(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039911
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/70 20060101AFI20240315BHJP
F16K 31/66 20060101ALI20240315BHJP
F16K 31/02 20060101ALI20240315BHJP
F16K 99/00 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
F16K31/70 Z
F16K31/66
F16K31/02 Z
F16K99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144640
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小原 公和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇気
(72)【発明者】
【氏名】小宅 教文
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
【テーマコード(参考)】
3H057
3H062
【Fターム(参考)】
3H057AA06
3H057BB06
3H057CC01
3H057DD28
3H057FC02
3H057FC08
3H057FD05
3H057FD14
3H062AA02
3H062BB05
3H062CC04
3H062DD01
3H062EE07
3H062FF21
3H062GG01
3H062GG06
3H062HH01
(57)【要約】
【課題】駆動部の変位を梃子の原理で増幅して弁体に伝える弁装置において、弁体に流体力が作用している状態における駆動部の変位量を確保する。
【解決手段】マイクロバルブは、駆動部Y122と、駆動部Y122の変位を増幅する可動部Y127と、可動部Y127によって増幅された変位が伝達される弁体Y131と、を備える。可動部Y127は、駆動部Y122の変位を力点で受けると、所定の支点を中心に回転するとともに、弁体Y131との接続位置を作用点として弁体Y131を動かす。駆動部Y122は、可動部Y127に接続される軸部Y125と、軸部Y125に接続される複数の第1リブY123および複数の第2リブY124と、を含む。軸部Y125は、各リブY123、Y124が接続される根元部分Y125bの剛性が、根元部分Y125bから可動部Y127までの先端部分Y125aの剛性よりも大きい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁装置であって、
流体が流通する流体室(Y19)と、
通電の有無に応じて自らの温度が変化することで変位する駆動部(Y122)と、
前記駆動部の変位を増幅する可動部(Y127)と、
前記可動部によって増幅された変位が伝達されることで動いて前記流体室に連通する流路孔(Y16、Y17)を開閉する弁体(Y131)と、を備え、
前記可動部は、前記駆動部が温度変化によって変位した際に、前記駆動部の変位を力点(YV1、YV2)で受けることで、所定の支点(Y126、Y130)を中心に回転するとともに、前記弁体との接続位置を作用点(YV3)として前記弁体を前記流体室で動かすように構成されており、
前記駆動部は、
前記可動部に接続される軸部(Y125)と、
前記軸部に接続され、通電による熱膨張によって前記軸部の軸心に沿う軸方向に前記軸部を変位させる複数のリブ(Y123、Y124)と、を含み、
前記軸部は、前記複数のリブが接続されるリブ側部分(Y125b)および前記リブ側部分から前記可動部までの可動側部分(Y125a)を含み、前記リブ側部分の前記軸方向の剛性が、前記可動側部分の前記軸方向の剛性よりも大きくなっている、弁装置。
【請求項2】
前記リブ側部分は、前記軸方向に直交する方向の断面積が、前記可動側部分よりも大きくなっている、請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
第1外層(Y11)、第2外層(Y13)、前記第1外層と前記第2外層に挟まれる中間層(Y12)を含む積層体として構成され、
前記流体室、前記駆動部、前記可動部、前記弁体は、前記中間層に設けられており、
前記第1外層、前記中間層、および前記第2外層が積層される方向を積層方向とし、前記積層方向および前記軸方向に直交する方向を軸直交方向としたとき、
前記リブ側部分は、前記積層方向における厚み(Th)に比べて、前記軸直交方向の長さ(Wr)の方が大きくなっている、請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記可動部は、前記駆動部の変位を増幅する増幅部(Y128、Y129)を複数有する、請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項5】
前記力点は、第1力点(YV1)であり、
前記支点は、第1支点部(Y126)および第2支点部(Y130)を含み、
前記可動部は、
前記駆動部の変位を前記第1力点で受けることで、前記第1支点部を中心に回転して前記駆動部の変位を増幅する第1増幅部(Y128)と、
前記第1増幅部で増幅された変位を第2力点(YV2)で受けることで、前記第2支点部を中心に回転するとともに、前記作用点において前記弁体を付勢して前記弁体を前記流体室で動かす第2増幅部(Y129)と、を有する、請求項1または2に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通電の有無に応じた温度変化によって変位する駆動部と、駆動部の変位を梃子の原理で増幅する可動部と、可動部によって増幅された変位が伝達されることで動いて流路孔を開閉する弁体とを有するマイクロバルブが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014-0374633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のマイクロバルブにおいて、弁体に流体力が作用している状態で弁体を大きく動かしたい場合があるが、本発明者らの検討によれば、駆動部における軸部分の根元側の剛性が不足し、軸部分の意図しない変形によって駆動部の変位量が小さくなる虞がある。このことは、マイクロバルブに限らず、梃子の原理を利用して弁体を動かす弁装置全般においても言える。
【0005】
本開示は、通電の有無に応じた温度変化によって発生する駆動部の変位を梃子の原理で増幅して弁体に伝える弁装置において、弁体に流体力が作用している状態における駆動部の変位量を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
