(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039951
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】腹臥位用クッション、及び、腹臥位保持構造
(51)【国際特許分類】
A61G 7/065 20060101AFI20240315BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61G7/065
A47C27/14 A
A47C27/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144722
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(71)【出願人】
【識別番号】505172178
【氏名又は名称】株式会社シガドライウィザース
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淺香 えみ子
(72)【発明者】
【氏名】侭田 悦子
(72)【発明者】
【氏名】神保 結実
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀彦
【テーマコード(参考)】
3B096
4C040
【Fターム(参考)】
3B096AA01
4C040AA23
4C040CC10
4C040GG03
(57)【要約】
【課題】腹臥位での身体の安定性を維持すると共に、感染対策が行い易い腹臥位用クッション、及び腹臥位保持構造を提供する。
【解決手段】腹臥位用クッション10は、上面に形成され、胸部及び腹部を支持する幅方向Wに連続して平坦状の胸腹部支持面22と、胸腹部支持面22の長さ方向Lの一端側の幅方向W中央に形成され、一端側へ開口する凹状の顎用凹部24と、胸腹部支持面22の長さ方向Lの他端側から連続して形成され、他端側へ向かって厚みを漸減させる傾斜面32と、胸腹部支持面22の長さ方向Lの他端側の幅方向W中央から傾斜面32の他端に渡って形成され、他端側へ開口する凹状の下肢用凹部26と、を有し、天然ゴムラテックスを主材料とし発泡密度70kg/m
3以上100kg/m
3以下の材料で形成されたクッション本体12と、クッション本体12の外面全体を外形に沿って覆い、細菌及びウイルスを非透過の表皮部材14と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に形成され、胸部及び腹部を支持する幅方向に連続して平坦状の胸腹部支持面と、
前記胸腹部支持面の長さ方向の一端側の前記幅方向中央に形成され、前記一端側へ開口する凹状の顎用凹部と、
前記胸腹部支持面の前記長さ方向の他端側から連続して形成され、前記他端側へ向かって厚みを漸減させる傾斜面と、
前記胸腹部支持面の前記長さ方向の他端側の幅方向中央から前記傾斜面の他端に渡って形成され、前記他端側へ開口する凹状の下肢用凹部と、
を有し、
天然ゴムラテックスを主材料とし発泡密度70kg/m3以上100kg/m3以下の材料で形成されたクッション本体と、
前記クッション本体の外面全体を外形に沿って覆い、細菌及びウイルスを非透過の表皮部材と、
を備えた、腹臥位用クッション。
【請求項2】
前記傾斜面の前記他端側に形成され前記傾斜面よりも傾斜角度が大きい端部面、
を備えた、請求項1に記載の腹臥位用クッション。
【請求項3】
前記クッション本体の下面を形成する本体下面から前記胸腹部支持面までの厚みは、15cm以上20cm以下である、
請求項1または請求項2に記載の腹臥位用クッション。
【請求項4】
上面に形成され、胸部及び腹部を支持する幅方向に連続して平坦状の胸腹部支持面と、
前記胸腹部支持面の長さ方向の一端側の前記幅方向中央に形成され、前記一端側へ開口する凹状の顎用凹部と、
前記胸腹部支持面の前記長さ方向の他端側から連続して形成され、前記他端側へ向かって厚みを漸減させる傾斜面と、
