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特開2024-39973粉末冶金用粉、粉末冶金焼結部品および粉末冶金焼結部品の製造方法
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  • 特開-粉末冶金用粉、粉末冶金焼結部品および粉末冶金焼結部品の製造方法 図1
  • 特開-粉末冶金用粉、粉末冶金焼結部品および粉末冶金焼結部品の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039973
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】粉末冶金用粉、粉末冶金焼結部品および粉末冶金焼結部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/12 20220101AFI20240315BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240315BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20240315BHJP
   C22C 1/10 20230101ALI20240315BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20240315BHJP
   B22F 3/10 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
B22F1/12
B22F1/00 U
C22C33/02 103A
C22C1/10 Z
B22F1/14 500
B22F3/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144753
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 正英
【テーマコード(参考)】
4K018
4K020
【Fターム(参考)】
4K018AA24
4K018AB10
4K018AC01
4K018BA14
4K018BC12
4K018CA02
4K018CA11
4K018DA01
4K018FA06
4K018FA08
4K020AA21
4K020BB29
(57)【要約】
【課題】鉄基粉末冶金用粉において、焼結部品として必要な硬さと同時に、製造におけるCO削減の両立が可能な粉末冶金用粉を提供する。
【解決手段】純鉄粉及び有機セラミックス粉を含有する粉末冶金用粉。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純鉄粉及び有機セラミックス粉を含有する粉末冶金用粉。
【請求項2】
前記純鉄粉が還元鉄粉である請求項1に記載の粉末冶金用粉。
【請求項3】
前記有機セラミックス粉を2.1質量%以上4.2質量%以下含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる請求項1に記載の粉末冶金用粉。
【請求項4】
前記有機セラミックス粉は米糠を原料とする多孔質炭素である請求項1に記載の粉末冶金用粉。
【請求項5】
前記有機セラミックス粉は粒径(JIS Z 8801のふるい法による粒径)が150μm以下の粒子である請求項1に記載の粉末冶金用粉。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末冶金用粉を成形後、焼結して得られる粉末冶金焼結部品。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末冶金用粉を30MPa以上200MPa以下の成形圧力にて成形し、得られた成形体を焼結することを特徴とする粉末冶金焼結部品の製造方法。
【請求項8】
前記成形体を1000℃以上1150℃以下の温度で焼結することを特徴とする請求項7記載の粉末冶金焼結部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末冶金用粉、粉末冶金焼結部品および粉末冶金焼結部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1)還元鉄粉70質量%以上、添加金属粉29質量%以下、2)Feの水アトマイズ粉70質量%以上、添加金属粉29質量%以下、3)Fe合金の水アトマイズ粉80質量%以上、添加金属粉19質量%以下、上記1)~3)のいずれかと、カーボン粉:0.4~1.0質量%と、潤滑剤:0.1質量%以下とを混合した粉末を準備する工程、その混合粉を金型潤滑成形する工程、金型潤滑成形して得られた成形体を切削または研削する工程、切削または研削した成形体を焼結する工程を含む焼結部品の製造方法が記載されている。
