(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039921
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240315BHJP
F04D 29/16 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F04D29/28 J
F04D29/28 N
F04D29/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144659
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正悟
(72)【発明者】
【氏名】中根 芳之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】光田 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 陽平
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB07
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC03
3H130AC13
3H130BA22C
3H130BA53A
3H130BA53C
3H130CB06
3H130DA02Z
3H130DC02Z
3H130DC12Z
3H130EA07C
3H130EB01C
(57)【要約】
【課題】インペラの背面と仕切壁との間における流体の流れを低減しつつも、インペラが回転することによりインペラに発生する応力が局所的に大きくなることを抑制できる遠心圧縮機を提供すること。
【解決手段】遠心圧縮機のハブ411の背面S2には、ハウジングのプレートに向けて突出する複数の突出部80が設けられている。インペラ41の翼412と突出部80とは、回転軸の軸方向に重ならないように周方向Cに互いにずらして配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を回転させる駆動部と、
前記回転軸と一体的に回転するインペラと、
前記回転軸、前記駆動部、及び前記インペラを収容し、前記回転軸を支持し、前記駆動部と前記インペラとを仕切る仕切壁を有するハウジングと、を有し、
前記インペラは、前記回転軸の一方側から他方側に向かうにしたがって次第に拡径する形状を有する外周面と、前記外周面の前記回転軸における軸方向裏側の背面と、を有するハブ、及び前記ハブの前記外周面に設けられた複数の翼を有する遠心圧縮機であって、
前記背面には、前記仕切壁に向けて突出する複数の突出部が設けられており、
前記複数の翼は、前記ハブの周方向に第1所定間隔を有し、
前記複数の突出部は、前記ハブの周方向に第2所定間隔を有し、
前記複数の翼と前記複数の突出部とが前記回転軸の軸方向に重ならないように前記ハブの周方向に互いにずらして配置されていることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記背面は、
全ての前記突出部よりも前記インペラの外径側にある第1背面と、
全ての前記突出部よりも前記インペラの内径側にある第2背面と、を有し、
前記複数の突出部が前記第2所定間隔を有することにより、前記ハブの周方向において隣り合う前記突出部の間には、前記インペラが回転することにより前記第1背面から前記第2背面に向けて流体が流れる空隙が形成され、
前記突出部における前記インペラの回転方向に先行する端面は、前記インペラの回転方向に向かうにつれて前記ハブの径方向の外側に向けて延びている、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記複数の突出部は、前記ハブの径方向に第3所定間隔を空けて前記ハブの径方向に複数周形成されており、
前記ハブの径方向において隣り合う前記突出部のうち、前記ハブの径方向の外側に位置する前記突出部の前記端面は、前記ハブの径方向の内側に位置する前記突出部の前記端面よりも前記インペラの回転方向に先行している、請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記仕切壁には、前記突出部が入り込んで前記ハブの径方向に対してラビリンスを形成する環状の溝が設けられている、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、回転軸と、駆動部と、インペラと、ハウジングと、を備えている。駆動部は、回転軸を回転させる。インペラは、回転軸と一体的に回転する。インペラは、ハブ及び複数の翼を有している。ハブは、外周面と、背面と、を有している。外周面は、回転軸の一方側から他方側に向かうにしたがって次第に拡径する形状を有している。背面は、回転軸の他方側に形成されている。ハウジングは、回転軸、インペラ、及び駆動部を収容している。ハウジングは、インペラの背面と対向する仕切壁を有している。
【0003】
