(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039931
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】貨幣処理装置の管理方法、及び、貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/26 20190101AFI20240315BHJP
G07D 11/32 20190101ALI20240315BHJP
G06F 21/60 20130101ALI20240315BHJP
H04L 9/08 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G07D11/26
G07D11/32
G06F21/60 320
H04L9/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144687
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 征男
(72)【発明者】
【氏名】田中 千也
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141CA07
3E141DA01
3E141FK09
(57)【要約】
【課題】情報のセキュリティを確保しつつ、基板が交換された場合も記憶媒体が記憶している情報を利用可能にする。
【解決手段】貨幣処理装置10は、送出部310と、搬送部40と、受入部330と、識別部320と、貨幣処理に利用される情報を記憶する記憶媒体70が装着され、貨幣処理を実行する第1基板501又は第2基板502が着脱可能に取り付けられる装着部590と、を備え、第1基板は、第1基板に固有の暗号用及び復号用鍵である第1の鍵を保持し、第2基板は、第2の鍵を保持し、第1基板及び第2基板は、共通の鍵である第3の鍵を保持している。管理方法では、第1基板が、第1の鍵によって情報を暗号化すると共に、暗号化された情報を記憶媒体に記憶させ、第1基板が、第3の鍵によって第1の鍵を暗号化すると共に、暗号化された第1の鍵を記憶媒体に記憶させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣処理装置の管理方法であって、
前記貨幣処理装置は、
貨幣処理の対象の貨幣を送り出す送出部と、
前記送出部に接続された搬送路を有しかつ、貨幣を搬送する搬送部と、
前記搬送路に接続されかつ、貨幣を受け入れる受入部と、
前記送出部と前記受入部との間の前記搬送路に位置しかつ、貨幣を識別する識別部と、
それぞれが、前記貨幣処理に利用される情報を記憶する記憶媒体が着脱可能に装着されると共に、前記記憶媒体から読み出した前記情報を利用して、前記送出部、前記受入部、前記搬送部、及び、前記識別部を動作させる制御信号を出力することにより、前記貨幣処理を実行する第1基板又は第2基板が、着脱可能に取り付けられる装着部と、を備え、
前記第1基板は、前記第1基板に固有の暗号用及び復号用鍵である第1の鍵を保持し、前記第2基板は、前記第2基板に固有の暗号用及び復号用鍵である第2の鍵を保持し、前記第1基板及び前記第2基板は、共通の暗号用及び復号用鍵である第3の鍵を保持しており、
前記第1基板が、前記第1の鍵によって前記情報を暗号化すると共に、暗号化された前記情報を前記記憶媒体に記憶させ、
前記第1基板が、前記第3の鍵によって前記第1の鍵を暗号化すると共に、暗号化された前記第1の鍵を前記記憶媒体に記憶させる、貨幣処理装置の管理方法。
【請求項2】
前記第1基板との交換によって前記装着部に取り付けられた前記第2基板に前記記憶媒体が装着された後、前記第2基板が、保持している前記第3の鍵によって、前記記憶媒体から読み出した暗号化された前記第1の鍵を復号し、
前記第2基板が、復号された前記第1の鍵によって、前記記憶媒体から読み出した暗号化された前記情報を復号する、請求項1に記載の貨幣処理装置の管理方法。
【請求項3】
前記第2基板が保持している前記第2の鍵が、復号された前記第1の鍵と異なる場合、前記第2基板が、保持している前記第2の鍵を前記第1の鍵に書き換えて保持する、請求項2に記載の貨幣処理装置の管理方法。
【請求項4】
前記第2基板に装着された前記記憶媒体に暗号化された前記第1の鍵が記憶されていない場合、前記第2基板が、前記第2の鍵を、前記第3の鍵によって暗号化すると共に、暗号化された前記第2の鍵を前記記憶媒体に記憶させる、請求項2に記載の貨幣処理装置の管理方法。
【請求項5】
前記第2基板が、前記第2の鍵を新たに生成する、請求項4に記載の貨幣処理装置の管理方法。
【請求項6】
前記記憶媒体に記憶される暗号化された前記情報は、前記貨幣処理装置を特定する情報である、請求項1~5のいずれか1項に記載の貨幣処理装置の管理方法。
【請求項7】
前記受入部は、貨幣を収納する収納部であり、
前記記憶媒体に記憶される暗号化された前記情報は、前記収納部に収納する貨幣の種類に関する情報である、請求項1~6のいずれか1項に記載の貨幣処理装置の管理方法。
【請求項8】
前記記憶媒体に記憶される暗号化された前記情報は、前記識別部の識別基準に関する情報である、請求項1~7のいずれか1項に記載の貨幣処理装置の管理方法。
【請求項9】
前記記憶媒体に記憶される暗号化された前記情報は、前記貨幣処理装置が有するセンサの調整に関する情報である、請求項1~8のいずれか1項に記載の貨幣処理装置の管理方法。
【請求項10】
貨幣処理の対象の貨幣を送り出す送出部と、
前記送出部に接続された搬送路を有しかつ、貨幣を搬送する搬送部と、
前記搬送路に接続されかつ、貨幣を受け入れる受入部と、
前記送出部と前記受入部との間の前記搬送路に位置しかつ、貨幣を識別する識別部と、
それぞれが、前記貨幣処理に利用される情報を記憶する記憶媒体が着脱可能に装着されると共に、前記記憶媒体から読み出した前記情報を利用して、前記送出部、前記受入部、前記搬送部、及び、前記識別部を動作させる制御信号を出力することにより、前記貨幣処理を実行する第1基板又は第2基板が、着脱可能に装着される装着部と、を備え、
