IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キリンホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039943
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ノンアルコールビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20240315BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20240315BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20240315BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/60
A23L2/54
A23L2/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144708
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】村上 園実
(72)【発明者】
【氏名】小川 温子
(72)【発明者】
【氏名】金谷 知華
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC14
4B117LG11
4B117LG29
4B117LK04
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK24
4B117LP06
4B117LP18
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料であって、飲用したときの口の中での味わいの広がり、味わいの複雑さ、及び、ビールらしさが向上したノンアルコールビールテイスト飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料であって、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たす、前記ノンアルコールビールテイスト飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料であって、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たす、前記ノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項2】
前記条件(a)及び前記条件(b)の両方を満たす、請求項1に記載のノンアルコールビールテイスト飲料。
【請求項3】
穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たすように調製することを特徴とする、前記飲料の製造方法。
【請求項4】
前記条件(a)及び前記条件(b)の両方を満たすように調製することを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たすように調製することを特徴とする、前記飲料を飲用したときの、口の中での味わいの広がり、味わいの複雑さ及びビールらしさを向上させる方法。
【請求項6】
前記条件(a)及び前記条件(b)の両方を満たすように調製することを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンアルコールビールテイスト飲料およびその製造方法に関する。より詳細には、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりの中でアルコール摂取量を自己管理する消費者が増加している。このような中で、アルコール(エタノール)濃度が1v/v%未満のノンアルコールビールテイスト飲料への需要が一段と高まっている。
【0003】
このようなノンアルコールビールテイスト飲料には、発酵やアルコールに由来する味の厚み、複雑さが十分には感じられないことが課題となっている。特に、麦芽をあまり含まず、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の場合、麦のうまみに由来する味の厚み、複雑さが感じられないため、ビールに近い味わいを実現することがより一層難しい。
【0004】
このような問題を解決するための方法として、例えば特許文献1には、非発酵アルコールテイスト飲料にγ-アミノ酪酸(GABA)を含有させることによって、コク、味のまろやかさ、味の厚みを増強し、かつ、酸味刺激を抑制する方法が、特許文献2には、非発酵ビールテイスト飲料中のメチオナール濃度及びアセトアルデヒド濃度をそれぞれ特定範囲に調整することによって、ビールらしい香味を増強し、嫌な甘さを抑制し、かつ、味の厚みを増強する方法が報告されている。しかしながら、上記の問題には、依然として改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-184697号公報
【特許文献2】特開2021-036808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料であって、飲用したときの口の中での味わいの広がり、味わいの複雑さ、及び、ビールらしさが向上したノンアルコールビールテイスト飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、様々な方法を鋭意検討する中で、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料において、マルトース、マルトトリオースのいずれか一方又は両方を特定濃度で含有させることによって、上記飲料を飲用したときの口の中での味わいの広がり、味わいの複雑さ、及び、ビールらしさを向上させることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の発明等が提供される。
