IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エンジンおよび車両 図1
  • 特開-エンジンおよび車両 図2
  • 特開-エンジンおよび車両 図3
  • 特開-エンジンおよび車両 図4
  • 特開-エンジンおよび車両 図5
  • 特開-エンジンおよび車両 図6
  • 特開-エンジンおよび車両 図7
  • 特開-エンジンおよび車両 図8
  • 特開-エンジンおよび車両 図9
  • 特開-エンジンおよび車両 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039968
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】エンジンおよび車両
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/24 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
F02F1/24 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144747
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹山 若葉
(72)【発明者】
【氏名】浦山 朋之
(72)【発明者】
【氏名】萩原 裕充
(72)【発明者】
【氏名】山口 和博
(72)【発明者】
【氏名】本間 勇人
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA05
3G024AA72
3G024BA01
3G024BA20
3G024EA01
3G024FA14
(57)【要約】
【課題】路上など専用の設備が不足した場所でも容易にメンテナンスを行うことが可能なエンジン及びこのエンジンを備えた車両を提供する。
【解決手段】本開示の一形態におけるエンジンは、シリンダ上部をカバーするロッカカバーがシリンダ上部部材に締結されたエンジンにおいて、前記シリンダ上部部材の端部に設けられた底面支持部と、前記底面支持部に対して旋回支点で旋回可能に支持されると共に、前記ロッカカバーの底面および側面の一部少なくとも支持する旋回支持部と、を含み、前記ロッカカバーが前記旋回支持部で支持されて旋回することで前記ロッカカバーと前記シリンダ上部部材との互いの対向面が重ねられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ上部をカバーするロッカカバーがシリンダ上部部材に締結されたエンジンにおいて、
前記シリンダ上部部材の端部に設けられた底面支持部と、
前記底面支持部に対して旋回支点で旋回可能に支持されると共に、前記ロッカカバーの底面および側面の一部少なくとも支持する旋回支持部と、を含み、
前記ロッカカバーが前記旋回支持部で支持されて旋回することで前記ロッカカバーと前記シリンダ上部部材との互いの対向面が重ねられる、
エンジン。
【請求項2】
前記ロッカカバーと前記シリンダ上部部材との間に介在するロッカカバーガスケットをさらに含み、
前記ロッカカバーガスケットが介在した状態で前記ロッカカバーと前記シリンダ上部部材との互いの対向面が重ねられて固定される、
請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記底面支持部は、
前記シリンダ上部部材の鉛直下端から外側へ向かって延在する底面板と、
前記旋回支持部が旋回可能に当該旋回支持部と連結される旋回支点部と、
を含んで構成されてなる、
請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記旋回支持部は、
前記ロッカカバーが内側面に接触可能な長辺部と、
前記底面板に形成された収容空間に収容可能な短辺部と、
を備えたL字型板材で構成されてなる、
請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のエンジンを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば水平対向型のエンジンとこのエンジンを搭載する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンは、吸気ポートを開閉する吸気バルブと排気ポートを開閉する排気バルブとがそれぞれ設けられたシリンダヘッドを具備する。シリンダヘッドは、カムシャフトやロッカーアームを含む公知の動弁機構を備える。このカムシャフトが回転駆動されることで、上記した吸気バルブや排気バルブが開閉制御される。