前記第1基板は、前記第1基板に固有の暗号用及び復号用鍵である第1の鍵を保持し、前記第2基板は、前記第2基板に固有の暗号用及び復号用鍵である第2の鍵を保持し、前記第1基板及び前記第2基板は、共通の暗号用及び復号用鍵である第3の鍵を保持しており、
前記第1基板は、前記第1の鍵によって前記情報を暗号化すると共に、暗号化された前記情報を前記記憶媒体に記憶させ、
前記第1基板はまた、前記第3の鍵によって前記第1の鍵を暗号化すると共に、暗号化された前記第1の鍵を前記記憶媒体に記憶させる、貨幣処理装置。
【請求項11】
前記第1基板との交換によって前記装着部に取り付けられた前記第2基板は、前記記憶媒体が装着された場合に、保持している前記第3の鍵によって、前記記憶媒体から読み出した暗号化された前記第1の鍵を復号し、
前記第2基板は、復号された前記第1の鍵によって、前記記憶媒体から読み出した暗号化された前記情報を復号する、請求項10に記載の貨幣処理装置。
【請求項12】
前記第1基板及び前記第2基板は、セキュアエレメントを有し、
前記第1基板は、前記第1の鍵及び前記第3の鍵を、前記セキュアエレメントに記憶し、
前記第2基板は、前記第2の鍵及び前記第3の鍵を、前記セキュアエレメントに記憶している、請求項10又は11に記載の貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、貨幣処理装置の管理方法、及び、貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙幣処理装置が記載されている。紙幣処理装置は、載置台に載置された複数金種の紙幣を順に装置内に取り込み、紙幣の識別を行った後、紙幣を金種毎に分類してスタッカーに集積する。紙幣処理装置はまた、偽券を含むリジェクト紙幣を、リジェクトテーブルへ放出する。
【0003】
紙幣処理装置は、装置全体の制御を行う基板を備えている。基板は、CPU(Central Processing Unit)、外部メモリ、及び、カードコネクタを有している。カードコネクタには、メモリカードが着脱可能に装着される。メモリカードは、更新用の識別プログラムと識別テーブルとを記憶している。CPUの内部メモリは、識別プログラムを記憶している。外部メモリは、識別テーブルを記憶している。
【0004】
識別する紙幣の種類の増加若しくは変更、又は、新たな偽券への対応といった様々な理由により、識別プログラム及び/又は識別テーブルが更新される場合、保守員は、メモリカードをカードコネクタに装着する。メモリカードに記憶されている識別プログラム及び/又は識別テーブルによって、内部メモリの識別プログラム及び/又は外部メモリの識別テーブルが書き換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
貨幣処理装置は、貨幣処理の実行に利用される様々な情報を保持している。これらの情報には、貨幣処理装置に固有の情報が含まれる。
【0007】
貨幣処理装置の固有情報は、メモリカードといった記憶媒体に記憶される場合がある。記憶媒体は、例えば貨幣処理装置の制御を行う基板に着脱可能に装着される。基板は、記憶媒体に記憶されている情報を利用して、貨幣処理を実行する。
【0008】
記憶媒体に記憶される情報は、セキュリティ向上のため、暗号化される。基板は、当該基板に固有の暗号鍵によって暗号化した情報を、記憶媒体に記憶させる。基板はまた、記憶媒体に記憶されている情報を、暗号鍵に対応する復号鍵によって復号する。尚、暗号鍵と復号鍵とは同じであってもよい。以下においては、暗号鍵と復号鍵とは同じであるとして、単に鍵と呼ぶ。
【0009】
基板は、故障すると新しい基板に交換される。貨幣処理の実行に利用される情報は記憶媒体に記憶されているため、新しい基板に記憶媒体を装着すれば、貨幣処理装置は、基板の交換前と同様に、貨幣処理を実行できる。
【0010】
ところが、記憶媒体が記憶している情報が、交換前の基板に固有の鍵によって暗号化されていると、新しい基板は当該鍵を保持していないため、新しい基板は、記憶媒体から読み出した暗号化された情報を復号できない。貨幣処理装置は、記憶媒体に記憶されている情報を利用できない。
【0011】
ここに開示する技術は、情報のセキュリティを確保しつつ、基板が交換された場合も記憶媒体が記憶している情報を利用可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここに開示する技術は、貨幣処理装置の管理方法に係る。前記貨幣処理装置は、
貨幣処理の対象の貨幣を送り出す送出部と、
前記送出部に接続された搬送路を有しかつ、貨幣を搬送する搬送部と、
前記搬送路に接続されかつ、貨幣を受け入れる受入部と、
前記送出部と前記受入部との間の前記搬送路に位置しかつ、貨幣を識別する識別部と、
前記貨幣処理を実行する第1基板又は第2基板が、着脱可能に装着される装着部と、を備える。
【0013】
前記第1基板および前記第2基板のそれぞれには、前記貨幣処理に利用される情報を記憶する記憶媒体が着脱可能に装着される。
【0014】
前記第1基板および前記第2基板のそれぞれは、前記記憶媒体から読み出した前記情報を利用して、前記貨幣処理を実行する。
【0015】
前記第1基板および前記第2基板のそれぞれは、前記記憶媒体から読み出した前記情報を利用して、前記送出部、前記受入部、前記搬送部、及び、前記識別部を動作させる制御信号を出力してもよい。
【0016】
前記第1基板は、前記第1基板に固有の暗号用及び復号用鍵である第1の鍵を保持し、前記第2基板は、前記第2基板に固有の暗号用及び復号用鍵である第2の鍵を保持し、前記第1基板及び前記第2基板は、共通の暗号用及び復号用鍵である第3の鍵を保持している。
【0017】
前記管理方法は、
前記第1基板が、前記第1の鍵によって前記情報を暗号化すると共に、暗号化された前記情報を前記記憶媒体に記憶させ、
前記第1基板が、前記第3の鍵によって前記第1の鍵を暗号化すると共に、暗号化された前記第1の鍵を前記記憶媒体に記憶させる。
【0018】
ここで、記憶媒体は、基板から取り外されても情報を維持する不揮発性メモリである。記憶媒体は、例えばフラッシュメモリとしてもよい。
