(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039969
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】車室内の容積を縮小可能な容積縮小装置を備えた車両
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240315BHJP
B60R 21/16 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B60H1/00 101Z
B60R21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144748
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤野 慎
【テーマコード(参考)】
3D054
3L211
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA12
3D054AA16
3D054AA22
3D054CC50
3D054EE10
3D054EE26
3D054FF20
3L211BA01
3L211EA02
3L211EA56
(57)【要約】
【課題】異常温度環境下における乗員の生命維持又は延命を実現可能な車両を提供する。
【解決手段】本開示のある観点によれば、外気温を少なくとも検出可能な外気温センサーと、車室内における乗員の位置を検出可能な着座位置検出センサーと、前記車室内の容積を縮小する容積縮小装置と、前記容積縮小装置を制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、検出された前記外気温と前記車室内における前記乗員の位置とに基づいて、前記容積縮小装置を駆動して前記車室内における容積を縮小する車両が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気温を少なくとも検出可能な外気温センサーと、
車室内における乗員の位置を検出可能な着座位置検出センサーと、
前記車室内の容積を縮小する容積縮小装置と、
前記容積縮小装置を制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置は、検出された前記外気温と前記車室内における前記乗員の位置とに基づいて、前記容積縮小装置を駆動して前記車室内における容積を縮小する、
車両。
【請求項2】
前記車室内は、前記乗員の生命維持空間としての退避領域と、前記退避領域以外の縮小領域と、に区画され、
前記容積縮小装置は、前記車室内に設けられた1又は複数のエアバッグ装置を含み、
前記制御装置は、前記縮小領域に対応して設けられた前記エアバッグ装置を作動して前記車室内の容積を縮小する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記エアバッグ装置を作動させる前に、前記乗員に対して警告音を発する制御を実行する、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記エアバッグ装置を作動させる前に、前記車室内のうち前記乗員が着座していないシートを直立させる制御を実行する、
請求項2に記載の車両。
【請求項5】
前記車室内の空調を行う空調装置をさらに含み、
前記制御装置は、
前記縮小領域に対する空調に優先して、前記空調装置を介して前記退避領域に対する空調を実行する、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車室内の空調を行う空調装置や車室内の容積を縮小可能な容積縮小装置などを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において移動手段は不可欠であり、日常において自動車などの様々な車両が路上を移動している。かような車両においては、車室内の雰囲気を快適に維持するためのエアコンディショナー(空調装置とも称する)が装備されている。また、例えば衝突時などの安全対策として、エアバッグなどの衝撃緩和装置も上記した車両に搭載されている。
【0003】
ここで、一般的な乗用車では乗員の定員が定められているものの、例えば運転手1人のみ乗車する場合など座席(シート)が満席にならない場合も多い。これに対して例えば特許文献1では、空調エリアを縮小して省エネルギー化を実現するために、送風機から送り込まれる空気によって車室の空調エリア内で膨張して所望の形状を維持する袋体を車室内に備えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した各特許文献に限らず現在の技術では未だ市場のニーズを満たしているとは言えず以下に述べる課題が存在する。