前記胸腹部支持面の前記長さ方向の他端側の幅方向中央から前記傾斜面の他端に渡って形成され、前記他端側へ開口する凹状の下肢用凹部と、
を有し、
天然ゴムラテックスを主材料とし発泡密度70kg/m3以上100kg/m3以下のクッション本体と、
前記クッション本体の外面全体を外形に沿って覆い、細菌及びウイルスを非透過の表皮部材と、
を備えた、腹臥位用クッションと、
前記腹臥位用クッションと別体とされて前記胸腹部支持面に載置され、ウレタンを主原料とした胸腹用ウレタンフォームシートと、
を備えた、腹臥位保持構造。
【請求項5】
前記腹臥位用クッションは、前記傾斜面の前記他端側に形成され前記傾斜面よりも傾斜角度が大きい端部面、を有し、
前記腹臥位用クッションと別体とされて前記腹臥位用クッションの前記端部面の他端部に配置され、脚部を支持するウレタンを主原料とした脚部用ウレタンフォームシートと、
を備えた、請求項4に記載の腹臥位保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹臥位用クッション、及び、この腹臥位用クッションを用いた腹臥位保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、重篤な呼吸不全を呈する中等症および重症例の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する呼吸管理戦略のオプションとして、「腹臥位療法」の呼吸管理が加わった。また、重症肺炎の酸素化改善に腹臥位療法が多く実施されるようになった。
【0003】
従来、腹臥位用クッションとして、種々のマットが用いられており、例えば、特許文献1には、脊髄損傷患者の褥瘡手術後用腹臥位用マットが開示されている。このマットは、ウレタンフォーム製で、マットの下部は硬く、上部は柔らかい素材とされている。また、マットの幅方向両端に凸条の側部が設けられ、腹部の圧迫を避け手術後に尿を回収するドレーンが配置できるような腹部と下腹部の彫り込みが形成されたり、肘や腕を置くための部分が設けられたりするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のマットは、身体に接する上部が柔らかい素材とされているため、長時間における腹臥位では、身体が沈み込んで安定性を保つことが難しい。また、ウレタンフォームを使用しているため、細菌やウイルスが付着する感染症の患者に使用した場合、使用中、使用後の感染対策が行い難い。消毒等に長時間かかると、使用回転率が低くなる。
【0006】
本発明は、上記を考慮し、腹臥位での身体の安定性を維持すると共に、感染対策が行い易い腹臥位用クッション、及び、腹臥位保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の腹臥位用クッションは、上面に形成され、胸部及び腹部を支持する幅方向に連続して平坦状の胸腹部支持面と、前記胸腹部支持面の長さ方向の一端側の前記幅方向中央に形成され、前記一端側へ開口する凹状の顎用凹部と、前記胸腹部支持面の前記長さ方向の他端側から連続して形成され、前記他端側へ向かって厚みを漸減させる傾斜面と、前記胸腹部支持面の前記長さ方向の他端側の幅方向中央から前記傾斜面の他端に渡って形成され、前記他端側へ開口する凹状の下肢用凹部と、を有し、天然ゴムラテックスを主材料とし発泡密度70kg/m3以上100kg/m3以下の材料で形成されたクッション本体と、前記クッション本体の外面全体を外形に沿って覆い、細菌及びウイルスを非透過の表皮部材と、を備えている。
【0008】
第1の態様の腹臥位用クッションでは、天然ゴムラテックスを主材料とし70kg/m3以上100kg/m3以下の材料を用いてクッション本体が形成されているので、腹臥位での身体を、胸腹部支持面、及び、傾斜面で、沈み込みを抑制しつつ長時間保持することができる。これにより、腹臥位での身体の安定性の維持が可能である。
【0009】
