(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039960
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】仕切部材および構造物
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20240315BHJP
E02D 29/14 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
E02D29/05 D
E02D29/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144734
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】立石 栄一
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜也
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 尚也
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AA06
2D147BB21
(57)【要約】
【課題】構造体の内部空間に配置された通信機器からの電磁波を広い周波数帯域にわたって伝送しやすい仕切部材を提供する。
【解決手段】仕切部材1は、地下構造体2の内側の内部空間Pと外側の外部空間との境界を仕切りつつ、内部空間Pに配置される通信機器50から発される電磁波を外部空間に向けて伝送することができる。仕切部材1は、基準点Rを中心として回転した位置に形成される複数の貫通スリット20を含む。貫通スリット20のそれぞれは、始端部21から終端部22まで延びる内側曲面23と、始端部24から終端部25まで延びる外側曲面26と、内側曲面23の始端部21と外側曲面26の始端部24とを接続する始端接続面27と、内側曲面の終端部22と外側曲面26の終端部25とを接続する終端接続面28とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の内側の内部空間と前記構造体の外側の外部空間との境界を仕切りつつ、前記構造体の前記内部空間に配置される通信機器から発される電磁波を前記外部空間に向けて伝送可能な仕切部材であって、
基準点を中心として回転した位置に形成される複数の貫通スリットを含み、
前記複数の貫通スリットのそれぞれは、
第1の始端部から第1の終端部まで延びる第1の曲面と、
第2の始端部から第2の終端部まで延びる第2の曲面であって、前記基準点を中心として前記第1の曲面よりも半径方向外側に位置する第2の曲面と、
前記第1の曲面の前記第1の始端部と前記第2の曲面の前記第2の始端部とを接続する始端接続面と、
前記第1の曲面の前記第1の終端部と前記第2の曲面の前記第2の終端部とを接続する終端接続面と
を含む、
仕切部材。
【請求項2】
前記第1の曲面および前記第2の曲面のそれぞれは、前記基準点を中心に旋回するにつれて前記基準点からの距離が変化するように延びる、請求項1に記載の仕切部材。
【請求項3】
前記第1の曲面および前記第2の曲面のそれぞれは、前記基準点を中心に旋回するにつれて前記基準点から遠ざかるように延びる渦巻線に沿って延びる、請求項2に記載の仕切部材。
【請求項4】
前記始端接続面の長さと前記終端接続面の長さとが互いに異なる、請求項1に記載の仕切部材。
【請求項5】
前記複数の貫通スリットは、前記基準点を中心として180度回転した位置に形成される2つの貫通スリットを含む、請求項1に記載の仕切部材。
【請求項6】
前記通信機器は、前記複数の貫通スリットのそれぞれからの距離が等しい位置に配置される、請求項1に記載の仕切部材。
【請求項7】
前記構造体は地下構造体であり、
前記仕切部材は前記地下構造体に形成される開口部を閉塞する蓋である、
請求項1に記載の仕切部材。
【請求項8】
前記構造体と、
前記境界に取り付けられる請求項1から7のいずれか一項に記載された仕切部材と
を備える、
構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切部材および構造物に係り、特に構造体の内部空間と外部空間との境界を仕切ることが可能な仕切部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多くの構造物において、構造体の内側の内部空間とこの構造体の外側の外部空間との境界を壁、蓋、扉、カバーなどの仕切部材で仕切ることがなされている。近年では、IoTの発展に伴って、例えば無線通信が可能な通信機器を構造体の内部空間に配置し、この通信機器と外部空間に配置された相手先の通信機器との間で通信を行うことも多くなってきている。このような仕切部材として金属製のものを用いた場合には、構造体の内部空間に配置された通信機器から発された電磁波が仕切部材に吸収され、または反射して減衰しやすいため、電磁波が外部空間にある相手先の通信機器に届きにくくなる。例えば、仕切部材としての蓋にアンテナユニットを取り付け、このアンテナユニットを介して構造体内部の通信機器と外部空間にある相手方の通信機器との間で安定的に通信することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。通信機器から発される電磁波は周波数帯域幅を有しており、使用される通信機器によってその周波数帯域も異なっているため、広い周波数帯域で電磁波を伝送することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、構造体の内部空間に配置された通信機器からの電磁波を広い周波数帯域にわたって伝送しやすい仕切部材を提供することを第1の目的とする。