弁装置であって、
流体が流通する流体室(Y19)と、
通電の有無に応じて自らの温度が変化することで変位する駆動部(Y122)と、
駆動部の変位を増幅する可動部(Y127)と、
可動部によって増幅された変位が伝達されることで動いて流体室に連通する流路孔(Y16、Y17)を開閉する弁体(Y131)と、を備え、
可動部は、駆動部が温度変化によって変位した際に、駆動部の変位を力点(YV1、YV2)で受けることで、所定の支点(Y126、Y130)を中心に回転するとともに、弁体との接続位置を作用点(YV3)として弁体を流体室で動かすように構成されており、
駆動部は、
可動部に接続される軸部(Y125)と、
軸部に接続され、通電による熱膨張によって軸部の軸心に沿う軸方向に軸部を変位させる複数のリブ(Y123、Y124)と、を含み、
軸部は、複数のリブが接続されるリブ側部分(Y125b)およびリブ側部分から可動部までの可動側部分(Y125a)を含み、リブ側部分の軸方向の剛性が、可動側部分の軸方向の剛性よりも大きくなっている。
【0007】
このように、梃子の原理を利用する可動部を備える構成において、駆動部の軸部の根元側にあるリブ側部分の剛性を大きくすれば、弁体に流体力が作用している状態で弁体を大きく動かしたい場合でも、駆動部の軸部の意図しない変形が抑制される。このため、弁体に流体力が作用している状態で弁体を大きく動かしたい場合でも、駆動部の変位量を確保することができる。
【0008】
ここで、軸部全体の剛性を高めることでも、軸部の意図しない変形を抑制可能であるが、この場合、温度変化による軸部の変位が制限される虞がある。このため、軸部全体の剛性を高めるのではなく、リブ側部分の剛性を可動側部分の剛性よりも高めることが望ましい。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るマイクロバルブの模式的な正面図である。
【
図3】マイクロバルブの模式的な分解斜視図である。
【
図4】非通電時におけるマイクロバルブの中間層の模式的な正面図である。
【
図5】通電時における中間層の模式的な正面図である。
【
図6】弁体に作用する流体力の影響を説明するための説明図である。
【
図7】マイクロバルブの駆動部の軸部における軸方向の剛性を説明するための説明図である。
【
図8】駆動部近傍を拡大した模式的な正面図である。
【
図9】駆動部の軸部における可動側部分の断面図である。
【
図10】駆動部の軸部におけるリブ側部分の断面図である。
【
図11】第1実施形態の比較例となるマイクロバルブの中間層の模式的な正面図である。
【
図12】可動側部分の軸直交方向の長さに対するリブ側部分の軸直交方向の長さの比と弁体の変位量との関係を説明するための説明図である。
【
図13】第2実施形態に係るマイクロバルブの模式的な分解斜視図である。
【
図14】マイクロバルブの中間層の模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図12を参照して説明する。
図1、
図2、
図3に示すように、マイクロバルブY1は、板形状の弁部品であり、主として半導体チップによって構成されている。したがって、マイクロバルブY1を小型に構成できる。マイクロバルブY1への供給電力が切り替わることで、マイクロバルブY1の流路構成が変化する。マイクロバルブY1は、例えば、それ自体が流体(例えば、気体、液体)の流路を開閉する弁であってもよいし、他の弁を駆動するパイロット弁であってもよい。
【0013】
マイクロバルブY1は、いずれも半導体である第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13を備えたMEMSバルブである。第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13は、それぞれが概ね同じ外形を有する長方形の板形状の部材であり、第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13の順に積層されている。すなわち、マイクロバルブY1は、第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13を含む積層体として構成されている。中間層Y12は、第1外層Y11と第2外層Y13に両側から挟まれている。第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13のうち、第2外層Y13が、流体が流通する外部流路に隣接して配置される。後述する第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13の構造は、化学的エッチング等の半導体製造プロセスによって形成される。
【0014】
ここで、本実施形態では、第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13が積層される方向を積層方向Dstとしている。また、本実施形態では、積層方向Dstに直交するとともに後述の駆動部Y122の軸部Y125の軸心CLに沿う方向を軸方向Daxとし、積層方向Dstおよび軸方向Daxに直交する方向を軸直交方向Dorとしている。なお、本実施形態では、軸方向DaxがマイクロバルブY1の短手方向に対応し、軸直交方向DorがマイクロバルブY1の長手方向に対応している。
【0015】
本実施形態のマイクロバルブY1は、積層方向Dstの厚みが例えば2mmであり、軸方向Daxの長さが例えば10mmであり、短手方向の長さが例えば5mmである。なお、マイクロバルブY1のサイズはこれに限定されない。また、マイクロバルブY1の外形状は、
図1、
図2等に図示されたものに限定されない。
【0016】
第1外層Y11は、導電性の半導体部材の表面に非導電性の酸化膜が形成された電極ポート層である。第1外層Y11には、
図3に示すように、表裏に貫通する2つの貫通孔Y14、Y15が形成されている。この貫通孔Y14、Y15に、それぞれ、図示しない電気配線の端が挿入される。なお、他の例として、貫通孔Y14、Y15は、両方が第2外層Y13に形成されていてもよいし、一方が第1外層Y11に形成され、他方が第2外層Y13に形成されてもよい。
【0017】
第2外層Y13は、導電性の半導体部材の表面に非導電性の酸化膜が形成された流路孔層である。第2外層Y13には、
図3に示すように、表裏に貫通する第1流路孔Y16、第2流路孔Y17が形成されている。
【0018】
