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特開2024-39976廃コンクリートからのセメント原料回収方法
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  • 特開-廃コンクリートからのセメント原料回収方法 図1
  • 特開-廃コンクリートからのセメント原料回収方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039976
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】廃コンクリートからのセメント原料回収方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/16 20230101AFI20240315BHJP
【FI】
C04B18/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144759
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 洸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩希
(72)【発明者】
【氏名】明戸 剛
(72)【発明者】
【氏名】一坪 幸輝
(57)【要約】      (修正有)
【課題】廃コンクリートから骨材の混入が抑えられたセメント原料を回収する方法を提供すること。
【解決手段】廃コンクリートを破砕する第1の工程と、
廃コンクリートの破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する第2の工程と、
細粒を乾式比重選別し、重比重物と軽比重物とに選別する第3の工程と、
軽比重物を回収する第4の工程、を含む、
廃コンクリートからのセメント原料回収方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃コンクリートを破砕する第1の工程と、
第1の工程で得られた破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する第2の工程と
第2の工程で得られた細粒を乾式比重選別し、重比重物と軽比重物とに選別する第3の工程と
第3の工程で得られた軽比重物を回収する第4の工程
を含む、廃コンクリートからのセメント原料回収方法。
【請求項2】
第2の工程後、第3の工程前において、第2の工程で得られた粗粒を破砕した後、破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する工程を含む、請求項1記載のセメント原料回収方法。
【請求項3】
第2の工程後、第3の工程前において、第2の工程で得られた粗粒を、目開き5mmの篩を少なくとも用いて2以上の粒群に分級し、粒径5mm以上の粗粒を除く各粒群を乾式比重選別して軽比重物を得、該軽比重物を破砕した後、破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する工程を含む、請求項1記載のセメント原料回収方法。
【請求項4】
第1の工程において、粒径5mm以上の破砕物中のセメントペースト含有率が15質量%以下となるまで破砕する、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント原料回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃コンクリートからのセメント原料回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート建築物等の解体工事に伴って発生する廃コンクリートは、鉄筋等のコンクリート以外の異物を除去した後、粒径が40mmアンダー程度となるまで破砕され、路盤材又は埋戻し材等として活用されていた。しかし、大都市部を中心に廃コンクリートが増加しているのに対し、路盤材等の需要が減少傾向にあるため、破砕後の廃コンクリートを更に磨砕等することで、コンクリート中の骨材に付着しているセメントペーストと骨材とを分離し、この骨材を再生骨材として再利用する試みがなされている。
【0003】
