(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039946
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】減衰性ゴム組成物および粘弾性ダンパ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20240315BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240315BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240315BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240315BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08K3/04
F16F15/08 D
F16F1/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144711
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 恵里佳
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
4J002
【Fターム(参考)】
3J048BD08
3J048EA38
3J059AA08
3J059AB02
3J059AD06
3J059BA41
3J059BC07
3J059BC19
3J059DA26
4J002AC011
4J002AC032
4J002AC061
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4J002BA013
4J002DA036
4J002EH097
4J002EH147
4J002EH157
4J002EW047
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD027
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD343
(57)【要約】
【課題】加工性が良好であり、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ該低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい減衰性部材を形成できる減衰性ゴム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の減衰性ゴム組成物は、基材ゴム、カーボンブラック、加硫剤および加硫促進剤を含有し、前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、15質量%以上、40質量%以下であり、前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ゴム、カーボンブラック、加硫剤および加硫促進剤を含有する減衰性ゴム組成物であって、
前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、
前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、15質量%以上、40質量%以下であり、
前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下であることを特徴とする減衰性ゴム組成物。
【請求項2】
さらに、可塑剤を含有する請求項1に記載の減衰性ゴム組成物。
【請求項3】
前記可塑剤の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上、35質量部以下である請求項2に記載の減衰性ゴム組成物。
【請求項4】
さらに、粘着付与剤を含有する請求項1に記載の減衰性ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の減衰性ゴム組成物を硬化してなる減衰性ゴム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の減衰性ゴム組成物を硬化してなる減衰性部材を備える粘弾性ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰性ゴム組成物およびこれを用いた減衰性部材を備える粘弾性ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅、ビル等の建築物、橋梁等において、地震、交通振動、風揺れ等で生じる振動エネルギーを吸収する手段が設置されている。その中、風揺れのような低歪域の揺れを抑える手段として、チューンドマスダンパー(TMD)が知られている。しかし、TMDは大型でかつ導入時およびメンテナンスの費用が高価である。一方、減衰性部材(粘弾性体)を備える粘弾性ダンパは、比較的安価で、大地震のような強烈な振動に対して優れた振動減衰性能を有しながら、風揺れのような微小振動に対しても振動抑制効果を発揮できることから、免震・制震・制振・防振などの付与手段として広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを含有するゴムに対して、カーボンブラック、シリカ、およびロジン変性フェノールおよび/またはロジンエステルを含有する高減衰ゴム組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、少なくとも、ゴム成分と、ロジン酸金属塩とを含む高減衰ゴム組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、主鎖にC-C結合を有する基材ゴム100重量部に対してシリカを30~200重量部添加し、そのシリカに対して特定のシラン化合物を5~50重量%配合し混練したシリカ配合高減衰ゴム組成物が開示されている。
【0006】
特許文献4には、(A)ブチル系ゴム、(B)スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)およびスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)の少なくとも一方、(C)非極性の脂環族飽和炭化水素樹脂、および(D)硫黄を含有する高減衰ゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-003014号公報