【0019】
また、貨幣処理装置の送出部は、装置の外から受け入れた貨幣処理の対象の貨幣を、装置の中へ送り出す投入部であってもよい。その場合に、貨幣処理装置の搬送部は、投入部により送り出された貨幣を搬送する。また、貨幣処理装置の受入部は、搬送部により搬送された貨幣処理の対象の貨幣を収納する収納部であってもよい。収納部は、貨幣処理装置の筐体内に位置し、収納している貨幣を貨幣処理装置の外から取り出すことができないクローズドな収納部としてもよい。また、収納部は、少なくともその一部が貨幣処理装置の外に開放され、収納している貨幣を貨幣処理装置の外から取り出すことができるオープンな収納部としてもよい。
【0020】
貨幣処理装置の送出部は、前記とは逆に、収納している貨幣を、装置の外へ払い出すために送り出す収納部であってもよい。その場合に、貨幣処理装置の搬送部は、収納部から送り出された貨幣を搬送する。また、貨幣処理装置の受入部は、搬送部により搬送され、装置の外へ払い出された貨幣を保持する投出部であってもよい。
【0021】
第1基板に装着された記憶媒体は、第1基板に固有の第1の鍵によって暗号化された情報と、複数の基板に共通の第3の鍵によって暗号化された第1の鍵とを記憶している。
【0022】
第2基板は、前記記憶媒体が装着されると、当該記憶媒体から読み出した暗号化された第1の鍵を、第3の鍵によって復号できる。第2基板はまた、復号した第1の鍵によって、記憶媒体から読み出した暗号化された情報を復号できる。情報の暗号化によって情報のセキュリティを確保しながら、第1基板と第2基板とは、同じ記憶媒体を共用できる。
【0023】
前記第1基板との交換によって前記装着部に取り付けられた前記第2基板に前記記憶媒体が装着された後、前記第2基板が、保持している前記第3の鍵によって、前記記憶媒体から読み出した暗号化された前記第1の鍵を復号し、
前記第2基板が、復号された前記第1の鍵によって、前記記憶媒体から読み出した暗号化された前記情報を復号する、としてもよい。
【0024】
第1基板が第2基板に交換された後、貨幣処理装置は、記憶媒体から読み出した情報を利用して貨幣処理を実行できる。
【0025】
前記第2基板が保持している前記第2の鍵が、復号された前記第1の鍵と異なる場合、前記第2基板が、保持している前記第2の鍵を前記第1の鍵に書き換えて保持する、としてもよい。
【0026】
第2の鍵が第1の鍵に書き換えられることによって、第2基板は、第1基板と実質的に同じ基板になる。
【0027】
前記第2基板に装着された前記記憶媒体に暗号化された前記第1の鍵が記憶されていない場合、前記第2基板が、前記第2の鍵を、前記第3の鍵によって暗号化すると共に、暗号化された前記第2の鍵を前記記憶媒体に記憶させる、としてもよい。
【0028】
暗号化された鍵を記憶していない記憶媒体は、暗号化された情報も記憶していない。当該記憶媒体は、新しい記憶媒体である。第2基板に固有の第2の鍵であって、暗号化された第2の鍵が記憶媒体に記憶されると、当該記憶媒体は、貨幣処理装置に固有の情報を記憶する記憶媒体として、利用できる。
【0029】
前記貨幣処理装置の管理方法では、前記第2基板が、前記第2の鍵を新たに生成する、としてもよい。
【0030】
第2の鍵が新たに生成されれば、第2の鍵によって暗号化される情報のセキュリティが高まる。
【0031】
前記記憶媒体に記憶される暗号化された前記情報は、前記貨幣処理装置を特定する情報である、としてもよい。
【0032】
前記受入部は、貨幣を収納する収納部であり、
前記記憶媒体に記憶される暗号化された前記情報は、前記収納部に収納する貨幣の種類に関する情報である、としてもよい。
【0033】
ここで、貨幣の種類には、貨幣の金種、又は、貨幣のカテゴリが含まれる。
【0034】
前記記憶媒体に記憶される暗号化された前記情報は、前記識別部の識別基準に関する情報である、としてもよい。
【0035】
ここで、識別基準には、カテゴリを決定する正損要因毎のしきい値が含まれる。
【0036】
前記記憶媒体に記憶される暗号化された前記情報は、前記貨幣処理装置が有するセンサの調整に関する情報である、としてもよい。
【0037】
これらの情報は、貨幣処理装置に固有の情報であって、貨幣処理に利用される情報である。
【0038】
ここに開示する技術は、貨幣処理装置に係る。貨幣処理装置は、
貨幣処理の対象の貨幣を送り出す送出部と、
前記送出部に接続された搬送路を有しかつ、貨幣を搬送する搬送部と、
前記搬送路に接続されかつ、貨幣を受け入れる受入部と、
前記送出部と前記受入部との間の前記搬送路に位置しかつ、貨幣を識別する識別部と、
前記貨幣処理を実行する第1基板又は第2基板が、着脱可能に装着される装着部と、を備える。
【0039】
前記第1基板および前記第2基板のそれぞれには、前記貨幣処理に利用される情報を記憶する記憶媒体が着脱可能に装着される。
【0040】
前記第1基板および前記第2基板のそれぞれは、前記記憶媒体から読み出した前記情報を利用して、前記貨幣処理を実行する。
【0041】
前記第1基板および前記第2基板のそれぞれは、前記記憶媒体から読み出した前記情報を利用して、前記送出部、前記受入部、前記搬送部、及び、前記識別部を動作させる制御信号を出力してもよい。
【0042】
前記第1基板は、前記第1基板に固有の暗号用及び復号用鍵である第1の鍵を保持し、前記第2基板は、前記第2基板に固有の暗号用及び復号用鍵である第2の鍵を保持し、前記第1基板及び前記第2基板は、共通の暗号用及び復号用鍵である第3の鍵を保持しており、
前記第1基板は、前記第1の鍵によって前記情報を暗号化すると共に、暗号化された前記情報を前記記憶媒体に記憶させ、
前記第1基板はまた、前記第3の鍵によって前記第1の鍵を暗号化すると共に、暗号化された前記第1の鍵を前記記憶媒体に記憶させる。
【0043】
貨幣処理装置は、情報のセキュリティを確保できる。また、第1基板と第2基板とは、同じ記憶媒体を共用できる。
【0044】
前記第1基板との交換によって前記装着部に取り付けられた前記第2基板は、前記記憶媒体が装着された場合に、保持している前記第3の鍵によって、前記記憶媒体から読み出した暗号化された前記第1の鍵を復号し、