例えば、粒径1000mm以下の廃コンクリートを破砕機及び細破砕機により篩分機を介在させて粒径約5mm以下に粉砕した後、粒径0.5~5mmの粉砕物を比重選別し、粒径0.5mm以下の粉砕物をサイクロンで選別し、高比重物を再生細骨材として回収する方法(特許文献1)、約40mm以下の廃コンクリート破砕物を更に5mm以下に破砕し、これを研磨してモルタルを除去し、被処理物から微粉を除去して再生細骨材として回収する方法(特許文献2)が提案されている。また、廃コンクリートを破砕し、振動篩により粒径5mm未満の砂セメントと粒径5mm以上の砂利砕石分とに選別した後、砂利砕石分を摩鉱してモルタル分を剥離して砂利砕石分とモルタル分との集合体とし、この集合体を比重選別して高比重物を再生骨材として回収するとともに、砂セメントを摩鉱してモルタル分を剥離して砂分とモルタル分との集合体とし、この集合体をスパイラル分級して砂とセメントを回収する方法(特許文献3)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-220192号公報
【特許文献2】特開平08-245248号公報
【特許文献3】特開平11-314951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した先行技術により回収されるセメント原料には、カルシウムが濃縮しているものの、再生骨材の品位を向上させるために過粉砕されることに起因し、骨材を多く含んでいる。ゆえに、回収されるセメント原料は、アルカリ等量が高くなるため、その再利用が制限されるという課題が存在する。また、再生骨材の普及が進んでいないことから、再生骨材製造工程のみに依存しないセメント原料の回収方法が求められている。
したがって、本発明の課題は、廃コンクリートから骨材の混入が抑えられたセメント原料を回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、セメント原料への骨材の混入を抑制すべく検討した結果、廃コンクリートを破砕し、その破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級し、予めセメントペーストに富む細粒を採取したうえで、その細粒を乾式比重選別して軽比重物を回収することで、廃コンクリートから骨材の混入の抑えられたセメント原料を効率よく回収できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔4〕を提供するものである。
〔1〕廃コンクリートを破砕する第1の工程と、
第1の工程で得られた破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する第2の工程と
第2の工程で得られた細粒を乾式比重選別し、重比重物と軽比重物とに選別する第3の工程と
第3の工程で得られた軽比重物を回収する第4の工程
を含む、廃コンクリートからのセメント原料回収方法。
〔2〕第2の工程後、第3の工程前において、第2の工程で得られた粗粒を破砕した後、破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する工程を含む、前記〔1〕記載のセメント原料回収方法。
〔3〕第2の工程後、第3の工程前において、第2の工程で得られた粗粒を、目開き5mmの篩を少なくとも用いて2以上の粒群に分級し、粒径5mm以上の粗粒を除く各粒群を乾式比重選別して軽比重物を得、該軽比重物を破砕した後、破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する工程を含む、前記〔1〕又は〔2〕記載のセメント原料回収方法。
〔4〕第1の工程において、粒径5mm以上の破砕物中のセメントペースト含有率が15質量%以下となるまで破砕する、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載のセメント原料回収方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、廃コンクリートから骨材の混入が抑えられたセメント原料を効率よく回収することができる。したがって、本発明により回収されたセメント原料は、セメントペースト分が高く、アルカリ等量が低いため、高い原料原単位で再利用することができる。更に、本発明によれば、廃コンクリートから再生骨材として再資源化可能な材料も効率的に回収することができる。したがって、本発明の回収方法は、廃コンクリートの再生方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る回収方法に適用可能なセメント原料回収装置の一実施形態を示す図である。
図2】本発明に係る回収方法に適用可能なセメント原料回収装置の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら好適な実施形態を詳細に説明する。
<第1実施形態>