また、細菌及びウイルスが非透過の表皮部材で、クッション本体を外形に沿って覆うので、クッション本体への細菌及びウイルスの浸透を防止でき、表皮部材に付着した細菌やウイルスを、拭き取り消毒することにより、感染対策を容易に行うことができる。
【0010】
また、顎用凹部に下向きで顔の顎部分を配置することにより、顎の圧迫を抑制することができる。
【0011】
また、下肢用凹部を形成することにより、恥骨や陰部の圧迫を抑制することができる。
【0012】
第2の態様の腹臥位用クッションは、前記傾斜面の前記他端側に形成され前記傾斜面よりも傾斜角度が大きい端部面、を備えている。
【0013】
第2の態様の腹臥位用クッションによれば、端部面の他端側に、他の脚部支持用の部材を配置することで、腹臥位用クッションをコンパクトにすることができると共に、使用者の股関節から下を緩やかに屈曲した姿勢とすることができる。
【0014】
第3の態様の腹臥位用クッションは、前記クッション本体の下面を形成する本体下面から前記胸腹部支持面までの厚みは、15cm以上20cm以下である。
【0015】
第3の態様の腹臥位用クッションによれば、下向きの顔の位置を比較的高くすることができるので、挿入中の管の抜けを抑制することができる。
【0016】
第4の態様の腹臥位保持構造は、上面に形成され、胸部及び腹部を支持する幅方向に連続して平坦状の胸腹部支持面と、前記胸腹部支持面の長さ方向の一端側の前記幅方向中央に形成され、前記一端側へ開口する凹状の顎用凹部と、前記胸腹部支持面の前記長さ方向の他端側から連続して形成され、前記他端側へ向かって厚みを漸減させる傾斜面と、前記胸腹部支持面の前記長さ方向の他端側の幅方向中央から前記傾斜面の他端に渡って形成され、前記他端側へ開口する凹状の下肢用凹部と、を有し、天然ゴムラテックスを主材料とし発泡密度70kg/m3以上100kg/m3以下のクッション本体と、前記クッション本体の外面全体を外形に沿って覆い、細菌及びウイルスが非透過の表皮部材と、を備えた、腹臥位用クッションと、前記腹臥位用クッションと別体とされて前記胸腹部支持面に載置され、ウレタンを主原料とした胸腹用ウレタンフォームシートと、を備えている。
【0017】
第4の態様の腹臥位保持構造では、天然ゴムラテックスを主材料とし発泡密度70kg/m3以上100kg/m3以下の材料を用いてクッション本体が形成されているので、腹臥位での身体を、胸腹部支持面、及び傾斜面で、沈み込みを抑制しつつ長時間保持することができる。これにより、腹臥位での身体の安定性の維持が可能である。
【0018】
また、細菌及びウイルスを非透過の表皮部材で、クッション本体を外形に沿って覆うので、クッション本体への細菌及びウイルスの浸透を防止でき、表皮部材に付着した細菌やウイルスを、拭き取り消毒することにより、感染対策を容易に行うことができる。
【0019】
また、顎用凹部に下向きで顔の顎部分を配置することにより、顎の圧迫を抑制することができる。
【0020】
また、腹臥位用クッションと別体とされた胸腹用ウレタンフォームシートを、胸腹部支持面に載置するので、身体への接触部分を比較的柔らかい部材としつつ、クッション本体で身体の沈み込みを抑制することができる。
【0021】
第5の態様の腹臥位保持構造は、前記腹臥位用クッションは、前記傾斜面の前記他端側に形成され前記傾斜面よりも傾斜角度が大きい端部面、を有し、前記腹臥位用クッションと別体とされて前記腹臥位用クッションの前記端部面の他端部に配置され、脚部を支持するウレタンを主原料とした脚部用ウレタンフォームシートと、を備えている。
【0022】
第5の態様の腹臥位保持構造によれば、腹臥位用クッションと別体とされた脚部用ウレタンフォームシートを容易に配置して、脚部を支持することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、腹臥位での身体の安定性を維持すると共に、感染対策が行い易い腹臥位用クッション、及び腹臥位保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る腹臥位用クッションの斜視図(一部破断)である。