【0003】
ここで、例えば特許文献1に例示する水平対向型のエンジン(以下、「水平対向エンジン」とも称する)においては、上記したカムシャフトはカムキャリアに保持されるとともに、このカムキャリアは車幅方向の両端部がロッカカバーで覆われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-138277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したとおり、水平対向エンジンではクランクシャフトを中心として左右両側にそれぞれシリンダブロックが配置される。従って水平対向エンジンでは、車体(フロントインサイドパネルなど)とロッカカバーとのクリアランスが非常に狭くなり、例えば路上など工場外でのメンテナンスを行う際に工具を出し入れしにくいという課題が存在する。
【0006】
なお一般的にエンジンが搭載されるエンジンルームは可能な限りの省スペース化が要求されることから、上述した課題は、水平対向エンジンに限られずV型エンジンなど他の形式のエンジンにも当てはまると言える。
【0007】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、例えば路上など専用の設備が不足した場所でも容易にメンテナンスを行うことが可能なエンジン及びこのエンジンを 備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示の一形態におけるエンジンは、シリンダ上部をカバーするロッカカバーがシリンダ上部部材に締結されたエンジンにおいて、前記シリンダ上部部材の端部に設けられた底面支持部と、前記底面支持部に対して旋回支点で旋回可能に支持されると共に、前記ロッカカバーの底面および側面の一部少なくとも支持する旋回支持部と、を含み、前記ロッカカバーが前記旋回支持部で支持されて旋回することで前記ロッカカバーと前記シリンダ上部部材との互いの対向面が重ねられる。
【0009】
また上記課題を解決するため、本開示における車両は、この本開示によるエンジンを搭載する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、例えば専用の設備が不足した場所でも容易にメンテナンスを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る車両のエンジンを示す概略図である。
図2】本実施形態のロッカカバーとカムキャリアとの組み付け構造を示す模式図である。
図3】実施形態のロッカカバーをカムキャリアに組み付ける際の状態遷移を示す模式図である。
図4】実施形態のロッカカバーをカムキャリアに組み付ける際における両者の位置関係を示す模式図(その1)である。
図5】実施形態のロッカカバーをカムキャリアに組み付ける際における両者の位置関係を示す模式図(その2)である。
図6】実施形態のロッカカバーが底面取付部に載置された以降の状態遷移を示す模式図(その1)である。
図7】実施形態のロッカカバーが底面取付部に載置された以降の状態遷移を示す模式図(その2)である。
図8】実施形態のロッカカバーが底面取付部に載置された以降の状態遷移を示す模式図(その3)である。
図9】実施形態に対する他例に係る車両のエンジンを示す概略図である。
図10】実施形態に対する更なる他例に係る車両のエンジンを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本開示を実施するための好適な実施形態について説明する。かかる実施形態に示される寸法、材料、その他具体的な数値等は、本開示の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除いて本開示を限定するものではない。また本開示に直接関係のない要素や構造に関する図示は適宜省略する場合がある。さらに以下で詳述する構成以外のエンジン構成については、例えば特開2019-138277号公報などに記載された水平対向エンジンを含む公知の部材や構造を適宜補完して実施することができる。
【0013】
[エンジン100]
以下、本開示における実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に、本開示の一実施形態であるエンジン100を示す。なお以下では、車両の車幅方向をX方向、車長方向をY方向、および車高方向をZ方向と便宜的に定義して説明するが、本開示は上記した定義に限定されるものではない。