本実施形態に係る回収方法に適用可能なセメント原料回収装置の一例を図1に示す。図1に示されるセメント原料回収装置は、廃コンクリートを貯蔵する廃コンクリートホッパと、廃コンコンクリートに熱風を通しながら撹拌して水分量を調整するための乾燥機と、乾燥後の廃コンクリートを破砕する破砕装置と、廃コンクリートの破砕物を分級する分級装置と、分級装置により分離された細粒を乾式比重選別する乾式比重選別装置を備え、破砕装置の下流側には、破砕時に発生するダストを吸引する吸気ファンと、吸引ファンで吸引したダストを選別する吸引風力式比重選別機(サイクロン)が設けられている。
【0011】
本実施形態に係る回収方法は、第1の工程と、第2の工程と、第3の工程及び第4の工程を含むものである。以下、各工程について説明する。
【0012】
(第1の工程)
本工程は、廃コンクリートを破砕する工程である。これにより、セメント原料を回収しやすくなる。
廃コンクリートとしては、土木工事や構造物の解体等によって発生する解体コンクリートを挙げることができるが、使用骨材に石灰石骨材を含まないものが好ましい。廃コンクリートとして、建築物等の建設時等に発生した余剰コンクリートを使用してもよい。また、廃コンクリートとして、作業効率、セメント原料の品位向上の観点から、鉄筋等の異物を分離する目的で、小割り、磁力選別、手選別されたコンクリート塊を用いることもできる。
廃コンクリートの寸法は、通常、最大粒径が200~400mmである。ここでいう「最大粒径」とは、廃コンクリートのうち、最も大きな廃コンクリートを採取し、当該廃コンクリートの径が最大となる箇所を測定した値をいう。
【0013】
廃コンクリートの最大粒径が40mmを超える場合には、廃コンクリートを破砕して破砕物の最大粒径を40mm以下とすることが好ましい。なお、破砕物の粒径の下限値は特に限定されないが、作業効率の観点から、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、0.1mm以上が更に好ましい。
【0014】
廃コンクリートの破砕には、破砕機を使用することができる。破砕機としては、公知のものを使用することができるが、例えば、フレームに固定された固定刃と動刃によって圧縮破砕するジョークラッシャ、高速回転させた打撃板及び装置に固定された反発板への衝撃によって衝撃破砕するインパクトクラッシャ、円錐状のコーンケープと偏心するマントルによって圧縮破砕するジャイレトリクラッシャやコーンクラッシャ、2個のロールを回転させその間で圧縮破するダブルロールクラッシャを挙げることができる。中でも、骨材の割れを抑制する観点から、装置の間隙を40~80mm程度に設定したジョークラッシャやコーンクラッシャ等の圧縮式破砕機を使用することが好ましい。なお、破砕機には、廃コンクリートが破砕される際に発生するダストを含む排ガスを集塵するためのバグフィルタを備えてもよい。
【0015】
本工程においては、最大粒径を40mm以下とした破砕物を、更に破砕機にて2次破砕してもよい。破砕機としては、例えば、振動ミル、コーンクラッシャ、ジョークラッシャ等の乾式破砕機を使用することができる。この場合、粒径5mm以上の破砕物中のセメントペースト含有率が、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下となるように破砕することが好ましい。破砕物の破砕は、複数回循環して行ってもよい。なお、セメントペースト含有率の測定は、後述する方法にしたがうものとする。
圧縮式破砕機を使用して2次破砕を行う場合、セット(クローズ)は、廃コンクリートに含まれる原骨材の最大粒径に対して±25%の範囲内で設定することが好ましい。破砕機の破砕室内に試料が常に充填されるよう排出部に滞留機構を設けることもできる。
【0016】
また、本工程においては、図1に示されるように、破砕時に発生する-0.15mmの粒子群のダストを、吸引ファンを利用して回収することができる。そして、吸引したダストは、吸引風力式比重選別機(サイクロン)により重比重物と軽比重物に選別し、軽比重物をセメント原料として回収することもできる。
【0017】
(乾燥工程)
本実施形態においては、第1の工程前、あるいは第1の工程後であって、第2の工程前において、廃コンクリートの水分含量の調整を目的に乾燥を行ってもよい。乾燥は、好ましくは20~300℃、更に好ましくは75~110℃の温度にて、好ましくは30分から3時間、更に好ましくは1~2時間行うことができる。これにより、廃コンクリート中の水分含量を5%未満まで低減することができる。なお、乾燥は、セメント製造工程から排出される排ガスを抽気して行うことができる。
【0018】
(第2の工程)