前記第2基板は、復号された前記第1の鍵によって、前記記憶媒体から読み出した暗号化された前記情報を復号する、としてもよい。
【0045】
貨幣処理装置は、基板が交換された場合に、記憶媒体が記憶している情報を利用して、貨幣処理を実行できる。
【0046】
前記第1基板及び前記第2基板は、セキュアエレメントを有し、
前記第1基板は、前記第1の鍵及び前記第3の鍵を、前記セキュアエレメントに記憶し、
前記第2基板は、前記第2の鍵及び前記第3の鍵を、前記セキュアエレメントに記憶している、としてもよい。
【0047】
この構成は、記憶媒体が記憶する情報のセキュリティを高める。
【発明の効果】
【0048】
前記の貨幣処理装置の管理方法、及び、貨幣処理装置は、情報のセキュリティを確保しつつ、基板が交換された場合も記憶媒体が記憶している情報を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図3】
図3は、基板の交換に伴う制御の説明図である。
【
図4】
図4は、ブート処理における基板チェックの制御に関するフローチャートである。
【
図5】
図5は、装置の稼働中における記憶媒体の読み書き制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、貨幣処理装置の管理方法、及び、貨幣処理装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する貨幣処理装置の管理方法、及び、貨幣処理装置は例示である。
【0051】
(貨幣処理装置の構成)
図6は、貨幣処理装置10を示している。貨幣処理装置10は、送出部310と、搬送部40と、受入部330と、識別部320と、装着部590と、を備えている。
【0052】
送出部310は、貨幣処理の対象の貨幣を送り出す。搬送部40は、送出部310に接続された搬送路450を有しかつ、貨幣を搬送する。受入部330は、搬送路450に接続されかつ、貨幣を受け入れる。識別部320は、送出部310と受入部330との間の搬送路450に位置しかつ、貨幣を識別する。貨幣は、
図6に実線の矢印で示すように、送出部310から識別部320を介して、受入部330へ搬送される。
【0053】
装着部590には、第1基板501又は第2基板502が、着脱可能に取り付けられる。第1基板501又は第2基板502には、記憶媒体70が着脱可能に装着される。記憶媒体70は、貨幣処理に利用される情報を記憶する。装着部590に取り付けられた第1基板501は、記憶媒体70から読み出した情報を利用して、送出部310、受入部330、搬送部40、及び、識別部320を動作させる制御信号を出力する(
図6の破線の矢印参照)。第1基板501は、送出部310、受入部330、搬送部40、及び、識別部320へ直接、制御信号を送信してもよい。第1基板501は、送出部310、受入部330、搬送部40、及び、識別部320の少なくとも1つへ、例えば別の基板を介して間接的に制御信号を送信してもよい。これにより、第1基板501は、貨幣処理を実行する。第2基板502が装着部590に取り付けられると、第2基板502は、第1基板501と同様に、記憶媒体70から読み出した情報を利用して、送出部310、受入部330、搬送部40、及び、識別部320を動作させる制御信号を出力する。
【0054】
第1基板501は、第1基板501に固有の暗号用及び復号用鍵である第1の鍵を保持し、第2基板502は、第2基板502に固有の暗号用及び復号用鍵である第2の鍵を保持し、第1基板501及び第2基板502は、共通の暗号用及び復号用鍵である第3の鍵を保持している。
【0055】
そして、第1基板501は、第1の鍵によって情報を暗号化すると共に、暗号化された情報を記憶媒体70に記憶させる。第1基板501はまた、第3の鍵によって第1の鍵を暗号化すると共に、暗号化された第1の鍵を記憶媒体70に記憶させる。情報の暗号化によって情報のセキュリティが確保される。
【0056】
また、第1基板501との交換によって装着部590に取り付けられた第2基板502に記憶媒体70が装着された後、第2基板502は、保持している第3の鍵によって、記憶媒体70から読み出した暗号化された第1の鍵を復号し、復号された第1の鍵によって、記憶媒体70から読み出した暗号化された情報を復号する。
【0057】
第1の鍵が、第3の鍵によって暗号化されているため、第1基板501と第2基板502とは、同じ記憶媒体70を共用できる。例えば故障に起因して第1基板501が第2基板502に交換された後、貨幣処理装置10は、情報の暗号化によって情報のセキュリティを確保しながら、記憶媒体70から読み出した情報を利用して貨幣処理を実行できる。
【0058】
以下に示す貨幣処理装置の変形例におけるそれぞれの構成は、合理的な範囲で、個別に、または他の構成と組み合わせて、
図6の貨幣処理装置に適用できる。また、以下に示す貨幣処理装置の管理方法は、合理的な範囲で、
図6の貨幣処理装置およびその変形例に適用できる。
【0059】
図1は貨幣処理装置1を例示している。
図1の貨幣処理装置1は、
図6の貨幣処理装置10の変形例である。
【0060】
貨幣処理装置1は、貨幣に関する処理を実行する。貨幣処理装置1は、紙幣のみ、硬貨のみ、又は、紙幣及び硬貨の両方を処理する。貨幣処理装置1は、貨幣処理として、例えば入金処理を実行する。入金処理は、入金対象の貨幣を装置の中に取り込む。貨幣処理装置1は、貨幣処理として、例えば出金処理を実行してもよい。出金処理は、出金対象の貨幣を装置の外へ払い出す。貨幣処理装置1は、入金処理又は出金処理以外の貨幣処理を実行してもよい。貨幣処理装置1は、例えば銀行の営業店舗に設置される。テラー又は銀行の顧客が、貨幣処理装置1を利用する。尚、貨幣処理装置1の設置場所に制限はない。
【0061】
貨幣処理装置1は、開口部31、識別部32、収納部33、34、搬送部4、及び、制御基板5を備えている。
【0062】
開口部31は、貨幣処理装置1の上部筐体21に形成されている。開口部31は、上部筐体21の中と外とをつないでいる。開口部31の少なくとも一部は、上部筐体21の外に開放されている。