【0014】
図1から理解されるとおり、本実施形態のエンジン100は、クランク軸60を中心として車幅方向(X方向)に一対のシリンダブロック50が対向して配置された水平対向エンジンである。より具体的にエンジン100は、クランク軸60を中心として一方のシリンダバンクに設けられる第1シリンダブロック50Aと、他方のシリンダバンクに設けられる第2シリンダブロック50Bと、を有している。
【0015】
それぞれのシリンダブロック50には、それぞれ公知のシリンダボア及びピストンが収容される。このピストンには、公知のコネクティングロッドを介してクランク軸60が連結されている。各シリンダブロックには、吸気側と排気側に設けられた公知の動弁機構をそれぞれ備えたシリンダヘッド40(第1シリンダヘッド40A及び第2シリンダヘッド40B)が組み付けられている。かようなシリンダヘッド40は、本実施形態においてシリンダブロック50の上方に設置される「シリンダ上部部材」の少なくとも一部を構成する。
【0016】
同図から明らかなように、このシリンダヘッド40には燃焼室に連通する吸気ポートが形成されると共に、この吸気ポートを開閉する公知の吸気バルブが組み付けられている。同様にシリンダヘッド40には燃焼室に連通する排気ポートが形成されると共に、この排気ポートを開閉する公知の排気バルブが組み付けられている。
【0017】
上記した第1シリンダヘッド40Aの上面(水平対向エンジンの場合は車幅方向外側)には、それぞれ公知の吸気バルブや排気バルブを駆動する吸気カムや排気カムを備えたカムシャフト(不図示)を収容する第1カムキャリア20A(カムキャリア20)が配置される。同様に、第2シリンダヘッド40Bの上面には、それぞれ公知の吸気バルブや排気バルブを駆動する吸気カムや排気カムを備えたカムシャフト(不図示)を収容する第2カムキャリア20B(カムキャリア20)が配置される。かようなカムキャリア20も、本実施形態において上記した「シリンダ上部部材」の少なくとも一部を構成する。
【0018】
<ロッカカバーの組み付け構造>
図1に示すように、クランク軸60を中心として車幅方向の左右に配置された一対のカムキャリア20の上面(水平対向エンジンの場合は車幅方向外側)には、それぞれカムキャリア20をカバーするロッカカバー10(第1ロッカカバー10A及び第2ロッカカバー10B)がそれぞれ設けられている。従って図1から理解できるとおり、本実施形態におけるロッカカバー10は、エンジン100の側面をカバーする部材として機能している。
【0019】
なお本実施形態では、図1に例示するように、シリンダブロック50の上方に配置されたシリンダヘッド40の上面にカムキャリア20が設けられると共に、更にこのカムキャリア20の上面にロッカカバー10が設けられている。すなわち本実施形態では、シリンダ上部部材としてのカムキャリア20とシリンダヘッド40は、互いに別個の部材で構成されている。しかしながら本実施形態のシリンダブロック50の上方に配置されるシリンダ上部部材は、上記した形態に限定されず、例えば図9に例示するエンジン110のようにカムキャリア20がシリンダヘッド40に内蔵されたシリンダ上部部材として構成される形態であってもよい。あるいは図10に例示するエンジン120のように、本実施形態のシリンダ上部部材は、カムキャリア20がシリンダヘッド40とロッカカバー10とで覆われるように構成された形態であってもよい。
以下、かようなシリンダ上部部材の一例として、図1に示したカムキャリア20とシリンダヘッド40が別個の部材で構成されたシリンダ上部部材を用いて説明を継続する。
【0020】
上述したとおり、特許文献1を含む従来のロッカカバーは、カムキャリアの周縁をボルト締めすることで、このカムキャリアに固定されていた。図1からも理解されるとおり、特に水平対向エンジンの場合には車幅方向に幅広なエンジン構成となるため、必然的にロッカカバーと車体との間隙は狭小となってしまう。従って、例えばメンテナンス時にはこの間隙に対して工具を挿入することが必要となるが、これには熟練を要することから手軽にメンテナンスし難いという課題を有していた。
【0021】
これに対して本開示におけるエンジン100では、ロッカカバー10が後述する旋回支持部32で支持されて旋回することで、ロッカカバー10とカムキャリア20との互いの対向面が重ねられた上で固定される。従って本開示によれば、例えば上記した狭い間隙の中に工具を挿入してロッカカバー下側のボルトを抜き差しする必要が大幅に軽減され、簡易迅速にロッカカバーをカムキャリアに組付けることが可能となっている。
【0022】