特許文献1には、駆動部としてのモータ部により回転軸が回転することにより、インペラが回転軸と一体的に回転する遠心圧縮機が開示されている。特許文献1に記載された遠心圧縮機が備えるハウジングは、インペラを収容するコンプレッサ室と、モータ部を収容するモータ室と、を有している。ハウジングの仕切壁には、回転軸を支持する軸受が設けられている。インペラの背面には、仕切壁に向けて延びる円筒状の突出部が複数設けられている。各突出部は、回転軸線を中心として同心円状に設けられている。特許文献1に記載された遠心圧縮機では、インペラが回転することによりインペラの背面と仕切壁との間にガスが流れようとしても、複数の突出部によりインペラの背面と仕切壁との間におけるガスの流れが低減される。これにより、インペラの背面と仕切壁との間の圧力上昇に時間がかかるため、コンプレッサ室の圧力上昇の直後にコンプレッサ室からモータ室に向かう貫通気流が軸受を通過しにくくなる。このため、貫通気流により軸受のグリースが流出することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の円筒状の突出部は、回転軸線を中心として同心円状のため、軸方向において翼と円筒状の突出部とが重なる。このため、インペラが回転することにより、インペラの翼及び円筒状の突出部には遠心力が作用することにより、翼に作用する遠心力によりインペラに発生する応力と、突出部に作用する遠心力によりインペラに発生する応力とがインペラの同一箇所に作用する。つまり、インペラが回転することによりインペラに発生する応力が局所的に大きくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する遠心圧縮機は、回転軸と、前記回転軸を回転させる駆動部と、前記回転軸と一体的に回転するインペラと、前記回転軸、前記駆動部、及び前記インペラを収容し、前記回転軸を支持し、前記駆動部と前記インペラとを仕切る仕切壁を有するハウジングと、を有し、前記インペラは、前記回転軸の一方側から他方側に向かうにしたがって次第に拡径する形状を有する外周面と、前記外周面の前記回転軸における軸方向裏側の背面と、を有するハブ、及び前記ハブの前記外周面に設けられた複数の翼を有する遠心圧縮機であって、前記背面には、前記仕切壁に向けて突出する複数の突出部が設けられており、前記複数の翼は、前記ハブの周方向に第1所定間隔を有し、前記複数の突出部は、前記ハブの周方向に第2所定間隔を有し、前記複数の翼と前記複数の突出部とが前記回転軸の軸方向に重ならないように前記ハブの周方向に互いにずらして配置されている。
【0007】
上記構成によれば、インペラが回転することによりインペラの背面と仕切壁との間に流体が流れようとしても、少なくとも突出部が当該流体の流れに干渉する。よって、インペラの背面と仕切壁との間における流体の流れを低減できる。
【0008】
また、複数の翼は、ハブの周方向に第1所定間隔を有し、複数の突出部は、ハブの周方向に第2所定間隔を有し、複数の翼と複数の突出部とが回転軸の軸方向に重ならないようにハブの周方向に互いにずらして配置されている。このため、インペラが回転したとき、インペラの翼に作用する遠心力によりインペラに発生する応力と、突出部に作用する遠心力によりインペラに発生する応力とが、インペラの同一箇所に作用しない。よって、インペラが回転することによりインペラに発生する応力が局所的に大きくなることを抑制できる。以上により、インペラの背面と仕切壁との間における流体の流れを低減しつつも、インペラが回転することによりインペラに発生する応力が局所的に大きくなることを抑制できる。
【0009】
上記の遠心圧縮機において、前記背面は、全ての前記突出部よりも前記インペラの外径側にある第1背面と、全ての前記突出部よりも前記インペラの内径側にある第2背面と、を有し、前記複数の突出部が前記第2所定間隔を有することにより、前記ハブの周方向において隣り合う前記突出部の間には、前記インペラが回転することにより前記第1背面から前記第2背面に向けて流体が流れる空隙が形成され、前記突出部における前記インペラの回転方向に先行する端面は、前記インペラの回転方向に向かうにつれて前記ハブの径方向の外側に向けて延びているとよい。
【0010】
上記構成によれば、突出部におけるインペラの回転方向に先行する端面により、インペラの外径側から内径側に向けて流体を引き戻す流れをつくることができる。このため、例えば、差圧によって仕切壁と回転軸との間からインペラに向けて流体が流れようとしても、インペラの背面と仕切壁との間を通過しにくくなる。
【0011】
上記の遠心圧縮機において、前記複数の突出部は、前記ハブの径方向に第3所定間隔を空けて前記ハブの径方向に複数周形成されており、前記ハブの径方向において隣り合う前記突出部のうち、前記ハブの径方向の外側に位置する前記突出部の前記端面は、前記ハブの径方向の内側に位置する前記突出部の前記端面よりも前記インペラの回転方向に先行しているとよい。
【0012】
上記構成によれば、ハブの径方向において隣り合う突出部において、ハブの径方向の外側に位置する突出部の端面によりインペラの外径側から内径側に向けて引き戻された流体は、ハブの径方向の内側に位置する突出部の端面によりインペラの内径側に引き戻されたり、ハブの径方向において隣り合う突出部の間を通過したりする。このため、ハブの径方向の内側に位置する突出部の端面によりインペラの外径側から内径側に向けて流体を引き戻しやすくしつつ、ハブの径方向において隣り合う突出部の間を流体が通過することにより、ハブの径方向において隣り合う突出部に流体が衝突したときの荷重の一部を逃がすことができる。よって、インペラの外径側から内径側に向けて流体を更に引き戻しやすくしつつ、ハブの径方向において隣り合う突出部の端面に流体が衝突した際に両突出部に発生する応力を低減できる。
【0013】
上記の遠心圧縮機において、前記仕切壁には、前記突出部が入り込んで前記ハブの径方向に対してラビリンスを形成する環状の溝が設けられているとよい。
上記構成によれば、インペラの背面と仕切壁との間に流体が流れようとしても、突出部と溝により形成されるラビリンスにより、インペラの背面と仕切壁との間における流体の流れを更に低減できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、インペラの背面と仕切壁との間における流体の流れを低減しつつも、インペラが回転することによりインペラに発生する応力が局所的に大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態における遠心圧縮機の断面図である。