【0005】
また、本発明は、内部空間に配置された通信機器からの電磁波を広い周波数帯域にわたって伝送しやすい構造物を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、構造体の内部空間に配置された通信機器からの電磁波を広い周波数帯域にわたって伝送しやすい仕切部材が提供される。この仕切部材は、構造体の内側の内部空間と上記構造体の外側の外部空間との境界を仕切りつつ、上記構造体の上記内部空間に配置される通信機器から発される電磁波を上記外部空間に向けて伝送可能なものである。上記仕切部材は、基準点を中心として回転した位置に形成される複数の貫通スリットを含む。上記複数の貫通スリットのそれぞれは、第1の始端部から第1の終端部まで延びる第1の曲面と、第2の始端部から第2の終端部まで延びる第2の曲面であって、上記基準点を中心として上記第1の曲面よりも半径方向外側に位置する第2の曲面と、上記第1の曲面の上記第1の始端部と上記第2の曲面の上記第2の始端部とを接続する始端接続面と、上記第1の曲面の上記第1の終端部と上記第2の曲面の上記第2の終端部とを接続する終端接続面とを含む。
【0007】
このような構成によれば、仕切部材には複数の貫通スリットが基準点を中心として回転した位置に形成されているため、構造体の内部空間に配置される通信機器から発される電磁波が貫通スリットを通過する際のインピーダンスを抑制しやすい。このため、通信機器から発される電磁波を共振させやすくなり、広い周波数帯域において電磁波の減衰を抑制しやすい。したがって、通信機器からの電磁波を広い周波数帯域にわたって外部空間に伝送しやすい。
【0008】
上記第1の曲面および上記第2の曲面のそれぞれは、上記基準点を中心に旋回するにつれて上記基準点からの距離が変化するように延びることが好ましく、上記基準点を中心に旋回するにつれて上記基準点から遠ざかるように延びる渦巻線に沿って延びることがさらに好ましい。また、上記始端接続面の長さと上記終端接続面の長さとが互いに異なっていてもよい。このような構成によれば、通信機器から発される電磁波が貫通スリットを通過する際のインピーダンスを一層抑制しやすくなり、広い周波数帯域にわたって電磁波をより効果的に伝送しやすい。
【0009】
上記複数の貫通スリットは、上記基準点を中心に180度回転した位置に形成される2つの貫通スリットであってもよい。このように、最小限の数の貫通スリットとすることで、仕切部材の強度低下を抑えることができる。
【0010】
上記通信機器は、上記複数の貫通スリットのそれぞれからの距離が等しい位置に配置されることが好ましい。このような構成によれば、通信装置とそれぞれの貫通スリットとの距離が等しいため、通信機器から発される電磁波が貫通スリットを通過する際のインピーダンスを抑制しやすくなり、広い周波数帯にわたって電磁波をより効果的に伝送しやすい。
【0011】
上記構造体は地下構造体であり、上述した仕切部材は上記地下構造体に形成される開口部を閉塞する蓋であるものであってもよい。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、内部空間に配置された通信機器からの電磁波を広い周波数帯域にわたって伝送しやすい構造物が提供される。上記構造物は、上記構造体と、上記境界に取り付けられる上述した仕切部材とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における仕切部材を含む構造物を模式的に示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、
図3に示される貫通スリットの第1の変形例を示す平面図である。
【
図4B】
図4Bは、
図3に示される貫通スリットの第2の変形例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示される貫通スリットの第3の変形例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示される貫通スリットの第4の変形例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図3に示される貫通スリットの第5の変形例を示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図3に示される貫通スリットの第6の変形例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図3に示される貫通スリットの第7の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る仕切部材および構造物の実施形態について