具体的には、第1流路孔Y16は、第2外層Y13において軸方向Daxに伸びる長方形形状となっている。また、第2流路孔Y17は、複数のサブ流路孔Y171、Y172、Y173、Y174、Y175によって構成されている。複数のサブ流路孔Y171~Y175は、第1流路孔Y16に対して第2外層Y13の軸直交方向Dorにずれた位置に配置されている。また、サブ流路孔Y171~Y175は、第2外層Y13において軸方向Daxに一列に並んでいる。また、サブ流路孔Y171~Y175の各々は、長方形形状を有し、第2外層Y13において軸直交方向Dorに伸びている。これらサブ流路孔Y171~Y175が、全体として、第2流路孔Y17を構成する。なお、他の例として、第1流路孔Y16、第2流路孔Y17は、両方が第1外層Y11に形成されていてもよいし、一方が第1外層Y11に形成され、他方が第2外層Y13に形成されてもよい。
【0019】
中間層Y12は、導電性の半導体部材であり、第1外層Y11と第2外層Y13に挟まれたアクチュエータ層である。中間層Y12は、第1外層Y11の酸化膜と第2外層Y13の酸化膜に接触するので、第1外層Y11と第2外層Y13とも電気的に非導通である。
【0020】
中間層Y12は、第2流路孔Y17の流路開度を調整する調整層である。具体的には、中間層Y12は、
図4に示すように、中間固定部Y121、駆動部Y122、第1支点部Y126、可動部Y127、第2支点部Y130、弁体Y131を有している。
【0021】
中間固定部Y121は、第1外層Y11、第2外層Y13に対して接着等で固定された部材である。中間固定部Y121は、第1固定部Y121a、第2固定部Y121b、第3固定部Y121c、第4固定部Y121dを含んでいる。
【0022】
第1固定部Y121aは、中間層Y12の外枠を構成する。第1固定部Y121aは、第2固定部Y121b、第3固定部Y121c、第4固定部Y121d、駆動部Y122、第1支点部Y126、可動部Y127、第2支点部Y130、弁体Y131を流体室Y19内にスリットで隔てて囲むように形成されている。
【0023】
流体室Y19は、流体が流通する室であり、第1固定部Y121a、第1外層Y11、第2外層Y13によって囲まれている。第1固定部Y121a、第1外層Y11、第2外層Y13は、全体として基部に対応する。なお、電気配線は、駆動部Y122の温度を変化させて変位させるための配線である。
【0024】
第1固定部Y121aの第1外層Y11および第2外層Y13に対する固定は、流体がこの流体室Y19から第1流路孔Y16、第2流路孔Y17以外を通ってマイクロバルブY1から漏出することを抑制するような形態で、行われている。
【0025】
第2固定部Y121bは、第1固定部Y121aに取り囲まれている。第2固定部Y121bは、スリットを介して第1固定部Y121aおよび第4固定部Y121dから離れて配置される。
【0026】
第3固定部Y121cは、第1固定部Y121aに取り囲まれている。第3固定部Y121cは、第1固定部Y121a、可動部Y127、駆動部Y122からスリットを介して離れて配置される。また、第3固定部Y121cは、第2固定部Y121bからも離れている。第3固定部Y121cは、駆動部Y122を構成する複数の第1リブY123と可動部Y127の間に配置されている。
【0027】
第4固定部Y121dは、第1固定部Y121aに取り囲まれると共に、第1固定部Y121a、第2固定部Y121b、駆動部Y122を構成する複数の第2リブY124、可動部Y127から、スリットを介して離れて配置される。また、第4固定部Y121dは、第3固定部Y121cからも離れている。第4固定部Y121dは、複数の第2リブY124と可動部Y127の間に配置されている。
【0028】
駆動部Y122、第1支点部Y126、可動部Y127、第2支点部Y130、弁体Y131は、第1外層Y11および第2外層Y13に対して固定されておらず、第1外層Y11および第2外層Y13に対して変位可能になっている。
【0029】
駆動部Y122は、通電の有無に応じて自らが変位する部材である。駆動部Y122は、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124、および軸部Y125を含んでいる。駆動部Y122は、少なくとも一部が通電により発熱する発熱部HPを構成している。
【0030】
軸部Y125は、中間層Y12における短手方向に沿って直線状に延びている。本実施形態の軸部Y125は、後述する可動部Y127の第1増幅部Y128および第2増幅部Y129それぞれの長手方向に交差する方向に延びている。軸部Y125は、軸部Y125の軸心CLに沿う軸方向Daxの一端側である先端部分Y125aが可動部Y127に接続されている。また、軸部Y125は、軸方向Daxの他端側である根元部分Y125bが複数の第1リブY123および複数の第2リブY124が接続されている。本実施形態では、根元部分Y125bが複数のリブが接続される“リブ側部分”を構成し、先端部分Y125aが“リブ側部分”から可動部Y127までの“可動側部分”を構成している。軸部Y125の詳細は後述する。
【0031】
複数の第1リブY123および複数の第2リブY124は、軸部Y125に接続され、通電による熱膨張によって軸方向Daxに軸部Y125を変位させる“複数のリブ”である。
【0032】
複数の第1リブY123は、軸部Y125における軸直交方向Dorの一方側に配置されている。複数の第1リブY123は、軸方向Daxにスリットを隔てて並んでいる。各第1リブY123は、細長い棒形状を有しており、温度に応じて伸縮可能となっている。本実施形態では、2本の第1リブY123が設けられているものを例示しているが、第1リブY123の本数は、3本以上であってもよい。
【0033】
各第1リブY123は、軸直交方向Dorの一端が第1固定部Y121aに接続され、他端が軸部Y125の根元部分Y125bに接続される。各第1リブY123は、第1固定部Y121a側から軸部Y125側に近付くほど、軸部Y125の先端側に向けてオフセットされるよう、軸部Y125に対して斜めに延びている。そして、複数の第1リブY123は、互いに対して平行に伸びている。
【0034】
複数の第2リブY124は、軸部Y125における軸直交方向Dorの他方側に配置されている。複数の第2リブY124は、軸方向Daxにスリットを隔てて並んでいる。各第2リブY124は、細長い棒形状を有しており、温度に応じて伸縮可能となっている。本実施形態では、2本の第1リブY123が設けられているものを例示しているが、第1リブY123の本数は、3本以上であってもよい。
【0035】
各第2リブY124は、軸直交方向Dorの一端が第2固定部Y121bに接続され、他端が軸部Y125の根元部分Y125bに接続される。各第2リブY124は、第2固定部Y121b側から軸部Y125側に近付くほど、軸部Y125の先端側に向けてオフセットされるよう、軸部Y125に対して斜めに延びている。そして、複数の第2リブY124は、互いに対して平行に伸びている。