【
図2】本発明の実施形態に係る腹臥位用クッションの(A)は上面図であり、(B)は側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る腹臥位用構造を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る腹臥位用構造を使用者が腹臥位で利用している状態を示す図である。
【
図5】(A)は比較例の構造における体圧分散結果を示す図であり、(B)は本実施形態の腹臥位保持構造における体圧分散結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0026】
(腹臥位用クッション)
図1には、本実施形態の、腹臥位用クッション10の斜視図(一部破断)が示され、
図2(A)には上面図が示され、
図2(B)には側面図が示されている。腹臥位用クッション10は、ベッドや布団などの上に載せて用いられる。
【0027】
なお、本実施形態において、腹臥位用クッション10の使用時における、使用者P(
図4参照)の身体の幅方向を幅方向W、長さ方向(身長方向)を長さ方向L、身体の厚み方向を厚み方向Hと称する。図中には、各々矢印W、L、Hで示している。また、長さ方向Lにおいて、図面の左側を「一端側」とし、右側を「他端側」とする。
【0028】
腹臥位用クッション10は、クッション本体12と、表皮部材14を備えている。表皮部材14は、シート状とされ、クッション本体12の外面全体を外形に沿って覆っている。以下、クッション本体12の各部については、表皮部材14で覆われた状態で図示し、対応する表皮部材14の部分を示して説明する。
【0029】
クッション本体12は、胸腹支持部20、及び下肢支持部30を有している。胸腹支持部20は、略直方体状とされ、長さ方向Lの他端側に下肢支持部30が連続して形成されている。胸腹支持部20の上面は、面一の平坦状とされており、当該上面により胸腹部支持面22が形成されている。すなわち、胸腹部支持面22は、幅方向Wの一方端から他方端まで連続して平坦状とされている。また、胸腹支持部20の下面は、面一の平坦状とされており、胸腹部支持面22と対向する本体下面16が形成されている。本体下面16から胸腹部支持面22までの厚みは、使用者Pの頭部が、比較的高い位置にくるように設定されており、15cm以上20cm以下の範囲であることが好ましい。
【0030】
胸腹支持部20の一端側には、顎用凹部24が形成されている。顎用凹部24は、胸腹支持部20の長さ方向Lの一端側に形成された凹部であり、幅方向Wの中央部を他端側が底になるように一端側へ開口した凹状とされ、厚み方向Hから見て弧状となっている。
【0031】
胸腹支持部20の他端側には、下肢用凹部26Aが形成されている。下肢用凹部26Aは、胸腹支持部20の他端側の幅方向Wの中央部を一端側が底になるように他端側へ開口した凹状であり、厚み方向Hから見て、幅方向Wに沿った1辺と、長さ方向Lに沿った互いに対向する2辺と、を有する矩形状とされている。下肢用凹部26Aの開口幅W2は、顎用凹部24の開口幅W1よりも狭幅に設定されている(
図2(A)参照)。
【0032】
下肢支持部30は、胸腹支持部20の他端側(下肢用凹部26Aを挟んで両外側の2箇所)から連続して形成されている。下肢支持部30には、胸腹部支持面22の他端から連続する傾斜面32が形成されている。傾斜面32は、胸腹支持部20の他端上部から他端側へ向かって厚み方向Hの厚みを漸減させる、本体下面16と鋭角をなす平坦面である。下肢支持部30には、幅方向Wの中央に下肢用凹部26Bが形成されている。下肢用凹部26Bは、下肢用凹部26Aから連続し、下肢支持部30の一端から他端に渡って形成されている。下肢用凹部26Aと下肢用凹部26Bは同幅とされており、連続する下肢用凹部26Aと下肢用凹部26Bをまとめて、下肢用凹部26と称する。
【0033】