すなわち、たしかに特許文献1によれば、車室内に備えた袋体によって空調エリアを縮小することで省エネルギー化を促進できる。しかしながら、この特許文献1ではあくまでも省エネルギー化を目的としているものであって、異常温度環境下における乗員の生命維持を目的としたものではない。従って、例えば極低温時や極高温時における乗員の延命を実現するためには未だに改善の余地がある。
【0006】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、例えば極低温時などの異常温度環境下における乗員の生命維持又は延命を実現可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示のある観点によれば、外気温を少なくとも検出可能な外気温センサーと、車室内における乗員の位置を検出可能な着座位置検出センサーと、前記車室内の容積を縮小する容積縮小装置と、前記容積縮小装置を制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、検出された前記外気温と前記車室内における前記乗員の位置とに基づいて、前記容積縮小装置を駆動して前記車室内における容積を縮小する車両が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、例えば異常温度環境下において必要最小限で局所的な空調を実施することで乗員の生命維持又は延命を実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係る車両(側面視)における車室内の構成を示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る車両(上面視)における車室内の構成を示す模式図である。
【
図4】車室内における乗員の着座位置と、退避領域及び縮小領域の関係を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係る制御装置周辺の機能を説明する模式図である。
【
図6】実施形態に係る異常温度環境下における乗員の延命方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本開示の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下で詳述する以外の構成については、上記した特許文献1を含む公知の空調装置や衝撃緩和装置を備えた車両の要素技術や構成を適宜補完しながら実施してもよい。
【0011】
<車両100>
図1~
図3を参照しつつ、本実施形態に係る車両100の構成を説明する。
図1などに示すように、本実施形態の車両100は、車室10を含む公知の車体(ボディ)を有する。かような車体には、例えば
図2に示すように、それぞれ後述する外気温センサーSR
1(センサー類20)や制御装置50などが搭載されている。また、車室10内には、例えば
図3に示すように、それぞれ後述する着座位置検出センサーSR
2(センサー類20)、容積縮小装置30、および空調装置40などが配置されている。
【0012】
外気温センサーSR1は、車両100周囲における外気温を検出する機能を有して構成されている。かような外気温センサーSR1の具体例としては、上記した外気温を検出可能な限りにおいて特に制限はなく、車載される一般的な外気温センサーを適用してもよい。
【0013】
着座位置検出センサーSR2は、車室内における乗員の位置を検出する機能を有して構成されている。かような着座位置検出センサーSR2の具体例としては、乗員の着座位置を検出可能な限りにおいて特に制限はなく、例えば特開2017-178153号公報に開示された着座センサーを適用してもよい。なお着座位置検出センサーSR2として本実施形態ではシートに埋没されたセンサーを用いているが、これに代えて、着座位置検出センサーSR2として車室内を撮像可能な車載カメラを用いて乗員の位置を検出する態様であってもよい。
【0014】
容積縮小装置30は、制御装置50の制御の下で、車室10内の容積を縮小する機能を有して構成されている。
図2及び
図3などに示すように、本実施形態の容積縮小装置30は、車室10内において前側席11(右前席11A、左前席11B)と後側席12(右後席12A、左後席12B)にそれぞれ対応して4つ設けられている。従って、制御装置50は、これらの座席のうちの任意の位置に配置された容積縮小装置30を独立して駆動することが可能となっている。なお上記した座席は4名用であるが、かような座席位置は車両100の定員に応じて適宜設定が可能であり、上記した4名用に限られずこの座席数に応じて容積縮小装置30の数も調整可能である。
【0015】