【0063】
開口部31は、例えば投入部である。投入部は、貨幣処理の対象の貨幣を保持しかつ、保持している貨幣を、上部筐体21の外から中へ送り出す。開口部31は、送出部の一例である。操作者は、例えば入金処理の対象の貨幣を、手で投入部へ投入する。
【0064】
開口部31は、例えば投出部である。投出部は、貨幣処理の対象の貨幣を、上部筐体21の中から外へ投出しかつ、投出された貨幣を保持する。開口部31は、受入部の一例である。操作者は、投出部が保持している、例えば出金処理の対象の貨幣を、投出部から手で取り出す。
【0065】
開口部31は、前記投入部及び前記投出部の両方の機能を有していてもよい。
【0066】
貨幣処理装置1は、二つの収納部33、34を有している。二つの収納部33、34は、同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。尚、貨幣処理装置1は、二つの収納部33、34を備えることに限定されない。収納部の数は、任意である。
【0067】
収納部33、34は共に、下部筐体22の中に格納されている。下部筐体22と上部筐体21とは、下部筐体22が下でかつ上部筐体21が上になるよう、上下に重なっている。下部筐体22は、金庫筐体である。下部筐体22は、上部筐体21よりも強固に、格納物を守る。操作者は、収納部33、34に収納されている貨幣にアクセスできない。
【0068】
収納部33、34は、貨幣を収納する。収納部33、34の構造は、公知の様々な構造を採用できる。貨幣が紙幣である場合、収納部33、34は、いわゆるスタック式の収納部であってもよい。収納部33、34は、いわゆる巻き取り式の収納部であってもよい。
【0069】
収納部33、34は、例えば開口部31から送り出された貨幣であって、貨幣処理の対象の貨幣を収納する。この場合、開口部31は、送出部に相当し、収納部33、34は、受入部に相当する。
【0070】
収納部33、34は、収納している貨幣を、収納部33、34の外へ繰り出す機構を有してもよい。収納部33、34は、例えば貨幣処理の対象の貨幣を収納部33、34の外へ繰り出す。開口部31は、収納部33、34から繰り出された貨幣を、上部筐体21の中から外へ送り出して保持する。この場合、収納部33、34は、送出部に相当し、開口部31は、受入部に相当する。
【0071】
尚、収納部33、34は、下部筐体22に格納されなくてもよい。例えば、収納部33は、下部筐体22に格納され、収納部34は、上部筐体21に格納されてもよい。
【0072】
収納部33、34が下部筐体22へ格納されない場合、収納部33、34の一部が、貨幣処理装置1の外部に開放されてもよい。収納部33、34は、いわゆるオープンスタッカであってもよい。操作者は、収納部33、34に収納されている貨幣を、手で取り出すことができる。尚、貨幣処理装置1は、必ずしも金庫筐体を備えた装置でなくてもよい。オープンスタッカを備えた貨幣処理装置1は、いわゆる整理機であってもよい。整理機は、処理対象の貨幣を、様々な条件に従って分類する。
【0073】
また、収納部33、34は、処理対象の貨幣を一時的に収納する、いわゆる一時保留部であってもよい。
【0074】
搬送部4は、搬送路45を有している。搬送部4は、搬送路45に沿って貨幣を一つ一つ搬送する。搬送路45は、複数のローラー、複数のベルト、これらを駆動するモータ、及び、複数のガイドの組み合わせからなる、公知の構造を有している。搬送路45は、開口部31と収納部33、34との間をつないでいる。搬送路45は、識別部32と、収納部33、34との間で、収納部33に接続される搬送路と、収納部34に接続される搬送路とに分岐している。搬送路45の分岐箇所には、分岐爪が設定されている。分岐爪は、貨幣の搬送経路を選択する。
【0075】
搬送部4は、センサ41、42、43、44を有している。各センサ41、42、43、44は、光学式、超音波式又は機械式のセンサであって、貨幣の通過を検知する。各センサ41、42、43、44は、検知信号を制御基板5へ出力する。
【0076】
各センサ41、42、43、44は、搬送路45の所定の箇所に設置されている。
図1の貨幣処理装置1において、センサ41は、開口部31と搬送路45との接続箇所に設置され、センサ42は、搬送路45の分岐箇所の近くに設置されている。センサ43は、収納部33と搬送路45との接続箇所に設置され、センサ44は、収納部34と搬送路45との接続箇所に設置されている。
【0077】
識別部32は、貨幣を識別する。識別部32は、開口部31と収納部33、34との間の搬送路45に位置している。識別部32は、光学式、磁気式、超音波式、及び/又は、機械式のセンサを有している。識別部32は、これらの内の一又は複数のセンサを用いて、搬送中の貨幣から様々な情報を取得する。識別部32は、少なくとも、貨幣の真偽、金種、及び、正損を識別する。識別部32は、制御基板5へ識別信号を出力する。
【0078】
制御基板5は、下部筐体22の中に設置されている。下部筐体22の内部には、装着部59が設けられている。制御基板5は、装着部59に、着脱可能に取り付けられる。尚、制御基板5は、上部筐体21の中に設置されてもよい。
【0079】
装着部59に装着された制御基板5は、開口部31、識別部32、収納部33、及び、搬送部4を動作させる制御信号を出力する。このことにより、貨幣処理装置1は、貨幣処理を行う。
【0080】
詳細は後述するが、制御基板5には、記憶媒体7が着脱可能に装着される。記憶媒体7は、貨幣処理に利用される情報を記憶している。制御基板5は、記憶媒体7から読み出した情報を利用して、制御信号を出力する。
【0081】
(基板の構成)
図2は、制御基板5を例示している。制御基板5は、板状の本体50を有している。本体50には、各種の部品51-56が実装されている。
【0082】
例えば、本体50には、CPU51と外部メモリ52が実装されている。外部メモリ52は、不揮発性メモリである。外部メモリ52は、例えば基本プログラムを記憶している。CPU51は、外部メモリ52に記憶されている基本プログラムに従って、貨幣処理装置1を制御する。