(1)穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料であって、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たす、前記ノンアルコールビールテイスト飲料;
(2)前記条件(a)及び前記条件(b)の両方を満たす、上記(1)に記載のノンアルコールビールテイスト飲料;
(3)穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たすように調製することを特徴とする、前記飲料の製造方法;
(4)前記条件(a)及び前記条件(b)の両方を満たすように調製することを特徴とする、上記(3)に記載の製造方法;
(5)穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たすように調製することを特徴とする、前記飲料を飲用したときの、口の中での味わいの広がり、味わいの複雑さ及びビールらしさを向上させる方法;
(6)前記条件(a)及び前記条件(b)の両方を満たすように調製することを特徴とする、上記(5)に記載の製造方法;
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料であって、飲用したときの口の中での味わいの広がり、味わいの複雑さ、及び、ビールらしさが向上したノンアルコールビールテイスト飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、
[1]穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料であって、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たす、前記ノンアルコールビールテイスト飲料(以下、「本発明の飲料」とも表示する。);
[2]穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たすように調製することを特徴とする、前記飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3]穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たすように調製することを特徴とする、前記飲料を飲用したときの、口の中での味わいの広がり、味わいの複雑さ及びビールらしさを向上させる方法(以下、「本発明の向上方法」とも表示する。);
等を含む。
【0011】
本発明における「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ飲料をいう。「ビール様の風味」とは、通常の方法でビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを、その飲料が呈することを意味する。
【0012】
本発明において「ノンアルコールビールテイスト飲料」とは、アルコール(すなわち、エタノール)濃度が1v/v%未満のビールテイスト飲料を意味し、好ましくはアルコールゼロのビールテイスト飲料(例えばアルコール濃度が0.00v/v%であるビールテイスト飲料)とされる。また、このようなビールテイスト飲料は、好ましくは非発酵ビールテイスト飲料、つまり、発酵工程を経ずに製造されたビールテイスト飲料とされる。ここで「発酵工程」とは、酵母等の微生物が有機物を分解することによってアルコール等の代謝産物を生成する工程をいう。
【0013】
本発明の飲料のアルコール(すなわち、エタノール)濃度は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。アルコール度が1.0%未満の低濃度の場合は、市販のアルコール測定装置や、ガスクロマトグラフィーを用いても良い。
【0014】
本発明における「ノンアルコールビールテイスト飲料」は、穀物加工物を含む。穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料は、原材料に穀物加工物を使用することで製造することができる。本明細書において「穀物加工物」とは、穀物の加工物であって、麦芽ではないものを意味し、例えば、大豆加工物、エンドウ加工物、トウモロコシ加工物が挙げられ、大豆加工物、エンドウ加工物が好ましく挙げられる。
【0015】
「穀物加工物」における「穀物」とは、麦芽以外の穀物を意味し、穀物としては、例えば、豆(大豆、エンドウ等)、トウモロコシ(コーングリッツ等)、麦芽に該当しない麦(大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等)、米(白米、玄米等)、こうりゃん、ばれいしょ、そば、粟、ひえ、さとうきび、芋、黒糖、ぶどう、りんごなどが挙げられ、大豆、エンドウ、トウモロコシが好ましく挙げられ、大豆、エンドウがより好ましく挙げられ、大豆がさらに好ましく挙げられる。これらの穀物は2種以上を併用してもよい。
穀物の「加工物」としては、穀物の粉砕物、穀物の抽出物、タンパク質分解酵素による穀物の処理物などが挙げられ、タンパク質分解酵素による穀物の処理物が好ましく挙げられる。また、これらの加工物は、2種の加工物を併用してもよい。
【0016】
穀物加工物の好適な態様としては、穀物タンパク又は穀物ペプチドが挙げられ、穀物ペプチドが好ましく挙げられる。上記の穀物タンパクとしては、大豆タンパク、エンドウタンパク、トウモロコシタンパクが挙げられ、大豆タンパク、エンドウタンパクが好ましく挙げられ、大豆タンパクがより好ましく挙げられる。上記穀物ペプチドとしては、大豆ペプチド、エンドウペプチド、トウモロコシペプチドが挙げられ、大豆ペプチド、エンドウペプチドが好ましく挙げられ、大豆ペプチドがより好ましく挙げられる。
本明細書において、「タンパク」とは、アミノ酸が50個以上結合したものを意味し、「ペプチド」とは、アミノ酸が2~49個結合したものを意味する。