【0036】
第1支点部Y126は、軸部Y125と非直交かつ平行に伸びる棒形状を有している。第1支点部Y126は、一端が可動部Y127の第1増幅部Y128に接続されており、他端が第3固定部Y121cに接続されている。第1支点部Y126は、第1増幅部Y128の長手方向と交差するように軸方向Daxに延びている。第1支点部Y126は、積層方向Dstに拡がる側面がスリットに面している。
【0037】
可動部Y127は、駆動部Y122の変位を増幅する変位増幅部材である。可動部Y127は、駆動部Y122が温度変化によって変位した際、駆動部Y122の変位を力点で受けることで、所定の支点を中心に回転するとともに、弁体Y131との接続位置を作用点YV3として弁体Y131を流体室Y19で動かすように構成されている。
【0038】
可動部Y127は、駆動部Y122の変位を増幅する増幅部を複数有する。本実施形態の可動部Y127は、一段目の増幅部を構成する第1増幅部Y128と、二段目の増幅部を構成する第2増幅部Y129を有する。
【0039】
第1増幅部Y128は、軸部Y125および第1支点部Y126に対して約90°で交差する方向に伸びる細長い棒形状を有している。第1増幅部Y128は、温度に応じて伸縮可能となっている。また、第1増幅部Y128の大部分は、第2増幅部Y129の長手方向に沿って伸びている。
【0040】
第1増幅部Y128は、その長手方向の一端側が第1支点部Y126に接続されている。また、第1増幅部Y128の第1支点部Y126とは反対側の端部は、第2増幅部Y129側に折れ曲がり、折れ曲がった先で第2増幅部Y129に接続されている。なお、第1増幅部Y128のうち、第2増幅部Y129の長手方向に沿って伸びている部分は、直線的に伸びていてもよいし、緩やかにカーブしていてもよいし、蛇行して全体として第2増幅部Y129の長手方向に沿って伸びていてもよい。なお、第1増幅部Y128のうち、第2増幅部Y129の長手方向に沿って伸びている部分は、全体として、第2増幅部Y129の長手方向とのなす角度が45°未満となっていればよい。
【0041】
ここで、第1支点部Y126と、第1力点YV1と、第2力点YV2との位置関係について説明する。第1力点YV1は、軸部Y125と第1増幅部Y128の接続位置である。第2力点YV2は、第1増幅部Y128と第2増幅部Y129の接続位置である。
【0042】
第1支点部Y126、第1力点YV1、第2力点YV2は、第1増幅部Y128の長手方向に沿って、第1増幅部Y128の第1支点部Y126側の端部から第2増幅部Y129側の端部に向けて、この順に並んでいる。したがって、第1支点部Y126から第2力点YV2までの距離は、第1支点部Y126から第1力点YV1までの距離よりも長い。この関係は、ここでいう距離が直線距離であっても成立し、ここでいう距離が第1増幅部Y128の長手方向に沿った距離であっても成立する。
【0043】
このように構成される第1増幅部Y128は、駆動部Y122の変位を第1力点YV1で受けることで、第1支点部Y126を中心に回転して駆動部Y122の変位を増幅する。すなわち、第1増幅部Y128は、第1支点部Y126を支点とし、第1力点YV1を力点とし、第2力点YV2を作用点とする梃子として機能する。具体的には、第1増幅部Y128は、支点と作用点との間に力点がある“第3の梃子”として機能する。
【0044】
第2支点部Y130は、第2増幅部Y129に交差して伸びる棒形状を有している。本実施形態の第2支点部Y130は、第2増幅部Y129の長手方向と交差するように軸方向Daxに延びている。第2支点部Y130の延伸方向の一端は、第2増幅部Y129に接続されている。第2支点部Y130の延伸方向の他端は、第4固定部Y121dに接続されている。第2支点部Y130は、積層方向Dstに拡がる側面がスリットに面している。
【0045】
第2増幅部Y129は、軸直交方向Dorに沿って伸びる細長い棒形状を有している。第2増幅部Y129の一方側の端部は、第2支点部Y130に接続されている。第2増幅部Y129の第2支点部Y130側とは反対側の端部は、弁体Y131に接続されている。第2増幅部Y129の第2支点部Y130側の端部から弁体Y131側の端部までの、軸直交方向Dorに沿った長さは、中間層Y12の軸直交方向Dorの全長の1/2以上である。このように第2増幅部Y129を長く形成することで、第2増幅部Y129による梃子の作用を大きくすることができる。
【0046】
ここで、第2支点部Y130と、第2力点YV2と、作用点YV3との位置関係について説明する。作用点YV3は、第2増幅部Y129と弁体Y131の接続位置である。なお、第2力点YV2は、第2増幅部Y129にとっては力点であるが、第1増幅部Y128にとっては作用点である。
【0047】
第2支点部Y130、第2力点YV2、作用点YV3は、第2増幅部Y129の長手方向に沿って、第2増幅部Y129の第2支点部Y130側の端部から弁体Y131側の端部に向けて、この順に並んでいる。したがって、第2支点部Y130から作用点YV3までの距離は、第2支点部Y130から第2力点YV2までの距離よりも長い。この関係は、ここでいう距離が直線距離であっても成立し、ここでいう距離が第2増幅部Y129の長手方向に沿った距離であっても成立する。
【0048】
このように構成される第2増幅部Y129は、第1増幅部Y128で増幅された変位を第2力点YV2で受けることで、第2支点部Y130を中心に回転するとともに、作用点YV3において弁体Y131を付勢して弁体Y131を流体室Y19で動かす。すなわち、第2増幅部Y129は、第2支点部Y130を支点とし、第2力点YV2を力点とし、第2増幅部Y129と弁体Y131の接続部位を作用点YV3とする梃子として機能する。具体的には、第2増幅部Y129は、支点と作用点との間に力点がある“第3の梃子”として機能する。
【0049】
弁体Y131は、可動部Y127によって増幅された変位が伝達されることで動いて流体室Y19に連通する第1流路孔Y16および第2流路孔Y17の少なくとも一方を開閉する。
【0050】
本実施形態の弁体Y131は、ベース部80と、複数のサブ弁体81、82、83、84、85と、これら複数のサブ弁体81~85を補強する8個の補強部86とを有している。ベース部80と、サブ弁体81~85と、複数の補強部86は、全体として一体に形成されているが、他の例として、別体に形成された後に接合されてもよい。
【0051】
なお、
図3、
図4では、サブ弁体81~85の数が5個であるが、他の例として、2個以上4個以下でもよいし、6個以上でもよい。また、
図3、