【特許文献2】特開2007-063425号公報
【特許文献3】特開平07-041603号公報
【特許文献4】特開2011-190397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
風揺れのような低歪域(例えば、2%程度)の揺れを抑えるための減衰性部材は、低歪域において優れた減衰性が求められる他に、環境条件を考慮して常温付近(例えば、10℃~30℃)における低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さいことも求められている。
【0009】
なお、良好な加工性は、生産性を向上し、生産に要するエネルギー消耗を軽減し、生産コストの削減につながるため、常に求められている。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、加工性が良好であり、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ該低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい減衰性部材を形成できる減衰性ゴム組成物を提供することを目的とする。本発明は、前記減衰性ゴム組成物を硬化してなる減衰性部材を備える粘弾性ダンパを提供することをさらなる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決することができた本発明の減衰性ゴム組成物は、基材ゴム、カーボンブラック、加硫剤および加硫促進剤を含有し、前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、15質量%以上、40質量%以下であり、前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工性が良好であり、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい減衰性部材を形成できる減衰性ゴム組成物が得られる。本発明によれば、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい粘弾性ダンパが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例、比較例のゴム組成物を用いた減衰性部材の減衰性能等を評価するために作製する、前記減衰性部材のモデルとしての試験体を分解して示す分解斜視図。
【
図2】前記試験体を変位させて変位量と荷重との関係を求めるための試験機の概略を説明する図。
【
図3】前記試験機を用いて試験体を変位させて求められる、変位量と荷重との関係を示すヒステリシスループの一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<減衰性ゴム組成物>
本発明の減衰性ゴム組成物は、基材ゴム、カーボンブラック、加硫剤および加硫促進剤を含有し、前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、15質量%以上、40質量%以下であり、前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の減衰性ゴム組成物は、加工性が良好であり、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい減衰性部材を形成できるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、下記のように推測する。即ち、ポリイソプレン系ゴム、ポリブタジエン系ゴム、カーボンブラックが相互作用することによって、得られる減衰性部材は低歪域においてヒステリシスロスが発生する。低歪域においてヒステリシスロスが発生する減衰性部材は、低歪域での減衰性能が向上する。特に、ポリブタジエン系ゴムはポリイソプレン系ゴムよりも柔軟性に優れるため、温度(特に低温下)による物性(剛性等)の変動が小さい。よって、特定量のポリブタジエン系ゴムを配合することで、低歪域での減衰性を維持しつつ、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性を小さくすることができる。また、特定量のカーボンブラックを配合することで、ゴム組成物の加工性を良好に保ちながら、減衰性部材の低歪域での減衰性、並び、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性を向上することができる。
【0016】
以下、本発明の減衰性ゴム組成物に含まれうる各成分について説明する。
【0017】
(基材ゴム)
本発明の減衰性ゴム組成物に含まれる基材ゴムは、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有する。
【0018】
前記ポリイソプレン系ゴムとは、イソプレンに由来する構成単位を有するゴム(好ましくは、イソプレンに由来する構成単位を主に有するゴム)であれば特に限定されない。前記ポリイソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)および合成ゴムが挙げられる。天然ゴムは、ゴム含有植物に由来し、純粋なシス-1,4-ポリイソプレンを含むものである。合成ポリイソプレン系ゴムは、イソプレンを含む単量体(好ましくは、イソプレンを主成分とする単量体)を重合することにより合成したものである。なお、前記天然ゴムおよび合成ポリイソプレン系ゴムは、変性された変性ゴムであってもよい。これらのポリイソプレン系ゴムは、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0019】
前記天然ゴムとしては、例えば、SMR(Standard Malaysian Rubber)-CV60等の各種グレードの天然ゴムや、各種の脱蛋白天然ゴム等が挙げられる。
【0020】
前記合成ポリイソプレン系ゴムとしては、例えば、ポリイソプレンゴム(IR)、イソプレンとその他の単量体成分との共重合体ゴムが挙げられる。
【0021】
前記合成ポリイソプレン系ゴムを構成し得る他の単量体成分としては、例えば、ブタジエン、スチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、クロロプレン等が挙げられる。これらの他の単量体成分は、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0022】