以下、各図を参照して本開示におけるカムキャリア20に対してロッカカバー10を締結する態様を詳細に説明する。なお、以下では、一例として、シリンダ上部をカバーする一方のシリンダバンク側における第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aにおける構造を説明する。しかしながら本開示は上記に限られず、他方のシリンダバンク側における第2ロッカカバー10B及び第2カムキャリア20Bにも同様の構造を採用してもよい。
【0023】
図1及び図2から理解されるとおり、本実施形態の第1カムキャリア20Aは、第1ロッカカバー10Aの底面を保持しながら当該第1ロッカカバー10Aを旋回させて第1カムキャリア20Aの対向面と接触させる底面取付部30を備えている。
【0024】
具体的に図2に示すように、本実施形態の底面取付部30は、第1カムキャリア20Aの端部(水平対向エンジンの場合は下端側)に設けられた底面支持部31と、この底面支持部31に対して旋回支点部31bで旋回可能に支持されると共に第1ロッカカバー10Aの底面および側面の一部少なくとも支持する旋回支持部32と、を含んで構成されている。
【0025】
本実施形態の底面取付部30は、図1図3などに示すように第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aとが組み付けられるように、第1カムキャリア20Aのうち鉛直下端に固定される。カムキャリア20に対する底面取付部30の固定手法としては、例えば溶接やボルト締めなど公知の種々の固定手法を適用してもよい。
【0026】
図2及び図3などから理解されるとおり、本実施形態の底面支持部31は、前記した第1カムキャリア20Aの鉛直下端から外側(図2などに示すように水平対向エンジンの場合は車幅方向(X方向)外側)へ向かって延在する底面板31aと、上記した旋回支持部32が旋回可能に当該旋回支持部32と連結される旋回支点部31bと、を含んで構成されている。
【0027】
図2などに示すように、底面板31aにおける旋回支点部31bの設置位置は、底面板31aの先端部であることが好ましい。かような旋回支点部31bの具体的な構造としては、特に制限はなく、旋回支持部32を軸支して回転可能に支持できる軸受け機構など公知の支持構造を適用してもよい。
【0028】
同様に図2及び図3などから理解されるとおり、本実施形態の旋回支持部32は、第1ロッカカバー10Aが内側面32a1に接触可能な長辺部32aと、底面板31aに形成された収容空間(不図示)に収容可能な短辺部32bと、を備えている。
【0029】
一例として、旋回支持部32は、上記した長辺部32aと短辺部32bとが一体で成形された側面視(図2に示す方向から見た場合)がL字状のL字型板材で構成されている。しかしながら本実施形態は上記に限られず、長辺部32aと短辺部32bとが溶接などの公知の締結手段で結合された複合素材のL字型板材を適用してもよい。
【0030】
なお底面取付部30は、底面支持部31の底面板31aと、旋回支持部32の短辺部32bと、を連結する弾性部材33をさらに有していてもよい。弾性部材33は、旋回支持部32にロッカカバー10が載置されていないときに旋回支持部32の長辺部32aが車幅方向外側に開くように傾斜させる機能を有している。かような弾性部材33の具体例としては、例えばバネなど公知の弾性手段が例示できる。
【0031】
このように本実施形態では、旋回支持部32が第1ロッカカバー10Aを保持しながら旋回することで第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aとが対向しながら接触する。従って本実施形態の底面板31aには、上記した旋回の時に短辺部32bが底面板31a内に収容される収容空間(不図示)が設けられている。
【0032】
なお上記した底面支持部31及び旋回支持部32の材質については、第1ロッカカバー10Aを長期間保持し得る限りにおいて特に制限はなく、例えばアルミニウムや鋼材など公知の金属材料を適用してもよい。
【0033】
また、図2などに示すように、本実施形態のエンジン100は、第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aとの間に介在するロッカカバーガスケットGTをさらに含むことが好ましい。これによりカムキャリア20内の気密性を確保しながらロッカカバー10をカムキャリア20に組み付けることが可能となっている。
【0034】