特許文献2には、鉄基粉末および炭素供給成分を含有する粉末冶金用混合粉末であって、前記炭素供給成分は、黒鉛粉末およびカーボンブラックを、黒鉛粉末:カーボンブラック=25~85質量部:75~15質量部の範囲内で含有すると共に、前記混合粉末の遊離カーボン量は30質量%以下であり、且つ、490MPaの成形圧力で圧粉体に成形したときの密度が6.70g/cm以上であり、前記カーボンブラックは、フタル酸ジブチル吸収量:60mL/100g以下で、且つ、窒素吸着比表面積:50m2/g以下を満足するものであることを特徴とする粉末冶金用混合粉末が記載されている。
特許文献3には、複数種類の材料を焼結して複合化された複合材料によって形成されており、被接触部と摺動することによって集電する集電部材であって、米ぬかを原料とする炭素材料であるRBセラミックス粉体及び銅を含有し、前記RBセラミックス粉体の配合量が1~10mass%であること、を特徴とする集電部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-323939号公報
【特許文献2】特許第4912188号公報
【特許文献3】特許第5246569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄を主体とする粉末冶金焼結体(鉄基粉末冶金焼結体)は、主成分となる鉄基粉末に必要な潤滑材等を混合して、所定形状の金型で加圧成形し、これを鉄の融点以下の温度にて焼結して必要な強度を有する焼結体を得る。得られた焼結体部品は、必要な強度を有することに加え、形状および寸法精度が高いために機械加工が大幅に省略できるためコストダウンが期待できるため、サスペンション系等の自動車部品、家庭電機製品など大量生産が実施される分野に広く採用されてきた。焼結体には硬度向上等を目的として、焼結体の原料である鉄基粉末に対して、コークス由来の炭素材が添加されている。
一方、地球環境の保護の観点、温暖化対策のため、二酸化炭素(CO)排出規制の取り組みが行われ、カーボンニュートラル特性をもつ材料が要望されている。例えば、鉄基粉末の冶金焼結体では、従来使用されてきた焼結体と同程度の硬さ等の性能を維持しながら、製造時に発生するCOが削減できる技術が求められている。
本発明は、鉄基粉末冶金用粉において、焼結部品として必要な硬さと同時に、製造におけるCO削減の両立が可能な粉末冶金用粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明の請求項1の発明は、純鉄粉及び有機セラミックス粉を含有する粉末冶金用粉である。
請求項2の発明は、前記純鉄粉が還元鉄粉である請求項1に記載の粉末冶金用粉である。
請求項3の発明は、前記有機セラミックス粉を2.1質量%以上4.2質量%以下含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる請求項1に記載の粉末冶金用粉である。
請求項4の発明は、前記有機セラミックス粉は米糠を原料とする多孔質炭素である請求項1に記載の粉末冶金用粉である。
請求項5の発明は、前記有機セラミックス粉は粒径(JIS Z 8801のふるい法による粒径)が150μm以下の粒子である請求項1に記載の粉末冶金用粉である。
請求項6の発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末冶金用粉を成形後、焼結して得られる粉末冶金焼結部品である。
請求項7の発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末冶金用粉を30MPa以上200MPa以下の成形圧力にて成形し、得られた成形体を焼結することを特徴とする粉末冶金焼結部品の製造方法である。
請求項8の発明は、前記成形体を1000℃以上1150℃以下の温度で焼結することを特徴とする請求項7に記載の粉末冶金焼結部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、コークス由来の炭素材を使用する場合に比較して、製造時に発生するCOが削減でき、得られる焼結部品の硬さが向上した粉末冶金用粉を提供することができる。