本工程は、第1の工程で得られた廃コンクリート破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する工程である。これにより、セメント原料への骨材の混入を抑制することができる。
本工程は、分級機を使用することができる。分級機としては公知のものを使用することができるが、例えば、篩式分級機、気流式分級機、慣性式分級機を挙げることができる。例えば、篩式分級機は、振動式、面内運動式、回転式及び固定式のいずれでもよく、形式は特に限定されない。目開きの形状については、パンチメタル方式のスクリーン、グリズリーフィーダーやウェッジワイヤースクリーン、ルーバー式スクリーン、櫛刃式のスクリーンを用いることができる。また、気流式分級機としては、例えば、乾式サイクロン、ローター式分級機、エルボージェット分級機等を挙げることができる。
【0019】
本工程においては、廃コンクリート破砕物を粗粒と細粒とに分離するが、分級点は、細粒側のセメントペースト含有率を指標にして決定される。ここで、本明細書において「セメントペースト含有率」とは、次の方法により測定される値をいう。
【0020】
セメント協会F-18法に準拠し、試料を粉砕後、塩酸(1+100)溶解により残分質量を測定する。次に、下記式(i)により不溶残分(in.sol)の質量割合を算出し、骨材含有率とする。
【0021】
骨材含有率(in.sol) (%)=w/s×100 (i)
【0022】
〔式中、wは残分質量(g)を示し、sは試料質量(g)を示す。〕
【0023】
次に、試料はセメントペーストと骨材の2成分のみであると仮定し、下記式(ii)からセメントペースト含有率を求める。
【0024】
セメントペースト含有率(%)=100-骨材含有率(%) (ii)
【0025】
そして、分級により分離された細粒について、上記した方法によりセメントペースト含有率を分析し、セメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点を決定する。分級点は、骨材の混入抑制の観点から、セメントペースト含有率が63質量%以上である細粒を分離できることが好ましく、セメントペースト含有率が65質量%以上である細粒を分離できることが更に好ましい。
なお、図1に示されるセメント原料回収装置においては、篩式分級機が使用され、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点として、目開き0.15mmが採用されている。
【0026】
(第3の工程)
本工程は、第2の工程で得られた細粒を乾式比重選別し、重比重物と軽比重物とに選別する工程である。これにより、骨材の混入を抑えつつ、軽比重物にセメントペーストを濃縮することができる。
乾式比重選別機としては、公知のものを使用することができるが、インバータ制御やダンパ調整等で細かく風力を制御可能である点で、ジグザグ風力式比重選別機、エアテーブル型比重選別機、吸引風力式比重選別機が好ましい。
なお、図1に示されるセメント原料回収装置においては、吸引風力式比重選別機(サイクロン)が使用されている。
【0027】
(第4の工程)
本工程では、第3の工程により選別された軽比重物を回収する。回収された軽比重物は、骨材の混入が抑制され、セメントペーストの含有量が65%以上に高められる。したがって、本工程により、セメントペースト含有率が高く、アルカリ等量の低いセメント原料を回収することができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、第2の工程後、第3の工程前において第2の工程で得られた粗粒を破砕した後、破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級していてもよい。
粗粒の破砕は、第1の工程において説明した2次破砕を採用することができる。また、破砕物の分級は、第2の工程と同様の操作により行うことが可能であり、細粒中のセメントペースト含有率の好適な態様は、第2の工程において説明したとおりである。
なお、図1に示されるセメント原料回収装置においては、+0.15mmの粗粒を2次破砕し、破砕物を目開き0.15mmの篩式分級機にて分級して細粒を分取し、この細粒と、第2の工程により得られた細粒とを混合し、混合物を第3の工程に供して重比重物と軽比重物とに選別し、軽比重物が回収される。
【0029】
<第2実施形態>
図2は、本実施形態に係るセメント原料の回収方法に適用可能なセメント原料回収装置の一例である。図2に示すセメント原料回収装置は、第1実施形態に係るセメント原料回収装置と同様の構成を具備しているが、乾式比重選別装置の下流側に、軽比重物を破砕する破砕装置と、軽比重物の破砕物を分級する分級装置と、分級装置により分離された細粒を乾式比重選別する乾式比重選別装置を更に備える点で相違する。なお、乾式比重選別装置の下流側に設けられた破砕装置、分級装置及び乾式比重選別装置は、これらを設置することなく、これらの前段に設けられた破砕装置、分級装置及び乾式比重選別装置を使用しても構わない。