下肢支持部30の他端側には、厚み方向Hに沿った端部面34が形成されている。本体下面16に対して、端部面34の傾斜角度は約90°であり、傾斜面32の傾斜角度よりも大きくなっている。本体下面16に対する傾斜面32の傾斜角度は、一例として20°~40°とすることができる。
【0034】
クッション本体12は、天然ゴムラテックスを主材料としており、70kg/m3以上100kg/m3以下の発泡ゴムとされている。なお、発泡密度80kg/m3以上90kg/m3以下であることが好ましい。また、材料として、100%天然ゴムラテックスを使用し、最大5%の添加剤の添加とすることが好ましい。
【0035】
表皮部材14は、細菌及びウイルスを非透過とされており、ウレタン系のフィルムを用いることができる。ウレタン系のフィルムとして、例えば、ウレタン樹脂を主たる材料とし、酸化チタン、酸化亜鉛、銅化合物を含有するものを用いることができる。一例として、酸化チタン1~10%、酸化亜鉛1%未満、銅化合物1~10%とすることができる。表皮部材14の厚みは、30μm~50μmであることが好ましい。また、表皮部材14は、引張試験機による試験で、50%のモジュラスが6.0MPa~8.0MPa、抗張力が30MPa以上、伸びが300%以上であることが好ましい。
【0036】
(腹臥位保持構造)
図3に示されるよう、本実施形態の腹臥位保持構造40は、腹臥位用クッション10、胸腹用ウレタンフォームシート41、及び、脚部用ウレタンフォームシート42を備えている。
【0037】
胸腹用ウレタンフォームシート41は、腹臥位用クッション10と別体の板状とされ、腹臥位用クッション10の胸腹部支持面22上に載置されている。胸腹用ウレタンフォームシート41の厚みH1は、端部面34の厚み方向Hの長さH0よりも薄く設定されている。また、胸腹用ウレタンフォームシート41は、クッション本体12よりも圧縮変形し易い(柔らかい)ウレタンフォームで形成されている。胸腹用ウレタンフォームシート41としては、既存の体圧分散用シートを用いることができる。図示していないが、既存の体圧分散用シートでは、表面全体に凹凸が形成されている。
【0038】
脚部用ウレタンフォームシート42は、腹臥位用クッション10と別体の板状とされ、腹臥位用クッション10の端部面34の他端側に配置されている。脚部用ウレタンフォームシート42の厚みH2は、端部面34の厚み方向Hの長さH0よりもやや厚く設定されている。また、脚部用ウレタンフォームシート42は、クッション本体12よりも圧縮変形し易い(柔らかい)ウレタンフォームで形成されている。脚部用ウレタンフォームシート42としては、既存の体圧分散用シートを用いることができる。図示していないが、既存の体圧分散用シートでは、表面全体に凹凸が形成されている。
【0039】
本実施形態の、腹臥位保持構造40を使用する際には、腹臥位用クッション10の胸腹部支持面22上に、胸腹用ウレタンフォームシート41を挟んで使用者Pの胸部及び腹部を載せる。また、傾斜面32に使用者Pの大腿上部を載せ、脚部用ウレタンフォームシート42上に、傾斜面32から突出した使用者Pの太腿を載せる。さらに、使用者Pの前腕部分の下に、前腕用ウレタンフォーム44を配置し、使用者Pの下腿部分の下に、下腿用ウレタンフォーム46を配置する。また、使用者Pと胸腹用ウレタンフォームシート41、傾斜面32の間には、薄い布状の補助パッド(不図示)を敷く。
【0040】
本実施形態の腹臥位用クッション10は、天然ゴムラテックスを主材料とし発泡密度70kg/m3以上100kg/m3以下の材料を用いてクッション本体12が形成されているので、腹臥位の使用者Pの身体を、胸腹部支持面22、及び、傾斜面32で、沈み込みを抑制しつつ長時間保持することができる。
【0041】
また、胸腹部支持面22は、幅方向Wの全域が面一の平坦状とされているので、胸部及び腹部を広く胸腹部支持面22の全体に接触させて体圧分散を行うことができる。また、胸腹部支持面22の表面の拭き取り清掃が行いやすい。
【0042】