【0017】
本発明における「ノンアルコールビールテイスト飲料」は、麦芽を含んでいてもよいが、麦のうまみに由来する味の厚み、複雑さが感じられないため、ビールに近い味わいを実現することがより一層難しく、本発明の意義をより多く享受できることから、麦芽の含有濃度が低いノンアルコールビールテイスト飲料であることが好ましく、麦芽を含まないノンアルコールビールテイスト飲料であることがより好ましい。
麦芽の含有濃度が低いノンアルコールビールテイスト飲料や、麦芽を含まないノンアルコールビールテイスト飲料は、原材料に用いる麦芽を少量とする、又は原材料に麦芽を使用しないこと等により製造することができる。
本明細書において、「麦芽」とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種子を発芽させて乾燥させ、除根したもの、又はその加工品(エキス等)を意味する。
【0018】
(マルトース及び/又はマルトトリオースの含有濃度)
本発明の飲料は、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たす飲料である。
【0019】
本発明における条件(a)としては、飲料中のマルトースの含有濃度が1g/L以上である限り特に制限されないが、「口の中での味わいの広がり」、「味わいの複雑さ」、及び、「ビールらしさ」をより大きく向上させる観点から、好ましくは3g/L以上、より好ましくは7g/L以上が挙げられる。
飲料中のマルトースの含有濃度の上限としては特に制限されないが、例えば15g/Lや、20g/L以下が挙げられる。
【0020】
本発明におけるマルトースは、市販品を用いることができる。マルトースとしては、マルトースのみを用いてもよいし、マルトース含有組成物を用いてもよい。
【0021】
本発明において、飲料中のマルトース濃度は、例えば、マルトース又はマルトース含有組成物を飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。
【0022】
本発明の飲料中のマルトース濃度は、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用いた方法など、公知の方法によって測定することができる。
【0023】
本発明における条件(b)としては、飲料中のマルトトリオースの含有濃度が1g/L以上である限り特に制限されないが、「口の中での味わいの広がり」、「味わいの複雑さ」、及び、「ビールらしさ」をより大きく向上させる観点から、好ましくは2g/L以上、より好ましくは5g/L以上が挙げられる。
飲料中のマルトトリオースの含有濃度の上限としては特に制限されないが、例えば10g/Lや、15g/L以下が挙げられる。
【0024】
本発明におけるマルトトリオースは、市販品を用いることができる。マルトトリオースとしては、マルトトリオースのみを用いてもよいし、マルトトリオース含有組成物を用いてもよい。
【0025】
本発明において、飲料中のマルトトリオース濃度は、例えば、マルトトリオース又はマルトトリオース含有組成物を飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。
【0026】
本発明の飲料中のマルトトリオース濃度は、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用いた方法など、公知の方法によって測定することができる。
【0027】
前述したように、本発明の飲料は、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たす飲料であるが、「口の中での味わいの広がり」、「味わいの複雑さ」、及び、「ビールらしさ」をより大きく向上させる観点から、
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;かつ、
(c)マルトースの含有濃度とマルトトリオースの含有濃度の合計が好ましくは5g/L以上;
の両方を満たす飲料が好ましく挙げられ、
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;かつ、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;かつ、
(c)マルトースの含有濃度とマルトトリオースの含有濃度の合計が好ましくは5g/L以上;
の3条件を満たす飲料がより好ましく挙げられ、
(a)マルトースの含有濃度が3g/L以上;かつ、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;かつ、
(c)マルトースの含有濃度とマルトトリオースの含有濃度の合計が好ましくは5g/L以上;
の3条件を満たす飲料がより好ましく挙げられる。
【0028】
上記(c)としては、マルトースの含有濃度とマルトトリオースの含有濃度の合計が好ましくは5g/L以上である限り特に制限されないが、マルトースの含有濃度とマルトトリオースの含有濃度の合計が好ましくは6g/L以上、より好ましくは8g/L以上又は9g/L以上又は10g/L以上、さらに好ましくは11g/L以上又は12g/L以上が挙げられる。
【0029】
また、本発明の飲料の好ましい一態様として、
(a)マルトースの含有濃度が7g/L以上;かつ、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;かつ、
(c)マルトースの含有濃度とマルトトリオースの含有濃度の合計が好ましくは8g/L以上;
の3条件を満たす飲料が好ましく挙げられる。
【0030】
(本発明の飲料)
本発明の飲料としては、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料であって、以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たす、前記ノンアルコールビールテイスト飲料である限り特に制限されない。