前記合成ポリイソプレン系ゴムは、イソプレンに由来する構成単位を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。なお、前記イソプレンに由来する構成単位の上限は、100質量%である。
【0023】
前記合成ポリイソプレン系ゴムのうち、ポリイソプレンゴム(IR)が好ましく、シス-1,4-結合を90質量%以上(好ましくは95質量%以上)含む高シス-1,4-ポリイソプレンゴムがより好ましい。高シス-1,4-ポリイソプレンゴムを用いることで、低歪域での減衰性がより良好となる。
【0024】
前記合成ポリイソプレン系ゴムの具体例としては、例えば、日本ゼオン社製のNipol(登録商標)IRシリーズ(例えば、IR2200)等の市販品が挙げられる。
【0025】
前記ポリイソプレン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃)は、40以上であることが好ましく、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上であり、120以下が好ましく、より好ましくは110以下、さらに好ましくは100以下である。ポリイソプレン系ゴムのムーニー粘度が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0026】
基材ゴム中のポリイソプレン系ゴムの含有率は、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以下であることが好ましく、82質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。ポリイソプレン系ゴムの含有率が60質量%以上であれば、低歪域での減衰性がより良好となり、85質量%以下であれば、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性がより向上する。
【0027】
前記ポリブタジエン系ゴムとは、ブタジエンに由来する構成単位を有するゴム(好ましくは、ブタジエンに由来する構成単位を主に有するゴム)であれば特に限定されない。前記ポリブタジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンを含む単量体(好ましくは、ブタジエンを主成分とする単量体)を重合することにより合成したものが挙げられる。なお、前記ポリブタジエン系ゴムは、変性された変性ゴムであってもよい。前記ポリブタジエン系ゴムは、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0028】
前記ポリブタジエン系ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエンとその他の単量体成分との共重合体ゴムが挙げられる。
【0029】
前記ポリブタジエン系ゴムを構成し得る他の単量体成分としては、例えば、イソプレン、スチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、クロロプレン等が挙げられる。これらの他の単量体成分は、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0030】
前記ポリブタジエン系ゴムは、ブタジエンに由来する構成単位を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。なお、前記ブタジエンに由来する構成単位の上限は、100質量%である。
【0031】
前記ポリブタジエン系ゴムのうち、ポリブタジエンゴム(BR)が好ましく、シス-1,4-結合を90質量%以上(好ましくは95質量%以上)含む高シス-1,4-ポリブタジエンゴムがより好ましい。高シス-1,4-ポリブタジエンゴムは、温度(特に低温下)による物性の変動がより小さいものである。高シス-1,4-ポリブタジエンゴムを用いることで、減衰性部材の低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性を一層小さくすることができる。
【0032】
前記ポリブタジエン系ゴムの具体例としては、例えば、宇部興産社製のUBEPOL(登録商標)BRシリーズ(例えば、BR130B、BR360B)、JSR社製のHPシリーズ(例えば、HP755B)等の市販品が挙げられる。
【0033】
前記ポリブタジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃)は、15以上であることが好ましく、より好ましくは20以上、さらに好ましくは25以上であり、80以下が好ましく、より好ましくは70以下、さらに好ましくは55以下である。ポリブタジエン系ゴムのムーニー粘度が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0034】
基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率は、15質量%以上であることが好ましく、18質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。ポリブタジエン系ゴムの含有率が15質量%以上であれば、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が向上し、40質量%以下であれば、低歪域での減衰性が向上する。
【0035】
前記基材ゴムは、上記したポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムに加えて、その他のゴム成分を含有してもよい。前記他のゴム成分としては、例えば、ブチルゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム等、及びそれらの変性ゴムが挙げられる。これらの他のゴム成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
基材ゴム中のポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムの合計含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、前記合計含有率の上限は、100質量%である。ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムの合計含有率が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0037】