【
図2】遠心圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、遠心圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。本実施形態の遠心圧縮機は、燃料電池を電力源として走行する燃料電池車両に搭載され、且つ燃料電池に対してエアを供給する。
【0017】
<ハウジング>
図1に示すように、遠心圧縮機10は、筒状のハウジング11を備えている。ハウジング11は、モータハウジング12と、増速機ハウジング13と、プレート14と、コンプレッサハウジング15と、を備えている。モータハウジング12、増速機ハウジング13、プレート14、及びコンプレッサハウジング15は、金属製であり、例えば、アルミニウムにより形成されている。
【0018】
モータハウジング12は、板状の端壁12aと、筒状の周壁12bと、を有している。周壁12bは、端壁12aの外周部から延びている。増速機ハウジング13は、板状の端壁13aと、筒状の周壁13bと、を有している。周壁13bは、端壁13aの外周部から延びている。
【0019】
モータハウジング12の周壁12bにおける端壁12aとは反対側に位置する端部は、増速機ハウジング13の端壁13aに連結されている。そして、モータハウジング12の周壁12bの開口は、増速機ハウジング13の端壁13aによって、閉塞されている。増速機ハウジング13の端壁13aの中央には、貫通孔13hが形成されている。
【0020】
プレート14は、増速機ハウジング13の周壁13bにおける端壁13aとは反対側の端部に配置されている。プレート14の中央には、挿通孔14hが形成されている。プレート14は、第1面141aと、第2面141bと、を有している。第1面141aは、増速機ハウジング13の周壁13bにおける端壁13aとは反対側の端部に接触している。そして、増速機ハウジング13の周壁13bの開口は、プレート14の第1面141aによって、閉塞されている。第2面141bは、プレート14の厚さ方向において第1面141aとは反対側に位置する面である。
【0021】
コンプレッサハウジング15は、プレート14の第2面141bに連結されている。モータハウジング12、増速機ハウジング13、プレート14、及びコンプレッサハウジング15は、ハウジング11の軸線方向にこの順序で配列されている。
【0022】
コンプレッサハウジング15には、エアが吸入される吸入通路15aが区画されている。吸入通路15aは、コンプレッサハウジング15におけるプレート14とは反対側の端面の中央部に開口している。そして、吸入通路15aは、コンプレッサハウジング15におけるプレート14とは反対側の端面の中央部からハウジング11の軸線方向に延びている。
【0023】
<低速シャフト及び電動モータ>
遠心圧縮機10は、低速シャフト16と、電動モータ17と、を備えている。電動モータ17は、低速シャフト16を回転させる。よって、低速シャフト16は、電動モータ17によって回転する。
【0024】
ハウジング11の内部には、電動モータ17を収容するモータ室25が区画されている。モータ室25は、モータハウジング12の端壁12aの内面、周壁12bの内周面、及び増速機ハウジング13の端壁13aの外面によって区画されている。低速シャフト16は、低速シャフト16の軸線方向がモータハウジング12の軸線方向に一致した状態でモータハウジング12内に収容されている。低速シャフト16は、例えば鉄又は合金で形成された金属製である。
【0025】
モータハウジング12の端壁12aの内面には、筒状のボス部12fが突出している。低速シャフト16の一端部は、ボス部12f内に挿入されている。低速シャフト16の一端部とボス部12fとの間には、第1軸受18が設けられている。そして、低速シャフト16の一端部は、第1軸受18を介してモータハウジング12の端壁12aに回転可能に支持されている。
【0026】
低速シャフト16の他端部は、貫通孔13hに挿入されている。低速シャフト16の他端部と貫通孔13hとの間には、第2軸受19が設けられている。そして、低速シャフト16の他端部は、第2軸受19を介して増速機ハウジング13の端壁13aに回転可能に支持されている。よって、低速シャフト16は、ハウジング11に回転可能に支持されている。低速シャフト16の他端は、モータ室25から貫通孔13hを通過して増速機ハウジング13内に突出している。
【0027】
低速シャフト16の他端部と貫通孔13hとの間には、シール部材20が設けられている。シール部材20は、低速シャフト16の外周面と貫通孔13hの内周面との間をシールする。
【0028】
<増速機、高速シャフト、及び増速機室>
遠心圧縮機10は、増速機30と、回転軸としての高速シャフト31と、を備えている。高速シャフト31は、例えば鉄又は合金で形成された金属製である。高速シャフト31は、高速シャフト31の軸線方向が増速機ハウジング13の軸線方向に一致した状態で増速機ハウジング13に収容されている。高速シャフト31におけるモータハウジング12とは反対側の端部は、プレート14の挿通孔14hを通過してコンプレッサハウジング15内に突出している。高速シャフト31におけるモータハウジング12とは反対側の端部は、高速シャフト31の一方側の端部である。挿通孔14hには、高速シャフト31が挿通されている。高速シャフト31の軸線は、低速シャフト16の軸線と一致している。高速シャフト31は、挿通孔14h内に配置される環状のフランジ部31aを有している。フランジ部31aは、高速シャフト31の軸方向に位置する軸端面31bを有している。フランジ部31aの軸端面31bは、高速シャフト31の径方向に延びている。
【0029】