図4の例では、補強部86の数は8個であるが、他の例として7個以下(例えば1個、2個)であってもよいし、9個以上であってもよい。また、サブ弁体81~85のうちどの隣り合うサブ弁体間にも、それらに接続される2個の補強部86が設けられているが、隣り合うサブ弁体間に設けられる補強部86の数は2個に限られない。また、サブ弁体81~85のうち一部の隣り合うサブ弁体間にのみ、補強部86が設けられていてもよい。
【0052】
ベース部80は、作用点YV3において第2増幅部Y129と接続すると共に、軸方向Daxに伸びる部材である。サブ弁体81~85は、軸方向Daxに一列に離間して並んでいる。また、サブ弁体81~85の各々の長手方向は、軸直交方向Dorに伸びている。また、サブ弁体81~85の各々の長手方向の第2増幅部Y129側の端部は、ベース部80に接続されている。
【0053】
また、サブ弁体81~85の各々には、積層方向Dstにおける一方側端から他方側端まで貫通すると共に軸直交方向Dorに伸びる貫通孔81a、82a、83a、84a、85aが形成されている。したがって、サブ弁体81~85は、それぞれ、貫通孔81a~85aを環状に囲む枠体である。
【0054】
図3に示すように、サブ弁体81~85の内周縁は、それぞれ、サブ流路孔Y171~Y175の外周縁を外側から全周に亘って囲むことができるよう、サブ流路孔Y171~Y175の外周縁よりも広く形成されている。
【0055】
また、サブ弁体81~85の各々は、積層方向Dstの一端において第1外層Y11に接触し他端において第2外層Y13に接触する。これによりサブ弁体81~85は、流体室Y19においてそれぞれ貫通孔81a~85aとそれ以外の部分との間をシールする。
【0056】
補強部86の各々は、サブ弁体81~85のうち隣り合ういずれか2つのサブ弁体の間で、それら2つのサブ弁体に両端で繋がるよう、軸方向Daxに伸びている。なお、他の例として、1つの補強部86が三又以上に分かれてサブ弁体81~85のうち3つ以上に繋がっていてもよい。これら補強部86により、弁体Y131全体の強度が向上している。各補強部86は、第1外層Y11と第2外層Y13のうち一方または両方と離間している。すなわち、各補強部86は流体室Y19内で流体のシールとしては機能しない。
【0057】
ここで、第1固定部Y121aのうち、複数の第1リブY123と接続する部分の近傍の第1印加点Y132には、
図3に示した第1外層Y11の貫通孔Y14を通る電気配線の一端が接続される。また、第2固定部Y121bの第2印加点Y133には、
図3に示した第1外層Y11の貫通孔Y15を通る電気配線の一端が接続される。これら電気配線の他端側にある回路によって、マイクロバルブY1への通電、非通電の切り替えが行われる。
【0058】
次に、マイクロバルブY1の作動について説明する。マイクロバルブY1への通電が行われていない状態では、中間層Y12は
図4に示した状態になっている。このとき、第1流路孔Y16は流体室Y19に対して連通しているが、サブ流路孔Y171~Y175は、それぞれ、サブ弁体81~85に囲まれている。したがって、流体室Y19において、第1流路孔Y16に対してサブ流路孔Y171~Y175がサブ弁体81~85によって遮断されている。このときの弁体Y131の位置を、非通電時位置という。この場合、マイクロバルブY1は閉弁状態となっている。
【0059】
マイクロバルブY1への通電が開始されると、電気配線によって第1印加点Y132、第2印加点Y133の間に電圧が印加される。ここでは、一例として、第1印加点Y132が12V、第2印加点Y133が0Vとなる電圧が印加されるとするが、これに限られない。
【0060】
電圧が印加されると、中間層Y12において、
図5に示すように、第2固定部Y121bの電位が12Vとなり、第1固定部Y121aの電位が0Vとなる。したがって、第2固定部Y121bが、複数の第2リブY124、軸部Y125、複数の第1リブY123を介して、第1固定部Y121aと導通する。その結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々において、破線矢印のように電流が流れる。この電流によって、複数の第1リブY123、軸部Y125、複数の第2リブY124が発熱する。その結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々が、その長手方向に膨張する。なお、第3固定部Y121c、第4固定部Y121d、第2増幅部Y129、弁体Y131の電位は、軸部Y125と同様の電位、すなわち、12Vの半分の6V程度になる。そして、第1増幅部Y128、第2増幅部Y129、弁体Y131には、電流が流れない。したがって、第1増幅部Y128では、通電に起因した発熱も、その発熱に起因した膨張もない。
【0061】
このような熱的な膨張の結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124は、軸部Y125を第1力点YV1側に付勢する。付勢された軸部Y125は、第1力点YV1において、第1増幅部Y128を押す。その結果、第1増幅部Y128は、第1支点部Y126を支点として、第1支点部Y126を中心に回転する。第1増幅部Y128の第1支点部Y126とは反対側の端部も、第2力点YV2において、第2増幅部Y129を押す方向に、移動する。
【0062】
これにより、第2増幅部Y129は、第2支点部Y130を支点として、第2支点部Y130を中心に回転する。その結果、第2増幅部Y129の第2支点部Y130とは反対側の端部に接続された弁体Y131が、
図5に示すように、軸方向Daxに移動する。移動した後の弁体Y131の位置を、通電時位置という。
【0063】
弁体Y131が通電時位置にあるとき、サブ弁体81~85の貫通孔81a~85aとサブ流路孔Y171~Y175の相対位置関係が変化する。具体的には、サブ流路孔Y171~Y175の一部または全部が、それぞれ、貫通孔81a~85aからはみ出す。その結果、流体室Y19において、第1流路孔Y16がサブ流路孔Y171~Y175と連通する。この場合、マイクロバルブY1は開弁状態となっている。このとき、マイクロバルブY1の外部、第1流路孔Y16、流体室Y19、サブ流路孔Y171~Y175、マイクロバルブY1の外部を、この順に、あるいはこの逆順に、流体が流通する。
【0064】
このようなマイクロバルブY1への通電時、第1印加点Y132、第2印加点Y133を介してマイクロバルブY1に供給される電力が大きいほど、非通電時位置に対する弁体Y131の移動量も大きくなる。これは、マイクロバルブY1に供給される電力が高いほど、第1リブY123、第2リブY124の温度が高くなり、膨張度合いが大きいからである。例えば第1印加点Y132、第2印加点Y133へ印加される電圧がPWM制御される場合、電圧のデューティ比が大きいほど非通電時に対する弁体Y131の移動量も大きくなる。なお、通電量が変化すると、サブ流路孔Y171~Y175のうちそれぞれ貫通孔81a~85aからはみ出す部分のサイズが変化する。したがって、通電量を変化させることで、マイクロバルブY1内の流体の流量を調整することができる。