請求項2の発明によれば、成形性、焼結性良好な粉末冶金用粉を提供することができる。
請求項3の発明によれば、実用的な硬さの焼結部品を提供することができる。
請求項4の発明によれば、白米副産物として廃棄されてきたものを再利用し、価値向上を図ることができる。
請求項5の発明によれば、粉末冶金用粉の均一性を向上させ、均一性が高められた焼結部品を得ることができる。
請求項6の発明によれば、製造時に発生するCOが削減できる粉末冶金焼結部品を提供することができる。
請求項7又は8の特徴によれば、好ましい焼結部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る粉末冶金焼結部品の製造方法の概要を示す概念図である。
図2】実施例1で求められた、混合粉中のRBセラミックス粉割合と焼結部品の強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。以下に示す実施形態は例示であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
本開示において、数値範囲を表す「〇〇以上〇〇以下」や「〇〇~〇〇」の記載は、特に断りのない限り、記載された上限及び下限を含む数値範囲を意味する。
【0009】
本実施形態に係る粉末冶金用粉は、鉄基粉末冶金用粉であり、純鉄粉と有機セラミックス粉を含有する。
純鉄粉は、本実施形態に係る粉末冶金用粉の主成分であり、純度が99.90%~99.95%程度、炭素含有率が0.02%以下程度までの不純物元素が少ない鉄の粉である。工業用純鉄として日本工業規格(JIS)1種に規定されているものには次の不純物が含まれている。炭素0.03%以下、ケイ素0.03%、マンガン0.01%以下、リン0.02%以下、硫黄0.02%以下、銅0.07%以下、アルミニウム0.15%以下。
純鉄粉としては、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉、電解鉄の粉等を使用することができる。なお、還元鉄粉はミルスケール(酸化鉄)をコークス等の炭化材料により還元し、次に水素雰囲気で熱処理して製造された鉄粉であり、粒子内に空孔を有する。アトマイズ鉄粉は溶鋼を高圧水で粉化・冷却し、その後水素雰囲気で熱処理して製造された鉄粉であり、粒子内に空孔は無く、通常は還元鉄粉より高純度である。また、電解鉄粉は、くず鉄を硫酸鉄の水溶液中で電気分解し、陰極側に鉄の析出反応を発生させることによって製造した鉄の粉のことである。
【0010】
本実施形態では、粉末冶金用として、成形性に優れ、焼結性が良いことから、還元鉄粉を用いることが好ましい。還元鉄粉としては、具体的には、JFEスチール株式会社製のJIP240M、JIP255M、JIP270M、JIP270MS、JIP255M-90等、DOWAエレクトロニクス株式会社製のDCC、DNC、DCC-200等を用いることができる。
【0011】
本実施形態では、従来は炭素成分として使用していたコークス由来の黒鉛に代えて、有機セラミックス粉を使用する。
有機セラミックス粉は、植物を原料とする、炭素材料からなる多孔質炭素粉末である。
原料の植物の例としては、米糠、籾殻、大豆皮、菜種粕、大豆殻、落花生の内皮、種子植物の導管側壁部分、カカオハスク焼成物等が挙げられる。原料としては、米糠、籾殻が好ましい。特に、米糠又は籾殻、又はその両方と、フェノール樹脂との混合物を焼成してなるものが好ましい。実際には、市販品である三和油脂社製のRBセラミックス(米糠由来)やRHSCセラミックス(籾殻由来)などをそのまま用いることができ、特に米糠を原料とするRBセラミックスが、自動車用部品に必要な37HV2以上の硬度を有する部品を製造できる観点で好ましい。RBセラミックスは、黒鉛の25~100倍の硬さと、14~50倍の強度を有し、気孔率が40~50%の多孔質材料である。無潤滑状態での摩擦係数μは0.13~0.2程度で、鉄鋼の1,000倍以上の耐摩耗性があり、耐食性も優れる。
【0012】
RBセラミックスは、具体的には、植物原料を脱脂した脱脂米糠などを原料とし、この原料にフェノール樹脂を混ぜて乾燥させた後に、窒素ガス雰囲気中において300℃以上~1100℃以下で炭化焼成することにより、パウダー状になった多孔性炭素粉末として得られる。フェノール樹脂のみを焼成すると硬いガラス状の炭素になり、一方、米糠のみを焼成すると空孔のある柔らかい炭素になる特徴があり、これらの混合物を焼成することで硬質の多孔質炭素が得られる。