増速機30は、例えば、トラクションドライブ式(摩擦ローラ式)である。増速機30は、低速シャフト16の他端に連結されている。そして、電動モータ17が駆動して、低速シャフト16が回転すると、増速機30によって、高速シャフト31は、低速シャフト16よりも高速回転する。したがって、増速機30は、低速シャフト16の動力を高速シャフト31に伝達する。増速機30は、高速シャフト31を回転させる駆動部である。
【0030】
ハウジング11の内部には、増速機30を収容する増速機室40が区画されている。増速機室40は、増速機ハウジング13の端壁13aの内面、周壁13bの内周面、及び第1プレート141の第1面141aによって区画されている。増速機室40は、増速機30とともにオイルを収容している。シール部材20は、増速機室40内に貯留されているオイルが、低速シャフト16の外周面と貫通孔13hの内周面との間を介してモータ室25に洩れ出すことを抑制している。
【0031】
<インペラ及びインペラ室>
図2に示すように、遠心圧縮機10は、インペラ41を備えている。インペラ41は、略円錐台筒形状である。
【0032】
インペラ41には、高速シャフト31の一方側の端部が挿入されている。インペラ41は、ハブ411及び複数の翼412を有している。以下、ハブ411の軸方向を単に「軸方向A」と記載する。軸方向Aは、高速シャフト31の軸方向と一致している。ハブ411の径方向を単に「径方向B」と記載する。径方向Bは、高速シャフト31の径方向と一致している。ハブ411の周方向を単に「周方向C」と記載する。周方向Cは、高速シャフト31の周方向と一致している。
【0033】
ハブ411は、外周面S1と、背面S2と、挿通孔41dと、を有している。外周面S1は、高速シャフト31の一方側から他方側に向かうにしたがって次第に拡径する形状を有している。全ての翼412は、周方向Cに第1所定間隔を有している。全ての翼412は、周方向Cで第1所定間隔を空けてハブ411の外周面S1に設けられている。各翼412は、外周面S1における最も径方向Bの内側から外周面S1における最も径方向Bの外側に至るまで延びている。
【0034】
挿通孔41dは、インペラ41を軸方向Aに貫通している。挿通孔41dは、背面S2の中央に開口している。挿通孔41dには、高速シャフト31が挿通されている。高速シャフト31の一方側の端部の一部は、インペラ41を貫通している。インペラ41を貫通した高速シャフト31の一部には、雄ねじ31dが形成されている。雄ねじ31dには、ナット95が螺合されている。ナット95が高速シャフト31の雄ねじ31dに螺合されることにより、軸方向Aにおいてインペラ41がナット95とフランジ部31aとに挟み込まれる。これにより、インペラ41は、高速シャフト31に固定される。したがって、インペラ41は、高速シャフト31と一体的に回転する。
【0035】
背面S2は、インペラ41における高速シャフト31の他方側に形成された面である。背面S2は、外周面S1の高速シャフト31における軸方向裏側に位置している。背面S2の一部は、プレート14の第2面141bに対向している。プレート14の第2面141bのうち、背面S2に対向している面を対向面141cとする。背面S2と対向面141cとの間に形成される空間を第1空間G1とする。
【0036】
ハウジング11の内部には、インペラ41を収容するインペラ室42が区画されている。インペラ室42は、吸入通路15aに連通している。インペラ室42は、吸入通路15aから離れるにつれて徐々に拡径していく略円錐台孔形状になっている。インペラ室42は、コンプレッサハウジング15とプレート14とによって区画されている。遠心圧縮機10は、シール部材48を備えている。シール部材48は、高速シャフト31の外周面と、プレート14の挿通孔14hの内周面との間に設けられている。シール部材48は、例えば、メカニカルシールである。シール部材48は、増速機室40内に貯留されているオイルが挿通孔14hを介してインペラ室42に洩れ出すことを抑制する。高速シャフト31は、シール部材48を介してプレート14に対して回転可能に支持されている。よって、ハウジング11は、高速シャフト31を支持している。
【0037】
図1に示すように、プレート14は、インペラ41と増速機30とを仕切る仕切壁である。ハウジング11は、高速シャフト31、増速機30、及びインペラ41を収容している。プレート14は、背面S2と対向している。
【0038】
<ディフューザ流路、吐出室、及び吐出口>
遠心圧縮機10は、ディフューザ流路43と、吐出室44と、吐出口45と、を備えている。ディフューザ流路43は、コンプレッサハウジング15におけるプレート14と対向する面と、プレート14とによって区画されている。ディフューザ流路43は、インペラ室42よりも高速シャフト31の径方向外側に位置している。ディフューザ流路43は、インペラ室42に連通している。ディフューザ流路43は、インペラ41及びインペラ室42を囲む環状に形成されている。
【0039】
吐出室44は、ディフューザ流路43よりも高速シャフト31の径方向外側に位置している。吐出室44は、ディフューザ流路43に連通している。吐出室44は環状である。インペラ室42と吐出室44とはディフューザ流路43を介して連通している。吐出口45は、吐出室44に連通している。吐出口45は、コンプレッサハウジング15の外部に連通している。
【0040】
インペラ41が回転することにより、吸入通路15aから吸入されたエアは、インペラ室42に吸入される。そして、インペラ室42に吸入されたエアは、インペラ41によって圧縮される。インペラ41によって圧縮されたエアは、ディフューザ流路43に吐出される。ディフューザ流路43に吐出されたエアは、ディフューザ流路43を通過することによってさらに圧縮されるとともに吐出室44に吐出される。そして、吐出室44に吐出されたエアは、吐出口45からハウジング11外に設けられた燃料電池に供給される。