【0083】
外部メモリ52はまた、貨幣処理装置1に関する各種の情報を記憶している。外部メモリ52が記憶している情報は、貨幣処理の実行に利用される情報の内、当該貨幣処理装置1と同一機種の貨幣処理装置1について、共通の情報である。この共通の情報は、後述する、貨幣処理装置1に固有の情報とは異なる。
【0084】
例えば、本体50には、セキュアエレメント53が実装されてもよい。セキュアエレメント53は、例えばTPM(Trusted Platform Module)である。以下において、セキュアエレメント53とTPMとは、実質的に同義である。
【0085】
セキュアエレメント53は、暗号鍵及び復号鍵の生成、生成した暗号鍵による情報の暗号化、及び、暗号化された情報の復号鍵による復号を行う。暗号鍵と復号鍵とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。ここに開示する貨幣処理装置1において、暗号鍵と復号鍵とは同じである。以下において暗号鍵及び復号鍵を、単に鍵と呼ぶ。セキュアエレメント53は、内部メモリを有している。内部メモリは、鍵を記憶している。
【0086】
例えば、本体50には、入出力ポート54が実装されてもよい。制御基板5は、入出力ポート54を通じて、各センサ41~44からの検知信号、及び、識別部32からの識別信号を受けると共に、開口部31、識別部32、収納部33、及び、搬送部4を動作させる制御信号を出力する。
【0087】
例えば、本体50には、電源ポート55が実装されてもよい。制御基板5は、電源ポート55を通じて給電される。
【0088】
例えば、本体50には、記憶媒体7が着脱可能に装着されるソケット56が実装されてもよい。ソケット56は、装着部の一例である。記憶媒体7は、例えばメモリカードである。メモリカードは、不揮発性メモリとしてフラッシュメモリを含む。メモリカードは、具体的には、SDカードであってもよい。記憶媒体7は、USB(Universal Serial Bus)メモリであってもよい。尚、この貨幣処理装置1では、記憶媒体7はメモリカードである。
【0089】
記憶媒体7は、前述したように、貨幣処理に利用される情報を記憶している。記憶媒体7が記憶している情報は、貨幣処理装置1に固有の情報である。具体的に記憶媒体7は、次の情報(1)~(4)の少なくとも一を記憶している。
【0090】
(1)貨幣処理装置1を特定する情報
より具体的に、この情報は、貨幣処理装置1に付与されている装置ID、及び/又は、IPアドレスである。装置ID、又は、IPアドレスは、貨幣処理装置1毎に相違するため、貨幣処理装置1に固有の情報である。
【0091】
(2)収納部33、34に収納する貨幣の金種又はカテゴリ
カテゴリとは、例えば正貨、損貨、及び、リジェクト貨、というカテゴリである。尚、正貨は、痛みや汚れが少ない貨幣であり、流通可能な貨幣である。損貨は、例えば、傷みや汚れの激しい貨幣であり、流通に適さない貨幣である。リジェクト貨は、貨幣処理装置1が受け付けできない貨幣である。リジェクト貨は、識別部32が識別できない貨幣、又は、偽貨幣を含む。
【0092】
収納部33、34に収納される貨幣の金種又はカテゴリの情報の具体例は、収納部33は、特定金種の貨幣を収納し、収納部34は、特定金種以外の金種の貨幣を収納する、といった情報、又は、収納部33は、正貨を収納し、収納部34は、損貨を収納する、といった情報である。こうした情報は、貨幣処理装置1が貨幣処理を実行する上で必要な設定情報である。使用者は、貨幣処理装置1の使用目的といった要件に応じて、収納部33、34に収納される貨幣の金種又はカテゴリを設定する。収納部33、34に収納される貨幣の金種又はカテゴリは、貨幣処理装置1毎に異なる。
【0093】
(3)識別部の識別基準に関する情報
この情報は、識別部32が取得した情報に基づいて貨幣を区別する基準の情報である。この情報は、例えば、貨幣のカテゴリを決定する正損要因毎のしきい値の情報であってもよい。尚、正損要因とは、正貨に該当しないと識別される原因であり、紙幣の場合、例えば(a)紙幣の汚れ、(b)紙幣の破れ、及び、(c)紙幣の一部の欠損、が正損要因に含まれる。正損要因毎のしきい値の情報には、識別部32が取得した情報に基づいて、リジェクト貨を区別する基準の情報が含まれる。
【0094】
しきい値は、貨幣処理装置1の工場出荷時には、デフォルトのしきい値に設定されている。しかし、例えば貨幣処理装置1の使用環境といった要件により、使用者が、正損要因毎に、しきい値を変更する場合がある。例えば比較的汚れが多い貨幣が貨幣処理の対象になる使用環境下においては、デフォルトのしきい値であると、損貨と判断される貨幣の数が多すぎてしまう。また、デフォルトのしきい値であると、リジェクト貨と判断される貨幣の数が多すぎてしまう場合もある。これらの場合に、正貨、損貨、又は、リジェクト貨が適切に判断されるよう、使用者は、しきい値を変更する。使用者がしきい値を変更することに伴って、しきい値の情報は、貨幣処理装置1の固有の情報に変更される。変更されたしきい値の情報は、貨幣処理装置1に最適化された情報である。
【0095】
(4)識別部32のセンサの調整値、又は、搬送路45に設置されているセンサ41~44の調整値の情報
センサの調整値は、貨幣処理装置1の工場出荷時には、デフォルトの調整値に設定されている。貨幣処理装置1の使用環境といった要件に依り、又は、経時劣化に伴い、センサが正確な検出信号を出力するよう調整値の変更が必要になる場合がある。調整値の変更は、例えばセンサの受光感度の変更であり、保守員が行う。
【0096】
また、貨幣処理装置1が、貨幣処理の実行を繰り返す間に、センサの調整値を、自動調整する場合もある。
【0097】
センサの調整値がデフォルトから変更されると、その調整値の情報は、貨幣処理装置1の固有の情報である。変更された調整値の情報は、貨幣処理装置1に最適化された情報である。
【0098】
貨幣処理装置1の固有の情報は、貨幣処理装置1が行った貨幣処理や、貨幣処理中に発生したエラーの履歴であるログデータを含んでもよい。
【0099】