ポリイソプレン系ゴムとポリブタジエン系ゴムとの質量比(ポリイソプレン系ゴム/ポリブタジエン系ゴム)は、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、5.5以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.5以下であることがさらに好ましい。質量比(ポリイソプレン系ゴム/ポリブタジエン系ゴム)が前記範囲内であれば、低歪域での減衰性、並びに、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性がより向上する。
【0038】
なお、本発明の減衰性ゴム組成物に含まれる各ゴム成分(ポリイソプレン系ゴム、ポリブタジエン系ゴム、その他のゴム成分)は、伸展油を加えた油展タイプのものおよび伸展油を加えない非油展タイプのもののいずれでもよい。油展タイプのものを使用する場合、前記ゴム含有率および質量比は、伸展油を除くゴム成分に基づいて計算される値である。
【0039】
本発明の減衰性ゴム組成物に含まれる各ゴム成分は、25℃で固形状を呈することが好ましい。即ち、本発明の基材ゴムには、通常軟化剤として使用される25℃で液状を呈する液状ゴムは含まれないことが好ましい。
【0040】
(カーボンブラック)
本発明の減衰性ゴム組成物に含まれるカーボンブラックは、石油系または石炭系の油や天然ガスなどの炭化水素を原料として熱分解や不完全燃焼させることで製造されるものが挙げられる。前記カーボンブラックとしては、製造方法によって分類されるファーネスカーボンブラック、サーマルカーボンブラック、チャンネルカーボンブラック、アセチレンブラックのいずれを使用してもよい。
【0041】
前記カーボンブラックとしては、SAF(Super Abrasion Furnace Black)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace Black)、IISAF(Intermediate ISAF)、HAF(High Abrasion Furnace Black)、MAF(Medium Abrasion Furnace Black)、FEF(Fast Extruding Furnace Black)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace Black)、GPF(General Purpose Furnace Black)、FF(Fine Furnace Black)、CF(Conductive Furnace Black)などのファーネスカーボンブラック;FT(Fine Thermal black)、MT(Medium Thermal Black)などのサーマルカーボンブラック;EPC(Easy Processing Channel Black)、MPC(Medium Processing Channel Black)などのチャンネルカーボンブラック;アセチレンブラックが挙げられる。前記カーボンブラックは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記カーボンブラックの具体例としては、例えば、東海カーボン社製のシーストシリーズ(例えば、シースト3)などの市販品が挙げられる。
【0043】
前記カーボンブラックの算術平均粒子径(1次粒子径)は、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、25nm以上であることがさらに好ましく、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックの算術平均粒子径が前記範囲内であれば、加工性および低歪域での減衰性能がより良好となる。なお、前記算術平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡写真によりカーボンブラック各粒子の直径を測定し、それらの算術平均値を算出することで求めることができる。
【0044】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、30m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、70m2/g以上であることがさらに好ましく、150m2/g以下であることが好ましく、130m2/g以下であることがより好ましく、110m2/g以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が前記範囲内であれば、加工性および低歪域での減衰性能がより良好となる。なお、前記窒素吸着比表面積は、例えば、吸着気体として窒素ガスを用いる気相吸着法で測定することができる。
【0045】
前記カーボンブラックのヨウ素吸着量は、30mg/g以上であることが好ましく、50mg/g以上であることがより好ましく、70mg/g以上であることがさらに好ましく、150mg/g以下であることが好ましく、130mg/g以下であることがより好ましく、110mg/g以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックのヨウ素吸着量が前記範囲内であれば、加工性および低歪域での減衰性能がより良好となる。なお、前記ヨウ素吸着量は、例えば、JIS K6217-1に準拠して測定することができる。
【0046】
前記カーボンブラックのDBP(フタル酸ジブチル)吸収量は、40cm3/100g以上であることが好ましく、60cm3/100g以上であることがより好ましく、80cm3/100g以上であることがさらに好ましく、150cm3/100g以下であることが好ましく、140cm3/100g以下であることがより好ましく、130cm3/100g以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックのDBP吸収量が前記範囲内であれば、加工性および低歪域での減衰性能がより良好となる。なお、前記DBP吸収量は、例えば、JIS K6217-4の吸油量A法に準拠して測定することができる。
【0047】