【0041】
<インペラの背面側の構成>
図2に示すように、インペラ41の背面S2は、基端面41aと、テーパ面41bと、環状の平坦面41cと、を有している。基端面41aは、高速シャフト31のフランジ部31aに対向している。基端面41aは、フランジ部31aの軸端面31bに接触している。基端面41aには、挿通孔41dが開口している。基端面41aは、径方向Bに延びている。
【0042】
テーパ面41bは、基端面41aの外周縁から径方向Bの外側に向かうほど軸方向Aにおいて外周面S1側に向かうように徐々に拡径する面である。平坦面41cは、テーパ面41bの外周縁から径方向Bに延びている。テーパ面41b及び平坦面41cは、インペラ41が高速シャフト31に固定された状態においてプレート14から離れている。
【0043】
平坦面41cは、環状である。背面S2には、プレート14に向けて突出する複数の突出部80が設けられている。突出部80は、平坦面41cに設けられている。
図3に示すように、全ての突出部80は、周方向Cに第2所定間隔を有している。全ての突出部80は、周方向Cで第2所定間隔を空けて平坦面41cに設けられている。全ての突出部80が第2所定間隔を有することにより、周方向Cにおいて隣り合う突出部80の間には、空隙Vsが形成されている。
【0044】
図4に示すように、各翼412の底部412aをインペラ41の平坦面41cに投影した領域を第1領域91とする。底部412aとは、翼412におけるハブ411の外周面S1との接続部位である。底部412aとは、翼412におけるハブ411の外周面S1側の部位であり、インペラ41の回転時に応力が作用する部位である。第1領域91は、
図4に斜線で示している。第1領域91は、周方向Cにおいて所定の間隔を空けて設けられている。つまり、全ての翼412は、周方向Cに第1所定間隔を有している。平坦面41cのうち周方向Cに隣り合う第1領域91の間の領域を第2領域92とする。第2領域92は、平坦面41cのうち各翼412の底部412aが投影されていない領域である。第1領域91と第2領域92とは、周方向Cで互い違いに配置されている。
【0045】
各突出部80は、第2領域92に設けられている。各突出部80の底部80bは、第2領域92に設けられている。底部80bとは、突出部80における第2領域92との接続部位である。底部80bとは、突出部80における第2領域92側の部位であり、インペラ41の回転時に応力が作用する部位である。第2領域92は、周方向Cにおいて所定の間隔を空けて設けられている。つまり、全ての突出部80は、周方向Cに第2所定間隔を有している。このため、翼412の底部412aと突出部80の底部80bとは、周方向Cで互い違いに配置されている。軸方向Aにおける翼412の底部412aの投影面と突出部80の底部80bの投影面とは、周方向Cで互い違いに配置されている。各突出部80は、各翼412の底部412aと軸方向Aに重ならないように背面S2に設けられている。つまり、全ての翼412は、周方向Cに第1所定間隔を有し、全ての突出部80は、周方向Cに第2所定間隔を有しているため、全ての翼412と全ての突出部80とが高速シャフト31の軸方向に重ならないように周方向Cに互いにずらして配置されている。
【0046】
背面S2は、第1背面411cと、第2背面412cと、を有している。第1背面411cは、全ての突出部80よりもインペラ41の外径側にある面である。全ての突出部80よりもインペラ41の外径側とは、全ての突出部80よりも平坦面41cの外周縁側と同義である。第1背面411cは、平坦面41cの一部である。第2背面412cは、全ての突出部80よりもインペラ41の内径側にある面である。全ての突出部80よりもインペラ41の内径側とは、全ての突出部80よりもインペラ41の挿通孔41d側と同義である。第2背面412cは、平坦面41cにおける全ての突出部80よりもインペラ41の内径側の部位と、テーパ面41bと、基端面41aとを含んでいる。
【0047】
全ての突出部80は、複数の第1突出部81と、複数の第2突出部82と、により構成されている。全ての第1突出部81は、周方向Cに延びる同一仮想円上に設けられている。全ての第1突出部81は、周方向Cに1周するように断続的に並べられている。全ての第1突出部81が周方向Cに1周するように断続的に並べられることにより形成された列を第1列L1とする。
【0048】
全ての第2突出部82は、全ての第1突出部81よりも径方向Bの外側に位置している。全ての第2突出部82は、周方向Cに1周するように断続的に並べられている。全ての第2突出部82が周方向Cに1周するように断続的に並べられることにより形成された列を第2列L2とする。
【0049】
各第2突出部82は、径方向Bにおいて各第1突出部81と対向している。各第2突出部82は、径方向Bにおいて第3所定間隔を空けて各第1突出部81と対向している。第1列L1と第2列L2とは、径方向Bに第3所定間隔を空けて配置されている。つまり、複数の突出部80は、径方向Bに第3所定間隔を空けて径方向Bに複数周形成されている。径方向Bにおいて隣り合う突出部80のうち、第2突出部82は径方向Bの外側に位置する突出部80であり、第1突出部81は径方向Bの内側に位置する突出部80である。
【0050】
第1突出部81における第2領域92との接続部位により突出部80の底部80bが形成されている。また、第2突出部82における第2領域92との接続部位により突出部80の底部80bが形成されている。
【0051】