【0065】
また、マイクロバルブY1への通電が停止されたときは、電気配線から第1印加点Y132、第2印加点Y133への電圧印加が停止される。すると、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124を電流が流れなくなり、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の温度が低下する。その結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々が、その長手方向に収縮する。
【0066】
これにより、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124は、軸部Y125を第1力点YV1側とは反対側に付勢する。付勢された軸部Y125は、第1力点YV1側において、第1増幅部Y128を軸部Y125側に引っ張る。その結果、第1増幅部Y128は、第1支点部Y126を支点として、第1支点部Y126を中心に回転する。その結果、第1増幅部Y128の第1支点部Y126とは反対側の端部が、
図4に示すように、軸方向Daxに移動する。
【0067】
このような熱的な収縮の結果、弁体Y131は、所定の非通電時位置に戻って停止する。このような作動により、サブ弁体81~85は、流体室Y19内で動くことでそれぞれサブ流路孔Y171~Y175の第1流路孔Y16に対する開度を調整する。
【0068】
以上のように構成されたマイクロバルブY1は、電磁弁およびステッピングモータと比べて容易に小型化できる。その理由の1つは、マイクロバルブY1が上述の通り半導体チップにより形成されていることである。また、上述の通り、梃子を利用して熱的な膨張による変位量が増幅されることも、そのような梃子を利用せずに電磁弁またはステッピングモータを利用する弁装置と比べた場合、小型化に寄与する。また、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の変位は熱に起因して発生するので、騒音低減効果が高い。
【0069】
また、梃子を利用しているので、熱的な膨張による変位量を弁体Y131の移動量より抑えることができるので、弁体Y131を駆動するための消費電力も低減することができる。また、電磁弁の駆動時における衝撃音を無くすことができるので、騒音を低減することができる。
【0070】
ところで、
図6に示すように、弁体Y131に対して、例えば、0.2[N]程度の流体力FPが作用している状態で、弁体Y131を大きく動かしたい場合がある。この場合、駆動部Y122における軸部Y125の根元部分Y125bの剛性が不足し、根元部分Y125bの意図しない変形によって駆動部Y122の変位量が小さくなる虞がある。
【0071】
このことを考慮し、マイクロバルブY1は、
図7に示すように、軸部Y125における根元部分Y125bの軸方向Daxの剛性が、先端部分Y125aの軸方向Daxの剛性よりも大きくなっている。
【0072】
本実施形態の軸部Y125は、
図8、
図9、
図10に示すように、根元部分Y125bにおける軸方向Daxに直交する方向の断面積が、先端部分Y125aにおける軸方向Daxに直交する方向の断面積よりも大きくなっている。
【0073】
先端部分Y125aは、
図9に示すように、断面形状が略正方形形状になっている。すなわち、先端部分Y125aは、軸方向Daxの全体において、積層方向Dstの厚みThと軸直交方向Dorの長さWtとが略同等の大きさになっている。
【0074】
根元部分Y125bは、
図10に示すように、断面形状が扁平な四角形形状になっている。すなわち、根元部分Y125bは、軸方向Daxの全体において、積層方向Dstの厚みThよりも軸直交方向Dorの長さWrが大きくなっている。根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWtは、軸方向Daxの全体において略一定の大きさになっている。なお、根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWtは、先端部分Y125aの軸直交方向Dorの長さWtよりも大きくなっていれば、軸方向Daxにおいて段階的または連続的に変化していてもよい。
【0075】
軸部Y125は、先端部分Y125aおよび根元部分Y125bそれぞれの積層方向Dstの厚みThが略同等の大きさになっている。そして、根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWrが、先端部分Y125aの軸直交方向Dorの長さWtよりも大きくなっている。すなわち、先端部分Y125aの軸直交方向Dorの長さWtに対する根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWrの比は、“1”を超える。
【0076】
根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWrが大きいほど、根元部分Y125bの剛性を大きくすることができるが、その分、駆動部Y122の体格が大型化したり、第1リブY123および第2リブY124の軸直交方向Dorの長さが制限されたりする。第1リブY123および第2リブY124の軸直交方向Dorの長さが制限されることは、弁体Y131の可動範囲が制限されることになるため好ましくない。
【0077】
このことを考慮し、根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWrは、発熱部HP全体の軸直交方向Dorの長さWaの半分以下になっている。本実施形態の根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWrは、発熱部HPの軸直交方向Dorの長さWaの1/3程度の大きさになっている。
【0078】
図11は、本実施形態の比較例となるマイクロバルブR1の中間層R12の模式的な正面図である。なお、理解し易いように、比較例のマイクロバルブR1において、本実施形態のマイクロバルブY1と実質的に同じ構成については、本実施形態のマイクロバルブY1と同様の符号を付している。
【0079】
比較例となるマイクロバルブR1は、
図11に示すように、軸部R125における軸直交方向Dorの断面積が一様になっている。この点が本実施形態のマイクロバルブR1と相違している。根元部分R125bの軸直交方向Dorの長さWrに対する先端部分R125aの軸直交方向Dorの長さWtの比を軸寸法比としたとき、比較例のマイクロバルブR1の軸寸法比は “1”になっている。