かような容積縮小装置30の具体例としては、例えば車室10内に配備される特許文献1に開示された袋体などを適用してもよい。また、本実施形態の容積縮小装置30は、制御装置50の制御の下で駆動される、車載されるエアバッグ(AB)装置などの公知の衝撃緩和装置を適用してもよい。
以下では、容積縮小装置30の一例として上記した1又は複数のエアバッグ装置を例にして説明を継続する。
図2及び
図3に示すように、本実施形態のエアバッグ装置は、上記した座席にそれぞれ対応して、右前席AB31、左前席AB32、右後席AB33、および左後席AB34を含んで構成されている。なお、図示された本実施形態のエアバッグ装置の配置は一例であって、各座席に対応してエアバッグが設けられていれば特にその設置場所に制限はない。この場合、エアバッグ装置は、エアバックの膨張状態を維持することができるようにする機構を備えている。
【0016】
空調装置40は、制御装置50の制御の下で、車室10内の空調を行う機能を有して構成されている。後述するように、本実施形態の空調装置40は、車室10内において右前席11A、左前席11B、右後席12A、及び左後席12Bにそれぞれ対応して空調が可能なように構成されている。
制御装置50は、これらの座席のうちの任意の位置に配置された空調装置40を駆動することが可能となっている。従って本実施形態では、車室10内において、上記した座席にそれぞれ対応して、空調装置40の吹出口(右前席口41、左前席口42、右後席口43、および左後席口44)がそれぞれ配置されている。
【0017】
制御装置50は、図示しない公知の種々の車載装備や上記した容積縮小装置30及び空調装置40などを制御する機能を有して構成されている。より具体的に本実施形態の制御装置50は、一つ又は複数のプロセッサ(CPU(Central Processing Unit))と、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えて構成されている。かような制御装置50は、車両に搭載される公知のECU(Electronic Control Unit)の1つとして構成されていてもよい。なお制御装置50の動作に必要なメモリは、この制御装置50に内蔵されていてもよいし、制御装置50とは別体として後述する記憶装置MDの1つとして設けられる形態であってもよい。
【0018】
また
図5に示すように、制御装置50は、テレマティクスユニットなど公知の通信装置CDを介して外部ネットワークNTと電気的に接続されていてもよい。さらに制御装置50には、上記した通信装置CDの他にも、センサー類20、記憶装置MDおよび提示装置DDが電気的に接続されていてもよい。
【0019】
このうち本実施形態のセンサー類20は、上記した外気温センサーSR1や着座位置検出センサーSR2の他に、例えば速度センサー、加速度センサー、あるいは車両の位置情報を計測可能な測位センサーなど公知の種々の車載センサーを含んで構成されている。
【0020】
記憶装置MDは、例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の公知のメモリMRと、ハードディスク等の公知のハードディスクHDDで構成されていてもよい。ただし、記憶装置MDの構成は、上記の構成に限定されず、ハードディスクHDDが省略されていてもよいし、本実施形態の制御装置50の一部として組み込みれていてもよい。また記憶装置MDには、制御装置50により実行されるコンピュータプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメータ、センサー類20などからの検出データ、演算結果等の情報が記憶されてもよい。
【0021】
提示装置PDは、例えば車載される公知のスピーカーSPと、例えば液晶ディスプレイなどの公知のディスプレイDPと、を含んで構成されている。制御装置50は、この提示装置PDを介して、例えば車両100の乗員に対して延命モードの要否伺いを提示してもよい。かような延命モードの要否伺いの提示態様としては、例えばスピーカーSPを介して音声によって提示してもよいし、ディスプレイDPを介して映像によって提示してもよい。
【0022】
後述するとおり、本実施形態の制御装置50は、検出された外気温と車室10内における乗員の位置とに基づいて、前記した容積縮小装置30を駆動して車室10内における容積を縮小する機能を有して構成されている。この制御装置50が実行する機能は、上記したコンピュータプログラムの形態で上記した記憶装置MDや不図示の外部サーバに保存され得る。
【0023】
<車室内における退避領域と縮小領域>
次に
図4を用いて、本実施形態の退避領域10Aと縮小領域10Bについて説明する。図示から理解されるとおり、本実施形態の制御装置50は、車室10内を、車両100に搭乗する乗員の生命維持空間としての退避領域10Aと、この退避領域10A以外の縮小領域10Bと、で区画することができる。例えば