前記カーボンブラックの含有量は、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上であることが好ましく、110質量部以上であることがより好ましく、120質量部以上であることがさらに好ましく、160質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、140質量部以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が100質量部以上であれば、減衰性部材の低歪域での減衰性能が向上し、160質量部以下であれば、ゴム組成物の加工性が良好となる。
【0048】
(加硫剤)
本発明の減衰性ゴム組成物は、さらに、加硫剤を含有することが好ましい。
【0049】
前記加硫剤としては、硫黄系加硫剤を用いることが好ましい。前記硫黄系加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、オイル処理粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等が挙げられる。これらの硫黄系加硫剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記加硫剤の具体例としては、例えば、鶴見化学工業社製の5%オイル処理粉末硫黄などの市販品が挙げられる。
【0051】
前記加硫剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、0.8質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがさらに好ましく、3.0質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましい。加硫剤の含有量が前記範囲内であれば、加硫性が良好でありながら、ブルームの発生を抑制することができる。なお、前記加硫剤として、例えばオイル処理粉末硫黄や分散性硫黄等を使用する場合、前記含有量は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の含有量とする。
【0052】
(加硫促進剤)
本発明の減衰性ゴム組成物は、さらに、加硫促進剤を含有することが好ましい。
【0053】
前記加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)等のチアゾール系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)等のジチオカルバミン酸塩系促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記加硫促進剤の具体例としては、例えば、川口化学工業社製のアクセル(登録商標)シリーズ(例えば、アクセルCZ、アクセルTET)、大内新興化学社製のノクセラー(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0055】
前記加硫促進剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましく、2.0質量部以下であることが好ましく、1.8質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることがさらに好ましい。加硫促進剤の含有量が前記範囲内であれば、加硫促進性が良好でありながら、ブルームの発生を抑制することができる。
【0056】
(可塑剤)
本発明の減衰性ゴム組成物は、さらに、可塑剤を含有することが好ましい。
【0057】
前記可塑剤としては、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート(TBP)、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)などの正リン酸エステル系可塑剤;ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DOP)等のフタル酸エステル系可塑剤;ジブチルアジペート(DBA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、ビス〔2-(2-ブトキシエトキシ)エチル〕アジペート(BXA-N)、ビス〔2-(2-ブトキシエトキシ)エチル〕アジペート(BXA-R)等のアジピン酸エステル系可塑剤;ジブチルセバケート(DBS)、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート(DOS)等のセバシン酸エステル系可塑剤;メチルアセチルリシノレート(MAR-N)等のリシノール酸エステル系可塑剤が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記可塑剤の具体例としては、例えば、大八化学工業社製の各種ゴム用途の可塑剤が挙げられる。
【0059】
前記可塑剤の粘度(25℃)は、5mPa・s以上であることが好ましく、8mPa・s以上であることがより好ましく、10mPa・s以上であることがさらに好ましく、25mPa・s以下であることが好ましく、22mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることがさらに好ましい。可塑剤の粘度が前記範囲内であれば、ゴム組成物の加工性がより良好となる。なお、前記可塑剤の粘度は、例えば、25℃で、JIS K2283:2000に規定される「動粘度試験方法」により測定することができる。
【0060】
前記可塑剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上であることが好ましく、18質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、35質量部以下であることが好ましく、32質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量が15質量部以上であれば、ゴム組成物の混練がより容易となり、35質量部以下であれば、混練後のゴム組成物の排出がより容易となる。
【0061】
(粘着付与剤)
本発明の減衰性ゴム組成物は、さらに、粘着付与剤を含有することが好ましい。
【0062】