【0030】
本実施形態に係る回収方法は、第1の工程と、第2の工程と、第3の工程及び第4の工程を含む点で、第1実施形態に係る回収方法と同様であるが、次の点で相違する。即ち、第2の工程後、第3の工程前に、第2の工程で得られた粗粒について、第1実施形態に係る回収方法においては、当該粗粒を破砕した後、破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級したが、本実施形態に係る回収方法においては、当該粗粒を、下記の工程a、工程b、工程c及び工程dに供する点で相違する。なお、本実施形態に係る回収方法に係る第1の工程及び第2の工程は、第1実施形態において説明したとおりである。
【0031】
工程a:第2の工程で得られた粗粒を、目開き5mmの篩を少なくとも用いて2以上の粒群に分級する。
工程b:粒径5mm以上の粗粒を除く各粒群について乾式比重選別し、重比重物と軽比重物とに選別する。
工程c:各粒群から得られた軽比重物を破砕する。
工程d:破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する。
【0032】
先ず、工程aについて説明する。
工程aは、第2の工程で得られた粗粒を、目開き5mmの篩を少なくとも用いて2以上の粒群に分級する工程である。
本工程においては、篩式分級機を使用することができる。篩式分級機は、公知のものを使用することが可能であり、具体例は、第1実施形態に係る第2の工程において説明したとおりである。
【0033】
本工程においては、骨材の混入抑制の観点から、廃コンクリート破砕物を、好ましくは5以上の粒群、より好ましくは6以上の粒群、更に好ましくは7以上の粒群に分離する。なお、粒群数の上限は特に限定されないが、作業効率の観点から、9以下が好ましく、8以下が更に好ましい。この場合、所望の粒度の分級物が得られるように、各篩の目開きを適宜選択可能であるが、骨材の混入抑制及び再生骨材回収の観点から、目開きが5mmである篩と、目開きが0.1~0.2mmの範囲内である篩を少なくとも使用することが好ましい。なお、本工程においては、目開きの大きい方から順に分級しても、目開きの小さい方から順に分級してもよい。
【0034】
好適な態様として、廃コンクリート破砕物を、第1の篩、第2の篩、第3の篩、第4の篩、第5の篩及び第6の篩を用いて7つの粒群に分離することが挙げられる。この場合、第1の篩の目開きは5mmであるが、第2の篩の目開きは2.0mm超2.5mm以下が好ましく、第3の篩の目開きは1.0mm以上2.5mm未満が好ましく、第4の篩の目開きは0.5mm以上1.0mm未満が好ましく、第5の篩の目開きは0.3mm以上0.5mm未満が好ましく、第6の篩の目開きは0.1mm以上0.3mm未満が好ましい。なお、図2に示されるセメント原料回収装置においては、篩式分級機が使用され、第1の篩は目開きが5mmであり、第2の篩は目開きが2.5mmであり、第3の篩は目開きが1.2mmであり、第4の篩は目開きが0.6mmであり、第5の篩は目開きが0.3mmであり、第6の篩は目開きが0.15mmである。
【0035】
好適な粒群としては、粒径5mm以上の分級物と、粒径2mm以上2.5mm未満の分級物と、粒径1.0mm以上2.5mm未満の分級物と、粒径0.5mm以上1.0mm未満の分級物、粒径0.3mm以上0.5mm未満の分級物、粒径0.1mm以上0.3mm未満の分級物との組み合わせを挙げることができる。
【0036】
工程bは、粒径5mm以上の粗粒を除く各粒群について乾式比重選別し、重比重物と軽比重物とに選別する工程である。なお、粒径5mm以上の粗粒物は、再生骨材として再利用することができる。
乾式比重選別は、粒径5mm以上の粗粒を除く全ての粒群について個々に行っても、各粒群を一つにまとめて行ってもよい。
乾式比重選別は、公知の乾式比重選別機を使用することが可能であり、具体例は、第1実施形態に係る第3の工程において説明したとおりである。なお、図2に示されるセメント原料回収装置においては、エアテーブル型比重選別機が使用されている。
【0037】
本工程では、軽比重物を回収するが、重比重物については、再生骨材として再利用することができる。
【0038】
工程cは、各粒群から得られた軽比重物を破砕する工程である。軽比重物の破砕は、粒群ごとに行っても、各粒群の軽比重物を一つにまとめて行ってもよい。なお、軽比重物の破砕は、第1実施形態に係る第2の工程で説明した2次破砕を採用することができる。