第1突出部81は、周方向Cに円弧状に延びている。全ての第1突出部81は、第1内面81aと、第1外面81bと、第1先端面81cと、第1後端面81dと、を有している。第1内面81a及び第1外面81bは、第1突出部81における径方向Bに位置する円弧面である。第1内面81aは、インペラ41の内径側に向いている。第1外面81bは、インペラ41の外径側に向いている。
【0052】
第1先端面81c及び第1後端面81dは、周方向Cにおいて第1突出部81の両端に位置する端面である。第1先端面81cは、第1突出部81におけるインペラ41の回転方向Dに先行する端面である。第1先端面81cは、突出部80におけるインペラ41の回転方向Dに先行する端面である。第1先端面81cは、第1内面81aと第1外面81bとに連続している。第1先端面81cの第1内面81aから第1外面81bまでの幅は、第1内面81a及び第1外面81bの各々の周方向Cにおける幅よりも十分小さい。
【0053】
第1先端面81cは、第1内面81aから第1外面81bに向かうにつれて回転方向Dに向けて延びる傾斜面である。第1先端面81cは、回転方向Dに向かうにつれて径方向Bの外側に向けて延びている。第1後端面81dは、第1内面81aと第1外面81bとに連続している。第1後端面81dの第1内面81aから第1外面81bまでの幅は、第1内面81a及び第1外面81bの各々の周方向Cにおける幅よりも十分に小さい。第1後端面81dの第1内面81aから第1外面81bまでの幅は、第1先端面81cの第1内面81aから第1外面81bまでの幅よりも小さい。第1後端面81dは、径方向Bに延びている。
【0054】
周方向Cに隣り合う第1突出部81において、第1先端面81cのうち最も回転方向Dに先行している縁と、当該第1先端面81cに対向する第1後端面81dとの周方向Cにおける間隔を間隔W1とする。
【0055】
第2突出部82は、周方向Cに円弧状に延びている。全ての第2突出部82は、第2内面82aと、第2外面82bと、第2先端面82cと、第2後端面82dと、を有している。第2内面82a及び第2外面82bは、第2突出部82における径方向Bに位置する円弧面である。第2内面82aは、インペラ41の内径側に向けている。第2内面82aの一部は、径方向Bにおいて第1突出部81の第1外面81bの一部と対向している。
【0056】
第2先端面82c及び第2後端面82dは、周方向Cにおいて第2突出部82の両端に位置する端面である。第2先端面82cは、第2突出部82におけるインペラ41の回転方向Dに先行する端面である。第2先端面82cは、突出部80におけるインペラ41の回転方向Dに先行する端面である。第2先端面82cは、第2内面82aと第2外面82bとに連続している。第2先端面82cの第2内面82aから第2外面82bまでの幅は、第2内面82a及び第2外面82bの各々の周方向Cにおける幅よりも十分に小さい。第2先端面82cの第2内面82aから第2外面82bまでの幅は、第1先端面81cの第1内面81aから第1外面81bまでの幅と同じである。
【0057】
第2先端面82cは、第2内面82aから第2外面82bに向かうにつれて回転方向Dに向けて延びる傾斜面である。第2先端面82cは、回転方向Dに向かうにつれて径方向Bの外側に向けて延びている。第2先端面82cは、第1先端面81cよりも回転方向Dに先行している。
【0058】
第2後端面82dは、第2内面82aと第2外面82bとに連続している。第2後端面82dの第2内面82aから第2外面82bまでの幅は、第2内面82a及び第2外面82bの各々の周方向Cにおける幅よりも十分に小さい。第2後端面82dの第2内面82aから第2外面82bまでの幅は、第2先端面82cの第2内面82aから第2外面82bまでの幅よりも小さい。第2後端面82dは、径方向Bに延びている。第2後端面82dは、周方向Cにおいて第1突出部81の第1外面81bと同じ位置に設けられている。
【0059】
周方向Cに隣り合う第2突出部82において、第2先端面82cのうち最も回転方向Dに先行している縁と、当該第2先端面82cに対向する第2後端面82dとの周方向Cにおける間隔を間隔W2とする。間隔W2は、間隔W1よりも大きい。なお、第2所定間隔は、第1列L1及び第2列L2の各々における突出部80の周方向Cの間隔のことである。このため、第1列L1における第2所定間隔とは、周方向Cで隣り合う第1突出部81の間の間隔のことであり、第2列L2における第2所定間隔とは、周方向Cで隣り合う第2突出部82の間の間隔のことである。空隙Vsは、第1列L1における周方向Cで隣り合う第1突出部81の間の空間と、第2列L2における周方向Cで隣り合う第2突出部82の間の空間とが径方向Bで並ぶことにより形成されている。
【0060】
<ラビリンスシール部>
図2に示すように、プレート14の対向面141cには、2つの環状の溝141dが設けられている。各溝141dの径方向Bにおける幅は、各突出部80の径方向Bにおける厚さよりも大きい。各溝141dの対向面141cからの深さは、各突出部80の平坦面41cからの突出長さよりも大きい。1つの溝141dには、第1列L1が入り込み、且つ残りの溝141dには、第2列L2が入り込む。突出部80は、溝141dの内面に接触していない。突出部80と溝141dの内面との間に形成された空間を第2空間G2とする。第2空間G2は、第1空間G1と連続している。
【0061】
第2空間G2は、軸方向Aに延びる空間を少なくとも含む。つまり、第2空間G2は、径方向Bに対して交差する方向に延びる空間を少なくとも含んでいる。第2空間G2は、第1背面411cから第2背面412cに向かう、又は第2背面412cから第1背面411cに向かうときに延びる方向が蛇行する。このため、各溝141dは、突出部80が入り込んで径方向Bに対してラビリンスを形成している。このため、第1空間G1を流体が流れようとしても、ラビリンス状の第2空間G2により流体が径方向Bに流れにくくなる。よって、各溝141d及び突出部80により、第1空間G1に流れる流体の流れを低減する機能を有するラビリンスシール部100が形成されている。遠心圧縮機10は、ラビリンスシール部100を備えている。