図2に示すように、記憶媒体7は、制御基板5から取り外し可能である。セキュリティ向上のため、セキュアエレメント53は、記憶媒体7に記憶させる情報を暗号化する。セキュアエレメント53は、当該制御基板5に固有の鍵(例えばKey_A)を生成し、当該Key_Aによって、情報を暗号化する。制御基板5は、暗号化された情報を記憶媒体7に記憶させる。
【0100】
貨幣処理を実行する際に、セキュアエレメント53は、記憶媒体7から読み出した暗号化された情報を、Key_Aによって復号する。制御基板5は、復号された情報を利用して、貨幣処理を実行する。
【0101】
制御基板5は固有の鍵を使って、記憶媒体7に記憶させる情報の暗号化及び復号を行う。個々の貨幣処理装置1の制御基板5は全て、固有の鍵を保持している。第1の貨幣処理装置1から記憶媒体7を取り外して、第2の貨幣処理装置1の制御基板5に当該記憶媒体7を装着しても、第2の貨幣処理装置1の制御基板5は、記憶媒体7から読み出した情報を復号できない。記憶媒体7に記憶されている情報のセキュリティが向上する。
【0102】
(基板の交換を伴う貨幣処理装置の管理方法)
例えば貨幣処理装置1の使用を継続している間に、制御基板5の故障のため、制御基板5の交換が必要になる場合がある。制御基板5は、
図1に示すように、装着部59に着脱可能に取り付けられている。制御基板5の交換が必要になった場合、保守員は、制御基板5(第1基板5A、
図3参照)を装着部59から取り外し、新たな制御基板5(第2基板5B)を装着部59に取り付けることができる。
【0103】
記憶媒体7は、制御基板5のソケット56に、着脱可能に装着されている。保守員は、記憶媒体7を第1基板5Aから取り外し、当該記憶媒体7を第2基板5Bのソケット56に装着できる。
【0104】
ところが、記憶媒体7に記憶されている情報は、第1基板5Aのセキュアエレメント53が、Key_A(つまり、第1の鍵)によって暗号化している。Key_Aは、第1基板5Aに固有の鍵である。交換された第2基板5Bのセキュアエレメント53は、記憶媒体7から読み出した暗号化された情報を復号できない。前述したように、記憶媒体7は、貨幣処理装置1に固有の情報(1)~(4)を記憶している。制御基板5の交換後に、これらの固有情報が利用できないと、貨幣処理装置1の貨幣処理に支障が生じる恐れがある。
【0105】
そこで、ここに開示する貨幣処理装置1は、制御基板5が交換された場合も記憶媒体7が記憶している情報を利用可能に構成されている。
【0106】
そのために、貨幣処理装置1の制御基板5は、記憶媒体7に、暗号化された情報と共に、当該情報の暗号化に用いた鍵(前述したKey_A)を、暗号化して記憶させる。鍵を暗号化させる鍵は、複数の制御基板5の間で共通の鍵である。以下においては、複数の制御基板5の間で共通の鍵を、Key_Z(つまり、第3の鍵)と呼ぶ。制御基板5のセキュアエレメント53は、当該基板に固有の鍵と、共通の鍵(Key_Z)とを保持している。
【0107】
図3を参照しながら、貨幣処理装置1の管理方法を説明する。第1基板5Aは、交換前の制御基板5である。前述したように、第1基板5Aのセキュアエレメント53は、固有の鍵Key_Aを保持している。また、記憶媒体7には、Key_Aによって暗号化された情報が記憶されている。
【0108】
第1基板5Aのセキュアエレメント53は、Key_Zも保持している。Key_Zは、前述したように、複数の制御基板5の間で共通である。後述する第2基板5Bも、Key_Zを保持している。
【0109】
第1基板5Aのセキュアエレメント53は、Key_AをKey_Zによって暗号化する。第1基板5Aは、暗号化された鍵Key_A’も、記憶媒体7に記憶させる。
【0110】
第2基板5Bは、第1基板5Aに交換されて、貨幣処理装置1の装着部59に装着される基板である。第2基板5Bのセキュアエレメント53は、固有のKey_B(つまり、第2の鍵)と、共通のKey_Zとを保持している。第2基板5Bに固有の鍵Key_Bと、第1基板5Aに固有の鍵Key_Aとは異なる。
【0111】
図3に白抜き矢印で示すように、第1基板5Aから取り外された記憶媒体7が、第2基板5Bに装着されると、第2基板5Bは、記憶媒体7から、暗号化されたKey_A’を読み出す。セキュアエレメント53は、暗号化されたKey_A’を、Key_Zによって復号する。第2基板5Bは、Key_Aを取得できる。
【0112】
第2基板5Bのセキュアエレメント53はまた、固有のKey_Bを、復号されたKey_Aに書き換える。これにより、第2基板5Bは、交換前の第1基板5Aと実質的に同じになる。貨幣処理の実行時に、第2基板5Bのセキュアエレメント53は、記憶媒体7から読み出した暗号化された情報を、Key_Aによって復号できる。貨幣処理装置1は、制御基板5が交換された後も、記憶媒体7に記憶されている固有の情報を使って、貨幣処理をスムースに実行できる。
【0113】
尚、保守員は、
図3に示すように、パーソナルコンピュータ60とセキュリティドングル61とを使って、制御基板5から取り外された記憶媒体7の情報を読み出すことができる。セキュリティドングル61は、Key_Zを保持している記憶媒体である。セキュリティドングル61は、パーソナルコンピュータ60に接続できる。セキュリティ確保のため、セキュリティドングル61は、保守員のみが所持できる。記憶媒体7及びセキュリティドングル61が接続されたパーソナルコンピュータ60は、記憶媒体7から読み出した暗号化されたKey_A’を、Key_Zによって復号する。パーソナルコンピュータ60はまた、記憶媒体7から読み出した暗号化された情報を、Key_Aによって復号する。保守員は、貨幣処理装置1の固有の情報、例えばログデータを確認することができる。
【0114】
(貨幣処理装置の制御手順)
次に、
図4及び5を参照しながら、貨幣処理装置1の制御手順について説明する。
【0115】
図4は、貨幣処理装置1のブート処理における基板チェックの制御手順を示している。
図4のフローチャートは、可能な範囲でステップの順番を入れ替えたり、一部のステップを省略したり、ステップを追加したり、できる。
図4のフローチャートは、貨幣処理装置1の電源が投入された後にスタートする。