【0039】
工程dは、工程cで得られた破砕物を、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点で分級する工程である。破砕物の分級は、粒群ごとに行っても、各粒群の破砕物を一つにまとめて行ってもよい。なお、本工程は、第1実施形態に係る第2の工程と同様に操作により行うことが可能である。細粒中のセメントペースト含有率の好適な態様は、第1実施形態に係る第2の工程において説明したとおりである。また、本工程で得られる粗粒物は再生骨材として再利用することができる。
なお、図2に示されるセメント原料回収装置においては、篩式分級機が使用され、細粒中のセメントペースト含有率が60質量%以上となる分級点として、目開き0.15mmが採用されている。
【0040】
(第3の工程)
本工程は、第2の工程で得られた細粒を乾式比重選別し、重比重物と軽比重物に選別する工程である。乾式比重選別は、第2の工程で得られた細粒と、工程dで得られた細粒を別々に行っても、両者を一つにまとめて行ってもよい。
乾式比重選別は、公知の乾式比重選別機を使用することが可能であり、具体例は、第1実施形態に係る第3の工程において説明したとおりである。
なお、図2に示されるセメント原料回収装置は、吸引風力式比重選別機(サイクロン)が使用されている。
【0041】
(第4の工程)
本工程では、第3の工程により選別された軽比重物を回収する。第3の工程において、第2の工程で得られた細粒と、工程dで得られた細粒を別々に乾式比重選別に供した場合には、各軽比重物を回収し、混合する。これにより、骨材の混入が抑えられ、セメントペーストの含有量が65%以上に高められる。したがって、本工程により、セメントペースト含有率が高く、アルカリ等量の低いセメント原料を回収することができる。また、本工程で得られる重比重物は再生骨材として再利用することができる。
【0042】
なお、本実施形態においても、破砕時に発生するダストを吸引風力式比重選別機(サイクロン)に供して重比重物と軽比重物に選別し、軽比重物をセメント原料として回収してもよい。また、第1の工程前、あるいは第1の工程後であって、第2の工程前において、廃コンクリートを乾燥する乾燥工程を備えていてもよい。
【0043】
本発明により回収されたセメント原料は、下記の(1)及び(2)の特性を具備することができる。
(1)セメントペースト含有率が、通常65質量%以上であり、好ましくは67質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。なお、セメントペースト含有率の上限値は特に限定されず、100質量%であっても構わないが、通常95質量%以下、好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
【0044】
(2)アルカリ等量が、通常2%以下であり、好ましくは1.8%以下であり、より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1.3%以下である。なお、アルカリ等量が低い程、骨材の混入が少ないと判断することができる。アルカリ等量の下限値は特に限定されず、0%であっても構わないが、通常0.1%以上、好ましくは0.3%以上、更に好ましくは0.5%以上である。ここで、本明細書において「アルカリ等量」とは、試料の化学分析の結果から、下記式(ii)によって算出されるものをいう。
【0045】
アルカリ等量(Na2Oeq)=Na2O+0.658K2O (ii)
【0046】
〔式中、Na2Oは試料中の酸化ナトリウムの含有率(%)であり、K2Oは試料中の酸化カリウムの含有率 (%)である。〕
【0047】
このように、回収されたセメント原料は、骨材の混入が抑制され、品位の高いものであるから、制限なく再利用することができる。
【実施例0048】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
1.セメントペースト含有率の分析
セメント協会F-18法に準拠し、試料を粉砕後、塩酸(1+100)溶解により残分質量を測定した。次に、下記式(i)により不溶残分(in.sol)の質量割合を算出し、骨材含有率とした。
【0050】
骨材含有率(in.sol) (%)=w/s×100 (i)
【0051】
〔式中、wは残分質量(g)を示し、sは試料質量(g)を示す。〕
【0052】
次に、試料はセメントペーストと骨材の2成分のみであると仮定し、下記式(ii)からセメントペースト含有率を求めた。
【0053】
セメントペースト含有率(%)=100-骨材含有率(%) (ii)
【0054】