【0062】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
例えば、インペラ室42内の圧力が増速機室40内の圧力よりも低くなる条件となると、増速機室40内のオイルが、挿通孔14hを介して第1空間G1に洩れ出す場合がある。そして、オイルがインペラ41の内径側から外径側に向けて流れる場合がある。
【0063】
本実施形態では、インペラ41が回転することによりインペラ41の背面S2とプレート14の対向面141cとの間にオイルが流れようとしても、少なくとも突出部80がオイルの流れに干渉する。さらに、ラビリンスシール部100の第2空間G2によりオイルの流れが妨げられる。よって、インペラ41の背面S2とプレート14との間におけるオイルの流れが低減される。また、
図4の矢印Eで示すように、インペラ41が回転することにより、第1先端面81c及び第2先端面82cがエアを第1背面411cから第2背面412cに向けて引き戻す流れを形成する。このため、空隙Vsには、インペラ41が回転することにより第1背面411cから第2背面412cに向けてエアが流れる。よって、インペラ41の背面S2とプレート14との間にオイルが流れようとしても、インペラ41の内径側から外径側に向かうオイルの流れがより低減される。
【0064】
また、全ての翼412は、ハブ411の周方向に第1所定間隔を有し、全ての突出部80は、ハブ411の周方向に第2所定間隔を有しているため、全ての翼412の底部412aと全ての突出部80の底部80bとが高速シャフト31の軸方向に重ならないように周方向Cにずらして配置されている。このため、インペラ41が回転したとき、インペラ41の翼412に作用する遠心力によりインペラ41に発生する応力と、突出部80に作用する遠心力によりインペラ41に発生する応力とが、インペラ41の同一箇所に作用しない。
【0065】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)インペラ41が回転することによりインペラ41の背面S2とプレート14との間にオイルが流れようとしても、少なくとも突出部80がオイルの流れに干渉する。よって、インペラ41の背面S2とプレート14との間におけるオイルの流れを低減できる。
【0066】
また、全ての翼412は、ハブ411の周方向に第1所定間隔を有し、全ての突出部80は、ハブ411の周方向に第2所定間隔を有しているため、全ての翼412と全ての突出部80とが高速シャフト31の軸方向に重ならないように周方向Cにずらして配置されている。このため、インペラ41が回転したとき、インペラ41の翼412に作用する遠心力によりインペラ41に発生する応力と、突出部80に作用する遠心力によりインペラ41に発生する応力とが、インペラ41の同一箇所に作用しない。よって、インペラ41が回転することによりインペラ41に発生する応力が局所的に大きくなることを抑制できる。以上により、インペラ41の背面S2とプレート14との間におけるオイルの流れを低減しつつも、インペラ41が回転することによりインペラ41に発生する応力が局所的に大きくなることを抑制できる。
【0067】
(2)第1先端面81c及び第2先端面82cにより、インペラ41の外径側から内径側に向けて流体を引き戻す流れをつくることができる。このため、例えば、インペラ室42と増速機室40との差圧によってプレート14と高速シャフト31との間からインペラ41に向けて流体としてのオイルが流れようとしても、インペラ41の背面S2とプレート14との間を通過しにくくなる。
【0068】
(3)径方向Bにおいて隣り合う突出部80において、第2突出部82の第2先端面82cによりインペラ41の外径側から内径側に向けて引き戻された流体としてのオイルは、第1突出部81の第1先端面81cによりインペラ41の内径側に引き戻されたり、径方向Bにおいて隣り合う突出部80の間を通過したりする。このため、第1突出部81の第1先端面81cによりインペラ41の外径側から内径側に向けてオイルを引き戻しやすくしつつ、径方向Bにおいて隣り合う突出部80の間をオイルが通過することにより、径方向Bにおいて隣り合う突出部80にオイルが衝突したときの荷重の一部を逃がすことができる。よって、インペラ41の外径側から内径側に向けてオイルを更に引き戻しやすくしつつ、径方向Bにおいて隣り合う突出部80の第1先端面81c及び第2先端面82cにオイルが衝突した際に両突出部80に発生する応力を低減できる。
【0069】
(4)インペラ41の背面S2とプレート14との間にオイルが流れようとしても、ラビリンスシール部100により、インペラ41の背面S2とプレート14との間におけるオイルの流れを更に低減できる。
【0070】
(5)第1突出部81及び第2突出部82が周方向Cに延びる円弧状である。上述したように径方向Bにおいて隣り合う突出部80の間を通過するオイルは、第1突出部81の第1外面81bと第2突出部82の第2内面82aとに沿って流れる。よって、第1突出部81と第2突出部82との間に流れたオイルが第1突出部81と第2突出部82との間に滞留することにより、第1突出部81及び第2突出部82に応力が発生することを抑制できる。つまり、径方向Bにおいて隣り合う突出部80に発生する応力を更に低減できる。
【0071】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0072】