図2に示すように、ロッカカバーガスケットGTは、一例として、第1ロッカカバー10Aの締結面10A側においてロッカカバー10の外縁に沿って形成されたガスケット取付溝11に設置される。そしてこのロッカカバーガスケットGTが介在した状態で、第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aとの互いの対向面が重ねられて固定される。
【0035】
なお、本実施形態の底面取付部30は、第1カムキャリア20Aに複数設けられていてもよい。より具体的には、図4などに示すように、第1カムキャリア20Aの下端において車長方向に沿って所定の間隙を有して3つの底面取付部30が設けられている。本実施形態では3つの底面取付部30が例示されているが、本実施形態のエンジン100は、1つの底面取付部30を備えていてもよいし、3つ以外の任意の複数の底面取付部30を備えていてもよい。
【0036】
さらに図4などに示すように、第1ロッカカバー10Aのうち長辺部32aと接触する側の接触面10A側には、底面取付部30に対する位置決めを行う位置決め用凹部12が設けられていてもよい。
【0037】
一方でこの位置決め用凹部12に対応するように、底面取付部30の長辺部32aの内側面32a1側にも位置決め用凸部34が設けられていてもよい。これにより、短辺部32bが第1ロッカカバー10Aの底面を保持する際に素早く規定の位置で第1ロッカカバー10Aと底面取付部30とを位置決めすることが可能となる。なお位置決め用凸部34は、長辺部32aの表面から出没可能となるようにバネなど公知の弾性部材を介して長辺部32aの凹部内に取り付けられていてもよい。
【0038】
なお本実施形態では、第1ロッカカバー10A側に位置決め用凹部12を設けると共に長辺部32a側に位置決め用凸部34をそれぞれ設けたが、第1ロッカカバー10A側を凸部として長辺部32a側を凹部としてもよい。
【0039】
また、底面取付部30が第1カムキャリア20Aに複数設けられている場合には、かような位置決め用凹部12は、複数の底面取付部30のうち中央側の底面取付部30C(長辺部32a)に対して設けられていてもよい。この場合、図4などに示すように、中央側の底面取付部30Cには位置決め用凹部12が設けられると共に、側方側の底面取付部30には位置決め用凹部12が省略された形態となっていてもよい。
【0040】
これにより、図6などに示すように、第1ロッカカバー10Aを降下させて底面取付部30に載置する際に車長方向のいずれの方向にズレが生じても、中央側に位置する位置決め用凹部12と位置決め用凸部34とで位置決めすることが可能となる。
【0041】
<カムキャリアに対するロッカカバーの組み付け手順(組み付け方法)>
次に図3図8を適宜参照しつつ、本実施形態のエンジン100における第1カムキャリア20Aに対する第1ロッカカバー10Aの組み付け手順について説明する。なお、以下では第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aを用いて説明するが、第2ロッカカバー10Bと第2カムキャリア20Bについても同様に適用してもよい。
【0042】
一例として、例えばドライブ中に何らかの不具合が生じて路上の安全地帯に停車した上でエンジン100のメンテナンスを行う必要が発生したとする。このとき、図2に示すように、第1ロッカカバー10Aを外してエンジン100の調整や修理など必要なメンテナンスを行った後は、第1カムキャリア20Aに対して第1ロッカカバー10Aを組み付ける作業が必要となる。
【0043】
すなわち図3及び図4などに示すように、まず作業者は、第1ロッカカバー10Aを第1カムキャリア20Aの上方から降下させて、第1ロッカカバー10Aの底面を旋回支持部32に載置させる。このとき同図に示すように、旋回支持部32は開状態となっており、旋回支持部32の長辺部32aは旋回支点部31bを基点に外側へ開いている。
【0044】
従ってこれらの図からも明らかなように、この開いた状態の長辺部32a及び短辺部32bに対して第1ロッカカバー10Aが密接するように、第1ロッカカバー10Aも上方部が外側に開いた状態(車幅方向に関して下方部よりも上方部が外側に傾斜した状態であり、この状態を「外側傾斜」とも称する)となって降下することになる。これにより、第1ロッカカバー10Aの外側の側面が長辺部32aの内側面32a1に当接することになる。
【0045】
このとき図5図6に示すように、車長方向に関しても第1ロッカカバー10Aが傾斜した状態(図示する例では第1ロッカカバー10Aのうち左側が右側よりも下方となるように傾斜している状態)で降下することも想定される。かような場合であったとしても、本実施形態では底面取付部30は車長方向に複数配置されるため、第1ロッカカバー10Aが意図せず脱落してしまうことが抑制されている。