【0031】
本発明の飲料は、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料であって、
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たすこと以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の「穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料」と特に相違する点はない。
【0032】
本発明の飲料は、マルトース及び/又はマルトトリオース、並びに、穀物加工物を必須成分として含有している。本発明の飲料には、本発明の効果を妨げない範囲で、任意成分を含有していてもよい。かかる任意成分としては、マルトース及びマルトトリオース以外の甘味料、麦芽、着色料、苦味料又は苦味付与剤、香料、酸味料、調味料、水溶性食物繊維、酸化防止剤等などが挙げられる。
【0033】
本発明の飲料は、当技術分野においてよく知られている、「穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料」の一般的な製造方法において、いずれかの段階でマルトース及び/又はマルトトリオースの含有濃度を調整することによって製造することができる。上記の一般的な方法としては、例えば、甘味料、麦芽、着色料、苦味料又は苦味付与剤、香料、酸味料、調味料、水溶性食物繊維、酸化防止剤等の原料を混合し、得られた調合液に炭酸ガスを導入することにより製造する方法が挙げられる。
【0034】
上記の甘味料としては、穀物(好ましくは麦芽以外の穀物)に由来するデンプンを酸又は酵素等で分解した市販の糖化液、市販の水飴等の糖類、三糖類以上の糖、糖アルコール、ステビア等の天然甘味料、人工甘味料等が挙げられる。
これらの糖類の形態は、溶液等の液体であってもよく、粉末等の固体であってもよい。
また、デンプンの原料穀物の種類、デンプンの精製方法、および酵素や酸による加水分解等の処理条件についても特に制限はない。例えば、酵素や酸による加水分解の条件を適宜設定することにより、マルトースやマルトトリオースの比率を高めた糖類を用いてもよい。その他、マルトース、マルトトリオース、スクロース、フルクトース、グルコース、トレハロースおよびこれらの溶液(糖液)等を用いることもできる。
また、人工甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース、ネオテーム等が挙げられる。
これらの甘味料は、単独、または複数を組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記の着色料としては、カラメル色素などが挙げられる。
【0036】
上記の苦味料又は苦味付与剤としては、例えば、ホップエキス(好ましくは異性化ホップエキス)、マンネンロウ、レイシ、姫茴香、杜松実、セージ、迷迭香、マンネンタケ、月桂樹、迷迭香、マンネンタケ、クワシン、柑橘抽出物、ニガキ抽出物、コーヒー抽出物、茶抽出物、ゴーヤ抽出物、ハス胚芽抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、レイシ抽出物、ローレル抽出物、セージ抽出物、キャラウェイ抽出物、ナリンギン、ニガヨモギ、及び、ニガヨモギ抽出物等が挙げられる。
これらの苦味料又は苦味付与剤は、単独、または複数を組み合わせて用いることができる。
【0037】
上記の香料としては、特に限定されず、一般的なビール香料を用いることができ、例えば、エステルや高級アルコール等が挙げられ、更に具体的には、酢酸エチル、酢酸イソアミル、n-プロパノール、イソブタノール、およびアセトアルデヒド等が挙げられる。
これらの香料は、単独、または複数を組み合わせて用いることができる。
【0038】
上記の酸味料としては、酸味を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、酒石酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、グルコノデルタラクトンまたはそれらの塩が挙げられる。
これらの酸味料の中でも、酒石酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸またはそれらの塩が好ましく、酒石酸、リン酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酢酸またはそれらの塩がより好ましい。
これらの酸味料は、単独、または複数を組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記の調味料としては、アミノ酸などが挙げられる。
【0040】
上記の水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム分解物、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナン等が挙げられ、安定性や安全性等の汎用性の観点から、難消化性デキストリン又はポリデキストロースが好ましい。
これらの水溶性食物繊維は、単独、または複数を組み合わせて用いることができる。
【0041】
上記の酸化防止剤としては、通常のビールや発泡酒に酸化防止剤として用いられるものが使用でき、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、およびカテキン等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、単独、または複数を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明の飲料のpHは、好ましくは3.5以上4.5以下とされ、より好ましくはpH3.5以上pH4.2以下、さらに好ましくはpH3.7以上pH4.2以下、最も好ましくはpH3.8以上pH4.2以下とされる。本発明の飲料のpH調整はpH調整剤を用いて行うことができる。