【0080】
本発明者らの調査研究によれば、
図12に示すように、軸寸法比が“1”を超えると、所定通電量当たりの弁体Y131の変位量が大きくなることが判っている。前述の如く、本実施形態のマイクロバルブY1は、根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWrが、先端部分Y125aの軸直交方向Dorの長さWtよりも大きいので、マイクロバルブY1の軸寸法比が“1”を超える。このため、本実施形態のマイクロバルブY1は、比較例のマイクロバルブR1に比べて、弁体Y131に流体力FPが作用している状態において弁体Y131の変位量を確保することができる。
【0081】
以上説明したマイクロバルブY1は、駆動部Y122の軸部Y125における根元部分Y125bの軸方向Daxの剛性が、先端部分Y125aの軸方向Daxの剛性よりも大きくなっている。
【0082】
これによれば、弁体Y131に流体力FPが作用している状態で弁体Y131を大きく動かしたい場合でも、駆動部Y122の軸部Y125の意図しない変形が抑制される。このため、弁体Y131に流体力FPが作用している状態で弁体Y131を大きく動かしたい場合でも、駆動部Y122の変位量を確保することができる。
【0083】
この結果、マイクロバルブY1の体格の増大を抑制しつつ開弁時の開口面積を増大させること、あるいは、開弁時の開口面積の低減を抑制しつつ体格を低減することが、可能になる。
【0084】
ここで、軸部Y125全体の剛性を高めることでも、軸部Y125の意図しない変形を抑制可能であるが、この場合、温度変化による軸部Y125の変位が制限される虞がある。このため、軸部Y125全体の剛性を高めるのではなく、根元部分Y125bの剛性を先端部分Y125aの剛性よりも高めることが望ましい。
【0085】
本実施形態のマイクロバルブY1は、以下の特徴を備える。
【0086】
(1)根元部分Y125bは、軸方向Daxに直交する方向の断面積が、先端部分Y125aよりも大きくなっている。このように、根元部分Y125bの断面積が大きくなっていれば、駆動部Y122における軸部Y125の根元側の剛性を確保することができる。また、根元部分Y125bの断面積を先端部分Y125aの断面積よりも大きくすれば、軸部Y125全体の断面積を大きくする場合に比べて、駆動部Y122が大きくなることが抑えられるので、マイクロバルブY1の体格増大を抑制することができる。
【0087】
(2)マイクロバルブY1は、第1外層Y11、第2外層Y13、第1外層Y11と第2外層Y13に挟まれる中間層Y12を含む積層体として構成されている。
【0088】
流体室Y19、駆動部Y122、可動部Y127、弁体Y131は、中間層Y12に設けられている。根元部分Y125bは、積層方向Dstにおける厚みThに比べて、軸直交方向Dorの長さWrの方が大きくなっている。これよると、駆動部Y122の軸部Y125の意図しない変形を抑制する構造を採用することに伴ってマイクロバルブY1の積層方向Dstの体格が増大してしまうことを抑制することができる。
【0089】
(3)可動部Y127は、駆動部Y122の変位を増幅する増幅部を複数有する。このように、複数の増幅部を備えていれば、駆動部Y122の変位が多段階で増幅されるので、弁体Y131に流体力FPが作用している状態で弁体Y131を大きく動かしたい場合でも、駆動部Y122の変位量を確保することができる。本構成によれば、マイクロバルブY1の体格の増大を抑制しつつ開弁時の開口面積を増大させること、あるいは、開弁時の開口面積の低減を抑制しつつ体格を低減することが可能になる。
【0090】
(4)可動部Y127は、駆動部Y122の変位を第1力点YV1で受けることで、第1支点部Y126を中心に回転して駆動部Y122の変位を増幅する第1増幅部Y128を有する。加えて、可動部Y127は、第1増幅部Y128で増幅された変位を第2力点YV2で受けることで、第2支点部Y130を中心に回転するとともに、作用点YV3において弁体Y131を付勢して弁体Y131を流体室Y19で動かす第2増幅部Y129を有する。このように、梃子の原理を利用する第1増幅部Y128および第2増幅部Y129を備えていれば、駆動部Y122の変位が二段階で増幅される。このため、弁体Y131に流体力FPが作用している状態で弁体Y131を大きく動かしたい場合でも、駆動部Y122の変位量を確保することができる。本構成によれば、マイクロバルブY1の体格の増大を抑制しつつ開弁時の開口面積を増大させること、あるいは、開弁時の開口面積の低減を抑制しつつ体格を低減することが可能になる。
【0091】
(5)複数の第1リブY123、複数の第2リブY124、軸部Y125の根元部分Y125bは、通電により発熱する発熱部HPを構成している。根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWrは、発熱部HPにおける軸直交方向Dorの長さWaの半分以下である。
【0092】
駆動部Y122の体格を維持しつつ、根元部分Y125bの剛性を確保するために根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWrを過大にすると、複数の第1リブY123および複数の第2リブY124の軸直交方向Dorの長さを確保し難くなる。このため、根元部分Y125bの軸直交方向Dorの長さWrは、発熱部HPにおける軸直交方向Dorの長さWaの半分以下になっていることが望ましい。
【0093】
(6)また、サブ弁体81~85を補強するための補強部86は、複数のサブ弁体81~85のうち複数に繋がっている。このようになっていることで、補強部86により、流体室Y19内に流入する流体の圧力に対する弁体Y131の強度が増す。
【0094】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図13、
図14を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0095】
本実施形態のマイクロバルブY1は、
図13、
図14に示すように、可動部Y127が単一の増幅部によって構成されている。すなわち、可動部Y127は、第1増幅部Y128が省略され、第2増幅部Y129に対して駆動部Y122の軸部Y125が接続される構造になっている。
【0096】
本実施形態の第2増幅部Y129は、駆動部Y122の変位を第2力点YV2で受けることで、第2支点部Y130を中心に回転するとともに、作用点YV3において弁体Y131を付勢して弁体Y131を流体室Y19で動かす。すなわち、第2増幅部Y129は、第2支点部Y130を支点とし、第2力点YV2を力点とし、第2増幅部Y129と弁体Y131の接続部位を作用点YV3とする梃子として機能する。なお、本実施形態の第2力点YV2は、軸部Y125と第2増幅部Y129の接続位置である。