図1から
図9を参照して詳細に説明する。
図1から
図9において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図9においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における仕切部材1を含む構造物Sを模式的に示す断面図である。以下の実施形態では、仕切部材1が、地下構造体2に形成される開口部2Aを閉塞する蓋、例えばマンホール(人孔)蓋である場合について説明するが、本発明に係る仕切部材は、このような蓋に限られず、扉やカバー、壁など、構造体の内側の内部空間と構造体の外側の外部空間との境界を仕切るものであれば、どのような部材にも適用することができる。また、仕切部材1は、本実施形態のような地下構造体2に限らず、内側に内部空間が形成されている任意の構造体に取り付けることができる。例えば、本発明に係る仕切部材は、住宅の壁に形成された開口部に取り付けられる扉や蓋、カバーであってもよく、あるいは、建設機械や工作機械をはじめとする装置のボディに形成された開口部に取り付けられる扉や蓋、カバーであってもよい。要するに、本発明は、ある構造体の内側の内部空間とその構造体の外側の外部空間との境界を仕切ることができるものであれば、どのような仕切部材にも適用できるものである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態における仕切部材1は、円板状の本体10と、本体10の外周縁から下方に円筒状に延びる外縁部11と、仕切部材1の強度を維持するためのリブ12とを含んでいる。例えば、このような仕切部材1は、導電性を有する鋳鉄などから形成される。この仕切部材1の本体10には、複数の貫通スリット20が形成されている。本実施形態では、2つの貫通スリット20A,20Bが形成されているが、貫通スリット20の数はこれに限られるものではない。
【0017】
地下構造体2は、地下の下水道や電気ケーブル、通信ケーブルなどにアクセスするためのマンホール(人孔)を形成する下桝30と、下桝30の上端に配置される枠体40とを含んでいる。下桝30および枠体40の内側には、例えば作業員が昇降するための内部空間Pが形成されている。この内部空間Pには、例えば、地下構造体2の内部空間Pの状態を検出可能なセンサ(図示せず)からの信号を電磁波として発信する通信機器50が配置されている。この通信機器50は、例えば、下桝30に取り付けられた支持部材52上に設置される。
【0018】
例えば、上記のようなセンサとして、地下構造体2内の管路を流れる水(例えば下水)の水位、水質、流量を検出するセンサ、地下構造体2内の特定のガスの濃度を検出するガスセンサ、地下構造体2内の臭気を検出する臭気センサなどが挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【0019】
本実施形態における枠体40は、地下構造体2の開口部2Aを規定する内周面41と、仕切部材1の外縁部11に対向する内周面42とを有している。内周面42の内径は内周面41の内径よりも大きくなっており、内周面41と内周面42との間に段差が形成されている。この枠体40の段差によって仕切部材1の外縁部11が支持されている。
【0020】
図2は、仕切部材1の平面図、
図3は、
図2の部分拡大図である。
図2および
図3に示すように、本実施形態の2つの貫通スリット20A,20B(第1の貫通スリット20Aおよび第2の貫通スリット20B)は、略同一の形状であり、基準点Rを中心として180度回転した位置に形成されている。それぞれの貫通スリット20は、始端部21(第1の始端部)から終端部22(第1の終端部)まで延びる内側曲面23(第1の曲面)と、始端部24(第2の始端部)から終端部25(第2の終端部)まで延びる外側曲面26(第2の曲面)と、内側曲面23の始端部21と外側曲面26の始端部24とを接続する始端接続面27と、内側曲面23の終端部22と外側曲面26の終端部25とを接続する終端接続面28とを含んでいる。外側曲面26は、基準点Rを中心として内側曲面23よりも半径方向外側に位置している。
【0021】
図3に示すように、それぞれの貫通スリット20の内側曲面23および外側曲面26は基準点Rを中心に角度θ(
図3ではθ=180度)にわたって延びており、これらの貫通スリット20は基準点Rを中心に角度α(
図3ではα=180度)回転した位置に形成されている。また、
図3に示す例では、第1の貫通スリット20Aの始端接続面27と第2の貫通スリット20Bの終端接続面28とは、互いに対向しておらず、基準点Rを通る同一直線S1上で径方向にずれた位置に存在している。同様に、第1の貫通スリット20Aの終端接続面28と第2の貫通スリット20Bの始端接続面27とは、互いに対向しておらず、基準点Rを通る同一直線S2上で径方向にずれた位置に存在している。また、第1の貫通スリット20Aの始端接続面27は、基準点Rを中心として第2の貫通スリット20Bの終端接続面28よりも半径方向内側に位置しているのに対して、第1の貫通スリット20Aの終端接続面28は、基準点Rを中心として第2の貫通スリット20Bの始端接続面よりも半径方向外側に位置している。