前記粘着付与剤としては、ロジンエステル、水添ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステルなどのロジン系樹脂や、脂肪族系、芳香族系、芳香族変性脂肪族系などの石油系樹脂が挙げられる。これらの粘着付与剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記ロジン系樹脂の具体例としては、例えば、荒川化学工業社製のパインクリスタル(登録商標)シリーズ(例えば、パインクリスタルKR-85)などの市販品が挙げられる。前記石油系樹脂の具体例としては、例えば、丸善石油化学社製のマルカレッツ(登録商標)Mシリーズ(例えば、マルカレッツM-890A)や、東ソー社製のぺトコール(登録商標)シリーズ(例えば、ぺトコールLX)などの市販品が挙げられる。
【0064】
前記粘着付与剤の軟化点(環球法)は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましく、120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤の軟化点が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。なお、前記粘着付与剤の軟化点は、例えば、JIS K-2207(1996年)(環球法)に準拠して測定することができる。
【0065】
前記粘着付与剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、6質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましく、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤の含有量が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0066】
(その他の成分)
本発明の減衰性ゴム組成物は、上記の各成分に加えて、さらに加硫助剤、老化防止剤、前記カーボンブラック以外の充填剤、軟化剤等の、減衰性ゴム組成物に使用されうる種々の添加剤を、本発明の目的を損害しない範囲内で適宜選択して含有してもよい。
【0067】
[加硫助剤]
前記加硫助剤としては、酸化亜鉛等の金属化合物や、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸が挙げられる。これらの加硫助剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記加硫助剤の具体例としては、例えば、三井金属鉱業社製の酸化亜鉛2種、日油社製のつばきなどの市販品が挙げられる。
【0069】
前記加硫助剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが好ましく、9質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。加硫助剤の含有量が前記範囲内であれば、ゴム組成物の加硫性がより良好となる。
【0070】
また、加硫助剤として金属化合物と脂肪酸を併用することも好ましい。この場合、金属化合物と脂肪酸の質量比(金属化合物/脂肪酸)は、0.5以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましく、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。金属化合物と脂肪酸の質量比が前記範囲内であれば、ゴム組成物の加硫性が一層良好となる。
【0071】
[老化防止剤]
前記老化防止剤としては、ベンズイミダゾール系、キノン系、ポリフェノール系、アミン系等の各種老化防止剤が挙げられる。これらの老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ベンズイミダゾール系老化防止剤、キノン系老化防止剤が好ましく、ベンズイミダゾール系老化防止剤とキノン系老化防止剤を併用することがより好ましい。
【0072】
前記ベンズイミダゾール系老化防止剤の具体例としては、例えば、大内新興化学工業社製のノクラック(登録商標)シリーズ(例えば、ノクラックMB)等の市販品が挙げられる。前記キノン系老化防止剤の具体例としては、例えば、丸石化学品社製のアンチゲンFR〔芳香族ケトン-アミン縮合物〕等が挙げられる。
【0073】
前記老化防止剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましく、8質量部以下であることが好ましく、6質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。老化防止剤の含有量が前記範囲内であれば、ゴム組成物の老化防止効果が良好になる。
【0074】
また、前記老化防止剤としてベンズイミダゾール系老化防止剤とキノン系老化防止剤を併用する場合、これらの質量比(ベンズイミダゾール系/キノン系)は、0.2以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましく、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。質量比(ベンズイミダゾール系/キノン系)が前記範囲内であれば、ゴム組成物の老化防止効果がより良好になる。
【0075】
[カーボンブラック以外の充填剤]
前記カーボンブラック以外の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、クレーなどの無機充填剤が挙げられる。これらの充填剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の減衰性ゴム組成物は、例えば、基材ゴム、カーボンブラック、加硫剤、加硫促進剤、および必要に応じて添加する可塑剤、粘着付与剤や、その他の成分を混練することにより調製することができる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、密閉式混練機、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0077】
<減衰性ゴム>
本発明には、本発明の減衰性ゴム組成物を硬化してなる減衰性ゴムが含まれる。本発明の減衰性ゴムは、例えば、混練後の減衰性ゴム組成物を130℃~170℃、20分間~10時間の条件でプレスして、成形と加硫を同時に行うことにより得ることができる。
【0078】
本発明の減衰性ゴムは、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ該低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さいものである。例えば、風揺れのような低歪域の揺れを吸収するための防振材料として好適に用いることができる。