【0116】
スタート後のステップS51において、制御基板5は、装着されているメモリカードに、暗号化された鍵が記憶されているか否かを判断する。メモリカードが、交換前の制御基板5に装着されていたメモリカードの場合、ステップS51の判断はYesである。
【0117】
ステップS51の判断がNoの場合、制御基板5は、ステップS52において、TPM(つまり、セキュアエレメント53)が保持している固有の鍵を、Key_Zによって暗号化し、暗号化した鍵を、メモリカードに記憶させる。メモリカードに、制御基板5に固有の鍵であって、暗号化された鍵が記憶されると、当該メモリカードは、貨幣処理装置1に固有の情報を暗号化して記憶するメモリカードとして利用できる。
【0118】
尚、TPMは、ステップS52において、新たな鍵を生成し、記憶媒体7に記憶させると共に、TPMの内部メモリに記憶してもよい。新たな鍵が生成されれば、情報のセキュリティが高まる。
【0119】
ステップS51の判断がYesの場合、制御基板5は、ステップS53において、メモリカードから暗号化された鍵を読み出すと共に、TPMが保持しているKey_Zによって、暗号化された鍵を復号する。
【0120】
続くステップS54において、制御基板5は、復号した鍵が、TPMが保持している固有の鍵と同じか否かを判断する。制御基板5が交換されかつ、交換後の制御基板5に、交換前の制御基板5に装着されていた記憶媒体7が装着された場合、ステップS54の判断はNoである。
【0121】
ステップS54の判断がNoの場合、制御基板5は、ステップS55において、TPMが保持している固有の鍵を、ステップS53において復号した鍵に書き換える。当該制御基板5は、交換前の制御基板5と、実質的に同じになる。ステップS55は、交換後の制御基板5を、交換前の制御基板5へ適合させる処理である。
【0122】
ステップS54の判断がYesの場合、TPMが保持している固有の鍵によって、メモリカードに記憶されている情報を復号できる。ステップS55の適合化処理がスキップされる。装着部59から制御基板5が取り外された後、同じ制御基板5が装着部59に再取り付けされた場合、つまり、制御基板5が交換されず記憶媒体7の変更もない場合、ステップS54の判断はYesである。
【0123】
尚、
図4のフローチャートにおいて、ステップS51の前に、制御基板5に装着されたメモリカードが、正規のメモリカードであるか否かを判断するステップが追加されてもよい。メモリカードが正規のメモリカードである場合、制御基板5はステップS51の判断を行う。メモリカードが正規のメモリカードでない場合、制御基板5は、ステップS51~S55を行わない。
【0124】
図5は、貨幣処理装置1の稼働中における記憶媒体7の読み書き制御に関するフローチャートである。
図5のフローチャートは、貨幣処理装置1の電源がオンの間中、随時行われる。尚、
図5のフローチャートでは、貨幣処理装置1の制御基板5(つまり、第1基板)が、固有のKey_Aと、共通のKey_Zとを保持している。
図5のフローチャートは、可能な範囲でステップの順番を入れ替えたり、一部のステップを省略したり、ステップを追加したり、できる。
【0125】
スタート後のステップS61において、制御基板5は、メモリカード(つまり、記憶媒体7)への書き込み要求があったか否かを判断する。書き込み要求は、貨幣処理を実行するための別のソフトウェアや、エラーを検出したり解除したりするための別のソフトウェアが生成する。尚、装置を停止させるシャットダウン処理において、書き込み要求が生成されてもよい。
【0126】
ステップS61の判断がYesの場合、制御基板5は、ステップS62において、要求対象の情報を、Key_Aによって暗号化し、メモリカードに書き込む。ステップS61の判断がNoの場合、ステップS62はスキップされる。
【0127】
ステップS63において、制御基板5は、メモリカードの読み出し要求があったか否かを判断する。読み出し要求も、貨幣処理を実行するための別のソフトウェアや、エラーを検出したり解除したりするための別のソフトウェアが生成する。尚、装置を稼働させるブート処理において、読み出し要求が生成されてもよい。
【0128】
ステップS63の判断がYesの場合、制御基板5は、ステップS64において、メモリカードから情報を読み出し、Key_Aによって復号して、外部メモリ52に書き込む。このときに、制御基板5は、メモリカードから必要な情報のみ読み出してもよい。尚、ステップS63の判断がNoの場合、ステップS64はスキップされる。
【0129】
そして、装置がシャットダウンされる場合、このフローチャートのプロセスは終了し、装置がシャットダウンされない場合、このフローチャートのプロセスはステップS61へ戻る。
【0130】
ここに開示する貨幣処理装置1の管理方法、及び、貨幣処理装置1によると、制御基板5が、情報の暗号化に用いた鍵(前記のKey_A)を、複数の制御基板5の間で共通の鍵(前記のKey_Z)によって暗号化して、記憶媒体7に記憶させるため、情報の暗号化によって情報のセキュリティを確保しながら、複数の制御基板5は、同じ記憶媒体を共用できる。貨幣処理装置1は、制御基板5が交換された場合に、記憶媒体7が記憶している情報を利用可能である。
【0131】
尚、
図1に示される貨幣処理装置1は、一例であり、ここに開示する貨幣処理装置の管理方法が適用可能な貨幣処理装置は、
図1の貨幣処理装置1に限定されない。貨幣処理装置は、少なくとも送出部、搬送部、受入部、識別部、及び、装着部を備えていればよい。貨幣処理装置の管理方法は、入金処理を行う入金機、出金処理を行う出金機、入金処理及び出金処理を行う入出金機、又は、貨幣の分類を行う整理機に、広く適用できる。
【符号の説明】
【0132】
1、10 貨幣処理装置
31 開口部(送出部、受入部)
310 送出部
32、320 識別部
33、34 収納部(送出部、受入部)
330 受入部
4、40 搬送部
45、450 搬送路
5 制御基板
5A、501 第1基板
5B、502 第2基板
53 セキュアエレメント
59、590 装着部
7、70 記憶媒体