【0046】
また、図6に示すように、車長方向に関して第1ロッカカバー10Aが傾斜した状態で底面取付部30に着座したとしても、本実施形態では第1ロッカカバー10Aを車長方向の前後いずれか適正な方向にスライドして位置決め用凹部12と位置決め用凸部34とを係合させることで、第1カムキャリア20Aに対する正規の組み付け位置に第1ロッカカバー10Aを着座させることが可能となっている。
【0047】
なお、上述のとおり底面取付部30上で第1ロッカカバー10Aが車長方向に沿ってスライドする場合もあることから、底面取付部30のうち第1ロッカカバー10Aが載置される面(底面支持部31及び旋回支持部32のうちロッカカバー10と接触するいずれかの面)に対して、ロッカカバーのスライド移動が容易となるようなローラーや回転球など公知のコンベア機構を設置してもよい。
【0048】
さらに、第1ロッカカバー10Aの底面や外側面(すなわち旋回支持部32と接触する面)に対しても、底面取付部30上でのスライド移動を円滑にするため、上記したローラーや回転球など公知のコンベア機構を設置してもよいし、低摩擦処理など公知の易滑処理を施してもよい。このように、本実施形態のエンジン100においては、第1ロッカカバー10Aの底面と外側面、及び、底面取付部30のうちロッカカバー10と接触する面の少なくとも一方に対し、ローラーや回転球など公知のコンベア機構を設けてもよいし低摩擦処理を施してもよい。
【0049】
そして外側傾斜した第1ロッカカバー10Aの底面が旋回支持部32の短辺部32bに着座した後、図7に示すように、第1ロッカカバー10Aの締結面10Aと第1カムキャリア20Aの組み付け面が接触するように、旋回支持部32が旋回支点部31bを基点に旋回する。このように第1ロッカカバー10Aが旋回支持部32で支持されて旋回するこ とで、第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aとの互いの対向面が重ねられる。
【0050】
次いで図8に示すように、第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aとの互いの対向面が重ねられた状態で、公知の締結手段(例えばボルトV)を介して第1ロッカカバー10Aの上方部が第1カムキャリア20Aに対して固定される。
【0051】
なお本実施形態では6本のボルトVを介して第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aとが締結されているが、ボルトVの本数は6本に限られず任意の数であってもよい。さらに、本例ではボルトVを介して第1ロッカカバー10Aと第1カムキャリア20Aとを締結(固定)したが、上記に代えて例えば一方に突起を設けて他方の孔部に嵌合させる形態など公知の他の締結手法を適用してもよい。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、これら実施形態や変形例に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
例えば本実施形態ではエンジン100の一例として水平対向エンジンを例示したが、上述のとおり、V型エンジンなど公知の他のエンジンに搭載されるロッカカバーとカムキャリアに対して本開示の締結構造を適用してもよい。すなわち、カムキャリアに組み付けられるロッカカバーは、必ずしも車幅方向の端部に位置する必要はなく、エンジンの上方部を覆うように設けられている形態であってもよい。
【0054】
また、エンジン100が水平対向エンジンの場合には、作業者はロッカカバーを鉛直方向に昇降させる必要がある。従ってかような場合には、ロッカカバー10のうち上部外側面を外側へ突出させて手持ち部を設けることで、作業者がロッカカバー10を把持しやすくしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
100、110 エンジン
10 ロッカカバー
11 ガスケット取付溝
12 位置決め用凹部
20 カムキャリア(シリンダ上部部材)
30 底面取付部
31 底面支持部
31a 底面板
32 旋回支持部
40 シリンダヘッド(シリンダ上部部材)
50 シリンダブロック
60 クランク軸
GT ロッカカバーガスケット

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10