【0097】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のマイクロバルブY1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0098】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0099】
上記各実施形態では、軸部Y125の根元部分Y125bの断面積が先端部分Y125aの断面積よりも大きくなっていることで、根元部分Y125bの剛性が高められている。しかし、例えば、軸部Y125の根元部分Y125bの構成材料のヤング率が先端部分Y125aの構成材料のヤング率よりも大きくなっていることで、根元部分Y125bの剛性が高められていてもよい。
【0100】
上記各実施形態では、根元部分Y125bは、積層方向Dstにおける厚みThに比べて、軸直交方向Dorの長さWrの方が大きくなっているが、これに限定されない。根元部分Y125bは、例えば、積層方向Dstにおける厚みThに比べて、軸直交方向Dorの長さWrの方が小さくなっていてもよい。
【0101】
上記各実施形態では、可動部Y127は、1つまたは2つの増幅部によって構成されているが、これに限らず、例えば、3つ以上の増幅部によって構成されていてもよい。
【0102】
上記各実施形態では、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124、軸部Y125は、通電されることで発熱し、その発熱によって自らの温度が上昇することで膨張する。しかし、これら部材は、温度が変化すると長さが変化する形状記憶材料から構成されていてもよい。
【0103】
マイクロバルブY1の形状やサイズは、上記実施形態で示したものに限られない。マイクロバルブY1は、極微小流量制御可能で、かつ、流路内に存在する微小ゴミを詰まらせないような水力直径の第1流路孔Y16、第2流路孔Y17を有していればよい。
【0104】
上記各実施形態では、第2流路孔Y17は、複数のサブ流路孔Y171、Y172、Y173、Y174、Y175によって構成されているが、これに限らず、単一の流路孔によって構成されていてもよい。
【0105】
上記各実施形態の弁体Y131は、ベース部80、複数のサブ弁体81~85、補強部86を含む構造になっているが、これに限定されない。弁体Y131は、第1流路孔Y16および第2流路孔Y17の少なくとも一方の開口面積を調整可能なものであれば、上述したものと異なっていてもよい。
【0106】
上記実施形態では、通電の有無に応じた温度変化によって発生する駆動部Y122の変位を梃子の原理で増幅して弁体Y131に伝える弁装置の一例としてMEMSバルブが例示されている。しかし、このような弁装置は、MEMSバルブ以外のものであってもよい。
【0107】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0108】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0109】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0110】
(本開示の観点)
本開示は、以下の観点を備える。
【0111】
[第1の観点]
弁装置であって、
流体が流通する流体室(Y19)と、
通電の有無に応じて自らの温度が変化することで変位する駆動部(Y122)と、
前記駆動部の変位を増幅する可動部(Y127)と、
前記可動部によって増幅された変位が伝達されることで動いて前記流体室に連通する流路孔(Y16、Y17)を開閉する弁体(Y131)と、を備え、
前記可動部は、前記駆動部が温度変化によって変位した際に、前記駆動部の変位を力点(YV1、YV2)で受けることで、所定の支点(Y126、Y130)を中心に回転するとともに、前記弁体との接続位置を作用点(YV3)として前記弁体を前記流体室で動かすように構成されており、
前記駆動部は、
前記可動部に接続される軸部(Y125)と、
前記軸部に接続され、通電による熱膨張によって前記軸部の軸心に沿う軸方向に前記軸部を変位させる複数のリブ(Y123、Y124)と、を含み、
前記軸部は、前記複数のリブが接続されるリブ側部分(Y125b)および前記リブ側部分から前記可動部までの可動側部分(Y125a)を含み、前記リブ側部分の前記軸方向の剛性が、前記可動側部分の前記軸方向の剛性よりも大きくなっている、弁装置。
【0112】
[第2の観点]
前記リブ側部分は、前記軸方向に直交する方向の断面積が、前記可動側部分よりも大きくなっている、第1の観点に記載の弁装置。
【0113】
[第3の観点]
第1外層(Y11)、第2外層(Y13)、前記第1外層と前記第2外層に挟まれる中間層(Y12)を含む積層体として構成され、
前記流体室、前記駆動部、前記可動部、前記弁体は、前記中間層に設けられており、
前記第1外層、前記中間層、および前記第2外層が積層される方向を積層方向とし、前記積層方向および前記軸方向に直交する方向を軸直交方向としたとき、
前記リブ側部分は、前記積層方向における厚み(Th)に比べて、前記軸直交方向の長さ(Wr)の方が大きくなっている、第1または第2の観点に記載の弁装置。
【0114】
[第4の観点]
前記可動部は、前記駆動部の変位を増幅する増幅部(Y128、Y129)を複数有する、第1ないし第3の観点のいずれか1つに記載の弁装置。
【0115】
[第5の観点]
前記力点は、第1力点(YV1)であり、
前記支点は、第1支点部(Y126)および第2支点部(Y130)を含み、
前記可動部は、
前記駆動部の変位を前記第1力点で受けることで、前記第1支点部を中心に回転して前記駆動部の変位を増幅する第1増幅部(Y128)と、
前記第1増幅部で増幅された変位を第2力点(YV2)で受けることで、前記第2支点部を中心に回転するとともに、前記作用点において前記弁体を付勢して前記弁体を前記流体室で動かす第2増幅部(Y129)と、を有する、第1ないし第4の観点のいずれか1つに記載の弁装置。
【0116】
[第6の観点]
複数の前記リブおよび前記リブ側部分は、通電により発熱する発熱部(HP)を構成しており、
前記リブ側部分の前記軸直交方向の長さは、前記発熱部における前記軸直交方向の長さの半分以下である、第3の観点に記載の弁装置。
【符号の説明】
【0117】
Y1 マイクロバルブ(弁装置)
Y19 流体室
Y122 駆動部
Y123 第1リブ(リブ)
Y124 第2リブ(リブ)
Y125 軸部
Y125a 先端部分(可動側部分)
Y125b 根元部分(リブ側部分)
Y127 可動部
Y131 弁体