試験を行った。各試験の手順について以下に示す。また、各試験結果を表2に示す。
【0065】
(脱落起泡性試験)
まず、処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維20gを150gの水に投入し、15分後にハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10gを25ml共栓付メスシリンダーに入れて30秒間強振した。30秒間静置した後、再度30秒間強振した。5分間静置した後、水面から泡の上面までの高さを測った。結果を表2の「脱落起泡性試験」欄に示す。
【0066】
脱落起泡性試験の評価基準
◎(良好);水面から泡の上面までの高さが1mm未満
○(可);水面から泡の上面までの高さが1mm以上且つ2mm未満
×(不可);水面から泡の上面までの高さが2mm以上
(綿臭気試験)
処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維20gを150gの水に投入し、30分間密閉した後に臭気を嗅いだ。綿臭気試験は、10人の試験者に対して行った。結果を表2の「綿臭気試験」欄に示す。
【0067】
綿臭気試験の評価基準
◎◎(優れる);臭気有りの判定者なし
◎(良好);1~2人が臭気有りと判定
○(可);3~5人が臭気有りと判定
×(不可);6人以上が臭気有りと判定
(綿変色試験)
処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維に、処理剤の付着前と比較して黄ばむ等の変色が生じたか否かを判定した。綿変色試験は、10人の試験者に対して行った。結果を表2の「綿変色試験」欄に示す。
【0068】
綿変色試験の評価基準
◎◎(優れる);変色有りの判定者なし
◎(良好);1~2人が変色有りと判定
○(可);3~5人が変色有りと判定
×(不可);6人以上が変色有りと判定
(カード通過性の評価)
処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維20gを、20℃で65%RHの恒温室内で24時間調湿した後、ミニチュアカード機に供した。投入量に対する排出量の割合を算出し、下記の評価基準で評価した。結果を表2の「カード通過性試験」欄に示す。
【0069】
カード通過性の評価基準
◎(良好):排出量が90%以上
○(可):排出量が80%以上90%未満
×(不可):排出量が80%未満
(乳化安定性の評価)
試験区分1で調製した各処理剤の10%水性液を、100mlニンジン型沈殿瓶に100g入れて、25℃で静置した。24時間経過後に沈殿量を確認し、下記の評価基準で評価した。結果を表2の「乳化安定性試験」欄に示す。
【0070】
乳化安定性の評価基準
◎(良好);沈殿量が0.1ml以下
○(可);沈殿量が0.1ml超0.5ml以下
×(不可);沈殿量が0.5ml超
【0071】
【表2】
表2の結果から明らかなように、本発明の処理剤によれば、水流交絡で使用した水の脱落起泡の低減効果を向上できるという効果がある。また、処理剤を付着させた繊維の綿臭気を少なくできるという効果がある。