これらのRBセラミックスなど有機セラミックスの構造は、内部を無定形炭素にして多数の空孔を有しながら周囲をガラス状炭素とする。このため、多孔質の焼結合金などと比較して、上記した通り、比摩耗量、摩擦係数ともに極めて小さく、優れた摩擦特性、摺動性を有している。
【0013】
RBセラミックスの具体的な製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。ただし、以下の製造方法はあくまでも例示であり、これに限定されるものではない。
油を抽出した脱脂米糠を50メッシュの篩に掛け通過したものを原料として用い、この脱脂米糠75質量%に、フェノ-ル樹脂[(株)ホーネンコーポレーション製 豊年レジングル-px-1600(商品名)]を熱硬化性樹脂として25質量%になるように添加し、充分混合する。次に、揮発分を除去するため、80℃に加熱しながら造粒し、4メッシュの篩を通過させる。その後、焼成炉内で窒素ガスを流しながら焼成するが、その際の昇温速度は、室温から250℃まで1.2℃/分、250℃から350℃までを1℃/分、350℃から500℃まで1.2℃/分とし、500℃で1時間保持した後、再び500℃から900℃まで2℃/分の速度で昇温し、900℃で2時間保持する。焼成後の冷却は、1.5℃/分の割合で行う。炭化した米糠を、粉砕機(アトマイザー)によって一旦粉砕した後、振盪篩によって選別して100μm以下の、目的の多孔性炭素粉末を得ることができる。
【0014】
一方、RHSCセラミックスは、籾殻とフェノール樹脂の混合物を焼成して成る多孔質炭素粉末である。基本的な特徴はRBセラミックスに準ずるが、RHSCセラミックスは、その検出元素の差異から、水分に対する膨張がRBセラミックスの約10分の1であるという特徴を有している。
【0015】
有機セラミックス粉は、粉末冶金用粉中に、1.7質量%以上5.5質量%以下含まれることが好ましい。特には、RBセラミックス粉の場合に、得られる焼結体の強度の観点から、粉末冶金用粉中に2.1質量%以上4.2質量%以下含まれ、残部が鉄および不可避的不純物からなることが好ましい。2.1質量%以上含むことにより、自動車の鉄系焼結部品の硬さとして一般に必要と考えられる37HV2以上を有する焼結体を得ることができる。一方、含有量が多すぎると部品が脆くなる傾向にある。
有機セラミックス粉は焼結部品の硬度を高める効果を発現させるため、焼結部品中に均一に分散させるよう粒子は小さい方が良く、粒径(JIS Z 8801のふるい法による粒径)が150μm以下であることが好ましく、特には20μm以下が好ましい。
なお、還元鉄粉等の純鉄粉の粒径は、有機セラミックス粉の粒径等の物性、純鉄粉と有機セラミックスの混合比率等により、好ましい範囲が異なる。一般に、純鉄粉の粒径は沈降法(流体中での粉体粒子の沈降速度から粒子の大きさを求める方法)による平均粒径として60μm以上180μm以下が好ましい。
【0016】
有機セラミックス粉として、米糠、籾殻を使用する場合、次の効果がある。
A.コークス由来の炭素粉は、コークスの採掘や製造にCOを発生させるのに対して、植物原料は植物であった際にCOを吸収する。そのため、コークス由来の炭素粉の代替材料として有機セラミックス粉を使用することにより、植物であった際のCO吸収により、焼結部品製造時に発生するCOと相殺することが可能となる。CO削減率は焼結粉1トン当たり0.1トンに相当する。
B.米の副産物として廃棄されていた米糠、籾殻を再利用するため、米糠等の価値向上を図ることができる。
C.結果として、粉末冶金焼結粉の新規材料として、カーボンニュートラル材料となる。
【0017】
以上の純鉄粉と有機セラミックス粉を含有する粉末冶金用粉は、必要に応じて潤滑剤等の添加材、鉄以外の金属粉末、黒鉛粉末等を加え、金型に充填し加圧成形し、その後、焼結を行なって焼結体を得る。
潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、オレイン酸、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド等の公知の潤滑剤を使用することができる。潤滑剤の混合量は、粉末冶金用合金鋼粉の質量に対して0.2質量%以上1質量%以下の範囲内が好ましい。
【0018】