図4に示す状態では、右前席11Aと左後席12Cに乗員(図示では黒丸で略して表示)がそれぞれ着座していることから、制御装置50は、上記した着座位置検出センサーSR
2の検出結果に応じて、この右前席11Aと左後席12Bを上記した退避領域10Aに設定し得る。一方で制御装置50は、
図4に示す状態では、乗員が着座していない左前席11B及び右後席12Aをそれぞれ上記した縮小領域10Bに設定し得る。
【0024】
なお上記した例では着座位置検出センサーSR2の検出結果に応じて退避領域10Aと縮小領域10Bを自動的に設定しているが、この態様に限られない。すなわち、例えば後側席12を退避領域10Aと予め設定しておき、制御装置50は、延命モードの実行が必要な環境下において、車室10内に存する乗員を退避領域10A(本例では後側席12)に誘導する制御を行ってもよい。
【0025】
<制御装置50の詳細な構成>
次に
図5を用いて、本実施形態における制御装置50の機能ブロックについて説明する。
同図に示すように、制御装置50は、外気温計測部50A、延命モード判定部50B、乗員着座位置検出部50C、容積制御部50D、および提示制御部50Eを含んで構成されている。これらの各部は、CPU等のプロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能であってよい。
【0026】
外気温計測部50Aは、上記した外気温センサーSR1を介して、車両100周囲の外気温を計測する機能を有して構成されている。
延命モード判定部50Bは、後述する異常温度環境下など外気温が異常範囲に入る状況において、上記した提示装置PDを介して車両100の乗員に対して延命モードの要否伺いを行う機能を有して構成されている。ここで上記した「異常範囲」としては、上記した極低温時や極高温時などの異常温度環境下における外気温範囲が挙げられる。このうち例えば極低温時の温度としては、例えば雪山で遭難した場合などで長時間の待機によって乗員の生命維持に懸念が生じるごとき状況下での気温を言い、例えば氷点下10℃以下などが例示できる。また、上記した極高温時の温度としては、例えば真夏の山岳地帯などで長時間の待機によって乗員の生命維持に懸念が生じるごとき状況下での気温を言い、例えば摂氏35℃以上などが例示できる。
【0027】
乗員着座位置検出部50Cは、上記した着座位置検出センサーSR2を介して、車両100の車室10内における乗員の着座位置を検出する機能を有して構成されている。
容積制御部50Dは、上記した容積縮小装置30を介して、車室10内における座席位置に対応した任意の空間を縮小する機能を有して構成されている。
提示制御部50Eは、上記した提示装置PDを介して、上記した延命モードの要否伺いを含む必要な情報を乗員に対して提示する機能を有して構成されている。また、提示制御部50Eは、例えば延命モードの実行下において、車載されたバッテリの状態(残存容量や駆動可能時間など)や空調状態などを含む車両100における種々のステータスを提示してもよい。
【0028】
<異常温度環境下における乗員の生命維持又は延命方法>
次に
図6も参照しつつ、本実施形態の制御装置50によって実行可能な異常温度環境下における車両100に存する乗員の生命維持又は延命方法について説明する。なお以下では、異常環境の一例として、車両100が氷点下20℃の冬山で何らかの原因でスタックして停車した場合を例にして説明するが、異常環境の他例として極高温環境下についても同様に適用できる。
【0029】
また、以下に示す例においては、車室10内における乗員の着座位置に応じて退避領域10Aと縮小領域10Bが自動で設定される例ではなく、車室10内のうち後側席12が予め退避領域10Aと設定されている場合を例にして説明する。なお本例において、上記に代えて、車室10内における乗員の着座位置に応じて退避領域10Aと縮小領域10Bが自動で設定される態様であってもよい。
【0030】
まずステップ1において、制御装置50の外気温計測部50Aは、上記した外気温センサーSR1を介して外気温を取得し、この取得した外気温が異常範囲に入るか否かを判定する。本例では外気温が氷点下20℃であることから、続くステップ2へ移行して、制御装置50の延命モード判定部50Bは、上記した提示装置PDを介して乗員に対して延命モードの要否伺い処理を実行する。一方で例えば外気温が異常範囲でない場合には、ステップ7に移行して、システムがOFFとなっていないときにはステップ1へ戻る処理が実行される。
【0031】
なお本実施形態ではステップ2において乗員に対して延命モードの要否伺いを行っているが、例えばステップ1で外気温が異常範囲に入る場合にはステップ2を省略して自動的にステップ3へ移行するようにしてもよい。
【0032】
そしてステップ2で延命モードが要となった場合、続くステップ3において、制御装置50の乗員着座位置検出部50Cは、上記した着座位置検出センサーSR