【0022】
例えば、仕切部材1に貫通スリット20のような貫通スリットを1つだけ形成した場合には、通信機器50から発された電磁波の利得は、形成した貫通スリットの形状によって定まる特定の周波数で最大となるが、特定の周波数と異なる周波数帯域では共振しにくくなり、利得が大きく減衰する。これに対して、本実施形態のように、複数の貫通スリット20を仕切部材1の基準点Rを中心として回転した位置に形成すると、電磁波が貫通スリットを通過する際のインピーダンスを抑制しやすくなる。このため、通信機器50から発される電磁波を共振させやすくなり、特定の周波数と異なる広い周波数帯域においても電磁波の利得の減衰を抑制しやすい。したがって、通信機器50からの電磁波を広い周波数帯域にわたって外部空間に伝送しやすい。
【0023】
本実施形態では、
図1に示すように、通信機器50を貫通スリット20のそれぞれからの距離Dが等しい位置に配置している。すなわち、基準点Rの直下に通信機器50を配置している。このような構成によれば、通信機器50とそれぞれの貫通スリット20との間の距離Dが等しいため、通信機器50から発される電磁波が貫通スリット20を通過する際のインピーダンスをより抑制しやすくなり、広い周波数帯にわたって電磁波をより効果的に伝送しやすい。
【0024】
本実施形態では、
図2および
図3に示すように、内側曲面23および外側曲面26のそれぞれは、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rからの距離が変化するように延びている。より具体的には、内側曲面23は、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rから遠ざかるように延びる渦巻線W1に沿って延びており、また、外側曲面26は、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rから遠ざかるように延びる、渦巻線W1とは異なる渦巻線W2に沿って延びている。ここで、
図3において始端接続面27の長さL1の方が終端接続面28の長さL2よりも短くなっている。このような構成の内側曲面23、外側曲面26、始端接続面27、および終端接続面28により貫通スリット20を構成することで、通信機器50から発される電磁波が貫通スリット20を通過する際のインピーダンスを一層抑制しやすくなり、広い周波数帯域にわたって電磁波をより効果的に伝送しやすい。なお、本明細書において始端接続面または終点接続面の「長さ」というときは、
図3に示すような仕切部材1の平面視において当該面が延びる長さをいうものとする。
【0025】
図3に示す例では、それぞれの貫通スリット20の内側曲面23および外側曲面26が基準点Rを中心に広がる角度θは180度であり、これらの貫通スリット20を基準点Rを中心に角度α=180度回転した位置に形成している。また、すべての始端接続面27および終端接続面28が基準点Rを通る同一線上に位置している。このため、基準点Rを中心とする周方向に沿っていずれかの貫通スリット20が位置することとなり、通信機器50から発される電磁波が貫通スリット20を通過する際のインピーダンスを一層抑制しやすくなる。
【0026】
上述した例では、2つの貫通スリット20を基準点Rを中心に180度回転した位置に形成しているが、貫通スリット20を回転させる角度αはこれに限られるものではない。例えば、
図4Aに示すように、基準点Rを中心に180度よりも小さい角度αだけ第1の貫通スリット20Aを回転した位置に第2の貫通スリット20Bを配置してもよい(例えば、
図4Aではα=110度)。あるいは、
図4Bに示すように、基準点Rを中心に180度よりも大きい角度αだけ第1の貫通スリット20Aを回転した位置に第2の貫通スリット20Bを配置してもよい(例えば、
図4Bではα=210度)。このような構成においても、電磁波が貫通スリット20を通過する際のインピーダンスを抑制しやすくなるため、通信機器50からの電磁波を広い周波数帯域にわたって外部空間に伝送しやすい。
【0027】
それぞれの貫通スリット20の内側曲面23および外側曲面26が基準点Rを中心に広がる角度θは180度を超えてもよい。例えば、
図5に示すように、基準点Rを中心に例えば270度の角度θにわたって延びる内側曲面23および外側曲面26を有する2つの貫通スリット120を形成してもよい。この例においても、内側曲面23および外側曲面26のそれぞれは、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rからの距離が変化するように延びている。より具体的には、内側曲面23は、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rから遠ざかるように延びる渦巻線W3に沿って延びており、また、外側曲面26は、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rから遠ざかるように延びる、渦巻線W3とは異なる渦巻線W4に沿って延びている。