【0079】
本発明の減衰性ゴムは、温度23℃、歪2%の条件で測定した等価減衰定数heq(23℃)が、0.25以上であることが好ましく、0.28以上であることがより好ましく、0.30以上であることがさらに好ましい。等価減衰定数heq(23℃)が0.25以上であれば、減衰性ゴムの減衰性が良好となる。
【0080】
本発明の減衰性ゴムは、温度23℃、歪2%の条件で測定した等価減衰定数heq(23℃)に対する、温度10℃、歪2%の条件で測定した等価減衰定数heq(10℃)の比(heq(10℃)/heq(23℃))が、1.30以下であることが好ましく、1.20以下であることがより好ましく、1.10以下であることがさらに好ましい。前記比(heq(10℃)/heq(23℃))が1.30以下であれば、減衰性ゴムの減衰性の低温依存性が良好となる。なお、前記比(heq(10℃)/heq(23℃))の下限は、特に限定されないが、0.80であることが好ましく、0.90であることがより好ましく、0.95であることがさらに好ましい。
【0081】
本発明の減衰性ゴムは、温度23℃、歪2%の条件で測定した等価減衰定数heq(23℃)に対する、温度30℃、歪2%の条件で測定した等価減衰定数heq(30℃)の比(heq(30℃)/heq(23℃))が、0.80以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、0.95以上であることがさらに好ましい。前記比(heq(30℃)/heq(23℃))が0.80以上であれば、減衰性ゴムの減衰性の高温依存性が良好となる。なお、前記比(heq(30℃)/heq(23℃))の上限は、特に限定されないが、1.30であることが好ましく、1.20であることがより好ましく、1.10であることがさらに好ましい。
【0082】
本発明の減衰性ゴムは、温度23℃、歪2%の条件で測定した等価せん断弾性率Geq(23℃)に対する、温度10℃、歪2%の条件で測定した等価せん断弾性率Geq(10℃)の比(Geq(10℃)/Geq(23℃))が、1.30以下であることが好ましく、1.25以下であることがより好ましく、1.20以下であることがさらに好ましい。前記比(Geq(10℃)/Geq(23℃))が1.30以下であれば、減衰性ゴムのせん断弾性率の低温依存性が良好となる。なお、前記比(Geq(10℃)/Geq(23℃))の下限は、特に限定されないが、0.80であることが好ましく、0.90であることがより好ましく、0.95であることがさらに好ましい。
【0083】
本発明の減衰性ゴムは、温度23℃、歪2%の条件で測定した等価せん断弾性率Geq(23℃)に対する、温度30℃、歪2%の条件で測定した等価せん断弾性率Geq(30℃)の比(Geq(30℃)/Geq(23℃))が、0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましい。前記比(Geq(30℃)/Geq(23℃))が0.80以上であれば、減衰性ゴムのせん断弾性率の高温依存性が良好となる。なお、前記比(Geq(30℃)/Geq(23℃))の上限は、特に限定されないが、1.30であることが好ましく、1.20であることがより好ましく、1.10であることがさらに好ましい。
【0084】
<粘弾性ダンパ>
本発明には、本発明の減衰性ゴムを減衰性部材として備える粘弾性ダンパが含まれる。本発明の粘弾性ダンパは、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ該低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さいものである。例えば、風揺れのような低歪域の揺れを吸収するための粘弾性ダンパ(特に建築物に設置される粘弾性ダンパ)として好適に用いることができる。
【実施例0085】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0086】
[評価方法]
<加工性試験>
密閉式混練機でゴム組成物の各成分を混練し、混練から排出まで問題なくスムーズにできるものを「○」、少し困難であるが可能であるものを「△」、できないものを「×」として、加工性を評価した。「○」または「△」と評価されるものを合格とした。
【0087】
<変位試験>
(試験体の作製)
各ゴム組成物をシート状に押出成形したのち打ち抜いて、
図1に示すように平面形状が矩形の平板1(厚み8mm×縦40mm×横40mm)を形成した。次いで、この平板1の表裏両面にそれぞれ加硫接着剤を介して厚み6mm×縦44mm×横44mmの矩形平板状の鋼板2を重ねて積層体とした。そして、上記の積層体を積層方向に加圧しながら140℃に加熱して、平板1を形成するゴム組成物を架橋させるとともに、平板1を2枚の鋼板2と加硫接着させて、減衰性部材のモデルとしての試験体3を作製した。
【0088】
(23℃、10℃、30℃における変位試験)
上記試験体3を
図2(a)に示すように2個用意し、この2個の試験体3をそれぞれ一方の鋼板2を介して1枚の中央固定治具4に固定するとともに、両試験体3の他方の鋼板2にそれぞれ1枚ずつの左右固定治具5を固定した。次いで、中央固定治具4を、図示しない試験機の上側の固定アーム6にジョイント7を介して固定し、かつ2枚の左右固定治具5を、上記試験機の下側の可動盤8にジョイント9を介して固定した。なお、両試験体3は、それぞれ平板1の互いに平行な2辺を下記の変位方向と平行に揃えた状態で、上記のように固定した。次いで、下記(I)(II)の操作を1サイクルとして、平板1を繰り返し歪み変形、すなわち振動させた際の、平板1の厚み方向と直交方向の変位量(mm)と、荷重(N)との関係を示すヒステリシスループH(
図3参照)を求めた。
(I):可動盤8を、
図2(a)中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向に押し上げるように変位させて、平板1を、
図2(b)に示すように厚み方向と直交方向に歪み変形させた状態とする。
(II):上記の状態から、可動盤8を、今度は
図2(b)中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向と反対方向に引き下げるように変位させて、
図2(a)に示す状態に戻す。
【0089】
測定は、それぞれ、温度23℃、10℃、30℃の環境下、上記(I)(II)の操作を3サイクル実施して3サイクル目の値を求めた。各サイクルにおける最大変位量は、いずれも平板1を挟む2枚の鋼板2の、当該平板1の厚み方向と直交方向のずれ量が平板1の厚みの2%となるように設定した。