以下、得られた粉末冶金用粉を用いて、粉末冶金焼結部品を製造する方法を、本発明の実施形態に係る粉末冶金焼結部品の製造方法の概要を示す図1に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、還元鉄粉等の純鉄粉と米糠等を原料とする有機セラミックス粉を、必要に応じて潤滑剤等の他の添加材と均一に混合して、粉末冶金用粉1を準備する。
次いで図1(b)に示すように粉末冶金用粉1を金型2に充填し、プレス機などによって加圧成形する。成形の条件や装置の構成を限定する必要はなく、従来から知られている技術を使用可能である。成形の際の圧力は、30MPa以上200MPa以下が好ましい。温度は室温(約20℃)から160℃以下の範囲内で行なうことが好ましい。たとえば金型を50℃以上70℃以下に維持しつつ、室温の粉末冶金用粉1(あるいは必要に応じて潤滑剤等を添加した混合粉)を充填し加圧成形すれば、圧縮性が向上できる。
更に、図1(c)に示すように焼結炉において焼結を行い、焼結体3を得る。焼結は、操業の条件や装置の構成を限定する必要はなく、従来から知られている技術を採用できる。ただし焼結コスト削減の観点から、大量生産が可能な炉であるメッシュベルト炉やトレープッシャー炉等を使用することが好ましい。
焼結温度は、1000℃以上1150℃以下が好ましく、1100℃以上1140℃以下がさらに好ましい。加熱時間は、10分以上120分以下が好ましい。雰囲気は、大気でもよいが、炭化水素変性ガス(いわゆるRXガス)、不活性ガス等、又は真空にしてもよい。
温度、時間等の焼結条件は、得られた焼結部品の強度、焼結体に発生するパーライト組織、コストなどを総合的に考慮して決定される。
【0019】
このようにして得られた焼結体は、焼結したままで焼結部品として使用できる。ただし、必要に応じて浸炭焼入れ、光輝焼入れ、高周波焼入れ、浸炭窒化熱処理等の熱処理を施しても良い。浸炭焼入れ、光輝焼入れ、高周波焼入れを施す場合は、さらに焼戻しを行なうことが好ましい。これらの熱処理を行なうことによって、焼結部品としての特性がさらに向上する。なお熱処理は、操業の条件や装置の構成を限定する必要はなく、従来から知られている技術を使用する。
【0020】
本実施形態に係る粉末冶金焼結部品は、複雑な形状を安価で大量に製造することが可能であり、自動車部品など大量生産が実施される多くの分野・用途に使用可能である。
使用可能な用途としては、例えば、自動車においては、サスペンション関係では、ピストンロッドガイド、ショックアブソーバー等;エンジン部品では、カムシャフトプーリ、カムシャフトスプロケット、クランクシャフトプーリ、バルブガイド等;ステアリング部品ではパワーステアリングロータカムリング、プレッシャープレート等;ミッション部品ではシンクロナイザーハブ、シフトフォーク、ハブクラッチ等;が挙げられる。その他家庭電機製品、事務機器、農業機械、ミシン用部品など多くの用途に使用可能である。
【0021】
本発明は、以上の実施態様に限らず、本発明の思想内であれば、他の実施態様も可能である。
例えば、必要とする焼結部品の形状によっては、成形によって成形体を得た後、焼結前に焼結体に対して切削、研削等の加工を実施することも可能である。
【実施例0022】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、「%」は質量基準である。
【0023】
<実施例1>
粉末冶金用純鉄粉JIP255M(JFEスチール株式会社製)とRBセラミックス粉とを、RBセラミックス粉を表1に記載する割合で、乳鉢と乳棒で混合し、混合粉1~6を準備した。得られた混合粉をプレス機にて31.4MPaの圧力で直径20mm、厚さ2mmの円盤状に圧粉成形した。続いて焼結炉にて1130℃にて20分間焼結を行い、焼結後焼結炉内で室温になるまで放冷し、直径20mm、厚さ2mmの円盤状テストピースとして焼結部品を得た。
得られた各焼結部品の硬さを表1に記載する。また、混合粉中のRBセラミックス粉割合と焼結部品の強度(HV2)の関係を図2に示す。図2からRBセラミックス粉を多く含むほど、得られる焼結部品の強度が高い傾向にあり、RBセラミックス粉が2.1%以上の場合に、焼結部品の硬さが37HV2を超えることがわかる。
いずれの混合粉においても製造時の成形性、流動性は、従来の粉末冶金用粉を使用した場合と遜色無いものであった。
【0024】
【表1】
<実施例2>
RBセラミックス粉に代えてRHSCセラミックス粉(籾殻由来)を使用する以外、混合粉4と同様にしてテストピースを作成した。
得られたテストピースの硬さは、36.2HV2であった。
【符号の説明】
【0025】
1・・・粉末冶金用粉
2・・・金型
3・・・焼結体
図1
図2