2を介して、車室10内における乗員の着座位置を検出する。一例として、例えば
図4に示すように車両100に2名の乗員が右前席11Aと左後席12Cに着座している場合には、乗員着座位置検出部50Cは、それぞれ右前席11Aと左後席12Cに乗員が着座していると検出できる。
【0033】
次いでステップ4において、制御装置50の乗員着座位置検出部50Cは、車両100内の乗員が縮小領域10Bに存在するか否かを判定する。本例では、右前席11Aにも乗員が存在するため、乗員着座位置検出部50Cは、縮小領域10Bに乗員が存在すると判定する。するとステップ5Aにおいて、制御装置50の提示制御部50Eは、上記した提示装置PDを介して、右前席11Aの乗員に対して後方側の座席への移動を促す警告処理を実行する。そしてステップ5Aの警告処理を行った後は、例えば所定時間経過した後で、再びステップ3に戻って乗員の着座位置検出を再度実行する。
【0034】
一方で、ステップ4において、例えば乗員が縮小領域10Bにそもそも存在しない場合や退避領域10Aへ移動した場合などは、続くステップ5Bへ移行して車室10内の容積縮小処理が実行される。
すなわちステップ5Bにおいて、制御装置50の容積制御部50Dは、上記した容積縮小装置30を駆動して車室10内における容積を縮小する処理を実行する。本例では前側席11(右前席11Aおよび左前席11B)が縮小領域10Bに設定されているため、容積制御部50Dは、前側席11に対応する右前席AB31及び左前席AB32を駆動して車室10内の容積を縮小する。このように本実施形態の制御装置50は、縮小領域10Bに設けられたエアバッグ装置を作動して車室10内の容積を縮小することができる。
【0035】
このとき制御装置50の提示制御部50Eは、前記したエアバッグ装置を作動させる前に、車両100内の乗員に対して警告音を発する制御を実行してもよい。これにより、意図せず乗員に対してエアバッグが衝突してしまうことなどが抑制できる。また、提示制御部50Eは、前記したエアバッグ装置を作動させる前に、例えば「5分後にエアバッグ装置が作動する」などの事前情報や何らかの警報音を乗員に対して伝える制御を行ってもよい。さらに提示制御部50Eは、前記したエアバッグ装置を作動させる前に、乗員に対して安全な姿勢を取るなど警戒を促す情報を伝える制御を行ってもよい。
【0036】
さらに制御装置50は、前記したエアバッグ装置を作動させる前に、車室10内のうち乗員が着座していないシート(すなわち縮小領域10Bに存するシート)を隔壁として直立させる制御を実行してもよい。これにより、退避領域10Aに存する乗員からエアバッグの衝撃が及ぶのを防ぐことができ、退避領域10Aと縮小領域10Bとの区画分離が容易となると共に、縮小領域10B内のスペースをエアバッグによってより効率的に縮小することなども可能となる。
【0037】
また、制御装置50は、容積縮小装置としてエアバッグ装置を適用している場合には、エアバッグ装置の作動前に車内での爆発音を低減するため車両100の窓を開ける制御を実行してもよい。さらに制御装置50は、縮小領域10Bに対する縮小処理(エアバッグの作動)が完了した後は、作動前に開けた上記の窓を閉める制御を実行してもよい。
【0038】
そしてステップ5Bで車室10内の容積縮小処理が実行された後、続くステップ6において、制御装置50は、乗員が存する退避領域10Aで空調装置40を介した空調処理を実行する。より具体的に制御装置50は、縮小領域10Bに対応する右前席口41及び左前席口42の吹出口は閉鎖すると共に、退避領域10Aに対応する後側席12(右後席口43および左後席口44)の吹出口を開放してエアコンディショニングを実行する。すなわち本実施形態では、車両100の車室10内において、縮小領域10Bに対する空調能力は実質的にゼロに近い状態で抑制されつつ、退避領域10Aへ優先して空調装置40の空調能力を振り分けることが可能となる。
【0039】
このように本実施形態の制御装置50は、縮小領域10Bに対する空調に優先して、空調装置40を介して退避領域10Aに対する空調を実行することができる。これにより、異常温度環境下においても乗員の周囲を必要最小限のスペースに区切り、出来るだけ長い時間で適切な空調を実行することができ、乗員の生命維持または延命に大きく資することが可能となっている。
【0040】
上記した実施形態は本開示の好適な一例であって、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて実施形態の各要素を適宜組み合わせて新たな構造や制御を実現してもよい。
本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0041】
10 車室
20 センサー類
30 容積縮小装置
40 空調装置
50 制御装置