【0090】
測定によって求めた
図3のヒステリシスループHから、下記式(1)によって等価せん断弾性率Geq(N/mm
2)を求めた。
【0091】
【0092】
式中、Keq(N/mm)は、ヒステリシスループHの最大変位点と最小変位点とを結ぶ、
図3中に太線の実線で示す直線L
1の傾きであり、T(mm)は平板1の厚みであり、A(mm
2)は平板1の断面積である。
【0093】
また、
図3のヒステリシスループHから、下記式(2)によって等価減衰定数heqを求めた。
【0094】
【0095】
式中、ΔWは、
図3中に斜線を付して示した、ヒステリシスループHの全表面積で表される吸収エネルギー量であり、Wは、同図中に網線を付して示した、直線L
1と、グラフの横軸と、直線L
1とヒステリシスループHとの交点から上記グラフの横軸におろした垂線L
2とで囲まれた三角形の領域の表面積で表される弾性歪みエネルギーである。
【0096】
(減衰性)
温度23℃の環境下で測定した等価減衰定数heq(23℃)を減衰性の指標とした。かかる等価減衰定数heq(23℃)が大きいほど、減衰性に優れることを示す。等価減衰定数heq(23℃)が0.25以上のものを合格とした。
【0097】
(減衰性の温度依存性)
温度23℃の環境下で測定した等価減衰定数heq(23℃)に対する、温度10℃、30℃の環境下で測定した等価減衰定数heq(10℃)、heq(30℃)の比、即ちheq(10℃)/heq(23℃)、heq(30℃)/heq(23℃)を、減衰性の温度依存性の指標とした。かかる比が1に近いほど、減衰性の温度依存性が小さいことを示す。heq(10℃)/heq(23℃)が1.30以下のもの、または、heq(30℃)/heq(23℃)が0.80以上のものを、合格とした。
【0098】
(せん断弾性率の温度依存性)
温度23℃の環境下で測定した等価せん断弾性率Geq(23℃)に対する、温度10℃、30℃の環境下で測定した等価せん断弾性率Geq(10℃)、Geq(30℃)の比、即ちGeq(10℃)/Geq(23℃)、Geq(30℃)/Geq(23℃)を、せん断弾性率の温度依存性の指標とした。かかる比が1に近いほど、せん断弾性率の温度依存性が小さいことを示す。Geq(10℃)/Geq(23℃)が1.30以下のもの、または、Geq(30℃)/Geq(23℃)が0.80以上のものを、合格とした。
【0099】
<総合評価>
加工性、減衰性、並びに減衰性およびせん断弾性率の温度依存性の評価結果がすべて「合格」の場合には、総合評価を「〇」とし、加工性、減衰性、並びに減衰性およびせん断弾性率の温度依存性の評価結果のいずれか一つが「不合格」の場合には、総合評価を「×」とした。
【0100】
表1、2に示す配合の各成分を、密閉式混練機を用いて混練することでゴム組成物を作製した。
【0101】
【0102】
【0103】
表1、2中の各成分は下記のとおりである。
IR2200:日本ゼオン社製の合成ポリイソプレンゴム(商品名:Nipol IR2200、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)):82)
CV60:天然ゴム(ムーニー粘度(ML1+4(100℃)):60)
BR130B:宇部興産社製のポリブタジエンゴム(商品名:UBEPOL BR130B、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)):26)
BR360B:宇部興産社製のポリブタジエンゴム(商品名:UBEPOL BR360B、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)):47)
HP755B:JSR社製のスチレン-ブタジエンゴム(ゴム分100質量部に伸展油37.5質量部を配合した油展製品、商品名:HP755B、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)):74)
カーボンブラック:東海カーボン社製(商品名:シースト3、算術平均粒子径:28nm、窒素吸着比表面積:79m2/g、ヨウ素吸着量:80mg/g、DBP吸収量:101cm3/100g)
可塑剤:大八化学工業社製の正リン酸エステル系可塑剤(トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、粘度(25℃):12mPa・s)
加硫剤:鶴見化学工業社製の5%オイル処理粉末硫黄
アクセルCZ:川口化学工業社製のスルフェンアミド系加硫促進剤
アクセルTET:川口化学工業社製のチウラム系加硫促進剤
ロジン系樹脂:荒川化学工業社製の超淡色ロジン(商品名:パインクリスタルKR-85、軟化点(環球法):80~87℃)
ノクラックMB:大内新興化学工業社製のベンズイミダゾール系老化防止剤
アンチゲンFR:丸石化学品社製のキノン系老化防止剤
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油社製のつばき
【0104】
表1、2の結果から明らかなように、基材ゴム、カーボンブラック、加硫剤および加硫促進剤を含有し、前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、15質量%以上、40質量%以下であり、前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下である本発明の減衰性ゴム組成物は、加工性が良好であり、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ該低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい減衰性部材を形成できる。
本発明の好ましい態様(1)は、基材ゴム、カーボンブラック、加硫剤および加硫促進剤を含有する減衰性ゴム組成物であって、前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、15質量%以上、40質量%以下であり、前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下であることを特徴とする減衰性ゴム組成物である。
本発明の好ましい態様(3)は、前記可塑剤の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上、35質量部以下である前記態様(2)に記載の減衰性ゴム組成物である。