【0043】
本発明の飲料は、容器詰飲料でなくてもよいが、容器詰飲料であることが好ましい。かかる容器としては、ペットボトル、ポリプロピレンボトル、ポリ塩化ビニルボトル等の樹脂ボトル容器;ビン容器;缶容器;等の容器が挙げられる。
【0044】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理がなされていなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理の方法や条件としては、容器詰飲料などの飲料に使用される通常の方法や条件を用いることができる。
【0045】
(本発明の製造方法)
本発明の飲料は、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、さらに以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たすように調製すること以外は、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の従来公知の製造方法にしたがって製造することができる。
【0046】
本発明の製造方法としては、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、更に上記(a)及び(b)のいずれか一方又は両方を満たすように調製することを特徴とする、前記飲料の製造方法である限り特に制限されない。
【0047】
穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、更に上記(a)及び(b)のいずれか一方又は両方を満たすように調製する方法として、より具体的には、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造に際して、前記飲料の製造原料(例えば、「水」、「穀物加工物を含む水」、「水に、任意成分の一部又は全部をさらに含有させた水」、あるいは、「穀物加工物を含む水に、任意成分の一部又は全部をさらに含有させた水」)(以下、併せて「水等」とも表示する)に、上記(a)及び(b)のいずれか一方又は両方を満たすように、マルトース及び/又はマルトトリオースを特定濃度で含有させる方法が挙げられる。あるいは、マルトース及び/又はマルトトリオースを、任意成分の一部又は全部と同時に水等に含有させる方法等も挙げられる。
【0048】
本発明の製造方法においては、マルトース及び/又はマルトトリオースを必須成分として飲料に含有させる。本発明の製造方法としては、任意成分として、マルトース及びマルトトリオース以外の甘味料、麦芽、着色料、苦味料又は苦味付与剤、香料、酸味料、調味料、水溶性食物繊維、酸化防止剤等を飲料に含有させてもよい。
【0049】
本発明の製造方法においては、用いる製造原料を含有する、本発明の飲料を製造し得る限り、製造原料を含有させる順序等は特に制限されない。製造原料が混合されている液を調製した後、容器に充填して密封し、本発明の容器詰飲料を得ることができる。また、本発明の製造方法において、いずれかの段階で炭酸ガスを導入するか、あるいは、炭酸水を用いること等により、本発明の飲料に炭酸を付与することができる。
【0050】
本発明の製造方法において、加熱殺菌処理は行わなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理する方法としては、特に制限されず、例えば、高温短時間殺菌法(HTST法)、パストライザー殺菌法、超高温加熱処理法(UHT法)、レトルト殺菌法等を挙げることができる。
【0051】
(本発明の向上方法)
本発明の向上方法としては、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、更に以下の条件:
(a)マルトースの含有濃度が1g/L以上;及び、
(b)マルトトリオースの含有濃度が1g/L以上;
のいずれか一方又は両方を満たすように調製することを特徴とする、前記飲料を飲用したときの、口の中での味わいの広がり、味わいの複雑さ及びビールらしさを向上させる方法である限り特に制限されない。
【0052】
穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の製造において、更に上記(a)及び(b)のいずれか一方又は両方を満たすように調製する方法は、上記の(本発明の製造方法)に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0053】
(本発明における官能の向上)
本発明の飲料は、それを飲用したときの口の中での味わいの広がり、味わいの複雑さ、及び、ビールらしさが向上したノンアルコールビールテイスト飲料である。
本明細書における「口の中での味わいの広がり」とは、香りと味がしっかり感じられ、これらの香味が持続することを意味する。
本明細書における「味わいの複雑さ」とは、コクや味の厚みを意味する。
本明細書における「ビールらしさ」とは、ほどよい苦味があり、飲みごたえがあるビールの味を想起させる香味を意味する。
なお、本明細書において、「口の中での味わいの広がり」、「味わいの複雑さ」、及び、「ビールらしさ」をまとめて、「本発明における官能」あるいは単に「官能」とも表示する。
【0054】
本発明において、「本発明における官能が向上した」飲料とは、マルトースの含有濃度が1g/L未満、かつ、マルトトリオースの含有濃度が1g/L未満であること以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、本発明における官能が向上した飲料を意味する。
【0055】