図5に示す例では、2つの貫通スリット120は、基準点Rを中心に角度α=180度回転した位置に形成されている。2つの貫通スリット120の始端接続面27は基準点Rを通る直線S3上に位置し、2つの貫通スリット120の終端接続面28は基準点Rを通る、直線S3とは異なる直線S4上に位置している。また、この貫通スリット120の始端接続面27の長さL3と終端接続面28の長さL4との差は、
図2に示す貫通スリット20の始端接続面27の長さL1と終端接続面28の長さL2との差よりも大きくなっている。
【0028】
また、
図6に示すように、基準点Rを中心に例えば480度の角度θにわたって延びる内側曲面23および外側曲面26を有する貫通スリット220を形成してもよい。この例においても、内側曲面23および外側曲面26のそれぞれは、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rからの距離が変化するように延びている。より具体的には、内側曲面23は、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rから遠ざかるように延びる渦巻線W5に沿って延びており、また、外側曲面26は、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rから遠ざかるように延びる、渦巻線W5とは異なる渦巻線W6に沿って延びている。
図6に示す例では、2つの貫通スリット220は、基準点Rを中心に角度α=180度回転した位置に形成されている。2つの貫通スリット220の始端接続面27は基準点Rを通る直線S5上に位置し、2つの貫通スリット220の終端接続面28は基準点Rを通る、直線S5とは異なる直線S6上に位置している。
【0029】
これらの例のように、貫通スリットの内側曲面23および外側曲面26を
図3に示す例よりも大きな角度にわたって延ばすことで、通信機器50から発される電磁波が貫通スリット20を通過する際のインピーダンスを一層抑制しやすくなる。
【0030】
上述したいずれの例においても、それぞれの貫通スリット20,120,220の内側曲面23および外側曲面26は、基準点Rを中心に旋回するにつれて基準点Rからの距離が変化するように延びているが、
図7に示すように、円弧面によって構成される内側曲面323と外側曲面326とを有する貫通スリット320を形成してもよい。この場合、円弧面によって構成されるため、始端接続面27の長さL5と終端接続面28の長さL6は等しい長さで形成される。
図7に示す例では、2つの貫通スリット320が、基準点Rを中心に角度α=180度回転した位置に形成されている。
【0031】
上述のいずれの例においても、仕切部材1に形成する貫通スリット20,120,220,320の数を2つとしているが、仕切部材1に形成する貫通スリットの数は2つ以上であればいくつであってもよい。例えば、
図8に示すように、上述した渦巻線に沿って延びる内側曲面23と外側曲面26とを有する貫通スリット20A,20B,20Cを3つ形成し、これらの貫通スリット20A,20B,20Cを基準点Rを中心として例えば角度α=120度回転した位置に配置してもよい。このとき貫通スリット20A,20B,20Cを回転させる角度αは、120度よりも小さくても、あるいは120度よりも大きくてもよい。あるいは、
図9に示すように、上述した円弧面により形成される内側曲面323と外側曲面326とを有する貫通スリット320A,320B,320C,320Dを4つ形成し、これらの貫通スリット320A,320B,320C,320Dを基準点Rを中心として例えば角度α=90度回転した位置に形成してもよい。このとき貫通スリット320A,320B,320C,320Dを回転させる角度αは、90度よりも小さくても、あるいは90度よりも大きくてもよい。ただし、形成する貫通スリットの数を最小限の数(2つ)とすれば、仕切部材1の強度低下を抑えることができ、また、その形成も容易である。
【0032】
上述した実施形態では、基準点Rが仕切部材1の中心Oと異なる位置にあるものとして説明したが、基準点Rが仕切部材1の中心Oと一致していてもよい。基準点Rと中心Oとを一致させる場合には、通信機器50は、例えば、下桝30または枠体40に取り付けられた転落防止梯子(図示せず。仕切部材1を枠体40から取り外した際には閉じており、通行人や作業員が内部空間P内に転落することを防止するとともに、作業員が内部空間P内を昇降する際には開いて、梯子として使用できるもの。)に設置したり、あるいは下桝30に取り付けられた支持部材52を長くすること等により、基準点R(中心O)の直下に設置することができるが、作業員が内部空間P内を昇降する際の妨げにならないよう、上述した実施形態のように、基準点Rが仕切部材1の中心Oと異なる位置にあるのが好ましい。
【0033】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 仕切部材
2 地下構造体(構造体)
2A 開口部
10 本体
11 外縁部
12 リブ
20,120,220,320 貫通スリット
21 (第1の)始端部
22 (第1の)終端部
23,323 内側曲面(第1の曲面)
24 (第2の)始端部
25 (第2の)終端部
26,326 外側曲面(第2の曲面)
27 始端接続面
28 終端接続面
30 下桝
40 枠体
50 通信機器
52 支持部材
P 内部空間
R 基準点
S 構造物