○ 実施形態において、第1列L1及び第2列L2に加え、複数の突出部80を周方向Cで1周するように断続的に並べることにより形成された第3列を背面S2に設けてもよい。第3列を形成する全ての突出部80における回転方向Dに先行する端面は、第1先端面81cや第2先端面82cのように形成するとよい。また、全ての突出部80における回転方向Dに先行する端面は、径方向Bの外側に位置する突出部80ほど回転方向Dに先行しているとよい。なお、複数の突出部80により形成される列の数は適宜変更してもよい。そして、当該列の数に応じて溝141dの数を変更するとよい。
【0073】
○ 実施形態において、対向面141cに形成された2つの溝141dを省略してもよい。この場合、径方向Bにおいて隣り合う全ての突出部80が入り込む1つの環状の溝を新たに追加してもよい。なお、径方向Bにおいて隣り合う全ての突出部80が入り込む1つの環状の溝を追加しなくてもよい。
【0074】
○ 実施形態において、間隔W1と間隔W2とは同じ大きさであってもよい。もしくは、間隔W1が間隔W2よりも大きくてもよい。
○ 実施形態において、第1列L1を省略して、且つ第2列L2のみを背面S2に形成してもよい。また、第2列L2を省略して、且つ第1列L1のみを背面S2に形成してもよい。
【0075】
○ 第1先端面81c及び第2先端面82cは、円弧面であってもよい。第1先端面81c及び第2先端面82cは、回転方向Dに向かうにつれて径方向Bの外側に向けて延びていればよい。
【0076】
○ 第1先端面81c及び第2先端面82cは、径方向Bに延びていてもよい。つまり、第1先端面81c及び第2先端面82cは、回転方向Dに向かうにつれて径方向Bの外側に向けて延びていなくてもよい。なお、第1先端面81c及び第2先端面82cの形状は、特に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0077】
○ 遠心圧縮機10は、増速機30により高速シャフト31を回転させることによりインペラ41を回転させていたが、これに限らない。遠心圧縮機10は、増速機30及び増速機室40が省略されたものであってもよい。例えば、遠心圧縮機10は、インペラ41が電動モータ17により回転する回転軸と一体的に回転するものであってもよい。このように変更する場合、電動モータ17は、回転軸を回転させる駆動部である。この場合、インペラ室42とモータ室25とが回転軸の軸方向において隣り合うように変更される。
【0078】
本変更例において、好ましくは、第1先端面81c及び第2先端面82cは、回転方向Dとは反対の方向に向かうにつれて径方向Bの外側に向けて延びているとよい。そして、第2先端面82cが第1先端面81cよりも回転方向Dとは反対の方向に配置されるように変更するとよい。
【0079】
このように変更することにより、インペラ41が回転することにより、第1先端面81c及び第2先端面82cがエアを第2背面412cから第1背面411cに向けて押し出す流れを形成する。インペラ41が回転することによりインペラ41の背面S2とプレート14との間をインペラ41の外径側から内径側に向けて液体が流れようとしても、各突出部80が少なくとも液体の流れに干渉するとともに上記エアを押し出す流れにより液体が堰き止められる。よって、インペラ41の背面S2とプレート14との間に流れる流体を低減させることができる。ひいては、インペラ室42からモータ室25に液体が至りにくくなるため、電動モータ17の短絡が防止できる。
【0080】
○ 実施形態において、背面S2は平面となっていてもよい。
○ 実施形態において、全ての翼412と全ての突出部80とが高速シャフト31の軸方向に重ならないように周方向Cにずらして配置されていたが、これに限らない。例えば、全ての突出部80のうちのいくつかと、当該複数の突出部80の各々を周方向Cで挟む位置に配置された翼412とが高速シャフト31の軸方向で重ならないように周方向Cに互いにずらして配置されていてもよい。また、1つの突出部80と、当該1つの突出部80を周方向Cで挟む位置に配置された翼412とが高速シャフト31の軸方向で重ならないように周方向Cに互いにずらして配置されていてもよい。つまり、全ての突出部80の少なくとも1つと、当該少なくとも1つの突出部80を周方向Cで挟む位置に配置された翼412とが高速シャフト31の軸方向で重ならないように周方向Cに互いにずらして配置されていればよい。更に換言すると、全ての突出部80の少なくとも1つは、外周面S1における周方向Cで隣り合う翼412の間の部位と高速シャフト31の軸方向で重なり、且つ当該隣り合う翼412と高速シャフト31の軸方向で重ならないように配置されていればよい。
【0081】
○ 実施形態において、例えば、エンジンを駆動源とする車両に搭載される遠心圧縮機10であってもよい。また、例えば、遠心圧縮機10は、電動モータ17を省略してもよい。この場合、低速シャフト16は、例えば、車両に搭載されたエンジンによって回転してもよい。
【0082】
○ 実施形態において、遠心圧縮機10は、燃料電池車両に搭載され、燃料電池に対してエアを供給するために用いられるものに限らず、例えば、車両空調装置に用いられ、流体としての冷媒を圧縮するものであってもよい。また、遠心圧縮機10は、車両に搭載されるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0083】
10…遠心圧縮機、11…ハウジング、14…仕切壁としてのプレート、30…駆動部としての増速機、31…回転軸としての高速シャフト、41…インペラ、80…突出部、81…突出部としての第1突出部、81c…第1突出部におけるインペラの回転方向に先行する端面、82…突出部としての第2突出部、82c…第2突出部におけるインペラの回転方向に先行する端面、141d…溝、411…ハブ、411c…第1背面、412c…第2背面、412…翼、B…ハブの径方向、C…ハブの周方向、D…インペラの回転方向、S1…ハブの外周面、S2…ハブの背面、Vs…空隙。