ある飲料における、本発明における官能が、コントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、向上しているかどうか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。本発明における官能を評価するパネルの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば2名以上、好ましくは4名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば20名以下、10名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の各飲料の官能の評価は、例えば、その飲料の官能ついてのパネル全員の評価の平均を採用してもよいし、パネルのうち最も低い評価を採用してもよい。各評価基準に整数の評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその飲料の官能の評価として採用してもよいし、パネルのうち最も低い評価点を採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第1位又は第2位(好ましくは小数第2位)を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、本発明における官能の程度が既知の複数種の標準飲料の官能を各パネルで評価した後、その評価点を比較し、各パネルの評価基準に大きな解離が生じないように確認することが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、各パネルによる官能の評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0056】
ある飲料における、本発明における官能が、コントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、向上しているかどうか)、例えば、後述の実施例の試験1に記載の評価基準(1点から5点の9段階評価)等を用いた方法と同様の方法、好ましくは、後述の実施例の試験1に記載の評価基準(1点から5点の9段階評価)等を用いた方法と同じ方法を好適に用いることができる。より具体的には、コントロール飲料における官能を基準として、後述の実施例の試験1に記載の評価基準(1点から5点の9段階評価)で官能が向上している飲料(例えば評価平均点が1.1点以上である飲料)は、本発明における官能が向上した飲料に含まれる。
なお、本発明における飲料の好ましい態様として、後述の実施例の試験1に記載の評価基準(1点から5点の9段階評価)で、「口の中での味わいの広がり」、「味わいの複雑さ」、及び、「ビールらしさ」のいずれも、2.0点以上、好ましくは2.3点以上、より好ましくは2.5点以上である飲料が好ましく挙げられる。
【0057】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例0058】
試験1.[マルトースやマルトトリオースによる効果]
マルトースやマルトトリオースが、穀物加工物を含むノンアルコールビールテイスト飲料の香味にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0059】
(1.サンプル飲料の調製)
大豆タンパクを市販のプロテアーゼ(スミチームACPX:新日本化学工業社製)で分解した液体に、食物繊維、液糖を配合した。ろ過による清澄後、炭酸ガス濃度が0.2MPaとなるように炭酸ガスを付与し、後述の表1~表5に示すような含有濃度となるように、マルトース及び/又はマルトトリオースを添加して混合して、試験例1~24のサンプル飲料を調製した。
なお、マルトース、マルトトリオースのいずれも添加しなかった飲料を、比較例1のサンプル飲料とした。
【0060】
(2.官能評価試験)
得られた試験例1~24及び比較例1のサンプル飲料を飲用したときの、「口の中での味わいの広がり」の程度、「味わいの複雑さ」の程度、及び、「ビールらしさ」の程度について、訓練した専門パネル6名によって、それぞれ、比較例1のサンプル飲料における官能の程度を基準(1点)として、9段階(1点、1.5点、2点、2.5点、3点、3.5点、4点、4.5点、5点)で評価した。これらの点は、点数が高いほど、その官能の程度が高いことを意味する。
なお、各試験例サンプルにおける各官能の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第1位を四捨五入した値(以下、「評価平均点」とも表示する)を採用した。各官能の評価について、評価平均点が1.1点以上の場合を、本発明の効果があると判定し、評価平均点が2.0点以上の場合を好ましい効果があると判定した。
【0061】
表1~表5の試験例1~24及び比較例1の各サンプル飲料について、「口の中での味わいの広がり」、「味わいの複雑さ」、及び、「ビールらしさ」の官能評価を行った結果を表1~表5に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
また、表1~表5の試験例1~24及び比較例1の各サンプル飲料における官能評価結果のうち、「口の中での味わいの広がり」の官能評価結果をまとめた結果を表6に、「味わいの複雑さ」の官能評価結果をまとめた結果を表7に、「ビールらしさ」の官能評価結果をまとめた結果を表8に、それぞれ示す。
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
表6~表8の結果から、マルトース又はマルトトリオースの含有濃度が1g/L以上である場合は、「口の中での味わいの広がり」、「味わいの複雑さ」、及び、「ビールらしさ」を向上させることができることが示された。
また、「口の中での味わいの広がり」、「味わいの複雑さ」、及び、「ビールらしさ」をより大きく向上させる観点から、好ましくは、マルトースの含有濃度が1g/L以上であって、かつ、マルトースとマルトトリオースの含有濃度の和が5g/L以上であり、より好ましくは、マルトースの含有濃度が3g/L以上であって、かつ、マルトースとマルトトリオースの含有濃度の和が8g/L以上であることも示された。