また、天然ゴムラテックスを主材料とし発泡密度70kg/m3以上100kg/m3以下の材料で形成されたクッション本体12は、ウレタンフォームで形成されている場合と比較して変形しにくいため、腹臥位用クッション10と使用者Pとの間に手を差し込みやすくなり、圧抜きをスムーズに実施することができる。
【0043】
また、表皮部材14で外側を覆うことにより、クッション本体12への細菌及びウイルスの浸透を防止できるので、表皮部材14に付着した細菌やウイルスを拭き取り消毒することにより、感染対策を容易に行うことができる。
【0044】
また、腹臥位用クッション10には、顎用凹部24が形成されているので、下向きで使用者Pの顎部分を顎用凹部24に配置することにより、顎の圧迫を抑制することができる。
【0045】
また、腹臥位用クッション10には、下肢用凹部26が形成されているので、使用者Pの恥骨や陰部の圧迫を抑制することができる。
【0046】
また、腹臥位用クッション10には、傾斜面32が形成されているので、使用者Pの股関節から下を緩やかに屈曲させて配置することができる。
【0047】
また、本体下面16から胸腹部支持面22までの厚みが、15cm以上20cm以下の範囲とすることにより、下向きの使用者Pの顔の位置を比較的高くすることができるので、挿入中の管の抜けを抑制することができる。
【0048】
また、下肢用凹部26Aの開口幅W2は、顎用凹部24の開口幅W1よりも狭幅に設定されているので、必要以上に開口部分を設けることなく、胸腹部支持面22と身体との接触面積を確保して体圧分散を図ることができる。
【0049】
また、胸腹部支持面22に、胸腹用ウレタンフォームシート41を載せ、その上に使用者Pの胸部及び腹部を載せるので、局所的な体圧のかかりが抑制され、適切に体圧分散を行うことができる。胸腹用ウレタンフォームシート41は、腹臥位用クッション10と別体なので、腹臥位用クッション10をコンパクトにすることができる。
【0050】
また、腹臥位用クッション10には、傾斜面32の他端側に傾斜面32よりも傾斜角度が大きい端部面34が形成されている。これにより、比較的体圧が低く圧抜きもしやすい大腿の下側に対応する端部面34の他端側に他の脚部支持用の部材(脚部用ウレタンフォームシート42)を配置することで、腹臥位用クッション10をコンパクトにすることができると共に、使用者Pの股関節から下を緩やかに屈曲した姿勢にすることができる。
【0051】
[試験例]
比較例の構造を腹臥位に使用した場合と、本実施形態の腹臥位保持構造40を腹臥位に使用した場合と、で体圧測定の試験を実施した。比較例の構造では、直方体状のウレタンマットに本実施形態の腹臥位用クッション10の下肢用凹部26と同様の凹部を形成した比較例クッションを用意し、比較例クッションの下にポジショニングピローを配置して安定させた。健常者により、10分間不動の腹臥位を継続し、体圧を測定した。
【0052】
図5(A)には、比較例の構造を使用した場合の体圧の分散結果が示されており、
図5(B)には本実施形態の腹臥位保持構造40を使用した場合の体圧の分散結果が示されている。ドットの密度が大きいほど(色が濃い部分ほど)体圧が大きい部分であることを示している。
図5では、左右方向が長さ方向Lであり、上下方向が幅方向Wである。
図5(B)において、符号22で示される領域が、胸腹部支持面22に接触している部分であり、符号32で示される領域が、傾斜面32に接触している部分である。
【0053】
体圧が大きい部分は、
図5(B)の方が
図5(A)よりも狭い範囲に限られ(限局)ていることがわかる。本実施形態の腹臥位保持構造40において、褥瘡を低減できることを確認できた。
【符号の説明】
【0054】
10 腹臥位用クッション
12 クッション本体
14 表皮部材
16 本体下面
20 胸腹支持部
22 胸腹部支持面
24 顎用凹部
26 下肢用凹部
30 下肢支持部
32 傾斜面
34 端部面
40 腹臥位保持構造
41 胸腹用ウレタンフォームシート
42 脚部用ウレタンフォームシート