2.化学分析(CaO、Na2O、K2O)
蛍光X線分析(XRF)により測定した。蛍光X線分析装置として、ZSX PrimusII(リガク社製)を用いた。
【0055】
3.アルカリ等量の分析
アルカリ等量(Na2Oeq:試料中の全アルカリの含有率)は、化学分析の結果から、下記式(ii)によって算出した。
【0056】
アルカリ等量(Na2Oeq)=Na2O+0.658K2O (ii)
〔式中、Na2Oは試料中の酸化ナトリウムの含有率(%)であり、K2Oは試料中の酸化カリウムの含有率 (%)である。〕
【0057】
本実施例においては、廃コンクリートとして、最大粒径が約300mmであり、原骨材に石灰石骨材を含まない解体コンクリート塊を用いた。
【0058】
実施例1
(第1の工程)
廃コンクリート塊をジョークラッシャにて粒径40mm以下に1次破砕し、破砕物を110℃にて1時間乾燥した後、コーンクラッシャにて更に2次破砕した。なお、コーンクラッシャのセット(クローズ)は15mmとし、2次破砕は2回循環処理を行った。
(第2の工程)
廃コンクリート破砕物を、目開き0.15mmの篩で分級を行った。
次に、粗粒(篩上物)をジョークラッシャにて2次破砕を行い、再度目開き0.15mmの篩で分級を行った。なお、目開き0.15mmは、細粒(篩下物)のセメントペースト含有率が60%以上となることを確認した。
(第3の工程)
第2の工程で得られた細粒(篩下物)を、乾式比重選別装置(サイクロン)により乾式比重遠別し、重比重物と軽比重物とに選別した。
(第4の工程)
軽比重物をセメント原料として回収した。回収したセメント原料について、セメントペースト含有率、CaO含有量、アルカリ等量を分析した。その結果を表1に示す。
【0059】
実施例2
(第1の工程)
廃コンクリート塊をジョークラッシャにて粒径40mm以下に1次破砕し、破砕物を110℃にて1時間乾燥した後、コーンクラッシャにて更に2次破砕した。なお、コーンクラッシャのセット(クローズ)は15mmとし、2次破砕は2回循環処理を行った。
(第2の工程、工程a)
廃コンクリート破砕物を、目開き0.15mm、0.3mm、0.6mm、1.2mm、2.4mm及び5mmの篩で分級した。なお、目開き0.15mmは、細粒(篩下物)のセメントペースト含有率が60%以上となることを確認した。また、5mm以上の粗粒は、再生粗骨材として回収した。
(工程b)
分級により得られた0.15-0.3mm、0.3-0.6mm、0.6-1.2mm、1.2-2.5mm、及び2.5-5mmの各粒子群について、それぞれエアテーブル型乾式比重選別機にて乾式比重選別を行った。
(工程c)
選別後の各軽比重物を一つにまとめてジョークラッシャにて2次破砕を行った。
(工程d)
工程cで得られた破砕物を、再度目開き0.15mmの篩で分級した。なお、目開き0.15mmは、細粒(篩下物)のセメントペースト含有率が60%以上となることを確認した。
(第3の工程)
第2の工程で得られた細粒(篩下物)と、工程dで得られた細粒(篩下物)を混合し、乾式比重選別機(サイクロン)により乾式比重遠別し、重比重物と軽比重物とに選別した。
(第4の工程)
軽比重物をセメント原料として回収した。回収したセメント原料について、セメントペースト含有率、CaO含有量、アルカリ等量を分析した。その結果を表1に示す。
【0060】
比較例1
廃コンクリート塊をジョークラッシャにて粒径40mm以下に1次破砕し、破砕物を110℃にて1時間乾燥した後、コーンクラッシャにて更に2次破砕した。なお、コーンクラッシャのセット(クローズ)は15mmとし、2次破砕は2回循環処理を行った。
廃コンクリート破砕物を、ボールミルを用いて、破砕物全量を0.15mm以下に粉砕した。得られた粉砕物について、セメントペースト含有率、CaO含有量、アルカリ等量を分析した。その結果を表1に示す。
【0061】
比較例2
廃コンクリート塊をジョークラッシャにて粒径40mm以下に1次破砕し、破砕物を110℃にて1時間乾燥した後、コーンクラッシャにて更に2次破砕した。なお、コーンクラッシャのセット(クローズ)は15mmとし、2次破砕は2回循環処理を行った。
廃コンクリート破砕物を、目開き0.15mmの篩で分級を行った。細粒(篩下物)について、セメントペースト含有率、CaO含有量、アルカリ等量を分析した。その結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から、実施例1、2のいずれにおいても、セメントペースト含有率が70%以上であり、アルカリ等量が1.3%以下であることから、セメントペースト含有率が高く、骨材の混入が抑制されたセメント原料を回収できることが確認された。
図1
図2